ソードアート・オンライン~夢幻の戦鬼~   作:wing//

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今作ヒロイン初登場・・・再登場までまた時間空きますが、ご容赦ください

あと、オリ主大暴れ回のオリジナルエピソードになります

それでは、お楽しみください

※プロットの時の削除しないといけない所が色々と残ってたので、修正しました



第6話 「幻想剣」

「はぁ……」

「……オイオイ、食事中にため息なんかついてたら、幸せが逃げるぞ……」

「アルゴさん……性格悪いですよ。分かってて言ってるくせに……」

「ニャハハ……この記事のことか?」

 

54層の町『フラスメント』のレストランで俺はアルゴさんと食事を取っていた。俺の言葉にアルゴさんは問題のスクラップ記事をオブジェクト化した。そこには、

 

『血盟騎士団の副団長敗北!相手はフィールドボスを倒した夢幻の戦鬼!』

『夢幻の戦鬼、最強のウワサ!血盟騎士団団長とどちらが強いのか!?』

 

問題となった記事を見ながら、俺は再び頭をガクッと下げた。どうしてこんな記事が書かれたのか……話は少し前まで遡る。

 

 

 

56層『バニの町』で俺はフィールボス作戦会議に参加していた。その時、アスナから驚きの提案が挙げられた。

「……副団長、冗談を言っているのか……?」

「いいえ、本気です。ボスがNPCを襲っている間に一気に攻撃し、ボスを撃破します」

 

俺は冷たい声でアスナに聞いたが、やはりアスナは本気のようだ。

 

「待ってくれ!NPCはどうなる!この村には、大勢のNPCがいるんだぞ!」

「……それが何か。たくさんいるのなら、その分、ボスの注意を引くことができるでしょう」

 

キリトの抗議もアスナは冷徹な態度で返した。本当に、アスナは変わってしまったのだな。

 

「なんだと!?襲われたNPCはどうなるんだ!」

「そんなの……リポップするので問題はないはずですが?」

「問題だらけだ……NPCだって──―」

「生きている、と……?」

「……(コクッ)」

アスナの言葉にキリトは黙って頷いた。

 

「本作戦の指揮を取っているのは私です。あなたたちは、私の指揮に従ってもらいます。よろしいですね、黒の剣士さん。それと、夢幻の戦鬼さん」

「「…………………………」」

 

アスナはキリトを一瞥してから、俺の方へと視線を向けた。その視線には、かなりの敵意と殺気がこもっていた。俺はアスナから視線をそらし、キリトと目を合わせた。どうやらキリトも同じことを考えているようだった。

 

「そうか、君がそう言うのなら……」

キリトはそう言うと、テーブルから離れ、入口へと向かった。

 

「俺たちはこの作戦、抜けさせてもらう」

「「「「「!!!???」」」」」

 

俺もキリトと合流し、アスナに向かってそう言い切った。その発言にアスナだけでなく、会場にいた全員が驚いた。

 

「な、なにを勝手なことを……!?」

「……NPCだろうとあいつらだって、今、この世界で生きているんだ。俺は、そいつらの命を犠牲にするような戦いはしたくない」

「それに……例えそれでボスを倒せたとしても……そんなのは人の論理から外れた行動だ。それこそ、オレンジギルドの連中となにも変わらないんじゃないのか?」

「……………………………………」

 

キリトと俺の言葉にアスナは黙ったまま、俺たちを睨みつけていた。俺たちはその視線を無視し、外へと出た……出てから数歩でキリトがコミュ障の反動でふらついたのは余談だ。

 

それから数十分後……

俺とキリトは件のフィールドボスに挑んでいた。

流石のキリトも二人だけでの討伐は反対したのだが、俺がある秘密を教えたら、少し考えてから承諾してくれた。この時、キリトはもうすでにアレを習得していたはずである。もしかすれば、そのことを考えていたのかもしれないな。

俺が両手剣でタンクを引き受け、うまく相手の攻撃をいなしていた。二人だけとはいえ、俺たちの攻撃によってボスの体力はどんどんと削られていった。

 

「キリト、スイッチ!」

「ああ!せやぁ!」

 

俺は大剣でボスの両手斧を弾き、キリトが片手剣でボスの懐にソードスキル〈バーチカル・スクエア〉を叩き込んだ。硬直で動けなくなったキリトを、体勢を整えたボスが攻撃しようとしたが……

 

「そらぁ!」

ガキン!

 

俺が放ったソードスキル〈アバランシュ〉がもう一度両手斧を弾いた。ボスはノックバックし、俺も硬直で動けなくなるはずだったのだが……

 

「おらぁ!!!」

 

俺は硬直からすぐさま回復し、続けて両手剣最上位ソードスキル〈カラミティ・ディザスター〉を繰り出した。それがボスに直撃し、ボスの体力がさらに減少した。

 

「今だ、キリト!」

「分かってる!これで……終わりだぁァァ!!!」

 

硬直から回復したキリトは俺の背中を飛び越え、片手剣最上位ソードスキル〈ファントム・レイブ〉を繰り出した。紫の光を纏った六連撃がボスの胸元にヒットし、

 

『グォォォォォ!!!』

 

それにより、HPがゼロとなったボスは断末魔を上げながら、消滅した。

空中には『Congratulations』の文字が浮かんでいた。

 

「はぁ……はぁ……か、勝てたな……」

「そうだな。お疲れ、キリト」

 

息を切らしたキリトにそう言われ、俺も剣を収めながら返した。

 

「……なぁ、フォン……お前のスキルなんだけど……」

「……キリト、悪いが話は後だ。誰か来る」

 

キリトが何かを聞こうとした時、俺は人の気配に気づいた。どうやら、パーティのようだが……

 

「……こ、これは!?」

「……よう。遅かったな……副団長さん」

 

来たのは、アスナと先ほどの会議にいたプレイヤーたちだった。その数は先ほどの半分ほどになっており、エギルやクラインたちの姿もなかった。

 

「悪いが、ボスは俺たちで倒させてもらった」

「…………………………」

 

俺が状況の説明をすると、アスナは黙ったままこちらをにらみ、他のプレイヤーたちは驚いていた。

 

「……何も言うことがないのなら、俺たちはこれで失礼させてもらう。かなり疲れたんでな……行こう、キリト」

「……分かった」

 

キリトの質問が何かなんとなく分かっている俺はどう答えたものか、と考えながらその場を後にしようとした時だった。

 

「待ちなさい!」

「…………なんだ、副団長さん」

 

俺はアスナに呼び止められていた。その眼は以前見たものと同じ、怒りの色がこもっていた。

「私と……デュエルしてください!!!」

 

 

 

第55層グランザム。血盟騎士団のホームがあるこの町のとある広場に俺とアスナは向き合っていた。血盟騎士団によって人払いがなされており、観客は誰一人といなかった。

 

「……久しぶりだな。アスナとこうしてデュエルするのは……」

「余裕ですね……前に一度勝っているからですか。

それとも、ボスを二人で倒した実力ならば、私など相手にならないと思っているんですか……?」

「……本当に、変わってしまったんだな、アスナ……」

 

俺はどこか辛かった。あのアスナがどうしてここまで変わってしまったのか……彼女のことを知っているからこそ、今の彼女を見ていると悲しくなった。

 

「私が勝ったら、今後こちらの指示には必ず従ってもらいます。私が負けたら、二度とあなたには何も言いません」

「…………分かった。それじゃ、始めようか」

 

アスナの提案に頷き、俺は表示されたウインドウを見た。そこにはデュエルの申請が来ており、俺はOKを選択した。

空中に60秒のカウントが表示され、アスナは細剣を抜いていた。俺もウインドウを開き、装備を片手剣『ログ・マルコス』に変更した。この剣はSTRとAGIが高い俺の自慢の一品だ。剣を抜き、青と銀の刀身を一度見つめてから、半身に構えた。

そして、カウントがゼロになった瞬間……

 

「せぇい!」

 

まさしく閃光のスピードでアスナが細剣で突きを繰り出してきた。俺はそれを剣で反らした。

 

「まだまだぁ!!!」

 

そこからは目にも止まらないほどの連撃がアスナから繰り出された。前に戦ったときよりもそのスピードはさらに早くなっていた。だが……

 

「………………………………」

 

俺は黙ったまま、突きを剣で避け、斬撃を躱し、渾身の一撃を剣で弾き、全ての攻撃を無効化した。

 

「はぁ、はぁ……どうして攻撃しないんですか!?」

「………………………………………………」

 

一旦、距離を取ったアスナから俺はそう聞かれた。だが、俺はあえて何も答えなかった。

 

「…………このぉ!」

 

黙ったままの俺の態度に業を煮やしたアスナはソードスキルを発動させた。細剣ソードスキル〈リニア―〉だ。そのスピードは今までの一番の速さだった。だが……

 

「軽いな……」

「なっ……!?」

 

俺は片手剣ソードスキル〈ヴォーパル・ストライク〉でアスナのソードスキルを相殺させた。

そして、俺の一撃によって、アスナの細剣は砕けてしまった。何が起きたのか、一瞬分からなくなったようにアスナは驚いていた。

 

「……俺の勝ちだ。それともまだやるか……?」

「………………………………………………………………」

俺の問いにアスナは何も言わなかった。

 

「……アスナ。今の君の剣には、焦りと……迷いが見えた。そんな剣じゃ、俺や……キリトは倒せないぞ」

「っ……!」

 

……おそらくこの後、キリトとも戦うつもりだったのだろう。俺がそう問いかけると更にアスナは驚いた。

 

「…………アスナ。攻略も確かに大切だがな。もっと、この世界で生きてみたらどうだ?今の君には、もっと視野を広げることが大事だと思う」

「……分かったことを、言わないで…………」

「…………どうしても分からないのなら……キリトにでも聞いてみたらどうだ。あいつは……この世界で必死に生きようとしている。あいつなら、それを教えてくれるんじゃないか?」

「…………………………………………」

「武器を壊してしまってすまない……それじゃあな」

俺はそう言って、アスナを残し、広場を後にした。

 

 

 

「…………はぁ。やっちまった」

「オイオイ、本当に大丈夫カ?」

「……大丈夫です……当時を思い出して、調子に乗った自分に吐き気を覚えるのと、誰かがタイムマシンを開発してくれないかと考えてるくらいですから……」

「……いや、現実逃避にしても酷くないカ?というか、物凄く気にしてるじゃないカ」

「…………言わないでください……おかげで今、周りのプレイヤーから見られる視線が凄いですから」

 

というわけで、俺は今、最前線から離れている。夜にはレベリングも兼ねて、迷宮区には潜っているが……できるだけプレイヤーには見つからないように隠蔽スキル重視の装備をするほどの徹底ぶりだ。今でも、フードを被って、食事をしているくらいだ。

 

「そうか、そうか。そんなフォン坊にお願いしたいことがあるんだけどナ?」

 

俺の姿に苦笑いしながらも、アルゴさんは俺にウィンドウを可視化し、表示した。

顔を上げ、それを見た俺は……

「……これって?」

驚きの声を上げていた。

 

 

 

「これが噂のダンジョンか。本当にあったんだ」

俺は47層のあるダンジョンに来ていた。アルゴさんの依頼……それは最近になって、新たに見つかったこのダンジョン『希零樹の洞窟』を調査してほしいとのことだった。

本来ならば、アルゴさん自身が調査するつもりだったらしいのだが、他に優先してやらなければならないことがあったらしく、そちらへと向かってしまった。どうやら人に会うようだったが……

キリトにも応援を要請したらしいのだが、どうやら何か立て込んでいるらしく、連絡が取れなかったらしい。そこで、俺に白羽の矢が立ったというわけである。

そして、このダンジョンに入ったプレイヤー間ではある噂が流れていた。それは……

 

『妖精に会える』

 

というものだった。何でも光の塊みたいなものがダンジョンでウロウロしているらしい。

モンスターというわけではないらしいが、特段イベントが起こるわけでもないらしく、ほとんどのプレイヤーが収穫無しで切り上げたらしい。

そのため、このダンジョンに挑んだプレイヤーは数少なく、真相を探るために俺に白羽の矢が立ったということである。

 

「敵のレベルや種類は外と変わらないか……だけど、全然姿が見えないな、妖精」

 

時々、エンカウントするモンスターを倒しながら、俺はこのダンジョンを進んでいったのだが……噂の光の妖精とはまったく出会えずの状態だった。

また、おかしなことにこのダンジョンに入ってから花はおろか、植物を一度も見ていないのである。花の街として、知られる『フローリア』としては、おかしなことだった。迷宮区にまで花が咲いていたのに、このダンジョンにだけ咲いていないというのは、違和感しかなかった。そんなことを考えていると、行き止まりに行きあたった。

 

(……行き止まりか?ここまで一本道だったし……宝箱もない。妖精の噂もガゼだったのか?とりあえず、帰って、アルゴさんに報告するか……)

 

俺が辺りを見渡しながら、そんなことを考えている時だった。

 

ガタン!

「なっ……!?」

 

俺の足元がいきなり開いたのだった。これは……罠!?

 

「っ……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

重力を失い、俺はそのまま奈落の底へと落下していった。

 

 

 

「……お……!…………い!!」

「っ……?」

「お・い!……起きなってば!!!」

「っ……!?うわぁ!?」

ゴツン!!!

「「痛ったぁ!?」」

 

声に反応し、目を開けると、視界いっぱいに紫色の光の塊が見え、思わず起き上がろうとして、塊に額をぶつけてしまった。かなり痛かった……

どうやら向こうも同じらしく飛び方がフラフラしていた。

 

「いたたた……もう!急に起き上がるなんて、危ないじゃないか!」

「……ゴ、ゴメン!えーと、君は?」

「……えっ?もしかして、ボクの声……聞こえてる?」

「う、うん……もしかして、君が噂の妖精?」

「…………………………」

 

俺がそう尋ねたのだが、向こうは黙ったままプルプル震えて沈黙していた。

まずい、もしかして何かヤバいフラグを踏んでしまったのか……俺がそんなことを危惧していると、

 

「良かったぁぁ────────!!!!」

「うわぁ!?な、何……?」

「あっ、ゴメン、大声出しちゃって……今まで会った人たちにはボクの声が届いてなかったからさ……嬉しくて。あっ、そうだ。まだ名乗ってなかったね……ボクはユウキ!」

「ユウキ……俺はフォンって言うんだ。よろしく」

「フォン……うん、よろしく!」

「それでユウキ。いくつか聞きたいことがあるだけど、いいかな?」

「うん、なに?」

「……ここはどこ?」

「……ゴメン、ボクも分からないんだ。逆にボクが聞きたいくらいでプレイヤーに話しかけてたんだけど……」

「誰にも声が届かなかったと……」

「コクッ……」

 

頷いたつもりなのだろう、ユウキは静かに上下に動いた。

 

「……おっと、そうだった。HPを回復しかないと……」

「何してるの?」

「体力を回復しておこうと思ってさ。落ちたせいか、かなりHPが減ってて……ゴクッ」

 

HPバーを確認するとレッドの一歩手前だった。慌てて俺はストレージからハイポーションを取り出し、一気に飲み込んだ。少しずつだがHPが回復していった。

 

「あー、確かに凄い音だったもんね」

「……もしかして、俺が落ちてきた音、聞いてたの?」

「うん、それを聞いて、フォンを見つけたんだもん。

えーとね……本棚が一気に倒れたよう音だったよ!」

「そ、そうか……」

 

ユウキの例えに思わず、苦笑いしてしまう。やけに具体的で痛そうな例えだなと思った。

 

「かなり下まで落ちちまったか……出口もなさそうだな」

「うん。ボクも今日来た時はここに最初からいてさ……初めて来た場所で、どうしようかと思ってたんだ」

「えっ、そうなのか?うーん、それじゃ、あの落とし穴はクエストのトリガー……でも条件は……そもそもどうしてこんな……?」

「……フォン?」

「あっ、ゴメン。ちょっと考え事を……」

 

ついつい思考の海に入ってしまっていたが、ユウキの言葉に我に戻る。

とりあえず、今は一度町に戻ったほうがいいだろう。

そう思い、ストレージから今度は転移結晶を取り出した。

 

「転移、フローリア!……転移!」

「何も起きないけど……?」

「……まさか……結晶無効化エリアなのか?」

 

俺の行動にユウキが不思議そうに尋ねてきた。どうやらここでは結晶アイテムが使えないようだ。月夜の黒猫団事件が俺の頭をよぎった。

 

「参ったな。ユウキもここは初めてってことは、どんな場所かも分からないだよな?」

「う、うん……」

「そうか……ともかく、今は進んでみるしかないか。ここから出るにはそれしかないか」

俺は先を指さしながら言った。今はともかく進んでみるしかないだろう。

 

 

 

幸いにもモンスターのレベルや種類は落ちる前とまったく同じだった。なので、苦戦することもなく進むことができた。その道中……

「フォンって強いんだね!」

「そんなことないよ、俺なんてまだまだだよ」

 

一本道を進みながら、俺はユウキにそんなことを言われていた。

 

「だってさ、こうモンスターの動きをババっと避けたと思ったら、スバババンと倒しちゃうだもん!凄いよ!」

「大袈裟だって……それに俺よりも凄いやつなんてもっといるよ」

「えっ、そうなの!」

「そうそう……例えば、二刀流を使いこなし、絶対に破れないと言われた鉄壁の騎士を倒す奴や、HPが半分以下に減らない伝説の不死身のプレイヤーとかな……」

「へぇぇ……そんな人もいるんだぁ……」

 

ユウキの言葉に俺は、その体を物凄く震わせていた。もちろん笑いを堪えるためである。

思わず、どこぞの黒の剣士Kや腹黒血盟騎士団団長Hのことを言ってしまったが……まぁ、AI相手ならネタバレしても問題ないだろう。

 

「……いいなぁ、ボクも闘ってみたいなぁ」

「いやいや、その体じゃ無理だろう……」

「わ、分かってるよ。でも、いつも来るたびにこの体になっちゃうんだよね」

「そうなのか……ユウキには他の姿があるのか?」

「えっ、……う、うん……と、ともかくそんな人たちがいるなんて、楽しそうだね……」

「ど、どうだろうな……そこは人によるような気がする……」

 

何故か、焦ったような態度のユウキの言葉に俺は、思わずここに来ることになったきっかけのアスナとの事件を思い出し、思わず肩を落としてしまった。その姿にユウキは首を傾げる……かのように、俺の周りをフラフラしていた。

 

 

 

そして……

 

「これって……?」

「ボス部屋か……」

 

俺たちは大きな扉にたどりついた。迷宮区のものとはデザインや大きさは異なるが、その厳格さから、ボスがいることは間違いなかった。

 

「……ボ、ボスって……この先にいるの?」

「……ああ。回復ポーション系のアイテムは……多くは無いが、なんとかなるか」

「もしかして、戦うの?」

「……ここから出るには、多分ここにいるボスを倒さないと駄目だと思う……

だけど、ここでは結晶系アイテムが使えない。それに相手のレベルも決して低くはないと思う……」

「…………………………」

「とりあえず、ユウキはここにいて。ボスが襲ってくる可能性は低いけど、絶対ってわけじゃないから「……嫌だ」えっ?」

「嫌だ!ボクも行く!」

 

まさかの即否定に、俺は思わず聞き返してしまっていた。

 

「……だ、駄目だ!いいか、ボス戦は遊びじゃないんだ!いくら君が妖精だからって、もしボスの攻撃を食らったりしたら!」

「でも、だからって、フォン一人に戦わしたくない!ボクだってフォンの役に立ちたい!」

 

俺は頑固として、反対するも、ユウキも声を強め、反論してきた。そのまま、無言のにらみ合いが続いたが、

 

「…………分かったよ」

「……!」

「但し、絶対に危ないことはしないこと、いいね?」

「うん。ボク、頑張るよ!」 

 

俺が折れた……どうにも彼女が折れないような気がしたのだ。俺の言葉に、むしろユウキは気合を入れていた。ちょっと心配になってきたが、ボスのヘイトをこちらに集めれば、問題ないか。

 

「…………よし!行こう!」

「うん!」

俺はボス部屋の扉を開いた。

 

『グォォォォォォ!』

 

このダンジョンの主であるボスは俺たちを視認すると雄叫びを上げた。ボス名は『ディスペアー・フォレスト・マスター』……直訳で『絶望の森の主』か。

蔓の絡まった鎧を来た戦士型モンスターで、武器は黒い花をデザインとした片手剣のようだ。

このボスは俺一人での戦いだ。今までにない激闘になることに、俺は息を呑んだ。

「行くぞ!」

俺は『ログ・マルコス』を強く握り直し、ボスに斬りかかった。

 

 

 

「せぇいやぁ!」

戦闘を開始してから、かなり時間が経った。

ボスの体力はようやく半分を削ったところだった。幸いにも、ボスの攻撃は単調で、HPゲージも3本、これといった特殊能力もないようで苦戦せずに戦えていた。

ポーションを2本消費したが、まだ6本残っており、苦戦すると考えた俺の予想は外れていた。

 

「はぁぁぁ!」

「フォン、ナイス!」

 

ボスの攻撃を躱し、俺はボスに『ヴォーパル・ストライク』を叩き込み、ボスを後方に吹き飛ばした。

ユウキも俺が押していると思い、応援してくれていた。その時だった。

 

「っ!……なんだ?」

「これは、花?」

 

部屋が光り始めたと思ったら、部屋の壁から花が咲き始めたのだ。そして、変化は部屋だけだはなかった。

 

『グォォォォォォ!!!!!』

パキン!

 

「っ……何!?」

「うわぁ……なに、あれ……?」

 

ボスの鎧が外れ、中から人の形をした蔦の化物が現れたのだ。だが、変化はそれだけではなかった。

 

「あ、あれは……まさか!?」

 

ボスの根元から剣が精製されたのだ。ボスが持っている剣とは異なり、色は一緒だが、デザインが木をモチーフにしたものだった。俺が驚いたのは。奴がそれを逆の手で装備したことだった。

そう、奴は二刀流で構えたのだった。

 

(くっ……どうりでボスの割にはステータス的に弱すぎると思った!これが奴の本気なのか!)

 

俺は自分の考えが甘かったことを悟った。俺がそんなことを後悔しているとボスが一気に俺との距離を詰めてきていた。

 

『グォォォォォッォ!』

「くっ……ぐっ……!?」

 

容赦のない二刀流の連撃が俺を襲った。なんとか致命傷は避けるが、あまりの手数の多さに俺も少しずつダメージを受けていく。

 

(一旦、距離を取らないと……!?)

俺が奴の連撃をなんとかいなし、後方に大きく飛んだ時だった。

 

『ボォォォ!』

ガシッ!

「っ……これは!?」

 

俺は体勢を整えようとした時だった。急に足が動かなくなったのだ。見ると、足が蔦で絡まっていたのだった。

 

「フォン、危ない!?」

「はっ……!」

 

ユウキの呼び声で、ボスがソードスキルを発動させ、俺に攻撃をしかけていたことに気付いた。俺も攻撃を弾くために片手剣ソードスキル〈スラント〉を発動させたのだが……

 

『ブォォォォォ!』

「なっ……がはぁ!」

 

ボスのソードスキルは二刀流ソードスキルは時間差での突進技だった。俺は片方の一撃は反らしたが、片方の剣の直撃を食らった。その一撃は先ほどのものとはうって違って、強力なものだった。

その勢いで蔦はちぎれ、俺は壁に叩きつけられた。HPはレッドに達していた。

 

『グォォォォォ!!!』

(ここまでか……!)

 

迫るボスを見ながら、俺は覚悟を決めると同時にどこかホッとしていた。

もしかすれば、このまま元の世界に戻れるかもしれない。目が覚めたら、自分がいた世界かもしれない。このままHPがゼロになれば……もうこの世界からサヨナラできるのではできるかもしれない。

そう思うと、なぜか恐怖はなかった。

俺が覚悟して目を瞑った時だった。

 

「ええぇい!」

『グオォォォ!?』

 

少女の声とボスの叫びに俺は驚き、目を開いた。そこには、ユウキがその小さな体でボスに体当たりしていた。俺はその光景に目を大きくして驚いた。

 

「ユ、ウキ……?」

「この!この!こっちだ、バケモン!」

 

ヘイトをユウキに移したボスはその剣でユウキを切ろうとするも、小さな体のユウキを捉えきることができない状態だった。

 

『ブォォォォォォォ!』

「へへっ!当たらないよ!フォン、今の内に体勢を立て直して!」

「っ、ユウキ、危ない!?」

 

ボスを翻弄するユウキ。だが、俺はボスがソードスキルを発動させようとしているのを見て、叫んだ。

 

『ウォォォォォォ!!!』

「えっ、キャァァ!」

 

ボスの範囲ソードスキルが発動した。ユウキはなんとか斬撃自体は回避できたのだが、風圧によって吹き飛ばされてしまい、壁に叩きつけられた。そのまま、地面へと落ちた。

 

「ううっ…………!」

 

ダメージが大きすぎたのか、ユウキは飛び上がれないでいた。

そして、ボスはユウキにとどめを刺そうと近づこうとしていた。

 

「……止めろ……!」

俺は武器を強く握り……

 

「止めろ……!」

先ほど考えていたことなど頭から抜け……

 

「止めろ……止めろぉ!!!」

俺は一気に駆けだしていた。ユウキを死なせたくない……その一心で俺はユウキとボスの間に割って入った。

『グオォォォォォォォ!!!』

「させるかよぉぉぉぉ!」

 

ボスはソードスキルを発動させ、俺もそれを迎え討つためにソードスキルを発動させた。

ガキン、ガキン、ガキン、ガキン!

それぞれの剣がぶつかり、金属音が響いた。奴のソードスキルは4連撃で終わったが、俺のソードスキルはまだ続いた。

 

「はぁぁぁぁ!」

『ブォォォォ!?』

 

奴のソードスキルを斜め十字、水平切り、垂直切りの連撃で相殺したあとに、俺は奴の両肩、両太ももにあたる部分に高速の4連突きを繰り出した。その連撃にボスは思わず大きく後退した。

 

「ハァ……ハァ……ごくっごくっ!はぁぁ……!」

 

俺は各種回復ポーションを一気に飲み、空になった器を投げ捨てた。

 

「フォ、フォン……?」

「……死なせない……!」

「えっ……」

「君は、俺が必ず守って見せる!」

 

俺はユウキにそう言うと、ウィンドウを開き、バトルスキル……「高速換装」を選択した。

スキルが発動すると、俺の装備が登録していたものに全て変わった。俺の自慢であり最高傑作の防具、『蒼炎の烈火』(と俺は呼んでいる)。青を基調に黒と緑のアクセントが色の鎧、だが決して重くなく、そして丈夫。

そして、この装備に適している片手剣『アサルト・サヴァイブ』を背中から抜き放った。

 

『グォォォォ!』

「……来い!」

 

ボスは先ほどの一撃に怒ったらしく、一気に距離を詰め、攻撃を仕掛けてきた。奴の剣は光を帯び、ソードスキルを発動させようとしていた。

 

『グォォォォォォォォ!!!』

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

俺もソードスキルを発動させ、奴との距離を詰めた。そして、

ガキン!

またしても金属音が響いた。

 

「うぉぉぉぉぉ!」

 

俺は先ほど放った幻想剣《片手剣》8連撃ソードスキル〈クロス・バレット〉を発動させ、奴の連撃を相殺した。だが、奴のソードスキルはまだ続いた。

 

「なら……!!」

 

だが、俺はスキル後の硬直を無視し、次なるソードスキルを発動させた。

 

『剣技連撃(スキルチェイン)』……ソードスキルを連続発動するシステム外ソードスキル……俺はこの技術をそう呼んでいた。

 

そのまま俺は更なるスキルを発動させた。

幻想剣《片手剣》10連撃ソードスキル〈ドロップ・アウト・レイン〉、十字切り、肩、足、腕と舞うように切り、最後に回転切りで最後の二撃を相手に食らわせる、高速連撃技だ。8連撃目で奴の攻撃を相殺した俺は、最後の二撃を奴に食らわせた。

 

『ブォォォォォォ!?』

「これで……終わりだぁ!」

 

そして、俺は止めに……幻想剣《片手剣》最上位ソードスキル〈ファントム・スイープ〉を放った。片手剣に淡い蒼色の光が輝き、そこからオーラが放たれた。

 

「デヤャャァァァァ!」

 

袈裟切り、逆袈裟切り、兜割りの3連撃のあとに、高速の3弾突きを繰り出し、溜をつくり大きく回転切りを繰り出した。それら一撃一撃すべてにオーラが纏わり、刀身も普段の5割増しになっていた。その一撃はボスを豪快に刻んだ。そして……

 

『グ、グ、グォォォォォォ…………!?』

 

ボスはポリゴンとなって、その姿を消し、剣たちも主人を追う様にポリゴンとなって消滅した。

 

「……やっ、た…………?」

 

俺はボスが消滅したことを確認し、力が抜けていくのを感じた。持っている剣を落とし、その場に崩れ落ちた。

 

「フ、フォン……!」

「……ゴメン、ちょっと力が抜けて……」

「うう……ううう!」

 

ユウキがフラフラとだが、こっちに飛んできた。俺は大丈夫であることを告げたが……ユウキは泣き声を出していた。

 

「よ、良かった……良かったよ!

フ、フォンが死ぬんじゃないかと思って……!」

「……ゴメン、心配かけて……それと、あの時は助けてくれて、ありがとう……」

「ううん……ボクの方こそフォンに迷惑かけちゃって……」

「そんなことないよ……俺がこうして、生きてるのもユウキのおかげだよ」

「…………ホント?」

「ああ」

「そっか……良かった……!」

 

俺の言葉にどうやらユウキも少し元気を取り戻したみたいだ。表情は分からないが、おそらく少しだけ笑ってくれているのだろう。

それから少し経って、落ち着いたところで……

 

「……さて、それじゃそろそろここから出ようか」

「うん!」

 

装備を元に戻し、俺とユウキはボスを倒したあとに出現したワープポイントに近づいた。

 

「これで元の場所に戻れるの?」

「多分ね」

「……ねぇ、フォン」

「うん、何?」

 

しんみりしたような声のユウキに呼ばれ、俺はユウキの方へと振り返った。

 

「フォンは……帰っちゃうんだよね?」

「……そうだな、流石に一度は街に戻らないといけないしな」

「そっか……あのさ、また会えるかな?」

「…………会えるよ、絶対。というか、会いに来るよ……ユウキに紹介したい仲間もいるしな!」

「ホント!もしかして、二刀流の剣士や不死身プレイヤーも!?」

「あ、ああ……片方は……」

 

ユウキの言葉に俺は思わず苦笑いで頷いた。そして、そのまま、ワープポイントへと入った。

 

「それじゃ、ユウキ、またな」

「うん、またね、フォン!」

そして、俺の体が光に包まれ、転移された。

 

 

 

「うわぁ!よ、良かった!無事だったんだナ!」

「あ、アルゴさん!ここは、ダンジョンの入り口……!そうか、帰ってこれたのか」

光が明けると、目の前にアルゴさんが立っていた。どうやら無事に出られたようだ。

 

「心配したゾ!あれからまったく連絡がとれないし、フレンドリストでも追跡できなくなってたんだゾ……!」

「すいません、ちょっとしたトラップにかかりまして……おかげでボス級のモンスターとも戦う羽目になりまして……」

「ホウ、それは気になる情報ダナ」

「ただ……その話は後日でいいですか?

流石の俺も限界で……」

 

アルゴさんは興味深そうにしていたが、俺の疲労も限界寸前だったので、アルゴさんにそう伝えた。

 

「……そうだな。なら、また後日、話を聞かせてもらうのでいいカ?」

「すみません、お願いします。それでは失礼します」

 

そう言って、俺はアルゴさんと別れ、町へと転移した。そのまま宿屋に向かったのだが、本当に体力の限界だったので、俺はそのまま部屋に倒れこむように入り、ベッド入った途端、意識を手放した。

 

 

 

早朝、俺が目を覚ましたのは、アルゴさんからのメッセージだった。どうやらあのダンジョンのことらしく、早急に話がしたいとのことで、泊っている宿のカフェで会うことになった。

 

「悪いナ、こんなに早くに……」

「いえ、しっかり休めたので……それであのダンジョンがどうしたんですか?」

「………………………………」

 

急ぎの話だと聞き、何事だと思い、質問したが、アルゴさんにしては珍しく口ごもっていた。

 

「……落ち着いて聞けよ。あのダンジョンが消滅した」

「……なんですって?」

 

いつもの口癖を止め、真面目状態のアルゴさんの報告に俺の眠気は完全に吹っ飛んだ。

 

「俺っちもこんなことは初めてだ……まさかダンジョンそのものが消滅したんだからな」

「………………………………」

 

その言葉に俺はどこか納得していた。

そもそもあのダンジョンはどこかがおかしいかったのだ。極めつけはボスが使ってきた二刀流スキルだ。

なぜ、ボスがユニークスキルを使ってきたのか……どうしてもそれだけが分からなかったのだ。

「…………フォン坊、何か知ってるのか?」

「…………はっきりとは断定できません。

ですが、あのダンジョンは俺が持つユニークスキルと同じものだと思います……それ以上は答えることができません」

「…………そうか。まぁ、ダンジョン自体が消滅したんだ。今のところ、ダンジョンに関する情報も必要じゃないだろう」

 

何かを察してくれたアルゴさんはそれ以上何も聞かずに話は終わりだという風に言った。

 

「そういえば、『幻想剣』のことは誰かに話したのか?」

「いえ、ボス戦では使いましたが、俺一人でしたので……」

「そうか。それにしても、『幻想剣』か……」

「あいかわらず情報はないですか?」

「ウン……ここまで情報がないとなると、本当にユニークスキルだと考えていいだろうな」

「ユニークスキル……」

 

……幻想剣……武器スキルの7割をカンストし、他のスキルについて研究していた時だった。俺のスキル欄にいつの間にか出現していた謎のスキル……他の武器スキルと同時に装備できるため、片手剣だろうが、両手剣だろうが、幻想剣の効果は重複して使用ができる。

与えるダメージが1,5倍の追加補正、ソードスキルの硬直時間の減少、スキル熟練速度がアップ、そして各種武器に固有の特殊能力が1つずつ付いている。

片手剣なら全ソードスキルの威力と幻想剣《片手剣》最上位ソードスキルのレンジを1,5倍に、両手剣なら全てのバフの効果と発動時間を1,5倍、ソードスキル発動中には状態異常までも無効化する『ウルトラアーマー』が付与される。

更には装備している武器によって幻想剣のソードスキルの性能が変化。昨日使った〈クロス・バレット〉〈ドロップ・アウト・レイン〉〈ファントム・スイープ〉も片手剣以外では、名称も連撃数、モーションまでも違ってくる。

まさしくバランスブレイカー同然のスキル効果。そして……

 

「剣技連撃(スキルチェイン)も……今、できるのはフォン坊くらいだもんナ」

 

剣技連撃……幻想剣を習得してから、新たに開発したシステム外スキル。

発端は、幻想剣は武器全ての共通スキルとして、硬直時間の短縮が適応される……それを知った時だった。

この時、俺は幻想剣を使って、ソードスキルを連続で発動させることはできないかと考えた。そして、片手剣で色々と検証を開始したが……結果は失敗だった。幻想剣の硬直短縮はあくまでも、短縮。初期ソードスキルでも、硬直時間がゼロになることはなく、ほんの一瞬は硬直時間が発生する。その一瞬が、この世界では命とりになる。

それでも、俺は連続発動を諦めきれず、ダンジョンで実験していた時だった。連続での戦闘に、意識の集中しすぎで、体力的にも精神的にも疲労していた時だった。

 

それは成功した……

 

最初、できた時にはなにが起きたのか、俺にも何が起こったのか、分かっていなかった。そして、気づいたのだ。この世界はあくまでもゲームの世界なのだと。

ソードスキルには、発動させるためのモーションと硬直時間がある。モーションはスキルを発動させるために必要な構えである。つまり、スキルを発動するための処理時間であるということだ。では、硬直をゲームが認識するための硬直時間はどこにあるのか……それに気が付いた時、俺は剣技連撃のコツをつかんだのだ。要は、ソードスキルの硬直直前ではなく、スキル終盤の硬直時間をゲームが認識するタイミングで、次のソードスキルを強くイメージ(という言葉が一番近いのだろうか、そこの原理は俺にもよく分かっていないのだが)することで、硬直認識を次のソードスキル発動へと誤認させることができる……これが剣技連撃の正体だ。口で言うのは簡単だが、そのタイミングはかなりシビアであり、俺でも得意の片手剣や両手剣で3連撃がやっとだった。

 

「あれを完成させるまで、地獄を何回見たことやら……アハハハハ……」

「……そ、そうカ」

アルゴさんが引きつった顔をしていた。この話はアルゴさんにするのは2度目だが、かなり酷い顔らしい。

気にしないでおこう……うん。

 

「……そうだ、それならこのアイテムも謎ということですよね?」

「ううん?聞いたことないアイテムだな……」

「ボスを倒した時にドロップしたんですが……俺にも用途が分からなくて」

「『霊華の蜜石』『希樹の琥珀』……これらは武器の素材みたいダ……どちらも初めて見るアイテムだナ」

「うーん、そうですか……」

「まぁ、素材アイテムに関してなら、鍛冶屋とか鑑定士とか専門家に聞いた方がいいだろうナ。餅は餅屋というしナ」

「……そうしてみます」

 

いつの間にか、いつもの口調に戻ったアルゴさんの言葉に頷きながら、俺はウィンドウを閉じた。

 

「さて、それじゃ俺っちはそろそろ行くヨ……今回は悪かったナ、フォン坊」

「いえ……そうだ、アルゴさん、この件は……」

「分かってるヨ。存在しないダンジョンの話じゃ、金も稼げないしナ……誰にも言わないヨ。じゃあな、フォン坊。何かいい情報があったら、言ってくれ」

 

そう言って、アルゴさんは颯爽と出て行ってしまった……お会計をせずに……

残ったコーヒーを口にしながら、俺はあのダンジョンのことを思い出し、一抹の不安を覚えていた。

 

(あれはもしかしたら、俺を殺すための…………まさかな)

そして、俺の中ではもう一つ気になっていることがあった。

(ユウキとの約束、破っちゃたな……)

あの妖精……ユウキとの約束だった。もちろんユウキがAIであることは理解しているのだが、それでも、あんなに楽しみしていた彼女の反応をみていると、約束を守れなくなってしまったことに罪悪感を感じたのだ。

 

(……もう会えないんだよな)

冷めたコーヒーは、かなり苦い味がした。

 

 

 

〈Other View〉

「あれ……どうして?」

 

僕はいつもの通り、ログインしたはずだった。ここ最近は、いつもとは違ったゲームにログインしてしまったり、自分の体が光の妖精になっていたことに驚いていたりしていたのだが……今日はそれどころではなかった。

 

「消えてる……そんな……」

 

昨日まであったはずのゲームの選択画面が消えてしまっていたのだ。今日はもともとあまり時間がなかったのをなんとか頑張って、時間を作ってログインしたのだ……それなのに……

 

「もう……フォンにも会えないのかな……」

『会えるよ、絶対。というか、会いに来るよ』

 

昨日のフォンの言葉を思い出し、僕は思わず俯いてしまった。その時だった……

 

『ユウキ君、悪いだけど、急いでこっちに戻ってきてくれるかな?』

「えっ?わ、分かりました……」

 

珍しく焦った先生の声だった。迷ったけれど、緊急のことだと思い、僕はログアウトすることに決めた。

(……たまたまだよね……また、きっと会えるよね、フォン……)

薄れゆく意識の中で、僕はそんなことを考えながら、ログアウトした。

 




主人公のユニークスキル、デビュー回でした。

ちなみに、この回の裏側で、園内事件が起きていたことになっています。
キリトがフォンにスキルでの鑑定を依頼しようとして、連絡が取れず、
エギルに頼みに行ったという裏エピソードが絡んでいます。

本話で初登場した剣技連撃(スキルチェイン)はSAO『ホロウフラグメント』で
登場したシステムと同じものです・・・ということは・・・?

オリ主紹介に幻想剣の情報を追加しました。

誤字・脱字など、読み返しながら、確認してますが、時々とんでもないミスしてることもあるので、報告頂けると有難いです
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