純粋な人が揃うと、苦労人の負担は二乗になるんだなぁ・・・書いてて、そんなことを思ったりしたお話です。
ちなみに時系列はマザーズ・ロザリオ編後・・・4月頭の春休み期間のお話になります。
それでは、どうぞ!
第1話 「キリトとアスナの夫婦事情」
「は~い、お待たせ!」
「悪いな、アスナ」「ありがとう、アスナ」
「どういたしまして。キリトくん、ユイちゃん、お茶の用意ができたわよ!」
「ああ」「は~い!」
春休み・・・ALOで俺とユウキはキリトのログハウスにお邪魔していた。
春休みの宿題を一緒にしよう、とのことで、キリト達と先ほどまで勉強していたのだ。
ユウキも興味がある、とのことで、アスナの課題を一緒に解いていた。そして、一段落ついたところで、一休みすることになったのだ。アスナが準備をしている間に、勉強の邪魔にならないように、おとなしくしていたユイちゃんと、外で遊んでいたキリトがログハウスに戻って来た。
「ふぅ・・・いい香りだな」
「ふふふ、でしょう!最近のお気に入りのブレンドなんだ!」
「うん・・・本当にいい香りだね!」
アスナが入れてくれた紅茶の香りを楽しみながら、俺とユウキは素直な感想を述べた。言われたアスナも嬉しそうだ。
「流石はアスナだな」「流石はママですね!」
「も、もう・・・二人まで・・・!」
夫と娘の賛辞に、体で喜びを表すアスナ。
「それにしても・・・あと少ししたら学校か」
「そうだね・・・学校が始まったら、こうやってゆっくりALOでプレイする時間も減っちゃうかもね」
「・・・でも、学校は学校で楽しいところじゃないの?」
「・・・まぁ、そこは人それぞれという所だよ」
キリトとアスナの言葉に、不思議そうに首を傾げるユウキに思わず苦笑いしてしまう俺。そんな俺達を見ながら、ユイちゃんも不思議そうな顔をしていた。
「それにしても、フォンとユウキが結婚か・・・しかも、リアルでも同棲してるなんてな」
「・・・フォンくんって、本当にとんでもないことするよね・・・昔から」
「・・・昔からそうだったんだ、フォン」
「・・・・・そ、そんな目で見るなよ」
3人の色々な感情がのった視線を受け、居心地が悪くなった俺はそう言って、紅茶を一気に飲み干した。そんな会話を聞いていたユイちゃんが、
「昔といえば・・・パパとママはどうやって出会ったんですか?」
「「・・・えっ!?」」
という質問をキリトとアスナにぶつけた。そんな二人は思わず、顔を見合わせていた。
「あっ!それ、ボクも聞きたい!」
その話に、ユウキも興味津々に身を乗り出し、話に乗った。
「え、え~とだな・・・」
「わ、私たちの出会いか・・・そ、それは・・・!」
いきなりの話に、軽くパニックになる二人。そんな二人を見かね、俺は助け船を出すことにした。
「俺たちが出会ったのは、SAOの第一層・・・迷宮区のボス攻略の前日だったな」
「えっ・・・そんな最初の頃から一緒だったの?」
ユウキの驚きの声に、俺は頷きながら話を続けた。
「ああ・・・俺なんかは始まりの街・・・今のアインクラッドにもあると思うが・・・キリトからそこでレクチャーを受けてからの付き合いだったな」
「・・・・・そうだったな。今、思えば・・・クラインともそれからの付き合いだったな」
俺の言葉にキリトも感慨深くそう言った。
「それじゃ、その頃から、お二人は仲が良かったんですか!」
「あー・・・・・そうでもなかったよな」
「そうだね・・・私なんか、あの時はかなり不愛想にしてたし・・・」
「えっ!?そ、そうなの・・・?」
「あの時のアスナは酷かったな・・・」
ユイちゃんの言葉に、キリトとアスナは苦笑いしていた。信じられないといった表情をしていたユウキに、俺が本当だと肯定した。
「・・・というか、途中から物凄く仲悪かったしな」
「・・・・・あ、あの時は、私も周りが見えてなかったというか・・・余裕がなかったのよ」
「あの時のアスナは、文字通り・・・攻略の鬼だったからな」
「確かに・・・俺にデュエルを仕掛けてくるくらいだったからな・・・」
「も、もう!?キリト君、フォン君!!!」
キリトと俺の言葉に、羞恥心で顔を真っ赤にしたアスナは顔を両手で覆っていた。
「・・・へぇ~・・・今のアスナからは想像できないね」
「はいです・・・」
俺達の話に、ユウキとユイちゃんは信じられないといった表情をしていた。
「・・そういえば、俺も気になったんだが・・・いつから二人は互いのことを好きになったんだ?」
「・・・いつからか・・・俺は、74層のボス戦の後・・・クラディールに殺されそうになった時に・・・俺のことを、本気で想ってくれてるアスナを見た時に、はっきりと自覚したかな・・・・アスナが好きなんだって」
「・・・わ、私は・・・圏内事件の時からかな」
「えっ・・・そんなに前からだったのか?」
「そ、そうだよ!ご飯だって何度も誘ったのに、キリト君・・・全然気づいてくれないし」
「あ、あれは・・・そういう意味だったのか・・・?」
「・・・それに・・・最近は、リズやシリカちゃん、リーファちゃんにしののんまでいるし・・・」
「「ア、アスナ・・・?」」「・・・ママ?」
話の空気が嫌な方向に流れていくのを感じた俺とユウキは冷や汗を流し、ユイちゃんは心配そうな表情をしていた。そんな時だった。
「・・・馬鹿だな、アスナは」
そう言って、キリトがアスナを抱きしめた。
「キ、キリト君・・・!?」
「・・・俺が好きなのは・・・アスナ、君だけだ。それはあの世界から何一つ変わってないよ。それが仮想世界でも、現実世界でも・・・俺の愛する人は、アスナだけだ」
「・・・・・キリト君・・・」
キリトの言葉に、目を潤ませたアスナ・・・二人はそのまま、顔を近づけようと・・・
「オホン!!」
「うわぁぁ!?」「にゃ!?」
俺が大きく咳払いしたことで、二人は正気に戻った。そんな二人を見たユウキとユイちゃんは・・・
「・・・はわわ!こ、これが、大人の・・・・!?」
「やっぱり、パパとママはラブラブなんですね!!!」
対照的な反応をしていた・・・というか、ユイちゃんの反応・・・大人すぎないか。
「でも、ユイのことも忘れないでほしいのです!」
「ハハハ・・・悪い、悪い」
「ゴメンね、ユイちゃん・・・おいで」
「・・・は~い!」
少しいじけた姿のユイちゃんを、キリトとアスナは抱きしめた。
「いい光景だね、フォン」
「・・・・・そうだな」
ユウキの言葉に俺は紅茶を飲みながら、そう答えた。
「いいな・・・ボクも赤ちゃんほしいな」
「ぶふぅぅぅぅ!!!」
「フォ、フォン!?」
まさかの爆弾発言、飲んでいたお茶を吐き出す俺。それに驚くユウキ。
「ご、ゴホゴホ!ユ、ユウキさんや・・・お願いだから、不用意な発言は注意してくれ」
「う、うん・・・?」
よく分かっていない表情で俺の言葉に頷くユウキ。お願いだから、俺の理性が外れる
ようなことは言わないでほしい・・・そんなことを俺が思っていると・・・
「そうだ・・・!パパ、ママ・・・実は、ユイ、もう一つ聞きたいことがあったんです!」
「うん、なんだ、ユイ?」「な~に、ユイちゃん」
娘の質問に、親の表情で応えるキリトとアスナ。が、
「・・・二人は、夜の時間・・・お布団でよく何をされているんですか?」
「「「!?!?!?!?」」」
まさかの愛娘の爆弾質問にキリトとアスナ、そして、俺に激震が走った。
「そ、それはだな・・・!?お、大人の嗜みというか・・・!」
「キリト!もっとオブラートに包めよ!」
「そ、それはね、ユイちゃん・・・そう、コウノトリさんを呼ぶための・・・!」
「アスナ!嘘をつくにしても、もっとましなもんがあるだろうが!?」
完全に混乱した二人に俺はツッコミを入れながら、俺がなんとかしなければと、ユイちゃんにどう説明しようか、考えている時だった。
「ねぇ、フォン・・・・・ユイちゃんが聞いた、キリトとアスナがしてることって、なんなの?」
「・・・えっ!?」
まさかの最愛の人からの質問に、今度は俺が硬直する番だった。
「ねぇ、教えて、フォン!二人がしてるってことは、夫婦がすべきことなんだよね!それなら、ボクもフォンにしてあげたいし!だから教えて!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
今日は厄日なのだろうか・・・・・ユウキの言葉に、天を見上げた俺はそう感じるしかなかったのだった。
この後、ユイちゃんとユウキに誤魔化しつつ、納得してもらうのに1時間もかけた俺達だった。
このあと、アスナがユウキに夫婦の営みを教える、という裏エピソードがあったりします。それが原因で、ちょっとした事件が・・・
後々、短編で投稿予定なので、お待ち頂ければと思います。
次回はオーディナル・スケール編のお話になります。
また、次の短編はリズ・シリカにスポットを当てたお話になります。
次回 11日0時更新予定