ソードアート・オンライン~夢幻の戦鬼~   作:wing//

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今思えば、エギルがおふらいんシリーズに出るのは初めてですね。

実は一度完成していたものをアンケートを受けてリメイクしたものですので、もしかしたらフォンの言葉遣いが少しおかしいところがあるかもしれませんが、ご容赦頂ければと思います。

それではどうぞ!

約1/1夜空の剣、速攻で予約しました。5月が楽しみです!

※前回に引き続き、本編の多大なネタバレが含まれております!
アリシゼーション前編まで読み切っている方、もしくは
「誰が馬鹿だ!?筋肉つけろ!!」
と、そんなことなど気にしないプロテインの貴公子並みの真っ直ぐさがある方は先にお進み下さい。


そーどあーと・おふらいん まざーず・ろざりお編そのにぃ!

「みなさん、こんにちは!そーどあーと・おふらいんの時間です!司会のユウキです!」

「解説のフォンです。本日もよろしく」

『待ってました!』『今回は誰が何回犠牲になるのかな?』『ユウキちゃん、結婚してくれ!?』

 

いつもの挨拶をして、背景のコメント共に出迎えられ、番組が始まった。

 

「今回はマザーズ・ロザリオ編の第5話から第9話を振り返っていきます!前回の感じから何となくの要領は掴めたので、今回も元気いっぱいに頑張っていくからよろしくね!」

「…そうか。できるなら、俺の心にも配慮してくれると有難いかな…アハハ。それじゃ、ゲストの紹介です!どうぞ!」

 

やる気に満ち溢れた姿のユウキに嫌な予感を覚えながらも、流石に水を差すわけにはいかないと思い、なんとか言葉を濁すフォン。そのまま今回のゲストを紹介し、現れたのは…

 

「おっす!火妖精一の侍、クラインだ!今日は宜しく頼むぜ!」

「土妖精のエギルだ。お手柔らかに頼むな」

「エギルさん!お待ちしておりました!!」

「おい、フォン!?俺もいるぞ?!」

 

ALOのアバター姿で登場したクラインとエギル。特にエギルが来たことに(大人かつボケる訳がないというよく分からない信頼を持った)フォンがガッツポーズと共に受け入れる姿にクラインから抗議の声が上がる。

 

「いつもカミさんと見させてもらっているが……フォン。いつもいつも大変そうだな」

「そう言ってくれるのはエギルさんだけですよ……俺、泣いていいですよね?」

「おーい…蚊帳の外に置かれてる俺も泣きそうなんだけど…」

「ア、 アハハ……クラインさんもいらっしゃい。今日は宜しくお願いします!」

「ううう…そう言ってくれるのはユウキちゃんだけだよ。マジで天使だわ」

 

エギルからの労いの言葉に完全に疲れた顔をするフォン。未だに放置されているクラインだったが、ユウキだけが笑顔で出迎えてくれたことに涙するのだった。

 

「今日はいつものメンバーと違って、大人の俺たちがゲストだからな。平和に過ごせると思うぞ?」

「…そうだよな。クラインの言う通り……いや、本当にそうか…?」

「フォ、フォン…?」「お、おい…フォン?」

 

クラインの言葉に納得しかけたと思いきや、フォンから不気味なオーラが漂い始め、ユウキとエギルが嫌な汗を流す。

 

「…クラインはともかく、エギルさんはオフラインシリーズ初出演だぞ?本編とは全く違うキャラが当たり前のこの小説で、それを鵜呑みに信じるのは危険……そうだよな。どうせなら、全員を疑うつもりでいかないと…」

 

「お、おい!?これは不味いんじゃないか…!」

「不味い所じゃねーだろう!こ、こういう時は…ユウキちゃん、頼んだ!?」

「えぇぇ!?こうなったら、ボクでもちょっと…」

「早くしないと、以前出たあのヤバいフォンが出てくるぞ!?」

 

以前の放送事故(おふらいんシリーズ SAO編第3回参照)を思い出し、慌て始めるエギルとクライン。あのブラックフォンを出現させるわけにはいかない…そう思い、早くもユウキに助けを求めるが、まさかの事態に彼女も困惑していた。

 

「…そうだよ。この番組は誰も信じられない、信じちゃいけない…そうさ。全てを疑い、破壊すれば、俺はきっと…」

「ううぅ…こうなったら、えい!?」

「むおぉ!?」

 

ヤバすぎるワードを連発し始めたフォンに覚悟を決めたユウキは行動に出た。壊れかけてるフォンの頭を抱え、抱きしめたのだ!いきなり頭を胸元に抱えられ、フォンの思考が止まる。

 

「「…おおっ…」」

 

放り投げておいてなんだが、ユウキの行動にゲスト二人は驚きながらも感心していた…いつもなら嫉妬で血の涙を流すクラインも今回ばかりはそんな大人気ないことをすることもなかった。

 

「はっ!?俺は一体何を…?」

「ふぅ…なんとかなった。油断してた…キリトとアスナがいないから大丈夫かと思ってたけど、これはボクがしっかりしないと…!?」

((…いや、前回心のナイフを振り回してたの、お前!?))

『アブねぇ…いきなりオリ主がログアウトしかけたぞ』『ユウキちゃんのパフパフだと…!?夢幻の戦鬼死すべし!』『wwwwwwwwwww!!!』

 

「さて、フォンも正気に戻ったところで番組を再開します!それでは、そーどあーと・おふらいん、スタートです!」

「…な、何が起こったんだ…?」

 

直前の記憶を失ったフォンを置き去りにようやく番組がスタートしたのだった。

 

 

トピックス:装備『闘剣止水・柴』

フォンが使用する防具の一つ。SAOで愛用していた『柴・真剣烈火』のリメイク防具。刀をメインとした闘いで使用する。『やられる前にやる』『防御よりも速度優先』を方針にした侍のような和風の着物。基本カラーは赤と白。

 

 

「さて、それではプレイバックのコーナーです!」

「…いや、その前にトピックスでしれっと俺の防具が解説されてたんだけど…今回、そんな雑な感じで紹介されるの!?」

「前回のが予想以上に長すぎたらしくて、ボクたちの質問コーナーに組み込むと大変なことになりそうだから、トピックスに入れたんだって」

「…作者~…」「「ハハハ……」」

 

司会を務めるに当たって、作者メモを受け取っていたユウキが理由を読み上げ、脱力してしまうフォンと苦笑いするゲスト二人。そんなやかんで、第5話のプレイバックが始まったのだった。

 

〈フォンたち、大型ギルドのレイドパーティを壊滅させる〉

 

「…フォン。お前さん、またやらかしたのか」

「いや、やらかしたというか…あれは向こうが先にやってきたから、やり返しただけでして…」

「まぁ、あん時は緊急時だったからな…まだ自覚がなかったとはいえ、ユウキちゃんのためにフォンも全力でやったんだろうぜ?」

 

エギルからの責めの言葉と視線に慌てて弁解するフォン。当時、その場にいたクラインはフォンの心情を察し、フォローの言葉を投げ掛けていた。

 

「でも、フォンたちがあそこであのギルドの動きを止めてくれたから、ボクたちはボスにもう一度挑めたんだ!本当にありがとう、フォン!」

「…気にすんな。俺がやりたくてやったことだからな。それにその後の制裁はアルゴさんとシグさんが片してくれたから、どちらかといえば、お礼はあの二人にだな」

「そういえば、そのギルドって、あの後どうなったんだ?」

「アルゴさんが脅迫……ゴホン、交渉してあんなパワープレイは止めさせるようにしたらしいぞ。俺たちの戦闘をアルゴさんが陰ながら動画を撮っていたらしいからな」

「…流石は鼠のアルゴとボディガードだよな…ちょっと待て!今、脅迫って言い掛けなかったか!?」

「気のせいだ」

「嘘つけぇ!?」

『鼠怖い!?』『大型ギルド乙!』『夢幻の戦鬼を怒らせた結果…(笑)!』

 

エギルの疑問に経緯を知っていたフォンが答える。その答えに納得しかかったところで、とんでもないワードが出てきたことにクラインが反応するが、フォンは何事もなかったかのように進めていき、追及すらも聞こえていないフリで対応していく。

 

「それにしても、『魔切相殺(スペルインターセプト)』か。フォン…お前、キリトに影響されすぎじゃないか?いくら何でも無茶苦茶な技すぎるぞ」

「有利属性を付与した武器で魔法を斬る技…聞くと、キリトが使ってた『魔法破壊』よりも難しそうだよな」

「そうだよね…ボクも『魔法破壊』の方が使いやすい気がするんだよね」

 

ゲストとユウキの意見を受け、乾いた笑いを浮かべるフォン。そして、それぞれの技に関する違いを説明していく。

 

「そもそも『魔法破壊』と『魔切相殺』とじゃ、使う目的とタイミングが違うからな」

「…目的?どういうことだ?」

「キリトが考案した『魔法破壊』は、GGOでの弾丸を斬る経験から発展させた、対人用のシステム外スキルだ。だから、ソードスキルを使用することであらゆる属性に対して対応できるという汎用性がある。

一方で、俺が考案した『魔切相殺』はまた違ったアプローチでのシステム外スキルだ。こっちはメイジ系やレイス系のモンスターといった、決まった属性での魔法を放ってくる敵に使用する繋ぎを目的としたものだ」

「繋ぎ…?」

「まぁ、簡単に言ってしまえば、有利属性の武器で魔法を打ち消してから、本命のソードスキルを叩き込むことのための技だということだ。だから、『魔法破壊』が防御を主体としたものなら、『魔切相殺』は次の攻撃への繋ぎ技ってことだ。まぁ、クラインの言う通り、咄嗟の判断と魔法の高速詠唱ができないと使うのは難しいんだけどな…」

 

クラインとユウキの疑問に答えていく感じで話すフォン。その説明に納得したのか、エギルは静かに頷いてた。

 

「ちなみに、『魔切相殺』が生まれた経緯は、属性付きのソードスキルで『魔法破壊』が成立するのなら、属性を付与した武器でも同じことができるのでは…?と、作者がロスト・ソングの属性付与魔法から思いついたんだって…フォンならそれくらいのことしてもおかしくないだろうって」

「…作者のせいで俺が化け物扱いされることに物申したいんだが…!?」

 

ユウキの解説に、風評被害に逢ってるフォンは嘆くのだった。それはもうオリ主の宿命として、背負ってもらうしかない…頑張って下さい。

 

 

〈蓮と明日奈、現実世界で木綿季に再会するシーン〉

 

「この時は本当にビックリしたよ…二人が来たこともそうだけど、フォンまでメディキュボイドを使ってたなんて…ボク、心臓止まるかと思ったよ」

「縁起でもないから止めてくれ!?」

 

当時のことを思い出し、遠い目をするユウキ。そんな彼女が胸に手を当てる様子に、隣のフォンが顔を青くしていた。

 

「それにしても、フォンはどこでユウキが以前に会っていると気が付いたんだ?」

「もしかしたらと思ったのは、キリトからユウキがいる病院とメディキュボイドについて教えられた時ですね。まぁ、病院に行ってみるまでは半信半疑だったですけど…」

「それにしても…そこまでくると本当に運命みたいだよな!良かったな、ユウキちゃん…」

「そ、そうかな…エヘヘ!」

「…と、大変嬉しそうな顔を彼女さんがしてるが、当の彼氏さんはどう思っているんだ?」

「…ノーコメントでお願いします」

 

クラインとユウキの会話から、フォンを揶揄うエギル。それに対し、目線を逸らしながら答えるフォンだったが、顔が赤くなっていることから照れていることは明確だった。

 

 

〈フォンとユウキ、涙のデュエルを終えて…〉

 

『ユウキちゃんを泣かせたフォン、DEATH!!』『夢幻の戦鬼、粛清すべし!!』『鬼!悪魔!人でなし!』『天使を泣かせた戦鬼に神の鉄槌をぉぉ!?!』

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」

「うわぁ…コメント荒れまくりだな」

「まぁ、こればっかりはしょうがないだろうが…二人とも物凄い決まずい表情してるな」

 

コメントの罵詈雑言の嵐に思わず言葉が詰まる司会二人。そんな二人を見て、表情が引き攣るクラインに対し、エギルもコメントを見て騒然としていた。

 

「いや…その…エゴとは分かっていたし、ユウキをあのままにしておくわけには……すいませんでした」

「「謝った!?言い訳無理だと思って諦めた!?」」

 

言い逃れできないと判断し、素直に謝るフォン。その行動に驚くクラインとエギル

 

「で、でも…!?確かに強引だったとは思うけど、フォンのやったことは間違いじゃないよ!?」

「…いいや。それでも、ユウキを泣かせたことは事実だ…ごめんな、ユウキ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「(ど、どうする、エギル!?…この空気はヤバいぞ!?)」

「(落ち着け、クライン…こいつらなら大丈夫だ)」

 

只ならぬ雰囲気になんとかすべきだと判断したクラインだが、何故か落ち着いているエギルはフォンとユウキの動向を見守っていた。すると、

 

「なら、ボクも謝らないとね」

「…えっ?」

 

突如放たれたユウキの言葉に驚くフォンは顔を上げる。

 

「だって…フォンが謝ることになったのはボクが原因でしょう?だったら、ボクも謝らないと駄目だよね?」

「そんなことはない!?あれは俺がいきなり…」

「でも、いきなり姿を消したのはボクもだよ?それでもフォンやアスナは諦めず追いかけて来てくれたんだよ?だから…ボクはフォンに謝ってもらっても困るよ。だって、怒る理由がどこにもないもん…ちょっと怖かったけどね」

「…ユウキ…」

「はい!これでこの話はおしまい!ほら、次のシーンに早く行こうよ!」

「…ああ!」

 

「…ほら、大丈夫だっただろ?あいつらはそう弱くはないさ」

「お、おう…流石はエギルだな……でも、俺たち、完全に空気と化してなかったか…?」

「それは言わないお約束だ」

 

ゲストを完全に置いていけぼりにした司会陣の言葉で、プレイバックは次のシーンへと移るのだった。

 

 

〈ユウキ、フォンとアスナと一緒に自身の家を見に行ったシーン〉

 

「あー、ここか…このシーンはカットしない?」

「いや、なんでだよ…」

「そりゃそうだろう…なんせ、この裏側でユウキはアスナと、フォンが好「エ、エギルさん!?それ以上は駄目だよ!?」おっと、口が滑ったな」

「……(あー、そういうことか)」

 

真意をバラそうとするエギルに待ったを掛けるユウキだったが、どういうことかを悟ってしまったフォンは一人納得してしまっていた。そして、顔を赤くしているユウキの意図を汲み取り、話題を変えることにした。

 

「まぁ、このシーンは俺やアスナがそれぞれ悩みを打ち明けたシーンでもあるしな。あの時のユウキの言葉がなかったら、俺も未だに家族と壁を作ってたかもしれないからな」

「…フォンの親父さんとお袋さんのことだよな?」

「ああ。それが次のシーンに関わってくるわけだ。だから、そこで纏めて話すとするか。それじゃ、第9話からこのシーンをどうぞ」

 

 

〈フォン、両親とALOにて和解するシーン〉

 

「今思ったら、フォンの昔の話も少しだけ出てるシーンなんだな」

「クライン。言っとくけど、俺の過去に関しての話はNGだからな」

「前回の放送を見てるから分かってるよ…それにしても、フォンはSAOに巻き込まれる前から優等生だったんだな」

「まぁ、勉強できそうなイメージはあるよな。そういえば、うちの店に来た時とかに、リズやシリカにも勉強教えてたりしてるよな」

「…一応、勉学はしっかりとしてる方かとは自負してます。時々、ユウキにも教えてたりしてますし」

「そうだね。フォンの教え方ってなんか上手いだよね!もしかしたら、家庭教師のアルバイトもこなせちゃいそうだよね」

「そういや、バイトに入っている時も会計とか早かった記憶があるな」

「…おいおい。剣術だけでなく、勉強までできるとか…モテる要素しかねーじゃねぇか!?」

 

以前に見かけた光景を思い出したエギルにユウキが嬉しそうに同意していた。一方で、非の打ちどころがないフォンにクラインが悲鳴を上げてしまっていた。

 

「そうだ。両親といえば…フォン、今でも両親とはALOで一緒にプレイしてるのか?」

「ああ。二人ともかなり忙しいから、そんなに頻繁にとはいかないけど、ログインしてる時には俺とユウキの4人でクエストに行ってるな」

「二人ともVRは初心者だから、色々と教えながらって感じだね」

 

クラインの問いにそう答えていくフォンとユウキ。

 

「でも、こうしてご両親の顔を見ると、二人の良いところをそのまま持ってきた感じなんだな…フォンってSAOの時からファンが多かったが、ご両親の顔を知るとかと納得しちまうな」

「よく周りから父さん似だと言われることが多いんですけどね」

「親父さんと違って、それなりに笑っていることが多いから、そう言われるのかもな」

「言われてみれば、フォンのお母さんっていつも微笑んでる印象だよね」

(…あの笑みには色々な意味が含まれてる、なんては口が裂けても言えないよな)

 

エギルの意見に今までの評価を答えるフォン。それを聞き、思っていたことを話すクラインとユウキの会話に、とんでもなく腹黒天然な母親なのだとは言えなかったフォンであった。

 

 

トピックス:装備『蒼炎の烈火 Ver2』 

フォンが使用する防具の一つ。SAOで愛用していた防具のリメイク。基本的にはこの防具をメインに闘うことが多い。全種類の武器を使うことを想定しており、安定した性能を持っている。メインカラーは蒼。

 

 

「さてさて…それじゃ次のコーナーは…!」

「フォンとユウキに聞く、裏話のコーナーだ」

 

司会がクラインとエギルに変わり、次のコーナーへと移る一同。『さぁ、メインデュッシュの時間だ!』『なんか笑える気がする!』とコメントも大盛り上がりだったりする。

 

「前回の件で結構答えたつもりだけどな」

「何言ってんんだ…作者が溜め込んでる業はまだまだあるんだよ」

「いや、それ作者に清算させろよ…はぁ…仕方ない。主人公として答えてやるとしますか…」

「その意気だよ、フォン!よし、頑張るぞ~!」

「それではまず最初の質問だ。フォンのOSSが劇中登場してたが、そもそも二刀流のOSSなんて登録可能なのか…という質問だな」

 

お題を投げ掛けたエギルの言葉と共に、上空にフォンが劇中で使用したOSS〈アドバス・バリスタ〉と〈マージニック・ステラファントム〉、そして、キリトがALOで使用した二刀流ソードスキルが表示される。

 

「そもそもの話だが、OSSの定義は分かってるよな?」

「えーっと…自分の好きなソードスキルを作れる仕組みだよな」

「そうだ。そして、それにはいくつかのルールが存在する。既存で設定されているソードスキルの軌道と同じものはOSSとしては認識されない、ソードスキルと同等以上のスピードでなければ登録されない、連撃技の場合も同様で連撃の隙間が少しでも開けば最初から登録のし直しになる、OSSの継承は一回のみできる…まぁ、こんなところだな」

「確か…ユウキの〈マザーズ・ロザリオ〉…11連撃が今のALOだと最高連撃だったよな?」

「そうだよな…でも、二刀流とはいえ、キリトもフォンもそれ以上の連撃OSSを完成させてるよな」

「ボクも不思議に思っていたんだよね…OSSのシステムが導入されたのって、結構最近だよね?」

「12月の頭…丁度マザーズ・ロザリオ編の本編が始まる一か月前だな」

 

エギル、クライン、ユウキの順に上げられた疑問にフォンは二刀流でのOSSを完成させたカラクリを説明し始めた。

 

「このOSSの登録システムの仕組みだが…あくまでも登録時に条件を満たせばいいわけで、登録さえしてしまえばOSSとして認識されるわけだ。だから、俺とキリトは嫌という程、剣を振るったわけだ……アイテムと魔法とアクセサリーで自分たちのスピードを限界まで上げてな」

「「「…えっ…」」」

「それだけじゃないぞ…普通に剣を振るっただけじゃ本気になれないから、HP全損でのデュエルを通して本気で殺り合ってたからな……一体何回デスペナ喰らったかな…アハハハハ」

「ち、ちなみにだけど…何が一番しんどかったんだ?」

「ジ・イクリプスだな…流石は驚異の27連撃…スターバースト・ストリームを完成させた時の3倍以上かかったからな。その間にマージニック・ステラファントムの方が先に完成したからな」

 

どこか遠い目をするフォンに全員がドン引きしていた。あのデスペナのリスクが大きすぎるALOでそんなことを裏でやっていたのかという驚愕の事実が発覚した瞬間だった。クラインがなんとか代表して質問を続けるが、更にフォンの顔が青くなっていた。

 

「あー…そのOSSは継承させる予定はあるのか?」

「ああ、それはありません」

「な、ないの!?」

 

恐る恐る尋ねたエギルの言葉に、我に戻ったフォンはその意思はないとあっさりと言い切った。まさかの答えにユウキから驚きの声が出た。

 

「俺もキリトも二刀流関係のOSSは継承させる気はないよ。あれはあまりにも強すぎて、必ず争いの火種になっちまうからな。俺はユウキと闘うまであの技は封印してたし、キリトも二刀流以上に非常時以外はあの技を使う気ないらしいからな」

「…ってことは、あのデュエルトーナメントが二人のOSSを見る最後の機会だったかもしれないってことか?!」

「もしかしたらですけどね。というか、俺たちがあんな技を使う機会なんて来ない方がいいんですよ」

「…フォン、多分それフラグだよ」

 

もう二度と見ることがないかもしれないとエギルとクラインが残念そうにしていたが、当事者のフォンはむしろどこか安心しているようだった…隣でユウキがフラグではないかと危惧していたが…

 

「コ、コホン…ともかく、気を取り直して、次の質問にいくか!」

「そ、そうだな!次は…フォンは色々な武器や防具を自身で作り上げていますが、名前はどういった感じで付けているのですか…という質問だな」

「名前か…基本的に俺が使う武器って、作者が元ネタから流用するか、思いつきで考えたものを色々調べて当てはめてるって感じだからな。基本的にこれといった法則性はないんだよな」

 

これまで登場してきた武器や防具の画像に苦笑しながらクラインの質問に答えていくフォン。

 

「いや、それは作者の理由だろうが…お前さんはどういった感じで付けてる設定なのかを聞きたいんだが…」

「設定って…まぁ、いいか。俺の場合も二つですよ。作った時のデフォルト名か、完成したものを見てから付けてるって感じです。特にこれといった意図はないですよ?」

「へぇ~…全部フォンが名前を考えてるのかと思ってたよ」

 

エギルのメタ発言に引きながらもフォンは答えていく。その答えに横にいたユウキも驚いていた。

 

「そういえば…フォンって自作の武器はどれくらい持っているんだ?」

「そうだな…基本ストレージには防具は3種類入れてるな。倉庫にもかなりの数があるから…武器・防具纏めて大体30~40くらいか?正確には数えてたことないからはっきりとは断定できないけど、そんなところだと思うぞ」

「…でも、フォンは武器を持ち過ぎだと思うよ?結婚してストレージが共通になってから、時々武具欄が一杯すぎて、アイテムを探す時に大変なんだよ…!」

「…善処します」

 

クラインの質問に答えたフォンだったが、意外なクレームがユウキから飛んできていた。一方のクラインは何か納得がいかない様子で唸っていた。

 

「…?どうした、クライン?」

「…いや、てっきりフォンは中二病かと思ってたんだけどな…ちぇ、折角揶揄うネタが出来たと思ったのに…」

「喧嘩売ってるのなら、言い値で買うぞ…クライン」

 

全く悪びれた様子のないクラインにフォンは額に青筋を浮かべるのだった。

 

「その辺にしとけ、お前ら。ほら、次の質問に行くぞ。お次は…お二人はお互いにどんなところが好きですか、だそうだ」

「「す、好きなところ!?」」

 

まさかの質問に悲鳴を上げるフォンとユウキ。一方のエギルとクラインは笑みを浮かべながら、答えを楽しみにしていた。

 

「う~ん…マジで答えないと駄目ですか、これ!?」

「答えないと、このコーナー終わんないぞ!」

「いい答えを期待しているぞ、二人とも」

「そ、そうだけど…いきなり言えと言われても…恥ずかしいし…むむむ!?」

 

答えを迫られ、顔を赤くさせていく二人。そして、先に覚悟を決めたのはフォンだった。

 

「あー、もう!分かったよ…その…いつも笑顔で、前向きで…色々な表情を見せてくれるユウキが好きだ!」

「え、ええぇ!?そんなあっさりに言うの!?」

「…ほ、ほら!ユウキの番だぞ!」

「ううぅ…ええっと……カッコよくて、いつも見ててわくわくさせてくれて……ボクのことを大切に思ってるところ…でぅ…!」

 

堂々と言い切ったフォンに対し、あまりの恥ずかしさに最後の方はか細い声になってしまったユウキは、小さくなる言葉と共に顔がどんどんと赤くしていた。

 

「凄い男気だったな、フォン。ユウキの顔を見てみろ…真っ赤になってるぞ?…でも、二人がそれぞれを良く思っていることがこれで分かったな」

「「…っ…!」」

「それじゃ、質問コーナーは「ちょっと待った、エギル!」ク、クライン!?」

「ここまで来たのなら、二人の馴れ初め話も聞かないと、もったいないだろうが!」

「「…!?」」

 

エギルの終わりだという言葉を待ったを掛けたクライン。これで終わらせてたまるかと割り込み、ここぞというばかりに二人へと詰め寄った。そんなクラインの質問に、完全に油断し切っていたフォンとユウキは更に驚く。

 

「いつもいつも見せつけられるんだ!もう少しこの二人にも恥ずかしい思いをさせるべきだろう!そして、萌てる秘訣を手に入れてやるんだ!こんなチャンスを逃すわけにはいかないぜ…!」

「お、おいおい!?そんなこといきなり言い出されても……っ!?ク、クライン?!」

「何だよ、そんな焦ったりして……あっ…」

 

「…ク~ラ~イ~ン~…!!お前って奴は……!?」

「うわぁ…もしかしてもう手遅れ?」

 

狼狽するエギルの言葉に何事かとクラインが視線を向けた時には言葉通り手遅れだった…憤怒の化身と化した戦鬼…もといフォンが武器…右手に刀を、左手に両手斧を装備していた。発する負の心意により、防具の蒼炎の烈火までもが赤く染まっているように見えたのは気のせい…とクラインは信じたかった。

 

「ユウキまで恥ずかしい思いをさせようとしやがって…いい加減にしやがれ!?」

「ちょ、まっ、ひぃぃ!??うおおぉぉおぉおぉ!?」

「待ちやがれ、この野郎!?」

「ちょ、ちょっと2人とも?!番組どうするの!?」

「あー……飛んで行っちまったな」

 

鬼と化したフォンの猛攻から逃げ出したクラインは翅を展開し、空へと逃避した。それを追って、フォンまでも飛んで行ってしまい…スタジオにポツンと残されたユウキとエギルは唖然とし、これ以上の番組の続行は不可能だと判断した。

 

「ア、アハハ…ゲストのクラインさんに、司会のフォンまでいなくなってしまったので、今回はこれでお開きにしようと思います!エギルさん、初めての参加でしたが、どうでしたか?」

「そうだな…とりあえず、フォンが如何に大変かということを知って、俺だけでも優しくしてやるべきかと思ったな。ユウキも色々と大変だとは思うけど、あと二回も頑張れよ?」

「はい!ありがとうございます!……その前に、フォンを止めるのを手伝ってもらっていいですか?」

「そう、だな……あのままだとクラインがリスキルされまくりそうだからな…」

 

上空で恐怖の鬼ごっこを続ける二人を見て、苦笑いするユウキに流石のエギルもため息を吐くしかなかったのだった。

 

「そ、それでは、次はマザーズ・ロザリオ編第3回でお会いしましょう!それじゃ!…うわぁ、クラインさんが串刺しに…!?ストップ、ストップ!?」

『そして、全員いなくなる…(笑)』『夢幻の戦鬼バーサークモード…!?』『クラインーーーーーーーーーーーーー!?』

 

『この番組は日本国民の安全なネットワーク生活を守る総務省仮想空間管理課の提供でお送り致しました』

 

〆の挨拶の途中で、クラインがフォンに(刀によって刺され、両手斧を振りかざした形で)捕まったところで、慌てて飛び立ったユウキとエギルの姿をバックに、提供画面が映ったところで番組が終了したのだった。

 

 




本編よりもこっちの方が筆が倍で進むんですよね(笑) 

OSSやらアリシゼーションでも少し触れたネーミングに関する暴露回でもございました。次回のゲストはリーファとシノンになりますので、お楽しみにして頂ければと思います。

それでは!

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