ソードアート・オンライン~夢幻の戦鬼~   作:wing//

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普段怒らない人が怒る時が一番怖いと言いますが、
その人の逆鱗に触れた人はどうなるんでしょうか・・・

そんなことを考えていたら、今回の副題になりました。

それではどうぞ!


第7話 「鬼が怒る時」

〈Other View〉

「へぇ~、ユナの人気凄いわね」

 

国立協議場・・・周りを見渡しながら、詩乃から、ユナのライブがここまですごいものだと思っておらず、感動のため息が漏れた。その並んだ席の先で、

 

「ううう!歌いすぎて、喉が・・・」

「大丈夫、シリカ?」

「あんた、ハッスルしすぎよ・・・」

 

喉を傷めてしまった珪子を心配する木綿季と、呆れる里香がいた。ちなみに、昨日のカラオケは木綿季も珪子と同じ量を歌っていたのだが、まったく平然としていた。

 

「シリカちゃん、昨日はありがとう」

「い、いいえ!」

「ユウキも・・・ありがとうね」

「!!!ううん!どういたしまして!」

 

二人にお礼を言う明日奈の横で、エギルは隣の空席を見ながら、ここにはいない直葉と遼太郎に向かって、

 

「しかし・・・残念だったな、あいつら」

 

とコメントしていた。すると、

 

「あれ・・・キリト君は?」

「ちょっとトイレに寄ってくる、って言ってましたよ?」

「そういえば・・・フォンの姿も見えないけど?」

「ちょ、ちょっと売店とかウロウロしてくる、って言ってたよ!うん!」

 

明日奈の問いかけに珪子が答え、里香の疑問には、どもりながら木綿季が答えた。

実は木綿季・・・蓮から、自分たちがいない理由を聞かされていたのだった。

 

(フォン、キリト・・・負けないでね!)

 

ここにはいない二人のことを心から応援して、今の自分にできることをしようと、木綿季は意識を入れ替えるのだった。

 

〈Other View End〉

 

 

 

地下3階 

エレベーターで、地下駐車場のフロアであるここに来た俺と和人は呼び出した本人たちの姿を探した。

 

「約束通り・・・来てやったぜ」

 

柱にもたれかかりながら、『SAO事件記録全集』を呼んでいたエイジに和人が声を掛けると、奴は本を閉じ、柱から背中を離した。

 

「力づくでも返してもらうぞ・・・アスナの記憶を」

「急かさないでください、黒の剣士さん」

 

和人の怒気を孕んだ声に奴はペースを崩さず、話し続けた。

 

「余裕だな?俺とキリトなんか、眼中にないってか?」

「おお、怖い声を出しますね、夢幻の戦鬼さん?あなたの相手は・・・彼ですよ?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

エイジの言葉で、柱から尚也・・・カレットが姿を現した。

 

「黒の剣士、か・・・そういうお前はノーチラスだな。死の恐怖に立ち向かえず、戦うの拒否した、っていう・・・」

「今の俺はエイジだ!!!」

「「っ!?」」

 

和人の言葉に、初めてエイジが大声を出し、感情を露わにした。

 

「ふぅぅ・・・ふん。随分と昔な話を・・・よくご存じですね?僕なんかのことを・・・」

「詳しい人がいたもんでね。その人から聞いたのさ」

「・・・ふ~ん。そうやって、閃光さんだけでは飽き足らず、ユナまで誑かすんですか?」

「・・・何の話だ?」

 

少し苛立ちを見せたエイジの言葉に、和人は眉を顰めながら返した。

 

「まぁ、いいです・・・しかし、ノコノコやってきて、ランキング2位と3位の僕たちに勝てると思ってるんですか?」

「そんなことはやってみないと分からないだろう?現に、あんたらのどっちも1位じゃないみたいだからな?」

 

俺の挑発も気にせず、エイジは余裕の笑みを見せていた、隣で、和人が重りのリストバンドを外していた。

 

「お前は夢幻の戦鬼をやれ」

「・・・分かったよ、兄さん」

「和人・・・3位のほうは俺がやる。そっちは任せたぞ?」

「ああ」

 

そして、俺たちは叫んだ。

 

「「「「オーディナル・スケール・・・起動!!!」」」」

 

バトルスーツを身に纏った瞬間、俺とカレット、和人とエイジが剣をぶつけ合っていた。

 

「音弥さん・・・あなたには悪いが、あなたの記憶も頂きます!」

「やれるものなら、やってみろ!」

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

奴の攻撃をいなし、反撃していく。以前もそうだったが、カレットの攻撃は重く、早い。

正確にこちらの急所を狙ってくる。それを防ぎ切りながら、俺はカウンターで反撃を仕掛けていく。

 

「はぁぁぁぁぁ!」「がぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

剣を何合もぶつけ合い、その度にARエフェクトの火花が散る。一歩も譲らないラッシュが続く。そして、鍔競りに入った時、俺は兼ねてからの疑問をカレットにぶつけた。

 

「なぜだ!?これだけの剣の才能がありながら、なんでこんなことに加担した!?」

「っ・・・!?あなたには分かりませんよ!全てを持っているあなたには・・・僕の・・・そして、兄さんの心も!!!」

ガキィン!!!

「っ!?」

 

叫びと共に、力が強くなったカレットの蹴りを受け、俺は体制を崩し、車のボンネットに激突した。

 

「シャァァァァァァァァァ!!!」

「くっ!?」

 

カレットの追撃を車の屋根に転がり、躱す。そのまま、体勢を立て直し、同じく屋根を登ってきたカレットと、車の屋根を移動しながら、剣をぶつけ合う。

 

「こんな・・・人を傷つけることが、本当に正しいことだって思ってるのか!?」

「それじゃ、どうすれば良かったですか!?綺麗ごとばかり言って、下の者たちの視線にも気づかず、のうのうと生活してきたあなたたちに、俺たちを責める権利なんてない!」

 

車から飛び降り、再び剣をぶつけ合う。叫びと共にカレットの力と闘気が一層強くなった。その剣戟に、俺の剣が徐々に押され始める。

 

「SAOから帰って来た兄の姿はどんなものだったか、分かりますか!?今の社会的地位はなくなり、周りから取り残され、SAO生還者というレッテルを張られた兄を!社会が何かをしてくれたわけでもない!」

「っ!?!?」

「それだけならまだ良かった!?時間が解決してくれる問題ですからね!」

ガキィン!

「ぐぅぅ!?」

 

カレットの闘気は、これでもかという程に膨れ上がっていた。全ての恨みをぶつけるかのような勢いだった。その勢いに、俺は呑まれかけていた。

 

「・・・帰って来た兄は、全てを失っていました!愛する人を、その人を守れなかったことで、自分を何度も責めていました!兄はあなたたちのような英雄でもない!?分かりますか!あなたたちが英雄として、総てを手に入れている横で、兄は全てを失ったんですよ!!!」

ガァキィィン!!!

「っぅぅ!?!?!?」

 

鬼気迫る一撃は更に威力を増した。それを俺はただただ受け止めていた。

 

「SAOが全てを兄さんから奪ったんだ!だったら、SAOの記憶なんて、僕たちが貰ったって、いいじゃないかぁ!?」

 

そう言って、渾身の一撃を叫びと共に繰り出したカレットの一撃を・・・

 

ガァン!

「・・・・・・・・・・えっ?」

 

俺ははじき返した。

 

(そうか・・・そうかよ・・・もういい。だったら・・・・!)

 

その言葉に・・・俺の中で、何かがキレた。理性をもったまま、俺は怒気と殺気を全開にし、

 

「・・・うるせぇよ・・・」

「っ・・・!?」

 

一言で、カレットを黙らせた。

静かに剣を構え直し、俺はゆっくりと奴に近づいていった。

 

「っ・・・!?このぉ!」

 

闘気を取り戻したカレットが再び渾身の一撃を放つが、俺はそれをしっかりと受け止めた。

 

「俺たちが総てを得ているだと・・・?SAOが全てを奪っただと・・・?いい加減に目ぇ覚ませよ!!!」

「っ!?」

 

剣をぶつけ合いながら、俺は叫んだ。

 

「確かに、お前の兄さんは大事な人を守れなかったのかもしれない!目の前で救えなかったのかもしれない!だがな!それを自分一人だけだなんて、思ってんじゃねーよ!」

「っ!」

 

言葉と共に、剣を押し込んでいく。

 

「俺もキリトも助けられなった命がある!中には、親しい奴だっていた!時には、命を奪ったことだってあった!だけどな・・・俺はそのことを忘れたことなんてない!忘れるわけにはいかないんだ!」

 

カレットの斬撃を全ていなし、逆に高速のラッシュで圧倒していく。

 

「あの記憶があるから、今の俺が・・・俺達があるんだ!それを、お前たちに否定する権利なんてない!!!ましてや、誰かの笑顔を奪う権利なんて・・・誰にもない!!!」

「っ・・・!?知ったような口を利くなぁぁぁ!?」

 

木綿季と明日奈の表情を思い出し、叫ぶ。俺の言葉に、逆上したカレットが今まで見たことのないスピードで迫ってきた。俺も、自分が出せる最速の一撃で迎え討った。

 

キィン・・・!

 

俺達の体が交差し、一瞬、沈黙が場を支配した。・・・だが、すぐさまカレットの体が崩れ落ち、勝敗が決した。俺は剣をしまいながら、カレットに言い放なった。

 

「どんなに辛い記憶でも、その記憶のその人の物だ。それは、誰にも奪うことは許されない。それが分からない奴に・・・俺達は負けない!」

「・・・・あああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

俺の言葉に、カレットは慟哭を上げた。それが目的を達成できなかったことなのか、俺の言葉に打ちのされたことなのか・・・そんな彼を放置し、俺は和人とエイジの元へと向かった。

 

 

 

「キリト!」

「・・・!フォン!」

 

二人の姿を探すと、剣をしまった和人と、崩れ落ちたエイジを見つけた。どうやら、和人も勝ったようだ。ほっとした俺が声をかけると、俺の無事を確認した和人も安堵したようだった。

 

「・・・フフ・・・ウフフフフフ・・・フフフフフフフフフ!!!」

「・・・こ、こいつ・・・!?」

 

和人に負けたはずのエイジが不気味に笑い始めた。その変貌ぶりに俺は思わず、和人と目を合わせるしかなかった。

 

「もう手遅れだ・・・ここには、SAO生還者が集められている」

「「!?」」

「この会場で、SAO生還者全員の脳からスキャンをして、奪ってやるのさ!SAOでの記憶を!・・・そして、悠那を生き返らせる・・・!」

「何?・・・どういうことだ!?」

「そんなことをして、あんたが満足したいだけじゃないか!?」

「・・・さぁ、始まったぞ?もう、止められない!アハハハハハハハ!?」

 

俺達の声が聞こえていないように、エイジは狂ったように高笑いしていた。

 

「・・・貴様ぁ・・・!」

「フォン!こいつのことより、早く会場に!!」

「・・・くそ!」

 

和人の言葉に従い、俺たちは会場へと走り出した。エイジの狂った笑い声が駐車場に響き渡っていた。

 

 

 

『オーグマーを製造したカムラ周辺からの情報だ。現在、スタジアム周辺を飛んでいるドローンには、オーグマー自体の出力をブーストするワイヤレス給電機能が実装されてことが分かった』

「出力のブースト・・・?」

「どういうことだよ・・・?」

 

エレベーターでライブ会場に向かいながら、俺と和人は菊岡さんからオーグマーに関する新たな情報を報告されていた。意味が分からず、俺と和人は菊岡さんの言葉を聞き続けた。

 

『スタジアム内で、例のスキャニングが行われると、部分的な記憶の欠損だけでは済まないかもしれない、ってことだ』

「っ!?それって・・・!?」

「まさか、ナーブギアと同じ・・・!?」

『フォン君の推測通り・・・脳自体にダメージを与え、死をもたらす可能性がある』

「「!?」」

 

その言葉に俺と和人は衝撃を受けながら、会場の扉を開き、突入した。

オーグマーを装着し、見た光景は・・・戦場と化していた。

 

複数のイベントボスが出現し、プレイヤーたちが交戦していた。だが、ボスは今もなお増え続けており、徐々にプレイヤーたちが劣勢になりつつあった。

 

『僕は教授を止める。キリト君とフォン君は、スタジアム内の観客にオーグマーを外すように指示してくれ!』

「・・・っ!」

「・・・言うのは簡単だけど!」

 

菊岡さんの指示に俺と和人は走りながら、会場の中心へと向かった。その時だった・・・ある光景が目に見えた瞬間、俺の頭は真っ白になった。

 

〈Yuuki View〉

「なんじゃこりゃ・・・」

 

ユナちゃんのライブが終わったと思った瞬間、会場にオーディナル・スケールのボスが現れ、会場は混乱状態になっていた。エギルさんの言葉に、僕たちもその光景を呆然と見ることしかできなかった。

 

「来るわよ!」

 

詩乃の言葉に、カマキリのようなモンスターがこちらに襲ってくるのが目に入った。詩乃がライフルを構え、弾丸を叩き込んだ。モンスターが失速し、席に墜落した。だけど、

 

「っ!アスナ、シリカ、後ろ!?」

「「・・・!!!」」

 

エフェクトに気付いた僕は、モンスターの出現に気付くのが遅れた二人に叫んだ。

珪子が明日奈を庇い、短剣を構えたが、明日奈は動けないでいた。

援護に入ろうと、明日奈たちの元へ駆けようとした時だった。

 

『GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!』

「ユウキ・・・!」

「あっ・・・」

 

さっきのカマキリのモンスターが地面から現れ、僕目掛けて、鎌を振り下ろそうとしていた。

とっさのことに、僕は動けず、里香の叫び声が響き・・・僕は思わず目を瞑った。

 

「堕ちろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

その叫び声と共に、何かがボス目掛けて、上から突撃した・・・いや、その人は・・・

 

「ユウキ!無事か!?」

「・・・フォン!」

 

土煙の中から、蓮が姿を現した。

 

「アスナ!みんなも大丈夫か!」

「キリト君・・・!」

 

向こうからは和人の声も聞こえ、明日奈が無事だったことに思わずホッとした。

 

「キリト、そっちは任せる!ユウキ、シノン!まずはこいつを倒すぞ!リズ、エギルさん!キリトのフォローを頼みます!」

「うん!」「分かったわ!」「任せときなさい!」「おう!」

 

フォンの号令と共に、僕たちはボスを迎え撃った。

 

〈Yuuki View End〉

 

 




今回、彼らが触れたフォンの逆鱗・・・

・ユウキを泣かせたこと 
・一方的な考えでアスナの記憶を奪ったこと 

もう少しカレットの心情も描きたかったのですが、これが難しい・・・
SAO帰還者の家族だからこそ、分かる痛み・・・それを止めることができなかった自分の後悔・・・それを理解してなお、踏破するオリ主(メンタル強くしすぎたかな・・・とちょっと思ったりしてます(笑))。

ちなみに、最後のカマキリ型ボスもフォンの逆鱗に触れたことで、容赦のない一撃を喰らった形です。

次回は短編になります。

次回更新 22日0時予定
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