オーディナル・スケールの前日譚のようなものになります・・・オーディナル・スケール編終わったのに、その前日譚って・・・(笑)
それでは、どうぞ!
「いらっしゃいませ!」
トレイを手に、来店したお客様に声をかける。そのまま、接客に入る。
「二名様でよろしいですか?では、こちらのお席に」
お客さんを席に誘導し、カウンターに向かう。
「お客様、二名です」
「おうよ」「は~い!」
カウンターのエギルさんと奥さんが応え、俺はお冷とおしぼりを用意し、お客さんのところへと向かう。すると、再びドアが開き、新しいお客様がやってきた。
「いらっしゃいませ!」
そう声を掛け、俺はホールとしての仕事をこなし続けた。
「ふぅ・・・やっと落ち着きましたね」
「おう・・・お疲れさん、蓮」
最後のお客さんを見送り、俺とエギルさんはようやく一息を吐いた。
「今日はかなり忙しかったですね・・・」
「ああ。まぁ、今日一日、季節外の暑さだと言ってたからな。まぁ、その影響かもな。お前さんもそろそろ上がっていいぞ」
今日の仕事がここまでだとエギルさんが言った。ちなみにエギルさんの奥さん先に休憩に入っていた。
「ありがとうございま『チャリン、チャリン』、おっと、いらっしゃ、い・・・ませ・・・?」
「え~と・・・来ちゃった・・・!」
「・・・アハハ、ゴメンね、蓮君」
「よう、蓮」
お礼を言ってから、仕事を終えようとしたところで、お客さんがやってきたので、対応しようとした俺は・・・まさかの人物、木綿季、明日奈、和人だったことに驚き、思わず言葉が止まった。
「おう、お前らか・・・どうしたんだ?」
「近くで買い物をしてたんですが、今日、かなり暑いんで、休憩しようという話になりまして・・・」
「せっかくだから、働いてる蓮の姿を見たいと思って・・・ダメだった?」
「店長!3名、入ります!」
「お、おう・・・気合入ってんな、蓮」
木綿季の困り顔のお願いに、俺はエギル店長に、お客様をお通しする旨を伝えた。俺の急激なテンションの上がり方にエギルさんが苦笑いしていた。そのまま、お冷とおしぼりを用意し、大人数用のテーブルに席に座った木綿季たちに配った。
「ありがとう、蓮」
「・・・それでは、お客様、ご注文が決まれば、またお呼びください」
お礼を言う木綿季に、微笑み返し、俺は形式的な返しをし、カウンターに戻った。
「今、注文待ちです」
「おう・・・それにしても、いきなりの出来事だったな」
「ええ・・・まぁ、良い機会かと思います。木綿季も働きたいと言ってましたから」
「そうなのか?」
「ええ・・・俺や両親にお世話になりぱっなしになるのが嫌だそうで、まぁ、もうちょっと生活に慣れたら、ですけど・・・それとエギルさんがOKしてくれれば、ですけど・・・」
「むしろ、ウェルカムだ。かわいい子がいれば、店の雰囲気アップに貢献してもらえるからな」
「アハハ・・・ありがとうございます」
そんなことをエギルと話していると・・・
「お~い、店員さん、注文お願いします!」
「呼ばれてるぞ?」
「・・・行ってきます」
木綿季に呼ばれ、俺は伝票を持って、注文を受けに行った。
「お待たせしました。ご注文をお伺いしますね」
「え~と・・・僕は季節の野菜と煮込みハンバーグ!」
「私はシーザーサラダにパン・スープのセットで」
「俺はペペロンチーノで頼む」
「かしこまりました。少々お待ちください」
注文をメモし、一礼してから、エギルさんに注文を伝える。そのまま、手伝いのためにキッチンに入る。
「蓮・・・それ終わったら、上がりな」
「・・・いいですか?」
「ああ・・・せっかくだ、木綿季ちゃんたちと一緒に飯食ってこい」
「ありがとうございます。それじゃ、これ片付けちゃいますね」
エギルさんにお礼を言ってから、俺は調理の手伝いに入った。それと同時に、自分のまかないを作っていく。エギルさんとの共同で作っていくので、3人分といえど、あっという間に出来上がった。それをトレイに乗せ、順番に料理を持っていく。そして、最後の料理を運び終えたところで、
「ご注文は以上でよろしかったでしょうか?それでは、ごゆっくりお楽しみください・・・と、まぁ、お仕事の時間は終わり・・・俺も相席していいか?」
「えっ!蓮も一緒なの!うん、もちろん!いいよね!」
「ああ」「うん」
「それじゃ、まかない持ってくるから、ちょっと待ってくれ」
3人の承諾を受け、俺はエギルさんに一声掛けてから、上着を着て、自分のまかない・・・グリルチキンとサラダの丼ぶりにパンを二切れ、それらを飲み物と一緒に持っていく。そのまま、空いていたユウキの隣に座る。
「うわぁ・・・美味しそう!」
「・・・一口食うか?」
「えっ!?いいの!?」
チキンに目を輝かせた木綿季にそう提案すると、フォークでチキンを刺し、そのまま木綿季に差し出した。それを食べた木綿季は
「・・・お~いしい!」
と、目を輝かせていた。その様子に俺も、思わず笑顔になる。そんな木綿季を見ていると、木綿季もフォークでハンバーグを俺の方に差し出し、
「はい、蓮・・・あ~ん」
「・・・ああ、はむ・・・うん、やっぱり美味いなぁ・・・」
そのまま、いつもの如く、口に入れる。流石はエギルさん・・・ここの料理はどれもかなり美味しいので、勉強になる。俺がそんなことを考えながら、食べていると、
「はい、和人君!あ、あ~ん・・・!」
「・・・お、おう」
俺達に触発された和人たちが食べさせ合いっこをしていた。そのまま、俺たちはゆっくりと昼食を食べていった。そのまま、バイトがどんな感じなのか、午前中にどんな買い物をしていたのか、そんな他愛もない話をしていると・・・
「そういえば、明後日から学校だけど・・・聞いた?なんでも、転校生が来るらしいよ?」
「・・・そうなのか?」
明日奈の言葉に、俺は極めて冷静に返した。
「でも、帰還者学校に転入生なんて、なんか変な話だよね」
「ああ・・・俺も気になって、菊岡に聞いてみたんだが・・・教えてくれなかったんだよな」
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
その会話に、俺と木綿季はアイコンタクトを取って、秘密を隠し通すことを決めた。まぁ木綿季がサプライズしたい、と言っていたので、その転校生が木綿季であること黙っておくことにしたのだった。
「・・・まぁ、それは明後日のお楽しみってことでいいじゃないのか?それよりも、
俺は3週間後に配布される、ARの方が気になるな」
「・・・ああ、確か『オーグマー』だったよな」
俺はボロが出る前に、話を帰還者学校に通う生徒全員に配布されるオーグマーの話へと切り替えた。そのまま、俺たちはオーグマーがどういったものなのか、どういったことができるのか、そんなことを話しながら、ゆっくりと過ごすのであった。
次回が今年最後の投稿になります。
31日 0時予定