今年最後の投稿になります。
季節ネタです・・・クリスマス回が書けなかったのが一番の後悔!
一応、アリシゼーションやオリジナル回の後の時系列のお話ですが、ネタバレなどはない内容になってますので、ご安心して、お読みください。
それではどうぞ!
「・・・そろそろかな」
12月31日・・・あと6時間足らずで今年も終わろうとしている時、俺は台所に立っていた。いつも料理を作っているのは俺なので、台所に立つこと自体はそう珍しいことではなかった。だが、今日はいつもと事情が違っていた。
「母さん、てんぷらがもうできそうだから、お蕎麦も準備するよ?」
「ええ、お願い。こっちも・・・あとちょっとで完成だから」
そう・・・俺は実家の台所で母さんと調理を進めていたのだ。俺が今日の夕飯・・・もとい、今年最後の夕飯である年越し蕎麦を作っていた。その横で、母さんが明日のメインであるおせちの飾りつけをしていた。
おせちは大体はお店で買う人もいるだろうが、音弥家では代々手作りのおせちで正月を迎えている。母さんは嫁入りなので、婆ちゃん・・・父さんの母から作り方を教わったらしい。ちなみに、俺と木綿季にもその内叩き込もうかと画策しているらしい・・・そんな話を調理の最初の方に言われた時には苦笑いするしかなかった俺だった。
「それにしても・・・蓮。あなた、また腕を上げたわね?かなり手際が良くなってるわ」
「まぁな・・・SAOの時にも色々やってたし、この1年は二人分の料理をしてたら、手際も良くなるよ」
「・・・あらあら、もしかして惚気?」
「そんなじゃないよ・・・まぁ、最近は木綿季と一緒に作ったりもしてるから、新婚みたいなことだと思えば、そっちの方が惚気話になるかもな」
「フフフ・・・仲良くやってるみたいね。でも、良かったわ。あんなことがあったしね・・・」
「・・・・・あの時は、本当にゴメン」
母さんの言葉・・・オーシャン・タートルでのことだと察した俺は気まずい表情で謝った。あの時は、母さん、そして、父さんにも心配をかけてしまった。今、思えば、この一年は色々なことがありすぎた・・・もちろん、アンダーワールドのこともそうだが、木綿季と再会して、フィリアやセブン・・・そして、ALO崩壊の危機・・・これでもかというくらいに色々と起きた一年だった。
「いいのよ。あなたと木綿季ちゃん・・・二人とも無事に帰ってきてくれたんだから・・・お父さんだって、同じ気持ちよ」
「・・・・・ありがとう」
母さんの言葉に俺は安堵し、そのまま父さんと木綿季の方を見た。二人が何をしているのかというと・・・
「これが6歳の頃の蓮だ・・・この時に剣道を始めたんだ」
「うわぁ・・・可愛いですね!」
「・・・この時は、目に入れても痛くないほど可愛いかったんだが・・・今では立派になってな。親としては、少し複雑な気分だよ」
「でも、蓮って、お義父さんに似てますよね?くせっ毛や髪色はお義母さんの遺伝みたいですけど・・・そう考えたら、悪いことばかりじゃないですよ?」
「・・・・・そうかもしれんな。ああ、この時の写真は・・・懐かしいな。大会で優勝して、3人で写真を撮った時だな」
「ゆ、優勝って・・・蓮って、この時から凄かったですね・・・!」
俺のアルバム写真で盛り上がっていた・・・お願いだから、当事者の前でそういう話はしないでほしい、めちゃくちゃ恥ずかしい!というか、父さん・・・俺と話す時より、木綿季と話してる時のほうが饒舌すぎないか!?
「お父さんも義娘ができて、嬉しいのよ」
「・・・母さん、俺の考えを読まないでくれ。というか、まだ娘じゃないだろう?」
俺の表情から考えを呼んだ母さんに突っ込んだ・・・字が違う気がしたが、もうそこら辺までツッコミを入れ始めたら、キリがないと思い、スルーすることにした。
「はいはい・・・はい、こっちは完成」
「・・・こっちも出来上がり、と・・・おーい、二人とも。お蕎麦をそっちに持って行くから、テーブルのアルバムとか片付けてくれー」
「はーい!」
そうこうしている内に母さんのおせちの盛り付けが完成し、俺もエビの天ぷらの油を切り、湯で終わった蕎麦を天ぷらと共に盛り付け、冷蔵庫から蒲鉾とじゃこ天を取り出し、木綿季と父さんのテーブルを空けるように頼むのだった。
「それじゃ・・・」
「「「「いただきます」」」」
そう言ってから、俺たちは年越しそばを食べ始めた。ちなみに、音弥家では紅白を見ながら、年を迎えるのが通例だ。今はアニソン界の女王がテレビに映っていた。この人の曲は俺もいくつか気に入っており、よく家でも聞いていたりする・・・そういえば、連続で出場しているが、今年で何年目だろうと思ったのは余談だ。
そのうち、話は俺と木綿季の同居生活になり・・・
「そういえば・・・もうすぐ同居して一年になるけど、二人はどこまで進んだの?」
「ブフッ!?」「お、お義母さん!?」
まさかの爆弾発言に俺は思わずそばつゆを吐きそうになり、木綿季も1オクターブ高い悲鳴を上げていた。
「ミコ・・・なんてことを聞くんだ」
「だって、気になるじゃない・・・」
「・・・その気持ちは大いに分かるが・・・蓮たちだって、言いたくないこともあるだろう・・・まぁ、言えないことはやっていないだろうが、な・・・」
「う、うん・・・もちろん」
「だ、大丈夫ですよ!」
母さんを宥めながら、健全なお付き合いをしているだろうな・・・と目でプレッシャーを掛けてくる父さんの問いかけに俺と木綿季は動揺を隠しながら頷いた。
((言えない・・・VRではちょっと大人の関係になってます、なんて・・・!?))
現実世界ではしていない・・・という事実がバレないことを祈りながら、俺たちは笑って誤魔化すことしかできなかった。
「・・・あらあら、これは初孫の顔を見るのも時間の問題かしらね」
・・・前言撤回。母さんにはどうやらバレてしまったようだ・・・これ以上、追求しないのは母さんなりの優しさ、と信じたい・・・!
「・・・まぁ、お前のことは信頼しているが・・・そこはしっかりとわきまえろよ」
「・・・分かった」
父さんの忠告に俺はしっかりと頷きながら、そう返すのだった。
「ううう、寒いね」
「だな・・・風がないのが幸いかもな」
俺と木綿季は夜風に吹く道を歩いていた。木綿季が白い息を吐きながら、凍える手を温めていた。それを見た俺はその手を掴み、
「れ、蓮・・・!?」
「・・・・・こうすれば暖かいだろう?」
「・・・うん!」
コートのポケットに手を突っ込みながら、告げた俺の言葉に木綿季は嬉しそうに答え、俺との距離を詰めた・・・うん、慣れないことはするもんじゃないと思ったが、これはこれでいいな。
「でも、良かったの?」
「・・・うん?」
「お義父さんたちと年越しを迎えなくって?」
「ああ・・・あの二人なりに気を遣ってくれたんだろう・・・それに・・・」
「・・・それに?」
「母さんは絶対にそんなこと気にしてない。むしろ、あれは楽しんでるしな・・・」
「・・・あ~・・・」
俺の言葉に木綿季は思わず納得の声を上げてしまった。なぜなら家を出る前に、
『なんなら、朝まで帰ってこなくってもいいからね?』
・・・なんて、爆弾発言を投下してきたのだから。親が不純異性交遊を勧めるなよ、と思った俺はおかしくないはずだ。
「おっ、見えてきたな・・・」
「うわぁ・・・!凄い、人でいっぱいだね」
そうこうしている内に目的地である最寄りの神社へと到着した。俺たちがここに来た理由は、
「ここにいる人たちみんなが2年参りに来てるのかな?」
「そうだな。ここはそんなに大きな神社じゃないが、屋台とかも出てるから、多分そうだろかもな」
木綿季の疑問に答えながら、俺は周りを見渡しながら集まっている人たちを見ていた。ここは、俺の実家から徒歩で10分ほどで来られる神社だ。テレビで取り上げられたとか、そこまで有名な神社ではなく、結構マイナーな神社だが、音弥家ではここで初詣に来るのが通例になってる。
「えっ!屋台?」
「後でな・・・今の内に並ばないと、年越し前に参拝できないぞ?」
「あっ!待ってよ、蓮!」
俺の言葉に周りを見渡す木綿季に苦笑しながら、俺はまだ混んでいない参拝の列に向かった。慌てて木綿季が俺を追いかけてきた。そのまま列に並ぶ。そこまで混んでなかったので、すぐに順番が回ってきそうだった。
「ねぇ、蓮」
「・・・うん?」
「蓮は神様になにお願いするの?」
「そうだな・・・世界平和、とか?」
「ええ~・・・スケール大きすぎない?」
「かもな・・・今年一年は色々ありすぎたからな。ふと、そう考えちまうんだよな」
「・・・・・本当に色々あったよね」
俺の言葉に木綿季もしみじみと答えるのだった。来年はもうちょっと平和な年になってほしいものだ、と願う俺だったりする。
「ちなみに、木綿季はどんなお願いをするつもりだ?」
「・・・そうだね。蓮にこれ以上、女の子が言い寄ってきませんように、とかかな?」
「・・・・・お、おう」
笑顔で告げる木綿季の言葉に、俺はそれしか言葉を返すことができなかった。きっと・・・いや、間違いなくフィリアやセブンのことを言っているのだろう。木綿季の目がちっとも笑っていない・・・明日奈に詰められる和人の気持ちがよく分かった瞬間だった。
(フィリアやセブン以外に増えたら・・・俺、刺されるかも・・・)
今まで以上にそういうことには気を付けようと思った俺だった。そんな修羅場一歩手前のやり取りをしている内に、俺達の順番が回ってきた。
「えっと、5円玉5円玉・・・」
財布から慌てて5円玉を探す木綿季の横で、俺も5円玉を財布から一枚・・・取ろうとしたところで、俺はあることを思いつき、5円玉を2枚取り出した。
「ほら、木綿季。俺たちの番だぞ」
「ちょ、ちょっと待って・・・あった!」
そのまま俺たちは賽銭箱の前に立ち、お賽銭を入れた。そのまま、2礼2拍1礼。
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
互いにお願いごとを告げる。俺が終え、目を開けると、どうやら木綿季の方も同じタイミングで終えたらしく、目を開け、こちらを見ていた。後ろの人の邪魔にならないように俺たちはその場を離れた。
「もうすぐ新年だね」
「だな・・・人もどんどん集まってきてるな」
奉焼を目的とした庭火で暖を取りながら、俺と木綿季をもうすぐ迎える新年を待っていた。あと数分で年が明けようとする中、神社には更に人が集まってきていた。俺たちははぐれないように手をしっかりと繋いでいた。
「そういえば、蓮は何をお願いしたの?」
「・・・そうだな。やっぱり来年はもう少し平和に過ごせますように、かな・・・」
「・・・やっぱり?」
「ああ・・・それが一つかな」
「・・・えっ?」
俺の言葉に木綿季が驚いて、こちらを見た。
「もう一つは・・・木綿季を幸せにできますように、だな」
「・・・っ!」
俺の答えを聞いた木綿季は何も言えなくなっていた。俺も恥ずかしさの余り、顔を背けた。二人とも顔が赤いのは、きっと庭火のせいではないだろう。そうこうしている内に、
『みなさん!新年まであと30秒です!カウントダウンを開始します!』
カウントダウンを告げるアナウンスが聞こえてきた。その時、俺は木綿季に気になったことを尋ねた。
「お願いといえば、木綿季は一体何をお願いしたんだ」
「・・・それはね?」
『それでは、ご唱和下さい!新年まであと10秒!』
新年を告げるカウントダウンが進んでいく中、こっちを微笑みながら見ていた木綿季が、
「うんん!」
「・・・!?」
『ゼロ!明けましておめでとうございまーす!!!』
新年を迎えたと同時に俺は木綿季に唇を奪われた。咄嗟のことに反応できずに俺はされるがままだった。
「・・・フフ。これが答えだよ。分かった・・・?」
「・・・おう」
してやったりという木綿季の言葉に俺は頬を掻きながら、納得した。
「木綿季・・・」
「・・・なに、蓮」
「今年もよろしくな」
「・・・うん!こっちこそ、よろしくお願いします」
互いにそう言いあって、俺たちは二年参りを終えた。もちろん、朝帰りなどせず、屋台で軽食を買ってから、家に戻った。
母さんに残念そうな顔をされたのは余談だ。
これを書いた後、全体の見直しを行っているであろう状態だと思います。
来年以降の投稿スケジュールは活動報告でお知らせさせていただければと思います。
本年は読者の皆さまには大変お世話になりました。
来年も『夢幻の戦鬼』を宜しくお願い致します。
・・・やべぇ、SAOアニメが全然見れてない!?