劇場版でも一番盛り上がったバトル回です。
それでは、どうぞ!
「はぁ・・・はぁ・・・よし!」
詩乃の援護のもと、木綿季とのコンビネーションでボスを撃破し、一息ついていた。
ランキングが3位に上がったが、そんなことを気にしている余裕はなかった。
同じタイミングで『ザ・グリームアイズ』に酷似したボスを倒した和人たちに新たなボス・・・死神の姿を模した、第1層の地下迷宮区を守護していた裏ボス『ザ・フェイタルサイズ』に酷似したボスが和人たちに強襲をかけていた。
『GYAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!』
「っ・・・!?」
「・・・!キリト!」
連戦の疲労が祟ったのか、一瞬回避が遅れ、和人が体制を崩した。その隙を見逃さず、死神が鎌を振りかぶった。援護に入ろうと、俺が飛び出そうとした時だった。
「くっ・・・!?」
フードの少女は巨大な盾で死神の鎌を完璧に防いだ。フードが取れ、その顔を見た俺達は驚いた。
「君は・・・!?」
「悠那!?」
「キリト、フォン、助けて!このままじゃ、ここに来てくれたみんなが危ない!全員のエモーティングカウンターの平均値が1万を超えたら、高出力のスキャンが行われて、脳にダメージが・・・!?」
「あ、ああ!みんな!今すぐ、オーグマーを外すんだ!」
「外してくれ!外さないと、危険なんだ!!」
悠那が攻撃を防いでくれている内に、和人と俺が、観客にオーグマーを外すように叫ぶも、全員が戦いに集中している状態で、俺達の声が届いていないようだった。
「無駄よ!今まで、イベントにボスモンスターを出現させていたのは、ここでみんなに戦わせるためだもの!」
「なら、どうすれば!?」
「昨日、私と会った場所!旧アインクラッド100層で、ボスモンスターを倒して!黒の剣士!夢幻の戦鬼!」
「「・・・っ!!」」
悠那の必死な言葉・・そして、二つ名を呼ばれたことに俺と和人は一瞬言葉を無くした。
「そうすれば、きっと・・・!今、オーグマーのフルダイブ機能をアンロックするから、椅子に座って!」
「オーグマーにフルダイブ機能が!?」
「オーグマーはナーブギアの機能限定版でしかないもの!さぁ、早く!!」
その言葉と共に、悠那が盾で死神を弾き飛ばした。
「分かった!」「こっちは任せろ!」
悠那の言葉に和人と俺は頷き、そう返した。すると、俺と和人の肩に手が添えられた。
「っ・・・みんな」
振り返ると、俺の肩に手を置いた木綿季、そして、里香、珪子、詩乃、エギルさんが俺達を見ていた。
「僕たちも行くよ!みんなのピンチを見てるだけなんて・・・僕は絶対に嫌だ!」
「・・・分かった」
木綿季がみんなの気持ちを代表して、答えた。その言葉に俺と和人も頷き合い、みんなの力を借りることにした。俺達は席につき、フルダイブの準備に入った。
「ユウキ」
「・・・うん?」
フルダイブする前に、俺は横に座った木綿季に声を掛けた。
「ゴメンな・・・こんなことに巻き込んじまって」
「・・・もう・・・僕は気にしてないよ!」
「・・・ああ。だけど、これからは俺たちの・・・ここにいる全員の命を守るための闘いだ・・・だから、ユウキの力を貸してほしい」
「・・・うん・・・絶対にみんなを守ろう!」
その言葉に、俺は大きく頷き、和人たちと共にあの言葉を叫んだ。
「「「「「「「リンクスタート!」」」」」」」
「ここがアインクラッド第100層・・・」
「・・・通称『紅玉宮』、か」
「まさか2年も経って、ここを見ることになるとはな・・・」
ダイブしてすぐ・・・空から降下しながら、俺たちは建物を見下ろしていた。リズの感慨深そうな言葉に、俺とエギルさんはそう呟いていた。
「うん・・・?」
「なに、あれ・・・?」
キリトとユウキの言葉に、俺たちも隣にいる何かに気付いた時だった。
「っ!?」
ズギュュュン!
「エギル!?」「エギルさん!?」
光が灯った瞬間・・・その目を真っ赤に輝かせたモンスター・・・アインクラッド第100層ボスモンスターがエギルさんに向けて、巨大な剣による奇襲を放った。そして、10本のHPゲージと共にとボスの名前・・・〈アン・インカ―ネイト・オブ・ザ・ラディウス〉が表示された。
「これが!?SAO本来のラスボスか!?」
「行くぞ!」「ああ!」
ボスの一撃をなんとか斧で受け止め、無事だったエギルさんの姿にホッとしつつ、キリトの言葉に、俺たちは剣を抜き、ボスに突っ込んだ。だが、
『KYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!』
「くっ!?」「っ!!」「きゃぁ!?」「ぐぅぅ!!」
エギルさんをもう一本の剣ごと地面へと叩きつけたボスは、背後から七色の複数の光弾は放った。キリトとユウキは体を逸らすことで攻撃を回避し、俺も片手剣で光弾を反らした。だが、シリカとリズが反応しきれず、直撃を受け、壁に叩きつけられた。
「うぉぉぉぉぉ!」「このぉぉぉぉ!」「喰らえぇぇぇ!」
俺達は渾身の一撃をぶつける。だが、光の盾らしきものにより、斬撃を防がれてしまう。隙だらけになった俺たちにボスの反撃が飛んできた。
「がはぁ!?」「きゃぁぁぁ!?」「うううぅぅ!?」
神通力により、一気に吹き飛ばされた俺たちは、柱のオブジェクトを破壊し、壁に激突した。
「くぅ・・・ユウキ、大丈夫か!?」
「う、うん!」
キリトに追撃を掛けようとするボスにシノンの援護射撃がヒットした。それにより、ヘイトがシノンに向いたところで、俺たちは反撃に移った。まずはエギルさんが仕掛けた。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
渾身の一撃は、先程と同じように光の壁に遮られてしまった。だが、
『GYAAA!!』
「っ!?スイッチ!」
ボスの反撃を斧で反らし、エギルさんが叫んだ。それに、俺とキリトは続く。
「ぬぉぉぉぉぉぉぉ!!!」「しゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
俺達の一撃も防がれるが・・・俺達の攻撃は終わらない。
「「スイッチ!!!」」
「でぇぇぇぇぇい!」「はぁぁぁぁぁ!」「でやぁぁぁぁぁ!」
『KYAAAAAAAA!?』
ユウキ、リズ、シリカの合体攻撃に遂に光の壁が砕け、ボスに明確なダメージが入った。武器を落とし、体勢を崩したボスに、俺たちは体制を整え、追撃の準備に入った。
その時・・・再びボスの目が輝き、地面から木が生え始め、一本の巨大な樹を形成した。そして、その樹から一滴の水が、ボスの水晶に落ちた・・・次の瞬間、
「うそ・・・」
「全回復、だと・・・!?」
ユウキと俺はその光景を見て、言葉を無くしてしまっていた。一本目の終わりまで減っていたHPバーが全快したのだ。
「・・・くそ!?」
「そんな・・・!?」
「こんなの、倒せっこないわよ・・・!」
まさかの事態に、キリトたちも呆然としてしまっていた。だが、そんなことなどお構いなしに、ボスは容赦なく俺たちに攻撃してきた。
『GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!』
先程の樹木を操り、範囲攻撃を放ってきたのだ。それを回避することができず、
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
なす術もなく、俺達は大きく吹き飛ばされてしまった。
〈Other View〉
現実世界・・・イベントボスに蹂躙されるプレイヤーたちにより、オーグマーに搭載されたエモーティングカウンターは9000を超え、もう時間がない状況だった。ボスから逃げようとする者も現れる中、明日奈は恐怖から、その場で頭を抱え、動けなくなってしまっていた。そんな明日奈に、悠那が話しかけていた。
「ゴメンね、アスナさん!」
死神の鎌を受け止めながら、話す悠那に明日奈は耳を傾けた。
「あなたが記憶をスキャンされたのは、あなたの記憶の中から、アインクラッドで死んだ私の情報を抽出するためなの!」
「・・・えっ?」
その事実に、思わず驚きの声を漏らす明日奈。悠那の言葉は続いた。
「お父さんは・・・全てのSAO生還者にボスモンスターに殺される恐怖を与えて、一斉に記憶を高出力スキャンしようとしている。それが実行されたら、脳に回復不可能なダメージが残るかもしれない・・・死を招くことも!」
「そ、そんな・・・!?」
それを聞いた明日奈は慌てて、ダイブしている和人からオーグマーを取り外そうとするも・・・
『ママ!』
「・・・!ユイちゃん・・・」
ユイの制止に思わず、手が止まった。
(これを外せば、キリト君は・・・無関係なユウキだって助かる。でも・・・キリト君やユウキ、フォン君たちが助けようとしている人達を助けられなくなる・・・!)
そう思いとどまった時、明日奈の記憶に・・・ある光景がフラッシュバックした。
黒と氷晶の剣を持ち、二刀流で攻撃を受け止める・・・キリトの後ろ姿だった。
それを思い出した時、明日奈の気持ちは決まった。
「悠那さん・・・昔のあなたがSAOで命を落としたなら、それは圏外に出たから・・・モンスターと戦って、クリアを目指そうとしたからよ!」
「!?」
明日奈の言葉に、悠那が驚く。先ほどの怯えた姿と違い、明日奈の目には、確かな光が宿っていた。
「私ももう一度戦う!ユイちゃん、キリト君たちのところへ行ってくるね!」
『はい、ママ。後で私も行きます!』
和人の手を握り、和人・・・そして、蓮越しに木綿季を見た明日奈。
(キリト君、ユウキ・・・今行くね!)すぅぅ・・・・・リンクスタート!」
その言葉と共に、明日奈は仲間たちが戦う世界へとダイブした。
〈Other View End〉
『KYAAAAAAAAAAAAAAAA!』
叫び声と共に、シノン目掛けて、ボスが目から光線を放った。
「止めてぇ!?」
悲痛な叫びを上げ、シリカがボスの注意を引き付けようと攻撃を仕掛けるが、
『GYAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!』
「きゃあ!?あ、あああぁぁ!?」
神通力で地面を浮かせ、操った壁でシリカを潰そうとするボス。それを阻止するため、俺とキリトはボスに突っ込んだ。
「シリカ!」「これ以上は・・・!」
『KYUAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!』
「がぁ!?」「ごふぅ!?」
「キリト!」「シリカ!?」「フォン!」
ボスに掴まれ、体を壁に叩きつけられた俺達は一瞬呼吸が止まった。ユウキたちも援護に入ろうしていたが、樹木で拘束され、動けない状態だった。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
「逃げろぉぉぉ!?」
「くそぉ・・・!?」「っ・・・!?(ここまでか!?)」
シリカの悲痛な叫びとエギルさんの叫びが聞こえるも、俺とキリトに、ボスの光線が放たれようとしていた。完全に動けない俺たちが覚悟した時だった。
天から、閃光の一撃がボスに放たれた。
突然のことに何が起きたか、分からず・・・俺達は驚くしかなかった。目を攻撃され、体勢を崩したボス・・・煙が晴れ、そこに立っていたのは・・・
「あっ・・・!アスナさん!!!」
戦士の目をし、細剣を構えたアスナだった。アスナの攻撃で、拘束から解放されたシリカがその名を呼んだ。
「シリカちゃーん!!!」
落下しつつあるシリカを受け止め、アスナは樹木へと着地した。俺と和人も拘束から抜け出し、アスナの元へと向かった。アスナの元に、全員が集結した。
「アスナぁ!!」
「きゃ!ユ、ユウキ・・・!?」
そのまま、ユウキがアスナへと抱き着いていた。
「アスナ!アスナぁ!」
「・・・ゴメンね、ユウキ。ユウキにも心配かけちゃって・・・」
「ううん・・・もう大丈夫なの?」
「うん・・・!ゴメンね、遅くなって」
泣きながら、心配するユウキに、アスナは優しく声を掛けた。
「いけるのか、アスナ?」
「・・・・・うん。私も戦う・・・戦えるよ、キリト君!」
「・・・ああ」
キリトの問いかけに、はっきりと答えるアスナ。その時、
ズガァン!ズガァン!
シノンの射撃音に、ボスへと意識を戻す俺達、片目を失いながらも、シノンの弾丸をビクともしないボスが再び俺たちに接近してきた。それに反撃するため、俺たちが体制を立て直した時、俺たちの背後から突風が吹き、そのままボスを大規模な暴風が襲った。それは、大変見覚えのある物だった。
「今のは・・・タイラント・ハリケーン!?」
「まさか・・・!」
ALOでよく見かけた風属性の上級魔法〈タイラント・ハリケーン〉に、俺たちは魔法が飛んできた後ろを振り返った。そこから現れたのは、
「お兄ちゃ~ん!おまたせ~!」
「パパ!ママ!皆さんを呼んできました!」
ALOの風妖精アバター姿のリーファが姿を現した。そして、その胸元からユイちゃんが飛び出した。その言葉の後に、次々とプレイヤーたちが姿を現した。
「楽しんでるな!」
「遊びじゃないぞ!」
「みんな、お待たせ―!」
「よーし!VRなら、無敵だぜ!」
「み、みんな・・・!」
「シウネー!スリーピングナイツのみんなまで・・・!」
ユージーン将軍に風妖精・猫妖精族長のサクヤさんにアリシャ・ルーさん、そして、クライン、リーファの友達のレコンに、スリーピングナイツの面々の登場に俺とユウキは驚くしかなかった。それぞれが剣と魔法で攻撃を仕掛け始める中、来てくれたプレイヤーは彼らだけではなかった。
「でっけぇな、オイ!?」
「あ、あいつら・・・」
「GGOの・・・」
GGOのプレイヤー、カウボーイ姿のダインにGGO最強候補の闇風・・・その他2人のプレイヤーが弾幕を展開していた。キリトと俺はまさかの助っ人たちに唖然としていた。
「時間がないぞ!」「畳みかけろ!」
「大丈夫です!これを使ってください!」
サクヤさんとクラインの言葉に、俺たちは再び臨戦態勢を取った。だが、その前にユイちゃんが何かを取り出し、掲げた。それから、光が溢れ、俺たちを包んだ。
その瞬間、俺たちを構成するデータが書き換えられていき、目を開けた時、俺の姿は防具『蒼炎の烈火』と片手剣『アサルト・サヴァイブ』を装備した・・・SAO時代のものになっていた。
キリトたちを見ると、彼らもSAOと同じ姿になっていた。ユウキだけは、ALOの闇妖精アバターの姿だった。
「このSAOサーバーに残っていたセーブデータから、皆さんの分をロードしました!ユウキさんとシノンさんの分はオマケです!」
ユイちゃんのチートすぎる能力に内心苦笑いしながらも、俺とユウキは目を合わせ、頷いた。
そして、キリトの方を見ると、向こうも準備万端のようだった。互いに頷き、剣を抜いた。
「・・よし、みんなやろう!!!」
「「「「「「おう!」」」」」」
キリトの掛け声に、俺たちはボスへと猛攻を仕掛けた。まずは、シノンが仕掛けた。GGO姿のアバターと共に構成されたヘカートを撃ちまくる。ヘイトがシノンに集まったところで、アスナとユウキが攻勢に出る。
「はぁぁぁぁぁぁ!」「でやぁぁぁぁぁぁぁ!」
細剣単発ソードスキル〈リニア―〉と片手剣重単発ソードスキル〈ヴォーパル・ストライク〉でそのHPを大きく削る。そして、俺とキリトが続く。
「だぁりゃぁ!」「うおぉぉぉ!」
二刀流範囲ソードスキル〈エンド・リボルバー〉と幻想剣《片手剣》重2連撃ソードスキル〈ブレイス・ホイール〉で追撃を与えたところで、ALOプレイヤーたちが高速飛行からのラッシュを仕掛けた。
だが、ボスも黙ったままやられてくれるわけもなく、ユージーン将軍とクラインを剣で押しつぶし、樹木を操り、リーファを襲った。だが、飛行能力が高いリーファはそれを全て躱しきった。
地上メンバーへの攻撃もシウネーたちを始めとしたメンバーが魔法でカバーしてくれていた。そして、GGOメンバーへボスが攻撃を仕掛け、隙ができた瞬間、
「行くわよ、シリカ!」「はい、リズさん!」
「おらぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ピナの支援バフを受けたリズとシリカが、GGOメンバーを攻撃した際に現れた足場を飛び移り、ボスの顔面に片手棍と短剣の一撃をお見舞いした。更に、その背後から飛び出したエギルさんの斧の振り落としがボスの頭にクリティカルヒットした。
大きくダメージを負ったボスは、先程と同じように巨大な樹を召喚し、回復を行おうとしていた。だが、
「あれを防いで!」
アスナの号令とともに、ピナのブレス、ALO陣の最上級魔法群、GGOメンバーの一斉砲火がボスを襲い、回復を阻害する。
『KYUUUUUAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!?!?』
「行くぞ、アスナ!」「一気に決めるぞ、ユウキ!」
「うん!」「任せて!」
キリトと俺、アスナとユウキがその隙を突き、一気に勝負に出た。体勢を立て直したボスは、再度樹木を呼び出し、俺たちを迎撃した。俺たちを援護しようと、リーファとシノンが雷魔法と弾丸を放つが、
「っ!?逃した・・・!」
全てを防ぎきれず、樹木が一本残ってしまった。だが、それを俺とキリトが切り裂き、アスナとユウキの前に出た。俺たちにボスの剣が振るわれたが、俺とキリトは互いの武器でその一撃を反らした。
「「スイッチ!」」
「ユウキ、合わせて!」
「うん!いくよ、姉ちゃん!」
俺達の合図に、アスナは高く跳躍し、ユウキは翅を展開し、ボスの背後を取った。
(今の私にできることを!)(今の僕にできることを!)
アスナとユウキ、それぞれが剣にライトエフェクトを発動させ、放つのは、11連撃OSS〈マザーズ・ロザリオ〉。二つの十字架が重なり、ボスに斬撃の後を残していく。
「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」
11連撃目が決まった瞬間、ボスの体が爆発し、大きく体が仰け反った。そして、
「「っ!!!」」
俺は『高速換装』を使い、装備を両手剣『エンプレス・ジェイル』に持ち変える。そして、キリトと共に、それぞれの剣にライトエフェクトを発動させる。
「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」」
二刀流16連撃ソードスキル〈スターバースト・ストリーム〉をキリトが発動させ、高速の剣戟を放つ横で、俺は幻想剣《両手剣》8連撃ソードスキル〈クアンタム・カウント〉でその体に確かなダメージを与えていく。そして、スキルチェインにより、硬直無視で次なるソードスキルを発動させる。8連撃目の切り上げにより、ボスの顔面前まで、飛び上がる。
「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」」
『KYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!?!?!?!?!?』
キリトの最後の一撃と、俺の幻想剣《両手剣》超重単発ソードスキル〈エンド・オブ・フォーチュン〉の一撃が、ボスの顔を同時に切り裂き、そのHPを完全に消滅させた。断末魔と共に、ボスの体が大爆発を起こし、光の塵へと姿を変えた。
「「「「「「「やったーーーーー!!!!」」」」」」
勝利を確信し、全員が勝鬨を上げる。その時、地面の紋章が光り出し、ボスの体を構成していた光の粒子が何かを形成していった。
それは俺とキリトの前に降りてくると、二つに分かれ、巨大な剣がそれぞれの前に出現した。キリトの銀色を主体とした大剣に対し、俺のは透き通った薄い蒼の刀身に、柄の部分が金色で配色された大剣だった。すると、
『これで、完全クリアだな・・・キリト君、フォン君』
「その声は・・・」
「茅場・・・?」
突如聞こえてきた声にキリトと俺は奴の声だと気付いた。俺たちの反応と奴の声にみんなも驚いていた。
『しかし、君たちにはまだやることがあるだろう?』
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
茅場の言葉に、俺とキリトはアインコンタクトで頷く。すると、俺たちの意志を読み取ったのか、大剣が輝きだし・・・
〈Other View〉
「きゃぁぁ!?」
現実世界・・・死神の猛攻を防いでいた悠那だったが、限界がきてしまい、遂に壁へと吹き飛ばされてしまった。生き残ったプレイヤーたちも、複数のボスに囲まれてしまい、絶体絶命の状況に追い込まれてしまっていた。そして、死神が悠那に止めを刺そうと急接近し、鎌を振り上げた。
「ひぃ!?」
悠那は目を瞑った・・・だが、いつまでたっても衝撃が訪れないでいた。
カラン・・・バァン!!!
「・・・えっ?」
鎌が落ちた音と独特の消滅音に悠那が目を開けると・・・そこには驚きの光景があった。
一撃で消滅した死神の姿と、大剣を構えた『黒の剣士』と『夢幻の戦鬼』・・・英雄と呼ばれた、SAO時代の姿のキリトとフォンの姿がそこにあった。
「はっ・・・!」
慌てて、悠那が和人たちがいるであろう方向を見ると、和人と蓮の体は確かにそこにはあった。つまり、悠那が見ている今の二人は・・・悠那がその事実に驚いていると、キリトとフォンのランキングが1位に変動していた。代わりに、悠那のランキングが3位に下がっていた。
「「・・・・・・・・・(コクッ)」」
「・・・!(コクッ!)」
二人の金色の瞳からのアイコンタクトを受け取った悠那は頷き返し、ステージの中央へと向かった。エモーティングカウンターが9500を超え、タブレットを見ていた重村教授もその異変に気付いた。
「やさしい言葉を・・・・・・」
ライトアップと共に、悠那が謳い始めた。その音色は、どこまでも響き、混沌としていた戦場の空気を変えていった。悠那の歌に、プレイヤーたちも鼓舞され、一気に巻き返し始めた。そして、
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
無言で大剣を振るうキリトの一撃によって、次々とボスが消滅していく。悠那へと標的を変えたボスたちも、その背中を守るように立ちはだかったフォンの一撃によって、次々と消滅していく。そして、
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
悠那の歌の終わりと共に、キリトとフォンの攻撃により、全てのボスが消滅させられた。それを確認した、キリトとフォンは剣を背中にしまい、その姿を消した。そして、和人たちの意識は現実世界へと戻って来たのであった。
〈Other View End〉
VR世界から戻って来た俺達は、悠那の元へと駆け寄っていた。
「最高の歌だったよ、悠那」
「君の歌が、みんなを助けたんだ。俺は君のその勇気を尊敬するよ」
「・・・ありがとう」
和人と俺の言葉に悠那が穏やかな笑みでお礼を言った。すると、彼女の体が光り始めた。その様子に木綿季が不安そうに声を掛けた。
「ユ、ユナちゃん・・・?」
「私の本体データは、アインクラッドの100層ボスのリソースデータで作られていたの。その言語化エンジンを使って、私は動いていた。でも、ボスが倒され、その保存データは初期化される・・・だから、みんなとはこれでお別れ」
「・・・そんな!」「・・・っ!?」
悠那の言葉に和人と俺は、彼女が自分を犠牲にしてでも、ここにいる全員を助けようとした事実に、言葉を無くした。そして、彼女の覚悟とその思いを受け取った。
「とっても楽しかったよ!大勢の前で歌を歌う、って夢が叶ったから、これ以上の幸せはないわ」
その言葉と共に、悠那は明日奈と、その事実に涙する木綿季に近づいた。
「ううう!ユ、ユナ、ちゃん・・・!!」
「私のために泣いてくれてありがとう。私の歌を好きになってくれて、嬉しかったよ。これからも、私の歌・・・聞き続けてくれるかな?」
「・・・うん!絶対に聞く!ユナちゃんのこと、絶対に忘れないから!!」
「・・・うん」
約束を交わした木綿季の姿に、悠那は嬉しそうに微笑んだ。そして、明日奈の方を向き、
「あなたから預かった物を返すね」
そう言って、悠那の手に光の玉が現れた。
「記憶障害の原因になっていたのは、死の恐怖・・・でも、あなたはそれを乗り越え、戦った。だから、きっと思い出せるよ」
明日奈のオーグマーに手を重ね、悠那が光を明日奈へと戻した。そして、悠那の体が一段と輝き、光の粒子となって、空へと昇華していった。
「蓮・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
涙を堪えている木綿季の肩を無言で抱き寄せ、その光を見守っていた俺は、彼女と出会った時のことを思い出していた。SAO時代・・・俺は、階段で歌う彼女の姿を見たことがあったのだ。
こうして、ARを舞台にした、悲しい事件は終わりを告げた。
このシーンだけで、SAO劇場版を見た価値あったな・・・
それが当時見た時の感想でした!
というか、久々のスキルチェイン登場回です。
ちなみに、ユウキとアスナが放った〈マザーズ・ロザリオ〉、フォンとキリトが同時に放った〈幻想剣〉・〈二刀流〉ソードスキルの組み合わせは、それぞれ〈マザーズ・ロザリオ:オーバーラップ〉、〈星と幻想の輪舞(ロンド)〉という合体技名があります。その内、短編でそんなお話もできたらいいなと思ってます。
次回はフォンとシノンの短編になります
次回更新 27日0時予定