今さらですが、この前後編が一番タイトル長いという事実。
フォンとユウキ・・・二人の剣が、想いが・・・魂がぶつかります!
それでは、どうぞ!
「いや・・・参った。まさか、あんな奥の手を残してるなんてな」
「悪いな・・・キリトに勝つには、ああゆう搦め手でないと駄目だと思ってな」
リメインライトから復活したキリトと控室で先ほどの戦いのことを話していた。
「それにしても、武器破壊か・・・俺の十八番をまさか使ってくるなんてな」
「・・・キリトに普通の攻撃をしても、ほとんど通用しないからな。だから、絶対に避けられない状況で攻撃するしかないと思ったんだ・・・あとで、リズにしこたま怒られそうだけど・・・」
キリトに勝つには、それしかないと思ったのだ。ぶっつけ本番での作戦で、成功するかどうかは賭けに近かったのだが・・・
あと、キリトの愛剣をぶっ壊したことをリズに鬼の様に怒られることは確実なので、今は忘れることにした・・・うん、後が怖い・・・
「さて、あとは決勝だな」
「ああ」
「・・・やっぱり彼女か?」
「・・・だろうな。アスナも強いけどな・・・」
おそらく、本決勝に上がってくるのはユウキだろう。
ブロック決勝でアスナと戦っている最中だろうが、俺はなんとなくそんな気がしていた。
そんなことを考えていると・・・
『そこまで!勝者、ユウキ!・・・・・決勝戦は20分後に行いますので、よろしくお願いします!』
「やっぱり、ユウキが勝ったか・・・」
「・・・さて、それじゃ、俺は観客席に行ってるよ」
「ああ」
そう言って、立ち上がったキリトは扉の方に向かい、
「勝てよ、フォン」
「・・・おう!」
エールを言ってから、控室を後にした。
俺は決勝に向けて、武器と防具の最終チェックを始めるのだった。
そして、20分後・・・
「よう・・・まさか、本当に決勝で戦うことになるなんてな」
「・・・そうだね。でも、フォンとの決着を着ける舞台としては、これほどふさわしい場所はないんじゃない?」
会場で対峙した俺はユウキとそんな話をしていた。
これから、全力の勝負をするとは思えないほど、穏やかな空気が流れていた。
「フフッ・・・」
「・・・ユウキ?」
「ああ、ゴメン、ゴメン・・・これまでフォンと戦ったことを思い出してさ」
いきなり笑い出したユウキは懐かしそうにそう語った。
「ねぇ、覚えてる?・・・初めて戦った時のこと・・・」
「ああ」
「ボクたち、相対した時にはお互い知り合いだって、気づかなくってさ・・・
フォンは仕切り直しとか言っていきなり降参しちゃうしさ」
「まぁ・・・あの時は、フェアな勝負じゃなかったからな」
「二回目はさ・・・ボクの勝手な感情でフォンを怒らせちゃって・・・あの時のフォン、本当に怖かったし」
「あ、あれは・・・俺もおもわずカッとなっちゃって・・・忘れてくれ」
・・・今、思い出すと、俺、恥ずかしいことしかしてないか・・・ユウキの言葉に思わず過去の自分を殴ってやりたくなってきた。
「だからね、フォン・・・全力で戦おうね!」
「!・・・ああ!!!」
ユウキの宣言に、俺も気合を込めて、応えた。
『さあ、さあ、さあ!ALO統一デュエルトーナメント決勝戦!ALO最強の座を賭けたこの戦い・・・遂に決勝の舞台が幕を開けます!選手の紹介です!
東ブロックからは、『黒の剣士』を破り、最強の王座へと王手をかけました!『夢幻の戦鬼』フォン!』
「「「「「「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」」」」」」
『そして、西ブロック代表!ALOに突如現れた、絶対無敵の剣!
1パーティでのボス攻略でも注目を集めております、スリーピンナイツのリーダー、『絶剣』のユウキ!』
「「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」」」」」」」
俺たちの自己紹介が終わり、会場のボルテージが一気に上昇する。
「フォン、負けるなよ!」
「しっかりやりなさいよ」
「ファイトだ、フォン!」
「フォンさん、応援してますから!」
キリト、シノン、エギル、シリカの声援が聞こえてきた。
「ユウキ、頑張って!」
「ユウキ!そんな武器破壊野郎、こてんぱんにしちゃえ!!」
「ユウキさん、いけ~!」
「ユウキちゃん、そんな奴に負けんなよ!」
一方、アスナ、リズ、リーファ、クラインの声援がユウキに送られた。
リズ・・・やっぱりさっきのバトルのこと、根に持ってるのか・・・
『ALO最強のプレイヤーが今、決まります!最強の座を掴むのは一体どちらなのか!さぁ、カウントダウンの開始です!』
そのまま、空中に30秒のカウントが表示された。
俺は両手剣『カラウ・シェプング』と片手剣『クロス・サヴァイブ』を抜き、右手の大剣を上段に、左手の片手剣は体の前に水平に構えた。
ユウキも片手剣『女神の剣 イシスフィテル』を抜き、構えた。
カウントがどんどん減少していく中、俺の意識はユウキへと集中していた。それはユウキも同じようだった。
そして、0になった瞬間・・・俺はユウキ目掛けて、一気に斬りかかっていた。
一方のユウキも飛び出し、俺たちは武器をぶつけ合った。
「「っ!?・・・・はぁぁぁぁぁ!!!」」
ガキン!ガキン!ガキン!
互いに武器をぶつけ合う連撃の嵐。俺が両手剣で斬りかかれば、ユウキはそれを躱し、ユウキの一撃を俺は片手剣でいなし、両手剣で反撃する。一瞬も気の抜けない攻防が続き、その度に火花が散り、俺たちの攻防はソードスキルの打ち合いに移った。
両手剣ソードスキル〈ブラスト〉、〈ライトニング〉、〈ファイトブレイド〉
幻想剣ソードスキル〈クロス・バレッド〉、〈ドロップ・アウト・レイン〉、〈フォール・ルイン〉
片手剣ソードスキル〈ホリゾンタル・スクエア〉、〈バーチカル〉、〈スター・Q・
プロミネンス〉、〈ファントム・レイブ〉
火花に加え、ライトエフェクトも加わり、衝撃波も一段と激しいものになる。
技を相殺するほどにノックバックが起き、俺たちは距離を取り、再度接近して武器をぶつける・・・その繰り返しだった。
激しい攻防が続く中で互いにHPを減らし、6割を切った。
「ふぅ・・・ふぅぅぅ・・・」
「はぁ・・・はぁ・・・」
互いに息を切らし、肩で息をしている状態・・・そんな状態にも限らず、俺たちには笑みが浮かんでいた。
(楽しいな・・・!)(楽しいね・・・!)
全力で戦いながら俺はそんなことを思っていた。おそらくユウキも同じことを考えているのだろう・・・だが、いつまでもこの時間が続く訳じゃない。
「すぅ・・・・・!」
「・・・(あの構えは・・・マザーズ・ロザリオ・・・!)」
ユウキの構えにOSSを警戒し、迎撃のために俺も両手剣のソードスキルを発動させようとした。そして、ユウキが動いた瞬間に、俺も合わせて、両手剣重3連撃〈メテオ・フォール〉を繰り出した・・・が!
(っ・・・ライトエフェクトがない!?フェイント!?)
ユウキのソードスキルを相殺しようとしたところで、ユウキの剣にライトエフェクトが発生していないことに気が付いた。
しかし、時すでに遅く、俺のソードスキルはユウキにあっさりと回避されてしまい、動揺したことでスキルコネクトも失敗してしまい、硬直に襲われた俺の身体は完全に無防備になってしまった。
その隙を見逃してくれるわけもなく、ユウキは今度こそ、剣にライトエフェクトを発動させ、OSS〈マザーズ・ロザリオ〉を繰り出してきた。
(マズイ!)
硬直で動けない俺に、次々とソードスキルが決まっていく。HPがどんどん減っていくのを見ながら、硬直が解けた瞬間に俺は片手剣で〈バーチカル・スクエア〉を放ち、残りの4連撃をなんとか相殺し、距離を取る。
しかし、俺のHPは残り2割を切っていた。
(ハハハ・・・さすがはユニークウェポン、大ダメージだな)
飼い犬に手を噛まれる、という言葉があるが・・・まさか自分の作った武器で窮地に陥るとはな。
「どうする?また降参する?」
「・・・しないに決まってるだろう・・・意地の悪い質問だな」
「だよね・・・」
ユウキの言葉にダメージで違和感を感じる体をなんとか起こし、武器を構えた。
ここまできて、負けるわけにいかない・・・俺はまっすぐユウキを見つめ、覚悟を決めた。
〈ユウキ View〉
「・・・しないに決まってるだろう・・・意地の悪い質問だな」
「だよね・・・」
ボクの問いかけにフォンは全く諦めない目でそう答えた。
(そうだよね・・・いつもフォンは信じられないことをやってくる・・・
今もボクの方が有利なはずなのに・・・この状況でさえもどうかしちゃうじゃないかって、どこかで期待してる僕がいる・・・)
ゆっくりと構え、今にも何かを仕掛けようとしているのかもしれない、フォンの動き全てを目で追った。
「さぁ、ユウキ・・・こっから俺の全力だ!」
「うん!・・・勝負だ、フォン!」
フォンとボクは一気に駆け出した。
〈ユウキ View End〉
「すぅ・・・ふぅ・・・!」
気合を入れ直し、全神経を集中させる・・・これが通じなければ、もう勝ち目はない・・・俺は最後の攻撃に全力を賭けることに覚悟を決めた。
「さぁ、ユウキ・・・こっから俺の全力だ!」
「うん!・・・勝負だ、フォン!」
俺とユウキは一気に駆けだした。ユウキの片手剣にはライトエフェクトを発動していた。もちろん放つのは、OSS〈マザーズ・ロザリオ〉・・・
それに対し、俺が放つのは・・・
「えっ・・・!?」
俺のソードスキルにユウキが驚きの声を上げていた・・・ユウキだけじゃない、会場全体が驚きの声で包まれていた。
俺の両手剣と片手剣・・・どちらにも蒼色のライトエフェクトが発動していたからだ。
それを発動させながら、俺はあの時のことを思い出していた。
「二刀流スキルのOSS化・・・?」
「ああ・・・できないかな?」
ソードスキルとOSSシステムが導入された直後、キリトにそう相談された。
俺の『幻想剣』と違い、キリトのユニークスキル『二刀流』はALOでは実装がされていなかった。そのため、当然として、二刀流のソードスキルは存在していなかった。そこで、二刀流ソードスキルをOSSで再現できないか・・・そうキリトは思ったのだという。
「だが、どうしてだ?二刀流スキルはともかく、ソードスキルを再現したいなんて」
「・・・SAOやALOでの一件でさ、いざという時に、必要な力がないと、守れるものも守れないじゃないかって、思ってさ・・・もちろん、普段から二刀流は使わないし、使う機会なんて、訪れない方がいいに決まってる・・・それでも・・・」
「・・・・・分かった」
その言葉を聞き、キリトの目を見て、キリトが本当に言いたいことがよく分かった。
キリトはもう嫌なのだろう・・・SAOで俺が消えた時や、ALOでの須郷との対決・・・持てる力があるのなら、という考えなのだろう・・・それをくみ取った俺は、それを承諾した。
「・・・地獄を見るが、覚悟しておけよ?」
「・・・ああ!」
こうして、バトルスキルの併用やソードスキルのモーションの反復練習を何度も行い、キリトは二刀流ソードスキルをOSS化することに成功したのだ。
そして、俺は・・・
「マージニック・・・ステラファントム!!!」
自身のOSS・・・その技名を叫び、ユウキの〈マザーズ・ロザリオ〉を迎え撃った。両手剣で高速突き4連撃、そのまま片手剣高速4連突き、今度は両手剣、片手剣で連続切り下げ・・・ユウキのOSSを10連撃まで相殺する。
「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」
最後の一撃も両手剣と片手剣の同時交差切りをバク転しながら繰り出し、相殺する。
だが、俺の連撃は止まらない。
「でやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
属性余波の爆煙から飛び出し、そのまま高速4連撃の斬撃を両手で交互に繰り出す。最後に大きく回転し、
「お、わりだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
オーラによって、刀身が伸びた片手剣を、両手剣と同時にユウキに喰らわせる。
ソードスキルが直撃したユウキのHPはみるみる減っていき、俺が剣を振り抜いたところで・・・
「・・・やっぱり、強いね・・・フォン・・・!」
そう言って、ユウキの体はリメインライトへと姿を変えた。
『・・・え、ええっと!・・・ユ、ユウキ選手、HP全損!この勝負・・・フォン選手の勝利です!』
「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」
静まった会場など、気にせず俺は片手剣でなんとか体を支え、そして、両手剣を空に掲げた。
『・・・な、なので・・・このALO統一デュエルトーナメントの優勝者は・・・
『夢幻の戦鬼』・・・フォンさんです!!!』
「「「「「「「・・・・・・・・・・・・・うぉぉぉぉぉぉっぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」」」」」」
俺の動きに合わせ、実況が俺の優勝を宣言し、会場のボルテージが最高潮に達した。
武器を手放し、俺はユウキのリメインライトへと駆け寄った。そのまま、ストレージからアイテム『世界樹の雫』を取り出し、使用する。
すると、リメインライト化していたユウキの体が復活した。
「ふぅ・・・・負けた、負けた!・・・負けちゃったな・・・」
「・・・かなりギリギリだったけどな・・・絶対に使わないって決めていた技まで使っての勝ちだったからな」
「・・・何か隠し玉を持ってるとは思ってたけどさ・・・あれは予想外だよ。
なんかデジャビュを感じたよ・・・!」
「ああ。初めて闘った時の技術接続を見た時か・・・」
「そうそう・・・まさか二刀流のソードスキルなんて・・・降参だよ、本当に・・・」
さっきまで本気の闘いを繰り広げていたとは思えない空気が再び漂っていた。
ユウキも全力で戦えて、満足しているらしく、負けたことなど全然気にしていないようだ。
『さぁ、これより表彰式を始めます!キリト選手とアスナ選手も会場の方にお越し下さい!』
「・・・さぁ、表彰式も始まるみたいだし、俺たちも準備しようぜ?」
実況の案内に従い、表彰台の方に向かおうとした時だった・・・
「待って!!」
「ユ、ユウキ・・・!?」
いきなり腕を掴まれ、ユウキに引き留められた。
「あ、あのさ・・・大会前に約束した話って、何なの?」
「っ・・・そ、それ、今聞くか・・・!?」
「だ、だって!約束してから、ず~~っと!気になってたんだから!ねぇ、教えてよ!!」
「そ、それはだな・・・その・・・!」
まさかのユウキの行動に俺も動揺してしまった。
いや、逆に考えれば、いいタイミングなんじゃないか・・・?
俺は覚悟を決め、ユウキに真正面から向き合った。
「ユウキ・・・」
「う、うん・・・」
「話したいことっていうのはな・・・俺・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・フォン?」
「・・・・・(やべぇ!そういえば、告白の言葉考えてなかった!?)」
俺の言葉を待つユウキの前で、俺は完全に頭の中でパニックなっていた。
この1週間、勝って告白することしか、考えていなかったのだ。
告白を前にして、何を言えばいいのか、分からずに必死で言葉を探していた。
(好きです・・・いや、単純すぎるか?
それなら、明日から味噌汁を作ってほしい・・・古すぎるだろう!
な、ならば、月が綺麗ですね・・・今、昼!
え、ええっと・・・あ、愛してる!・・・本末転倒!)
「フォ、フォン・・・大丈夫?」
「あ、ああ、大丈夫だ・・・よし、ユウキ!」
「は、はい・・・!」
適した言葉が上手く思いつかず、俺は考えることを止め、自分の思うがままに告白することに覚悟を決めた。俺の必死な声から、緊張がユウキにも伝わったようで、ユウキも少し驚きながら、俺の言葉を待った。そして、俺が放った言葉は・・・
「・・・結婚しよう」
「・・・・・え・・・?」
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
思わず出た言葉に、俺もユウキも言葉を出せず、沈黙していた。
(・・・し、しまった!?お、思わず勢いで・・・!もうちょっと言い方あっただろう、俺!?)
「け、け、け、けっこん・・・?!」
「わ、悪い!?そうじゃなくて!?い、いや、ある意味はそうかもしれないけど・・・!?」
正気に戻ったユウキの慌てた言葉に、遅れながら正気に戻った俺も動揺しまくりで
上手く言葉を繋げれずにいた。
「だ、だから・・・その!?・・・ああ、もうまどろっこしいのは止めだ!
ユウキ・・・!」
「・・・は、はいっ!?」
「・・・これからも俺の横で笑っていてくれないか?」
「・・・そ、それって?」
「・・・好きだ」
仕切り直しで、俺はユウキにそう言い切った。
ユウキの顔は耳まで真っ赤になっていた。
おそらく俺も同じ様になっているのだろう・・・顔が熱いのがよく分かる。
「・・・答えを聞かせてくれないか?」
「う、うん・・・あのね、フォン・・・・・ううん、僕も悩むの止めた・・・
本当はさ、もう会えなくなるかもしれないから、言わないでおこうと思ったんだけど・・・フォンならそんなのお構いなしで会いにきてくれるよね?」
「・・・・・ユウキ?」
「・・・ボクも・・・フォンのことが好き・・・大好き!
だから・・・よろしくお願いします!」
「・・・・・うん」
ユウキの笑顔の返事に、俺は照れくさくなってしまいそう返すことしかできなかったが、今の俺の心の中は嬉しさで爆発しそうだった。
そのまま、ユウキを抱きしめようとした瞬間・・・
『おめでとうございま~~~す!!!』
「「っ!?」」
その声に俺とユウキの意識は現実へと引き戻された。実況の声に周りを見渡すと・・・
「オイオイ・・・」
「アハハ・・・フォン君って、結構大胆だね・・・」
「フォンさん・・・おめでとうございます!」
おそらく表彰式に出ようと観客席から降りてきたキリトとアスナとユイちゃん。
「す、凄いですね・・・!」
「シリカ・・・あれは周りが見えてない単なる馬鹿よ・・・」
感心しているシリカにツッコミを入れるリズ。
「は、はわわ・・・フォ、フォンさん!?」
「ちょ、リーファ!?しっかりしなさい!」
まだ状況が呑み込めていないリーファをシノンが肩を揺すりながら、心配していた。
「ち、ちくしょう!フォン!?てめぇ、独身同盟を裏切りやがって!!!」
「・・・お前、そこは何も言わずに祝福してやれよ・・・」
覚えのない恨み言を綴るクラインを諫めるエギル。
「おめでとう、ユウキ!」
「フォンさん、ユウキのこと、頼んだぜ!」
「めでたいですね!」
「ああ!確かにめでたい!」
「フォンさんなら、安心だぜ!」
祝福してくれるスリーピングナイツの皆。
「全く・・・フォン坊はいつもお姉さんをワクワクさせてくれるナ!」
「そう言ってやるなよ・・・おめでとう、フォン」
からかうアルゴさんと祝ってくれるシグさん。
そう、ここまではまだ前向きな祝福の言葉(クラインを除く)だった。
・・・あとは・・・
「あの野郎!!俺たちのユウキちゃんを・・・!」
「ALOの可憐な花を・・・!殺す!!!」
「ユ、ユウキちゃん!?これは夢だ!?悪夢だァァァァ!?!?」
「く、くそぉ!?『夢幻の戦鬼』が相手じゃなかったら・・・俺が・・・俺がぁ!?」
闘技場は阿鼻叫喚の状態だった。全ての憎悪が俺に向けられているのは確かだ。
「フォ、フォン・・・これ、どうしようか?」
「そうだな・・・・・・・・逃げる・・・のは無理だよな」
今すぐこの場から逃げ出したかったが・・・その瞬間、無数のプレイヤーが襲ってくるのは確実だろう。
「とりあえず、この大会を終わらせてから考えるか・・・」
「フォン、現実逃避してない・・・?」
「・・・流石の俺も、この状況は現実を逃避したくなるよ・・・ああ、ここ仮想世界か・・・」
・・・軽く思考を放棄してしまっている俺はとりあえず、表彰式の台に向かおうと移動しようとすると・・・
「あっ、そうだ・・・フォン」
ユウキに呼び止められ、振り返ると・・・
「うん?・・・うんん!?」
ユウキが俺の首に抱き着き、そのまま唇を奪われた・・・俗に言う、キスだった。
「・・・・・優勝のご褒美・・・!」
顔をこれでもかと真っ赤にしたユウキのささやきに、俺は完璧に思考を放棄し、周りのことなどお構いなしにキスをし返した。
・・・こうして、ALO統一デュエルトーナメントは、ALO最強の座とユウキと
いう恋人と多くのALOプレイヤーの恨みを手に入れる結果となった。
次回 SAO~夢幻の戦鬼~
「・・・・・実は、もう一つ・・・ユウキには話さないといけないことがあるんだ」
「・・・・・フォン?」
「音弥蓮は、この世界の人間じゃないんだ」
「僕はここにいる・・・フォンだって・・・僕たちは確かにここにいるよ?」
「それでも・・・僕はフォンのことが好きだよ」
十四之巻 『明かす真実』
【ソードスキル解説】
幻想剣《片手剣》10連撃ソードスキル〈ドロップ・アウト・レイン〉
十字切り、両肩、両足、両腕と舞うように8連撃で相手を切りつけ、最後に回転切りでの二蓮撃を繰り出す高速連撃。
幻想剣《両手剣》単発ソードスキル〈フォール・レイン〉
振りかぶりからの強力な一撃を繰り出す。発動時、全能力アップのバフがかかる。また、硬直時間が0,2秒とかなり短い。
幻想剣18連撃OSS〈マージニック・ステラファントム〉
フォンが、キリトとの二刀流OSS開発特訓に付き合った際に、完成させた切り札の一つ。幻想剣以上に、反則的な威力を持つため、フォンはこのOSSを封印していた。両手剣、片手剣でそれぞれ高速の4連突きを繰り出し、交互に切り下げた後、クロスした腕をそのままで、バック転しながら交差切りを繰り出す。そして、着地後、交互に4連撃の斬撃を繰り出し、オーラを纏い、刀身が伸びた片手剣と両手剣で同時に相手を切り裂く。属性は光・闇・風。
技の名前の由来は英語の「マージ」(併合・溶け込む)、イタリア語の「ステラ」(星・星光)、英語の「ファントム」(幻)の組み合わせ。
自身の技術と幻想剣を混ぜ合わせ、〈スターバースト・ストリーム〉の動きを参考にしているため、その名前を一部使おうと思い、フォンが考えた。
一撃ごとに、幻想のような星の光が煌めくエフェクトが発生する。
ここまで・・・本当に長かったです。
祝え!新たなるバカップルの誕生を!!
と、ウォズるほどに作者も喜んでいます!
まぁ、次回9割シリアスなんですが(^^;
ちなみに、最初はフォンがギリギリで負け、その後の罰ゲームで、1日デートをした中で、ユウキに告白するという展開も構想段階ではありましたが、あまりにも『幻想剣』が使い勝手が良すぎたので、こうなりました。
幻想剣OSSも当初は予定になかったものですが、全てスキルコネクトに頼るのもどうかと思い、こうなりました(笑)
それでは、次回でお会いしましょう。
次回更新 7日 0時予定