色々伏線張っていたら、そうなってしまいました。
まぁ、アリシゼーション編に繋げようと思うと、どうしても必要な描写だったので、ご容赦頂ければと思います。
気付いたら、これが50話目・・・あっという間だなと感じてたりしてます(笑)
それでは、どうぞ!
木綿季との同居が決まり、俺と両親はその準備に追われることとなった。
父さんは、木綿季の後見人である叔母に交渉を始めた。もちろん、最初は良い顔をされなかったようだが、歴戦のベテランである父さんはそれすら見通して、既に外堀を埋めており、後は時間の問題とのことらしい。
仕事帰りに、俺のマンション(父さん名義のマンション。俺と父さんで契約しており、家賃は母さん名義で払ってもらっている。なんでも、こちらの方が、税金の問題でいいらしい)に立ち寄り、父さんが交渉の状況をそう教えてくれた。
(普段、ほとんど表情を変えない)父さんの目が笑っていた(ような気がする)ことから、本当のことだろう・・・・・どうやったのか、交渉の詳しい内容だけは決して教えてくれなかったのだが・・・
母さんは俺の手が空いてる日に合わせて、日常品や必要なものを買い出しに協力してくれた。
流石に車があるのとないのとでは、話が違ってくるので、大変ありがたかった・・・のだが、
「木綿季ちゃん!こっちも着てみて!」
「は、はい・・・!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
買い物初日・・・木綿季に会ってみたい、と言われ、買い物帰りに病院に立ち寄ったのだが・・・(おそらくこうなることを見通して)持って来ていた服を木綿季に次々と着せていく母さんを、俺は黙って見ていることしかできなかった。
「お、音弥君・・・あの服はどうしたんだい?」
「・・・すみません、倉橋先生。どうやら、母が仕事場から持ってきたみたいで・・・同居のことを相談した時に木綿季のサイズを聞かれたので、それで・・・」
「仕事場・・・?」
「ええ。母さん、服のデザイナーをやってまして・・・」
俺と同じように、その場の光景を見守ることしかできず、若干引き気味の倉橋先生の質問に答える。
母さんは、自分がデザインした服を試作することが多い。そのため、昔から、散々、実験台にされたことがあった・・・おかげで、ゲームの中でオリジナルの防具を作る時に、その経験が反映されたので、今では助かっているのだが・・・
「あ、あの・・・!お、叔母さん、こんないい服もらっても、僕「お義母さんよ、木綿季ちゃん!!」・・・れ、れ~ん・・・!」
「・・・・・(フルフル)」
木綿季が抵抗しようとするも、呼び方の訂正を求められ、母さんに遮られる。
俺に助けの目を求めるも、こうなった母さんは、怒った父さんにしか止められないため、俺はむなしく首を振ることしかできなかったのであった。
そして、キリトたちにユウキとの同居を報告した時には・・・
「・・・・・マジか」
とキリトには絶句され・・・
「良かったね、ユウキ!」
「良かったですね、ユウキさん、ママ!」
とアスナは笑顔で応えてくれた。ユウキのことで悩んでいたアスナを見ていたユイちゃんも、安堵した表情でそう言ってくれた。最も・・・
「・・・アンタ、よくそんなこと考えたわね・・・」
「はぁ~・・・フォンさん、凄いですよね」
「・・・・・ど、同居って!?フォ、フォンさん、正気ですか!?」
「・・・フォンって、いつもこうなの?」
「シノン・・・フォンは大体こんな感じだ」
・・・リズ、シリカ、リーファ、シノン、エギルの反応に俺はもう苦笑いするしかなかった。ちなみに、クラインは・・・
「・・・良かったな、フォン」
「・・・あ、ありがとう」
笑顔で賛辞の言葉を述べてくれているのだが・・・目からは血の涙を流し、後ろ手に何かを隠し持つクラインの姿に、恐怖を感じたのであった。
どうやら、クラインなりに大人の対応をしようと、色々と我慢してくれたようだ・・・できれば、完璧に隠しきってほしかったところだったが。
そんなかんやであっという間に時間は過ぎ、3月ももうすぐ終わろうとしていた。
帰還者学校も春休みを迎え、木綿季の退院まであと三日・・・そんな時、俺はある人物に会うために銀座のあの喫茶店に来ていた。
「・・・やぁ、音弥君。悪いね、春休みなのに、呼び出して」
「いえ、こっちがお願いしていたことですから」
前とは違い、大声で俺を呼ばずに、手を振るだけに留めた菊岡さんの言葉にそう答え、俺は席についた。
「さて・・・それじゃ、これが依頼された件だ。
必要な書類はその中に全部入っている・・・といっても、ほとんどが説明書みたいなものだから、提出してもらう書類だけにサインをもらえばいいから・・・それと、こっちが4月から必要となってくるものだ」
「・・・何から何まで、ありがとうございます、菊岡さん」
「いやいや・・・君と桐ヶ谷君には、死銃事件での借りがあるからね。それに、今回の件は、僕的にも美味しい話だったからね・・・ウィン・ウィンということだ。気にしないでくれ」
封筒と紙袋を受け取り、俺は菊岡さんにお礼を言った。菊岡さんは笑いながら、なんでもないといった表情をしていた。
「それでもですよ。それなりに裏から手をまわしてもらったことだと思いますし・・・」
「・・・音弥君、君が時々腹黒く感じるのは気のせいかな?」
俺の含んだ言葉に菊岡さんが思わず苦笑いしていた。
「それにしても驚いたよ・・・君から、この件に関して、打診を受けた時にはね。それほどに彼女が、君にとっては大事だということかな?」
「・・・・・プライバシーの侵害ですよ」
「ああ、すまない」
俺のジト目に、笑いながら答える菊岡さん・・・この人も図太い神経してるよな・・・
「さてと、すまないが、僕はそろそろ行くよ。実は、この後、予定が入っていてね」
「ええ、ありがとうございました」
「・・・ああ、そうだった。忘れるところだった」
何かを思い出した菊岡さんは鞄から、書類を取り出した。
「・・・・・これは?」
「君と桐ヶ谷君は知っておくべきことだと思ってね。メディキュボイドの基礎設計に関する資料だ・・・桐ヶ谷君にも見せておいてくれないかな?」
「分かりました」
菊岡さんから資料を受け取り、簡単に目を通す。メディキュボイドの開発から設計に至る資料のようだ。
「・・・もしかすれば、君たちにはまた依頼するかもしれないが、その時は頼むよ」
「・・・?・・・ええ、分かりました」
「それじゃ」
そう言って、菊岡さんは会計を済ませて、店を出て行った・・・菊岡さんの最後の言葉が、何故か俺には意味深に聞こえた。
「へぇ~・・・メディキュボイドの設計資料か・・・」
翌日、昼休みに菊岡さんから渡された資料を和人と明日奈に見せた。ちなみに木綿季は最後の検診とのことで、この場にいない。和人が興味深そうに資料に目を通していた。
「こんな重要な書類、私たちに見せるなんて・・・菊岡さん、私たちのこと、信頼してくれてるのかな?」
「・・・さぁな。あの人、何考えてるか、よく分からないからな」
「・・・あれ、メディキュボイドって、外部から基礎設計の提案があったんだ」
「ああ。俺も医療メーカーか、なんかが設計してたと思ったんだが・・・どうやら違うらしい。最後のページにその人の名前も載ってたよ。確か・・・神代凛子、って人らしいぞ」
和人の横で、資料に目を通す明日奈が気になった点を指摘した。昨日、家で資料を読んだ俺は設計提案者の名前を告げた。すると、
「・・・・・!?」
「・・・和人?」
資料に目を通していた和人が、驚きの表情を浮かべ、俺の顔を見ていた。
その驚き様に、俺は思わず声を掛けた。
「・・・俺は、その人を知っている」
「「・・・えっ?」」
「会ったこともある・・・その人は、ダイブ中のヒースクリフの身体の世話をしていた人だ。彼と同じ研究室で、一緒にフルダイブ技術の研究をしていたんだ・・・つまり、メディキュボイドの、本当の設計者は・・・」
「・・・団長」
「・・・茅場、晶彦・・・」
和人の言葉に、俺と明日奈も和人が驚いた意味を理解した。
『・・・もしかすれば、君たちにはまた依頼するかもしれないが、その時は頼むよ』
菊岡さんのあの言葉が、俺の頭をよぎった・・・この資料を渡したのは、もしかすれば、和人にこのことを教えるためだったのではないか・・・俺はその資料を見ながら、嫌な予感を感じていた。
3か月後・・・この時の勘が当たることになるとは露とも知らずに・・・
そして、木綿季の退院前日・・・
「来たぞ・・・ユウキ」
「・・・うん」
俺はユウキにお願いされ、24層の・・・俺達が再開した小島にいた。ユウキと共に、その人物を待っていると・・・向かうから、水妖精の特徴的な水色の翅で飛んでくるプレイヤー・・・アスナの姿が視認できた。
「ゴメン、遅くなって!」
「・・・ううん・・・来てくれて、ありがとう、アスナ」
「それで・・・話って、何?ALOじゃないと駄目ってことだったけど・・・?」
「・・・うん。ボクね、どうしてもアスナに渡しておきたいものがあったんだ。フォンには、それを見届けてほしくて来てもらったんだ」
「渡したいもの・・・?」
「え~とね・・・今、作るから、ちょっと待ってて」
そう言って、ユウキはウィンドウを操作して、剣を抜く。俺は距離を取り、アスナの横に並ぶ。
「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」
集中するユウキを、俺たちは静かに見守っていた。その時、風が吹き、一枚の花弁が湖に落ちた時だった。
「やぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
ユウキが大木に向かって、ソードスキルを放った。一撃、一撃にユウキの全力が込められていた。そして、
「でやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
最後の一撃が、ユウキの咆哮と共に放たれた。その途端、属性余波の爆発が起き、突風が俺とアスナを襲った。手で顔を庇い、煙が晴れるの待っていると・・・ユウキの前に、一枚の羊皮紙が出来上がっていた。
「アスナに受け取ってほしいんだ・・・ボクのOSS」
「・・・私に、くれるの・・・?」
羊皮紙を掴んだユウキはそのままこちらに歩み寄り、アスナに羊皮紙・・・OSSの伝承書を差し出した。いきなりのユウキの言葉に、アスナは驚いていた。
「・・・アスナに受け取ってほしいんだ」
「で、でも・・・私なんかより、フォン君の方が・・・!?」
そう言ってこっちを見るアスナ。それに対し、首を静かに横に振るユウキ。
「・・・アスナだからこそ、受け取ってほしいんだ。強くて、優しくて、温かくて・・・ボクのもう一人の姉ちゃんの・・・アスナに受け取ってほしいんだ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・ユウキがそう決めたんだ。だから俺からも、このOSSをアスナが受け継いでくれるのがいいと思ったんだ」
「・・・・・分かった」
ユウキと俺の言葉を受け、納得したアスナはウィンドウを開き、OSSを受け取る。それを見届け、ユウキは安心したように息を吐いた。
「・・・はぁ・・・本当はね、この世界に来れなくなるって思ってた時から、誰かに受け継いでもらおうと思ってたんだ。でもね・・・・今は違うんだ」
「・・・違う?」
「うん・・・この技がアスナを守ってくれますようにって・・・どんな時でも、どんな状態であっても・・・ボクの思いがアスナに届きますようにって・・・そう思ったら、ボクが最高の状態で最高の技を出せる時に受け取ってほしいと思ったんだ」
「・・・・・ユウキ」
「・・・明日からさ、フォンの家で生活することになるけど・・・ボクがメディキュボイドを使ってALOに来れるのは今日が最後だったからさ・・・・・わがまま言っちゃってゴメンね・・・姉ちゃん」
「・・・ユウキ!」
その言葉に、アスナはユウキを抱きしめた。
「・・・痛いよ、姉ちゃん」
「ゴメン・・・でも、こうしないと、ユウキがどっかに行っちゃいそうで・・・」
「・・・大丈夫。ボクはここにいるよ・・・」
涙を流すアスナに、ユウキは抱きしめ返しながら、そう答えた。その光景を邪魔しないように俺は静かに見守っていた。最初は
『フォンが見守ってくれてれば、ボク・・・最高の技を出せると思うんだ』
・・・なんてことを言われて、来たのだが・・・
(・・・そんな心配、無用だったようだな)
ユウキのことを大事に思ってくれているアスナのことを見ながら、俺はそう思うのだった。
次回 SAO~夢幻の戦鬼~
・・・行こう!蓮・・・
最終話 『ユウキと創る明日』
と、伏線とマザーズ・ロザリオの継承のお話でした。
最後、どういった理由でアスナに継承させようかと思い、かなり悩んだ末、ユウキとアスナの絆に、という形になりました。
ちなみに、最終回のタイトルは仮面ライダービルドの最終回タイトルから取ったものです。なので、こんな予告も考えていたりしました。
それを見ながら、最終回をお待ち頂ければと思います。
それでは、最終回でお会いしましょう。
次回 SAO~夢幻の戦鬼~
『君は、僕に作られた・・・偽りのヒーローだったのさぁ!!」
重力魔法でフォンを吹き飛ばしながら、笑い叫ぶオベイロン〈須郷〉。
「ユウキが・・・みんなが・・・!俺を・・・音弥蓮をここまで創ってくれたんだよ!!!」
ボロボロになり、武器も防具も全てを破壊されながらも、立ち上がるフォン。
——世界が終わる時、二人の絆が奇跡を起こす!
「俺とユウキは・・・最高のベストマッチなんだよぉ!!!!!」
『Phantom!Rosary! Best match!』
「「勝利の法則は・・・決まった!!!」
(こんなおふざけをした理由・・・オリ主が変身するとしたら、ビルドが一番似合いそうだと思ったから。後、最後のキメ台詞をフォンとユウキに言わせたかったから)
次回更新 12日 0時予定