ソードアート・オンライン~夢幻の戦鬼~   作:wing//

62 / 261
久々のほのぼの日常系です。

キャリバー編のお話が絡みます。
シノンがフォンに持ち込んだ依頼とは・・・?

それでは、どうぞ!


第4話 「ツンデレスナイパーの復讐」

「フォン、ちょっといいかしら?」

「・・・シノン?ああ、いいぞ」

 

21層の俺個人の工房・・・『ファントム・クラウド』。そこを訪れてきたのは、意外な人物・・・猫妖精のシノンだった。俺は動かしていた手を止め、鍛冶槌を机に置いてから、カウンターに近づいた。

 

「へぇ~・・・ここがあんたの工房なのね。リズの工房とは、また違った感じだけど、いい感じね」

「お褒めに預かりどうも・・・それで、今日はどうしたんだ?」

「実は、フォンに作ってほしい物があるんだけど・・・」

「作ってほしい物・・・?」

 

シノンのリクエストに俺は何だろうかと思い、話を先に促した。

 

「対人用の火矢よ・・・それもとびっきり威力の高いやつ!」

「・・・は、はい・・・?」

 

殺意のこもったシノンの言葉に、ちょっと引きながら、俺は疑問の声を上げた。最近、疑問の声を上げてる機会が多い気がするが・・・気のせいだろうか?

 

「だ・か・ら・・・!人にぶち込める用の火矢よ!!一発で、HPを消し飛ばせるくらいのね!!」

「・・・お、落ち着け、シノン!いつもの冷静さはどうした!?」

 

イマイチ状況が読み込めない俺は、怒り狂うシノンをなだめるのだった。

 

 

 

「・・・ゴメン、取り乱した」

「・・・それで、どうしたんだ、一体?」

 

二階の簡易住居スペースにシノンを通し、紅茶を淹れて、席に座らせる。ようやく落ち着いたシノンから、事情を聞けるようになった。

 

「・・・実はね・・・」

 

眉を顰め、怒りの真相を語りだしたシノン・・・その理由は、

 

「キリトに耳を触られた・・・?」

 

とのことだった。それを聞いた俺は・・・なんと言えばいいのか分からず、困惑するのだった。

 

「そうよ!今、思い出しても、腹が立ってきた」

「どうどう・・・落ち着け、落ち着け。そんな様子じゃ、クールビューティの名が泣くぞ」

 

スチャ・・・

 

「・・・フォン・・・貴方も風穴を開けられたいのかしら・・・?」

「・・・わ、悪かった・・・余計なことを言いました・・・なので、その弓を下してもらえますか!?ごめんなさい!?」

 

ちょっとからかうつもりで、そんなことを言った瞬間・・・どこから取り出したのか、一瞬で眉間に突き付けられた弓矢に、俺は両手を上げ、必死に謝った。

 

うん、こういった時のシノンにはもう冗談は言わないようにしよう・・・そう、心に決めた俺だった。

 

「・・・ふぅ・・・確かに、どうでもいい話に聞こえるかもしれないけど・・・!」

「知ってるよ。猫妖精の耳と尻尾は触られると、変な感覚に感じるだろう?」

 

以前、アルゴさんに聞いたことがあった。猫妖精のアバターに備わっている、猫耳と尻尾は触られると変な感覚なのだという。実際に、人間にはない器官だから、それが原因なのではないかと、アルゴさんは言っていた・・・彼氏に触られるのは、悪くないのだと、惚け話をされたのは余談だが・・・

 

「前にも、尻尾を触られたことがあるんだけど・・・その時に忠告したのよ!次、やったら、火矢をぶち込むって!そしたら、あいつ・・・今度は耳を触ってきたのよ!?しかもその時の言い訳が・・・!

『耳なら、ノーカンかと思って・・・』

・・・よ!まるで、してやったり、って顔でよ!あー、むかつく!!!」

 

「・・・お、おう・・・」

 

怒りのシノンさんに、俺は頷くことしかできなかった。

 

「・・・それで、フォンのところに来たの。リズには頼みにくいし・・・」

「なるほどな・・・・・」

 

シノンの事情を聞いた俺は、少し考え・・・あることを思い出した。

 

「なぁ、シノン・・・もちろん火矢を用意することもできるが・・・そんな方法よりも、もっといい復讐の仕方があるぞ?」

「えっ・・・?」

「・・・よく言うだろう・・・目には目を、歯には歯を、だ」

 

驚くシノンに、俺は(物凄い悪い)笑みをして、その方法を話した。それを聞いたシノンも、俺と同じ笑みを浮かべていた。

 

 

 

翌日・・・

クエストを終え、ユウキとともにログハウスに帰ろうと、22層の空を飛んでいると・・・

 

「勘弁してくれ~~~~~~~~~~~~~!!!!!」

「「!?」」

 

大声が聞こえ、その方向を見ると、キリトがもの凄い勢いで、ログハウスから飛び出していったシーンだった。

 

「ど、どうしたんだろう、キリト・・・?」

「あー・・・行ってみるか?」

 

疑問譜を浮かべるユウキに、事情を察した俺はキリトたちのログハウスに寄ることを提案し、賛同したユウキと共に、ログハウスの近くに着地した。ログハウスに入ると、

 

「あっ、フォン君、ユウキ!ゴメン、ちょっと家のことお願い!」

「ママ、早く、早く!」

 

慌てた様子で飛び出すアスナと小妖精姿のユイちゃんと、

 

「あら、フォン。ユウキも・・・」

 

どこか嬉しそうなシノンがいた。

 

「どうやら、上手くいったようだな?」

「ええ・・・ありがとうね、フォン」

「どういたしまして・・・これで、キリトもちょっとは懲りたんじゃないのか?」

どうやら首尾よくいったらしく、シノンはすっきりとした表情をしていた。

「え?え?どういうこと・・・?」

「・・・こういうことよ」

 

状況が分からないユウキに、シノンがウィンドウを可視化し、一枚のスクリーンショットを見せた。そこには・・・

 

「こ、これ・・・アハハハハ、なにこれ・・・フフフフ!」

「・・・似合ってなさ過ぎて、逆に面白いな」

 

・・・そこには、狼の獣耳と尻尾が生え、顔を真っ赤にしたキリトの姿があった。それを見て、思わず俺とユウキは笑ってしまった。

 

そう、俺が教えた復讐方法・・・それはあるクエストのことだった。二人以上で受けることが前提のクエストなのだが、このクエスト・・・普通の成功報酬は他のクエストと大して変わらないのだが、ある特定の条件・・・魔法を使わずにクリアした場合、特別報酬がもらえるのだ。その報酬が・・・アバターの一日擬獣化なのだ。まぁ、簡単に言えば、他の種族のアバターが猫妖精もどきになるということだ・・・猫妖精には影響のない報酬なのだが、ケモミミが生える、とのことで、女子には人気のクエストだったりする。

 

ちなみに、擬獣化は報酬の宝箱を開けた瞬間から、効果が発動するので、好きなタイミングで擬獣化できるのだが・・・そこは、シノンが上手くやったのだろう。

 

「・・・それで、どうして、キリトは飛び出していったんだ?」

「ユイちゃんに、耳と尻尾を嫌という程、触られたのよ。最初はなんとか我慢して、見ているだけだったアスナにも触られて、限界を超えちゃったみたいよ」

 

「・・・・・アハハハハハハハ!」

 

俺の疑問に、冷静に答えるシノンの横で、ツボにはまったのか、ユウキが爆笑し、床を叩いていた。

 

「・・・これで、ちょっとは懲りればいいんだけどね」

「・・・その時は、今度こそ火矢をぶち込めば、いいじゃないのか?」

「・・・そうね。そうするわ」

「・・・アハハハハ!アハハ!アハハハハハハ!!!」

「・・・それにしても、ユウキ、笑いすぎじゃない?」

「面白かったんだろうな・・・さっきの画像」

 

未だに爆笑を続けるユウキに、俺とシノンは苦笑いするしかなかった。

 




ちゃっかりアルゴが出た、フォン・シノン回でした。

擬獣アバターのお話は、またどこかで出来ればと考えてますので、お楽しみにお待ち頂ければと思います。

次回はオーディナル・スケール編、最終回のお話です。

次回予告 29日0時予定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。