ソードアート・オンライン~夢幻の戦鬼~   作:wing//

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まぁ、サブタイ通りです。

言うよりも読んでもらった方が早いかと。
それでは、どうぞ!


第六話 「真相F-②:偽善と真愛」

 

「っ…(ここは、セーフエリアっぽいな)」

 

ほとんど意識のないフィリアを肩に背負い、洞海エリアの扉を潜った先は何もないエリアだった。光源はほとんどなく、VRMMOの悪いところである、少しだけ視認できる程の明るさ(現実なら真っ暗で見えないのが普通なので)を保ったエリアは、浩然と広がる洞窟のようなエリアだった。

 

索敵スキルで周囲を見渡すもモンスターの気配はなく、ひとまず警戒度を下げた俺は、フィリアをゆっくりと地面へと降ろした。

 

「フィリア、もう少しだけ我慢してくれ」

 

「…(コクン)」

 

なんとか頷くことで反応は示してくれていたが、座り込んだフィリアの状態はよろしくなかった。顔は真っ青で、唇も赤みを失っていた。身体の震えも止まっておらず、そんな彼女にオブジェクト化した厚めのコートを着せ、俺は更に別のアイテムをオブジェクト化していく。

 

野外活動用に最低限持ち歩いていた木材と、鍛冶の結果で出る廃品(作戦会議ミーティングの前に、専任鍛冶をしているユージオとアリスの武器のメンテナンスをしていた際に出たもの)のゴミと、火打石モドキの『火炎石』をオブジェクト化する。

 

火炎石は属性付与の武器を作る際に使う素材の一つだが、火を宿した石ということで、擦ると火花が散るという特徴がある。火魔法だと、攻撃用ということで火を付けるどころか、素材を破壊することしかできないからな(一回、ALOを始めたばかりの頃に試して、えらい目にあったものだ)

 

二つの火炎石を擦り、廃品のゴミに火花を散らせる。火を着ける際に、こういうゴミなどが火種としては燃えやすいというのを小さい時にテレビで見たことがあり、その知識でVRMMOにて野外にて火を着けてきた。

 

そういえば、ホロウ・エリアでも初めて鍛冶場を使った時はこうして火を着けたもの(まぁ、あの時は火炎石みたいな便利なアイテムが無かったから、縄文時代の時にそうしていただろうという方法のように、摩擦熱で実行したのだが)だと思いながら、俺は火種を作ることに成功する。

 

そのまま組み立てていた木材へと放り込み、空気を入れてやって、火を大きくしてやる。そうこうしていると、焚火と言えるほどに大きくなった。

 

「フィリア、立てるか。もう少しだけ、頑張ってくれ」

 

「…(コクリ)」

 

差し伸ばした手を取ったフィリアを立ち上がらせ、火の近くにまで連れて行く。流石に椅子のようなアイテムは持ち歩いていなかったので、焚火の近くの地面に服を敷き、そこにフィリアを座らせる。

 

「少しすれば、身体が温まると思う。今の状態だと、いきなり温かい飲み物とか飲むのはあんまりよくないだろうからな。動けるようになったら、服を乾かしておいてくれ」

 

「…う、うん…」

 

対処療法というか、素人知識での対応だが、そこまで間違ったことはしていないと思う。フィリアにそう告げて、俺は一旦その場を離れようとした。

 

「フォン…どこに…?」

 

「ちょっとさっきのエリアに行ってくる。やらないといけないことがあるからな」

 

フィリアに当然の疑問を聞かれるも、俺はちょっとはぐらかしてそう答えた。これ以上聞かれる前に、俺はさっさと前のエリアへと戻った。

 

「さてと…それじゃあ、さっさと回収といきますか」

 

洞海エリアへと戻り、索敵スキルでイソギンチャクもどき(怒りのあまり、勢いで倒してしまったため、モンスター名を覚えていなかったので、そう呼んでいる)がリポップしていないことを確認した俺は、そう呟いた。

 

やることとは簡単なことだ…さっきの戦闘で落っことした両手剣と片手剣、そして、片手棍の回収である。

 

片手剣はもしかすれば、モンスターを吹っ飛ばした〈ニクスプロード〉の影響で破壊されている可能性(イソギンチャクもどきの目に刺したままにしていたため)があるが、メイン武器である両手剣と、作るのが大変だった片手棍はやはり回収しておきたかったのだ。

 

大体の落ちた場所は覚えているので、ひとまずは爆発の余波で吹っ飛んだ際に手放した片手棍を回収し、その後に両手剣と片手剣を拾いに行くことにした。

 

作業の間にフィリアの方も動けるようになっているだろう…そんなことを思いながら、俺は洞海へと再び飛び込んだ。

 

(っ…やっぱり結構冷たいな。あんまり時間は掛けられないか)

 

さっきは怒りと戦闘中の興奮によって、アドレナリンが出ていたのかそこまで感じなかったが、泳ぐためにほとんど装備を外している…というか、上半身に限っては裸の状態なのもあって、水の冷たさをその身で味わって、そんな感想を抱いていた。

 

さっさと回収してしまおうと、まずは片手棍を落としたであろう場所へと向かうと…思っていた場所よりは少しズレていたが、海底に落ちていた棍棒を回収することができた。

 

そのまま、両手剣と片手剣…イソギンチャクもどきがいた場所へと向かう。すると、予想外にも片手剣もなんとか無事だったらしく、両手剣の近くに落ちていたのが水面から見えた。

 

状態は回収した後に見てみないとわからないが、ひとまずは作り直さずに済みそうなことに安堵し、俺は呼吸を整えて一気に海底へと潜水した。

 

(よし…あとは浮上して、ストレージに収納して……うん?あれは…)

 

流石に一気に両方とも回収するのは難しそうで、まずは重量がある両手剣から回収していこうかと算段を立てたところで、視界の端に何かが見え、それを視認した俺は…

 

 

 

「っ~…(しまった…できるだけ、早く切り上げたつもりが、結構冷えたな…)」

 

ちょっとした予想外のことはあったが、武器の回収自体は上手くいった俺だったが、陸地へと戻った時には、身体が震える程に冷えて切ってしまっていた。

 

なんとかなるかと思っていたが、少し見立てが甘かったらしい。ともかく、蒼炎の烈火のアンダーアーマーであるこの装備は、この先も使う可能性がある。ひとまず、自分も装備を乾かす必要があると思い、フィリアがいるセーフエリアに戻ったのだが、

 

「えっ…フィリア、なんで…」

 

「そ、それは……ちょっと止むをえない事情があって…」

 

オブジェクト化した分厚いコード(フィリアに貸したのとはまた別の装備)を纏い、一旦の応急処置をして、扉を潜ったところで俺は思わず首を傾げた。

 

理由は簡単…さっきエリアを出入りした時と状況が変わっていなかったからだ。どういうことかというと、フィリアが濡れた服を着たまま、焚火に当たっていたのだ。

 

何があったのかと思い、近づいてフィリアに声を掛けると、喋れるまでには回復できたらしいフィリアの、何故か消えそうな声量で返事が返ってきた。

 

事情と聞き、首を傾げる俺にフィリアは口ごもって…そして、意を決したように言葉を紡いだ。

 

「その…服だけじゃなくって、その下もずぶ濡れで…それも乾かそうとしたら、フォンが戻ってきた時に…見えちゃうから…」

 

「…あっ、その……すまん、そこまで頭が回ってなかった」

 

具体的な物言いではなかったが、その一言で全てを悟った俺は思わず目を手で覆った。そして、フィリアの気遣いに感謝するしかなかった。それは確かに服を脱げないわけだ。

 

「…簡易的な仕切りと焚火をもう一つ作るから、もうちょっと待ってくれ」

 

そう言って、俺は素早くストレージを開き、残っていた木材をオブジェクト化したのだった。

 

「よっと…これであとは乾くのを待つだけか」

 

焚火の火を基に、もう一つ焚火を作り、二つの焚火を遮るように簡易的な仕切りを作った。仕切りといっても、そんなものは常備しているわけもなく、素材として持っていた布をカーテンとし、両手剣と刀を支柱としてくみ上げた即席の仕切りだ。

 

だからこそ、防音性とか視覚などカバーし切れないところがあり、俺はフィリアがいる方へと背中をずっと向けていた。何も考えずにストレージに収容していた、ずぶ濡れの『蒼炎の烈火』の防具部分をオブジェクト化して、焚火の近くに置いた。

 

アンダーアーマーも乾かすために、片手剣に被せ、焚火に当てている。現実世界と違って、乾くのにそう時間は掛からないため、あとは時間の問題だと思っていた。

 

ひと段落したことで、地面へと腰をつける。すると、フィリアの方も同じタイミングで終わったらしく、座り込んだ音が向こうから聞こえてきた。

 

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」

 

だが、互いに言葉を交わすことはなかった。何を言えばいいのか、俺も…そして、フィリアも分からないでいるのだろう。

 

何を言っても…その先が続く未来が見えず、俺も会話のきっかけを作り出せずにいた。すると、

 

「クシュン!?」

 

「…大丈夫、フォン?」

 

「ああ、まぁ、なんとか…ちょっと海に漬かり過ぎたみたいだ。さっきも潜ってきてたからな」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「…フィリア?」

 

「…ゴメンね。私のせいで…罠のことも、モンスターのことも…私がちゃんとしてれば、フォンに余計な負担を掛けなかったのに…」

 

「そんなことはないよ…こんなのは余計な負担でもないし、それで、フィリアを助けられたのなら、安いもんだよ」

 

「っ……!」

 

沈んだ声をする彼女の表情がなんとなく想像できてしまい、俺は迷うことなく、そう返した。息を呑む彼女の音が聞こえたが、俺は焚火の火だけを見て、静かに彼女の言葉を待った。

 

「…なんで……」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

それは疑問のように聞こえ、彼女の悲鳴かと思えた。その言葉に、俺は少しだけ視線を背後へと向けた。すると、

 

「なんで、そんなことを言うの…」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「なんで、まだ優してくれるのよ…」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「なんで…なんで、今になって私の前にまた現れたのよ!?忘れようとしたのに、なんで気を掛けくてくれのよ!?私が…必死にこの気持ちを捨てようとしてるのに……なんで、あなたはいつも、私が助けてと思った時に、きてくれるのよ…!」

 

「…フィリア…」

 

「こんなのじゃ、忘れられないよ…気持ちに蓋もできない……私はどうしたいいのよ!?どうやって、あなたのことを諦めたらいいのよ!?」

 

弱り切っているせいか、昨日話した時には秘めていたであろう言葉が、次々と彼女の口から出てきた。その一言一言が…どれだけ彼女を傷つけ、そして、彼女を苦しめていたのかが嫌と言う程に理解できてしまった。

 

そんな彼女に何を言えばいいのだろうか…何と言って、真実を告げればいいのだろうか…どうすれば、そんな彼女の心を助けられるのかと思った時だった。

 

『逃げるでない』

 

「っ…(そう、だよな…そうだったな。そんなの俺らしくないよな)」

 

蘇ったのは、昨日カーディナルに言われた言葉だった。背中を蹴っ飛してくれた言葉に、俺はようやく理解した…ごちゃごちゃと考え過ぎなのだと…こんな時に言うことなど、もう決まり切っていたのに…まだ迷いがあったらしい。

 

本当に面倒な性格をしていると自分でも思いながら、俺は覚悟を決め、口を開いた。

 

「…俺はお節介だからな」

 

「えっ…」

 

「度が過ぎる程のお人好しで、自己満足で動く偽善者で、誰かが困っているのが嫌なお節介だからな。フィリアがどう思おうと、何度だって手を伸ばすさ」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「どっか常識はずれで、人の心を搔き乱して、秘密主義で…そして、結構我が儘な人間でもある」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「だからこそ、俺はフィリアにちゃんと伝えたいことがあるんだ。代わりに…フィリアも…フィリアの言いたいことを…本当に言いたいことを全部聞かせてくれないか。ちゃんと受け止めるから…俺にも、フィリアの気持ちに応えるチャンスをくれないか」

 

「っ…」

 

少し卑怯な言い方だとは思った…けど、今のフィリアにはそれくらい言わなければ、本音を引き出せないと思ったのだ。

 

これでケリを着けると思わせれば、フィリアも応えざるを得ないだろうと…卑怯だとしても、それでも、俺はフィリアと本当の意味で話さなければならないのだ。そうでなければ…彼女と向き合えたとは言えないからだ。

 

沈黙のまま、かなりの時間が経ち、このまま何も返ってこないのではと少し不安を覚えた時だった。

 

「……そっちに……行ってもいい…?」

 

「…ああ」

 

ようやく返ってきたのは、そんな問い掛けだった。俺は迷うことなく答えを返し、少しして向こうから動く音が聞こえると、

 

「…お邪魔…します」

 

音が近づき、そんな言葉と共に横に彼女が腰を掛けた。視線を敢えて向けず、俺は会話を続けた。

 

「なんか不思議だよな…こうしていると、フィリアとホロウ・エリアにいたのが、昨日の時のように思えるんだから」

 

「…私は今でも鮮明に覚えてるよ…ううん、忘れようと思っても、絶対に忘れられないと思う。それぐらい…私にとって、フォンと一緒にいた時間は、掛け替えのないものだったから」

 

「そうか…なら、謝らないとな、俺はさ、少しの間ホロウ・エリアのことを…フィリアのことを後回しにしてた。やらないといけないことがあるからって…そんな理由で、君との思い出を勝手にしまっていたんだ」

 

「…酷い話だね。それぐらい、私との思い出はどうでもよかったってこと?」

 

「どうでもいいってことはなかったよ…でも、その時の俺は、フィリアの気持ちに応える余裕がなかったっていうのかな…フィリアの気持ちに応えたら、君を傷つけることになるって勝手に思ってたから…その結果がこれなんだから、本当に酷い男だよな」

 

「自分で言う程に自覚があるってなかなかだよね。まぁ、ちゃんと反省と自覚をしてるだけマシなのかな。本当に…酷いよね、フォンは。私の気持ちをこれでもかって搔き乱して…それで、ずっと縛ってくるんだから…」

 

「かもな…本当にどうしようもない男だよな」

 

「…本当に…どうしようもない人だよね」

 

自然と話せていることに驚きは感じなかった。フィリアの方も言い方に棘はあるが、その声色に怒りは込められていなかった。

 

どこから懐かしそうに、そして、少しの哀愁が含んだ声色で、俺たちは話していく。これまで離れていた時間を埋めるかのように…そんな感覚を覚えていた。

 

「…フォンと再会した時、なんで今さらって確かに思ったの…でもね、それと同時にどこか期待した自分がいたのも本当だったの」

 

「…ああ」

 

「ようやく再会できたことが嬉しくて…でも、気持ちを告げられないことが嫌で…だけど、諦めないと分かっていても、ずっと心が痛くて…」

 

「…うん」

 

「あなたを困らせたくないと思ってても…これが駄目なことだって、答えなんか分かり切っていることなのに…言ってしまえば全てが終わることだって知っているから…だから、ずっと告げないでいようと決めていたの…」

 

「…だろうな」

 

「…だからね…もういいの。あの時間は私にとって、幸せな時間だった。ちゃんと割り切れると思うから、だから、フォンも聞かなかっ「悪いが、その願いだけは聞いてやれないな」…えっ…」

 

ずっと相槌を打っていた俺が突如として否定の言葉を放ったことで、フィリアが驚きの声を上げる。そして、反射でこっちを見たことで…ようやく俺がフィリアをずっと見ていたことに気付き、彼女と目が合った。

 

「悪いが、お前がそれで幸せになれないっていうのなら、その願いだけは絶対に聞いてやるわけにはいかない」

 

「…な、なんで…だって……そんなことを言ったって、フォンにはもう…」

 

「俺の全部を知らないのに、勝手に諦めるなんてことを言うな」

 

「っ…?!」

 

俺の言葉に、フィリアの目が丸く見開かれた。それは、ホロウ・エリアにいた時、彼女から俺に言われたことに似ていたのだから、当然の反応だった。

 

「さっきも言ったけど、俺は結構我が儘で、そして、ズルいんだ。だから、自分の責任で誰かの涙を拭えるのなら、何でも背負うとする。それがどれだけ不純なものであっても、どれだけ駄目なことでもな」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「…俺は…ユウキ以外にも付き合ってる人がいる」

 

「…っ!?!?」

 

ようやくだった…迷いのあまり告げられずにいた事実をようやく口にすることができた。それを聞いたフィリアは驚きのあまり、言葉を失っていたが、当然だろう。

 

「最低だよな。自分でも何度も思ったよ…一度は、その人の想いを見てみないフリをしたくらいだ。けどさ、どうやら俺を愛してくれる人たちは、それをよしとしてくれないみたいでさ…その言葉を受けて、今はなんとかやってる感じだ」

 

「…それって、もしかして…」

 

「ああ、カーディナル…カナデのことだ。俺はユウキとカナデの二人と付き合ってる。だからこそ…俺はフィリアともちゃんと向き合わないといけないと思って、この話をしたんだ」

 

「……そう、だったんだ」

 

「…ああ」

 

衝撃を隠し切れないフィリアの視線がふと落ちた。その目には戸惑いと動揺の色が映っていた…そして、何かを迷っているような感じもした。

 

「…だから、これだけは言っとく。そんな俺だから、気にするな…なんて、適当なことを言わない」

 

「…えっ?」

 

おそらくだが、フィリアが思っているだろうと思ったことを言葉にしてやると、当たっていたらしく、驚きの声がフィリアから出ていた。

 

「今のは、俺のユウキたちの関係を説明しただけだからな。フィリアの気持ちに応えるという話とはまた別だ。だから、本題はここからだ。

 

俺はさ…本当のことを言うと、フィリアの気持ちに応えちゃいけないと思ってたんだ。それは、きっとフィリアを苦しめ続けることにしかならないと思って…

 

でも、二人に背中を押されて、やっと気づいた…それじゃ、意味がないんだって。結局は…フィリアを傷つけることにしかならないのだったら、偽善者らしくやるべきだって」

 

「…フォン…?」

 

「フィリア…俺はこんな人間だし、どうしようもない二股野郎だし…もしかしたら、いつか急にいなくなるかもしれないし…きっといつまで経っても皆に心配掛けまくる自己中心的な男だと思う。

 

でも、それでも…やっぱり好きな女の子が苦しむのをただ見てることも、何もしないでいることも…したくないんだ」

 

「っ…!」

 

「俺もフィリアのことが……好きだよ。ちゃんと、一人の女性としてな」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「だから、これはお願いだ…今、フィリアが考えている悪いことなんて、遠慮していることなんて、全部忘れてくれていい。俺と同じ重みを背負ってくれないか…そうしてくれれば、俺がなんとかしてやる。

 

フィリアの家族に何を言われようと、何度だって頭を下げてやる。

 

誰に何かを言われた、その倍のことフィリアの好きなところを言ってやる。

 

それで…俺に気を遣って、身を引こうって言うのなら、絶対に逃がしてやらない。どれだけ、俺がフィリアのことを想っているか、これでもかと分かってもらえるまで教えてやる。

 

だから…これからのフィリアの時間を俺にくれ。俺と一緒になってくれないか」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

言いたいことは全部言った…まさしく本音を全て吐き出した、告白も混じった俺の独白に、フィリアは言葉を失ってしまっていた。

 

言い切った余波というか、沈黙がやけに耳に聞こえるような気がして…次第に、恥ずかしさが蘇ってきた。顔が熱くなるのを感じ、自分がどれだけ赤くなっているかと思い始めた時だった。

 

「…プッ!」

 

「ふ、フィリア…?」

 

「時間を俺にくれって…他の二人の時間も自分のものにしておいて、まだ満足してないの?」

 

「…(ま、まぁ…そう言われてもしょうがないよな)」

 

どこか呆れたように笑い出したフィリアの言葉に、俺も言われたことと同じことを思っていた。あまりにも傲慢すぎる告白は確かにそう言われてもしょうがないと…

 

…ポスッ

 

「…卑怯だよ、そんなこと言うのは」

 

左肩に重みを感じたのは、フィリアが頭を預けてきたからだ。そんな言葉と共に、どこや悔しさそうに呟かれたものだった。

 

「期待しちゃうじゃない…諦めなくていいんだって思っちゃうじゃん…断らないとっていう決心が鈍るし…その言葉を信じたくなっちゃうじゃない」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「なんでなのよ…なんで、いつも私が欲しい言葉をくれるのよ。

 

なんで、いつも助けてほしい時に助けてくれるのよ。

 

なんで、そうやって、私の心のわだかまりを溶かしてくれるのよ。

 

卑怯だよ、本当に卑怯…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だけど、そういうところが好き」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「優しいところが好き、誰かのために必死になれるところが好き、冷静なくせにどっか純粋なところが良くて、困ったように笑うところが好き…でも…

 

私のために何度でも手を指し伸ばしてくれたあなたの姿が一番好き」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「…だから、もしも私がいいよって言ったら、その言葉を信じていいんだよね?

 

期待していいんだよね?私も…フォンに甘えていいんだよね?

 

…責任、取ってくれるんだよね?」

 

「当たり前だ」

 

数々の好きの言葉に続き、告げられた確認の言葉に、俺は迷うことなく即答した。それだけは迷いはなく、覚悟を決めていた。その言葉を待っていたかのように、

 

…チュ

 

「っ…!?」

 

左頬に熱いものが触れ、思わずその原因を作り出した彼女の方を慌てて振り向くと、

 

「…言質は取ったからね?ちゃんと責任を取ってくれるっていうのなら、これはその約束の前払いだから」

 

「ふ、フィリア…?」

 

「今はここまで…フェイカーの一件が終わったら、ちゃんとね」

 

「お前…人のこと、卑怯って言えないぞ…」

 

顔を赤くしながらも、嬉しそうに笑うフィリアの言葉に、俺は笑みが引き攣るのを覚えた。そんなお預けのような言い方は反則だろう。

 

「本当に…フォンは私にとってのホロウ・フラグメントだったんだね」

 

「ホロウ・フラグメント…?それって…」

 

「卑怯なフォンには教えてあげない。私だけの特別な意味だから」

 

「…?…?(ホロウ・フラグメント…?フラグメントって、破片とか一片って意味だったよな…虚ろな欠片?どういうことだ…?)」

 

ホロウ・フラグメント…聞き慣れない言葉に、言った本人であるフィリアに問い掛けるも、はぐらかされてしまった。英単語としての意味で考えるも、しっくりくる答えではなく、俺はどういうことかと頭の中で必死に考えていたのだが、

 

(フォンは知らないだろうけど…あなたが空っぽだと思ってた私の心に、温かいものをくれたんだよ。まるで、バラバラになっていた私の心を繋ぐフラグメント…ホロウ・フラグメントとして……まぁ、私のことを長い間放っておいたんだから、その答えを教えてあげるのは、もうちょっと先のことだけど…そのぐらいの意地悪は許してくれるよね?)

 

安心したように完全にこちらへと身体を預けてきたフィリアがそんなことを思っているとは露とも知らずに…

 

いくら考えても答えが思いつかない中、一旦考えるのを止め、その温かみを覚えていると、あることを思い出し…

 

「そうだ、フィリア。これ…」

 

「えっ……あっ!」

 

「まさか…フィリアがこれを持っているとは、見つけた時には驚いたよ」

 

さっき海浜エリアで武器を回収するために潜った際見つけたのだが、それを目にした時には本当に驚いたものだ。だが、そいつの誕生の経緯を思い出し、俺は同時に納得もしていた。

 

…そういう意味では、フィリアもホロウ・エリアとの縁が切れていなかったということなのだろう。それは、俺との絆も繋がっていたということで…

 

「『リノベイド・ベリッタ』…ホロウ・エリアで俺が作り直した、この短剣…まさか、ALOでも使っているなんてな」

 

ストレージからオブジェクト化したのは、モンスターの奇襲を受けた時にフィリアが手放してしまった短剣…昨日は突然のことでそこまで意識が回っておらず、今日に限っては俺がずっと前衛を担っていたので、目にする機会がなかったのだが…

 

ホロウ・エリアの素材を元に、俺が作り出したフィリアの剣…『リノベイド・ベリッタ』をフィリアは受け取り、そして、大事そうに抱き抱えた。

 

「…ALOに初めてログインした時、他のアイテムは全部エラー表示だったのに、これだけは何故か正しく表示されてて…もしかしたらと思って、オブジェクト化してみたら、使えて…これも、私とフォンの大事な思い出の一つだったから」

 

(…多分、幻想剣関連のアイテムを使ったからか。キリトが所有していた『オニキス・トルゥース』と同じ…ホロウ・エリアの大空洞エリアのボスは、幻想剣スキルに対抗するかのような相手だったから…そのドロップアイテムも幻想剣関連のものだったってことか?)

 

SAO第75層で、相続スキルで俺がキリトに託した片手剣『オニキス・トルゥース』は、幻想剣関連のダンジョンで手に入れたアイテムを元に作った剣だ。その剣は、須郷によって、ALOにも適用できるよう改造された幻想剣に連動した影響で、他のSAO時代のアイテムと違って、使用可能となっていた。

 

そして、それはフィリアの短剣にも同じことが起こったのだろう。ホロウ・エリアの大空洞エリアボスが幻想剣関連のものだったと考えれば、納得がいく。今、思えば、大空洞エリアのボス戦は、開始前に幻想剣スキルの分析が完了したみたいなシステムアナウンスが流れていた…ということは、あのクォーターボスもどきも幻想剣関連だったのだろう。

 

フィリアの説明に、俺は『オニキス・トルゥース』と同じことが起こったのだと悟った。なんというか、運命というべきなのか、幸運に等しい偶然なのか…

 

(幸運…まさかと思うが、フィリアの運の良さが働いたとか…?)

 

「…拾ってきてくれてありがとう、フォン」

 

「あ、ああ…(…ま、まさかな)」

 

リアルラックというか、まさかの可能性を疑いながら、お礼を言うフィリアの言葉に、俺は頭の中に浮かんだ可能性を表情には出さずに、苦笑交じりで返答するのだった。

 

…それから、俺たちは服が乾くまで、色々な話をした。素直になれたからこその、これまでできなかった話を…そんな中、俺はあることを考えていた。

 

(フィリアにも話さないといけないよな、俺の秘密を…でも、まずはフェイカーのことを片付けてからだな)

 

フィリアの言葉に乗っかかる形だが、俺もフィリアに伝えなければならないことがあるのだ。だが、今は片付けなければならないことがある…それを終えた後に、きちんと説明しようと俺は、心に決めるのだった。

 




ある意味で確かに卑怯だなと、作者も思います(苦笑)

フィリアの本音を引き出した上に、完全に逃がす気ない感じの物言いでしたからね。責任取ると決めたら、フォンの場合、ガチで逃がさないタイプですので(ちょっと間違ったら、ヤバい奴…)

そして、まさかの再登場…フィリア専用装備といってもいい『リノベイド・ベリッタ』でした。この展開の為に、ホロウ・エリアで強化したわけでした。

ということで、フィリアさん、メンタル完全復活です!
そんなわけで、次回は遂にフェイカーとの対決…その正体や幻想剣モドキの真相が明らかに…

お楽しみに!

キャラエピ第2段!どのキャラから見たいですか?(時系列の問題で多少前後することがあります)

  • リーファ
  • シノン
  • リズ
  • シリカ
  • ミト
  • ユイ
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