ソードアート・オンライン～夢幻の戦鬼～

第１２話 「剣士の本領」

ＵＷでの初戦闘回です。

今、思えばアインクラッド編初期以来のチートスキルなしでの戦いだったりします(笑)

それではどうぞ！

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「１、２、３・・・行くぞ！」

キリトの合図と共に前衛のゴブリンたちに体当たりを仕掛ける俺たち。俺たちの行動に反応が遅れたゴブリンたちは武器を取り落とし、体勢を崩した。その間に篝火を倒し、奴らの視界を奪う。

「フォン！ユージオ！」

キリトから投げられた剣を受け止め、鞘から刀身を抜く。名の知れない片手剣だが、贅沢は言っていられない。剣を構え、俺は手下のゴブリンたちと対峙した。

「キリト！ゴブリンたちは俺が引き受けるから、ボスを頼む！」

「分かった！ユージオ。振り回してゴブリンたちを近づけないようにすればいい！隙ができたら、セルカの元まで走れ！」

「そんなこと言ったって・・・！？」

キリトの指示に困惑するユージオ。だが、ゴブリンたちが待ってくれるわけもなく、ユージオに近づくが・・・急にゴブリンたちが怯え始めたのだ。

「・・・え？もしかして・・・そうか。あいつら、この草の光が苦手なんだ！」

「よし・・・そのまま奴らを牽制しててくれ！」

「ちぃぃ！このイウムのガキ共が！この蜥蜴殺しのウガチ様と本気で戦うつもりか！」

「・・・違う。戦うじゃない・・・勝つんだ！！」

ゴブリンのボス・・・ウガチの言葉にキリトがそう返し、俺たちは一気にゴブリンたちに切り込んだ。

「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ！！！」」

キリトがゴブリンたちの戦列を抜けるのを援護し、俺はゴブリンたちと交戦に入った。

集団戦には慣れていたので、牽制しながら俺は一体ずつ仕留めていくことにした。

「うおぉぉ！」

肉薄してきたゴブリンの武器を弾き、背後から迫ってきたゴブリンの一撃を躱し、蹴りを喰らわせる。そのまま、その場で回転切りを繰り出し、ゴブリンたちに距離を取らせる。

「こ、この白イウムが！？」

「・・・！遅いんだよ！！」

なかなか攻めきれず、焦って大振りの攻撃を仕掛けてきた一体の攻撃を身を低くすることで躱し、カウンターで右手を切り飛ばした。その時、俺の視界を大量の血が覆った。

「ぎゃぁぁぁぁ？！お、俺の・・・俺の腕がぁぁ！？」

（っ！？血・・・！？そんな・・・まさか、こいつらも人口フラクトライトなのか？！）

生々しい叫び声と仮想世界では見たことのなかった出血を見て俺は理解してしまった・・・俺が相手しているこいつらも・・・ユージオたちと変わらない、この世界で生きている者なのだと。

その事実が分かってしまった俺は迷ってしまった。

（俺に・・・斬る資格があるのか！？）

剣に迷いが生まれた俺をゴブリンたちが好機とみなし、一気に攻めてきた。動揺している俺は反撃することもできず、防戦一方になってしまった。そんな時だった。

「キリト！大丈夫か！？」

ユージオの叫び声でキリトの方を見ると、倒れているキリトが目に入った。肩から出血しているらしく、ダメージで動けないでいるようだ。そして、片手を失い、激高したウガチがキリトに追撃を加えようとしていた。

「くそぉ！・・・俺が相手だ！」

そうはさせるかと俺は、ウガチとキリトの間に割って入り、その大剣を受け止めた。

そのまま大剣を受け流し、ソードスキル〈バーチカル〉を放とうした・・・だが、その瞬間、命を奪うビジョンが頭をよぎり、またしても迷いが出てしまった。

「なんだその剣は！軽いわぁ！！」

「っ！？しまっ・・・・・がはぁ！？」

迷いの生まれた俺の剣に、ソードスキルは不発に終わった。剣を余裕で受け止めたウガチの反撃に慌てて剣を戻すも、勢いを殺しきれず俺は吹き飛ばされ、氷柱に激突した。その瞬間、肺の空気が抜けたかと錯覚するほどの痛みが襲った。

「がぁ・・・ごほぉ！（う、嘘だろう・・・！仮想世界なのに・・・痛覚までも現実世界と同じなのか？！）」

余りの痛みに俺は起き上がれずにいた。その間、復活したキリトがウガチに反撃するも、俺と同じように氷柱に叩きつけられていた。

「くっ・・・！キリト、逃げろ！？」

「ああ・・・ああぁぁ！？」

そう叫ぶが、キリトは動けないでいた。そんなキリトに止めを刺そうとウガチが近づいていた。

そして、キリト目掛けて、ウガチが大剣を振り下ろそうとした。

〈ユージオ　View〉

（だ、駄目だ・・・このままじゃ、キリトが！？助けないと・・・でも、怖い！？）

大きいゴブリンの攻撃で吹き飛ばされた二人を見て、僕の体は震えてしまっていた。

あの二人でさえ勝てないのに、僕がどうこうできる相手じゃない。

そう思った時、僕の頭に・・・６年前のあの光景が蘇った。

アリスが連れていかれ、何もできなかった自分の姿が・・・

そして、さっきのフォンの言葉が蘇った。

『お前はアリスが連れ去られたことを今でも後悔してるんだろう！』

『それが嫌だってことはお前が一番分かってるはずだ！それがお前の本心だろうが！？』

（そうだ・・・行かなきゃ・・・！このままじゃアリスの時と同じだ・・・！また何もできずに、キリトたちを失う・・・そんなの・・・？！）

そう思った時、僕の体は自然と動いていた。

「もう絶対に・・・嫌なんだ！！！」

僕は見様見真似でゴブリンへと斬りかかった。

「キリトーーーーーーーーーーーー！！！」

「「・・・ユージオ！？」」

「ぬぅ！？この・・・ガキがぁ！？」

僕の件は奴に受け止めれてしまったが、諦めずに何度も撃ち込んでいく。

「今度こそ！僕が・・・僕が、守るんだァァァァ！！」

だけど、僕の持っていた剣は折れてしまい・・・

「逃げろ、ユージオ！？」

「死ねぇぇぇ！！！」

「がぁ・・・？！」

キリトの叫びが聞こえたが、僕はゴブリンの大剣を躱すことができず、その一撃を受けてしまった。切られた痛みが体に走り、僕は氷柱へと叩きつけられた。

〈ユージオ View Out〉

ウガチの大剣で切られたユージオはそのまま氷柱へと叩きつけられた。

「「ユージオ！！！」」

その衝撃的な光景に、痛みを忘れた俺は持っていた剣をウガチに投げつけ、キリトと共にユージオの傍に駆け寄った。

「ユージオ！しっかりしろ！？」

「なんであんな無茶を・・・！」

傍に駆け寄ったキリトと俺は、ユージオの腹部から流れる夥しい血の量に言葉を失った。口からも吐血するユージオだが、俺たちに向けて必死に手を伸ばそうとしていた。その手をキリトが掴む。

「ユージオ！しっかりしろ！」

「こ、子供の頃・・・約束した、ろ？僕たち３人とアリスと・・・生まれた日は違えども、死ぬ日は一緒だって・・・ごふぅ！・・・今度こそ、まも、る、んだ・・・っ！？」

「ユー、ジオ・・・？ユー・・・っ？！」

ユージオの言葉の意味が分からず、意識を失ったユージオに声を掛けようとした時・・・脳裏にあの光景が蘇った。

（そうだ・・・思い出した！・・・俺もキリトも・・・いたんだ！６年前、４人で笑って・・・北の洞窟に来て・・・・・アリスが連れていかれるのを見ていることしかできなかったんだ！！！・・・なのに・・・あんな偉そうなことを言って・・・俺が迷ったせいで！？）

俺の頭に蘇った光景・・・まだ幼いキリトとユージオ、アリスと夕暮れの道を一緒に帰ったり、アリスが整合騎士に連れていかれる時に見せた悲しい笑顔の姿が・・・全てが蘇った。

「さぁ・・・お前達も、死ねぇぇぇぇ！！！」

「「っ！？」」

迫りくるウガチの言葉に、俺たちは意識を切り替え・・・覚悟を決めた。

「でやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ！！！」

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ！！！」

近くに落ちていた剣を拾い、キリトと共にウガチへと斬りかかる。さっきまでと違う俺たちの動きにウガチは咄嗟に反応できずにギリギリで攻撃を受け止めた。

「ちぃ！？白イウムのガキ共が！調子に乗るなァァァ！？」

「煩い！」

キリトと共に大剣の一撃を受け止め、弾き飛ばし一旦距離を取る。

「俺たちは・・・白イウムのガキじゃない！」

「お前を倒す・・・剣士だ！」

キリトと俺は勝負を着けるために呼吸を整え、剣を構えた。

（迷うな！例え、こいつらが人工フラクトライトだとしても・・・こいつらの命を奪うことで菊岡たちと同じになったとしても・・・守るんだ！ユージオを、セルカを・・・キリトを！！！）

覚悟を決めた俺の剣から迷いは消えた・・・闘気を高め、一気に距離を詰める。

「だから・・・なんなんだ、お前らはァァァ！？」

「「っ！？」」

ウガチの大剣を二人掛かりで受け止め、一気に押し返す。そして、大きく体勢が崩れたところを見逃さず、俺たちは懐に飛び込んだ。

（今度こそ・・・約束を守る！守り切ってみせる！！！）

「ソードスキル・・・ソニックリープ！！！」

「ソードスキル・・・バーチカル・アーク！！！」

気合一閃。キリトの放った一撃はウガチの首を切り落とし、俺の放った二連撃は残った右腕を切り飛ばし、腹をえぐった。大量の返り血が俺たちにかかったが、そんなことを気にせずキリトは切り落としたウガチの首を持ち上げ、残ったゴブリン共に突き付けた。

「お前達の親玉は俺たちが討ち取った！まだ挑んでくる奴がいるのならかかってこい！」

「死にたくないのなら、さっさと闇の国へと帰れ！襲ってくるっていうのなら、こっちも容赦はしない！」

「・・・に、逃げろ！？」

キリトと俺の威圧と指揮官を失ったことによる混乱からゴブリンたちは一斉に逃げ出した。それを見届けず、俺たちはユージオへと駆け寄った。ユージオの傷口からは血が流れ続けていた。急ぎユージオの天命を確認すると・・・

「２５０！？ほとんど残ってないぞ！？」

「くそ！？・・・そうだ！」

今もユージオの天命は急速に減り続けていた。俺がどうするべきか考えていると、何かを思いついたのか、キリトが動いた。

「セルカ、目を覚ましてくれ！セルカ！！」

「うん・・・？キ、リト・・・？」

「ああ。助けに来たんだ！大丈夫か？」

「う、うん・・・平気」

「そうか。悪い！」

「えっ・・・きゃあ！」

驚くセルカを抱っこしてきたセルカを見て、キリトの考えを理解した。

「な、何・・・！？」

「ユージオが大怪我したんんだ！」

「急げ、キリト！？」

なんとか出血を抑えようと、自分の服を脱ぎ、ユージオの傷口を塞ぎながら叫んだ。

状況を把握したセルカがユージオの容態を見てくれたが、

「・・・無理よ。こんな傷、私の神聖術じゃとても・・・」

「諦めるな！やってみろ！」

「できる、できないじゃない・・・頼む！」

「で、でも・・・私は姉さまじゃない・・・姉さまみたいになれない。私にできることなんて・・・」

そう呟くセルカに俺とキリトは諦めず言葉を掛けた。

「セルカ！ユージオは君を助けに来たんだ！アリスじゃない、君をだ！」

「えっ・・・！？」

「頼む、セルカ！今ここにいるのはアリスじゃない、君なんだ！ユージオを助けられるのは君だけなんだ！！だから・・・力を貸してくれ！」

「・・・・・！・・・・・普通の治癒術じゃ間に合わないわ」

俺たちの叱責に覚悟を決めたセルカはその方法を教えてくれた。

「危険な高位神聖術を試してみるしかないわ。二人の力を貸して！」

「どうすればいい？」「何をすればいい！」

「フォンはそのままユージオの傷口に手を当てていて。キリトは左手を貸して！」

セルカの指示に従い、俺の手にキリトとセルカの手が重ねられた。

「もし失敗したら、３人共命を落とすかもしれないわ。覚悟はいいわね？」

「もちろんだ！」

「ああ！やってくれ！」

「・・・システムコール・・・トランスファ・ヒューマンユニット・デュアリビティ・ダブルライト・アンド・セルフ・トウ・レフト」

「「・・・ぐっ！？」

セルカの詠唱と共に、俺たちの手からユージオへと光が流れ込み始めた。その瞬間、全身の力が抜け、虚脱感に襲われた。

（この神聖術は・・・天命を他者に移すものなのか・・・！）

セルカの言っていた命懸けの神聖術の意味を理解し、ユージオの傷口を見た。すると、徐々にユージオの傷口が塞がりつつあった。

「二人とも・・・まだ、大丈夫？」

「問題ない。もっとユージオに天命を送ってやってくれ」

「俺も大丈夫だ。一気にやってくれ」

どんどん体の力が抜けていき、視界が霞んできた・・・意識を保てなくなりそうになったところで・・・声が聞こえた。

『待ってるわ』

「「・・・えっ！？」」

それは聞き慣れた声・・・遠い昔、一緒に過ごした彼女の声だった。

『キリト、フォン、ユージオ・・・待っているわ』

（・・・この声・・・君なのか！？）

『私はいつまでも待っているわ・・・セントラル・カセドラルの最上階で・・・あなたたちをずっと待っている』

（・・・ア、リス・・・！）

声が聞こえなくなった途端、俺は意識を保つことができなくなり・・・その場で倒れた。

「キリト！？フォン！？」

セルカの叫び声を最後に、俺の意識は消えた。

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神聖術のマニュアルが欲しい・・・
フォンがいたので、アニメとは式句を少し変えてたりしてます。

そして、久々のアリス登場(まさかの１０話ぶり！？)
次回で原作でのビギニングにあたるお話は終わりです。
それではまた。

次回更新　１２日０時予定