ソードアート・オンライン~夢幻の戦鬼~   作:wing//

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早くも折り返しのお話となりました。

後半は完全にネタに走りました…後悔はしておりません!!

それではどうぞ!

※お決まりですが、本編に関するネタバレなど当たり前のレベルで書かれております。本話から目を通して頂く方は、本編を読んでからお読み頂くことをおススメします。尤も、
「ネタバレ…?そんなことは1000%気にしない」
と豪語できるサウザー課長クラスの自信がある方は問題ないかと思いますので、先にお進みください。


そーどあーと・おふらいん まざーず・ろざりお編そのさん!

「みなさん、こんにちは!そーどあーと・おふらいんの時間です!司会のユウキです!」

「解説のフォンです。本日もよろしく」

 

司会陣のお決まりの挨拶と共に始まった第3回おふらいんシリーズ。観客の拍手とネットのコメントに出迎えられていた。

 

「さてさて、始まりましたマザーズ・ロザリオ編第3回!折り返しとなる今回は、第10話~第14話のプレイバックをしていきます!」

「バトル回が続く本作を共に振り返ってくれるゲストはこの二人…それじゃ、自己紹介よろしくな!」

 

ユウキとフォンの言葉に続き、現れたのはあの二人だった。

 

「どうも!風妖精のリーファです。久々の登場ですけど、頑張ります!」

「こんにちは。猫妖精のシノンよ。リーファ、私も久々の登場なんだけど…まぁ、呼ばれたからにはしっかりとやるわ」

「…なんだろうな。この二人だと物凄い安心感があるな」

((うわぁ…精神的に疲れてる…!))

 

フォンのどこか疲れた表情と病みを感じさせる言葉に、ゲスト二人は内心冷や汗を流していた。隣のユウキも乾いた笑みを浮かべていたが、どこか諦めてしまっていた。

 

「フォン、多分大丈夫だよ…リーファもシノンも真面目な方だから、きっと大丈夫だよ。この二人は裏切らないよ」

「プ、プレッシャーが凄い…」

「はいはい…そんな馬鹿やってる暇があったら、とっとと番組進行しなさい、二人とも」

 

前回みたいにフォンの心が壊れる前にフォローに回るユウキ。そんな彼女の言葉にリーファがたじろぎ、呆れたシノンの言葉でようやく番組が進行し始めた。

 

 

トピックス:片手剣『オニキス・トルゥース』

フォンがSAO時代に作成した黒真珠のような刀身が特徴的な片手剣。ヒースクリフとの決戦時にキリトが使用した。本来であれば、キリトが持っていた他のアイテム同様に失われる筈だったが、幻想剣関連のイレギュラーアイテムだったため、『ユイの心』と共にオブジェクト化することができた。キリトがアバターを初期化する前にフォンに返された。ユウキが持つ『イシスフィテル』の元となった。

 

 

「それではプレイバックのコーナーです」

「今回は見所が多いので、それなりに長くなると思うが…ゲストの二人も宜しく頼むな」

「はい!」「任せときなさい」

「それじゃ、まずは第10話のこのシーンからです!」

 

〈フォン、ユニークウェポン『イシスフィテル』を作り上げてしまう〉

 

「ねぇ…なんでフォンはそういうことをするのよ?」

「…これに関しては反論の仕様もありません」

 

呆れた表情のまま、諫言を飛ばすシノンにフォンは反論することができず、目線を逸らしながら冷や汗を流し続けていた。一方の依頼者であるユウキも冷や汗を流していた。

 

「ユニークウェポン…それって、お兄ちゃんやフォンさんがSAOで使ってた二刀流や幻想剣みたいなスキルと同じアイテムってことですか?」

「一応『イシスフィテル』もプレイヤーメイドだから、古代級武器という扱いにはなってるんだが、明らかに異質な能力を持っているから、俺がユニークウェポンだと呼んでるだけだよ」

「持つ相手によって、能力が異なるなんて凄いよね…一回、フォンに所有権を渡してみたんだけど、本当に能力変わったもんね」

「…今思えば、幻想剣の武器ヴァージョンみたいな感じなのね。私やリーファが所有したら、別の能力に変わるのかしら」

「そう言われてみればそうかもな…基本的には所有格が移らないといけないから、試してみたことなかったな。今度皆に強力してもらって試してみるか」

 

シノンの指摘に納得したフォンはどんな効果に変わるのかが気になり、そんなことを画策するのだった。

 

 

〈ユウキ、フォンへの恋心をはっきりと自覚するシーン〉

 

「なんでぇこのシーンがセレクトされてるのぉぉぉぉ!?」

「…この時のユウキ、内心でこんなこと思ってたのか…!?」

 

初めて見たシーンに顔を赤くするフォン…その一方で更に顔を真っ赤にしているのは絶叫しているユウキだった…実はこのシーンがセレクトされるとは司会陣二人は聞いていなかったのだ。

 

「フォンさん!?ユウキさん!?」

「二人とも、恥ずかしさのあまりクラッシュしてるわね…」

 

混乱状態のままの二人を見て、ゲスト二人もどうするべきか困っていた。とりあえず、二人が復活するまで待つことにした。そして、5分程してようやく二人が落ち着いたのでコーナーが再開した。

 

「ううう…お墓まで持って行きたかったのに…!」

「ま、まあまあ…そういえば、フォンさんもこの時からユウキさんのことが好きだって自覚し始めたんでしたっけ?」

「ぐっ、やっぱりそこつっこまれるのか…そうだな。12話での話になるが、ユウキにあの質問をされて自覚したってとこだな」

「まぁ、ようやく気付いたってとこなのかしらね…キリトに比べたら、そういうとこ鈍くないからまだいい方でしょうけど」

「シ、シノンさん?言葉に棘と負のオーラが籠ってるんですが…」

 

どこぞの朴念珍に向けての言葉を発したシノン。そのオーラがリーファにも伝染したことで、司会の二人はそれ以上触れるのは危険だと察し、次の場面へと話を移すことにしたのだった。

 

 

〈第29層戦でのフォン無双〉

 

「…ねぇ、もうフォン一人でボスも倒せるんじゃない?」

「人を化け物みたいに言うな!?」

 

ボス戦中盤の一人しか動けない状態で、ボスの広範囲攻撃を相殺し、特攻でボスをダウンさせたフォンの幻想剣を見て、呆れてしまっているシノンに言葉に全員が頷く中、フォンが抗議の声を上げていた。

 

「その…お兄ちゃんやユウキさんも大概だと思うんですけど、フォンさんって普段が常識人ですから、こういう非常識なことをやるとそのギャップで驚きが大きくなってる気がするんですよね」

「あー、それはボクも分かるかも…いつもツッコミ役だから尚更だよね」

「…さいですか…」

 

リーファとユウキの追撃のコメントに、もう否定する気もなくなったフォンは諦めてしまった。そして、話は29層のボス戦へと移った。

 

「今思ったんだけど、フォンはSAOで29層のボスとは戦ったことなかったの?劇中だと初見みたいな感じだったけど」

「ああ。29層のボス戦は参加してなかったんだよ。あの時は、25層のボス戦の影響で元アインクラッド解放軍が分裂しかかっててな。ディアベルから相談を受けて、解放団の設立を手伝っていた時期なんだ。だから、俺は29層から30層のボス戦は参加してなくて、キリトから簡単に話を聞いたぐらいだったな。

だから、ユウキと出会った隠しダンジョンでのボスが29層のボスと同タイプだとは知らなかったんだよな」

「『希望の樹』ですか…まるでアリシゼーションに出てくるギガスシダーとは真逆の名前ですね」

「…作者メモによると、SAOで登場させたボスの名前が『絶望の森の主』という名前だったのと対照的にした結果だったらしくて、ギガスシダーのこととかは全然考慮してなかったみたいだよ」

「そもそも俺はアリシゼーションには序盤から参戦する予定じゃなかったからな…その弊害がここできたって感じだな」

 

リーファとユウキの言葉に当事者であるフォンは苦笑いするのだった。

 

 

〈デュエルトーナメント フォンVsキリト〉

 

「これは本当に凄い闘いだったわね」

「お兄ちゃんとフォンさん…二人とも全力で…でも、物凄い楽しそうに闘ってましたもんね。笑いながら闘ってたので、ちょっと怖かったですけど…」

「あの時のフォンとキリト…互いに全力だったからじゃないかな?俗にいう、ハイってやつじゃない?」

 

フォンとキリト…全力での勝負をもう一度見て、そんなコメントをするシノン、リーファ、ユウキ。言われた側のフォンは照れてしまい、頬を掻いていた。

 

「…でも、あれは俺の策が嵌った結果だからな。純粋な実力だと、多分キリトの方が上だと思うぞ。俺の場合、技術で多少誤魔化してるところもあるからな」

「でも、フォンさんって、剣術の腕も凄いじゃないですか?私とリアルで剣道の試合をした時も勝ってましたし…」

「それは経験の差だよ。俺とリーファが同じ年齢だったら、どうなってたか分からないよ」

「…あんた、そこまで謙虚だと嫌味に聞こえるわよ」

 

リーファの問いにこれまた否定するフォンにジト目のシノンから批判が飛んできた。その言葉と目線を受け、思わずたじろぐフォン。

 

「そ、そういえば!?…リーファもこの大会出てたんだよな。アスナと当たったのは運が悪かったな」

「う~ん…空中戦なら勝てるかと思ったんですが…流石はアスナさん…物凄い剣裁きでした…」

「…というか、今思ったんだけど…フォンって、ボクやキリトだけじゃなくて、SAO時代にアスナにも勝ってるんだよね?なんやかんやで、意外に勝率高くない?」

「そういえばそうだな。あと闘ってないのは…シノンくらいか?」

「そうね…今度GGOで闘ってみる?ヘカートで風穴を開けてあげるわよ?」

「……考えときます」

 

確実にシノンにロックオンされてしまったフォンが再び後退る。近いうち、その闘いが実現されるかもしれない。

 

 

〈フォンVsユウキ 3度目のデュエル!〉

 

「そして、13話でのフォンとユウキの闘い…これまた凄い闘いだったわね」

「全力だったのに、まさか負けるとは思ってなかったな。二刀流でのOSSとか反則だよ…!」

 

シノンの感想に、当時のことを思い出したユウキが悔しがっていた。

 

「いや…流石にユウキ相手に全力かつ隠し玉なしには勝てないって…それにユウキと闘うんだ。出せるものは全部出し切って闘いたかったからな」

「あの後も凄かったですよね…大勢の前で大胆に告白してましたもんね。あの後、フォンアンチプレイヤーが急増して、ユウキさんのファンが私たちの周りも飛び回ってましたもんね」

「…自分でやっておいてなんだが、大変なことになったからな」

「ボクたち、当分の間、変装しないと外出できなかったもんね。フォンなんて、指名手配並みの扱いだったもん…」

「ああ。それのお陰で〈マージニック・ステラファントム〉がそこまで話題にならなかったから助かったとも……言えないな、うん…」

 

変装生活のことを思い出し、どこか疲れた顔をするフォンとユウキ。またしても、フォンが

やらかしてしまった結果だったが、流石の状況にリーファとシノンも同情せざるを得なかった。

 

 

〈フォン、ユウキに自身の秘密を打ち明ける〉

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「フォ、フォン…大丈夫?」

「ああ…この時のことをちょっと思い出しただけだよ」

 

動画が終わり、珍しく黙り込んでしまったフォン。その様子に隣のユウキが心配になり、声を掛けるが、大丈夫だと答えるフォン。

 

「…あ、あのね!あの時も言ったけど、フォンが別の世界の人間だからって、ボクは全然気にしてないから!」

「そ、そうですよ!お二人の気持ちに世界とかそんなの関係ないですよ!」

「だから気にするんじゃないわよ…あんたがそんな顔をしてたら、ユウキが元気じゃなくなるじゃない…!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

三者三様の言葉をフォンに投げ掛けるが、フォンは一切反応しない。顔を俯せたままのフォン…気まずい空気がスタジオへと流れていた。ところが…

 

「…アスナめ。やっぱり許せん…!」

「えっ?」「へっ?」「はっ?」

 

フォンの放った一言に思わず目が点となる女子3人。

 

「なんでユウキにややこしい知識を植え付けようとするからな、あいつは…!アイアンクローじゃ足りなかったか…今度やらかしたら、何の技を食らわしてやろうか…!?」

「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」

「うん?どうした、3人とも?」

 

アイコンタクトで頷き合っている女子3人に不思議そうな表情で問いかけたフォン。次の瞬間、

 

「マザーズ・ロザリオ!」「ノヴァ・アセンション!」「ストライク・ノヴァ!」

「ぎゃああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

各自が放てる最大威力のソードスキルを叩き込まれ、ぶっとばされるフォン。壁に叩きつけられ、体から煙を上げていたが、助ける者は誰もいなかった。

 

「はい!あんなフォンは放っておいて、次のコーナーへ行こう!」

「そうですね」「賛成」

「ぐぅぅ…(や、やらかした…照れ隠しでもあんな冗談は言うじゃなかった…)…ガクッ…!」

 

実は本心を見せたことと、泣くところを見られたのが恥ずかしいと思ったフォンの冗談だったのだが…そうとは知らないユウキたちは容赦なく番組を進行していくのだった。

 

 

トピックス:装備『骨織りの海装束』

フォンが使用する防具の一つ。SAOで愛用していた防具のリメイク。元の防具は『骨繋ぎの賊装』。短剣や片手剣を主体とした軽装備でのスピード戦法を得意とする。スキルコネクトや交互の武器による連撃が主流。右肩に巨大なドクロの手甲が仕込まれており(ALOからの装備)、アンバランスかつトリッキーな動きだけでなく、隠し玉としての奇襲にも使える。

 

 

「それでは次のコーナーは…」

「二人に聞きました、お互いに直してもらいたいランキングのコーナーよ」

「「ええっ!?」」

 

司会側に回ったリーファとシノンが番組を進行していくが、まさかのシノンの言葉にフォンとユウキから驚きの声が上がっていた。その理由は明白…二人には全く聞かされていなかったコーナーが告げられたからだ。

 

「ちょ…!?シノン、どういうことだ!?」

「どういうことって…聞いてのとおりのコーナーよ。普段からイチャイチャしてるあんたたちにも、何かしら思っているところがある筈…そういう意図でのコーナーよ」

「そうじゃなくって!?…このコーナーは『裏話』のコーナーじゃなかったの!?」

「いや~…せっかくヒロインのユウキさんがメインのマザーズ・ロザリオ編なんですから、書けるものは書きたい…っていう作者さんの欲が暴走した結果です。お二人とも、第一回の番組を収録する前にちょっとしたアンケートに答えましたよね?」

「「…あっ!」」

 

リーファのとてもいい笑みと共に放った言葉に、心当たりがあったフォンとユウキは思わず声が出てしまった。その驚きの表情に、シノンまでも笑っていた。

 

「このコーナーでは、フォンとユウキ…それぞれがここは直してほしいと思う点や止めてほしい思う点を暴露するコーナーよ」

「発表されるとは思ってもみなかったお二人の本心が明らかになりますので、是非ご期待ください!」

「…やられた。キリトたちが司会じゃないからって油断してた…!?」

「ううぅ…今回、ボクへのドッキリ多くないかな…!」

 

喜々としてコーナーを進行していく二人に、不意打ちを食らったフォンとユウキ。さらに、自分たちの本心が発表されるとは思ってもみなかったので焦りまっていた。

 

「それじゃ、まずはフォンさんの方から発表しますね!」

「ま、待て、リーファ!?」

「第3位は…お風呂上りにタオル姿で歩き回らないでほしい、だそうです」

「ええっ!?」

 

容赦なく発表された事実にユウキから驚きの声が上がった。一方、シノンは険しい表情でフォンを睨んでいた。

 

「あんた…まさかユウキに欲情して…!」

「違うわ!?そういう意味じゃないわ…はぁ。時々なんだが、ユウキが寝間着と下着を風呂場に持って行くのを忘れて風呂に入るんだよ。それを取りにバスタオルを纏っただけの姿で行かないでくれって話だよ」

「つまり、着替えを持って行くのを忘れないでほしいってことですか?」

「そういうことだ…ユウキが気にしてなくても、俺は気にするから勘弁してほしいんだよ」

「…ゴ、ゴメン…それは気を付けます。そっか、フォンも気にしてくれてるんだ…エヘヘ!」

「………(早く次にいけ!リーファ、シノン!?)」

「………(は、はい!?)「……(え、ええ!?)」

 

これ以上の話は危険だと判断したフォンはアイコンタクトで二人へと指示を送り、考えを理解したリーファはシノンに次の案件を発表するように告げた。

 

「それじゃ、第2位の発表よ。第2位は…これユウキにというよりも、ご両親を含めてという意味もあるわね…こっそりと連絡を取り合うのを止めてほしい、だそうよ」

「あー…」

「心当たりがあるんですか、ユウキさん?」

「うん。ALOでもそうなんだけど、ボク、フォンのご両親とよく話すんだよね…フォンをそっちのけにしちゃって…」

「…可笑しいよな。俺、実の息子なのに、義娘の方が優遇されてるんだぜ。いつの間にか、直近の話題が両親に伝わっていたり、何故か俺の小さな時のことをユウキが知ってたりとか…いや、俺が一時期距離を取っていたことのも原因なんだろうけど…」

 

とてつもなく決まずい顔のまま目線を逸らすユウキ。リーファの問いかけに苦笑いで答えていくが、それに比例してフォンの視線はどんどんと遠くを見るようになっていた。

 

「ヤバいわね。フォンの表情がどんどんと死んでいっているわね…って、リーファ!?貴女までどうしたの!?」

「…いや。私も他人事じゃないなと思いまして。私もお兄ちゃんと色々ありましたから…」

「分かるか、リーファ…父さんはユウキと話してたら終始にこやかだし、母さんは微笑みながら先の関係へと進めようと促すし…」

「ア、 アハハ…お義母さんも気が早いよね…」

 

リーファまでもが精神的ダメージを受け、両親のユウキの溺愛ぶりにフォンは完全にいじけってしまった。一方のユウキも照れながらも満更ではない顔をしていたのだった。

 

「し、失礼しました…!それでは、第1位の発表です!フォンさんがユウキさんに直してほしいところ第1位は…寝てる時に抱き着く頻度をもう少し抑えてほしい…えっ?」

「へっ?」「は…?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

正気に戻ったリーファがランキング1位を告げるが、再び目が点となっていた。その内容にユウキとシノンも思わず呆けた声が出てしまい、3人の視線がフォンへと集まるが、当の本人は手で目を抑えながら天を仰いでいた。

 

「ど、どういうこと…?えっ、ユウキ…フォンに抱き着いて寝てるの?」

「い、いや…流石にそんなことはしてないよ?」

「…とユウキさんは言ってますけど、どうなんですか、フォンさん?」

「えーっとな…まず俺とユウキは大きめのベッドで一緒に寝てるわけなんだが…」

「「…ああ、前回のやつ…」」

「ツッコミは後で聞くとして…まぁ、ALOにダイブする時もベッドでそのまま寝れるようにしてするわけなんだが…朝起きたら、いつの間にかユウキに抱き着かれてるんだよ」

「えっ!?」

 

司会二人のジト目をスルーし、経緯を説明していくフォン。そんな彼から放たれた衝撃の事実にユウキから驚きの声が上がる。だが、構わずフォンは話を続けていく。

 

「俺の方が大体早く起きるからユウキは気付いてないのも仕方ないんだろうけど…時々目が覚めた時に抱き着かれてたら…俺も男なので、その…色々とな」

「…フォンさん…」「…フォン…」

「そ、そんな…あわわわ…!」

 

珍しく枯れた表情のフォン…哀愁までもが漂っていた彼の姿に流石の女性陣も同情せざるを得なかった。一方のユウキは完全にパニックに陥っていた。ヘタレと言われようと、徹底した健全な付き合いを続けるフォン…その精神がいつ折れるのかは神のみぞ知る状態だった。

 

「そもそもだけど、なんであんたら、同じベッドで寝てるのよ?」

「それか…実はユウキと同棲することが決まって、両親が家具を一新してくれたんだがな…」

「部屋に戻ってみたら、寝室のベッドがキングサイズに変わってたんだよね。しかもお義母さんからの手紙付きで『頑張りなさい』とあったんだよね…アハハ」

「フォンさんのお母さん、どんだけ策士なんですか…フォンさんの腹黒さとか頭の回転の早さの根源が見えた気がします」

「誰が腹黒だ、リーファ…!クソッ、最新家電のレンジオーブンが追加されてて、テンション上がったところでの爆弾だったからな…やられた…!」

「悔しがるところ、そこじゃないでしょう!?」

 

明らかにズレたところで悔しがるフォンにシノンのツッコミが炸裂するのだった。

 

「…さて、フォンの不満ランキングが発表し終わったわけだけど…思った以上にぶっちゃけてたわね」

「フォンさんって、そういうの溜め込みそうですもんね。なんか見たくない闇を見ちゃいましたね」

「暴露したお前らにだけは言う資格ないからな」

「さて、それじゃ次はユウキさんの不満ランキングの発表ですね!」

(スルーしやがった!?)(スルーした!?)

 

にこやかにユウキの不満ランキング発表へと移ったリーファに、流石のフォンとユウキも心の中で絶句するのだった。

 

「フォンがあれだけぶっちゃけてたんだから、ユウキのランキングもかなり気になるわね。さてさて、何が出てくるのやら」

「そ、そんなに期待されても困るよ…」

 

シノンのコメントにより、ハードルが上げられてしまったユウキは思わず苦笑いしてしまう。

 

「それでは、ユウキさんのランキング発表です!まず第3位…できることなら隠し事をすることを止めてほしい…だそうですけど…」

「無理でしょう」

「ですよね」

「諦め早くない!?」

「アハハハ……」

 

ばっさりと切り捨てたシノンとリーファのコメントにユウキが叫ぶ。そして、当事者のフォンは乾いた笑いを浮かべながら、視線を逸らしていた。

 

「だって、フォンよ?隠し事がユウキを傷つけるのを分かっていながらやる男よ?それを覚悟した上で秘密を抱えるんだから、もうどうしようもないでしょう」

「その結果がアリシゼーションですもんね…むしろ、それが善意からしていることもありますから、余計に性質悪いですよね…ある意味、病気レベルですよね」

「…お、お前ら…容赦なさすぎだろう!?」

「こればっかりはフォンの自業自得だよ。ボクだけでもいいから、少しは話してほしいよ……だって、なんか寂しいよ」

「…ゴメン。その……今後はできるだけ話すよ。俺も、ユウキにそんな顔はしてほしくないからさ」

 

ユウキの涙声に、流石のフォンも大きく反省し、謝罪と共にユウキの涙を拭う。そんな二人だけの空間が続くかと思ったが、

 

「はいはい!お二人とも、良い空気のところ悪いけど、戻ってきてもらえるかしら?」

「「はっ…!?」」

「…お兄ちゃんとアスナさんもそうですけど、どうした私たちの周りのカップルって、こうも簡単に甘々空間を形成できるんですかね」

「いや~…」「それほどでも…!」

「褒めてません」「褒めてないわよ」

 

バカップルには無駄だと分かりながらもツッコミを入れるリーファとシノン…早々に諦め、次の話題へと移ることにした。

 

「それじゃあ、第2位の発表よ。ユウキのフォンに対する不満ランキング第2位は…もう少し我儘を言ってほしい、と」

「あー…フォンさんは確かに言わなさそうですよね。というか、お兄ちゃんたちへのフォローにも回っていることも多いですから、言わないというよりも言えないって感じ強いですよね」

「…うわぁ、何も言い返せねぇ…」

 

リーファのどこか納得した声に、流石のフォンも心当たりがあり過ぎた余り、何も反論することができずにいた。そんなフォンにユウキはジト目を向ける。

 

「そうだとしても、フォンはもっと言ってくれた方がいいよ!さっきのランキングの内容だって、普段から言ってくれれば、ボクもちょっとは直そうとしたのに…!」

「ゴメン、ゴメン…流石に同棲なんて経験ないし、どこまで言えばいいのか分からなくて、ちょっと迷ってた部分もあったからさ…それでさっきのランキングにはぶっちゃけったんだけど…」

「…ふ~ん…」

「…すみません、善処します」

「ねぇ、リーファ…フォンって、時々ユウキに尻敷かれてるわよね?あれって、キリトとアスナのがうつったんじゃないの?」

「どうでしょうね?ユウキさんはそうかもしれませんが、フォンさんの場合はちょっと過保護な部分が出てるだけだと思いますよ。お兄ちゃんと違って、そこら辺のメリハリは付けてると思いますし…」

「おい、そこ司会陣…当の本人が目の前にいるのに、どんな話をしてんだよ!?」

「それじゃ、第1位の発表に行こうかしら」

「シノンまでスルーするのか!?」

 

自身のツッコミまでもが無視されたフォンが絶叫するが、そんなことなど全くお構いなしに最後の不満ランキングが発表されることとなった。

 

「それでは、ユウキさんの不満ランキング1位の発表です!それは……えっ、これは…」

「どうしたの、リーファ?なになに……食費を気にしないでほしい…?どういうことかしら?」

「…?いや、俺に聞かれてもさっぱりなんだが…どういうことなんだ?」

 

司会陣二人に話を振られるが、フォン自身もどういうことかと首を傾げていた。そして、矛先は当の本人であるユウキへと向けられた。

 

「えーっとね…ボクも時々料理を手伝ってるんだけど…結構値引きのシールが張られた食品とかを目にすることがあってさ。それに、フォンってあんまり外食することなくてさ…もしかして、生活費とか気にしてるのかと思ってさ。エギルさんのところでバイトしてるし、そういうの厳しいのだったら、もう少しご飯の量とか減らしてもらってもいいのかなと…」

「いや、そういうことは全くないぞ」

「「「…えっ?」」」

 

ユウキの心配そうな言葉を、フォンは全くそんなことはないといった風にバッサリと否定した。あっけらかんと答えられ、ユウキだけでなく、司会陣も二人も目を丸くしていた。

 

「食材をお得に買おうとするのは一人で暮らしていた時の癖だな。エギルさんのところでバイトしてるのも、どちらかといえば自分の為だからな。そもそもの話、二人分の生活費は両親から毎月振り込んでもらってるからな」

「あっ、流石に貰ってはいるのね…」

「まぁな。でも、最初は恐ろしい程の金額が振り込まれてたんだぞ?…軽く一ヶ月外食だけでも余裕で過ごせる金額がな」

「えっ、そうだったの?!」

「ユウキが驚くのも無理はないよ。通帳は基本俺が管理してるし、生活費は俺が引き落としてる形だからな。今は抑えてもらってるけど、それでも軽く貯金ができるレベルの金額だからな…」

「…うわぁ。アスナさんはなんとなくイメージつくんですけど、フォンさんがお坊ちゃまっていうイメージが全然湧かないんですけど…」

 

両親の過保護レベルに乾いた笑みのまま、どこか遠くを見ているフォン。そんな彼の姿からは坊ちゃまだと言われても信じられないリーファが頭を抱えていた。一方のユウキは未だに開いた口が塞がらずに驚いており、流石のシノンも苦笑するしかなかった。

 

「…さてと…これでそれぞれの不満ランキングが発表されたわけだけど…フォン。あんた、もう少し懐をオープンにしてもいいんじゃないの?」

「本当ですよ!アリシゼーションじゃ、私たちだけでなく、ユウキさんにまで黙って行動してますし!彼氏失格ですよ!!」

「ぐっ!?正論すぎて、何も言えない……!」

 

司会陣二人にジト目と共に抗議を向けられ、反論の仕様がないフォンは思わずたじろいでいた。

 

「そうだよね!だって、フォンって過保護すぎるだもん!ボクがちょっと熱出したら、すぐに病院に連れて行こうとするし!」

「「…うわぁ…」」「ちょ、ユウキ…!?」

「ちょっと指を切っただけで、大慌てするし」

「いや、片手の指全部切ったら、誰だって慌てるだろうが…!」

「その癖、お昼休みにボクの教室に来た時、ボクが男子と話してたら微妙に不機嫌なオーラ出すし…ボクがスリーピング・ナイツとクエストに行くのもあっさりと承諾しちゃうし…それで本心をなかなか見せてくれないのは……寂しいよ」

「…フォンさん」「…フォン」

「…う、ううぅ……」

 

止まらないユウキの愚痴…その終わりに見せた彼女の寂しそうな表情に、司会陣二人も完全にフォンへと目で語っていた…どうにかしろと。完全に追い詰められたフォン…だが、自分が悪いということは分かっていたので、覚悟を決めてフォンは言葉を紡ぎ出した。

 

「その……ゴメンとか言ってどうにかなるとは思ってない…多分、今後も不満とか至らないことをするとも思う…でも、俺はユウキと一緒に過ごせて楽しいよ。好きなことも嫌いなことも、一緒に共有できるから滅茶苦茶楽しいよ…それだけは偽りも隠し事もない俺の本心だよ」

「…本当に?」

「ああ。もちろんだよ」

「ふーん…そっか。なら、許してあげようかな?」

「あげようって…なんで上から目線なんだよ」

「いいじゃん、偶には。アハハハハ!」

「ったく…フフッ」

 

「シノンさん…完全に二人っきりの空間になってますけど、どうします?」

「下手に触れたら火傷するわよ、リーファ。キリトたちと違って、あの二人はその内に気が付いて、赤面し出すからほっときましょう」

「…そうですね」

 

笑いながらイチャイチャし出したバカップル…そんな二人にリーファとシノンは白けた視線を飛ばしながら、フォンとユウキの熱が冷めるまで待つことにしたのだった。

 

 

トピックス:装備『第8騎士団の鎧』

第11話で登場した防御・タンク要素を重視した西洋鎧の防具。メインカラーは白と銀に、アクセントである赤の一本ライン。機動性を捨て、重量と防御力の高さをメインに防御や重槍での反撃をメインとした戦法を得意とする。元ネタは『機動戦士ガンダム 第08小隊』と後期主人公機『ガンダムEz8』。

ちなみに同時に登場した重槍『エレファス・ボーデン』は特にこれといった考えはなく出した武器で、重そう=象=エレファス…という安直なネーミングで作った武器だったりする。

 

 

「…もういちゃつきはいいのかしら、お二人さん?」

「わ、悪い…」「し、失礼しました…」

 

10分後…予想通りに我に返ったフォンとユウキは、容赦なく突っ込むシノンの言葉に更に顔を赤くしていた。それを見ていたリーファも呆れ笑いをしていた。

 

「ふぅ…それじゃあ、そろそろこの回も締めるとしますか。リーファ、シノン、色々あったが、どうだった?」

「そうね…あんたがユウキ馬鹿だということがよーく分かって面白かったわ」

「そうですね。でも、フォンさんはともかく、ユウキさんは不満のあまり、その内ヤンデレ化しそうでちょっと怖いですね」

「止めろ、リーファ。マジで止めてくれ」

「そうだよ!ボク、そんな怖いことは………しないよ!」

「ちょっと待て、今の間は何だ!?」

 

ユウキの言葉が一瞬詰まったことをフォンは聞き逃さなかった。背筋が凍ったフォンは、今後は本当に気を付けようと思ったのだった。

 

「と、ともかく…これでお開きにするぞ。次回は第4回…マザーズ・ロザリオ編最終回でお会いしましょう。それでは、」

「「「「またね~!!」」」」

『この番組は、キャリバー編が飛ばされたことで全く話に出てくることがなかったスリュムヘイムの提供でお送り致しました』

 




この作品を書いてて、その内フォンとユウキが本当にヤンデレになりそうで怖いと思っていたりしてます(笑)
そして、提供にぶっこんいでいくスタイル…キャリバー書けなかった、作者の足掻きでございます。

そして、次回の第4回は…いつもとは少し異なるスタイルでお届けします!実はアンケート結果を見て、第4回の構成を立てまして、あることを試してみました。
おそらく原作おふらいんを知っている方はすぐに気付くかとは思いますが、そういうことでございます。

アイン・ソフ・オウルさん、
ご評価ありがとうございました

それでは!

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