ソードアート・オンライン~夢幻の戦鬼~   作:wing//

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みなさん、大変お待たせしました!

5~6月が本当に忙しすぎて、なかなか更新できずにすみませんでした。
そういうわけで、フェイカー戦ラストバトルとなります。

それでは、どうぞ!


第八話 「真相F-④:虚構神を打ち倒せ」

『GYAAAAAAAAAAAAAAAA!!』

 

「…!フォン、これって…なんで、力が…」

 

「レゾナンスの、後遺症だ…なんかよく分からないけど、効果が切れると…酷い、脱力感に、襲われるらしい…」

 

フェイカーらしき意思が宿った歪な大剣…それを媒介に変貌を遂げた巨神のモンスターの咆哮は、先程まで偉そうに講釈を垂れていたものとは全く異なる、理性を失った叫びそのものだった。

 

それを身に受け、振動が身体を伝う中、俺とフィリアは別の意味で身体に上手く力が入れないでいた。今にも膝を突きそうな程の脱力感に、フィリアの疑問に答えながら、俺はなんとか歯を食いしばって堪える。

 

「…何度も言うけど、そういう大事なことは先に言っておいてよ…!打開策は…?!」

 

「時間回復だけだ…だけど、それを奴が待ってくれるとは…っ?!くるぞ!?」

 

今日何度目になるか分からないフィリアの苦言に反応する余裕もなく、レゾナンスの代償が時間経過でしか回復しないことを告げている最中、奴は動き出した!

 

『The ouroboros of Hollow』…その名の通り、あの有名なウロボロスをモチーフとしたのか、天使の輪を模した自身の尾を噛んだ蛇が目隠しのように装着されており、その巨体は男女の身体が混在したかのようなボディで、そして、最大の特徴はまるで天使と堕天使翼を混ぜ合わせ表現したかのような、白黒混合三組6本の巨腕…左上から両手剣、槍、両手斧、右腕の3本には上から棍棒、細剣、短剣…それぞれが白銀の輝きを目立たせる武器を手にした姿は、ある意味でラスボスらしい風格を漂わせていた。

 

そして、そんな奴の巨体から放たれた初撃は、口に収束された光線だった!チャージに少しばかり時間が掛かるようで、多少猶予があったのが幸いだった。フィリアに回避を促すと共に、俺は背後にいたフェイカーに操られていた少女の方を担ぎ、すぐさまその場から飛びのいた。

 

その直後、奴の口から放たれた光弾が、俺たちのいた場所へと着弾した。

 

「「「っ?!」」」

 

着弾と同時に、周囲2メートルを爆発が襲う。直撃すれば、ただではすまないのは確かだった。だが、奴の攻撃は終わらない!

 

その場から動かずに、左腕の両手剣による薙ぎ払いを放ってきたのだ。大ぶりな一撃だったこともあり、動きが見えていたので、着地と同時にその場にしゃがみ込むことで、その一撃を俺たちは躱す。

 

「っ…!(なんとか、脱力症状が抜けるまで耐えれれば…!)」

 

幸いなことにオーディナル・スケールの最終決戦で戦ったボスとは違い、奴はその場から動かないでいるタイプのようだった。このままであれば、なんとかなると思っていた…その矢先、俺の予想を裏切るような攻撃が放たれた。

 

『UWoooooo!!』

 

右中白腕に持つ細剣を空に掲げた次には、それを突き刺すかのように剣先をこちらへと向けたかと思った矢先だった。

 

「なぁ…?!」「嘘…!?」

 

細剣を起点に、無数の風の刺突が飛んできたのだ!?細剣の大きさに比例した、巨大な棘のような攻撃に、慌てて回避に移る俺とフィリア…フィリアはその俊敏性でなんとか回避することができた。だが、俺は少女を背負っていたのもあり、全てを回避することができなかった。少女を庇ったことで、巨針が右脇腹を掠り、大きくHPが削られた。

 

「フォン!?」

 

「大丈夫だ?!次、くるぞ!」

 

掠めた衝撃で、後方へと吹き飛ばされそうになる。なんとか、衝撃を逃がし着地するも、思いの外、大きなダメ―ジに視界が一瞬ふらつく。俺が被弾したことに、フィリアが心配の声を上げるも、無理矢理意識を集中させ、次の攻撃に備える。

 

案の定、奴は再び大技を繰り出そうと…今度は左下白腕に持つ両手斧を叩きつけるように振り下ろした!その一撃を起点に、五つの巨大な斬撃波が地面を伝ってきた!

 

今度はシンプルな攻撃だったので、その場から左右に移動するだけで回避できたが、次の攻撃が問題だった。右上黒腕に持つ棍棒に雷が落ち、それを振り下ろそうとしたのが見え、俺たちの頭に警鐘が鳴り響く!

 

「捕まって!」

 

「えっ…うぉ?!」

 

フィリアはすぐさまその場から飛びのいたが、俺は連続の回避行動が祟り、反応が遅れてしまい…マズいと思ったのと同時に、すぐ近くからそんな声が聞こえ、俺の身体は無理矢理上空へと引っ張られた!

 

「お願い、何か回復アイテムを!」

 

「っ…ああ!」

 

それが肩を背負っていた少女のお陰だと理解するのに時間は必要なかった。棍棒が振り下ろされた地面は稲妻が走り、もしもあのまま入ればダメージを喰らっていたことは確実だっただろう。

 

着地と同時に少女がそんな要望を告げてきた…正体が分からないまでも、今、この状況で、自分を助けてくれた彼女を直感に従い信じ、俺はすぐさまポーチにしまっていた、オブジュエクト化していた回復結晶を取り出し、彼女に使う!

 

「よし、これで戦える!ねぇ、何か武器はないの!できたら、両手剣みたいな奴!」

 

「悪いが、両手剣は品切れ中!あるのは片手剣と片手棍くらいだ!」

 

「ううぅ…どっちもあたしの好みじゃないかなぁ…」

 

「好き好みを言ってる場合じゃないだろう…?!」

 

回復結晶の効果で、欠損していた両腕が復活したことで、ファンティングポーズをとる少女。だが、次の瞬間、俺に武器はないのかと尋ねてきたと思えば、気に入った武器がないことに落胆する様を全く隠そうとしない…この状況に反したマイペースな反応に、俺は思わず突っ込んでしまった。

 

「フォン、前!」

 

「「っ?!」」

 

フィリアの叫びに、俺と少女は再び意識をボスへと向ける。すると、視界に飛び込んできたのは、両手剣と短剣を無造作に振り回す光景だった。もちろん、意味もなく振り回しておらず…飛ぶ斬撃が俺たちに襲い掛かってきた。

 

スピードは速いが、避けられないものではない…そう思っていた油断を突くように、まさかの事態が起こる。

 

飛ぶ斬撃のいくつかが地面や壁にぶつかった直後、更に三つに分裂したのだ!

 

「もう…なんでもありじゃない!?」

 

咄嗟に短剣を抜き、分化した小斬撃を弾く。同じく弾いて対処するフィリアの悲鳴に同意したかったが、防戦一方の展開に、このままではじり貧になることは目に見えていた。

 

そして、まだその能力を見せていなかった槍を奴が振り下ろした時だった。

 

「うぉ…!?」「えぇ…?!」「うわぁ!?」

 

鈍い音と共に、俺たちの身体がいきなり浮かび上がったのだ。突然のことに、反応ができずに、俺たちは宙に浮いたまま、うまく身動きが取れないでいた。

 

(まさか…フィールド全体を無重力にしたのか!?)

 

水の中にいるような、奇妙な浮遊感の正体に、フィールドの環境から重力を失くしたのだと悟り、俺は思わず驚く。早く翅を展開して、飛行して移動できるようにしなければならないのだが、驚きのあまり、反応するのが一手遅れてしまった。

 

 

身動きが取れなくなっている俺たちに再び両手剣と短剣による飛ぶ斬撃が迫ろうと…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はああああああああぁぁぁ!!」

 

突風…まさしく無重力の中に吹き込んだ風が俺の背中を追い越し、その刃を咆哮と共に振るった。俺に迫っていた斬撃を全て弾いたその人物…金色のポニーテールと緑衣の恰好をしたその姿を前に、俺は思わず彼女の名を呼んだ。

 

「リーファ?!なんで…!」

 

「アハハ、まぁ、色々と…それに来たのは私だけじゃないですよ!」

 

「えっ…?」

 

その言葉の真意が理解できずに、思わず呆けた声が出た時だった。

 

更に俺の背中を追い越すように、二つの閃光が走った。光のレーザーと、超高速の矢が寸分違わずボスの眉間に直撃し、その巨体を怯ませた!

 

「また、これは…面倒くさい状況になっておるようじゃな」

 

「まぁ、あんたやキリトが絡む時は大体そうだから、もう慣れっこだけどね」

 

「っ…カナデ、シノン!?どうやってここに…!」

 

「三人だけじゃないよ、フォン」

 

「私たちも忘れんじゃないわよ!」

 

エリアの入り口から放ったのだろう…光属性高位魔法『ディバイン・レイ』と弓最上位重単発ソードスキル〈ストライク・ノヴァ〉を放ち終え、魔法杖と弓を構えているカナデとシノンの姿を目にし、更に驚く。

 

だが、驚きはまだ続く。下から聞こえてきたに視線を向けると…翅を展開して、こちらへと高度を合わせてきたユージオとリズの姿が目に入った。

 

「…大丈夫ですか、フィリアさん」

 

「あ、ありがとう…えっと、アリスさんですよね?」

 

「ええ、間に合ってよかったです」

 

そして、フィリアの方へと視線を向けると、両手剣『オレンジナル・オリーブ』を抜いたアリスがフィリアを守るように跳んでいた。どうやら、フィリアへの斬撃をアリスが防いでくれたらしい。

 

「な、なんでみんながここに…」

 

「担当のデイリーダンジョンに異常がないことを確認して、一度ログハウスの方に戻ったんだよ。けど、フォンたちだけが戻ってこなかったから、もしかしたら、アタリを引いたんじゃないかってことで、全員で駆け付けたんだよ」

 

「それで、私たちが先行してここに来たわけです。お兄ちゃんたちは、前のフロアにいたボスたちを足止めしてくれて、その間に来たんです」

 

「そしたら、いきなり空間が変な感じになって…あんたたちがピンチの時に駆け付けたってことよ」

 

突然の展開に理解が追いつかず、俺が口にした疑問に、ユージオ、リーファ、リズが次々と答えてくれる。どうやら、俺たちの帰還が遅いことが心配で来てくれたらしい。

 

その言葉に思わず笑みが零れ、それに釣られてリーファたちも笑みを浮かべる。だが、安堵したのも束の間で…

 

「気を抜けられるのもそれまでじゃ。フォン、これはどういう状況じゃ」

 

「…フェイカーを一度は撃破した。けど、フェイカーはどうやら、この女の子の身体を乗っ取って、プレイヤーとして活動していたらしい。あの巨大なボスは、フェイカーがホロウ・エリアのデータを取り込んで、巨大化したもの…だと思う」

 

「…本当に厄介なことになってるわけね。というか、フォン…またあんた女の子を拾ってきたの?」

 

「誤解を招く発言をするな、シノン。それと、俺とフィリアはレゾナンスの影響で、すぐには戦線に参加できない。おまけに、俺は武器をいくつか破損してて、あとはこの短剣と片手棍と片手剣しかない上に、後者二つは耐久度が怪しい」

 

「なるほどね。つまりあんたは今回碌な戦力としてはカウントできないってことね」

 

「…そして、あいつを倒さないと大変なことになる…それだけは確かだってことだね」

 

こちらへと合流してきたカナデの問いに、俺は手短に何があったのかを皆に告げる。途中で、シノンが茶化すように、どこか呆れたようにそんなことを言ったが、状況が状況だったので、冷静に受け流し、俺とフィリアはすぐには戦えないことを告げた。不明な部分も多かっただろうが、今は目の前のボスたちをなんとかするべきだということは理解したらしく、リズとユージオからそんな返事が返ってきた。

 

「リズ、なんでもいい。両手剣か何か持ってないか?」

 

「えっ…試作品レベルでいいのならあるけど。あんたが使うの?」

 

「いや、俺じゃなくって…そっちの娘に貸してやってほしいんだ。両手剣が得意らしい」

 

「ふーん……まぁ、あいつ相手には一人でも戦力は多い方がいいわよね。ちょっと待ってなさい………はい。ぶっ壊したら、承知しないからね」

 

「…!あ、ありがとう!もちろんだよ!」

 

そして、もしかしたらと思い、俺はリズに両手剣を持っていないかを尋ねる。何かしら商品用として持っているのではないかと思って尋ねたのだが、どうやらその考えは当たっていたらしく、俺が少女に使わせてほしいと告げると、リズも彼女の方へと視線を向ける。

 

数秒…彼女を見極めるように見たと思えば、お眼鏡に適ったのか、ストレージから両手剣を取り出し、少女へと放り投げた。それを大事そうに受け止め、すぐさま刃を抜いた少女の目にはやる気が満ちていた。

 

「さて…なら、始めましょうか!」

 

リーファの掛け声に、一同が戦闘体勢を取り、各自が思うがままに散った。

 

「奴の攻撃は口から放つレーザーに、六つの武器とそれぞれの武器に秘められた特殊攻撃だ!シノンは遠距離から奴の急所を攻撃してくれ!リーファは遊撃しつつ、奴の攻撃を引き付けてくれ!リズ、ユージオ、アリス、隙を見つけ次第、突っ込んで攻撃するんだ。カナデは魔法でみんなのフォローを!」

 

いつも指揮を取ってくれているアスナが不在で、しかも、奴の攻撃を一番見ているのが俺なので、一時的に代役ではあるが、後方からみんなに指示を飛ばす。そして、

 

「えっと、それで君は…」

 

「…あー、名前をまだ教えてなかったっけ。えっと…とりあえず、ストレアって呼んで。それが一応は名前だから」

 

「…?分かった、ストレア。君は、タンクとして、リーファと同じように遊撃を頼む。隙を見つけ次第、攻撃に参加してくれて構わない」

 

「了解!じゃあ、行ってくるね!」

 

マイペースというか、独特の雰囲気の話し方に少し気圧されつつも、俺の指示に少女…ストレアと名乗った彼女も戦線に向かっていた。

 

「……フォン」

 

「カナデ、誤解をしてそうだけど、別に彼女とは「そうではないわ」…えっ?」

 

「少し気になることがあってのう…いや、その話は終わってからじゃな。わしも行ってくる。もう少ししたら、ユウキたちも来るはずじゃから、お主らは大人しく休んでおれ」

 

そして、カナデの真剣な呼びかけに、俺は誤解だと言おうとして、言葉を憚られた。カナデの言う気になることが何かを問おうとする間もなく、彼女も戦線へと向かってしまった。

 

「…みんなが来てくれて、助かったね」

 

「…ああ(カナデ、何を言い掛けたんだ?)」

 

こちらへと合流したフィリアの言葉に半ば上の空で答えつつ、カナデの言い掛けたことが気になったが、今は少しでも戦線に復帰できるよう、俺は身体を休めるのだった。

 

「アリス、いくよ!」

 

「とちったら承知しないわよ、ユージオ!」

 

リーファたち7人に戦線が切り替わり、ボスのタゲも彼らに移るも…ボスはこれまでの一方的な攻めはできないでいた。

 

リーファが得意な飛行でボスのタゲを取りながら、動きを攪乱し、それをカナデが魔法で支援しているのだ。飛行技術では俺たちの中で断トツのリーファを、魔法で援護される中、捉えることはそう簡単な話ではない。

 

さらに、ストレアがボスのヘイト集めるべく、攻撃を仕掛けたり、バトルスキルを使っているので、ボスのタゲが時折ズレるのも大きかった。

 

そこにシノンの遠距離が加わり、隙が生まれたところをユージオとアリスのコンビが見事な連携で直撃を加えていくのだ。

 

「レジェンダリーウェポンの威力を味わいなさい!」

 

更にダメ押しとばかりに、リズがミョルニルで雷撃を落としていくのだから…まぁ、エゲツない。遠慮なしの猛攻を前に、ボスはただただ攻撃を受け続けていくだけになる。

 

俺が後方から武器の特殊攻撃の種類を告げているのもあるのだろうが…それにしても、

 

「…やっぱりあの時と比べると、どうにも弱いな」

 

「弱いって…いやいや、あれはあれでホロウ・エリアのエリアボスくらいの強さはあるでしょう?」

 

「…いや、確かにそうなんだけどさ。どうにも動きが単調というか」

 

こうして後方から指示や合図を送っていることもあって、戦場の動きを見ることができたのが…オーディナル・スケールで対峙した本来のアインクラッド100層のボスと比べると、あのフェイカーが変貌したボスは動きが単調すぎるのだ。

 

もちろん、ALOでも上位に位置するリーファ、シノン、リズに、修羅場の濃さという意味では圧倒的な経験値を持つカナデ、ユージオ、アリスに、助っ人のストレアと対峙しているとはいえ、こうも一方的な戦況になるとは思えないのだ。

 

俺の言葉にフィリアが目を丸くしていたが、俺がどうにも違和感を感じられずにはいらなかった。だが、そんな俺の考えとは別に戦いはどんどんと進んでいき、

 

「よし、これで…あと4本!」

 

アリスとストレアがボスの両手剣を捌いた隙を狙い、ユージオが放った片手剣4連撃ソードスキル〈ホリゾンタル・スクエア〉によって6本あったHPが残り4本となった。

 

このまま後続のユウキたちが来れば、押し込める…そう思った矢先、戦場の空気が変わった。

 

「っ…?!これは…まさか!」

 

何かに気付いたカナデが驚きの声を上げる…すると、ボスの巨体に幾何学模様…フェイカーが大剣に何かを読み取らせていた時のと同じ、電子記号のようなものがボスの巨体からエリア全体に走り…

 

『『『『『『『……!!』』』』』』』

 

「…!何あれ…?増援…!」

 

「ちょっと待って…何か見覚えが…」

 

「…っ!あの女の子たち、ユイちゃんに似てませんか?!」

 

ボスの周囲に七つのシステムエフェクトが現れ、光と共に7人のプレイヤーが姿を現わしたのだ。

 

突然の増援にリズが驚くも、シノンはプレイヤーたちの姿に既視感を覚え、リーファがその答えを口にした。少し背が高く、頭に悪魔の角のようなものを二本生やした薄桃色の髪をしているが…確かに、どこかユイちゃんの面影があるのだ。

 

「…彼女たちはアインクラッドに元々いたメンタルカウセリングプログラム…通称MHCPシリーズと呼ばれていた子たち…そのNo.3から9よ」

 

「っ…!やはりか。ということは、お主も…」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

ストレアの告げた説明に俺たちは目を丸くする中、確信を持ったかのようなカナデの問い掛けに、ストレアは悲しさに目を逸らしていた。

 

「話は後です、来ます!」

 

どうやらストレアには彼女なりの事情があるらしい…だが、それを聞いてる時間はないらしく、ユージオの警告通り、少女たちはユージオたち目掛けて接近しようと…

 

『UWoooooo!!』

 

「「「「「「「「「…?!」」」」」」」」」

 

その前に、ボスが槍を掲げ、再びエリアの空間状況を変更した。飛行していたにも関わらず、俺たち全員が無理矢理地面へと落とされる!

 

「…なぁ、飛行禁止!?そんな能力ありなのぉ?!」

 

「悪い、言い忘れた!槍の効果は重力といった空間操作っぽい!」

 

「そういう大事なことは早く言って…っ?!このぉ!」

 

地面に叩きつけられることはなかったが、無理矢理地上戦に移行させられ、さっきまで出せれていた翅が具現化できなくなったことにリーファが驚愕していた。

 

一方で、そういえば、槍の能力だけ説明をしていなかったなと…忘れていたことを謝罪するのと同時に説明するため叫ぶと、アリスから抗議の声が…同じく地上戦に移行した少女の攻撃を受け止めることで遮られた…いや、本当にゴメン。

 

「っ…?!全員回避しろ!」

 

「「「「「「「…!?」」」」」」」

 

そんなやんわりしたやりとりが吹っ飛ぶ事態が俺の目に飛び込み、そのまま警告の叫びを全力で声にする!その言葉に、少女たちと対峙していたリズたちも事態に気付き、すぐさまその場から退避しようと…

 

次の瞬間、ボスが少女たちがいることもお構いなく、6つの武器を一斉に戦場へと振り落としたのだ!

 

「リズ、みんな!?」

 

「っ…!こやつ!」

 

後方で魔法支援に徹していたカナデは射程圏外にいたおかげで巻き込まれなかったが、少女に接近戦を強いられていたシノンの位置まで剣戟が振り下ろされていた。

 

土煙の影響で全員の安否が確認できない…なのに、ボスは追撃と言わんばかりに再び六腕を振るおうとしていて…そうはさせまいと、カナデが高速詠唱にて魔法を発動させた。火属性高位魔法『メテオ・エクスプロージョン』による隕石がボスの頭上にクリーンヒットし、ノックバックと共に怯んだ!

 

「…あ、危なぁ…!フォンが警告してくれなかったら、ヤバかったわ…」

 

「まさか、味方ごと攻撃してくるなんて…!」

 

「…そして、敵の増援はほぼ無敵とは…これはかなり骨が折れそうですね」

 

ボスの追撃が止まったことで難を逃れた面々が土埃から飛び出してきた。リズが焦った声で告げる言葉に、ユージオも少しばかり怒りの混じった言葉で同意した。

 

逆にストレアを抱える形で退避していたアリスの言葉を裏付けるように、ユイちゃんによく似た女性型モンスターたちは、まるで影と泥が混合したような性質を持っているのか、ボスの弩撃によって崩れた身体が再生し始めていた。

 

ステータスも相応に高い上に、ほぼ無敵属性という性質は…また厄介な能力だ。

 

「…フォン、このままじゃ…!」

 

「じり貧な上に、物量的に押し負ける……このままならな」

 

「…えっ?」

 

「…だよな、ユウキ」

 

「もちのロンだよ、フォン!」

 

無差別攻撃に、ボスの6本の腕と7体の人型プレイヤーという物量攻撃に、リズたちがピンチだとフィリアが訴えるも、俺はそこまで心配していなかった。むしろ、そろそろ来る頃ではないかと思っていた矢先に、彼女の気配を覚え、そう呼びかけると…自信の籠った声が返ってきた。

 

…うちのエースメンバーが集結しているのだ。俺とフィリアが撃破してきたボスたちに対し、あの面々が手こずるわけがなかった。

 

「…こいつ、SAO100層のボスか!なんで…」

 

「あれが100層のラスボス…倒し甲斐がありそうね!」

 

「上等だ!また刀の錆にしてやるぜぇ!」

 

「おいおい、またこいつとやりあうのか…骨が折れそうだな」

 

「でも、やるしかないですよ!」

 

「そうね…それに、みんなが一緒なら勝てない相手じゃないわ!」

 

「その意気だぜ、アーちゃん!ということで、シグ、ヨロシク!」

 

「はぁ…本当に人遣いが荒い相棒だな…任された」

 

「遅くなってゴメン、これで全員集合だね!」

 

以前、オーディナル・スケールの最終決戦にて対峙したこともあり、フェイカーが変身したボスの巨体に驚くキリトの言葉に、その姿を初めて目にし情報を知ったミトは逆にやる気の炎がついたようだった。

 

以前に撃破したこともあり、余裕を見せるクラインの横で、苦戦させられたことが呼びかえったらしいエギルさんの苦言が零れる。

 

それでも、やるしかないと告げるシリカの言葉にアスナが力強く同意し、それに続くようにアルゴさんの任せたコールに、シグさんがやれやれといった様子で答えながら、増援組の先駆けを務めるように、戦場に飛び込んでいった。

 

そして…一同と共に来たユウキの言葉に、俺は肩を竦めながら応える。

 

「いや、来てくれただけ助かるよ。みんな、ボスが持ってる武器全てに特殊効果ありで、ユージオたちが戦ってる女性型プレイヤーは攻撃すれば一旦身動きを止めることができるが、ほとんど不死身だ!アスナ、全員への指示出しを頼む!」

 

「了解!リズたちと一緒にいるあのプレイヤーは味方という認識でいいのよね?」

 

時間がそうないため、簡単な情報伝達だけをし、全体指示をアスナに託す。ここまでアタッカーがいるのだから、アスナが飛び出すことはないだろう(というか、ないと信じたい。バーサクヒーラーの悪癖を発動させなければ…)。

 

「ああ、今のところは大丈夫だ!さてと…なら、俺たちもそろそろ行くか」

 

「…そうだね。見てるだけはもう充分だしね」

 

「エヘヘ…よし、行こう!」

 

そして、俺の疲労も大方回復し…ほぼほぼ動けるようになったことで、アイコンタクトでフィリアへと確認すると、頼もしい返事が返ってきた。互いの獲物である短剣を抜き、それに合わせ、ユウキも片手剣『女神の剣 イシスフィテル』を抜いた。

 

「ユウキ、キリトたちと一緒にボスの方を頼む!フィリア、俺たちはあの人型たちを足止めするぞ、援護頼む!」

 

「任せて!」「うん!」

 

ユウキにはボスへの攻撃を頼み、俺とフィリアは乱戦と化している地上戦へと飛び込んだ!

 

「っ!フォン」

 

「ここは任せろ、ユージオ!アリス、シノンと一緒にボスの攻撃へと回ってくれ!」

 

「…分かった、気を付けて!」

 

人型モンスター二体を相手取っていたユージオとの間に割り入る形で入れ替わり、俺は交代する。相手が再生持ちのほぼ不死身である以上、一刻も早くボスを倒すしかない。

 

両手斧と曲刀を持つ人型モンスターを前に、俺は意識を相手へと向けるのだった。

 

 

 

「さてと…暴れるわよ!」

 

その言葉と共に戦場に金属音が響き渡る。連続した金属音が連なる毎にボスの巨体へと小さいながら、無数のダメージエフェクトが走っていく。移動しながら、不規則な軌道を描くように放たれるミトによる鎖鎌の乱舞によるものだった

 

それを皮切りに、アタッカー組が猛攻を仕掛けていく!

 

「ユージオ、アリス、突っ込め!援護する!」

 

「「了解!」」

 

急速に迫ってきた面々を相手に、ボスは再び飛ぶ斬撃と刺突を、両手剣・短剣・細剣で繰り出すことで迎撃を図る。しかし、その巨体ゆえに大振りであることが災いした。

 

驚異的な反射神経を持つキリトには、攻撃モーションを当然、飛んでくる斬撃全ての軌道を簡単に見切ることなどの容易いことだった。二本の両手剣…『聖剣エクスキャリバー』と『ユナイティウォークス』により放たれた二刀流9連撃OSS〈インフェルノ・レイド〉により、進行ルートで邪魔になる斬撃を全て叩き落としていた。

 

その突破口を駆け抜け、肉薄したユージオとアリスが強力な一撃を叩き込む!

 

「サベージ・フルクラム!」「ライトニング!」

 

片手剣重3連撃ソードスキル〈サベージ・フルクラム〉と両手剣4連撃範囲ソードスキル〈ライトニング〉による重撃がボスの巨体へとクリーンヒットする。だが、

 

「…!鈍い…部位によってダメージが異なるのか!」

 

「だったら…飛べばいいだけぜ、エギル!」

 

「いくぞ、クライン!」

 

自身の新たなる愛剣『スノーホワイト・ティア』による重撃がクリーンヒットしたにも関わらず、先程とは異なり僅かにしか減ってないHPを目にし、ユージオがそんな言葉を零す。

 

ならばと、クラインが何かを思いついたようにエギルへと合図し…エギルが苦笑いしつつ、自身の両手斧を大きく構えた。クラインの思考を理解したが上の行動だったが、クラインはエギルへと向かって跳躍し、

 

「どっせぇい!!」

 

「一刀両断、ってな!」

 

両手斧の上に飛び乗り、エギルの気合と共にクラインがボスの顔面目掛けて打ちだされる!その勢いのままに納刀していた刀へと手を掛け、ソードスキルにて抜刀術を放つ!刀単発ソードスキル〈絶空〉による一撃がボスの顔面に斬撃と共に属性効果による炎の軌跡を残す。

 

「見たかよ、俺のファインプレ、ぐげぇ?!」

 

言葉通り、ボスに大ダメージを与えたことで落下しながら決め台詞を放とうとした最中、タゲに取られたことで、ボスの目から繰り出されたレーザーにて地面に叩きつけられたことで、その台詞が最後まで言い終わることはなかった。

 

油断していたところに、もろに反撃をくらい、地面に叩きつけられたクラインに止めを刺そうと、ボスが両手斧を振り被ろうと…

 

 

「しののん!カナデさん!」

 

「ったく、世話が焼けるわね!」「既に詠唱は完了しておる!」

 

「…ミト!」

 

「任せな、さい!!」

 

だが、既にその状況を予測していたアスナの指示に沿って、弓を素早くつがえるシノンと予期していたカナデが高威力魔法を放つ!〈ストライク・ノヴァ〉が両手斧を持っていた右下腕を貫きその軌道を変え、闇属性上級魔法〈アビス・ディメンジョン〉が視界を塞ぎながらボスのHPを削る!

 

その隙にミトがダウンしていたクラインを回収する。1人では引っ張るのが難しかったため、遅れてフォローに回ったシリカも一緒になってクラインを引っ張っていく。

 

「あと頼んでいい?私はこのまま前線に戻るわ!」

 

「はい、任せください!」

 

一旦、安全圏内にまで退避したところで、シリカにクラインのことを託し、ミトは前線へと戻っていく。とりあえず、HPが大きく減ったクラインを回復させようと、シリカはハイポーションを取り出した。

 

「クラインさん、ハイポーションです」

 

「いつっ、サンキュー…っ!シリカ、後ろだ?!」

 

「っ?!」

 

だが、その一瞬の隙を狙い、シリカの背後へと迫っていた人型プレイヤーの存在に気付いたクラインが叫ぶも遅かった。相棒のピナも迎撃のブレスが間に合わず、持っていた細剣の刃がシリカに突き刺さろうと、

 

『…?!』

 

した瞬間、人型プレイヤーが突如として吹き飛んだ!反応する間もなく、横っ飛びに吹っ飛んだその姿に、シリカもクラインも目を丸くするしかなかった。

 

「…早く回復を。こいつの相手は僕が引き受けるよ」

 

「し、シグさん…は、はい!」

 

突如として姿を露わにしたその人物…抜刀術によって、少し離れた場所からすぐさま駆け付けたシグの刀の一撃によって、人型プレイヤーが吹き飛ばされたのだ。

 

シグの言葉に慌ててハイポーションを渡すシリカと、回復を急ぐクライン。その間に、吹き飛ばされた人型プレイヤーは既に体勢を立て直していて…

 

「不死属性か…ある意味では恐怖を持たない人形ってところか。けど…」

 

「っ…!きえ…」

 

そう静かに呟いた思った矢先、シグの姿が再び消えた。見失ったことにシリカが驚きの声を出したのと同じタイミングで…

 

『…!?』

 

「それじゃ僕の技は防げない。お前の相手は僕だ」

 

続けての抜刀術ですれ違うように首を斬り落とし、シグは人型モンスターの相手をし始めた。

 

 

 

「こいつら、いい加減にしなさいよ!」

 

「リズ、焦ったら駄目だよ。よっと!」

 

リズと合流し、人型モンスター三体と対峙するフィリアが冷静になるように促しながら、槍で攻撃してきた一体の攻撃を躱し、反撃の一撃を繰り出していた。

 

「そりゃそうだけど…焦るなって言うのも分かるけど…あれを見てるとね」

 

「…ねぇ、冷静に言ってるけど、あれって普通なの?」

 

戦闘の最中というのに、どこか呆れと冷めた感情が入り混じった半眼を向けるリズの視線の向こう側…それに釣られ、思わず尋ねてしまったフィリアの問い掛けに、リズは溜息を吐いて首を横に振った。

 

「そんなわけないでしょ。あれは、あの馬鹿が異常なのよ。あんな超人プレイ、誰でもできると思ったら、十分毒されてるわよ」

 

「だ、だよね…」

 

同意を得たことでどこかホッとしたフィリア…それも無理はない話だった。少し離れたところで、フォンが一人で三人の人型モンスターと対峙していたからだ。

 

二体から三体へと数が増えたことに伴ない、短剣だけでは攻撃を捌き切れないと判断し、片手剣『アサルト・サヴァイブ』を改めてオブジェクト化し、左手に手にして三体を相手取っていた。

 

敵が両手斧と曲刀を持っている二体に対し、そこに両手剣を武器とする相手も加わったことでフォンが防衛一方になるかと思い、フォローに入ろうとしたフィリアだったが…一瞬の間に飛んできたアイコンタクトで大丈夫だと告げられ、リズと共に他の三体を相手取っていた。

 

数の差や片手剣の耐久値が宜しくない状況をも物ともせず互角に…いや、むしろ圧倒するフォンの攻めぶりに、フィリアは驚きつつも、どこか納得してしまう自分がいた。

 

背後から迫ってくる攻撃を見えていないにも関わらず躱し、その返しとして片手剣で斬りつけ、両手斧の一撃を短剣で逸らし、逆に両手剣の軌道へと誘導し相殺させて、ノックバックを起こした二体にすかさず蹴りを叩き込むなど…見る者の目を奪ってしまうその戦いぶりは、まるで演舞を見ているようなものだった。

 

(…ボスのHPは……あと1本を切ったか!もう少し凌げれれば…)

 

三体との攻防をこなしながら、戦況の行く末を確認する余裕さえも持つフォン…ユウキの攻撃によって、ボスのHPがラスト1本を切ったことを確認し、少しばかり安堵しようとした時だった。

 

…それは突如として起こった。

 

「…!ママ、何かが来ます!」

 

「全員警戒して!!」

 

ボスの動きがおかしいことに気付いたユイの言葉に、アスナがすぐさま大声で警戒するよう告げるも、予想外の攻撃が一同に降り注いだ!

 

なんと、ボスの全身から黒い触手が無数飛び出してきたのだ。

 

『…!?』

 

接近していたアタッカー組は当然、人型モンスターたちを相手取っていたフォンたち、そして、バックアップとして支援や援護に徹していたアスナたちのところにまで触手が襲い掛かってきていた。

 

「っ…!(なんだ、この触手…!何がしたいんだ…?!)」

 

攻撃のようで、動作がそれらしくない触手の行動に、フォンは違和感を覚えていた。短剣と片手剣とで斬り捌いていきながら、その動きを観察し続けていると…

 

(何かを…狙ってる?)

 

捌きながら、その触手の動きの違和感の正体を探っていると…触手の攻撃が少しばかり集中しているメンバーがいたのに、フォンは気付いた。

 

アスナ、ユージオ、アリス、そして、カナデに他のメンバーよりも多くの数が集中していたのだ。アスナは持ち前の神速の剣捌きにて、ユージオとアリスは互いをカバーすることで触手の攻撃を防いでいたが、カナデは回避するのがようやくの状況だった。

 

猫妖精族の俊敏性をもってしても、いかんせん迫ってくる触手の数が多過ぎるのだ。近くにいるアスナとシノンもカバーに入る余地がなく、カナデがどんどんと孤立していく。

 

(マズい、カナデのフォローを…?!)

 

事態に気付き、フォンが駆け出すも…それよりも早く触手の群体がカナデに迫っていた!それらを並走しながら斬り飛ばしていくフォンだが、

 

「(くそっ、間に合わない!?)…カナデェ?!」

 

ほとんどを斬り飛ばしたが、1本だけ斬り損ねてしまい、それが異常な軌道を描き剣の範囲から逃げる。そして、余裕がないカナデに迫り…それを目にしたフォンはカナデの背中を守るように飛び出した。

 

…その直後、触手がフォンの身体を貫いた。

 

「…!フォン?!」

 

「…ぅぅ…」

 

フォンを貫いた勢いで、そのままフォンの身体を触手が吹き飛ばす。フォンの叫び声で事態を察するカナデだが、吹っ飛ばされたフォンを受け止めようとして、そのまま圧し潰されてしまう。

 

体格差のせいで受け止めれきなかったフォンに呼びかけるカナデだが…ダメージの影響で、フォンはすぐに動けずにいた。そして、その隙を見逃さずに触手たちが二人に迫ろうと…

 

…キン…!

 

「…刹那五月雨撃」

 

「ほれ、さっさと起きろ、フォン坊!」

 

「ぬぎゃ…!」

 

その技名の通り、刹那に7連撃を放った高速斬撃の前に、触手たちはポリゴンと変わった。いつの間にフォンたちの近くに…いや、技を放った動作すらも見えなかったシグが二人を庇うように立っていた。

 

それに追従するように現れたアルゴが、ハイポーションをフォンに顔にぶっかけた。緊急時とはいえ、手荒な対応にフォンが奇妙な声を上げ、カナデは目を丸くしていた。

 

「アルゴ、二人のフォローを頼む。さてと…ここから先は通さない、とだけ言っておこうか」

 

刀身を顔の位置にまで掲げるような形で構えたシグは、その言葉と共にフォンたちに迫りつつある触手を迎撃し始めた。

 

 

 

「キリト君、このままじゃみんながもたない!」

 

「…ああ!一気に仕留める!アスナ、作戦と指揮の構築を頼む!みんな、いつでも動けるように、俺の近くに集まってくれ!」

 

一方で、ボスの攻撃は止まっていたが、触手の乱舞とそれに身を削られようとも攻勢を仕掛けてくる人型モンスターたちの前に、キリトたちは防戦を強いられていた。

 

いつまでもこの状況では全員がもたないと判断したアスナの声に、キリトは即座に判断を下す。

 

アスナが短時間で策を練ってくれると信じ、キリトの号令によって他のメンバーが集まり、リズ、シノン、シリカがアスナのフォローに回った。数十秒の間に、今いるメンバーと、できることを基にアスナが頭の中で立てた策は、

 

「…一点突破!火力を集中させるわ!みんな、作戦を伝えるから、一回で頭に叩き込んで!?」

 

「一回で理解できるように説明してくれよな、アスナ!」

 

「泣き言はなし!いい………」

 

結論を口にしたアスナに、全員が思わず苦笑いを浮かべる。この攻防の中で一回で作戦を理解しろというアスナに、クラインが冗談交じりの抗議の声を上げるも、一蹴したアスナが作戦を伝える。それを聞いたミトは…

 

「…本当に。昔の防御ばっかり考えていたアスナはどこにいったのかしら」

 

そんなことを思わず口にしてしまっていた。よく言えば大胆、悪く言えば脳筋…だが、今の状況としてはある意味で最適解と思えるのと同時に、ミトは苦笑を隠せないでいた。あの慎重なアスナはどこに言ったのかと懐かしんだのは内緒だ。

 

「それじゃ、いくわよ……ゴー!!」

 

その言葉と共に、一同が作戦通りに散り、動いていく。まずはリーファとシノンが、風魔法と弓ソードスキルで無理矢理進路を切り開く!風魔法〈タイラント・ハリケーン〉と弓広範囲ソードスキル〈スターダスト・エクサ〉が迫りくる触手たちを打ち払う。

 

「ユージオ君!アリス!」

 

「「了解!」」

 

だが、風魔法で微塵にされ、天から降り注ぐ矢の雨に撃ち抜かれようと、ボスの巨体から次々と新たな触手が生み出されていく。それを見通していたアスナが合図をすると、ユージオとアリスが飛び出し、範囲ソードスキルを発動させ、再び進路を無理矢理切り開く!

 

…アスナが考えた作戦は、文字通り一点突破…特攻することで、触手の攻撃を集中させることにより、軌道を限定させることで迎撃をしやすくするというものだった。主戦力のフォンと魔法戦力のカナデが離脱してしまっているこの状況下、ある意味では最適解だった。

 

「リズ、シリカちゃん、フィリアさん!」

 

「任せなさい!」「ピナ、ブレス!」「任せて!」

 

ただこの作戦にはちょっとした弱点があり…それはボスに近づけば近づくほどに触手の数が増し、そして、距離が近くなることで触手と接敵速度も上がる点だ。

 

今度はニョルニルを持つリズ、ピナとの連携攻撃ができるシリカ、隙間を縫って攻撃ができるフィリアが道を切り開く!

 

「…キリト君、ミト、それと……」

 

「ストレアだよ!よーし、いっくよー!!」

 

「お、おい!ったく…」

 

「遅れんじゃないわよ、キリト!とっちったら、許さないから!」

 

ボスの距離までもう少し…三度発生した触手の群体に、名前を把握できていなかったアスナの言葉を引き取り、ストレアが飛び出す!それに慌てて追従しようとしたキリトの前に、ミトが駆け出す。

 

女性二人の勇敢さに眉を顰めながら、キリトも愛剣二振りにライトエフェクトを宿らせ、自身の十八番を放つ!

 

「スターバースト・ストリーム!」「「いっけぇぇぇ!!」」

 

星の名を持つ16連撃ソードスキルが触手たちを斬り飛ばし、攻撃に集中するキリトを守るべく、ミトが鎖鎌を、ストレアが両手剣ソードスキルを繰り出す!キリトが作り出した僅かな隙間…そこに二人の影が見逃さずに飛び込む!

 

「ユウキ!」

 

「分かってる!」

 

アスナの言葉にユウキが必要最低限で応える!その二人の足場となるべく、クラインとエギルが両腕をクロスさせ…

 

「「いって、こい!!」」

 

タイミングよく跳躍したアスナとユウキが、クラインとエギルの補助を受け、更に高く跳び上がる。そして、左右の上腕へと着地した二人が駆け出そうと…

 

『…!?(ギュュュュン!!)』

 

「っ!?」「しまっ…?!」

 

だが、ボスの最後の抵抗が二人を襲う!ユウキの方へと視線を向けたと思った矢先、両目からレーザーを放ったのだ!持ち前の反射神経でなんとか躱したユウキだったが、アスナは回避こそできたものの、足を滑らせてしまった。

 

そのまま、腕から落ちてしまい、なんとか体勢を立て直そうとするアスナだったが、

 

「アスナ!」

 

「…!ミト!」

 

親友の危機に一番に反応したのは、ミトだった。鎖鎌を器用に操りながら、アスナの身体に巻き付けたミトはそのまま身体を回転させ…落ちようとしていたアスナをボスの顔面目掛けてぶん投げた!

 

だが、再び迫ってきたアスナをボスの視線が捕らえようと…

 

「しつこいのよぉ!!」

 

二度もアスナを狙われたこともあり、キレたミトが死角となっている顎を打ち上げるように、鎖鎌の柄頭で撃ち抜く!不意打ちの上に、クリーンヒットしたことで、ボスの視線が大きく上へとそれ、レーザーがあらぬ方向を打ち抜く。

 

「アスナ、ユウキ!決めちゃって!!」

 

「ありがとう、ミト!ユウキ、決めるよ!」

 

「オッケー、姉ちゃん!」

 

ミトの一撃により、完全に無防備と化したボスの頭部を前に、上腕から頭部のてっぺんへと至り、そこから勢いをつけるために大きく上へと跳んだユウキと、顔面に迫ったアスナの、片手剣と細剣に同じ色のライトエフェクトが宿り、それを解放するのと同時に、二人の剣技が重なる!

 

左斜め上から横十字を描くように放つ10連突き…その中心を突き飛ばすように、二人のOSS…ユウキが編み出し、アスナへと継承された絶技がボスのHPを吹き飛ばす!

 

「「マザーズ・ロザリオ!!!」」

 

片手剣11連撃OSS〈マザーズ・ロザリオ〉の最後の一撃…重なり合った二つの一撃が、ボスの頭のてっぺんと真正面それぞれに突き刺さり、頭に罅が入る。それを更に押し込む二人の気合に連動したかのように、僅かに残っていたHPバーが遂に尽きて…

 

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』

 

大きな音と共に、無言でボスの巨体が崩れ落ちた。

 

崩れ落ちるのと共に、ボスはポリゴンへと変わり、それと共に襲い掛かってきていた人型モンスターも泥のように崩れ落ち、フィールドに走っていた電子記号のような模様も消えていった。

 

「ふぅぅ…なんとかなったね」

 

「…流石は攻略の鬼。ちょっと気を失っている間に全部終わらせちまったよ」

 

ソードスキルの硬直にて、自由落下し始めたアスナとユウキ…キリトとエギルによって、キャッチされた後に、全てが終わったことに安堵したアスナの言葉と共に、皆が勝鬨を上げる中、意識を取り戻したフォンはそんなことを呟いていた。

 

…こうして、フェイカーとの最終決戦はフォンたち一行の勝利にて幕を閉じたのだった。

 

 




ユージオとアリスの新装備については、次回解説します。ちなみに、もちろん作ったのはフォンです(笑)

フェイカー戦後半となる、ラストバトル、いかがでしたでしょうか。
今回、フォンは出番控えめという感じのお話でした…まぁ、偶にはね(苦笑)

そして、ミトのフォローを受けてのアスナ・ユウキコンビでのフィニッシュとなりました。何を意識したかというのはもちろんあの映画なわけで…ある意味で、インフィニット・モーメントを意識したラストバトルとなりました。

次回は戦後処理という形のお話…そして、フォンがフィリアに自身の秘密を明かすわけで…それともう一つの影も…

お楽しみに!

キャラエピ第2段!どのキャラから見たいですか?(時系列の問題で多少前後することがあります)

  • リーファ
  • シノン
  • リズ
  • シリカ
  • ミト
  • ユイ
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