ソードアート・オンライン~夢幻の戦鬼~   作:wing//

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えー、今回のお話。
とてつもないご都合展開と、作者うろ覚えの法律要素がわんさかな上、最後には特大の甘々空間がデザートで控えております。

まさしく、

『Are you ready?』

状態のお話ですので、

「・・・できてるよ」

と、心火を燃やす覚悟ができた方だけ、ご覧ください。
(『グリスブリザード 変身』で検索してください。ちなみに作者の中では、主人公ライダーズを差し置いて、一番好きな変身シーンです)

・・・すみません、ネタに走りすぎて、大きく脱線しました。それでは、どうぞ!

追記 総合UA10000達成しました!


第17話 「約束を叶えに」

「・・・うん・・・うん・・・それで頼んでいいかな?・・・ありがとう」

 

自室で電話しながら、最終確認を終えた俺はスマホをタップし、通話を切った。

そのまま、カレンダーを見た。カレンダーの暦は3月を示していた。

 

(・・・明日、か・・・)

 

木綿季が明日奈たちと京都旅行に帰ってくる明日・・・ある意味では、俺と木綿季の関係が大きく変化するかもしれない一日・・・

 

(覚悟・・・決めるしかないよな)

 

明日の日付を見つめ、窓から夜の光景を眺めながら、俺はそんなことを考えていた。

 

 

 

そして、翌日・・・

学校を終え、俺はバイクを走らせ、木綿季のいる病院へと向かった。

俺が病院に着いた時、待ち合わせの人物はもう既に到着していた。

 

「・・・ゴメン、待った?」

「・・・いや、そうでもないさ・・・蓮」

 

そう・・・俺の父さん、音弥正幸その人だった。

その姿は、もうすぐ春を迎え、温かくなるのに関わらず、ベージュのコートを羽織り、ビジネス用の鞄を持った・・・仕事用の正装だった。

 

「・・・もう一度、確認しておくぞ・・・・・・・本気なんだな?」

「・・・うん」

「・・・・・分かった。それでは、行こうか」

 

父さんの最終確認に、しっかり頷き覚悟を伝える。俺の意志を受け取った父さんの言葉と共に、俺と父さんは病院へと足を向けた。

 

 

 

「・・・音弥君?」

「・・・倉橋先生?丁度良かった」

 

父さんと共に、木綿季へのアポイントを取るために受付に向かおうとすると、聞き覚えのある声がした。そちらを振り返ると、丁度、倉橋先生が受付に顔を出していたところだった。

 

「やぁ。もしかして、木綿季君に会いに来たのかな?・・・あれ、そちらの方は?」

「ああ、こちらは・・・」

「初めまして・・・私、こういう者でございます」

 

倉橋先生にそう尋ねられ、俺が紹介する前に父さんが素早く名刺を取り出し、倉橋先生に渡した。

 

「・・・べ、弁護士?それに、音弥って・・・!?」

「・・・いきなりのご訪問で申し訳ありません・・・私は音弥正幸。蓮の父親であり、弁護士をやっております。本来であれば、事前にアポイントメントを取るべきだったと思いますが、できれば、お早めにお話しなければならないことでして・・・」

「は、はぁ・・・そ、それは一体?」

 

父さんのトークに倉橋先生は理解するのがやっとの状態だった・・・完全に父さんのペースだった。

 

「・・・・・紺野木綿季さんの財産に関しての調査報告で今日は参りました」

「・・・・・!?」

 

その言葉に、倉橋先生は完全に言葉を無くした。

 

 

 

「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」

 

沈黙の『第一特殊計測機器室』・・・俺と父さん、木綿季と倉橋先生はテーブルを挟んで、座っていたのだが・・・

 

(・・・・・誰か、この空気をなんとかしてくれよ・・・)

 

かれこれ、5分程沈黙の状態が続いていた・・・どうして、こんなことになったのかというと・・・原因は父さんと木綿季にあった。

まず、リハビリを終え、病室で休んでいた木綿季を訪れた所、俺が会いに来たことを喜んでくれたのだが・・・俺の父さんも一緒だと知ると・・・

 

「お、お、お・・・お義父さん!?フォ、フォンの・・・!?!?」

 

まさかのパニック状態になり、何を話せばいいのか分からなくなり、沈黙状態になったのだ。一方、父さんはというと・・・

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

息子の彼女ということ、そして、口下手であることが災いし、何を話せばいいのか分からず、冷や汗を流していた。

 

(息子である俺には分かる・・・!あの顔は、どうやって切り出せばいいのか分からずに困っている顔だ!?)

 

いつものビジネススタイルを貫けばいいのに!?

そんな心のツッコミを父さんに入れながら、俺は木綿季と父さんに交互に目線を送っていた。

 

それなら、俺が話せばいいじゃないか・・・と思うのだが、話の流れ的に父さんに話してもらわねば、意味がないのだ。それは、倉橋先生も同じであり・・・

 

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」

 

俺と倉橋先生は冷や汗を流しながら、困っていた顔をしていた。

 

「あ、あのぉ・・・今日は、その・・・どう、されたんですか?」

 

沈黙に耐え切れず、遂に木綿季が会話を切り出した。

その言葉に、父さんも本来の目的を思い出したようで・・・

 

「・・・そうですね。本日は・・・紺野木綿季さん・・・あなたの所有財産の調査の報告で参りました」

「・・・えっ?ざ、財産・・・?」

 

父さんの言葉に、木綿季は意味が分からないという表情をしていた。ヘルプの目が俺に向けられるも、俺は話を聞くように促した。

 

「息子から話を聞きましてね・・・紺野木綿季さん。あなたはご両親から、ご自宅の建物と土地を相続され、所有されていますね?

そして、未成年ということで、ご親族の方が後見人として、付かれていますね?」

「・・・は、はい・・・!そ、それがどうかしたんですか?」

「・・・・・もし、そのご自宅を保持することができるとしたら・・・どうされたいですか?」

「・・・・・!?!?」

 

父さんの提案に木綿季は目を丸くして、驚いていた。

父さんが書類を取り出し、言葉を続けた。

 

「本来、未成年の財産は法定後見人・・・木綿季さんであれば、叔母様がそれに当たりますが・・・後見人には、親権者と同じ権限と責任があります。そして、それは被後見人・・・つまり、木綿季さんに害を与えるような行為をしてはならないとされています」

「・・・は、はい」

「・・・・・ですが、叔母様は、木綿季さんの財産であるご自宅を、木綿季さんの意思とは異なる処分をされようとしているとのことですが・・・・・それは、後見人の監督責任になります。ここまで大丈夫ですか?」

「・・・・・は、はい・・・!」

 

資料を指さしながら、木綿季に分かりやすく説明していく父さん。完全に蚊帳の外である俺と倉橋先生は黙って、見守ることしかできなかった。

 

「・・・・・そこで、先程の話に戻ります・・・この、監督責任を突き、後見人を叔母様から別の人物に変える、というのはどうでしょうか?」

「・・・えっ!?」

「そ、そんなことが可能なんですか・・・?」

「・・・ええ。実際に、被後見人の財産や個人情報を侵害したことで、後見人を解任されたり、刑事事件に発展した事例もあります」

 

倉橋先生の質問に父さんは冷静に答えた。そのまま、木綿季の方を向き・・・

 

「紺野木綿季さん・・・もし、貴方さえ、よろしければ、そのお手伝いをさせて頂けませんでしょうか?」

「・・・・・え、えっと・・・」

 

父さんの問いかけに、木綿季は迷いを見せていた。まぁ、いきなり家を守れると聞き、その手伝いをさせてほしいと言われれば、誰だって困惑するのは当たり前だ。

 

「・・・木綿季さん・・・困惑するお気持ち、お察しします。もちろん、今すぐにお答えを出して頂く必要もありません。ですが・・・貴方のお気持ちに素直になって、お考え下さい」

「・・・き、気持ち・・・?」

「ええ。この仕事をしていて、かれこれ20年を超えますが・・・最後に大事となってくるのは、本人の気持ちになります。それが不確かな物であれば、私たち、弁護士も最後まで戦い抜くことはできません。依頼人の気持ちに寄り添い、最後の最後まで、戦い抜く・・・それが弁護士の仕事ですから」

「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」

 

その言葉に、木綿季や倉橋先生・・・そして、俺までもが言葉を失った。

父さんの信念に思わず、口が開いてしまった・・・父さんの目は真剣で、でも、どこか優しい光が灯っていた。

 

「それに・・・息子が惚れた子を助けたいと思うのは、親としては当然のことでしょう?」

「「っ///!?!?!?」」

 

と、感心した所にまさかの爆弾を放り込まれた。その言葉に、俺も木綿季も思わず、顔を真っ赤にさせた。

 

「と、父さん・・・!?」

「むぅ・・・おかしなことを言ったか?

そもそも、お前がどうにかできないかと、相談してきたのだろう?」

「と、父さん!?!?」

 

更なる追撃に、俺の顔は更に赤くなる。この人、どこまでバラす気だよ!?

 

「そ、そうなの?フォン・・・?」

「・・・・よ、余計なことだと思ったんだが・・・木綿季の為になればと思ってさ」

「・・・・・フォン」

 

思わず、頬を掻き、目線を逸らす。

駄目だ・・・木綿季と目を合わすことができない!

 

「オホン・・・よろしいですか?」

「「っ!?」」

 

父さんの咳払いに現実に引き戻される俺達。

 

「・・・ともかく、本日持ってきた本題の一つはそれになります。先ほど申し上げたように、すぐに「お願いします・・・!」・・・!」

 

まとめようとする父さんの言葉を木綿季が遮った。

 

「・・・その、もしあの家を残す方法があるのなら・・・お願いできますか?

・・・僕が住むことは、すぐにはできないですけど・・・それでも、あの家が残せるのなら・・・僕は残したいです・・・!」

「・・・・・分かりました。その依頼、確かに引き受けました」

 

木綿季の真剣な言葉に、父さんはしっかりと頷いた。

そして、木綿季がこちらを向き、

 

「・・・ありがとう・・・フォン」

「・・・俺は何もしてないよ」

「・・・・・フフフ、そっか」

 

そう言って、木綿季からのお礼に答える。俺がしたのは、父さんにこのことを相談しただけだ。文字通り、本当に何もしてない・・・それでも、木綿季は俺に感謝してくれていた。

 

「・・・さて、木綿季さん、そして、倉橋先生。それに当たって、実は私から・・・いや、これは蓮からの提案でもあるんですが・・・一つ、お願いがありまして」

「・・・お願い?」

「退院後の住まいですが、息子の住まいと一緒に住むのはいかがでしょうか?」

「「・・・えっ!?」」

 

父さんの提案に、木綿季と倉橋先生が今日何度目かになる驚きの声を上げる。

 

「・・・ああ、勘違いしないで頂きたいのですが、依頼の対価としてではなく、依頼を達成するためにも、できればして頂きたいことでして」

「・・・す、すみません・・・そのお話、詳しく教えて頂けますか?」

 

父さんの言葉に、主治医として、木綿季の生活に関わる話に倉橋先生はいち早く冷静になり、話を促した。

 

「まず、先程の後見人の話ですが、叔母様が解任となった場合、新たに後見人を定めなくてはなりません。その時に、息子と同居している状態であれば、私が後見人となることが可能です。最悪、養子縁組も考えましたが、それは、木綿季さんを縛り付けてしまうことになり、得策ではないと判断しまして・・・それに、施設でお世話になれば、私が後見人となることも絶対にとまではいかなくなってしまいますから」

「・・・・・・・なるほど」

「・・・もちろん、美味い話だけに聞こえてしまうとも思います。少なくとも、何か裏があるのだと、ご心配されるのも致し方ない話だと思います」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「それでも・・・息子の覚悟を聞いた時に、私はその考えを尊重したいと思いました」

「音弥君の・・・?」

 

父さんの話を真剣に聞く、倉橋先生は俺へと視線を移した。

 

「・・・ずっと考えていたんです・・・木綿季の笑顔を守るためなら、何ができるだろうって・・・俺はまだ学生ですし、SAO生還者です。

それでも・・・木綿季が笑顔でいられる場所になれたらって・・・そのためなら、どんなことだって、やれるって・・・やってみせるって・・・!」

「・・・・・」

「・・・荒唐無稽な話だっていうのも分かってます。両親の協力が必要だってことも・・・それでも・・・俺は木綿季と一緒にいたいんです!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

倉橋先生は目を瞑り、そのまま黙り込んでしまった・・・再び、沈黙が場を支配した。まるで、時間がスローになった感覚だった。時計の針の音だけが、妙に鋭く聞こえた。

 

そして、倉橋先生が一息をついてから・・・・・

 

「・・・木綿季君・・・君はどうしたい?」

「・・・・・先生・・・?」

「・・・僕は君の主治医だ。僕は・・・君の意見を尊重したい」

 

倉橋先生は、優しい声でそう尋ねた。木綿季の答えは・・・

 

「・・・・・僕も・・・フォンと一緒にいたい。本当にいいのなら・・・この話に乗りたいです」

 

その木綿季の答えをまるで分かっていたのか、聞いた瞬間に微笑んだ倉橋先生は、

 

「・・・音弥君・・・木綿季君のこと、よろしくお願いします」

「・・・!・・・はい!」

 

深々と頭を下げ、そう言った。俺はその答えに力強く頷いた。

 

「さて、それでは、退院についての打ち合わせをしなくてはなりませんね・・・音弥さん、まだお時間は大丈夫ですか?」

「ええ、この後に予定は入ってませんから、大丈夫ですよ」

「それなら、このまま打ち合わせをお願いしたいのですが・・・すみません、資料が私のデスクの方にありまして、場所を移してもよろしいですか?」

「・・・ああ、なるほど。ええ、結構ですよ」

「それじゃ、音弥君、お父さんを少しお借りするよ。木綿季君とゆっくりしていてくれ」

「あっ・・・は、はい」

 

どうやら気を遣われたのか、倉橋先生と父さんは部屋を後にしてしまった。

部屋を出る前の父さんの目線に色々な意味が含まれていたような気がするが・・・気にしないでおこう。

とりあえず、木綿季と話そうと目線を戻そうとした時だった。

 

「フォン!」

「うぉ!?ゆ、木綿季・・・!?」

 

いきなり木綿季に抱き着かれ、思わず倒れそうになるもなんとか堪える。

 

「ど、どうした。いきなり・・・?」

「・・・嬉しくて・・・夢みたいだからさ・・・夢じゃないって、確かめたくて、抱き着いちゃった」

「・・・そこは頬を抓るところじゃないのか?」

「・・・ダメ、だった・・・?」

「・・・いや、全然OK」

「良かった・・・!」

 

そのまま、俺も木綿季を抱きしめ返した。仮想世界とは違う、木綿季の温かさが伝わってきた。

 

「・・・というか、フォンって、本当に僕を驚かさせてくれるよね!」

「・・・言われてみればそうかもな・・・ワザとじゃないだけどな」

「もしかしてと思うけど、指輪を用意してるとか・・・ないよね」

「流石にそれはないな・・・」

 

今にも、キスできそうなくらい、木綿季の顔がすぐ傍にあった。その頬は気のせいか、少し赤くなっていた。

 

「そもそも、約束したはずだぞ?迎えに行くって」

「・・・!もしかして、引っ越しの時の話!?」

「・・・ああ。あの時から、もしできたらと考えてはいたからな」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

俺の言葉に、木綿季はポカーンとしていた。

 

「・・・フフフ!アハハハハ!」

「そ、そんなに可笑しかったか・・・?」

「う、ううん・・・嬉しくて、つい・・・!」

「・・・そっか」

 

そう言って、笑う木綿季の後頭部に手をやり、引き寄せる。そのまま、その唇を奪った。木綿季も少し驚いていたが、抵抗せずに受け入れてくれた。

 

「・・・・・酷いな・・・僕のファーストキスを奪うなんて」

「駄目だったか・・・?」

「・・・ううん、全然!・・・ねぇ、もっとしよう?」

「・・・ああ」

 

そう言って、もう一度、唇を重ねる。唇と唇を合わせる、ソフトキスだったが、今の俺達にはそれだけで十分だった。

 

「フォン・・・」

「・・・こっちだと、蓮って呼んでほしいな・・・」

「あっ、そっか・・・分かった・・・・・蓮」

 

名前を呼び直し、改めて、木綿季は笑いながら、

 

「・・・大好き」

「・・・俺も木綿季が好きだ」

 

そう言いあって、三度目のキスをするのだった。

 

 

この後、戻って来た父さんと倉橋先生にイチャイチャを目撃され、俺と木綿季が顔を沸騰させたのは余談である。

 

 

 

次回 SAO~夢幻の戦鬼~ 

 

「来たぞ・・・ユウキ」

「・・・うん」

 

『フォンが見守ってくれてれば、僕・・・最高の技を出せると思うんだ』

 

「アスナに受け取ってほしいんだ・・・僕のOSS」

 

『継承!絆のOSS!』

命、燃やすぜ!

 

 




と、いった形に着地しました。

おふらいんシリーズでも、ネタバレしてましたが、同居です!新婚体験です!

まぁ、オリ主は紳士(という名のヘタレ)なので、残念ながらRー18展開はないので、ご安心(?)ください。
そう、現実世界ではね・・・(黒笑)

さて、マザーズ・ロザリオ編も終わりが見えてきました。最後までお付き合い頂ければと思います。

次回更新 11日 0時予定

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