ソードアート・オンライン~夢幻の戦鬼~   作:wing//

70 / 292
祝え!
世界を駆け、VRの世界にて『絶剣』の異名を手にした少女、
その名も、ユウキこと紺野木綿季。
また1ページ、新たなる彼女の歴史が刻まれた瞬間である!

・・・ということで、ユウキ誕生日記念回です。
当日まで完成するかどうかギリギリだったため、ゲリラ投稿になってしまいました。時系列的にはオーディナル・スケールとアリシゼーションの間になります。

それではどうぞ!

100話記念アンケート第2段は今日までとなっております。ご投票よろしくお願い致します。



ユウキ誕生日特別編 「みんなが祝ってくれるこの日を」

「・・・話は分かったわ。オペレーション『courage』ってことね」

「いや、何も分かってねーよ!?というか、その眼鏡はどこから持ってきた、アスナ?!そして、背後に黙って立ってるだけでいいと思うなよ、キリト!?」

 

いきなりボケをかましてくれたバカップル二人に俺の渾身のツッコミが入った。

この世界には原作すら存在しない筈の某特務機関の司令官と副指令を真似たかのようなポーズにツッコミを入れらずにはいられないのはしょうがないはずだ。

 

「冗談よ、フォン君。なんとなくやるべきかなと思ってね」

「・・・さいですか」

 

本当は知ってたんじゃないのかと内心で疑っていたが、このままでは話が進まないのでそれ以上詮索するのを止め、話を本題に戻すことにした。

 

「それにしても、あんたがそんな相談をしてくるとはね」

「・・・なんか意外ですよね。フォンさんなら1人でも色々とやりそうなイメージでしたから」

「ピュルル!」

「それも考えたんだが、予算があるのならみんなの力も借りれればと思ってな」

 

リズやシリカの意見を肯定するかのように鳴き声を上げるピナを見て、思わず苦笑いしてしまう。

 

「でも、いいと思いますよ!ユウキさんもきっと喜びますよ!」

「週末だし、私もその日はバイト入ってないから多分行けると思うわ。料理はどうするの?」

「そこは俺とアスナ、それにエギルさんに手伝ってもらえたらと考えてる。エギルさんには、明日バイトだから相談するとして・・・頼めるか、アスナ?」

「もちろんだよ!任せておいて」

 

どうやらリーファとシノンもスケジュールは問題ないようだ。クラインにはまだ伝えていないが、これはこの後、インしてきた時にでも聞いてみればいいだろう。

 

アスナもユウキのためにということで、とても乗り気で頷いてくれた。こればかりはみんなに感謝の言葉しかない。

 

さて、どうして俺がみんなに相談を持ち掛けているのかというと・・・

 

「まさかフォンさんのご両親がどちらもお仕事なんて・・・ツイてないですね」

「そうなんだよ、ユイちゃん。しかもユウキの誕生日の前日からなんてな」

 

そう・・・実は来週の終末、5月23日はユウキの誕生日なのだ。

両親は1か月前から張り切って準備していたのだが・・・なんと誕生日の1週間前になって二人とも急遽仕事が入ってしまったのだ。父さんは北海道に2泊3日の会合、母さんに至っては1週間ほど海外への出張だ。

 

父さんはともかく、母さんは絶望が顔に張り付いたかの如くの表情をしていた。ギリギリまで日程をずらせないか交渉をしていたようだが・・・残念ながらその希望は叶わなかった。

 

そして、俺の両親が誕生日パーティを開いてくれると聞いて、一番楽しみにしていたのがユウキなのだ。そんなユウキの姿を見ていた俺が、まさかパーティができなくなったと言えるわけもなく・・・

 

そこで俺はみんなに相談を持ち掛けたのだ。

『ユウキの誕生日パーティーに参加してほしい』

その提案を聞いてくれたみんながここ・・・アスナたちのログハウスに来てくれて、今こうして話し合いを続けているわけだ。

予算は両親から結構出してもらっているのでエギルさんのお店を借りるのも訳なかったりする。

 

ちなみにユウキは今、スリーピングナイツのみんなとクエストに行っている・・・俺がシウネーたちに頼んで、ユウキを連れて出してもらったのは内緒だ。

 

「それじゃあ、当日の朝に料理を私たちで作るってことでいいかな?」

「そうだな。その日は帰還者学校も土曜日休みだから問題ないしな。ユウキには上手く誤魔化しておくから、アスナには料理を、他のメンバーは飾り付けを頼んでいいか?」

「私は問題ないです。でも、シノンさんは大丈夫ですか?エギルさんのお店ってかなり距離ありましたよね」

「そうね。でも、問題ないわよ・・・ねぇ、キリト?」

「・・・はい。喜んでお迎えに上がらせて頂きます」

「「「「むぅ~」」」」

 

リーファの疑問に良い笑みで答えるシノンの言葉に、キリトは項垂れながら頷いた。そんなキリトの反応に嫁~ズが嫉妬していた。

・・・オーディナル・スケールの一件から嫁~ズに顔が上がらないキリトに俺は肩を叩きながら同情した。

 

「悪いな、みんな。よろしく頼む」

「ああ!」「ええ!」「任せときなさい!」「はい!」「もちろんです!」「もちろんよ」「頑張りましょう!」

 

俺の掛け声にみんなが大きく頷いた。

 

こうして、オペレーション『courage』・・・じゃない。『ユウキの誕生日パーティ』のために俺たちは動き出した。

 

 

 

「・・・と意気込んだのは良かったんですけど」

「・・・プレゼントに何を送ったらいいのか困ってるってわけか」

「・・・はい」

 

ユウキの誕生日まであと4日。

準備は滞りなく進んでいた。和人たちはプレゼントを用意したり、明日奈とどういった料理を作るのかを話し合い、エギルさんのお店を貸し切る許可ももらい・・・全て順調に進んでいた・・・そう、俺以外は。

 

放課後、俺は客として訪れた『ダイシー・カフェ』でエギルさんにそんな相談を持ち掛けていた。俺が相談に来たことが珍しかったのか、エギルさんは少し驚いていた。

 

「まさか、オーディナル・スケールのあの一件後に指輪を送っちまってたとはな」

「和人と明日奈の約束を聞いて、突発的に・・・負けてられないというか、一緒に住んでて恋人で、って考えたら・・・思わず」

「蓮。お前さん、しっかりしてるようでどこか抜けてるよな。特に、木綿季のことになると顕著だな。まぁ、それがお前や和人の良いところだがな」

「はぁ~・・・すみません。既婚者で、人生経験の長いエギルさんならと思いまして」

 

エギルさんの言葉に苦笑いしながらも、思わずため息が出てしまった。

 

俺の悩み・・・それは木綿季への誕生日プレゼントが全く決まらないことだった。

この土日に色々お店を回ったり、授業中にオーグマーを使って(こっそりと)探してみたりしたのだが・・・GWの時に送った指輪が頭をよぎってしまうのだ。

 

これは自分だけではどうしようもないと思い、俺は『ダイシー・カフェ』へと駆け込んだのだ。ある意味、藁にも縋る気持ちだった。

 

そんな俺の様子を見て、グラスを拭く手を止めたエギルさんは答えてくれた。

 

「そもそも、そういうものは気持ちだろう?ありきたりな答えかもしれないが、お前さんが送りたいと思ったものを選ぶべきだと俺は思うぞ。

それを気に入るか、気に入らないかは相手次第だが、お前さんが真剣に選んだものには変わりはないはずだろう?」

「・・・え、ええ」

「それにこれは俺の勝手な主観だがな、お前さんが選ぶ物を木綿季が喜ばないわけがないだろう」

「・・・えっ?」

 

エギルさんの言葉に思わず顔を上げる。エギルさんはそのまま言葉を続けた。

 

「迷わず一直線に木綿季のことを考えるお前さんが選んだものなら問題はない、そう思っただけだ。いつも傍で木綿季のことを見ているお前さんならな」

「・・・・・!ありがとうございます、エギルさん!何か見えたような気がします!これ、お代です!」

「お、おい、蓮!・・・しょうがねーな」

 

千円札2枚を机に叩きつけ、俺はエギルさんの言葉を聞かずに飛び出した。木綿季に送りたい物が、今なら見つけられると思った俺は停めていたバイクで街へと繰り出した。

 

 

 

そして、迎えた5月23日。

 

「ふふん♬ふーふふん♪」

(ハハハ・・・めちゃめちゃご機嫌だな、木綿季。まぁ、無理もないか)

 

寝癖を直してに洗面所から戻ってきた木綿季が、ユナの曲を鼻歌まじりで歌っているのを見て、思わず笑みが零れる。

 

通知を告げる振動に気付きスマホの画面を見ると、明日奈から家を出たとのメッセージが届いていた。それを見た俺は、作り終えたスクランブルエッグとハニートーストを皿に盛って、テーブルへと運ぶ。

 

「木綿季、朝ごはんできたぞ」

「あっ、うん!ありがとう、蓮・・・あれ、蓮の分は?」

「悪い。ちょっと急用ができてさ。今から出かけないといけないんだ」

「ええっ!」

「ゴメン、本当はゆっくり過ごせるはずだっただけど・・・どうしても行かないといけない用事でさ。それで、木綿季に頼みたいことがあるんだ」

「・・・頼み?」

 

俺の言葉に首を傾げる木綿季に、心の中で謝りながら淡々と嘘を述べていく。

 

「実は今日のパーティのケーキをエギルさんのお店で作ってもらうように頼んでてさ。17時に取りに行く約束をしてるんだけど、それを取りに行ってくれないか?」

「・・・そんなに時間がかかる用事なの?」

「というよりも、何時に終わるか分からないという感じかな。パーティの時間までには終わると思うんだけど、こっちに戻ってきてからエギルさんのお店に行って、実家に行くのはちょっとギリギリになりそうだからさ」

「それじゃあ、僕がケーキを取りに行って、エギルさんのお店で待ち合わせて行くのはどう?それなら、蓮のバイクでおじさんたちのところに行けるし、交通費も抑えられないかな?」

「そうだな。悪いんだけど、それでもいいかな?」

「大丈夫だよ!というか、時間は大丈夫?」

「・・・やべぇ!そろそろ出ないと!?それじゃあ、行ってくるよ!」

「うん、行ってらっしゃい!パーティに遅刻したら駄目だからね!!」

「分かってるよ」

 

木綿季の言葉に慌てたフリをして、玄関へと向かう俺に木綿季の明るい声が飛んでくる。その声に手を振りながら応え、俺は家を出た。

 

そして、スマホでメッセージを送り返し、バイクで『ダイシー・カフェ』へと向かった。

 

店に着くと、エギルさんが出迎えてくれた。他のメンバーは15時集合で、後は明日奈を待つだけだったのだが、程なくして明日奈も到着したので俺たちは早速調理に取り掛かった。

 

明日奈もエギルさんも料理の経験は抜群に高いので、何の問題もなくスムーズに進んでいく。

普段はそうそう作ることのない料理ばかりだったが、オーグマーによるAR画面でのレシピやユイちゃんのアドバイスがあったのも大きかった。

 

料理も終盤に差し掛かる頃には里香や珪子、直葉ちゃんたちも到着し、詩乃を迎えに行っていた和人も店へと来た。詩乃と直葉ちゃんには料理の飾りつけを手伝ってもらい、和人たちには内装の方をお願いした。

 

そうこうしている内に準備は滞りなく終わり、後は何も知らない木綿季が来るのを待つだけとなった。ちなみに、クラインがいないことに気が付いたエギルさんが首を傾げていたが・・・

 

「なんで木綿季ちゃんの誕生日に限って休日出勤なんだよ~!?」

 

もちろんクラインも誘ったのだが、オーディナル・スケールの時に入院して仕事を休んだ分の出勤で、パーティに参加できないことを嘆いていたことを説明する。

俺の説明を聞いた全員がクラインに同情していたのは余談だ。

 

そして、

 

『皆さん!もうすぐ木綿季さんが来ます。ご準備を!』

「みんな、打ち合わせ通りに頼んだぜ」

 

みんなと談笑をしていると、ネットワークを通して外の光景を見てくれていたユイちゃんが木綿季が近くに来ていることを教えてくれたので、全員がクラッカーを手に定位置に着く。そのまま扉が開いたのと同時に、

 

「こんにちわ~!エギルさん、いま・・・」

「木綿季!誕生日、おめでとう!!!」

「「「「「「「おめでとう!!!」」」」」」

パン!パン!パン!

「ひゃあ!?」

 

俺の声に合わせ、みんながお祝いの掛け声と共にクラッカーを鳴らす。銃に打たれたかのように腰を抜かせてしまった木綿季は、一瞬何が起きたのか分からないままクラッカーの紙吹雪を浴びていた。

 

「・・?・・?・・?」

「えーっと、大丈夫か、木綿季?」

「・・・ドッキリ?」

「あー、サプライズといえば、そうかもな」

「・・・パーティ?」

「・・・実はな・・・」

 

驚きの余り、単語しか話せなくなってしまっている木綿季に事情を説明していく。

両親が仕事の都合で誕生日に家を空けないといけなくなってしまったこと、皆に事情を説明してパーティに参加してもらったこと、そのことをサプライズということで木綿季には一人で『ダイシーカフェ』へと来てもらったこと・・・それを聞いた木綿季は・・・

 

「・・・むぅぅぅ」

「悪かったって!みんなと相談してサプライズにしようってなったんだよ」

 

真っ赤になった顔を俺の体にうずめながら、ポカポカと軽く俺を叩きながら抗議してくる木綿季を宥める。

リアクションから木綿季も本当に怒っているわけではなく、照れ隠しでそうしていることは分かっていたが、俺は抵抗することなく受け止めていた。

 

「まぁまぁ。木綿季、その辺にしておいたら?」

「・・・うん。本当に驚いちゃったよ。いきなり爆発音が飛んできたんだもん」

「あー、これはやりすぎだったかしらね」

「だから言ったんですよ!このクラッカーは音が大きいじゃないかって・・・なのに里香さんが・・・!」

「わ、悪かったわね・・・!」

 

明日奈の声に、ようやく俺の体から顔を離した木綿季。腰を抜かした理由を聞いた珪子と里香がそんなことを言い合っていたが、今は放っておこう。

 

いつまでも入り口でこうしている訳にもいかないため、店の中に木綿季を招く。店内に飾られた飾りつけや風船、所々に並ぶ料理を見た木綿季の目が輝く。

 

「これ、もしかして全部みんなが?」

「そうですよ。料理は音弥さんと明日奈さん、エギルさんが作ってくれました。私と詩乃さんが盛り付けを、お兄ちゃんたちが内装を担当したんです」

「盛り付けといっても、蓮の指示通りに手伝っただけよ」

「ほとんどのメニューを考えたのも蓮だ。下手すれば、俺たちの手伝いなんていらないじゃなかったか?」

「流石にこの量と種類を作るのは無理ですよ」

 

エギルさんの評価は有難いが、流石に俺もこの短時間でそれは無理だと否定する。すると、AR空間を通して、ユイちゃんが俺に合図を出していた。それに気付き、

 

「木綿季。オーグマーを装着してくれないか?」

「えっ?うん・・・わぁぁ!」

『木綿季さん!お誕生日おめでとうございます!』

 

木綿季がオーグマーを装着してAR空間を見ると、ユイちゃんがAR空間ならではの花吹雪や花火を模したエフェクトでお祝いの言葉を送っていた。花びらの『Happy Birthday』という文字も表示される。

 

「・・・みんな、その・・・・・本当にありがとう!!

僕・・・本当に嬉しいよ!誕生日にパーティだなんて本当に久しぶりだったから・・・」

「ほらほら!ここで泣くのは早いわよ、木綿季。みんなからプレゼントをもらったら、涙が止まらなくなるわよ?ねぇ、直葉?」

「えっ!?そ、そうですね!」

 

しんみりした雰囲気を察した里香が、直葉ちゃんを強引に巻き込んで話題を反らす。里香のアイコンタクトに気付いた明日奈もすぐに動いた。

 

「さて、折角の料理が冷めちゃうし、始めましょうか?エギルさん、お願いします」

「はいよ。ノンアルコールカクテルで良かったよな?」

 

その質問に各自がエギルさんに飲み物を頼んでいく。飲み物が全員の手に行き渡ったところで俺が音頭を取った。

 

「えー、みんな。今日は俺の我儘に付き合ってくれてありがとう。そして、木綿季、誕生日おめでとう!色々と驚きの連続だと思うけど、今日は楽しんでくれると嬉しい。あまり長々と話しもしょうないんで、一言だけ・・・

木綿季・・・俺に最愛の人を祝わせてくれて本当にありがとう!!乾杯!」

「「「「「「・・・・いや、できるか!?」」」」」」

「れ、蓮ったら・・・最愛の人だなんて・・・!」

 

俺の爆弾発言に木綿季以外の全員からツッコミが入った。一方の木綿季は再び顔を真っ赤にさせていたが、笑みが隠せずに零れていた。

 

ともかく・・・心のままに放った言葉に場が騒然としてしまったので、再び仕切り直しで乾杯の音頭を取り、パーティが始まった。

 

各々が料理を取っていく中、俺は明日奈と共に木綿季と話していた。話題は15歳になった木綿季の抱負だった。

 

「僕、もっと料理ができるようになりたいな」

「今、蓮君からも色々教わってるんだよね?」

「そうだな。簡単な料理なら大体できるようになったよな。朝ごはんや夕飯も時々作ってくれてるし」

「・・・でも、蓮みたいにはまだできないんだよね」

 

そう言って、木綿季が視線を向けたのは今日、俺たちが作った料理の数々だった。特に木綿季の目を惹いたのは、

 

「ねぇ、蓮。あの塔みたいなのはなんなの?」

「あれか。あれはクロカンブッシュもどきだ」

「く、くろ、ぶし・・・?」

「クロカンブッシュな。フランスが発祥の料理で、よく結婚式とかでウェンディングケーキとして出せる料理だよ。

本来はああいう風に積み上げたシュークリームを溶かしたキャラメルとかで固めてケーキにするんだが、今回は揚げ餃子に柚子胡椒をベースとしたソースをかけたものだから、もどきってわけだ」

「へぇ~・・・フランスの料理なんだ。よ~し、僕も取ってこようと!」

 

俺の説明を聞いた木綿季は、なんとか崩さないようクロカンブッシュを取ろうとしていた珪子と直葉ちゃんの元へ向かった。そんな木綿季を見ながら明日奈がこっそり耳打ちをしてきた。

 

「そういえば、蓮君。クロカンブッシュの意味って知ってて作ったの?」

「えっ?いや、小説で読んだことがあっただけで、レシピしか見てないけと・・・クロカンブッシュでそういう何かがあるのか?」

「私もユイちゃんから聞いたんだけどね。クロカンブッシュって、豊穣を願うもので、結婚式でケーキと出される時には子孫繁栄の願いも込められてるんだって」

「ブハァ!?」

 

何気なく明日奈の説明を聞いていると、とんでもないワードが聞こえてきて思わず飲み物をコップの中に吹いてしまった。

 

「もともとシュークリームのシューの部分って、キャベツを表していているのが由来なんだって。だから、その・・・蓮君がそういうの意識してるのかなって?」

「し、してるわけないだろう!?知ってたとしてもみんなの前でやるか?!」

「えっ?どうかしたの、二人とも?」

「なんでもない!?」「なんでもないよ!?」

 

慌てて明日奈の疑問を否定するも、タイミング悪く帰って来た木綿季に即答し、この話は終わりになったのだった。

 

 

 

用意していた料理たちも片付き、パーティも佳境を迎えた頃・・・

みんなからプレゼントを渡すことになった。どんどんとみんなが渡していく。そして、明日奈が木綿季にペアのマグカップを送った所で俺の番となった。

 

「それじゃあ、最後は蓮君ね」

「ああ。木綿季、ちょっと悪いんだけど後ろ向いてくれないか?」

「えっ・・・こう?」

「そうそう。で、ちょっと失礼して・・・ほいっと」

「れ、蓮!?・・・あっ」

 

俺に髪を触られたことで戸惑う木綿季だったが、その正体に気付いたようで自分の背後を見て、

 

「赤い花の髪飾り・・・?」

「綺麗・・・これってゼラニウム?」

「へぇ~。流石は蓮ね。どっかの誰かさんとは違ってセンスあるわね」

「髪を結ぶと、かなり印象変わりますね」

「いいな、木綿季さん。私も髪伸ばそうかな」

「和人はどっちが好きなのかしらね?聞いてから判断してもいいんじゃない、直葉」

「えっ・・・お、俺はどっちでもいいと思うぞ?」

 

赤のゼラニウムを模した髪留めで木綿季の髪形をポニーテールへと変えてみたのだが、かなり好評のようだ。詩乃の問いかけに残念な回答をしている和人に呆れながらも、俺は木綿季に話し掛けた。

 

「その・・・いつも近くで見てて、違った木綿季を見てみたいと思ってさ。そう思ったらこれが思い付いてさ。木綿季、あんまり髪留めとか持ってなかったし。まぁ、俺一人じゃ全然考えが纏まらなかったから助けてもらったんだけど・・・」

 

そう言って、エギルさんの方をみるとグッジョブといった風に親指を立てていた。全員の視線が俺に集中している中、木綿季が近づいてきて、

 

「・・・ありがとう、蓮。どう?似合ってるかな?」

「もちろん。想像の数倍上をいく程に似合ってるよ」

「そっか。僕、ポニーテールとかあんまりしたことなかったからさ。そういえば、明日奈がこの髪飾りのこと、ゼラニウムって言ってたけど・・・?」

「あー・・・それを選んだのにも意味があってな。赤いゼラニウムの花言葉なんだけど・・・『君あっての幸福』『君がいて幸せ』って意味なんだよ」

「・・・そ、そっか。僕がいるから、か・・・エヘへ。僕も蓮がいるから毎日が・・・幸せだよ」

「そ、そっか。それは良かった。これからもそうであれるように頑張るから」

「僕も・・・蓮だけに頼り切りにならないように頑張るね」

「アハハハ!」「フフフッ!」

 

「明日奈。あの二人、いつまで放っておくのよ?」

「まぁまぁ。木綿季の誕生日なんだし、もう少しだけ二人にしておいてあげようよ」

 

里香の苦言に諫める明日奈に感謝しながら、俺は木綿季と色々な写真を撮りまくった。ようやく木綿季が満足した時には、穏やかな半分呆れ半分の表情で俺たちを見守り続ける空間が形成されてしまっていた。

 

「なんかすいません」「なんかゴメンなさい」

「「「「「「いえいえ、お気になさらずに」」」」」」

 

そんなことまで言われてしまう始末だったりする。

 

(少し自重した方がよさそうだ。じゃないと、それこそバカップルなんて呼ばれてもしょうがない気がしてきた)

 

先日のエギルさんの言葉がふと頭をよぎり、今後は気を付けようと思った・・・多分、無理だとも思ったが。

 

 

 

そんやかんで、パーティは予定した時間を少しオーバーして終了となった。本来は依頼人である俺も片づけを手伝うべきだったのだが、

 

「こっちはいいから。お前さんらは帰って二人でゆっくりしろ」

 

と、エギルさんがいきな計らいをしてくれたので、素直に甘えることにした。もっとも、同時に詩乃を送り届けるために和人が出て行くときには、他の女性陣の目が笑ってなかったのを見て、俺と木綿季が寒気を感じたのは余談だ。

 

そして、家に着いた俺は木綿季と共に手を洗ってからリビングでゆっくりとしていた。さっきからオーグマーにもの凄い量の通知が来ている。

 

(・・・ったく。ちょっとはゆっくりさせてくれよ)

 

呆れながらも、俺はオーグマーのAR画面でメッセージボードに文字を打ち込んでいく。そして、文字を打ち終えたところで、

 

「木綿季。ちょっといいか?」

「えっ、どうしたの?」

「実はもうひとつサプライズがあってな・・・それじゃ、二人とも。いいよ」

「・・・二人?」

 

木綿季が頭上にハテナマークを浮かべているが、俺はお構いなしにオーグマーを操作し、通信を同期させる。その瞬間、

 

パン!パン!

 

「・・・えっ!?」

『木綿季ちゃん!お誕生日おめでとう!』

『・・・おめでとう』

 

AR画面にクラッカーのエフェクトと音が鳴り響き、ここにはいないはずの両親の声がしたことに今日で何回目になるか分からない驚きの声を上げる木綿季。そして、俺の方を見ると、

 

「悪い、木綿季。どうしても今日、祝いたいって二人が言って聞かなくてさ・・・」

『蓮に無理言って、海外でもオーグマーで通信できるように設定してもらったのよ。というか、お父さん。せっかくの木綿季ちゃんの誕生日なんだから、もっと笑ってくださいよ!』

『う、うむ・・・・・おめでとう、木綿季ちゃん』

「『さっきと変わってないじゃん!?』」

「ア、アハハ・・・」

 

口下手すぎる父さんに俺と母さんのツッコミがハモリ、木綿季も苦笑いしてしまっていた。

実は、二人が木綿季の誕生日に一緒にいられないと分かった時点で、どうにかできないかと相談を受けていたのだ。

 

相談を受けた俺はオーグマーを使うのはどうかと思い、和人とユイちゃんに相談・・・海外にいる母さんのスケジュールを聞き、通信環境の設定やエフェクト・オーグマーの使い方のレクチャーなど、誕生日パーティの準備と並行しながら進めていたのだ。

 

本来であれば、1時間前にこの通信を予定していたのだが・・・思いの外、パーティの方が長引いてしまい、30分前から物凄い量の通知が届いていたりした・・・その9割方が母さんだったりするのだが・・・

 

『それにしても、木綿季ちゃんももう15歳か。来年には結婚かしらね?』

「母さん!?」「叔母さん!?」

 

あまりにも忙しすぎたこの1週間を思い出していた俺は、母さんの爆弾発言に意識を現実世界へと引き戻された。何言ってくれてんだ、この人は!?

 

『止めなさい、ミコ。そこは二人に任せるべきだろう・・・父親としては、同居してる時点でほぼ変わりないだろうと思うがな』

「父さんまで!?」

 

誕生日のせいか、何故か父さんまで爆弾発言をしてきた。義親バカをこんなところまで発揮しないでほしいと思う反面、実の息子としては放っておかれて寂しいと思ったりした俺は悪くないはずだ。

 

「・・・フフッ・・・アハハハハハ!!」

「木綿季・・・?」『・・・?』『木綿季ちゃん・・・?』 

 

突然笑い出した木綿季に、俺たちは思わず彼女へと視線を向けた。視線を向けられた木綿季は笑顔で言葉を発した。

 

「・・・お義父さん、お義母さん・・・そして、蓮。

本当に、ありがとう!!僕、みんなにこうして祝ってもらって本当に幸せ者です!

そして、これからも宜しくお願いします!」

「・・・うん。こっちこそ宜しく。そして、おめでとう、木綿季」

 

両親に見せないようにするために、自分と木綿季のオーグマーを外し、俺は静かにキスした。

 

『・・・むぅ?画面が見えなくなったぞ?』

『今、お義母さんって呼んでくれたわ!ねぇ、そう呼んだわよね、蓮?ちょっと!?聞いてるの、蓮?!』

 

背景で全く違ったリアクションを取る両親に、俺たちは赤くなった顔を隠しながら微笑んだのだった。

 




多分、番外編はアリシゼーションの前半が終わるまでは当分お預けになるかと思います。

もしかしたら、息抜きに別の番外編を出すかもしれませんが、その時はまた何かしらの形でお伝えできればと思います。

それでは最後に・・・ユウキ、誕生日おめでとう!

アリシゼーション編で、フォンに使ってほしい武器はどれでしょうか?(両手剣、片手剣はデフォルトです)

  • 両手斧
  • 片手棍
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。