オリ主プッツン&勘が鋭すぎる回です。
オリ主の口調が変わりすぎるくらい激怒します。
それではどうぞ。
追記 久々にアンケート実施中です。
今のところ、2月終わりまでを予定しておりますので、是非ご参加下さい。
各キャラクターの詳細に関する質問が多かったらお知らせで簡単な紹介をしようかと考えてます。
「「はぁ・・・はぁ・・・!」」
俺と木綿季は走っていた・・・ここが病院だとか、廊下は走るなとか、看護士さんがいれば色々言われそうだがそんなことなどお構いなしだった。そして、
「・・・蓮!こっち!」
「っ・・・明日奈!」
「・・・!あっ、蓮君・・・木綿季・・・!」
目的の人物・・・明日奈を見つけた俺達は彼女に駆け寄った。明日奈も俺たちに気付いたようで、こちらに歩み寄って来たが・・・その顔色は最悪だった。
「蓮さん・・・木綿季さんも」
「・・・彼が、音弥君?」
先に直葉ちゃんが来ていたようだ。直葉ちゃんに俺が誰かを尋ねように聞いているのは、桐ヶ谷兄妹の母親だろう。
「蓮君・・・私・・・」
「・・・大丈夫だ、明日奈。それで、和人は・・・!?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
俺の問いかけに明日奈は黙って、手術中を知らせる赤ランプがついた手術室を見た。
(・・・和人・・・!)
俺も視線を手術室へと移し、和人の安否を祈った・・・
どうして、こんなことになったのか・・・話は少し前に遡る。
『♪♬♩』
(・・・誰だ、こんな時間に・・・)
風呂に入り、もう寝ようかとしていた時・・・充電器につないでいたスマホに電話が掛かって来た。誰かと思い、画面を見ると明日奈からだった。木綿季に用事かと思い、俺は電話に出た。ちなみに、木綿季は髪の毛を乾かしに洗面台に行っていた。
「もしもし、あ『蓮君!?』っ!?どうした、明日奈!?」
切羽詰まった明日奈の声にただ事ではないと判断した俺は意識を切り替えた。だが、余程余裕がないのか、明日奈はパニックを起こしていた。
『キリト君が・・・キリト君が!?』
「落ち着け!何を言ってるのか、分からない!」
『私・・・!?私「明日奈!!!」っ・・・』
「・・・落ち着いたか?何があった・・・冷静に話せ!」
『・・・キリト君が・・・和人君がデス・ガンに・・・・・・・・・・・・・・・』
「っ・・・!?」
「・・・・・蓮・・・?」
俺の怒鳴り声が聞こえたのか、木綿季が心配そうにこちらに寄ってきた。通話が切れたスマホを持った腕を降ろし、俺は呆然としていた。
「れ、蓮・・・どう、したの?」
「・・・和人が・・・」
「・・・和人が、どうかしたの?」
「・・・・・・・・・病院に運ばれた」
「・・・・・えっ?」
なんとか答えた俺の言葉に木綿季も呆然としてしまった。
そして、我に戻った俺たちはすぐさま身支度し、バイクに飛び乗り、世田谷総合病院へと来たのだ。
(・・・・・和人)
手術室の前で、待つ俺達。スマホで和人の心拍数を見守る明日奈。その横で、木綿季が明日奈の手を握っていた。直葉ちゃんたちも祈るように手術室を見ていた。俺は目を瞑り、壁にもたれかかりながら、待っていた。そのまま一晩が明け・・・
「危険な状況は脱したと言えます」
手術が終わり、病室へと移動した和人をガラス越しに見ながら、俺たちは医師の話を聞いていた。だが、状況はあまり芳しいものではなかった。
「ただ・・・心停止が5分強にも及んだため、脳になんらかのダメージが発生した可能性があります」
「「「「「・・・!?」」」」」
医師が告げた事実に息を呑む俺達。呼吸器に繋がれた和人を見て、俺は思わず顔をしかめた。
「思考能力、または運動能力・・・あるいはその両方に障害が残る可能性も考えられます・・・最悪の場合は・・・このまま目を覚まさないということも・・・」
「っ・・・!?」「・・・そんな!?」
「詳しいことはMRIによる検査を行わないとなんともいえません。早急にもっと設備の整った病院に移すべきです。手続きをします。こちらへ」
「・・・はい」
医師に連れられ、和人の母親は手続きに向かった。その間、待つことになった俺達。だが、誰も何もしゃべらず、重い空気だけが漂っていた。そんな時だった・・・
「音弥君、明日奈君」
「っ・・・菊岡さん・・・」
意外な人物・・・菊岡さんがやってきたのだ。
「キリト君・・・和人君の親御さんはどこかな?」
そう尋ねる菊岡さんに俺達は思わず顔を見合わせるのだった。
「和人君の治療についてですが・・・実は世界で唯一の先端設備の施設があるんです。そこで、和人君の治療を行いませんか?」
「ほ、本当ですか・・・?」
和人の母親・・・翠さんを呼び、俺たちは菊岡さんからある提案を受けていた。それは、和人の治療に関するものだった。
「ええ。私の伝手でそちらに紹介が効きまして・・・和人君は私たちにとっても大事な人間です。ここで彼を失うことは大きな損失に繋がります」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「桐ヶ谷さん・・・どうか、和人君を私にお任せ頂けませんか?」
菊岡さんの説明を受け、翠さんは迷っていた。いきなりの出来事が連続しすぎて、判断が追い付いていないようだ。また、菊岡さんをよく知らないことも迷っている原因になっているようだ。
「あの・・・結城さん、音弥君・・・あなたたちの意見を聞かせてくれる?」
「「・・・えっ?」」
「・・・私ではどう判断すればいいのか分からないの・・・・・あなたたちの意見を聞かせてくれない?」
翠さんにそう聞かれ、思わず顔を見合わせる俺と明日奈。
「・・・私は特に反対する理由はありません」
「・・・・・俺も。菊岡さんの話に乗ってみる価値はあるかと思います」
明日奈の言葉に続き、俺は表面上の言葉を言った。俺たちの言葉を聞き、考え込んだ翠さんは・・・
「・・・どうか・・・息子をお願いします」
「・・・分かりました」
翠さんの決断に菊岡さんも頭を下げるのだった・・・だが、俺は誰にも気付かれないように菊岡さんを睨んでいた。
「・・・菊岡さん!」
「・・・うん?音弥君・・・?」
病院の入り口で帰ろうとしていた菊岡さんを俺は呼び止めていた。いきなり呼ばれ、菊岡さんも少し驚いたようだ。
「いくつか聞きたいことがあるんですが・・・いいですか?」
「ああ。少しなら大丈夫だよ・・・それで?」
「今回の一件についてです・・・襲撃犯はデス・ガン・・・ジョニー・ブラックなんですか?」
「・・・そうだ。どうやら奴は、GGOでの事件後、君たちのことを徹底的に調査していたらしい」
場所を移動しながら、俺は菊岡さんから襲撃に関しての経緯を尋ねていた。人気のないところまで来たところで菊岡さんは立ち止まった。
「そして・・・君たちがよく立ち寄る、エギル氏のお店『ダイシー・カフェ』を突き止め、襲撃に及んだ・・・・・和人君に筋弛緩剤「サクシニルコリン」を撃ち込んだんだ。だけど、和人君の反撃・・・傘による一撃を足に受け、動けなくなっていたところを我々が捕縛した」
「・・・・・一応聞いておきますが、捜索はしてたんですよね?」
「もちろんしていた・・・と言っても、和人君をこんな目に逢わせたんだ。君にそう疑われてしまうのもしょうがない話だ・・・本当に・・・情けない話だ」
そういう菊岡さんは本当にそう思っているようだった。だが、俺の中で先ほど芽生えた不信感はまだ消えていなかった。
「それじゃ、もう一つ・・・和人の治療についてなんですが」
「・・・ああ。そのことかい・・・あまり詳しくは話せないんだけど・・・」
「話せる範囲でいいです・・・どういった治療をするんですか?脳のダメージを回復させるなんて、そんな方法聞いたことがないんですが・・・」
「そうだろうね・・・今回の設備がある施設は限られた者しか知らないからね」
「・・・・・それって、メディキュボイドのことじゃないんですか?」
そう言われ、俺はあることを確かめるためにそう尋ねてみた。だが、
「いや、メディキュボイドではないよ。それとはまた違ったものだ」
「・・・へぇ。それじゃ、俺たちが全く知らないものになるんですね」
「・・・ああ、そうなるね」
「(・・・っ!?こいつ・・・!)・・・そうですか」
・・・・・菊岡の答えに俺はある確信を持ち、思わず心の中で舌打ちした。どうやら最悪の考えが当たったようだ。
「・・・ありがとうございます。聞きたかったことは以上です」
「もう、いいのかい?」
「ええ・・・木綿季を待たせてるんで、そろそろ行きますね。和人のこと・・・宜しくお願いします」
「・・・分かったよ」
俺は菊岡に一礼してから、その場を後にしようとして・・・思い出したように一つ尋ねた。
「そうだ・・・和人の搬送はいつにするんですか?」
「・・・明日の朝一で行う予定だよ」
「そうですか・・・ありがとうございます」
そう言って俺は今度こそ菊岡と別れた。そして・・・俺のやるべきことを自覚した。
「あっ・・・蓮」
「木綿季・・・悪い、遅くなって」
「・・・ううん。もう話は終わったの?」
病院の受付のソファーに腰かけていた木綿季が俺に気付き、駆け寄ってきた。
「ああ、大体の話は聞けたよ。明日奈たちは?」
「直葉ちゃんと翠さんは今、お医者さんと手続きをしてるよ。明日奈は和人のところに・・・」
「そうか・・・なぁ、木綿季。ちょっと頼みがあるんだ?」
「・・・頼み?」
俺の言葉に木綿季は首を傾げていた。俺は覚悟を決め、言葉を続けた。
「2、3日・・・明日奈の傍にいてやってくれないか?」
「・・・えっ?どういうこと・・・?」
「いきなりのことに明日奈も混乱してるし、メンタルもかなりダメージを負ってるはずだ。
木綿季が傍にいれば、少しは明日奈の助けにもなるんじゃないかと思ってな」
「・・・う、うん・・・それは分かるけど・・・・・ねぇ、蓮。何か・・・あった?」
「(・・・っ!?)どうしてだ?」
木綿季の核心を突いた質問に内心ヒヤッとする。動揺を隠しながら、俺はどうしてそう思ったのか、木綿季に尋ねていた。
「・・・間違ってたらゴメンね・・・いつもの蓮と雰囲気が違った気がして・・・・・何かあったんじゃないかと思って」
「・・・・・なんでもないよ」
「・・・本当?」
「・・・・・・・ああ」
「・・・分かった」
俺の言葉に一応納得してくれたようだが、木綿季の表情にはまだ心配の色が残っていた。更に誤魔化すために俺は話を切り替えた。
「そうだ・・・悪いんだが、明日奈を呼んで来てくれないか。ちょっと聞きたいことがあるんだ」
「・・・うん、分かった」
そう言って、木綿季は明日奈を呼びに向かった。その後ろ姿を見ながら、俺は・・・
(・・・ゴメン、木綿季)
表情を歪ませ、俺は・・・これから木綿季に辛い思いをさせることを覚悟し、心の中で謝ったのだった。
(・・・やっぱりそういうことかよ・・・クソったれ・・・!!)
スマホの画面を見ながら、俺は悪態を吐いた。スマホをしまい、身を隠していたコンテナから奴らの後を追った。気付かれないように距離を詰めながら、海の近くまで来た時、俺はその人に声を掛けた。
「・・・待てよ・・・菊岡ぁぁぁぁぁ!!!」
「・・・っ・・・音弥、君・・・!?」
突然登場した俺の言葉にその人物・・・菊岡は今度こそ本気で驚いていた。周りにいた黒服の男たちは突然現れた俺に警戒し、俺を拘束しようと・・・
「よせ!彼は僕の知り合いで、関係者だ!手荒な真似はするな!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
菊岡が黒服たちに制止の声を掛け、黒服たちが警戒を解く。だが、俺は菊岡をにらみ続けたままだった。
「・・・これは本当に驚いたよ、音弥君・・・尾行していたのは気付いていたけど、撒いたはずの君がどうしてここにいるのかな?」
「・・・からくりはこいつだよ」
俺はスマホの画面を見せ、菊岡さんにからくりの正体を明かした。
「あんたほど慎重な男に、俺みたいな素人の追跡が通用するわけがない・・・だから、その油断を突かせてもらった・・・俺の胸にも埋まってる心臓の小型センサーさ」
「・・・・・なるほどね。一杯食わされたわけだ」
俺の説明に苦笑いする菊岡・・・木綿季を明日奈の家に送り届け、準備を終えた俺は世田谷総合病院で張っていたのだ。おそらく搬送は秘密裏に行うはず・・・そう読んでいた俺は明日奈からアプリをコピーさせてもらい、心電図のGPSを頼りに搬送車を見極め、途中までバイクで追いかけたのだ。そして、途中で巻かれたふりをして、GPSを頼りに方角から向かう先を予測して、先回りしていたのだ・・・
「・・・君が僕を疑ってたことは予想していたが、いつから僕を疑っていたんだい?」
「病院で質問した時だよ・・・あんた、俺が治療方法がメディキュボイドに関するものじゃないかって聞いた時、こう答えたよな?
『いや、メディキュボイドではないよ。それとはまた違ったものだ』
『・・・へぇ。それじゃ、俺たちが全く知らないものになるんですね』
『・・・ああ、そうなるね』
・・・って」
「・・・それがどうかしたのかい?」
「おかしいだろう・・・どうして言及しなかったんだ。ソウルトランスレーターとフラクトライトのことを理解している俺にそのことを・・・!」
「・・・・・!」
俺の言葉に、自身が無意識に話さなかったことに気付いた菊岡。珍しく動揺した姿が見られた。
「フラクトライトは脳に関するものだろう。和人のケースにもピッタリ当てはまるよな?
そして、STL・フラクトライトに関するテストダイブの記憶はほとんどが持ち出せない。そんな秘匿性が高いことと今回の一件・・・結び付けられない方が難しいだろう」
「・・・・・・・・なるほどね。僕は君のことを見くびりすぎていたようだ。それで君は一体どうするつもりだい?」
俺の推理に降参したようの両手を上げた菊岡はそう尋ねてきた。
「・・・あんたの真意を聞きたい」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「はっきり言うと、俺はあんたのことを疑ってる・・・そんな奴に和人のことを任せられない・・・あんたが何を考えているのか・・・話を聞かせてほしい」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
目を閉じ、熟考する菊岡・・・波の音だけがその場に響き渡っていた。先に動いたのは俺だった。
「早く決めろ!ここで話すのか、通報されるか・・・・・どっちだぁ!!!」
俺の怒鳴り声に菊岡は目を開き、息を吐いた。
「・・・君を敵に回すのは僕も困るからね・・・分かったよ。話そう・・・アリシゼーション計画の全てをね」
「・・・アリシゼーション、計画・・・?」
その言葉を反芻しながら、俺は菊岡を見ていることしかできなかった。
「・・・ここが、オーシャン・タートルか」
「・・・ああ。僕たちラースが活動する本拠地さ・・・ここが世界でも最先端の設備が整った施設だよ」
大型の輸送ヘリに揺らされること数時間・・・海に浮かぶ海上施設『オーシャン・タートル』に着いた俺たち。ピラミッド状の建物に、周囲の並ぶ4つの柱からその姿は名前の通り、亀のようだと思った。
ヘリが着地し、厳重な警備が敷かれている中を菊岡の後ろを追いかけながら進んでいく。俺たちの後ろを呼吸器を着けたままの和人が運ばれていく。途中、色々なチェックがされそうなところがあったが、菊岡が一声掛けることで顔パスしてしまった。それだけで、この人が只者ではない事がはっきりした。
和人と途中で別れ、セキュリティカードと指紋センサーで開いた扉の先には・・・画面に大きく映されたVRMMOらしき映像と、まるでSFに出てくるような指令室だった。俺がその光景に驚いていると、菊岡が口を開いた。
「ようこそ、音弥君・・・ここがラースだ」
次回は例のあの人も登場します。作者的には意外に好きなキャラクターの一人だったりします。
ついでにアンケートのお話にもほんの少しですが触れるお話です。
それではまた。