デス・ガンもどきの正体は次回までお待ちください。
フォンの言葉を受けたキリトが語る『強さの意味』とは・・・
それでは、どうぞ!
「デス・・・ガン・・・!?」
どうしてここに?キリトたちは?
いきなりのことに思わず、思考が停止した。
だが、相手は待ってくれない。予測線が、相手の銃撃を知らせる。俺はそれを回避するために、さっき来た路地に逃げ込んだ。
姿さえ見えなければ、グレネードランチャーは狙って撃てない。
(このまま路地から、一気に奇襲を・・・!)
そう考えていた俺だったが・・・
「なぁ、何!?」
相手から俺は見えていないはずなのに、予測線は寸分たがわず、俺を狙っていた。訳が分からず、俺は更に混乱した。すると、
ポン!ポン!ポン!
発砲音らきしものが聞こえ、俺はまずいと思い、進路を変えた。進もうとしていた道にグレネードが着弾し、爆発した。
そのまま、次々とグレネードが降ってきた。ついに追いつかれ、俺は爆風によって、大通りへと吹き飛ばされてしまった。
「ぐっ・・・くそ!どうして、こっちの位置が分かるんだ!?」
もう一度、周囲を見渡すも、デス・ガンはこちらの視界にはいない。さらに、先程の攻撃で周りは煙だらけで視界はかなり悪い。
相手からもこちらは目視できていないはずなのに。
なぜなのか、理由を考えながら、身構えていると・・・
(攻撃が止んだ・・・?)
何故か攻撃が止んでいた。いつまでたっても、攻撃がやってこないのだ。
(どうして・・・?さっきまではあんなに苛烈だったのに・・・ともかくチャンスだ!)
そう思い、俺はその場をすぐに離れた。一応、目くらましのために、廃車のガスタンクを撃ち、爆破させることで発生した煙にまぎれて撤退した。
(ともかく、キリトたちと合流しないと・・・・・なんだ?)
応急キットを使い、先程減ったHPを回復しながら、
銃士Xがいたとされる、スタジアム近くに向かった。
すると、スタジアムに近づくにつれ、焦げ臭い匂いがしてきた。気になり、その場所に行ってみると、大型の車が燃えていた。近くには、何かの残骸らしきものが転がっており、逆方向の砂漠にバギーらしきものが走って行くのが見えた。
「・・・あれか」
近くにレンタルバギーを見つけ、それに乗り込んだ俺はタイヤの跡を追い始めた。
(砂漠だから、タイヤ跡があって助かったな・・・それにしても・・・)
街から出たバギーを追って、砂漠を張りながら、先程の敵のことを思い出していた。
(あれは・・・さっきのボロマントの奴じゃない。よく似てたけど、あれは別人だ)
先程のデス・ガンらしき・・・デス・ガンもどきとも言うべきなのだろうか・・・プレイヤーが俺やキリトが遭遇したデス・ガンとは別人だと思った。
武器が違うこともそうだったが・・・なにより、マスクが違っていた。
ペイルライダーを襲った奴は赤い目が特徴だったの対し、奴の仮面には角があり、目はモンスターを思わせるようなものだった。
まるで鬼・・・それがぴったりはまる気がした。
(それに・・・どうして、目視せずにあんな正確な攻撃ができたんだ?)
デス・ガンの殺しの方法もそうだが、先ほどの襲撃も謎のままだった。
(ともかく、今はキリトたちと合流して、情報を共有してみてからだ。考えるのはその後だ・・・)
俺は考えるのを止め、バギーを走らせた。
すると、近くの洞窟へとタイヤ跡が続いていた。
洞窟の近くに停まっていたバギーを発見し、洞窟を覗こうした時だった・・・
「俺も・・・人を殺したことがある」
「・・・・・!」
聞こえてきたキリトの言葉に、俺は思わず足を止めてしまった。
「えっ・・・?」
「俺はあの世界で、あのボロマント・・・デス・ガンと知り合いだった。あの男は、SAOでも最悪と言われた『笑う棺桶』っていうギルドのレッドプレイヤーだ」
「・・・・・・・・・・・・・」
どうやらシノンと一緒のようだ。二人が無事だったことに一安心しながらも、キリトの真剣な声に俺は様子を見ることにした。
「ある時、奴らを牢獄に送るために、大規模な討伐パーティが組まれた・・・俺やフォンもメンバーに加わったんだ。けど、情報が洩れてて・・・逆に奇襲を受けてしまった。
あまりの混戦で、俺はラフコフのメンバーを2人・・・手に掛けてしまったんだ」
キリトはそこで、大きく息を吐き、続けた。
「・・・なのに俺は、自分のしたことを忘れていたんだ・・・昨日、あの男に会うまで・・・」
「じゃあ、あの男は・・・あなたが戦った『笑う棺桶』の・・・?」
「・・・ああ。討伐戦で捕まえて・・・牢獄に送り込んだ生き残りの一人、のはずだ。
だから・・・俺はここで、奴と決着をつけないといけない・・・この世界で・・・」
・・・沈黙が場を支配した。
(キリト Side)
「キリト、一つだけ教えて・・・?」
「うん・・・?」
大体話終えたところで、シノンが体制を起こし、そう聞いてきた。
「あなたはその記憶を・・・どうやって乗り越えたの!?どうやって・・・過去に勝ったの?
なんでそんなに強くいられるの?」
シノンの真剣な目に・・・俺は正直に答えた。
「・・・乗り越えてないよ」
「えっ・・・?」
「俺は・・・あいつと会って、SAOで4人を殺したことを思い出した・・・それぞれの死ぬ間際の表情、声・・・俺はもう二度と忘れられないだろうと思った」
「そ、そんな・・・じゃあ、どうすればいいの・・・?
わ、私・・・!?」
「でもな、シノン・・・それを覚えてるってことは、きっと必要なことなんだ」
「・・・えっ?」
「彼らを殺した意味・・・その重さと重圧・・・俺はそれらに対して、もっと考え続けないといけなかったんだ・・・
その時、誰を殺し、何を守れたのか・・・それを受け止め、前に進む・・少なくとも、俺はそうすべきなんだって、今は思ってる」
「受け止めて・・・前に進む・・・」
シノンなりに納得してくれたのだろうか、シノンは俺の言葉を繰り返し、そう呟いていた。
すると、
「よう、こんなところで密会か?」
「フォン・・・!」
俺の戦友が洞窟から顔を出していた。
(キリト Side Out)
「よう、こんなところで密会か?」
「フォン・・・!」
一通り話終えたかと思い、入り口から顔をのぞかせた。キリトは少し驚きながら、どこかほっとしていた。
「まぁ、冗談は置いといて・・・無事で良かった」
「そっちもな・・・」
「それで、そっちはどうだった?」
「それが・・・・・・」
キリトから何があったのかを聞いた・・・
シノンがデス・ガンに狙われたこと、
銃士Xはデス・ガンではなかったこと、
デス・ガンは光学迷彩マントを使っていること。
こちらもデス・ガンに似たグレネードランチャー使いに襲われたことを話した。
「・・・・・もしかして、そいつもデス・ガンの仲間?」
「かもしれないな・・・あいつもスキャンには表示されていなかったようだから、同じトリックだとすれば説明がつく」
情報交換を終え、デス・ガンがどうやってスキャンを回避したのかという謎が解明した。
(・・・光学迷彩か・・・)
そんなことを考えていると、
「デス・ガン・・・」
「「うん・・・?」」
「あのボロマントの中は、実在する本当の人間なんだね」
「ああ。SAO時代の名前が分かれば、現実世界でも本名や住所が突き止められはずだ。俺達はその為にこの世界に来たんだ」
「そう・・・じゃあ、あのボロマントは、SAO時代のことが忘れられなくて・・・またPKがしたくなって、GGOに来たってこと?」
「それだけじゃない気がするな・・・
確か、資料によると、死んだゼクシードや薄塩たらこ、そして、さっきのペイルライダーの時もだけど・・・
あいつは必ず大勢の目がある状況を選んでる・・・まるで自分の力を見せつけるように・・・」
「自分はゲームの中から本当に人を殺せる・・・そんな力があるって、誇示してる・・・そうともとれるな」
俺の言葉にキリトがそう補足した。
・・・誇示している、か。
「でも、どうやったら、そんなことが・・・?」
「聞いた話だと、前者二人の死因は脳じゃなくて、心不全だったらしい・・・」
「心臓って・・・・・!」
「正直、犯行の手口はさっぱりだ・・・脳ならまだしも、心臓をゲームの中から止めるなんて、ありえ・・・な、い・・・?」
そう言いかけて、何かが引かかった
・・・仮想世界ならあり得ない・・・?
「そう言えば、妙だな?」
「キリト・・・?」
「うん、ああ・・・さっきシノンを助けた時なんだけど・・・デス・ガンはあの黒い拳銃じゃなくって、わざわざスナイパーライフルに持ち変えて俺に反撃してきたんだ・・・そのまま拳銃で撃っていれば俺を殺せたのに、どうして・・・」
「確かに・・・そうね」
それは確かに妙な話だ・・・恨んでいるキリトに対して、その拳銃を使って殺さない理由はないだろう。
「もしかして、撃たなかったじゃなくって、撃てなかった・・・?」
「撃てなかった・・・・・?」
黒い拳銃、撃てない理由、ライフル、十字を切る仕草、光学迷彩、条件、ルール、共犯者。
・・・・・共犯者・・・?
「「あ、あああああああああああああああああああああ!!!!!」」
「ど、どうしたのよ、二人して!?」
「そうか、そういうことか・・・!
なんで気が付かなかったんだ!?」
「・・・そういうことなら、合点がいく!!」
たどり着いた考えに、思わず叫んでしまった・・・どうやらキリトも同じ結論に達したようだ。
「だ、だから・・・!なにが分かったのよ!?」
「簡単な話だよ。仮想世界からの銃撃じゃ心臓は止められない・・・つまりデス・ガンは仮想世界からじゃなく、実際は現実世界で心臓を止めてるんだ・・・!」
「この世界、GGOであの黒い拳銃でプレイヤーを撃つと同時に、現実世界でもなにか細工をしている・・・そう考えれば、色々と辻褄が合う」
「辻褄・・・?」
キリトと俺の推理にシノンは首を傾げていた。
「まず、キリトが言っていた、大衆の目があるところでの犯行・・・見せつけているじゃなくって、あくまでも殺す力があるんだと、周囲に思い込ませるためにわざと選んでいるだとしたら・・・?」
「で、でも・・・現実世界の個人情報はどうやって手に入れてるの?」
「それこそ、あの透明マントの出番だよ」
「えっ・・・?」
「総督府だよ。例えば、このBoB・・・参加するに
あたって、あそこの端末を使って情報を登録していた・・・それを透明マントを使って盗み見ていたとすれば・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「あそこは個室じゃなくオープンスペースだった・・・透明になって後ろにつけば盗み見し放題だろうな」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
キリトと俺の推理に、シノンの顔はどんどん青くなっていた。
「だ、だけど・・・!もしそれが可能だとしても・・・このBoBは大会が終わるまで、ログアウトはできないのよ!?どうやって、現実世界でそんな細工をしているって言うのよ!?」
「・・・・・共犯者だよ」
「共犯者・・・?」
キリトの言葉に、シノンは思わずオウム返しをしていた。
「ああ。デス・ガンは2人・・・いや、あのグレネードランチャー使いのことも考えると、少なくとも3人以上いる・・・」
「手順としてはこうだろう。あのボロマントのどちらかがゲームの中であの拳銃を使って、プレイヤーを撃つ。それに合わせて、共犯者が現実世界の人間を・・・殺す」
「・・・っ!?」
「そう考えれば、あの十字架のジェスチャー・・・
あれも現実世界の共犯者への合図・・・もしくはタイミングを合わせるために腕に着けている時計かなにかを確認するためのものだとすれば、わざわざあんなジェスチャーをする・・・いや、しなければならないのにも納得がいくな」
キリトと共に推理を進めていく・・・おそらく概ね間違ってはいないだろう。
「だが、その場合デス・ガンたちはどうやって家に侵入したんだ?」
「それは・・・電子セキュリティをハッキングしたかどうかかな?菊岡に見せてもらった資料には、ゼクシードも薄塩たらこの家の鍵は初期型の電子セキュリティによるものだったから・・・
それに、ログイン中は現実世界の体はがら空きだ・・・多少、侵入に手間取っても問題はない」
「・・・そうか、こっちの世界だと電子セキュリティに頼りぱっなしだからな・・・」
キリトの言葉に俺の疑問は解決した。元いた世界だと、電子セキュリティなど全然普及しておらず、良くてマンションのオートロックだと認識していたので、その謎も解けた。
「・・・し、死因は?」
「・・・おそらく毒物か薬物・・・殺された二人は、発見されたのが死後3日~5日経過していたし、ヘビーユーザーによくある場合食事や睡眠を取らずの連続ダイブによる 病死として扱われた・・・
もし跡が残らない方法で毒を注入したんだとしたら、まず気付かれない・・・」
・・・これで、あたかも仮想世界から人を殺している、というトリックが成立するわけだ。
いくつか荒々しく、推測の面もあるが、大方はこういうことだろう。
「・・・・・そんな!?デス・ガンは、なんでそこまでして・・・」
「・・・あいつはレッド・プレイヤーであり続けたかったんだろう」
「・・・SAOでは最強のプレイヤーキラー・・・それをあの世界から戻ってきても、求めた・・・ってことか?」
「ああ。俺の中にも、まだ剣士だって意識があるからな・・・」
「・・・それは・・・私もなんとなく分かる。
私も、自分はスナイパーなんだって・・・時々思うことがあるし・・・」
キリトとシノンの言葉に、俺も腑に落ちる点があった。別世界から来た俺も、あの世界を経験してからは、どこかに剣士としての意識が残っていたからだ。
「それじゃ・・・現実世界やフォンを襲った共犯者も、もしかして・・・!?」
「ああ、そいつらも、もしかしたら元『笑う棺桶』かもな・・・」
・・・・・沈黙が場を支配した。
まさか、SAO事件がここまで尾を引いているとは。
奴らにとっての・・・いや、俺たちにとってのSAO事件はまだ終わってなかったということを思い知らされた気がした。
「・・・シノン・・・君は一人暮らしか?」
「・・・えっ?」
沈黙を破ったのはキリトだった。
シノンの肩を持ち、そう問いかけた。
「ひ、一人暮らしだけど・・・」
「・・・鍵は?」
「か、掛けてるけど・・・うちも初期型の電子錠で・・・チェーンは・・・・・してないかもしれない!?」
俺の問いかけに、シノンは思い出すように答えた。
死銃がシノンを狙ったということは・・・!
キリトもどうやら俺と同じ考えだったようだ。
「いいか、落ち着いて聞いてくれ・・・ロボットホースで俺たちを追いかけている間も、奴はあの銃で君を撃とうとした。それはつまり・・・準備が完了している、ということだ」
「・・・準備って、なん、の・・・?」
「・・・今、現実世界の君の部屋に、デス・ガンが侵入して、ライブ映像で、君があの銃で撃たれるのを待っている・・・その可能性がある・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・!?」
キリトの告げた推測を、既に察していたシノンは目を見開いた。
「いや・・・嫌よ!?そんなの・・・!?」
シノンは体を震わせ、大きく呼吸を乱していた。
これはまずい・・・!
「待て、落ち着け、シノン!」
「落ち着くんだ、シノン!今、ログアウトするのは危険だ!落ち着け・・・気持ちを落ち着かせるんだ・・・頑張れ・・・!」
アミュスフィアによる強制ログアウトを起こしそうになっているシノンに、俺とキリトは必死に呼びかけた。
「・・・はぁ、はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
なんとか落ち着き、脱力したシノンを、キリトは優しく抱きしめた。
どうやら強制ログアウトは避けられたらしい。
「デス・ガンの拳銃に撃たれるまで、侵入者は君に何もすることはできない・・・それが奴ら自身が定めた制約だ」
「・・・だが、もし自動ログアウトして、共犯者の顔を目撃してしまったりすれば・・・その方が遥かに危険だ」
「・・・でも!?でも・・・・・怖いよ・・・!?」
ついに、シノンはキリトの胸の中で泣き崩れた・・・
あの毅然とした、強い姿はシノンのアバターであって、今の姿が本来の彼女なのではないか・・・そう、俺は彼女を見て、感じた。
しばらく泣き続ける彼女をキリトは優しく、抱きしめていた。
「どうすればいいのか、教えて・・・」
泣き止んだシノンは、いつもの声でそう尋ねた。
「デス・ガンを倒すんだ」
「・・・デス・ガンさえ倒せば、奴らの殺しのルールは崩れる・・・侵入者も現実世界の君には何もできないはずだ」
「でも、黒星抜きでも、あのボロマントは強いわ・・・見たでしょ?ヘカートの弾を避けたのを・・・」
・・・確かに、いくら予測線が見えていたとはいえ、対物ライフルを避けた奴の実力は確かだ。さらに、あのグレネードランチャー使いもいる。
・・・俺とキリト、どちらかが負ければ、シノンの命はない。
「それに多分、私もこのままここに隠れているわけにはいられない・・・そろそろ、私たちが砂漠の洞窟に隠れていることに、他のプレイヤーも気付いてる」
「・・・いつ奇襲を受けても、おかしくないってことか」
シノンの言葉に、外を見ると、もう既に日が沈み、戦場は夜となっていた。
「・・・どうせ、ここまでチームを組んだんだもの。
・・・3人で倒そう」
「・・・けど、もし君があの拳銃で撃たれたら・・・」
「あんなの・・・所詮、旧式のシングルアクションだわ・・・仮に、撃たれそうになっても、あんたたちが楽々叩き切ったり、弾いたりしてくれるでしょ?」
「・・・・・そうだな。そこまで信用してもらえてるのなら、やらせるわけにはいかないよな、キリト?」
「ああ・・・決して、君を撃たせたりはしない・・・」
シノンの強気な言葉に、俺とキリトも思わず笑みがこぼれた。これは責任重大だ。
「でも、それを実行するためには・・・君は、なおさらデス・ガンの前に姿を現さない方がいい」
「そんな・・・!?」
「いや、一緒に戦ってくれるという、君の提案はありがたく受け取るよ・・・でも、シノン・・・君はスナイパーなんだ。遠距離からの狙撃が真骨頂なんだろう?」
「・・・そりゃ、そうだけど」
「だから、作戦として、こういうのはどうだ?
次のスキャンで、俺だけがわざと自分だけをマップに表示させる」
「・・・なるほどな。デス・ガンを誘き出すわけだな」
「ああ、奴はまず、遠くに身を潜めて、俺を狙撃しようとしてくるはずだ」
「その射撃から、場所を割り出し、シノンに狙撃してもらうわけか」
「そうだ・・・その間、フォンには・・・」
「シノンの護衛・・・というか、グレネードランチャー使いのデス・ガンもどきの足止めだろう?・・・任せろ」
この作戦の懸念材料は、デス・ガンたちにより、キリトが挟撃・・・あるいはシノンが襲われてしまうことだ。キリトがあの赤目のデス・ガンに集中できるように、
俺があのデス・ガンもどきを倒さなければならない。
「・・・どうだろ、シノン・・・いけるか?」
「・・・ちょっと待って!自分が、囮になろうって、いうの?」
「・・・うん」
「・・・分かった、それで行きましょう・・・でも、
最初の一発で一撃死とかやめてよね」
「まぁ、その時は俺が仇を取るから・・・安心して、撃たれてこい」
「・・・ど、努力するけど・・・あいつのライフル、音もしないし、予測線も見えないしな・・・」
「予測線を予測する・・・なんて、言ってたのはどこの誰だっけ?」
「・・・お前、そんなこと言ったのか?」
シノンの言葉に、思わずキリトをジト目で見てしまった。いらないところで、かっこつけるなよ・・・そんなことを思っていると・・・
「・・・シノン」
「えっ・・・!」
真剣な表情のキリトにシノンは固まってしまった。
キリトはゆっくり上を見上げた。それに伴い、俺とシノンも上を見上げると、謎のマークが空中に浮かんでいた。
「・・・・・しまった・・・油断したな」
ため息交じりに、シノンはやってしまったという表情をしていた。
「シノン、あれは何だ?」
「・・・LIVE中継カメラよ・・・普段は戦闘中のプレイヤーしか追わないだけど・・・
残り人数が少なくなってきたから、ここまで追ってきたのね・・・」
・・・LIVE中継・・・?
確かにRECという文字が真ん中にあった。
「マ、マズイ!?俺たちの会話・・・!」
「大丈夫・・・大声で叫ばない限り、音声は拾わないから・・・いっそ、手でも振ってみれば?それとも・・・この映像を見られると、困る人でもいるの?」
「「・・・・・・・・・・・・・・・・」」
その言葉に、俺は黙秘することしかできなかった・・・一方のキリトは顔を青くしながら、慌てていた。
まぁ、壁にもたれかかっている俺に対し、キリトはシノンと近距離で、向かい合って、話している体勢だ・・・もし、泣き続けるシノンを優しく抱きしめているところから映っていたら・・・ALOに帰るのが怖いだろうな・・・
「そ、それよりも・・・君の方が困るんじゃないか?
大体、これを見てる人は両方、女だと思う可能性が高いじゃないか?」
「い、いいわよ!!べ、別に・・・その・・・そういう趣味の持ち主って、噂が立てば・・・面倒なちょっかいも減るだろうし・・・」
「じゃあ、俺はずっと女子で通さないといけないのか?」
「忘れたとは言わさないわよ!あんた、最初、女のふりして、私に案内させたでしょ!」
「・・・あっ、消えた」
ちょっとした痴話喧嘩が始まろうとしたところで、カメラが消えた・・・助かった・・・
このまま、二人の世界に入られたら、また突っ込まないといけなかったところだった。
「・・・ふぅ、そろそろ時間ね」
「次のサテライトスキャンまであと2分か・・・」
「フォン、シノンを頼む。俺は外に出て・・・・・
そういえば・・・」
「・・・どうした?」
「いや・・・デス・ガンたちのキャラネームは『コボルト』と『スティーブン』だったんだなって・・・」
キリトの言葉に、俺もそういえばそうか、と思った。
結局、デス・ガンはどういう意味でそのようなキャラネームをつけたのだろうか・・・『コボルト』はまだ分かるが・・・
「・・・もし近距離戦になったら、どういう意味なのか聞いてみるさ・・・それじゃ、外に行ってくる」
「気を付けろよ」「気を付けてね」
その言葉にキリトは親指を立てて、答えるのだった。
次回 フォンVsもう一人のデス・ガン
果たして、フォンはデス・ガンの正確無比な謎の攻撃を攻略できるのでしょうか?
GGO編最終決戦となります。
どうぞ、お楽しみに!
次回更新 18日0時投稿予定