というわけで、フォーゼです。
ちなみに、ALO編であまり描写がなかったので、補足しておきますが、
学校では、蓮(フォン)は明日奈、里香と同じクラスメイトです。
それでは、どうぞ!
翌日
「だからさ、これじゃジャイロが敏感すぎるんだって・・・だからここら辺のパラメータにもっと余裕がないと」
「だけど、急な挙動があった時にラグるんじゃないのか?」
「その辺は、最適化プログラムの学習効果に期待するしかないよ」
「・・・・・・うーん・・・ねぇ、まだ!?昼休み終わっちゃうよ!」
「和人、まだかかりそうなのか?」
空き教室で、友人たちと作業を続ける和人はノートパソコンの画面を見ながら、ああでもない、こうでもない、という議論を続けていた。
流石に時間が迫ってきたこともあり、明日奈と俺は思わず尋ねてしまった。
「よし、とりあえず初期設定はこれでいいとして・・・ユウキさん、聞こえますか?」
『はーい!よく聞こえてるよ!』
「よし・・・これからレンズ周りをイニシャライズするんで、視界がクリアになったところで、教えてください」
『ほい、了解!』
そのまま、和人はパソコンを操作していった。
『・・・そこ!』
ユウキが声を出し、キリトが更に操作を続けた。
「よし、これで設定は完了だ。明日奈、一応スタビライザーは組み込んでるけど、急激な運動は避けてくれよ」
「了解!」
「蓮。悪いが、明日奈とユウキさんのこと、頼むな」
「ああ、受け持った。それじゃ行くか、明日奈、ユウキ」
「ええ」『うん!』
・・・二人にそう声を掛け、俺たちは学校探索へと出発することにした。
さて、どうしてこういうことになったのか・・・話は昨日のあの後に遡る・・・
簡単に言えば、以前、話題に上がった和人が作成している『双方向通信プローブ』を使えば、ユウキも学校に疑似的に行くことができるのではないか・・・
そう思った俺と明日奈はすぐさま和人に相談したのだ。相談を受けた和人は喜んで承認してくれ、ユウキのメディキュボイドとの接続、プローブの装着・設定などなどを先ほどまで行っていたのだ。
ちなみに、俺は学校にユウキの学校見学の許可をもらいに授業前に先生を尋ねに行っていた・・・流石に難色を示されるかと思ったが、意外にもすんなりと許可をもらえたのは予想外だった。
・・・というわけで、今、俺たちは先ほどいた教室棟から俺たちの教室がある棟へと移動していた・・・誰に対しての説明だろうか、これは?
『うわー・・・大きい学校なんだね』
「ゴメンね、ユウキ。先に学校の中を案内したかったのに・・・」
「思った以上に時間を取られたからな・・・もう昼休み終わっちまうな」
『いいよ、いいよ。授業を見学できるだけでも楽しみ!』
明日奈と俺の謝罪をユウキは気にせず、そう明るく返してくれた。
「オッケー!それじゃ、次の授業の先生に挨拶に行こう!」
明日奈の言葉に、俺たちは職員室へと移動することになった。
『・・・はぁ・・・』
「・・・どうしたんだ?」
『えっと・・・ボク、昔から苦手だったんだよね、職員室』
「大丈夫・・・ここは先生っぽくない先生ばっかりだから・・・失礼します!」
『し、失礼します・・・!』
(・・・最初に顔合わせした時には、本当に大丈夫かと思ったけどな・・・)「失礼します」
俺の言葉に、ユウキは不安そうに答えた。それを励ます明日奈の言葉に、そんなことを思いながら、俺は明日奈に続いて、職員室に入った。
そのまま、次の授業・・・国語の先生の元に向かう。
「・・・やぁ、音弥君、結城さん」
「授業前にすみません。今朝、ご相談させていただいた件なんですが・・・」
「ああ、構わんよ・・・その生徒さんのお名前は何と言ったかな?」
『あっ、はい!ユウキ・・・紺野木綿季です』
「ほう・・・紺野さん。良かったら、これからも授業を受けに来たまえ」
「「『えっ・・・?』」」
先生の意外な提案に俺たちは思わず、声を揃えて驚いてしまった。
「今日から、芥川龍之介の『トロッコ』をやるんでね。あれは最後までいかないと
つまらないものになってしまうからね」
『!・・・はい、ありがとうございます!』
そのまま、俺たちは職員室を後にし、
「『・・・はぁぁー・・・』」「・・・ふぅ」
安堵の息を吐いていた・・・無事に挨拶は完了し、そのまま俺たちは教室へと向かった。
教室に着くと、明日奈は仲良くしている女子グループの元へと向かった。流石にあの中に混じる勇気はないため、俺は自分の席からそれを遠巻きに見ていた。明日奈とユウキはあっという間に注目を集め、クラスメイトから質問攻めにあっていた。
(これは、授業が始まるまでこのままだな・・・)
俺がそんなことを考えていると、丁度よくチャイムが鳴り、先生が入室したことで明日奈たちも解放され、全員が着席した所で日直が号令をかけ、授業が始まった。
「では、今日から芥川龍之介の『トロッコ』を始めます。教科書の91ページを開いて・・・では、最初から読んでもらいましょう。
・・・紺野木綿季さん、お願いできるかな?」
「・・・・・はわわ!?」『・・・・・はいぃ!?』
まさかの指名にユウキだけでなく、明日奈まで驚いていた・・・俺もちょっと驚いたが。
「・・・無理かね?」
『で、できます・・・!』
先生の問いかけに、答えたユウキの声は少し緊張しているようだった。
俺は内心ハラハラしながら、その様子を見ていたのだが・・・
『小田原熱海間に、軽便鉄道敷設の工事が始まったのは・・・・・・・・・・・』
すらすらと読み始めたユウキの言葉を聞き、その心配は杞憂だったと思い、俺はユウキの朗読をゆったりした気分で聞いていた。
授業が終わり、クラスメイトからの再度の質問攻めをなんとか脱出し、俺たちは校庭のベンチへと来ていた。
『あー、面白かった!』
「・・・良かったぁ・・・」
『アスナ、フォン・・・今日は本当にありがとう!凄く楽しかった!』
「先生も、明日も来ていい、って言ってたし・・・これから毎日通うのも面白いかもな?まだ色々と見せたいもの、いっぱいあるしな」
『・・・・・うん・・・本当にありがとう』
「・・・そうだ!まだ時間あるし、ユウキはもっと他に見たいものはない?」
『・・・えっと・・・それじゃ、一つ・・・我が儘聞いてもらっていい?
・・・どうしても行ってみたいところがあるんだ』
「どこだ?」「どこ?」
ユウキの言葉に俺と明日奈は首を傾げた。
横鉄 星川駅近く・・・月見台の住宅街
明日奈を後ろに乗せ、バイクを走らせ、向かった先・・・俺たちはある一軒家の前に来ていた。
「ここが、ユウキのお家?」
『・・・うん。もう一度見ておきたいと思ったんだ・・・』
ユウキのお願い・・・それは、以前家族で住んでいた家をどうしても見ておきたいとのことだった。バイクを側道に止め、俺は明日奈とユウキと共にその家を眺めていた。
植物は枯れ、もう長いこと人が住んでいない事を表していた。
「中に入るか?」
『・・・ううん、これで十分・・・さぁ、早く帰らないと、遅くなっちゃうよ?』
「まだ少しは大丈夫だよ!帰りは蓮君が送ってくれるし」
ユウキの心配を明日奈は心配無用だと返した。まぁ、ここから明日奈の家までそこまでかかる距離じゃないので、確かに大丈夫だろう。
『この家で暮らしたのは・・・ほんの一年足らずだったんだよね。
でも、あの頃の一日一日は凄く良く覚えてる。あの庭で姉ちゃんといつも走り廻ってた・・・バーベキューしたり、パパと本棚を作ったりしたよ!
・・・楽しかったな・・・』
ユウキはしみじみと思い出を語ってくれた。
『でもね・・・この家、もう取り壊されちゃうんだ・・・』
「えっ・・・なんで!?」
『叔母さんがね・・・この家を壊して、コンビニにするか、売りたいんだって・・・』
「・・・・・そんな・・・!」
『・・・だから・・・最後に、取り壊される前にもう一度見ておきたかったんだ』
(だけど・・・いくら親権者だからって、所有する本人の意思に反した行為はできないはずだ・・・)
おそらくそれを知らないユウキを騙して・・・という言い方は汚いが、叔母はそんな計画しているのではないか・・・そんな疑念が俺の頭をよぎった。
「それじゃ、こうしたらどう?・・・ユウキ、もうすぐ15だよね?16になったら、好きな人と結婚するの」
『・・・ええぇぇ!?』
「それなら、成人としてみなされるから、叔母さんの言うことを聞かないで済むよ」
『・・・アハハハハ!アスナ、凄いこと考えるね!でも、相手がいないしな・・・』
「・・・いるじゃない・・・すぐ傍に・・・」
「『・・・えっ・・・?』」
明日奈の言葉に思わず、俺とユウキの声が揃った。
「ジュンとかどうなの?いい感じじゃない?」
『あ、ああ・・・!ジュ、ジュンね!?ちょ、ちょっとお子様すぎるし・・・!』
「そ、そうなのか!?そうか、そうか!!」
「・・・どうしたの、二人とも?」
明日奈の言葉の意図をようやく理解し俺は安心した。
(・・・あれ、なんで安心したんだ・・・?)
そんなことを疑問に思いながら、ユウキの結婚相手の話は続いた。
「それじゃ、ユウキはどんな人と結婚したいの?」
『えーとね・・・そうだな、ボクと同じくらい強い人で・・・見てて飽きなくて・・・ボクのことを本気で心配してくれる人かな。それも怒ってでも叱ってくれる人、とかかな?』
「・・・えっ?それって、もしかして・・・れ「ストップ!ストップ!」えっ!でも・・・!?」
「ど、どうした、ユウキ!そんな大声出して・・・?」
『な、なんでもないから!?ア、アスナ、ちょっとフォンと距離取って・・・!』
「う、うん・・・!」
そう言って、女子たちは離れて行ってしまった・・・
いきなり蚊帳の外に置かれてしまった俺はどうすればいいのか、困ってしまった。
そして、女子たちが帰って来た時には・・・
「さっきの話はこれで終わり!いいね!」
『いいよね、フォン!!!』
「・・・わ、分かりました」
もの凄い気迫の二人の言葉に俺は素直に頷くしかなかったのだった・・・
そのまま、話はユウキの家族・・・そして、明日奈の家族の話に移った。
「私ね・・・お母さんの声がずっと聞こえないの・・・向かい合って、話しても・・・心が聞こえない・・・私の言葉も伝わらない」
『・・・あ・・・』
「ユウキ、前に言ったよね・・・『ぶつからないと伝わらない事もあるって』・・・」
『・・・・・うん』
「昨日の蓮君とユウキを見て思ったんだ・・・どうしたら、二人みたいにそんな強くなれるだろうって・・・」
『・・・ぼ、僕、強くなんて・・・』
「・・・そんなことないよ・・・私なんて、人の顔色ばかり伺って、おびえたり、尻込みしたり・・・」
「・・・・・それは俺も一緒だよ」
「『・・・えっ?』」
明日奈の言葉を俺は遮った・・・同じ境遇の明日奈の話を聞いたからだろうか、俺は今まで話していなかったことをつい話したくなった。
「俺もさ・・・実は家族とどう接したらいいのか、分からくなってるんだ。
・・・特に父さんとな」
『・・・お父さん?』
「・・・ああ。昔はさ、テストで100点取ったり、賞を受賞したりしたらさ・・・不愛想ながら、褒めたりしてくれたりしてたんだ。けど、中学の時からかな・・・
なぜか父さんの考えが分からなくなったんだよ」
「・・・・・・それって」
「父さんの仕事をさ、その時は継がないといけないと思っててさ・・・必死に勉強してたんだ・・・別に好きな物を止めたりとか、友達付き合いがなくなったとかじゃないんだ。だけど、いつも父さんは、俺に何か言いたそうなのに、それを言ってくれなくて・・・
その上、SAOに巻き込まれて・・・帰って来た時には、両親と話してても・・・
なんかこう・・・ズレを感じるっていうかさ・・・」
『・・・・・フォン・・・』
「・・・上手く言えないだけど・・・まるで赤の他人みたいに感じちゃってさ・・・」
「・・・・・蓮君」
『・・・あ、あのね、アスナ。フォンも・・・ボクもね、別に現実世界にいた時から強かったわけじゃないよ?』
「「・・・えっ?」」
俺と明日奈の言葉を聞いていたユウキはそう言った。その意外な言葉に俺と明日奈は驚きの声を上げていた。
『パパとママを悲しませないように・・・それこそ、フォンみたいにフリでも元気でいなきゃと思ってたんだ。演技でも、それで笑顔でいられる時間が増えるなら、それでいいとボクは思ったんだ。
・・・その時は、病気が治るなんて、思ってなかったからさ・・・遠慮する時間がもったいないと思っちゃってたんだよね。』
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
『だからね、最初からドカーン!ってぶつかってさ、相手に嫌われちゃってもいいんだって思ったんだ・・・その人の心の近くまで行けたことに変わりはないもんね・・・』
「・・・・・そうだね・・・ユウキがそう言ってくれたから、私たち・・・ここ何日かでこんなに仲良くなれたもんね」
『・・・ううん、それはボクじゃないよ』
「えっ・・・?」
『ボクが逃げても、アスナたちが一所懸命に追いかけてくれたから・・・
ボクが弱腰になっていたら、フォンが必死に叱ってボクのために怒ってくれたからだよ・・・
だから、あの時みたいに・・・二人とも、話してみたらどうかな?気持ちって、ちゃんと伝えようとしたら、伝わるものだと思うから』
「「・・・・・・・・・・・・・・」」
『大丈夫だよ!アスナはボクよりもずっと強いし、フォンだってボクを打ち倒しちゃうぐらいなんだから・・・きっとできるよ!』
「できるかな・・・?」
『できるよ!だって、アスナもフォンも、ドーン!とボクにぶつかってくれたじゃない!
だから、ボクはこの人たちには全てを任せられると思ったんだ・・・だから・・・』
ユウキの言葉に俺たちはゆっくりと空を見上げた・・・その言葉に俺も明日奈の目にも、もう迷いの色は消えていた。
次回 SAO~夢幻の戦鬼~
「・・・・・・・ここに行きたいだけど・・・どっちに行けば、いいのかしら・・・?」
「・・・・・母さん・・・・・・!」
「大丈夫ですか?」
「あ、ああ・・・!」
「・・・あら、お父さん・・・?」
「・・・えっ・・・?」
「・・・何言ってるのよ・・・この子は蓮よ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・えーと・・・うん、俺だよ、父さん・・・蓮だよ」
『交響曲~息子が見る世界~』
ウェイクアップ!定めの鎖を解き放て!
というわけで、次回はオリジナルエピソードになります。
ユウキはお休みです・・・ユウキファンの皆様、申し訳ありません。
フォンの母親も登場します。
そして、プロローグから触れてきた、フォンと家族の問題・・・それらにケリがつきます。ある意味、マザーズ・ロザリオ編のもう一つのテーマともなります。
次回更新 2日 0時予定