時系列はオーディナル・スケールの少し前になり、少しだけ、オーディナル・スケール編に絡んだりしてます。
それでは、どうぞ!
「はぁ!」「やぁ!」
竹刀をぶつけ、鍔競りに入る。
「「・・・・・・・・・・・・!!」」
そのまま竹刀に込める力を互いに強め、拮抗状態に入る。俺はそのまま面越しに、戦っている相手の・・・直葉ちゃんの目を睨んだ。それは、彼女も同じだった。
「「はぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」
鍔競り合いから、先に動いたのは直葉ちゃんだった。一瞬のタイミングで力を抜き、鍔競りから、俺の体制を崩しにかかった。だが、俺も負けじと、すぐさま体勢を立て直し、引き面を打つも、防がれる。気合と共に、俺たちは試合を続けた。
「・・・ふぅ」
「お疲れ、直葉ちゃん」
「あっ・・・音弥さん、ありがとうございます」
練習を終え、水道で顔を洗う直葉ちゃんに、俺はタオルを渡す。それをお礼と共に受け取り、顔を拭く直葉ちゃん。
「今日はありがとうございました。おかげでいい経験になりました」
「こちらこそ・・・流石は全国大会出場者・・・久々にいい試合ができたよ」
「・・・それでも、負けちゃいましたけどね」
俺の言葉に、苦笑いする直葉ちゃん・・・どうして、俺が彼女と試合をすることになったのか・・・彼女が所属する高校の剣道部の顧問が、俺が所属する剣道クラブの(先日、引退した)先生の弟子とのことで、合同で練習することになったのだ。
俺も直葉ちゃんがまさかいるとは思わず、驚いたものだ。そのまま、模擬試合の練習に入り、俺と直葉ちゃんが戦うことになったのだが・・・なかなか決着が着かず、いつの間にか、周りは俺たちの試合を見学しており、審判がつく程の接戦になったのだ・・・決着がついたのは、試合開始16分後・・・俺の抜き胴が決まり手だった。
「それにしても・・・リアルでも強いですね、音弥さん」
「・・・そうかな。直葉ちゃんがそう言ってくれるなら、嬉しいかな」
「そうですよ!しっかりと剣道してますし、お兄ちゃんなんて・・・あっ・・・!」
「・・・和人とも試合したことがあるのか?」
「あ~・・・はい・・・SAOから帰って来た後でしまして・・・え~と・・・」
「・・・・・?」
何故か言いにくそうにしている直葉ちゃんに、俺は思わず首を傾げてしまった。
「その時、私が勝ったんですけど・・・お兄ちゃん、竹刀を片手に持ってたんです。しかも、私の攻撃を全部避けたりして・・・・・」
「・・・あ~・・・」
苦笑いする直葉ちゃんの言葉に、納得がいき、今度は俺が言葉に困った。
「・・・まぁ、なんというか、和人らしいというか・・・」
「・・・そうですよね。そんなところまで、ゲームに則るなんて、お兄ちゃんらしいですよね」
そう言って、俺たちは笑い合っていた。
「・・・音弥さん、お兄ちゃんと私のこと、聞きました?」
「・・・・・確か、義兄妹だったんだよな?」
SAOから帰還し、直葉ちゃんを紹介される前・・・和人が俺に打ち明けてくれたのだ。それで、直葉ちゃんに辛い思いをさせてきたのだと・・・
「もしもですよ・・・好きな人がいて・・・自分がその人と結ばれていいって、知った時・・・その人に付き合っている人がいたら・・・音弥さんなら、どうしますか?」
「いきなりだな・・・」
「すみません・・・でも、良い機会だと思いまして・・・音弥さんとリアルで話す機会なんて、あまりなかったですし」
一試合を交えてからか、直葉ちゃんなりに溜まっていたものがあったのだろう・・・
その問いかけに、俺はタオルで首筋の汗を拭いながら、答えた。
「・・・・・それでも諦めない、かな」
「・・・理由を聞かせてもらえますか?」
「・・・その人のことを真剣に思うことは大事なことだと思う。それが、例え、実らない恋であっても・・・その人のことを真剣に思い、行動したことは・・・いつか、大切な思い出に変わるじゃないかな?良くも悪くもね・・・?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・SAOの時だが、和人はこう言ってた。直葉ちゃんに剣道をやらせて、本当にやりたいことをさせてあげれずに、恨んでいるじゃないかって・・・」
「・・・・・・・」
「まぁ、それは本人の思い違いだと、もう分かってるだろうけど・・・話がズレたな。俺が言いたいのは・・・それをどうしたいのか、どうするのか・・・決めるのは直葉ちゃん自身だよ。俺は諦めない・・・直葉ちゃんも諦めたくない、と思うのなら・・・」
「・・・行動あるのみ・・・」
俺の言いたいことが伝わったようで、一安心した。
「そろそろ集合の時間だ。戻ろうか?」
「・・・そうですね」
そう言って、俺たちは道場へと戻ろうとした。
「・・・そうだ、音弥さん・・・この後、お暇ですか?」
「うん・・・?ああ、暇だよ」
「・・・・・この後、お茶にでも行きませんか?」
「・・・えっ?」
まさかの直葉ちゃんの提案に、俺は驚いた。
「・・・実は・・・SAOのお兄ちゃんの話・・・もっとお聞きしたいんです!」
「・・・なるほどな・・・いいよ」
「・・・本当ですか!?それじゃ、それじゃ・・・!」
この後のことを相談しながら、俺たちは道場に戻るのだった。
ちなみに、喫茶店での話が盛り上がった結果、SAOでの和人の黒歴史を含む話をしたのは余談だ。
あまり絡みがない組み合わせのお話でした。
こういう話もちょっとずつ書けていけたらと思ってます。
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