ソードアート・オンライン~夢幻の戦鬼~   作:wing//

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本話から本格始動です

書いてる時に、和人たちがいたファミレスが『WORKING!!』で出てくるものだと、調べていて、ビックリしました。世界って、狭いな・・・

ちなみに、台詞は映画に準じていますが、地の文は主人公目線なので、現実世界の地の文は本名を、会話とVR世界ではプレイヤーネームを呼んでいる設定になってます。

木綿季の表情がコロコロ変化するのを想像しながら書くのが好きだったりします。

それでは、どうぞ!

※アンケート、ご協力ありがとうございます。今回のアンケートは第2話まで行います。投票、よろしくお願いいたします!


第1話 「オーグマー」

ファミレス『ワグナリア』。俺と木綿季は学校帰りに和人、明日奈、里香、珪子の6人で来ていた。帰る前にお茶して行こうということだったのだが、

 

「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」

 

女子4人は、店に備え付けのゲームに挑戦していた(しかも、俺の世界にもあったパックマンのリメイク版だ。懐かしいと思ったのは余談だ)。それを俺は見学し、和人はその光景をどこかつまらなさそうに見ていた。

 

和人がそんな態度を取る理由・・・それは、そのゲームが最近配布されたAR機器『オーグマー』を用いたARゲームだったからだ。俺はオーグマーを装着しているので、木綿季たちのプレイが見えているが、装着していない和人にはこの空間が見えていないので、何もない空間を見ている状態だという訳だ。すると、

 

「よっしゃー、クリアです!」

「やったね、シリカちゃん!ナイスアシスト、ユウキ、リズ!」

「うん!アスナもね!これ、面白いね!もう一回やりたい!」

「今ので100ポイントゲットですね!」

「あっ!ケーキ無料サービスだって!ラッキー!」

 

ゴールの到達し、ゲームクリアを喜ぶ女子たち。珪子の言う通り、ポイントの獲得で、彼女たちの頭上に表示されているランキングも上がっていた。そんなところに、

 

「君たち、ちょっとゲームしすぎじゃないか?」

「キリトがそれを言うのか?」「キ、キリトさんにそんなこと、言われるなんて!?」

 

和人の忠告に、俺と珪子のツッコミが見事に重なった。そんな和人に里香が反論した。

 

「だって、いろんな店でポイントがもらえるのよ!やらなきゃ損でしょう?」

「まぁ、確かにな。食材とか日常品を買う時にもクーポンが使えたりするから、リズの言う通り、かなり便利だよな」

「そうそう!フォンは分かってるわよね!」

 

俺の賛同に里香は嬉しそうに頷いた。

 

「本当は、キリト君も一緒にやりたかったんじゃないの?良かったら、フォン君もプレイしてないし、2人で挑戦してみたら?」

「・・・いや、いいよ」

 

明日奈の提案に、旗色が悪いと感じたのか、和人はそれ以上反論するのを諦めたようだ。すると、話はオーグマーのことになった。

 

「まぁ、確かに便利よね。どこでもテレビが見られるし、スマホよりナビは使いやすいし、天気予報は助かるし、なんつっても、ユイちゃんとも話せるし」

『はい!』

 

里香の言葉にユイちゃんが反応する。

 

「リズはかなり使いこなしてるみたいだな?」

「そんなことないわよ。あくまでも、私の場合は基本機能しか使ってないわけだし。まぁ、学校で無料配布されたのならちょっとは使わないともったいないかな、って思ってかな」

「お待たせしました。こちら、クリアボーナスセットです」

 

俺の問いかけに、里香は苦笑しながらそう答えた。まぁ、いちいちスマホを取り出したり、アプリを開かずにそのまま操作できるオーグマーは確かに便利だと俺も思う。

そんなことを考えていると、店員さんがさっきのゲームクリアの報酬で、ケーキを持ってきてくれた。それを女子4人が選んだのだが、それぞれ別のケーキを指さし、その光景に思わず笑いが零れていた。

 

「AIが好みまで、判断してくれるんだ。なんて言うんだっけ?」

「ディープランニングだ。ビックデータやキャッシュデータといった媒体から、そのユーザーに合わせたデータ提供を行う、いわゆる自己学習機能みたいなものだな」

「へぇ・・・このオーグマーにそんな機能があるんだ。本当に便利だね、これ!」

 

里香の言葉を補足した俺の説明に、木綿季は装着しているオーグマー触りながら、感心していた。

 

「本当、誰かさんと違って、気が利くわよねー」

 

と、里香が嫌味っぽく言った言葉に、和人の(デリカシーのない)反撃が炸裂した。

 

「・・・そのAIは、食べた物のデータも取ってるらしいぞ」

 

その言葉に里香の表情が固まった。その一方で、木綿季が絶望的な表情をしていた。

 

(あの表情は完全にカロリーオーバーだったな・・・)

 

元凶の和人の足に蹴りを入れながら、俺は木綿季にどうフォローすべきかと考えていたのだった。

 

 

 

そして、某ショッピングモールに移動した俺達。先ほどの和人の言葉に、プンプンしている里香を珪子が必死で追いかける中、

 

「ううう・・・」

「気にするなって、ユウキ。今日の夕飯はカロリー低めなものにするからさ」

 

俺は木綿季を慰めながら、今日の献立を考えていた。大根と鶏の煮込みものにしようか・・・そんなことを考えていると、話題は俺たちが招待されたユナのライブに移った。

 

「ユナのファーストライブに、帰還者学校の皆が無料招待されるとは思いませんでしたね」

「ライブに行くのが、何の授業になるのかね?」

「AR技術による大型演出の視聴見学、って感じなのかもな・・・まぁ、公的機関なりに色々な思惑があるんだろうな」

「確かにあの学校って、変わってるよね。でも、楽しみだよね!ユナちゃんのライブ!はぁ~、早くライブの日にならないかな!」

 

珪子と里香の疑問に、あの腹黒メガネ公務員の顔を浮かべながら、推測を述べる俺の横で、苦笑いしながらも、木綿季がライブを待ち遠しいといった表情で応えた。

ちなみに、和人と明日奈は俺達より少し離れた後方で、二人っきりの空間を形成中なのは、触れないお決まりだ。

 

「良かったわね、シリカ。あんたもユナの大ファンでしょう?」

「ちょ、ちょっと!?そ、そこまでじゃないですよ!」

「この間、カラオケで熱唱してたじゃない、直葉と・・・ほら、皆にも聞かせてあげなさいよ!」

 

そう言って、里香が空中で・・・いや、オーグマーを操作した。珪子の周りにARによるライブステージが形成され、ユナの代表曲の一つ『Ubiquitous dB』のイントロが流れ始めた。

 

「あっ!僕も歌う!」

「ユ、ユウキさん!?えっ?ええっ!?」

 

そのライブに木綿季も乱入し、困惑する珪子。歌うべきかどうか、迷っていたが、音楽が進むにつれ、左手が堪え切れない様子で上がったり、下がったりを繰り返していた。が、自制心が折れたようだ。鞄に収納していた付属スティックを抜き、

 

「「だから!会いたいなんて、ナンセンス!ユビキタするよ、君のメモリーに・・・・・・」」

 

木綿季と珪子の熱唱が始まった。その様子をリズムに乗りながら、見ている俺達。

周りの通行人たちも足を止め、そのライブを見ていた。そして、ライブが終わり、決めポーズを取ったところで、我に返った珪子とやり切った表情の木綿季が戻って来た。

 

『凄く上手でした!』

「ううう・・・・・!」「ありがとう、ユイちゃん!」

 

ユイちゃんの称賛の言葉に恥ずかしさの余り、言葉がでない珪子と、笑顔の木綿季。

すると、珪子が話をすり替えようと、ユナのライブに話を戻した。

 

「そ、そうだ!キリトさんもユナのライブに行きますよね!」

「えっ?あ、ああ・・・どうしようかな。俺はそこまでファンじゃないし・・・」

「えぇー!?みんなで、一緒に行きましょうよ!」

「そうだよ!行かないなんて、損だよ!」

「ま、まぁ・・・気が向いたらな」

 

珪子と木綿季の熱弁にも、和人は煮え切らない態度で答えた。その返答に、珪子が肩を落とした。その様子に俺たちは苦笑いするしかなかった。

 

「確かに、面白そうなガジェットだと思うよ、こいつは・・・

でも・・・俺はフルダイブの方がいいかな」

「あら、そう・・・」

 

和人の反応に、里香が少し驚いていた。

 

「三年間も、別の世界にどっぷり浸かっていたからかもな」

「あー、それはなんとなく僕も分かるかな。ARもいいとは思うけど、僕もあの世界の方が好きかな」

 

和人の言葉に、木綿季が同意した。二人の言葉に、俺も納得する部分があった。

和人の視線に釣られ、周りを見渡すと、ほとんどの通行人がオーグマーを着けていたり、ARに触れている光景が目に入った。

 

「戻りたい・・・なんて、言わないでよね?」

「まぁまぁ、落ち着け、リズ。キリトが言いたいのはそういうことじゃない、って、ことは分かってるだろう?」

「・・・そうだけど・・・」

 

気まずい空気が流れだしたところで、珪子が思い出したように、話題を変えた。

 

「そうそう!アインクラッドって言えば、例の噂は本当なんでしょうか?

オーディナル・スケールに、旧SAOのボスモンスターが現れるって・・・」

「ああ、あれね・・・謎のイベントバトルのことね?」

「へぇ~、何かのプロモーションか、何かなの?」

「う~ん、それは分からないけど・・・出てくる所がギリギリまで隠されてるから、

足がない私たちには参加が難しいのよね・・・一体、どうなってのかな?」

 

と、里香が不思議そうに首を傾げる横で、明日奈が何かを閃いたように、笑顔で和人と俺を見ていた。

 

「ふ~ん・・・移動手段があればいいのね?」

「っ・・・!?」

 

明日奈の笑みと何かを思わせる言葉に、和人がこっそりと逃げようとした時だった。

俺のオーグマーにメッセージが届いた。送り主はクライン・・・遼太郎さんからだった。

 

『一緒にOSのボス戦やろうぜ!』

 

和人の方を見ると、和人も同じメッセージが送られていたのか、動きが止まっていた。

そして、その一瞬の隙が仇となった。明日奈に肩を掴まれ、振り返った和人の視線の先には、

 

「キ~リ~ト君?」「キ~リ~ト?」「キ~リ~トさん?」

 

良い笑みを浮かべた女子三人が期待の目で和人を見ていた。その笑みに和人は・・・

 

「・・・はい」

 

逆らうことができずに、素直に首を縦に振ったのだった。

 

「それじゃ、フォンは・・・ユウキを連れて行くから足を頼むのは無理か」

「・・・というか、この後用事があるから、そもそも参加自体が無理だぞ?」

「「「「『・・・えっ?』」」」」

 

俺に足を頼むことを諦めかけている里香に、参加が無理だということを告げると、俺と木綿季以外(ユイちゃんまでも)が驚きの声を上げた。

 

「この後、ユウキの検診があるんだよ」

「えっ?ユウキ・・・もしかして、どこか調子悪いの!?」

 

俺の言葉に明日奈が慌て始めた。その様子に、俺と木綿季が慌てて訂正を入れる。

 

「ち、違う、違うよ、アスナ!」

「俺の言い方が悪かった!オーディナル・スケールに参加するに当たって、問題がないかどうか、倉橋先生に診てもらうんだよ。それだけだ!」

「そ、そっか・・・良かった・・・」

 

俺と木綿季の言葉に、明日奈は安堵の声を上げた。和人たちもホッとした表情を浮かべていた。

 

「そういうことだ。まぁ、俺もそのボスバトルのことは気になるから、後で映像を送ってくれるか?」

「分かった」

「本当に、大丈夫なんだよね、ユウキ?」

「大丈夫だよ、アスナ。もう、心配性だな」

 

そんなやり取りをしながら、俺たちは放課後を過ごし、検査の時間が近づいてきたので、俺と木綿季は和人たちと別れたのだった。

 

 

 

そして、横浜港北総合病院。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「ど、どうですか・・・先生?」

「もしかして・・・駄目ですか?」

 

無言で検査結果を見つめる倉橋先生に、木綿季と俺はドキドキしながら、尋ねた。

すると・・・

 

「うん・・・問題ないでしょう」

「「っ・・・!!!って、ことは・・・?」」

「そのゲームに参加しても問題ないということです。もちろん、無理はしないということを大前提とした上で、ですがね」

「はい!約束します!」

 

穏やかな笑みを浮かべる倉橋先生に、元気よく木綿季が返答した。

 

「ありがとうございます、倉橋先生。すみません、診察終わりに検査を入れて頂いて」

「いや・・・君や君のお父さんには、木綿季君のことで大変お世話になってるからね。

これぐらいはさせてもらわないとね」

 

俺の言葉に、なんでもないといった表情で倉橋先生は答えた。

 

「それに、二人とも元気そうで安心したよ。上手くやってるようで、良かったよ」

「エヘへ・・・」「どうも・・・」

 

倉橋先生の言葉に木綿季と俺は照れてしまった。俺的に、倉橋先生は、木綿季の父親代わりみたいな印象があるため、どう接したらいいのか、偶に困ってしまうことがあるのだ。

 

(・・・まぁ、そんなこと、木綿季にも、倉橋先生にも口が裂けても言えないが・・・)

 

そんなことを思いながら、俺と木綿季は、近況を倉橋先生に報告しながら、談笑を続け、

時間がきたところで、俺たちは病院を後にするのだった。

 




最後の描写は、一応最近まで入院していたので、倉橋先生の許可を取りに行こう・・・という作者の気配りです(無駄な配慮)。

次回は、フォン・ユウキのAR初戦闘回となります。
オリ設定もぶっこみますので、お楽しみに!

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