ソードアート・オンライン~夢幻の戦鬼~   作:wing//

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本選開始~シノンとの共闘までのお話になります。

前回のフラグが早くも回収されます。

それでは、どうぞ!


第6話 「デス・ガン」

「た、盾殺し!?」

「悪いが・・・落ちろ!」

本選開始から間もなく15分が経とうとしていた。森で遭遇したプレイヤーと交戦に入り、マシンガンの猛攻を盾で弾きながら、正面からショットガンをぶち込んだ。

 

「がぁ・・・!」

「・・・悪く思うなよ・・・」

 

至近距離から散弾を受けたプレイヤーは僅かだがHPを残したが大きく体勢を崩した。そんな相手に止めを刺すべく、俺はハンドガンで眉間を撃った。

 

「・・・ふぅ・・・さすがは本選。なかなか手ごわいな」

 

戦闘を終え、周囲に敵がいないことを確認してからスキャンが始まるのを待った。最初は森のど真ん中でスタートしてしまったため、方向が全く分からなかったのだ。

 

これでようやく森から脱出できる…そう考えていると、スキャンの時間になった。

 

(・・・結構、序盤から脱落者がいるんだな・・・シノンも生き残ってるみたいだな・・・問題のペイルライダーは・・・プレイヤーと交戦中か・・・・・あれ、キリトは?)

 

全プレイヤーの位置を確認し、大まか戦況を把握した・・・のだが、問題のキリトの姿がどこにも見当たらなかったのだ。

スキャン画面をくまなく探すも、どこにもいない・・・そうこうしているとスキャンが終了してしまった。

 

(これは・・・スキャンの範囲外にいるってことなのか?・・・ともかく今は・・・)

 

キリトの場所が分からなかったのは、誤算だが、とりあえずは第一目標のペイルライダーを追うべきだと思い、俺はその場所から移動を始めた。

 

 

 

(ここは鉄橋か・・・?誰かいるな)

ペイルライダーの移動方向から推測し、到着したのは鉄橋だった。気付かれないように、鉄橋から少し離れた茂みから様子を見ていた。鉄橋には、カウボーイ風の男が待ち伏せしているようだった。すると、反対側から全身迷彩カラーのラバースーツのプレイヤーがやってきた。

 

(あいつがペイルライダーか・・・)

 

すると、カウボーイがマシンガンをぶっ放した・・・のだが・・・

 

(うわぁ!・・・なんつぅ動きだよ!?三次元戦闘っていうか、アクロバティックだな・・・ああいうスキルもGGOにはあるのか・・・!すっごい興味ある!!!)

 

ペイルライダーの動きに思わず、見とれていた。思わず好奇心から、GGOのスキルに興味が沸いたが、すぐさま目的を思い出し、戦いを見続けた。ペイルライダーはそのままカウボーイを翻弄し続け、そのままショットガンで止めを刺した。確かに強い・・・けど・・・

 

(あいつじゃないな・・・とりあえず、ここを離れるか・・・)

 

そう思い、その場を後にしようとした時だった・・・

 

バタン・・・!

「えっ・・・っ!?」

 

聞こえてきた音に思わず視線を戻すと、ペイルライダーが倒れていた。

 

(…やられた!?誰に!?銃声は!?)

 

気配を消し、再び周りを索敵すると

 

・・・そこに奴はいた・・・

 

いや、正確には奴がいつの間に出現していた。

 

(・・・いつの間に!?・・・奴がやったのか?!)

 

いきなりの出来事になんとか状況を把握しようとする。だが、奴はそのまま倒れて動けないペイルライダーに近づいていった。

最悪のケースが頭に浮かんだ俺はハンドガンを構え、いつでも撃てるようにしていた。

 

ペイルライダーは動けないのか、さっきから微動だにしていなかった。奴はそのままペイルライダーの前に立つと黒いハンドガンを構えた。そのまま、目の前で十字を切るようなポーズを取った。

 

(っ!?マズイ!!!)

 

嫌な予感がした・・・バレることなどお構いなしに俺はすぐさまバレッド・サークルに集中し、ハンドガンを撃った。

 

バン!ドゴン!

「っ・・・!?(別方向から?!)」

 

別方向からの狙撃を奴は回避した。その影響で、俺の放った弾も躱されてしまった。

そのまま奴が狙撃の方向を見ていたので、目線を逸らすと・・・

 

(シノン!?キリトもか・・・!)

 

そこには、岩陰に隠れていたキリトとシノンがいた。そして、奴に視線を戻すと・・・

今度は俺を見ていた・・・そして・・・

 

「フッ・・・・・」

「っ・・・止めろ!!??」

 

奴が笑ったかのように見えた・・・俺は思わず叫びながら、ハンドガンを撃とうとしたが・・・

奴は黒いハンドガンでペイルライダーを撃った・・・その一撃でペイルライダーのHPが少しだけ減った。

 

すると、動けるようになったのか、ペイルライダーがすぐさま立ち上がり、反撃を・・・

 

「・・・・・・!?・・・!!!・・・・!?!?!」

 

・・・できなかった。ペイルライダーは胸を苦しそうに抑え、その場に倒れこんだ。そのまま、空中を手で掴み、緑のポリゴンに変わった・・・回線切断を表す《DISC ONNECTION》の文字が表示されていた。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

何が起こったのか、分からず言葉を失ってしまった。だが、奴は文字を踏みつぶしながら、銃をカメラに掲げた。

 

『俺と、この銃の、真の名は、デス・ガン・・・俺は、いつか、貴様らの前にも、現れる・・・そして、この銃で、本物の、死をもたらす・・・俺には、その力が、ある・・・・・

忘れるな・・・まだ、終わって、いない・・・なにも、終わって、いない・・・!

It‘s show Time・・・!」

「っ・・・!?」

 

その言葉と共に、奴は柱の影に消えた。一瞬、追撃を考えたが・・・相手の手の内が分かっていない以上、深追いは危険だと思い、キリトたちと合流することにした。

 

キリトたちがいた岩場にすぐ行くと、丁度スキャンの時間だったらしく、シノンがスキャンを確認していた。

 

「えっ・・・嘘・・・」

 

シノンが驚きの声を上げていた。

 

「どうした、シノン?」

「っ!?なんだ、フォンか・・・」

「えっ・・・?フ、フォン!いつの間に!?」

「さっきな・・・俺もペイルライダーを追ってきてな」

「もう!あんたまで・・・いきなり出てきて、驚かさないでよ!!」

「わ、悪い悪い・・・近くにいたからさ。それで何を驚いてたんだ・・・?」

「・・・これを見て・・・さっきのボロマントがいないの」

「なに・・・?」

 

シノンの言葉に、俺もスキャン画面を見たが・・・確かに俺達とさっきのカウボーイのプレイヤー以外にプレイヤーはいなかった。

 

「・・・どういうことだ?」

「この短時間で移動した・・・?

・・・いいえ、多分キリトと同じね」

「キリトと・・・?」

「ええ、これはチャンスだわ・・・!」

「チャンス・・・?」

 

シノンの言葉にキリトが首を傾げていた。俺も頭上にはてなマークの状態で完全に話についてけてなかった。

 

「あのボロマントは端末に移ってない。あんたみたいに川に潜っているのよ・・・だとすれば、武装を全解除してるはず」

「・・・ああ、それでさっきのスキャンでキリトの場所が分からなかったのか・・・だけど、さっきの拳銃なら、装備して潜ることもできるじゃないのか?」

 

シノンの言葉で、スキャンの謎について、すっきりしたところで、出てきた疑問をぶつけた。

 

「例えそうでも、ハンドガン一つくらい、楽々押し切れ「駄目だ!!!」っ・・・」

シノンの提案をキリトが遮った。

「君も見ただろう・・・?あいつの黒い拳銃が、ペイルライダーを殺したのを・・・!一発でも撃たれたら、本当に死ぬかもしれないんだぞ!?」

「っ・・・私は・・・認めたくない・・・PKじゃなくって、本当に人を殺しているなんて・・・」

「それでもいるんだ・・・あのボロマント・・・デス・ガンはあの世界でも多くの人を殺した・・・!」

「・・・HPが全損すれば、相手が死ぬ・・・それを分かっていながら・・・それを楽しみながら、剣を振り下ろしたんだ・・・!」

 

シノンの否定に、キリトと俺は、奴が話の通じる相手でないことを話した。

 

「・・・・・本当にそんな奴が・・・GGOに・・・」

「少なくとも・・・もう二人は犠牲になっている可能性がある・・・」

「・・・っ!?・・・・・・・・・」

「・・・シノン?」

「・・・・・・・・・・・・」

「シノン!!!」

「はっ・・・大丈夫、ちょっと驚いただけ・・・」

 

様子が変わったシノンに声を掛けたが、反応がない。キリトが肩を掴み、声を掛けると、やっと気づいたようだった。

 

「・・・・・正直、あんたたちの話をすぐには信じられない・・・けど、全部が嘘や作り話とは思えない」

「・・・ありがとう」

「そう言ってくれると、助かるよ」

「とりあえず、ここから離れましょう。私たち3人がまだ戦闘中だと思ったプレイヤーが漁夫の利を狙いに来る可能性も高いから」

「分かった」

「それじゃ、俺達はここで別れよう」

 

シノンの提案に俺とキリトは目配りをしながら、ここでシノンと別れることにした。

 

「えっ・・・?あ、あんたたちはどうするの?」

「俺たちはデス・ガンを追う」

「シノン、君は奴にできるだけ近づかないでくれ」

「で、でも・・・!」

「大丈夫、約束は守る・・・さっきは俺を撃たずに話を聞いてくれて、ありがとう・・・行こう、フォン」

「ああ」

「ちょ、ちょっと・・・!?」

 

シノンの呼ぶ声を背後に、俺とキリトは岩場を飛び降りながら、川に沿って、森を移動しようとした時だった。

 

「待ちなさいよ!!!」

「「えっ・・・?」」

 

シノンが大きな声で俺たちに制止をかけた。思わず、俺たちは立ち止まり、シノンが追い付くのを待った。

 

「ふぅ・・・私も行くわ」

 

その言葉に思わず、俺とキリトは顔を見合わせた。

 

「あのデス・ガンって、奴・・・相当強いよ。アンタがあいつに負けたら、私、アンタと戦えないじゃない」

「あっ・・・それは・・・」

「・・・だから、ここは一旦休戦して、あいつを一緒に叩く・・・あいつを追い出す」

「・・・いや、駄目だ。危険すぎる・・・!」

「居場所が分からない敵を相手にするんだから、一緒にいようがいまいが、一緒でしょ?」

「・・・・・分かったよ」

「・・・うん」

 

俺の反対意見は、シノンの言葉に見事に返されてしまった。これは何を言っても、駄目なパターンだと思い、キリトに判断をゆだねた。キリトも苦笑しながら、シノンの提案を承諾した・・・それと同時に、俺とキリトはそれぞれ盾と光剣を構えた

 

「なぁ・・!?」

 

シノンが驚くと同時に、俺たちを予測線が襲った。そのまま、隻眼のプレイヤーがアサルトライフルを連射してきた。

 

「くっ!!」「っ・・・このぉ!」

 

シノンへの弾丸をキリトが光剣で切り裂き、俺は盾で身を守りながら、マシンガンで反撃した。こちらの反撃に、奴は岩へと身を隠した。

 

「まずは・・・あいつを倒してからだな」

「ああ。シノン、俺が突っ込むからバックアップよろしく」

「えっ・・・はぁ、了解」

 

俺とキリトはシノンの前に立ち、シノンが狙撃の体勢に入った・・・相手には申し訳ないが、全くといって、負ける気がしなかった。

相手は再び、銃撃を繰り出してきたが、キリトは持ち前の反射神経で、俺はシステムのアシストで、その銃撃を切り裂き、盾で完璧に防ぐ・・・その姿にさすがの相手も・・・

 

「うっそぉぉ・・・!?」

「・・・今だ、シノン!」

「・・・っ!!」

 

そのリアクションと共にキリトがシノンに合図した瞬間、シノンが相手を打ち抜いた。

 

「ふぅ・・・よっと」

「・・・いつ見てもすごいな、キリト・・・」

「・・・・・そうか?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

相手が戦闘不能になったことを確認してから、そんな軽口をキリトと叩いていると、シノンがキリトのことを見ていたのが気になった。

 

 

 

デス・ガンはスナイパータイプ・・・持っている銃《サイレント・アサシン》や戦法から物陰を使って、戦うのが得意なはず・・・シノンの助言に廃墟エリアに来た俺達。

スキャンでデス・ガンの場所を確認しようとなったのだが・・・

 

「デス・ガンのキャラネームか・・・」

「ええ・・・それが分からないと、狙撃も待ち伏せもできないわよ」

「確か、初出場のプレイヤーは・・・『銃士X』、『コボルト』、『スティーブン』の誰か・・・」

「3人とも街にいたら、待ち伏せなんてしようがないわよ・・・」

「・・・・・うーん・・・コボルト・・・まさかな」

「・・・もしかして、第1層のボスからってことか?」

「・・・流石にそれはないか・・・自分がSAO生還者だって言ってるようなものだしな・・・」

 

一瞬、第1層のことを思い出し、『コボルト』のことを疑ったが、流石にないなと思い、キリトの言葉に自分の考えを否定した。

 

「ねぇ・・・今、思ったんだけど・・・銃士をひっくり返して、シジュウ・・・Xはさっきの十字架のジェスチャー・・・って、考えは安易かな」

「どうだろうな・・・キャラネームなんて、人それぞれの考え方次第だからな」

「・・・確かにな。俺のも本名をもじったものだし・・・君は・・・?」

「・・・私も・・・」

「あっ・・・」「ふっ・・・」

 

・・・あれ、何か変な空気になってないか・・・俺、もしかして、忘れられてる?

 

「・・・オホン!」

「っ!よ、よし・・・とりあえず、3人いた場合はその時に考えよう・・・二人なら、銃士Xの方に行くってことで」

「・・・そ、そうね」

 

・・・・・おいおいおい・・・まさかと思うけど、シノンさん・・・ここにはいないアスナに少し同情しながら、SAOの時のことを思い出し、別の意味で頭が痛くなるのだった。

 

 

 

そして、街に入り、スキャンの時間が訪れた。手分けして、スキャンを確認していく。街にいるのは・・・俺達以外に、2人・・・

 

「いた・・・銃士X」

「ってことは、デス・ガンは銃士X・・・」

「・・・もしそうなら、狙いは・・・この『リココ』ってプレイヤーか・・・」

 

シノンとキリトの言葉に、俺はもう一人のプレイヤーである『リココ』を指さした。

 

「デス・ガンの射程に入る前に止めないと・・・!」

「俺はこのリココって、プレイヤーの方に行って、なんとか足止めする・・・キリト、シノン、銃士Xは任せられるか?」

「分かった。シノン、援護を頼む」

「了解」

「それじゃ、後で・・・!」

 

作戦を確認し、俺は足止めのためにリココの方へ向かうため、キリトたちと別れた。

廃墟の中を走っていくと、プレイヤーの気配を感じ、物陰に身を隠した。

 

(気付かれたか・・・?さて、どうやって時間を稼ぐか・・・)

 

そう思い、大通りに面する道路から顔を出そうとした時だった。

 

「「あっ・・・!?」」

 

思いっきり、プレイヤーと出くわした!相手も俺がこんな近くにいるとは思っていなかったのだろう・・・完全に驚きの声を上げ、硬直していた。だが、さすがはGGOの猛者・・・すぐさま武器を俺に・・・・・

 

「させるかぁ!」

ゴン!

 

思わず、何も考えずに盾であごをアッパーしてしまった。

相手・・・おそらく、リココはものの見事に空に舞い、地面に落ちた。

 

「・・・・・がくっ・・・!」

 

気絶のデバフでも入ったのか、そのまま動かなくなってしまった・・・

 

「・・・・・やっちまった・・・」

 

いくらいきなりだったとはいえ、これがゲームだとはいえ・・・女の子相手に、鈍器でアッパーって・・・罪悪感が物凄いことになっていたが・・・

 

(いや、これは犠牲者をこれ以上増やさないためだ・・・!うん、そうだ・・・!)

 

そう自分に言い聞かせ、ショットガンで体をぶち抜き、そのHPをゼロにした。

 

(・・・と、とりあえず足止めには成功したし・・・キリトたちと合流するか・・・)

 

そう思い、その場を後にしようとした時だった。

 

トン!トン!

「っ・・・!くっ・・・!!!!」

 

軽い音がして、空を見上げると何かが飛んできていた。とっさに後ろに飛び、盾を構えたが、それは着弾したと共に爆発した。衝撃で俺は軽く吹き飛ばされた。

 

「ぐっ・・・爆弾?グレネードランチャーか・・・!?どこから・・・」

 

索敵スキルで敵の姿を探すと、スキルにヒットした。敵は・・・30メートルぐらい先のビルの屋上にいた。索敵スキルを拡大すると、顔が見えた・・・のだが・・・

 

「なぁ・・・!?デ、デス・・・ガン?」

 

そこには、ボロマントを被った、銀色の仮面を被ったプレイヤーがグレネードランチャーをこちらに向け、立っていた。




まさかのもう一人のデス・ガン登場・・・

GGO編でフォンが対峙する、SAOの闇とも言える相手となります。

正体が誰なのかは、もう少しお待ち頂ければと思います。

次回更新 17日0時予定。



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