キリのいいところまで書いてたら、思っていた以上に長くなりました(笑)
それではどうぞ!
「ゴメンね。二個しかないから二人で一個を分けてもらうことになるけど・・・」
「いや、貰うのはこっちだから気にしないでくれ」
「ああ。ありがとな、ユージオ」
そう言って、ユージオからもらった・・・パンらしきものを二つに割る俺達。見た目のように思った以上に固かったので、アインクラッドの第1層の黒パンを思い出したのは余談だ。
(フォン、どう思う?)
(どうって・・・ユージオのことか?)
(ユージオのこともだけど・・・ここは本当にアンダーワールドなのか?あまりにもVRらしくなくて、俺にはここが現実世界じゃないかって思ってしまうくらいなんだが・・・)
キリトに小声でそう相談され、どう説明すべきか困る俺。俺はここがアンダーワールドと分かってダイブしているが、今のキリトはそうではない・・・なんと言うべきかと俺が考えていると、
「長持ちするしかとり得のないパンなんだけど、まぁ一応ね」
そう言って、ユージオがパンの上でSの字を指で描き、それをタッチすると何かの画面が現れた。それを見た俺とキリトは驚いた。
(フォン、今の・・・)
(ああ。多分、アイテムのステータス画面だろうな)
(これで確定だな。ここは現実世界でも異世界でもない・・・仮想世界。しかもこのリアリティ度は・・・間違いない。ここはSTLが作り出したVRワールド、アンダーワールドだ)
キリトの言葉に頷きながら同意をし、ユージオを真似て先ほどの画面を呼び出してみた。SAOやALOのものとは異なる部分は多いが、確かにこれはステータス画面だった。
「ねぇ、キリト、フォン。流石に『ステイシアの窓』は分かるよね?」
「ス、ステイシア・・・?あ、ああ。これのことだよな」
「も、もちろん!」
ユージオの問いに戸惑いながらもなんとか答える俺達。ステータス画面・・・もといステイシアの窓の角をタッチすると、画面は消えた。開き方をなんとなく理解した俺たちはユージオに視線を移した。
「まだ天命はたっぷりあるから、急いで食べなくてもいいよ。これが夏だと、とてもこんなに残ってないけどね」
「・・・ふーん(夏だと・・・?暑いと腐りやすくなるってことか?そこら辺は現実世界と同じ感覚なのか)」
ユージオの言葉にそんな感想を抱きながら、キリト共にパンを食べ始め・・・ようとして、
「「んん?!かった!?」」
あまりの固さに俺とキリトの感想が重なった。その固さが尚更あの黒パンを思い起こさせた・・・あれといい勝負だと思った。キリトは再びパンにかじりつき、俺はユージオを見習って、パンを千切りながら一口ずつ食べていくことにした。
「美味しくないでしょ、これ?出掛けに村のパン屋で買ってくるんだけど、朝早いから前日の残りしかないし、昼に村まで戻る時間もなくってね」
「それは難儀だな。こんなじゃ昼の時間も辛いな」
「・・・うん?それなら家から弁当を持ってくればいいじゃないか?」
「・・・っ!?」
俺がユージオの昼事情に同情していると、キリトの何気なく放った言葉にユージオが言葉を失っていた。そんなユージオにどうしたのかと目線を向けると、
「・・・昔は昼休みにお弁当を持って来てくれる人がいたんだけどね・・・今は・・・」
「・・・その人はどうしたんだ?」
言葉が過去系になっていることから何かを察したが、俺はあえてユージオに尋ねた。
「その人は幼馴染だったんだ。同い年の女の子で、小さい頃はいつも一緒に遊んでた。天職を与えられてからも、毎日お弁当を持って来てくれて・・・でも・・・」
視線を落とし、パンを強く握るユージオ。その顔には後悔の色が映っていた。
「僕のせいなんだ。二人で北の洞窟に出かけた時、間違えて彼女はダークテリトリーに入ってしまったんだ・・・決して足を踏み入ることならず、禁忌目録に書いてある場所だよ」
(天職、ダークテリトリー・・・そして、禁忌目録・・・!)
ユージオの言葉の中に聞き慣れない言葉と、ここに来る前に菊岡から説明を受けた言葉が出てきたことに驚きながらも、今はユージオの言葉を聞き続けることに専念した。
「次の日、整合騎士が村にやってきて・・・彼女は央都に連れていかれてしまったんだ。でもね、僕は信じてるんだ。きっとアリスは生きてるって・・・央都のどこで必ず・・・」
(・・・アリス?どっかで・・・俺はその名前を知っている?)
ユージオの告げた名前に俺の脳裏に何かが浮かんだ。麦わら帽子に金髪の三つ編みの少女・・・顔は思い出せないが、俺は彼女を知っている、知っていたはずだと感じた。
「ゴメンね」
「「っ!?」」
「急に変なことを話しちゃって・・・なんだか二人には初めて会った気がしなくてさ」
「あ、ああ。構わないよ」
ユージオに苦笑いしながら答えるキリトの横で、俺はユージオの言葉が引っかかっていた。
(・・・もしかして、俺たちとユージオ、そしてそのアリスって子は知り合いだったのか?もしかして、テストダイブの時に・・・・・もしそうだとしたら、『ベクタの迷子』の意味は・・・)
俺が思考を巡らせていると、キリトがユージオにある提案をしていた。
「なあ、そんなに気になるのなら、捜しに行ってみたらどうなんだ?その、央都とやらにさ」
「・・・村から央都に行くには、早馬を使っても1週間はかかるんだ」
「だったら、長旅の用意をすればいいじゃないのか?1週間分なら準備するのもそう難しくはないだろう?」
「・・・・・僕だってそうしたいさ。でも、天職を放り出して旅に出るなんて、禁忌目録に違反しちゃうよ」
「そ、そうなのか・・・」
俺の疑問に目を伏せながら答えるユージオにキリトも困っていた。キリトは何気なく提案したつもりだったのだろうが、ユージオの悔しそうな表情から彼も今すぐにでもそうしたいのだということが読み取れた。
「アリスさんが央都に連れていかれたのはいつのことなんだ?」
「僕が11の、夏の時だから・・・6年前だよ」
「おっと・・・ありがとう」
ユージオが投げた水筒を受け取り、お礼を言ったキリト。すると、ユージオが立ち上がり、
「じゃ、悪いけどしばらく待っててね。午後の仕事を済ませちゃうから」
「仕事・・・ユージオの・・・天職っていうのか。それって何なんだ?」
「ああ、言ってなかったっけ?」
俺の疑問にユージオが振り返った。その視線の先には古びた斧が置かれていた。年季の入った物だと思った。それを持ったユージオを見て、
「もしかして、ユージオの天職は木こりなのか?」
「う~ん・・・ちょっと違うかな。まぁ、見てて」
俺の言葉に答えながら、ユージオは俺たちがもたれかかっている樹の反対側に回った。それを追いかけようと、俺たちは立ち上がり、その後を追った。
・・・ちなみに、この時大剣を背負っていることを忘れていた俺は、立ち上がろうとして再び大剣に体重を持っていかれ、樹に頭をぶつけてしまい、キリトに大爆笑されてしまった・・・いい加減慣れるべきだなと考えながら、俺たちはユージオの行動を見守っていた。
「すぅ・・・ふん!!」
カァン!
大きく息を吸い、切り込みに斧を切りつけるユージオ。先ほど聞こえてきた音はこの音だったようだ。それから数度、ユージオが斧を叩きつけるのを見ていた。
「ふぅ・・・」
「凄いな・・・これがユージオの天職なのか?」
「そうだよ。僕はこのでっかい樹・・・『ギガスシダー』って言うんだけど、この樹を切り倒すこと・・・それが僕の天職なんだ」
「この樹をか・・・?」
ユージオの言葉に驚きながら、ギガスシダーと呼ばれた大樹を見上げていた。
「まぁ、この樹のことを村の皆は悪魔の樹って呼ぶことの方が多いけどね」
「「悪魔の樹・・・?」」
「うん。この樹は周りの土地からテラリアの恵みをみんな吸い取っちゃうんだ」
「そういえば、樹の周りだけ寂しいと思ってたが、もしかしてそれが原因で植物が生えてないのか?」
「それだけじゃないよ。この樹がある限り、僕たちの村は麦畑を広げることができないんだ」
俺の疑問に答えながらユージオが説明を続けた。
「そこで、あの斧・・・竜骨の斧を央都から取り寄せて、僕たち専任の刻み手に叩かせることにしたのさ」
「じゃあ、ユージオは7年間ずっと毎日この樹を・・・?」
「な、7年やってこれだけしか刻めてないのか?」
「・・・まさか」
全然刻めていないのでは・・・?という俺たちの疑問に答えたユージオの言葉にホッとする俺たち。だが、
「僕は7代目の刻み手なんだ」
「は・・・?7、代目・・・?」
「そう・・・300年・・・代々の刻み手が毎日叩いてやっとここまできたんだよ」
「「300年!?」」
更なる衝撃の事実が俺とキリトを襲った。300年で大樹に少し切り込みしか入れられていないなんて・・・俺としては刻み手の腕か竜骨の斧の性能を疑いたくなってしまっていた。
「なぁ、ユージオ・・・ちょっと俺たちにもやらせてくれないか?」
「ええっ!?」「キリト・・・?」
まさかのキリトの提案に驚きの声を上げる横で、俺も静かに驚いていた。
「弁当を分けてもらったわけだし、その分仕事を手伝うのが筋な訳だろう?」
「そ、そうかもしれないけど・・・」
「まぁ、キリトの言う通りだな。それに、その禁忌目録だっけ?それには仕事・・・他人の天職を手伝ってはいけないって決められてるのか?」
「う、ううん。禁忌目録に、天職を手伝ってもらっちゃいけないっていうのはないけど・・・でも、案外難しいんだよ、これ」
心配するユージオを横にキリトは竜骨の斧を担ぎ上げ、
「やってみないと・・・分からないだろう?」
そう答えたのだった。
が・・・
「・・・いってぇぇぇ!!」
「アハハハハ!!」
「だ、大丈夫か、キリト?」
・・・さっきの自信はどこから来ていたのか、キリトは見事に斧を打ち外し、両手が受けた反動で悲鳴を上げていた。その様子に爆笑するユージオと苦笑する俺。
「そんなに笑わなくても・・・!」
「ゴメン、ゴメン!キリトは肩にも腰にも力が入り過ぎだよ。もっと全身の力を抜かないと」
「・・・なるほどな。よし、次は俺がやってみてもいいか?」
「いいけど・・・大丈夫かい、フォン」
「ともかくやってみるさ」
ユージオのアドバイスを聞き、今度は俺が挑戦してみることにした。大剣をなんとか背中から降ろし、先ほどのアドバイスと普段使用していた両手斧のバトルスタイルをイメージし、ギガスシダーの前に立った。
(イメージだ・・・あの世界とこの世界は同じ仮想世界。全身の力を抜いて、体重の移動を斧を振るう方向に合わせて・・・)
息を整え、足を開きながら斧を振りかぶる。
(そして、打撃場所を見ながら・・・・・打つ!!)
カァン!!
「おおぉ!」
甲高い音が響き、ユージオから驚きの声が漏れていた。俺の放った斧の一撃はギガスシダーの切り込みにクリーンヒットしていた。
「ふぅ・・・こんなもんか」
「・・・凄い・・・凄いよ、フォン!初めてにしては綺麗な一撃だったよ!」
「あ、ありがとな」
「もしかして、斧を使ったことがあったのかい?」
「た、多分な・・・体がなんとなく動いてな。それにユージオのアドバイスのおかげでもあると思うぞ?」
ユージオの称賛の言葉に戸惑いながらもお礼を言う。たまたま上手くいっただけなので、連続してできるかと言われると自信がないのだが・・・そんなことを思いながら、ユージオの追及を躱す。
「流石は夢幻の戦鬼だな。斧の扱いもお茶の子さいさいか?」
「茶化すな、キリト」
余計な茶々を入れるキリトに肘鉄を食らわせながら、竜骨の斧を手渡す。
「リベンジするんだろう?早くしないと、お前の分も俺が終わらせるぞ?」
「・・・そうはさせるかよ。見てろよ!」
そう言って、キリトは再度チャレンジするのだった。
「これで・・・50!」
「よし・・・これで1000回だね」
コツを掴んだキリト、ユージオと交互に叩いていき、日が沈みだした頃・・・キリトが何度目かの50回を打ち込んだところで、ユージオがそう告げた。
「えっ・・・もう1000回も叩いたのか?」
「うん。僕が500回、キリトとフォンが合わせて500回、午前と合わせて2000回。1日2000回ギガスシダーを叩くことが僕の天職なんだ」
「「ア、アハハハハ・・・(ま、毎日2000回叩くのか・・・!?」」
まさかの事実に苦笑いする俺たち。途方もない作業だな、これ・・・
「二人とも筋がいいよ!おかげで今日は随分と楽だったよ!」
「いや・・・俺なんか全然だよ。フォンの方が上手かったし、多分ユージオと二人でやった方がもっと早く終わっただろうな」
「そんなことはないよ・・・そうだ。いいもの見せてあげるよ」
そう言って、ユージオはギガスシダーのステイシアの窓を開いた。その画面を見た俺たちは・・・
「うぇ・・・」「・・・嘘だろ」
ギガスシダーの天命を見た俺たちはその数字に思わず声が漏れた。天命の最大数が30万を超えているのはともかく、残りの数値がその7割方・・・23万2316も残っていたのだ。
「先月から50くらいしか減ってないな」
「えっ!?一か月でたったの50!?」
「そう・・・これで分かっただろう?たった半日、仕事が少しばかり捗らなくてもそんなの全然大したことじゃないんだよ」
ショックを受けている俺の横で、ユージオがキリトに仕事の速さなど関係ないのだと説明していた。そういうことならとキリトも納得したらしく、そのまま俺たちはユージオの後片付けを手伝うことにした。
「よし、行こうか」
「鍵かけなくていいのか?」
近くの山小屋に斧をしまい(ちなみに俺の背負っている大剣もここにしまっておいてもらうことにした)、施錠しないまま移動しようとするユージオにキリトが疑問を投げかけた。
「なんで?」
「なんでって・・・盗まれたりとか」
「大丈夫だよ。盗みをしちゃいけないって禁忌目録に書いてあるじゃないか」
「そ、そうだったな」
「さぁ、早く村に帰ろう」
(・・・禁忌目録による法令順守か・・・これは菊岡たちが危惧するのも納得だな。これは異常だ・・・)
村へと向かうユージオの背を慌てて追うキリトの横を歩きながら、俺は人口フラクトライトの欠点とも言える問題のことを思い出していたのだった。
村の入り口まで草原を見渡しながら歩いていると、急にユージオが立ち止まったため、俺たちも立ち止まった。ユージオの見ている方に視線を向けると、
「おい、ユージオ!そいつらは誰だ?」
「・・・ジンク。彼らはキリトとフォン。どうやらベクタの迷子のようで・・・」
「お前ら、本当に記憶がないのか?」
「あ、ああ・・・」
「天職も覚えてないのか?」
「残念ながらさっぱりだ」
ジンクという青年は俺とキリトのことをジロジロと見ながら、そう問いかけてきた。そして、
「・・・まぁ、大した天職じゃなかったんだろう。そこのユージオと同じで!」
「「っ!?」」
ジンクの放った言葉にいささか頭にきた。横目でユージオを見ると、表情が沈んでいた。
「何の意味もない無駄な仕事をしてたんだろうぜ?その点、俺の衛士という天職は「剣士」っ!?」
偉そうに語るジンクの言葉をキリトが遮った。いつもならツッコミを入れる俺も今回ばかりはキリトの行動に賛成だった。
「俺の天職は・・・剣士かな?」
「剣士?そんな細い体で剣を扱えるのか?」
「・・・あんた、碌に剣を振るったことないだろう?」
「はぁぁ?!」
俺の挑発に簡単に乗ってくれたジンクに内心笑いながら、俺は更に挑発した。
「人の第一印象でしか強さを量れない時点であんたの実力もたかが知れてると言ったんだが・・・図星だったか?」
「・・・へぇぇ。だったら、見せてもらおうか?」
「「・・・(ニヤリ!)」」
その提案に俺とキリトは思わず笑みを浮かべるのだった。
そして、ジンクから剣を借り受けた俺とキリトは交互にその腕前を披露することになった。まずはキリトからだった。いつもの構えからキリトは気合と共に水平切りを繰り出した。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「っ!?(今のは・・・!?)」
キリトが放った一撃は・・・練習用の木人形を見事に切り倒した。ユージオとジンクが感嘆の声を上げる一方で、俺は別のことに驚いていた。
(今のはライトエフェクト!?それにあの軌道は片手剣ソードスキル〈ホリゾンタル〉・・・なんでこの世界にソードスキルがあるんだ・・・?)
まさかの出来事に疑問を感じながらも、順番が回ってきた俺はキリトから片手剣を受け取り、人形の方へと向かう。キリトも先ほどの出来事に疑問を感じたようで少し険しい表情をしていた。
(今のが〈ホリゾンタル〉としたら・・・試してみるか)
そう思い、俺は片手剣を上段で構える。
(イメージしろ・・・あの世界で放ってきた技を!)
イメージを確立させ、深呼吸し・・・踏み出しながら技を繰り出す。
俺の予想通り、ライトエフェクトが片手剣に発動し、俺は木人形を縦真っ二つにした。
片手剣単発ソードスキル〈バーチカル〉はその威力を見事に発揮した。
(やっぱり!間違いない・・・この世界にはソードスキルが実装されている・・・!)
懐かしい感覚に思わず握っていた剣を見ながら俺は確信した。この世界にはソードスキルのシステムが導入されていることを・・・
「凄いよ!キリト、フォン!二人ともあんな技が使えるなんて!!」
そう言って、興奮止まぬユージオが俺たちに称賛の言葉を送ってくれた。街の衛兵だったのではないかと言われたが、流石に2年近くも剣の世界で戦い続けてきたというわけにもいかず、苦笑いしてごまかす俺たち。
「ジンク。もういいだろう?二人を村に入れるよ?」
「あ、ああ・・・」
ユージオにそう言われたジンクはかなりショックを受けていた。どうやら俺たちの剣技に圧倒されてしまったらしい。
ちょっと悪いことをしたかとも思ったが、先程のユージオへの発言に比べれば、丁度いい薬になったのかもしれない。
キリトのしてやったりという顔に俺も頷きながら、ユージオに付いていき村を案内してもらった。村の人たちにあいさつし、教会に着く頃には・・・
「・・・疲れた」
「・・・俺たちが外の人間だって聞いて、みんな話掛けてきたもんな」
「ハハハ・・・やっと着いたね」
会う村人全員に質問攻めにされ、キリトと俺は疲れ切ってしまっていた。そんな俺たちを見て、ユージオは苦笑いしていた。
「それにしても、村の人たちは俺たちがベクタの迷子だってことを疑わないんだな」
「えっ?だってそうなんでしょう?」
「そうなんだが・・・普通部外者がそんなことをいきなり言い出したら、疑うものじゃないか?」
「そうかな・・・二人とも変なことを気にするんだね。ともかく、シスターを呼ぶよ?」
俺の問いかけに不思議そうに首を傾げるユージオ。そして、教会の扉に近づきノックした。
ノックして、少しすると・・・
「・・・何か御用?」
鼻眼鏡をかけた50代の女性が出てきた。服装からして、この人がシスターアザリアなのだろうか?
俺がそんなことを考えていると、女性の後ろから女の子が姿を現した。その少女はユージオを見て反応していた。だが、一方のユージオは目を反らしていた。
「御用は?」
「あっ・・・すみません。実は俺たち、ベクタの迷子らしくて・・・ここにいるユージオの紹介で、教会なら泊めてもらえるのはないかと話を聞きまして・・・お願いできませんか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
気まずい表情をしたユージオやテンパっているキリトの代わりに、女性の質問に答える俺。女性は俺とキリトをジッと見つめると・・・
「・・・いいでしょう。私はシスターアザリアと申します。彼女は見習いのセルカです。セルカ、彼らを空いている部屋に案内してあげなさい」
「かしこまりました、シスターアザリア」
シスターアザリアの指示に少女・・・セルカは前へと出た。
「セルカ・ツーベルクです。よろしく」
「キリトだ。よろしく」
「フォンって言います。お世話になります」
自己紹介を終え、ここまで連れて来てくれたユージオにお礼を言おうと、振り返った。
「ありがとう、ユージオ。助かったよ」
「う、ううん・・・ゴメン。もう僕行くね・・・・・」
そう言って、逃げるようにその場を後にしたユージオを見て、何かがあったことは明白だった。だが、事情を知らない俺が安易に口を出してはいけないと思い、俺は何も言う事ができず、見ていることしかできなかった。
ひさびさに『夢幻の戦鬼』の二つ名を出した気がします。サブタイトルなのに・・・(笑)
ストックがかなりできたのと、次回のお話が短いのと今話と繋がるお話なので、このまま連投します!
もうすぐ100話!100話記念の特別編は必要?
-
必要!
-
不必要!