ソードアート・オンライン~夢幻の戦鬼~   作:wing//

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タイトルをブレイド劇場版『MISSING ACE』に近づけたかったんですが・・・
良いタイトルを考えてたら、ここまで長くなるという失態・・・万死に値する!
(これが言いたかっただけです)

意味は、見ての通り『夢幻の戦鬼』を英語でかっこよくした感じです。

それでは、29層ボス戦の開幕です。どうぞ!


第11話 「The Battler of Phantom Demon」

新生アインクラッド 第29層

ボス部屋を前に、俺は・・・背後にいたスリーピングナイツの面々に声を掛けた。

 

「・・・それじゃ、行こう!」

「「「「「「おおう!!!」」」」」」

 

そう、俺たちは再び、1パーティでのボス攻略に挑戦しようとしていたのだ。

今度は、俺とスリーピングナイツのメンバーで・・・

 

どうして、こうなったのか・・・話は半月前に遡る。

 

 

 

キリトたちのログハウスで行ったバーベキュー大会の後、その場にいた面々で28層のボスを攻略した時だった。

 

「ねぇ!今度はフォンも一緒に1パーティでのボス攻略しない?」

 

というユウキの言葉が発端であった。流石に断ろうかと思っていたのだが・・・

スリーピングナイツの面々も賛同し、まさかのアスナまで話に乗ってしまったのだ。

極めつけは・・・

 

「・・・駄目、かな・・・?」

 

上目遣いのユウキの言葉に駄目だと言うことができず・・・アスナと共に作戦を練り、今日・・・29層のボスに挑戦することになったのだ。

回想終わり・・・本当に誰に対しての説明なのだろうか・・・

 

 

 

俺が扉を開き、全員がボス部屋に入ったところで、最後に入ったシウネーが扉をロックした。そして、それぞれが武器を構え、臨戦態勢に入った。

俺も武器をいつでも抜けるように警戒を強めた。

すると・・・

 

「っ・・・見て!」

 

ユウキの指さした方を見ると、地面から何かが生えてきていた。それはどんどん形を作っていき・・・

 

「おいおい・・・」「・・・うそぉ」

 

その姿を見た時、俺とユウキは思わず、言葉を漏らしてしまった。

 

それは、かつてSAOで俺とユウキが戦った・・・あの洞窟の主『The Despair Forest Master』にそっくりだったのだからだ。

あっちが真っ黒な樹木に近い姿だったのに対し、こっちは樹に緑の蔓が巻き付いて、若々しさを感じさせる姿、といった差異はあるため、別個体なのだろう。

モンスター名も『The Hope Living tree』となっている。

 

「戦闘開始!シウネー、ヒールは頼んだ!」

「分かりました!」

「作戦通り、ユウキとジュンは攻撃に集中してくれ!他は、俺と一緒に遊撃を頼む!」

「「「「「了解!」」」」」

「行くぞ!」

 

俺はショートランス『マガツノミヤヅチ』に盾『ドボルベルク』を構え、ジュンのフォローに入った。

事前情報の通り、ボスは腕の振り回し攻撃に、一定パターンで種を飛ばしてくる遠隔攻撃の2種を繰り出してきた。

 

それに対し、俺たちが取った作戦はヒット&アウェイ。ディーラーのユウキとジュンは構わず攻撃し続け、他の前衛・中衛メンバーはそれを援護しながら、時には攻撃に転ずる・・・

基本は回避を重視しての作戦であり、シウネー一人であってもヒールが間に合うことを想定しての作戦で、俺たちはボスに攻撃を仕掛け続けた。

 

・・・というよりも、俺がアスナみたいに回復魔法が使えないため、アイテムでの回復を頼りにするしかないからこういう作戦になったのだが・・・

 

「テッチ、一回下がれ!タンクは任せろ!ノリ、ユウキのフォローを!

タルケン、俺が次の攻撃を防いだら、ジュンとともに突っ込め!」

 

ボスの攻撃を捌き、各員に指示を出しながら、俺はこのボス戦に向けての作戦会議の時、アスナに言われたことを思い出していた。

 

『フォン君って前線での動きを見るのが得意だから、小隊指揮みたいなの得意だと思うだよね』

 

・・・あの時は、そんなことはないと思って、軽く聞いていたのだが・・・

どうやら、アスナの指摘は正しかったらしい。

 

「シウネー、MPは!」

「まだ、大丈夫です!」

「分かった!EXポーションを2本渡しとくから、必要になったら使ってくれ!

っ!範囲攻撃来るぞ!!」

 

ボスのモーションから、パーティ全員に回避を指示する。ユウキを庇い、盾で種を防ぐ。

 

「これで・・・あと2本!!」

 

範囲攻撃の硬直を狙い、ユウキが片手剣4連撃ソードスキル〈ホリゾンタル・スクエア〉でボスのHPを削り切る。

これで、残り2本・・・ボスの攻撃にも変化が出るはず・・・そう思い、警戒を強めた時だった。

 

「な、なんだ・・・?」

「うぇぇぇ・・・なんか、ぐにゃぐやしてるぞ!」

 

テッチとジュンの言葉通り、ボスが謎の行動を取っていた。体を不自然に動かしているのだ。

 

その光景に・・・俺はあの洞窟での出来事を思い出した。

 

「っ・・・全員、飛べ!!!」

「「「「「「!?!?!?!」」」」」

 

地面に異変を感じた俺は指示を出しながら、跳躍した。

しかし、飛行機能があるALOにて、さっきの俺の指示は完全にスリーピングナイツのメンバーを混乱させてしまい、全員が一瞬行動が止まってしまった。

その瞬間、

 

「こ、これは・・・!?」

「う、動けない!」

「くっ・・・・・このぉ!?」

 

全員の足元から蔦が絡みつき、俺以外のメンバーをからめとってしまった。

後衛のシウネーまで拘束されてしまっており、ノリとユウキがほどこうとしているが、びくともしていなかった。

 

(くそっ!あの時の拘束技の強化版か!?)

 

アインクラッドの隠しダンジョンでの苦い思い出を思い出しながら、気づけなかったことを悔やんだ。

とにかく、今動けるのは俺一人・・・なんとかボスのヘイトを稼ぎ、皆の回復を待つしかない。

俺がそう考えている時だった。

 

『GUOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!』

「お、おい・・・なんだよ、あれ・・・!」

「い、隕石・・・?」

 

ジュンとタルケンの言葉が全てを表していた・・・奴の背後に、範囲攻撃で放っていた種の強化版らしき、数倍でかい種・・・隕石が数個浮かび上がっていた。

 

「(ちぃ!あれで、一気に範囲を攻撃する気か・・・!)させるかぁ!!!」

 

俺はウィンドウを操作し、『高速換装』を発動させる。

背に弓『風月の灯』を背負い、緑を基調とした、狩人風の軽装装備『縁結を背負いし者』を装備する。そのまま、頭部のゴーグルを装着し、弓を構え・・・ソードスキルを発動させる。

 

『GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!』

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

奴が隕石を放った瞬間、俺も弓を放つ・・・一度だけでなく、二度、三度・・・次々と矢を放ち続ける。

幻想剣《弓》魔法兼用連射ソードスキル〈ヘクセレイ・アンフィニ〉・・・実矢でなく、魔法の矢を放つこのソードスキルは、MPも同時に消費して発動することで、MPが続く限り魔法の矢を放ち続けることができる。

 

そして、このソードスキルの矢は爆発するという珍しい特徴がある。

全力で連射した魔法矢の雨は隕石群にぶつかり、大爆発を起こす。相殺された隕石群は塵と化した。

 

『GUGYA!?』

 

まさか、相殺されるとは思っていなかったのだろう・・・ボスが狼狽えたように見えた。

それを好機と捉え、俺は一気にボスへと急接近した。だが、ボスもすぐさま体勢を整え、俺を近づけまいと根を張り廻らせ、俺に放ってきた。

 

「フォン!!!」

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

 

俺はソードスキルの構えを取り、根を弓で逸らし避けながら一気にボスの元へと駆け込み、その胸元へと飛び込んだ。

 

「喰らえぇぇぇ!!」

 

幻想剣《弓》超重単発ソードスキル〈グリューエン・インパルス〉。

弓ソードスキルの中でも射程距離が目の前という異常な短さの技だが・・・

 

『GUOOOOOOOOOOOOOOO!?!?!?』

 

閃光とともに大爆発を起こした一撃はボスを貫き、その巨体をダウンさせた。

反動で俺も後方へと大きく吹っ飛ばされた。

 

「フォ、フォン!?」

 

ボスがダウンしたことで、ユウキたちも動けるようになったらしい。

全員が動けるようになっているのを横目で確認しながら、俺は地面を転がった。

ユウキが駆け寄り、俺の体を受け止めてくれた。

 

「だ、大丈夫、フォン!?」

「まだだ!ユウキ、油断するな!」

「っ・・・!?」

 

ユウキに注意を促し、ストレージからハイポーションを取り出し、一気に飲み干す。

ボスも体勢を立て直し、俺たちに攻撃をしかけようとしていた。俺は再びウィンドウを操作し、リキャストが完了した《高速換装》を使用する。

今度は重槍『エレファス・ボーデン』に西洋鎧を意識した『第8騎士団の鎧』を装着し、叫んだ。

 

「いいか、ここからが正念場だ!さっきの拘束と、根を使った攻撃は全員回避するんだ。拘束攻撃は俺が合図するから、みんなは他の攻撃の回避に専念してくれ!

シウネー!」

「は、はい!」

「EXポーションを全部渡す!回復以外に、最上位魔法で攻撃もしてくれ!

テッチ、ジュン!」

「は、はい!」「おう!」

「作戦変更!二人はタンクを頼む!根での攻撃は範囲が広い!防御がしやすい二人でカバーした方が確実だ!」

「「了解!」」

「ユウキ、ノリ、タルケン!3人は構わず突っ込め!根以外の攻撃はスピードが変わっただけだ、避けられる!」

「分かった!」「おう!」「分かりました!」

「長引けば、こっちが不利だ!短期火力で一気に攻める・・・勝つぞ!!!」

「「「「「「おう!!!」」」」」」

 

その言葉にスリーピングナイツたちも一段と気合が入り、俺たちは戦闘を再開した。

 

 

 

HP減少に伴い、ボスの攻撃力もスピードも上がっていたが、それを俺たちは上回り、更にHPを削っていく。種や根の範囲攻撃を俺が見切り、タルケンとテッチが躱しきれない攻撃をタンクとして防ぐ。

その隙に、俺たちディーラーがソードスキルを使い、HPを削っていく。

そして、HPはラストの1本を切り、その1本も俺の槍7連撃範囲ソードスキル〈ワイルド・ツイスター〉で半分を切った時だった。

 

『GOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!』

「っ!?全員防御!!!」

 

俺の叫びに、全員が散開しながら、身を守った。

・・・その瞬間、フィールドの中央から特大の根が飛び出した。なんとか槍でそれを防御するも、全てを防ぎきれずHPを削られる。

 

「み、みんな無事か!?」

 

全員に安否を尋ねると、ダメージは受けているものの、どうやら全員無事のようだった。

 

「・・・ユウキ、危ない!?」

「っ!?」

 

シウネーの言葉に、ユウキの方を見ると、ダメージから立ち直れていないユウキにボスが迫っていた。その姿に、俺は痛みを押して、走り出していた。

 

「ユウキィぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!」

 

三度目となる《高速換装》を使い、『蒼炎の烈火Ver2』を纏い、両手剣と刀を両手に構え、更にスピードを上げる。

 

『GUOOOOOOOOOOOOOOOO!!!』

「っ!?」

 

ボスが腕を振り上げ、ユウキに振り下ろそうとした瞬間、

 

「でやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

両手剣と刀を交差させ、その一撃を逸らす。

そのまま、ボスの懐に飛び込み、両手剣でソードスキルを発動させる。

まずは、両手剣6連撃最上位ソードスキル〈カラミティ・ディザスター〉。本来両手で発動することを前提とした最上位ソードスキルに体が悲鳴を上げる。

・・・だが、それを無視し、今度は刀を持つ手に意識を集中させ、

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

スキルコネクトで、硬直無しでソードスキルを発動させる。刀3連撃ソードスキル〈羅刹〉、そして、幻想剣《両手剣》超重単発最上位ソードスキル〈エンド・オブ・フォーチュン〉を放つ・・・ボスのHPがみるみる減っていき・・・残り数ドットで止まった。

 

『GYAA!!!!!』

 

硬直で動けなくなった俺を見て、ボスが勝利を確信したように笑ったように見えた。

・・・だがそれはこっちの台詞だった。

 

「行け、ユウキ!!!!!」

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

俺の掛け声と同時に、俺を踏み台にしたユウキはボスの顔面目掛け、十八番であるOSS〈マザーズ・ロザリオ〉を放った。残りドットしかHPが残っていないボスが耐えられるわけもなく・・・ユウキの11連撃に、

 

『GUGYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!?!?!?』

 

断末魔を上げ、その姿をポリゴンに変えた。空中には『Congratulations』の文字が浮かび、それを見た俺達は、

 

「「「「「「「やったぁぁぁぁぁぁ!!!」」」」」」」

 

勝鬨を上げていた。

 

「やった!やったよ、フォン!」

「ああ、やったな!」

 

喜びでテンションの上がったユウキのハグを受け、俺も喜びの余り、思わずユウキを抱きしめ返していたのだが・・・

 

「っ・・・ゴ、ゴメン!」「わ、悪い!?」

 

冷静になり、互いに抱き着いていたことに、顔を真っ赤にさせながら、離れた。

つい抱きしめてしまったが、ユウキは嫌な思いをしていないだろうか。

 

「ううう・・・つい、抱き着いちゃった・・・!」

 

・・・どうやら嫌がられてはいないようだ・・・ユウキのどこか嬉しそうな笑みを見て、ちょっとほっとした。

 

「ユウキ、フォンさん!打ち上げに行こうぜ!」

「打ち上げ、打ち上げ!」

 

ノリとジュンの言葉に俺とユウキは目を合わせ、

 

「よし、それなら俺が腕を振るっちゃおうかな!」

「本当!フォンの手料理、楽しみ!」

「フォンさん、料理スキルを鍛えてらっしゃるのですか?」

 

俺の宣言にユウキとシウネーがそれぞれ反応を示し、俺たちはボス攻略のお祝いをするため、ボス部屋を後にするのだった。

 

次の日、またしても単独パーティーでのボス攻略を果たしたことで、スリーピングナイツのみんなと俺が情報屋に追い回されたのは、余談だ。

 

 

 

次回 SAO~夢幻の戦鬼~

 

「統一デュエルトーナメントか・・・」

「うん!フォンも出場するよね?」

 

「・・・勝つ・・・絶対に勝つ」

(・・・勝って、ユウキに・・・)

 

「さぁ、勝負と行こうぜ・・・『幻想剣』と『二刀流』・・・どっちが強いのか・・・」

「白黒つけるか、フォン!」

 

「悪いな、キリト・・・これが俺の勝ち方だぁ!!!」

 

『ALO剣術トーナメント 前編 夢幻の戦鬼Vs黒の剣士』

全てを破壊し、全てを繋げ!

 




【ソードスキル解説】
幻想剣《弓》魔法兼用連射ソードスキル〈ヘクセレイ・アンフィニ〉
MPを消費し、魔法の矢を放つソードスキル。MPが続く限り、矢を放ち続けることができる。一回弓を引くたびに10発の矢を放ち、着弾すると大爆発を起こす。
モーションは弓ソードスキル〈ワイド・ショット〉に酷似している。
ちなみに、没ネタとして、フォンが某ガンダム劇場版の台詞「乱れ打つぜ!!!」を叫びながら放つ、というシーンも考えてましたが、キャラが違いすぎるので、ボツになりました。

幻想剣《弓》超重単発ソードスキル〈グリューエン・インパルス〉
射程距離ゼロ距離の超威力の矢を放つ。弓ソードスキルの中では、異端の超接近型ソードスキル。攻撃と共に、爆発でプレイヤーを後方へ無理矢理吹き飛ばし、対象を強制的にダウン状態にする。対人戦で真価を発揮するが、ボス戦でも、ダウンを取りたいときに重宝する。
ちなみに、こちらの技も、第1期の23話のラスト、
「狙い撃つぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
みたいに叫ばせようかと思いましたが、あまりにもキャラが(略)

はやくくっつかないかな、この二人・・・
そんなことを思いながら、書いてたりしてます、この話(笑)

ここから、時系列を少し変更します。原作なら、飛行レース→統一デュエルトーナメント大会になりますが、先に統一デュエルトーナメントを行います。

さっさとフォンとユウキをくっつけたいので(笑)

そして、次回は作者が書きたかった話の一つ・・・
フォンVsキリトのバトル回となります!

お楽しみに!

次回更新 5日 0時予定

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