このお話から色々ご都合主義が起きますので、お気をつけください(笑)
ちなみに、作者・・・ディケィドとダブルをリアルタイムで見て、ライダー好きが再燃しました。
ダブルが総合一位で好きです。ファングトリガーが続編で出たときには飛んで喜びましたね!(・・・徹夜明けで、テンションおかしくなってます)
それではどうぞ!
「・・・いいな?こちらはそちらの悪事の証拠を押さえさせてもらってる。これから俺とアルゴでそちらに向かうから、覚悟するように伝えておいてくれ・・・もう消えていいぞ」
さっきのボス格らしいサラマンダーのリメインライトに、シグさんが脅しとボスへの伝言を託していた。シグさんの言葉にリメインライトは姿を消した。
「ありがとうございました、シグさん、クライン」
「・・・いいや、こちらも仕事だったからな。気にするな・・・それじゃ、俺は行くよ。これからアルゴと一緒にあのギルドにせいさ・・・お話しないといけないからな」
そう言って、シグさんはストレージから転移結晶を取り出し、俺たちに手を振ってから転移して行った・・・
途中で言いかかった言葉に絶対触れてはならないと思ったのは余談だ。
「さて、それじゃ、俺達も帰るか」
「ああ」
「・・・悪い、キリト、クライン・・・俺はここでユウキ達を待つよ」
クラインの提案に俺は残ることを告げた。
「おう、分かった。それじゃ、俺とキリトで祝勝会の準備でもしておくか」
「・・・・・そうだな。それじゃ、フォン、後でな」
「・・・ああ」
そう言って、俺はキリト達と別れ、一人ボス部屋の前でユウキ達を待つことにした。
それから30分後・・・
ゴン!!!
「・・・・・終わったか」
ボス部屋の扉のロックが解除され、隠蔽スキルを解いた俺は扉を開くと・・・
「あっ・・・フォン・・・!」
そこには、ボスの姿はなく、ボス攻略を喜び合うスリーピングナイツとアスナたちがいた。
「「えへへ!!」」
笑みとVサインを送るアスナとユウキに俺もサムズアップで答えた。
そのまま28層のアクティベイトを終え、27層に戻ってきた俺達はシウネーの言葉で打ち上げをすることになった。
会場はアスナの提案で22層のログハウスでどうかという提案があったのだが・・・
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・ユウキ・・・?」
先まで笑顔だったユウキの表情が突如曇った。思わず声を掛けたのだが・・・
「あの・・・ごめんなさい、アスナさん、フォンさん。気を悪くしないでもらいたいんですが・・・私たちは(ガシッ!)っ・・・!」
シウネーの言葉をユウキが手を掴み、制止した。そのままユウキの意図を読み取ったのか・・・シウネーはユウキの頭を撫で、言葉を続けた。
「アスナさん、ありがとう。お気持ちに甘えて、お邪魔させて頂きますね」
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
俺やアスナは頷くも、今のユウキの姿に思わず言葉が詰まってしまったのだった。
「へぇ~・・・ここがアスナのお家か」
ログハウスに到着し、中に入ると、少し元気を取り戻したユウキがそんな感想を述べていた。荷物を置こうと俺たちがテーブルに近づくと・・・
「・・・あれ、もうご馳走があるよ」
「「・・・えっ?」」
ユウキの言葉にテーブルを見ると・・・確かに料理と飲み物が用意されていた。
「フォン君・・・これ」
「・・・・・キリトの奴」
そこには『こうりゃくおめでとう』と二本の剣とユイちゃんの絵が添えられたメッセージカードがあった。粋なことをしてくれるものだ。
「「「「「「「「乾杯!!!」」」」」」」」
そのまま、買ってきた材料も料理して、俺たちは宴会を始めた。
それぞれが食べたり、飲んだり、飲まされたり・・・ノリに酒を注がれてるタルケンが少し心配だが・・・まぁ、大丈夫だろう。
「それにしても、まさか、4人で1ギルドを全滅させるなんて・・・フォンたちって、もしかして化け物なの?」
「おいおい・・・さすがに酷くないか、その扱い」
「でも、『幻想剣』やキリト君も『二刀流』を使ったんでしょ?それはまぁ・・・ねぇ・・・?」
「アスナさん・・・!?」
ユウキの言葉にそう反論するも、まさかのアスナからも同じ扱いを受け、ちょっとショックを受ける。いや、確かに圧倒したけどさ・・・解せぬ。
「それに魔法も切ってましたし・・・あれは何なんですか?」
「ああ。『魔法破壊(スペルブラスト)』と『切魔相殺(スペルインターセプト)』か・・・あれは・・・」
シウネーの質問に俺はそれぞれ説明を始めた。
まず、『魔法破壊』は属性付きのソードスキルを使った対魔法システム外スキルだ。簡単に言えば、魔法の判定部分であるコアをソードスキルで破壊する・・・言うのは簡単だが、実際にGGOで弾丸を切ったことがあるキリトだからこそ、出来る離れ業だ。
ちなみに俺も一緒に練習していたが・・・成功率は50%ぐらいだ。
「ふーん・・・それじゃ、フォンが使っていたのは何だったの?・・・たしか、スペルイン・・・」
「『スペルインターセプト』な・・・これは属性付きのソードスキルで魔法を破壊できる、ということから思いついた対魔法システム外スキルなんだ。
簡単に言えば、放たれる魔法に相反する属性を武器に付与して魔法のコアを通常攻撃で破壊する方法なんだ。これなら、剣の軌道が制限されるソードスキルと違って、自分のタイミングで剣を振ることができる。
・・・もちろんある程度の威力は求められるし、その魔法に対して有利属性の魔法でないと無効化できないから、複数の魔法に対応できない、って弱点はあるけどな」
「・・・・・それでも、魔法を切るなんてこと誰も考えませんよ・・・」
・・・GGOの経験とキリトの練習に付き合っていたことから、思いついたのだが・・・シウネーの反応にちょっとショックを受けた俺だった。
「『スペルブラスト』か・・・ボクもできるかな・・・」
・・・約1名、やる気の人が隣にいたが・・・
そして、話はボス戦やギルドメンバーとの戦い、俺やキリトが使ったスキルのことから、ユウキたちが今まで冒険してきたVRMMOの話題になった。
「それでね、間違いなく最悪だったVRMMOは、アメリカの『インセクサイト』」
「ああ、あれね・・・」
「へー・・・どんな奴?」
「虫!虫ばっか!モンスターが虫ならともかく、自分も虫なんだよ!!」
聞いていたアスナの顔が青くなった。そういえば、虫、駄目だったな・・・アスナ。
「それでもボクはまだ2足歩行のありんこだったんだけど・・・シウネーなんか!」
「わぁぁ!駄目、言わないで!」
「でっかいイモムシでさ!くちから糸をぴゅーって!」
ユウキの暴露にシウネーは顔を真っ赤にしてうつぶせてしまった。
その反応に俺もアスナも思わず笑ってしまっていた。
「・・・いいな。みんなで色んな世界を旅してきたんだね」
「アスナは?」
「えっ・・・」
「VRMMO歴かなり長そうだけど・・・」
「わ、私は・・・」
「基本的にゲームはALOだけだよ。俺はGGOとかやってたこともあったけど、
アスナはALOだけだったよな?」
「う、うん・・・!この家を買うのに必死でお金をため続けてたから」
SAOのことを言いづらいアスナをフォローし俺が代弁する・・・だが、
「えっ、でも・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「そっか、そうだったんだ」
俺との出会いから違和感を感じたユウキが疑問の声を上げるが、俺の困った表情を見てどうやら察してくれたようだ。話題をアスナたちの家へと変えてくれた。
「でも、この家、本当に居心地いいよ。なんか昔を思い出す、って感じ」
「そうですね。ここにいるとほっとします・・・あっ!!」
「どうしたの、シウネー?」
突然何かを思い出したシウネーの言葉に全員が注目した。
その口から出た言葉は・・・
「すみません、忘れてました!お金と言えば、私たち・・・アスナさんにお手伝いをお願いする時に、ボスからドロップした何かをお渡しするとお約束してましたよね!」
「「「「「あっ!」」」」」「ああ・・・」
そういえばそういう取り決めがあったな・・・スリーピングナイツも俺も完全に忘れていた。
「そうだった・・・ボクも完全に忘れてた・・・!あぁ・・・」
「い、いいよ、いいよ!」
約束を忘れていたユウキにアスナは気にしないように言った。
「その代わり、お願いがあるんだ」
「・・・お願い?」
「あのね、契約はこれで終わりなんだけど・・・でも、私・・・ユウキともっと話したい・・・聞きたいことがいっぱいあるの・・・」
そう言って、アスナは一度言葉を切り、覚悟を決めて言葉を続けた。
「私をスリーピングナイツに入れてくれないかな?」
「えっ・・・?」
「「「「「・・・!」」」」」
その発言にユウキを始め、スリーピングナイツの一同、そして、俺も驚いていた。
この短い間に、アスナにも何か思うところがあったのだろうか・・・俺がそんなことを考えていると、何故かユウキが沈んだ表情で話し始めた。
「あのね・・あのね、アスナ・・・ボクたちスリーピングナイツはもうすぐ・・・
春ぐらいに解散しちゃうんだ。そこからはボク・・・みんな、なかなかゲームには入れなくなるから・・・」
「うん、分かってる。それまででいいの・・・私、ユウキと・・・みんなと友達になりたい・・・それくらいの時間はあるよね?」
そう尋ねたが、ユウキはさらに悲しい表情をしながら、
「ゴメン・・・ゴメンね、アスナ・・・・・本当に、ゴメン・・・!」
「・・・そ、そっか!こっちこそゴメンね、ユウキ、無理なお願いしちゃって!」
意図せず、空気が重たくなってしまった・・・その空気を変えるために俺は手を叩き、大きな音を鳴らした。
パン!
「「「「「「「「!!!」」」」」」」」
「せっかくの打ち上げなんだ。暗いままじゃ、台無しだろう?景気づけにあれ見に行こうぜ?」
「・・・そうだね」
手を叩き、無理矢理話題を変えた俺の言葉をアスナは理解してくれたようだ。
「あれ・・・?」
「肝心なことを忘れてるよ。そろそろ更新が反映されている頃だと思うから・・・」
「第一層の剣士の碑がな」
シウネーの疑問の声にアスナと俺が答える。
「おお、そっか!行こう、行こう!写真撮ろうぜ!」
「いいですね!」
「おおう、行こう!」
どうやらスリーピングナイツのみんなも賛成のようだ。そして、
「なぁ、行こうぜ、ユウキ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん」
俺の誘いに、ユウキも少しだけ笑顔で答えてくれたのだった。
そのまま、第1層に剣士の碑に来た俺たちは・・・
「あっ!・・・あった・・・」
そこには、27層攻略にスリーピングナイツの面々の名前とアスナの名前が確かに刻まれていた。
「あった・・・ボクたちの名前だ・・・!」
「「・・・・・(コクッ!)」」
そう感慨深く呟くユウキを見ながら、俺とアスナはアイコンタクトで会話した。
「おーい!写真撮ろうよ!」
ジュンの言葉に、俺は邪魔にならまいと離れようとしたのだが・・・
「フォンさんも入りましょうよ!」
「えっ、でも・・・!」
「いいから、いいから!フォンさんがいなかったら、私たち危なかったわけだし!」
「・・・それじゃ、お邪魔します」
シウネーとノリに説得され、俺も写真に写ることになった。
「ほら、ユウキ、笑って!」
「えっ・・・?」
「せっかくの記念写真なんだ・・・泣き笑いでもいいから、笑ったほうがいいと思うぞ?」
「・・・うん!」
アスナと俺の言葉にユウキも沈んだ表情からようやく笑顔になってくれた。
そのまま、ジュンが操作したタイマー機能で写真を撮影した。
「やったね、ユウキ」
「うん・・・ボク、遂にやったよ、姉ちゃん」
「フフ。ユウキ、また言ってる」
「えっ・・・?」
「私のこと、姉ちゃんって・・・ボス部屋でも言ってたよ?」
(・・・そうだったのか・・・もしかして、ユウキにはお姉さんがいるのか・・・?でも、それならどうして、一緒にVRMMOをやってないんだ・・・?)
俺がそんな疑問を感じて、ユウキを見た時だった・・・俺は見てしまった。
「ユ、ユウキ・・・・・?」
口を抑え、大粒の涙を流すユウキの顔を・・・その表情はため込んでいた感情が一気に出てしまった・・・そんな表情だった。
アスナもユウキの異変に気付いたが・・・
「ア、アスナ・・・ボ、ボク・・・!?」
そのまま、ユウキはメニューを操作し・・・
「ユ、ユウキ!?」「待て、ユウキ!?」
アスナと俺の制止を振り切り、ログアウトしてしまった。
それから3日後・・・
俺もアスナもユウキにメッセージを送り続けていたが・・・
ユウキは全然ログインしていないみたいだった。アスナもシウネーを通して、ユウキに会えないか試してみたようだが、どうやらスリーピングナイツの面々とも連絡を取ってないらしく、逆にシウネーに止められてしまったらしい。
打つ手なしかと考えながら、俺は学校の授業を受けていたが・・・まったく授業の内容は耳に入ってこなかった。
(・・・ユウキ・・・)
気が付けば、ユウキのことばかり考えてしまっていた。
里香が心配して、声を掛けてくれたが・・・なんと返答したのかさえよく覚えていなかった。
あっという間に昼休みになったが・・・食欲も沸かず、俺は屋上で空を眺めていた。
(・・・・・・・・・・・・・・会いたくない、か)
アスナがシウネーに言われた言葉を俺は思い出していた。シウネーの言う通り、確かにユウキはもう俺達と会いたくないのかもしれない。その思いを尊重すべきだということも頭では分かっているのだ。だが・・・
(・・・それでも・・・)
目を瞑るとユウキとの思い出が蘇った。SAOのあの特別なダンジョンで出会って、ALOで奇跡的に再会して戦って・・・
今、思うと・・・あんなに一緒にいて、楽しいと思った女の子は初めてだった。
しかも、和人を倒すぐらい強いなんて・・・
(VR世界の申し子、か・・・・・)
和人に言われた言葉を思い出した時、スマホが振動した。メッセージが着信したようだ。
送り主は・・・和人からだった。
「・・・ここなの、蓮君?」
「ああ・・・間違いない」
放課後・・・
俺と明日奈は和人から教えられた場所・・・横浜港北総合病院・・・俺がSAO時代、入院していた病院へと来ていた。確認してきた明日奈の言葉に頷き、とりあえず受付に向かうことにした。
「あの・・・」
「面会ですか?」
「はい・・・でも、相手の名前が「コンノユウキ」・・・えっ?」
「コンノユウキ・・・メディキュボイドを使用しているコンノユウキって人がいれば、その人に会いたいんですが?」
「しょ、少々お待ちください・・・!すみません、紺野さんに面会希望の方が・・・!?」
俺の告げた言葉に受付の女性は慌てて、どこかへと連絡を始めた。
その様子を予想していた俺は冷静だったが、隣の明日奈は狼狽えていた。
「れ、蓮君・・・その名前の人って?」
ようやく落ち着きを取り戻した明日奈の問いに俺が説明しようとした時だった。
「君たち・・・ちょっといいかな?」
呼ばれて振り返ると、そこには白衣を着た男性が立っていた。
「もしかして、君たちは『フォン君』と『アスナさん』ではありませんか?」
「そうです・・・あなたは?」
「僕は倉橋って言います・・・君たちが、もしかしたらここに来るかもしれないと・・・ユウキ君から聞いてまして。
そしたら、受付からユウキ君の本名を知ってる人が来たと聞いて、慌てて飛んできまして・・・」
「ユウキ・・・もしかして・・・?」
「ええ。僕はユウキ君・・・紺野木綿季さんの担当医です」
倉橋さんというお医者さんはそう名乗った。
倉橋先生に連れられ、俺たちは病院の中を歩いていた。
「よくここが分かりましたね・・・ユウキ君から、もしかしたら、アスナさんやフォンさんという人が来るかもしれないと聞いていたのですが・・・」
「・・・ユウキが?」
「・・・だけど、病院のことは教えていないという・・・じゃあ、ここのことは分かるわけないよと言ったんですが・・・・・君なら話は別ですね・・・音弥蓮君」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
倉橋先生の言葉に俺は何も答えなかった・・・だんまりのまま苦笑する俺に明日奈は戸惑っていた。
どうやら、倉橋先生は俺のことを覚えていたらしい・・・まぁ、この病院の関係者なら知らない方がおかしいか。
「それにしても、まさかユウキ君からよく話を聞く二人が揃ってこの病院に来るとは・・・本当に驚きましたよ」
「あの・・・ユウキさんは私たちのこと、先生に・・・?」
「ええ。それはもうたくさん・・・特にフォン君・・・音弥君の話はあの時から、ずっと聞いてましたからね。ここ最近は更にね・・・」
「・・・あの時?」
「・・・・・(・・・そうか。あの時からユウキは・・・それじゃ・・・)」
倉橋先生の言葉に、俺はこの病院での出来事を思い出していた。
「でもね・・・音弥君や結城さんの話をした後、彼女は決まって暗い表情をしてしまってね。自分のことじゃ、決して弱音を吐かない彼女なんですが・・・
あなたたちに会いたい・・・けど、これ以上会ってしまえば、会えなくなってしまうのが怖い、と・・・」
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
「ああ、この部屋です。どうぞ」
倉橋先生についていった先の病室・・・『第一特殊計測機器室』に俺たちは到着した。倉橋先生に続き、病室に入ると・・・
「あれ・・・?すみません、ここで少し待っていただけますか?」
そう言って倉橋先生は奥の部屋へと入って行ってしまった。手持無沙汰になり、横を見た時だった・・・それはそこにあった。
「あの・・・蓮君。どうしてユウキの本名を知ってたの?それに、倉橋先生が言ってたことって・・・?」
「・・・・・そうだな・・・全て話すよ、明日奈」
その言葉に俺は観念したように言った。
「この病院は・・・俺がSAO時代の時に入院していた病院なんだ」
「・・・・・え?」
「・・・正確に言えば、俺はこの機械・・・医療用フルダイブ機器『メディキュボイド』で治療を受けている時に、偶然SAOに巻き込まれたんだ」
「・・・・・!!」
「そして・・・多分俺は、ここでリアルのユウキと出会ってたんだ」
「・・・・・えっ!?」
俺の告白に、明日奈は驚くことしかできなくなっていた。その時だった・・・
ガチャン!
入って来た病室の扉が開き、
「倉橋先生、ごめんなさい。遅く・・えっ・・・?」
そこには、ショートカットの髪にカチューシャをかけた少女がこちらを凝視していた。だが・・・
「・・・ユウキ・・・?」「・・・アスナ・・・フォ、ン・・・?」
・・・彼女こそ、絶剣ことユウキ・・・紺野木綿季だと俺と明日奈は直感した。
ユウキも俺と明日奈のことを認識したようで驚き・・・
「・・・・・っ!?」
「ま、待って!」
逃げようとしたユウキだったが、明日奈の言葉にその動きが止まった。
「・・・・・その・・・ユウキ、だよね?」
「・・・・・・・・・・・・うん」
こちらに振り返らず、ユウキは明日奈の問いに答えた。
「・・・本当に来たんだ、二人とも・・・まさかとは思ってたんだけどな・・・
でも・・・・・二人には知ってほしくなかったな・・・」
「・・・ユ、ユウキ?」
今にも泣きそうなユウキの言葉に、アスナは困惑するしかなかった。
だが、俺は・・・
「よぉ・・・こうして現実世界で会うのは二度目だな、ユウキ」
「・・・そっか・・・フォン・・・蓮も思い出したんだ」
「ああ・・・・・だからこそ教えてくれないか?どうして、ALOから姿を消したんだ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「ど、どういうこと・・・?」
「明日奈。このメディキュボイドはな・・・世界初の医療用フルダイブ機であり、ターミナルケア・・・終末期医療を目的としたものなんだ」
「・・・・・!?!?」
「・・・フォ、フォン・・・?なんで、知ってるの・・・!?」
俺の言葉に明日奈は今度こそ言葉を無くした。一方で木綿季は信じられないといった表情をしていた。
「・・・簡単な話さ。俺もこのメディキュボイドを使っていたことがあるからさ」
その言葉に今度は木綿季も言葉を無くしたのだった。
「さて・・・どこから話すべきでしょうか・・・?」
戻って来た倉橋先生は、木綿季がいること、俺たちの空気が変なものになっていることに驚きながらも、着席を促し、そう話し始めた。
「えっと・・・いいですか?」
「なんでしょうか、明日奈さん?」
「その・・・ユウキは何かの病気でここに入院していて、この・・・メディキュボイドで治療を受けている、ということなんですか?」
「・・・正確に言うのならば、このメディキュボイドでの治験をお願いしている、という状態ですね」
「・・・・・それで、その・・・」
明日奈の言葉に倉石先生は答えていった。明日奈は言葉を繋ごうとしたが、どう尋ねればいいのか分からないようで言葉を詰まらせていた。
「・・・・・僕の病気のこと?」
「え?・・・う、うん・・・」
「・・・・・いいよね、先生?」
「・・・木綿季君がいいのなら、僕は反対しないよ」
「・・・・・アスナ、フォン・・・僕はね・・・後天性免疫不全症候群・・・エイズに感染してたんだ」
「「・・・!?」」
その言葉に俺も明日奈も言葉を失い、驚くしかなかった。
そこからは倉橋先生が説明してくれた。出生時の帝王切開時に輸血された血液が汚染されておりHIVに感染したこと、ウィルスが薬剤耐性型であったこと、小学校4年の時にエイズが発症したこと・・・それを俺も明日奈も黙って聞いていた。
「・・・木綿季君はいつも笑顔を絶やさず、必死に闘病生活を続けていました。その時でした・・・アメリカで薬剤耐性型のエイズにも効果がある特効薬が完成したとのニュースがあったんです」
木綿季を優しい目で見つめながら、倉橋先生は言葉を続けた。
「ただ、その薬はまだマウスでの実験を終えただけで、人での臨床実験は未定の状態だったんです。そんな時、日本に臨床実験の話が回ってきたんです・・・丁度、その時でした・・・
メディキュボイドの試作1号機、2号機が完成したのは・・・」
「・・・・・それじゃ・・・」
「ええ。僕も木綿季君にその話はしました・・・その特効薬は副作用がどんなものなのか、効果が未知数であることも伝えました・・・それでも、彼女もご両親もその特効薬に賭けてみることにしたんです。
それと同時に、無菌室に設置されているメディキュボイドに入ることも決めてくれたんです・・・もし特効薬が効かなかった場合でも、日和見感染を避けることができますからね」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「そんな時でした・・・ある事故に巻き込まれた高校生がこの病院に搬送されてきたんです・・・それが・・・」
「俺・・・だったんですね」
「・・・ああ」
倉橋先生の言葉を俺は引き取り、答えた。
「君はご両親から聞いているかもしれないが・・・音弥君は交通事故に巻き込まれてこの病院に運ばれたんだ」
「・・・事故」
「トラックから飛び出した猫を庇った、らしい・・・
けど、猫を庇った時に側道で頭を打ったらしくってな・・・異常はなかったんだけど、意識不明の状態が続いたらしい」
「・・・そこで担当医がある提案をしたんです・・・メディキュボイドを使って、音弥君をVRにダイブさせ、そこで意識を覚醒させる治療方法をね」
「・・・・そんなこと可能なんですか?」
「正直言って、やってみなければ分からない、というのが現状だったらしい・・・けれど、このまま一生目が覚めないよりは、少ない可能性にかけてみたい・・・それがご両親のお考えだったんだ。そして、その目論見はうまくいった・・・
だが・・・」
「その日はSAOの正式サービス開始の日で、混線したメディキュボイドに入っていた俺はSAOに巻き込まれてしまった・・・そうですよね?」
「・・・ああ。君より早くメディキュボイドを運用していた木綿季君に問題はなかったんだが・・・音弥君の意識はそれから2年近くSAO・・・そして、ALOに捉われることになった」
「・・・・・もしかして、あの時、団長が言ってた意味って・・・」
「ああ・・・俺はナーブギアじゃなくって、メディキュボイドを使ってログインしていたから、そう言ったんだろうな」
明日奈の言葉に俺はそう答えた・・・俺が平行世界から来たことは和人にしか伝えていない。正直言って、俺も気付いた時にはSAOの中だったから、その事実を知ったのはかなり後だったのだが・・・
ちなみに、事故前後の記憶は良く覚えていないで一貫したのは余談だ。
「そして、特効薬とメディキュボイドの運用を開始してから約2年・・・
あれはSAOがクリアされる数日前・・・月1で行われている定期検診の結果が出た時でした・・・木綿季君の体からHIVウイルスが完全に消滅したんです」
「・・・それって!?」
「・・・ええ。特効薬が効果を発揮したことを意味していました・・・その前から、少しずつ数値が良くなっていたのですが・・・ここまで一気に効果が発揮されるとは僕も思っていませんでした・・・そこで、リハビリを兼ねて、この無菌室からの外出を許可したんです」
倉石先生は一息入れるためにもう冷めきってしまっただろうコーヒーを飲んだ。
「そして、SAOがクリアされ・・・レクトの問題が解決したことで・・・SAOに捉われていた音弥君も現実世界に帰還し、彼もリハビリをこの病院で始めたんです」
「・・・ええ。その時です、俺がたまたまユウキと出会ったのは・・・」
「・・・僕もビックリしたよ!だって、あのゲームの洞窟で出会ったフォンとそっくりな人が現実世界にもいたんだもん・・・同じ人だなんて、信じられなかったもん・・・!」
倉橋先生に話を振られ、ユウキと初めて現実世界で会ったことを話すと、ユウキも少し興奮しながらそう返してくれた。
「えっ・・・待って!もしかして、ユウキ・・・それ以前に、フォン君と会ったことがあったの?」
「えっ?・・・うん。その時は、僕は光みたいな妖精だっただけどね・・・」
「SAO時代に、あるトラップダンジョンでな・・・今、思ったら、俺がこの病院のメディキュボイドでログインしていたから、ユウキもそれに巻き込まれたのかもしれないな・・・」
明日奈の問いにそう答える・・・あの不思議なダンジョンが生成されたのが、俺が原因ならば、ユウキが一時的にSAOに巻き込まれたのも納得のいく話だ。
「・・・木綿季君から話を聞いた時は本当に驚き、肝が冷えました・・
彼女までSAOに行ってしまったのですからね・・・そして、その時からですね、フォン君・・・音弥君の話を聞くようになったのは」
「せ、先生!」
「ああ、ゴメン、ゴメン・・・!さて、話を戻しましょう。
そして、HIVウイルスの特効薬が人に対して、効果を発揮することが証明されたことはアメリカの研究機関にも伝わりました・・・その薬も、今年の4月には世界に発表されることになっています・・・
そして、去年の9月・・・木綿季君の退院が今年の3月末に決まりました」
「・・・そこからです。話が分からない・・・どうして、ユウキは俺達の前から姿を消したんだ・・・?いや、スリーピングナイツを解散するなんて・・・こうして、病気が治ったのなら・・・」
「だからこそなんです、音弥君」
「・・・えっ?」
俺の疑問は、悲しそうな表情をした倉石先生に憚られた。
「それは・・・」
「先生・・・そこからは僕が話すよ」
「木綿季君・・・」
「・・・フォンとアスナには話さなきゃならないと思ってたからさ・・・でも、ここじゃ、ちょっと話しにくいから・・・場所を変えてもいいかな?」
そう言って、ユウキはメディキュボイドを指さしていた。
その意図を読み取った俺と明日奈は静かに頷いた。
次回 SAO~夢幻の戦鬼~
「いい加減にしろよ・・・!」
「ユウキ・・・今すぐ、俺と戦え!!」
「な、何で・・・!?どうして!」
「フォン君、落ち着いて!」
「答えろ!・・・お前は本当は・・・どうしたいんだ!!!!!」
「・・・・・・ボクは・・・・・!?」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
・・・・・ガァン!!!
『彼は何に対し激怒したのか』
次回予告で、まさかの急転直下・・・
その答えは、次回までお待ち頂ければと思います。
ちなみに、メディキュボイドが二つあることや木綿季の病気の完治・・・これらは後に重大なファクターとなってきます。
まぁ、すぐのお話ではないので、記憶に留める程度に覚えておいてください。
次回更新 31日 0時予定