ソードアート・オンライン~夢幻の戦鬼~   作:wing//

80 / 264
オーディナル・スケール編最終話になります。

このお話が、オーディナル・スケール編で1番プロットから書き直し・書き足しをしたお話だったりします。

まぁ、最後の描写を入れたいがために書いたお話だったりもしますが・・・(笑)

それでは、どうぞ!

ヤバい・・・アリシゼーション編が始まってしまう(焦)


第9話 「未来への約束」

オーディナル・スケールの裏に隠された事件が解決し、幾ばくか経った。

 

ユナのライブで起きたオーディナル・スケールのイベントボス戦は、イベントのサプライズ演出だと、主催者側から発表された。そして、この事件の黒幕である、重村教授がオーグマーの開発責任者から解任されたというニュースが世間をにぎわせていた。

 

AIであるユナは今でも積極的にライブを行っているようで、時折ライブをしている姿を見かけ、それを見る度に悠那のことを思い出していた。木綿季も約束通り、彼女の歌を聞き続けている・・・・・カラオケで4時間熱唱された時には、流石に勘弁してほしかったが・・・

 

 

 

そして、エイジとカレット・・・この事件に加担した後沢兄弟に関して

 

本来であれば、傷害罪に問われてもおかしくなかったのだが、被害者であるクラインや風林火山にメンバーが「ゲームの中での出来事だから」とのことで、被害届を出さなかったこともあり、今のところ、不起訴になる流れらしい、と菊岡さんから聞いた。

 

弟の尚也がこの事件に加担したのは、兄の手助けになりたかったことが動機らしい。もともと、弟の尚也もSAOにログインしようとしていたらしいのだが、抽選に漏れ、更には剣道の合宿も重なり、SAOには参加できなかった、という過去があったらしい。兄弟の仲はかなり良かったらしく、SAOから生還した兄からその経験を聞き、兄の絶望を知ったらしい。

 

それがきっかけで、今回の計画が狂気的なことを理解しながらも、加担したらしい。死銃事件に似たような事例だと思ったのは、俺の余談だ。尚也の役目は、強化スーツを使っていたエイジに万が一が起きた時に備えた保険だったらしい。今では、事情聴取に素直に従っており、その姿は憑き物が取れた表情をしていたらしい。

 

だから、こそ・・・俺は・・・

 

「よう。カレット・・・いや、尚也」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

拘留から解放される数日前、俺は留置所で彼と面会していた。菊岡さんには、かなり無理を言ったが、なんとか面会の許可がもらえた。面会室に入ってきた尚也は、俺がいることに驚きながらも、黙って席についた。

 

「何の用ですか?」

「・・・・・君と話がしたい、と思った。それだけだ」

「・・・物好きですね、音弥さん」

「かもな・・・」

 

尚也の皮肉に苦笑いしながら、俺は答えた。

 

「それで、何が聞きたいですか?」

「・・・前の話の続きだよ」

「・・・・・話?」

 

俺の言葉の趣旨が分からないといった感じで、尚也は首を傾げた。

 

「前に聞いたよな?『夢幻の戦鬼』はどんな人だろう、って・・・」

「・・・あっ・・・」

「・・・あの時は、うまく答えられなかったが・・・今なら、その答えをしっかり出せると思ってな」

 

話の本題が見えた尚也に俺は話を続けた。

 

「『夢幻の戦鬼』っていうのは・・・誰かの希望になりたい、誰かの希望になってほしいという願望が集まったものじゃないのか?」

「・・・・・?」

「人なんかじゃない・・・『黒の剣士』だってそうだ。あの世界じゃ、誰もが辛い体験をした。大切な人を亡くしたこと、仲間を助けられなかったこと、友に裏切られたこと・・・・・人同士で殺し合ったこと・・・その中で、少しでも人の希望になってほしい・・・・・そんな思いが集まったのが、俺たちの二つ名じゃないかと思うんだ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・俺達は英雄なんかじゃない。一人の人間だ。目の前のことを必死でやって、今を精一杯頑張って・・・未来に向かって、生きてる・・・ただの人間だよ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

そう言って、俺は席を立った。

 

「お前も、エイジも・・・俺達はほとんど変わらない。その視線が未来か、過去か・・・見ている場所が違うだけじゃないのか?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・悪いな、それだけをどうしても言いたくて、今日は来た。それじゃ」

 

俺の言葉を静かに受け止め、俯く尚也に声を掛け、俺は退出しようとした。

 

「・・・今度・・・」

「・・・えっ?」

「・・・・・ここから出れたら、また試合をしませんか?」

「・・・・・試合を・・・?」

「はい。あなたの本当の剣を、見てみたいんです・・・今度は、曇りのない目で・・・・・お願いできますか?」

「・・・ああ」

 

彼本来の真っ直ぐ、澄み切った目を見ながら、俺は彼の言葉に頷いた。そのまま、俺は面会室を後にしたのだった。

 

 

 

「おい、フォン!聞いてんのかよ・・・」

「・・・おっと。ああ、聞いてますよ」

 

前日の出来事を思い返しながら、俺はクラインの声で現実に引き戻された。

 

今日はクライン・・・もとい、遼太郎さんの退院祝いをエギルさんのお店で行っていた。チケットを無駄にされたエギルさんの遼太郎さんに対する態度は冷たかったことに、苦笑する俺達だった。

 

また、合宿に行っていた直葉ちゃんの話(島根にパソコンがない、というのはありえないだろうと心の中で突っ込んだが・・・)やここにはいない和人たち(俺と木綿季、里香は事情を知ってる)の話になった時には、里香と共に誤魔化したり、直に再会するALOのクエストの話をしながら、パーティは盛り上がっていった。

 

そして、お開きとなり、俺と木綿季はバイクで帰路に着いた。バイクをバイク置き場に止め、家へと戻って来た。

 

「たっだいまー!」

「・・・お疲れ、木綿季」

「うん。蓮もお疲れ様」

 

そう言いあって、俺たちは玄関から洋室へと向かう。そして、

 

「木綿季、ちょっといいか?」

「うん・・・なに?」

「えーっとな・・・ちょっと目を瞑ってくれないか?」

「・・・・・えっ?なに?」

「いいから、いいから」

「う、うん・・・これでいい?」

 

目を瞑り、そう聞いてくる木綿季に俺は歩み寄って・・・

 

「もういいよ?」

「・・・・・れ、蓮・・・これって?」

「・・・・・その・・・プレゼントだよ」

 

目を開けた木綿季は、自身の指にはめられた物・・・紫の花がポイントの指輪を見て、驚いた。照れくさくなって、俺は思わず頬を掻いた。

 

どうして、こんなことをしたのか・・・話は和人に流星群の話を相談された時だった・・・明日奈に指輪をプレゼントするという話を聞いた時、俺は衝撃的な事実に気付いてしまったのだ・・・

 

(俺・・・木綿季に指輪を送ってない!?)

 

そう・・・現実世界ならまだしも、ALOでも指輪をプレゼントしてないことに気付いたのだ。付き合い出した時は、色々ありすぎたし、同居し出した今となっては、今の生活が当たり前となってしまっていた俺は、その事実を忘れてしまっていたのだ。だからといって、今更、ALOで送るのもどうかと思い、俺は指輪をプレゼントすることにしたのだ。

 

幸い、『死銃事件』の報奨金が丸々残っていたので(ちなみに、和人の報奨金は『双方向通信プローブ』の材料やら『エクスキャリバー』獲得成功を兼ねた忘年会で拭吹き飛んだらしい)、資金の心配はまったくなかった・・・と思っていたら、和人と指輪を一緒に見に行った時、俺が気になった指輪は予想の額を超えていた。

 

このままではと思い、オーディナル・スケールのポイントとクーポン、そして、エギルさんに頼み込み、バイトを増やしてもらい、目標額に達成した前日、指輪を購入したのだ。

 

「あ、ありがとう!嬉しい!」

「お、おう・・・!その、学校だと着けると、流石に駄目だから、首から下げられるようにアクセサリーも買ってきたから、いつでも着けられるからな」

「・・・分かった!大切にするね!」

「・・・ああ」

 

木綿季の笑みに、俺も嬉しくなり笑う。

 

「・・・明日奈たちは今頃、星を見てるのかな?」

「そうかもな。今度、俺達も行ってみるか?」

「えっ!?本当!」

「ああ。流石にテントはないから、日帰りとか、どっかに泊りになるけどな?」

 

木綿季とそんな約束をしながら、俺たちは夜遅くまで話していた。今度、どこかに旅行に行こうかと、俺はそんなことを考えていた。

 

まだ見えない未来・・・それでも、俺は明日へと歩み続れる。歩み続けられる・・・なぜなら、

 

「楽しみだね、蓮」

「ああ」

 

俺は、俺達は一人じゃない。未来へ向けた約束をしながら、俺は大切な人の笑顔を見ながら、そんなことを考えていた。

 

 

 

〈Other View〉

「こんなところに連れてきて・・・何の用だね、菊岡君」

 

蛍光灯に照らされた廊下を歩きながら、重村教授は前を歩く菊岡にそう尋ねていた。彼は、事件後、菊岡に招かれ、ここに連れて来られたのだ。

 

「罪に問われなかったのは、感謝しているが・・・私に何をさせるつもりなんだ?」

「先生の作られた人工知能・・・とても興味深く拝見しました。トップダウン型のAIの行く着く所を見た気がします。しかし、私はもう一つの未来も信じています。茅場晶彦、須郷伸之を排出した、重村研究室を主催していた先生に、是非見て頂きたいものがあるんです」

 

自動ドアが開かれた先で、重村教授はその光景に驚きを隠せないでいた。

 

「き、菊岡君!これは、一体・・・!?」

 

驚く重村教授に対し、菊岡は椅子に座る眼鏡の男に横に立ち、歓迎の言葉を述べた。

 

「ようこそ・・・ラースへ」

 

〈オーディナル・スケール編 完〉

Next Episode 『Alicization』

 




というわけで、オーディナル・スケール編完です。

次回から、原作エピソードをなぞる中でも、一番の長編になるであろう、アリシゼーション編になります。

ある意味、オリジナル要素をぶっこみまくるので、現在死ぬ気で執筆中です。オリキャラもちょっと出たりしますので、楽しみにお待ち頂ければと思います。

今年もあと少しになりました。
短編の投稿を最後に今年を締め括れればと思います。
それでは、また。

次回更新 30日0時予定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。