ソードアート・オンライン~夢幻の戦鬼~   作:wing//

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※本編更新に伴い、パラレルワールド軸設定でのお話になります。本編と矛盾した内容もありますのでご注意下さい

上手くタイトルが思いつきませんでした(苦笑)

執筆時間が思った以上に取れなかったので、かなりの突貫作品になってます。その内、手直しできればと考えてます。

思った以上に、ユウキ以外にも焦点が当たったお話です。
ユウキメインにするつもりだったのに・・・どうしてこうなった(笑)

フィリアもセブンも好きなキャラクターなのでついつい力が入ってしまうんですよね。

それではどうぞ!


第10話(P) 「フォンのお返しホワイトデー」

「へぇ~、ここが和人の家か。思った以上に立派だな」

「そうか?まぁ、道場があるからそう見えるのかもな」

 

学校帰り、ある目的のために俺は桐ケ谷家を訪れていた。

 

先導してくれた和人と共にバイクを駐車スペースに移動させながら、俺は桐ケ谷家を見渡していた。

 

和人曰く、道場はお祖父様の代からあるものらしく、昔は和人も使っていたことがあったらしい。

 

以前、直葉ちゃんから聞いた、SAOから戻ってきた後、彼女と和人が試合をしたのもここらしい。

 

そんな話を聞きながら、俺は桐ケ谷家へとお邪魔し、途中で買った荷物をキッチンに置いた。

 

「さてと、和人。準備はいいか?」

「ああ。宜しく頼むよ、音弥先生」

「先生は止めろよ・・・それじゃ始めるか」

 

茶化す和人に半眼でツッコミを入れながら、エプロンを着けた俺はボウルにお湯を溜めながら、2週間前のことを思い出していた。

 

 

 

「ホワイトデーのお返し?」

「・・・そうなんだよ。どうしたもんかと思ってな・・・はぁ」

 

放課後。和人から相談を持ち掛けられた俺は『ダイシーカフェ』で話を聞いていた。

 

当の本人は困ったらようにため息を吐いていた。

 

「お返しって・・・一昨年も去年も返したんだろう?なにを今さら俺に相談するんだよ?」

「いやな・・・一昨年も去年も直葉に相談してたんだが、流石に頼りぱなっしなのはどうなのかと思ってな。アンダーワールドの一件もあったしな・・・」

「なるほどな・・・それは相談しにくいわな」

「・・・・・それと、みんな手作りのチョコをくれたから、流石に既製品ばっかりのお返しは悪いと思ってか」

「・・・・・あー」

 

苦笑いする和人に俺も思わず同情してしまった。明日奈を始め、リズ、シリカ、直葉ちゃん、詩乃、レインから手作りのチョコをもらっていたのだ。

 

俺もユウキやフィリア、セブンからそれぞれ貰ったので、気持ちはよく分かった。

 

「それで?手作りにするのはいいが、料理できるのか、和人」

「・・・だから蓮に相談したんだよ」

「納得がいったよ。よし、その依頼引き受けた。俺もホワイトデーのお返しは作るつもりだったから、丁度良かったよ」

 

今のマンションだと作れる物にも限度があったので、実家かエギルさんのお店のキッチンを借りようかと思っていたが・・・

 

桐ヶ谷家のキッチンが借りられるのなら、その手間も省ける。手間の掛かる物も作れると考えた俺は二つ返事で受けたのだ。

 

 

 

「・・・というか、和人。料理は自信ないって言ってたけど、意外に手際良くないか?」

「ハハ、そうかな。パスタとか簡単なものなら朝食も作ったりしてからな」

 

敬意を思い出しながらチョコを湯煎で溶かしていく俺は、生クリームを泡立てる和人の手腕に驚いていた。

 

「スグと順番で料理当番をしてるんだが、レパートリーが少ないって言われるんだよな」

「まぁ、一人暮らしとかしてないと料理する機会なんてないしな」

「そういう蓮の腕は凄いだろう。学校だと基本弁当だし・・・あれも毎朝作ってるんだろう?」

「といっても、夕飯の残り物とか夜のうちに仕込みをしてたりしてるから、和人が思ってるよりも手間は掛からないぞ?意外に節約にもなるしな」

「・・・時々、蓮がオカンに見えるよ」

 

そんなやりとりをしていると、スポンジケーキが焼き上がった。レンジから取り出し、次のスポンジケーキを焼いていく。

 

そして、焼き上がったケーキを横3等分にして広げる。和人にチョコを配合したホイップを渡し、俺自身はいい塩梅に溶かしたチョコをヘラで塗り広げていく。

 

塗り終えた一枚目の仕上げを和人に任せ、俺はもう一つのボウルで溶かしていた別のチョコを二枚目に塗っていく。

三等分にしたのは、ケーキの中にもチョコを塗る他に、味の変化をつけるためでもあったのが目的だ。

 

同じ要領で二枚目も仕上げ、三枚目は一枚目と同じチョコを塗っていくが、チョコだけでなくトッピングのイチゴも加えていく。

 

俺が三枚目を仕上げ終わって、和人の方も遅れながら一枚目を仕上げた。ちょっと歪なホイップクリームもあるが、そこは手作りならではご愛敬とのことで・・・(笑)

 

「で、できた~・・・!!」

「お疲れ。後は重ねて冷蔵庫で冷やせば完成だな。さて、俺のケーキが焼き上がるまでまだ時間が掛かるから、今のうちにみんなに渡すクッキーを作ろうぜ?」

「えっ!?ちょっと休まないか?」

「いやいや・・・レンジが空いたら、すぐにクッキーを焼けるようにしておいた方がいいだろう。どうせなら、全部作り終えてから休んだ方が楽だぞ?」

「・・・・・うう、分かったよ。やっぱり蓮ってオカン気質あるよな・・・」

「誰がオカンだ。要領がいいって言うんだよ」

 

半眼でオカン呼ばわりしてくる和人にそう返しながら、俺は生地を伸ばしていく。その間に和人に卵を割ってもらう。白身と黄身を分けるのに苦労する和人に苦笑し、コツを教えながら包丁でチョコを細切れにして、トッピングの準備を進めていく。

 

伸ばした生地を百均で買ってきていた型取りでクッキーを作っていく。和人は剣と星、俺はクローバーとダイヤをどんどん量産していく。

 

渡す相手が多いので作る量も比例しても多くなる。腕がどんどん痺れてくるが、ケーキが焼き上がるまでそう時間もないので急いで作っていく。

 

ようやく規定数を作り終えたところで、残った生地で俺はある形のクッキーを型取っていく。横で和人が俺の作るクッキーを見て、

 

「蓮・・・お前も隅に置けないな」

「・・・・・うるせー」

 

ニヤニヤしながら茶化してくるが、否定できないので俺は悪態を吐きながら作業を進める。そうこうしている内に俺の分のケーキも焼き上がったので、入れ替わりで先ほど作ったクッキーの第一弾をオーブンに投下する。

 

「そういえば、蓮。お前が持ってきたチョコって、全然見たことない奴だけど・・・何なんだ、それ?」

「うん?ああ、これか・・・ホワイトデーに何を作ろうかと考えてた時にネットで見つけてな。まぁ、とっておきって奴だ。これに、さっき細かくしたチョコを分け、半分はもっと細かくしていって、イチゴとラズベリーと生クリームをケーキで巻いていって・・・」

「れ、蓮さん・・・?」

「(ブツブツブツブツ)・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「れ、蓮!?怖い!なんか怖いぞ!?」

 

和人にそう答えながら、俺はそのとっておきを取り出し、どんどんとケーキを作り上げていく。そして、いつの間にか和人の存在を忘れ、俺は無我夢中でケーキを作り上げていた。

 

「お、おーい・・・蓮さん?」

「・・・・・はっ!?」

 

ケーキの完成した頃、放置されていた和人に声を掛けられ、気付いた俺は悪い癖が出たと思いながら頬を掻き、苦笑いするしかなかったのだった。

 

冷静になった俺は和人共にクッキーを仕上げ、包装していく。

こうして、ホワイトデーのお返しは完成した。

 

 

 

「おっ、琴音!」

「あっ、蓮。どうしたの?」

 

翌日・・・ホワイトデー当日。

 

登校の時に下駄箱で出会った琴音に声を掛けた。俺に気付いた琴音と共に俺たちの教室がある3階へと移動していく。その道中で俺は琴音に昨日のクッキーを渡すことにした。

 

「ほら、ホワイトデーのお返しだ」

「えっ!?あ、ありがとう!もしかして作ったの?」

「まぁな。琴音には色々と助けてもらってるしな」

「ありがとう!でも、やっぱりクッキーか・・・」

 

俺からのお返しに喜びながらも、ちょっとだけ残念そうにする琴音。そんな琴音に俺はそのクッキーの秘密を教えることにした。

 

「そのクッキー、クローバーとダイヤ以外にハートのクッキーもあるよな?」

「えっ・・・あっ、ハートのクッキーが一つだけ入ってる」

「・・・そのダイヤとクローバーのクッキーの味付けはチョコとメレンゲだけど、ハートのクッキーをコーティングしてるのは・・・・・キャラメルだぞ」

「・・・キャラメル?」

 

どうやら琴音はホワイトデーのお返しにとってのクッキーの意味は知っていたようだが、キャラメルの意味は知らなかったようだ。

 

クッキーの意味は『友達のままで』だ。だが、それでは俺に好意を向けてくれている琴音と七色に申し訳ないと思ったのだ。

 

そうとは知らず、首を傾げる琴音に俺はその意味を教えた。

 

「キャラメルの意味は『一緒にいると安心する』だ」

「・・・へっ?・・・ええええええええええぇぇぇ!?!?」」

 

廊下で絶叫する琴音。おそらく彼女の顔は真っ赤になっているのだろうが、それは俺も一緒だった。未だに理解が追い付いていない琴音を振り返り、俺は捨て台詞を放った。

 

「と、ともかくそういうことだ!言っとくが、そのクッキーを渡すのはお前と七色だけだからな!そういうことで!!」

「あっ、蓮!?・・・行っちゃった」

 

恥ずかしさの余り、脱兎の如く俺は逃げ出した。

 

(もう・・・蓮ったら。こんなんじゃ、ますます好きになっちゃうじゃん)

 

クッキーの入った袋を握りしめた琴音がそんなことを思っているとは、俺が知る術はなかったのだった。

 

 

 

「悪いな、虹架」

「ううん。気にしないで、音弥君」

 

昼休み。木綿季とのランチライムの前に、七色の姉であるレインこと枳殻虹架に、俺は琴音に渡したのと同じクッキーを渡していた。

 

本来、これは七色に渡すものなのだが・・・現在行っている研究が佳境に差し掛かっているということもあり、研究室に缶詰めになっている。

 

というわけで、明日のホワイトデーは七色にとっての久しぶりの休みらしく、虹架とゆっくりするらしい。流石に姉妹の休日に水を差すのも悪いと思い、俺は虹架にクッキーを渡してもらうことにしたのだ。

 

まぁ、七色もALOには息抜き(という名のサボリではあるが)にログインはしているので、ホワイトデーのお返しを渡すことは前から伝えてはあったのだが・・・

 

余談だが、ALOにログインしている時、最近のセブンはぐったりしたまま研究の愚痴を俺やユウキに零していたりする。愚痴はレインにすればいいのに、と一度ユウキが言ったことがあったのだが、

 

「お姉ちゃんも頑張ってるのに、妹のこんな姿を見せる訳にはいかないでしょ!」

 

と返され、妹として感じるものがあったのか、ユウキは愚痴に付き合うことを承諾したのだった。

 

(・・・というわけで、そんな事情があることは虹架には秘密なんだよな)

「・・・?どうかした?」

「いや、なんでもないよ。それじゃ、明日は七色と楽しんで来いよな?」

「・・・うん!」

 

そう言って、俺と虹架は別れた。

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「れ、蓮・・・やっぱり怒ってる?」

「・・・怒ってねぇよ」

「やっぱり怒ってるよね!?」

 

土曜日で学校も午後の一限で終わりだったため、俺と木綿季は早々にバイクで家へと戻って来ていた。だが、俺の機嫌はあまり良くはなかった。俺の機嫌を伺う木綿季が持つ鞄の中には・・・案の定チョコが沢山入っていた。

 

どうしてこんなことになったのか?

 

学校が終わるまでは平和だった。バレンタインデーみたいに靴箱にチョコはなく、昼休みにチョコを渡してくる輩もおらず、俺の心配は杞憂に終わったかと思っていた。

 

・・・だからこそ、油断してしまったのだ。

 

「紺野さん!良かったら、この後お茶に行かない?」

と、教室に迎えに行ってみると、俺の一個下の男子生徒からお茶の誘いを受け、困っている木綿季を見たり、

 

「木綿季ちゃん!これ、俺の気持ちだから受け取ってくれ!!」

と高級な包みのお菓子を送ってくる男子生徒が廊下で大胆な告白をしたり、

 

「木綿季さん!いつも見てます!これからも仲良くしてください!」

玄関では、木綿季と同学年の女子生徒が顔を真っ赤にし、チョコを渡した瞬間走り去ってしまったり、

 

「・・・うわぁ・・・凄いね、これ」

下駄箱には、大量のチョコが手紙と一緒に入れられていたり、

 

「あ、あの!紺野さん・・・!ぼ、僕のき・・・ひぃぃぃ!?」

バイク置き場で待ち構えていた男子生徒は、俺の顔を見た途端悲鳴を上げて、逃げていった。流石の俺も我慢の限界だったのだ・・・今、思えばちょっと悪いことをしたなと反省している。

 

・・・というわけで、男女問わず人気の木綿季にちょっと嫉妬してしまったのだ。

 

別に、付き合っていることを学校で隠しているわけはないのだが(もちろん公にもしているわけではない。ALOをプレイしている人は知ってるぐらいだ)、木綿季に恋人がいることを知っていても、玉砕覚悟で突っ込んでくる馬鹿が今日は多すぎたのだ。

 

「れ、蓮・・・?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

玄関に入ってもまだ不機嫌な俺に木綿季が不安そうな声で呼びかけていた。

色々と経験したつもりだったが、まだまだ子供だなと自分のちっぽさに呆れながらも、俺も今日ばかりは少し素直になってみることにした。

 

ギュ・・・

「れ、蓮!?」

「ゴメン、木綿季・・・もうちょっとだけ・・・このまま独り占めさせてくれないかな?」

「・・・・・もうしょうがないな」

 

・・・どうやらホワイトデーの熱にやられてしまったようだ。

俺の甘えに木綿季も抱きしめ返して、その思いに応えてくれた。

このまま首筋にキスマークでも残してやろうかとも思ったが、流石に自制が効かないというか、色々と枷が外れてしまいそうで怖いので止めておいた。

 

その分はALOでもっと甘えさせてもらおうと心に決めたのだった。

 

 

 

「というわけで、こちらを用意してみました」

 

玄関で5分ほど甘えてから、俺たちはリビングに移動していた。

そのまま、俺は昨日作ったケーキを冷蔵庫から取り出し、木綿季の前に披露した。

 

「・・・これって、ロールケーキ?」

「まぁな。ホールケーキだと大きすぎるかと思ってな。ロールケーキならある程度サイズの調整もできるしな」

 

昨日、桐ヶ谷家で作らせてもらったのが、ホワイトチョコを練り込んだ生地とルビーチョコのガナッシュ(チョコに生クリームを加えたもの、もしくは生クリームにチョコを溶かしたものだ)で紅白に色付けしたロールケーキなのだ。

 

ホワイトデーなので、ただ単に手作りするには面白くないと思ったので、視覚から楽しめるようにしてみたのだ。

 

「ねぇねぇ!食べてみていい?」

「分かった、分かった。今、切るからちょっと待ってろ」

 

はやる木綿季に待ったを掛け、俺はケーキを少し大きめの一切れにカットしていく。カットした断面からはガナッシュと共に巻いたチョコとラズベリーが見えていた。その間に木綿季が紅茶を用意してくれていた。

 

ケーキを取り分け、目で俺に訴えかける木綿季に俺は頷くことでGOサインを出した。フォークで一口大のケーキを頬張った木綿季の感想は、

 

「・・・!!美味しい!めちゃくちゃ美味しいよ、これ!!」

「・・・そっか」

 

全開の笑みを浮かべる木綿季に満足しながら、俺もケーキを一口食べる。ホワイトチョコの控えめな甘さに、ルビーチョコのフルーティな香りが鼻孔を刺激した。我ながらかなりの自信作ではないだろうか。

 

まぁ、そんなことよりも・・・

 

「(木綿季が喜んでくれたのが一番か)こらこら。慌てすぎだぞ、木綿季」

「えっ?うんん・・・!」

 

そう言って、木綿季の口の横についた生クリームをティッシュで拭いてやる。そのまま、木綿季の頭を撫でる。

 

「今度クリームつけたら、食べちゃうからな」

「えぇ~・・・蓮のエッチ!」

「そこまで言うか・・・!?」

 

まさかの木綿季の返事に絶句しながらも、俺たちは笑い合いながらケーキを食べた。こうして、俺たちのリアルでのホワイトデーは無事(?)に終わったのだった。

 

「来年は一緒に作ろうね!バレンタインデーとホワイトデーのチョコ!!」

「・・・それってアリなのか?」

 

来年はバレンタインデーとホワイトデーで、チョコの贈り合いをすることが決まったようだ。それはそれで楽しそうだと思ったのは伏せておこう。

 




時系列的にはアリシゼーション編・ロストソング編の後になります。

次、番外編を書くとしたら多分ユウキの誕生日記念のお話になるかと思います。その前に、もしかしたらアンケートを実地した『バーサス』のお話を書くかもしれません。

明日の本編もお楽しみに!

サブヒロインは必要でしょうか?(オリ主はユウキ一筋ですが、断り切れない性格。かつ、ユウキはヤキモチは焼きますが、相手の心情を察して、黙認する、という設定を考えております)

  • あり オリ主ハーレム万歳!
  • ありかも・・・ちょっとだけ見てみたい
  • どっちともいえず・・・甲乙つけ難い
  • なしかな あくまでも、友情以上恋人未満
  • ありえない!ユウキ至上主義!

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