ソードアート・オンライン~夢幻の戦鬼~   作:wing//

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ようやく大剣が活躍します。

そして、オリ主によるユージオ強化月間の始まりです!
・・・そこまで強くなるかと言われると微妙なのですが・・・(苦笑)

それではどうぞ!


第13話 「天職が終わる日」

カァン!カァン!カァン!

 

(あれから二日か・・・あんなに生々しい戦闘をした後だと、この日常を過ごしているのが嘘みたいだよな)

 

そんなことを考えながら、俺は空を眺めていた。その横でステイシアの窓を確認しているキリトや傷が治ったユージオがギガスシダーに切り込みを入れていた。

 

あの後、意識を失った俺たちは教会で目を覚ました。セルカが村まで人を呼びに行ってくれたらしく、意識を失った俺たちを村の人たちが連れて帰ってきてくれたらしい。

 

目が覚めた後、今回の一件で村長やらシスターアザリアに無茶苦茶怒られた。まぁ、キリトの考えで、セルカに俺たちがうっかり果ての山脈の話をしてしまい、好奇心を植え付けてしまった・・・と彼女の罪を被ったのが要因としては大きかったのだが・・・

 

ユージオの方も無事目を覚ましたとのことで、一安心したところで今度は質問攻めにあった。俺たちが倒れていた場所に、ゴブリンたちの頭であったウガチの首が転がっていたこと、それを俺たちが討伐したのかどうかを聞かれたのだ。

 

真実を告げるも、信じる人半分、子供が倒せるわけがないと信じない人半分といった感じだった。ちなみに、ジンクは信じられないといった表情をしていたが、俺たちの技を実際に見ていたせいか、信じないとは言っていなかった。

 

そして、天命も回復し、傷が癒えたユージオと共に俺たちは天職を行っていた。

 

「これで・・・50!」

 

ユージオが50回目の打ち込みを終えたところで、俺は思考の海から現実世界へと意識を戻した。

 

「傷はもういいのか、ユージオ」

「うん。丸一日休んだら、良くなったみたい」

「それは良かったな。ほらよ」

「おっと・・・ありがとう」

 

元気そうなユージオの返事にもう大丈夫だと思った俺は水筒を投げ渡した。それをなんとか受け止めたユージオにキリトが気になっていたことを尋ねていた。

 

「なぁ、ユージオ。お前、覚えてるか?」

「えっ・・・何を?」

「あの洞窟で言ったことだよ。俺とキリト、ユージオとアリスの4人がずっと昔から友達だったみたいなことだよ」

「ああ・・・覚えてるよ。でも、変だよね。キリトとフォンとは出会ったばかりだから、そんなはずないのにね・・・だけど、あの時はハッキリそう思えたんだ」

 

そういうユージオはどこか懐かしそうにしていた。

 

「僕とアリス、キリトにフォンの四人はこの村で生まれて、一緒に育って・・・あの日、アリスが連れていかれた時も一緒にいたような・・・」

「・・・そうか」

(・・・もしかしたら、ユージオのフラクトライトには昔の記憶が焼き付けられているのか?もしそうなら、また思い出す可能性もあるってことか・・・)

 

STLがフラクトライトに記憶を書き込むものならば、人工フラクトライトの記憶にも同じことが言えると俺は思った。今はフラクトライトによるロックがかかっているとしても、もしかすれば・・・

 

そんなことを考えていると、俺はもう一つ気になったことをユージオに尋ねた。

 

「そういえば・・・ユージオ。セルカがお前に神聖術を使っている時、女性の声が聞こえなかったか?」

「いいや。僕は全く意識が無かったから・・・二人は何かを聞いたの?」

「・・・いや、なんでもない。俺の気のせいだったみたいだ。キリトも何も聞いてなかったよな?」

「えっ・・・お、おう」

 

いきなり話を振られ、慌てて同意したキリトに悪いと思いながらも、俺はそう言ってユージオを誤魔化した。

 

「さてと・・・そろそろ仕事しないとな」

「そうだな・・・」

「それじゃ、はい・・・・・って、二人とも何してるの?」

 

斧を手渡そうとして、ユージオから戸惑いの声が飛んできた。なぜなら、キリトは青薔薇の剣を取り出し、俺は倉庫に仕舞っておいたあの両手剣を準備していたからだ。

 

「俺たちは・・・」

「これでいくからな」

「えっ・・・・ええええぇぇぇぇぇ!?」

 

驚きの声を上げるユージオを放置し、俺とキリトは互いに獲物を振ることで感触を確かめていた。

 

「二人とも・・・使えるのか?!」

「ああ。この通りだ」

「だから、ちょっと見ててくれ」

 

ユージオの心配に問題ないと答える俺たちは、早速ギガスシダーに向けて切り込むことにした。

 

まずキリトからの挑戦だ。俺とユージオはこの前みたいに距離を取り、キリトを見守った

 

(この前の戦闘・・・あのゴブリンを倒したことで俺たちのオブジェクト操作権限の数値は青薔薇の剣を上回った。試しにこの両手剣も使えるかと思い、昨日の時点で使えるかどうかを確認してみたところ、問題なく振るえた・・・まぁ、その過程で別の問題が発生したけど・・・)

 

そんなことを考えていると、キリトがソードスキル〈ホリゾンタル〉を放った。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

青薔薇の剣を使いこなしたキリトの一撃はギガスシダーの切り込みにクリーンヒットした。

その結果に・・・

 

「ほらな?上手くいっただろう?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「これはまた・・・凄いな」

 

ドヤ顔のキリトに対し、言葉を失くしたユージオとその威力に苦笑いするしかない俺は・・・一段と深く刻まれたギガスシダーの切れ込みを見て、青薔薇の剣の威力の凄さを実感していた。

 

そして、そんなものを見てしまえば、試したくなってしまうのは剣士の嵯峨なのだろう。自分がこの世界に来た時から持っていたこの両手剣がどれほどのものなのかを・・・

 

「うん・・・フォン?」「・・・フォン?」

「悪いな、二人とも。俺も試し切りさせてもらうぜ?」

 

二人に断りを入れてから、いつものスタイルで両手剣を構えた。

両刃に整った刃文は薄らとした蒼色で、見ている者に落ち着くような印象を与えていた。刃の中央には模様が刻まれているのようだが・・・何の模様かまでは判別することができなかった。

 

そんな両手剣を見つめ、呼吸を整えてから剣を構え、意識を集中させる。

 

(すぅぅ・・・両手剣ソードスキル〈サイクロン〉!!)

 

そして、全力でギガスシダー目掛けて剣を振るった。当初は背中に背負っているのがやっとだった剣を、使いこなした俺の一撃もギガスシダーにクリーンヒットし、

 

「「・・・う、嘘~・・・」」

「・・・・・マジか」

 

その威力に見ていた二人だけでなく、俺さえも驚いていた。俺の放った一撃は、青薔薇の剣が刻んだ一撃よりも深くギガスシダーに切り込んでいたからだ。

 

(はぁ・・・やっぱりか。この剣のステータスを窓で確認した時から、嫌な予感はしてんだよな)

 

昨日、試しぶりをした際に、この剣のステイシアの窓を見たのだが・・・天命は青薔薇の剣よりも少し多いくらいだったが、問題だったのはオブジェクト操作必要権限の数値が?マーク・・・不明と表示されていたことだ。

 

いわゆる計測不能というやつだ。出何処さえ不明なのに、またしても謎が増えてしまったのだ。

 

(まぁ、分からないことはしょうがないか。強力な武器が使えるというだけでもありがたい話だし・・・)

 

ともかく、前向きに考えようということで、俺はそれらの謎を一旦置いて・・・いや、考えるのを諦めた。

 

一方、俺たちの一撃で大きく削られたギガスシダーの天命を確認していたユージオは数値を見て愕然としていた。横からステイシアの窓を見てみると、天命は20万近くまで減少していた。呆然とするユージオにキリトが青薔薇の剣を握らせていた。

 

「ほら。ユージオもきっと振れると思うぜ」

「・・・・・やってみるよ」

 

剣を受け取ったユージオも、前のように剣に振り回されることなく、片手で剣を扱えていた。自分が自在に剣を操れることに驚き、青薔薇の剣を見つめるユージオ。その瞳は何かを決意した色を映していた。

 

「キリト、フォン・・・頼みがあるんだ」

「頼み?」

「・・・・・僕に・・僕に剣を教えてくれ!」

「・・・えっ?」「・・・!?」

 

その言葉にキリトは驚き、俺はやっぱりかそうかと確信した。

 

「僕はアリスを連れ戻したい!僕のせいで・・・アリスとアリスの家族は不幸になった。この6年間、あの時のことを忘れられないでいた・・・ずっと後悔してたんだ!!なんで僕はアリスを助けられなかったんだろうって!?

 

・・・僕は強くなりたい!もう二度と・・・同じ間違いを繰り返さないために・・・

自分に嘘を・・・後悔なんて残さないように・・・強くなりたいんだ!!!

だから・・・無くしたものを取り戻すためにも・・・

 

キリトやフォンみたいに、剣士になりたいんだ!」

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」

 

その言葉に対する俺とキリトの答えは決まっていた。

 

「分かった。教えるよ」

「俺たちの技術や剣技を全部叩き込むから、覚悟しとけよ?」

「・・・!うん!望むところだよ!」

 

差し出されたキリトの手を掴み、立ち上がったユージオが笑いながらそう答える。

すると、気になったことがあったのか、こんな質問をされた。

 

「そういえば・・・二人の剣術の流派は何なの?」

「えっ・・・流派か?」

 

ユージオにそう聞かれ、どう答えるべきかと困る俺。もともとソードスキルはSAOからの産物だし、この世界にどんな流派が存在するのか分からないしな・・・俺がそんなことを考えていると、

 

「アインクラッド・・・」

「・・・えっ?」

「俺たちの剣は・・・アインクラッド流っていう剣術だ。そうだよな、フォン?」

「・・・!ああ。キリトがアインクラッド流片手剣術。俺のはアインクラッド流両手剣術だ」

 

キリトの考えを察した俺はユージオにそう答えた。聞いたことのない流派だね、と疑問符を頭に浮かべるユージオだったが、とりあえずは信じてくれたようだった。

 

それからユージオに剣を教える日々が始まった。

 

剣の握り方や構え、体重移動の仕方。

キリトが枝を振るうのを真似して、動きを覚えていくユージオ。

 

一方の俺は両手剣でユージオと模擬試合で稽古をつけていた。素振りや物相手への切り込み(ギガスシダーへの切り込みだが・・・)だけでは、対人戦となった際に、癖がついてしまい相手に動きを読まれてしまいやすくなる。

 

手加減しながらではあるが、攻撃や防御の仕方をユージオの体に教え込む。一試合を終える事にキリトが駄目なところを指摘していく。時々、俺も武器を変えながら(教会に置いてあった箒での槍術や竜骨の斧での棍棒術)、ユージオに経験を積ませていく。

 

だが、予想外だったのはユージオの成長性だった。

 

最初は手加減していても負ける気は全然していなかった。キリトも時々、俺から剣を借りて相手をしていたが一本を取られることはなかった。

 

しかし、徐々に青薔薇の剣に慣れてきたユージオの腕はどんどんと上がっていた。得意の両手剣で戦っていても、一試合の中でヒヤッとさせられる一撃を繰り出すことも増えてきた。

 

終いには、捌き方を誤った隙に箒を真っ二つにされてしまったこともあったくらいだ。その時はシスターアザリアやセルカに物凄い怒られてしまった。それを見ていたキリトとユージオが爆笑していたのは余談だ。

 

そんな日々が続いたある日。

 

「残り6738か・・・」

「ああ・・・いいぞ、ユージオ!」

「・・・(コクッ!)」

 

ギガスシダーの天命を確認した俺とキリトがユージオへと声を掛けた。ユージオは大きく頷き、青薔薇の剣を静かに構えた。

 

集中するユージオが持つ青薔薇の剣にライトエフェクトが発生する。ソードスキル・・・いや、アインクラッド流片手剣術〈ホリゾンタル〉の構えだ。

 

「・・・っ!でやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

気合いと共にユージオの放った一撃は残っていたギガスシダーの天命を吹き飛ばした。その後少しして、ゆっくりとギガスシダーが傾き始めた。安全地帯に移動しながら倒れていく巨体を眺める。そして、完全に樹が倒れきった衝撃と土埃から顔を腕でガードし、視界が晴れると・・・

 

「・・・夢みたいだ」

「・・・まさか。現実だよ」

 

呆然とするユージオにそう返す俺の目の前には、先程までそこに立っていたギガスシダーの巨体が倒れていた。だが、ユージオは首を振りながら、俺の言葉を否定した。

 

「ううん、そうじゃなくって・・・こんな日が来るなんて、夢にも思ってみなかったんだ。だから、僕は運命なんて言葉信じてなかったんだ」

「ユージオ・・・」

「キリト、フォン・・・多分、僕はずっと待っていたんだ。6年間、君たちがこの森に来るのを・・・」

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」

 

その真っ直ぐな言葉に俺とキリトは一瞬顔を見合わせる。そして、思わず笑みを零した。

 

「そうかもな・・・きっと俺たちも」

「ユージオに会うためにこの森で目覚めたのかもな」

「「「フフフ・・・アハハハハハハハ!」」」

 

そう言って、俺たちは笑い合った。

 

 

 

ギガスシダーが倒されたことは村にすぐ知れ渡り(まぁ、あの巨体が倒れれば、村の人たちが気付かないわけもなあったわけで)、その夜は村の人総出で祝いの宴が開かれた。村の中央では櫓が組まれ、村の人たちは踊ったり、演奏を披露したり、並べられた料理を食べたりして盛り上がっていた。

 

その光景を少し離れたところで眺めながら、俺は料理の一つである豚串と蒸かし芋を食べていた。さっきまで村人に質問攻めされまくっていたので、一休みしていると・・・

 

「あれ・・・一人?」

「うん?セルカ・・・ああ。ユージオは村長に呼ばれて行っちまってな。キリトは村の人たちに捕まってるよ・・・・・俺は限界が来てエスケープしてきたってわけだ」

「え、えすけーぷ・・・?」

「あ、ああ・・・逃げてきたんだ!」

 

現実世界のつもりで話していた俺の言葉に首を傾げるセルカに、慌てて訂正する俺。

どうにもアンダーワールドの感覚に慣れるにはもう少し時間が掛かりそうだ。俺がそんなことを思っていると、セルカが少し残念そうな表情をしていた。

 

「もしかして、ユージオに話があったのか?」

「・・・ううん。それにしても凄いわね!あの悪魔の樹を切り倒しちゃうなんて!」

「ユージオの努力と諦めなかった精神の賜物だよ。俺たちはそれを少し手伝っただけだ」

「そっか・・・私ももっと勉強して、シスターとして神聖術の腕を磨かないと・・・姉さまみたいにはなれないけど」

 

壁にもたれかかったセルカはポツリポツリ話し始めた。

 

「私ね・・・別に姉さまみたいにあの洞窟に行ったわけじゃないの。少しだけでも、姉さまの近くに行きたくて・・・自分の行けるとこまで行ってみたかったの」

 

セルカの一件は村の人たちには隠しているので、俺たちは誰にも聞かれないように村の入り口の一つに移動し、階段に腰を掛けてから話を聞き続けた。

 

「これ以上進めないってところまて行ってみて分かったわ。私はお姉さまの代わりにはなれないって」

「・・・・・そうだったのか」

「ええ。確かめたかったの・・・私と姉さまは本当に違うのかって・・・」

 

セルカの本心を知り、空を見上げながら俺は彼女に言葉を掛けた。

 

「・・・でも、セルカは凄いよな」

「・・・えっ?」

「あんな暗い洞窟を一人で行くなんて、なかなかできないことだと思うぞ。俺の知ってる中でも、女性であんな深くまで行けるのは全然いないぞ」

「・・・そう、かな?」

「ああ・・・それにユージオを救ったのだって、セルカだろ?」

「・・・・・でも、あれはフォンとキリトがいたから」

「いいや。俺やキリトじゃあの神聖術は使えなかった。あの場に君がいたから、ユージオは救えたんだ。セルカは、セルカができることをしたんだ。そのことにもっと自信を持ってもいいじゃないか?」

「私にしかできないこと・・・?」

 

驚くセルカに俺はそのまま言葉を続けた。

 

「セルカにはセルカなりの才能があるはずだ。俺もキリトも、ユージオも違う人間だ。みんな違う才能を持っていると俺は思う。セルカも、その才能を伸ばしていけばいいじゃないか?焦らず、ゆっくりと・・・な?」

「・・・うん」

 

俺の言葉に納得したセルカはどこか緊張が解けたようだ。我に返って、自分が言ったことに痒くなった俺は頬を掻きながら視線を逸らした。柄にもないことを言ってしまった・・・キリトのが移ってしまったのかもしれない。

 

そんなことを思っていると・・・当の本人が疲弊した様子でやってきた。

 

「おっ、フォン。ここにいたのか・・・酷いぞ、置いて逃げるなんて」

「アハハ。悪い、悪い」

「うん?セルカも一緒だったのか?二人で何話してたんだ?」

「・・・秘密だ」「・・・秘密よ!」

「・・・・・?」

 

俺達の返答に訳が分からず首を傾げるキリトを見ながら、俺たちは思わず笑い出してしまった。すると、

 

「みんな!ちょっと聞いてくれ!」

 

遠くから村長の声が聞こえ、騒ぎ合っていた村人の声が途絶えた。何事か思い、俺たちは声がした中央に建てられたステージの方へと向かった。

 

ステージの周りには人だかりができており、皆の視線の先には村長とユージオが立っていた。村長が全員に聞こえるように言葉を張り上げながら、説明を始めた。

 

「ルーリッド村を拓いた始祖の大願は遂に果たされた!悪魔の樹が倒されたのだ!」

「「「「「おー!!!」」」」」

「それを成し遂げたのは、オリックの息子であるユージオだ!!」

「「「「「おおおおぉぉぉぉぉぉーーーーーー!!!」」」」」

 

村長の言葉に村人から賞賛の声と拍手が送られ、俺たちも一緒に拍手していた。

 

「掟に従い、見事天職を果たしたユージオには、自ら次の天職を選ぶ権利が与えられる。さぁ、なんなりと次なる道を選ぶがいい」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

村長から次なる天職を宣言するように言われたユージオは黙ったままだった。村人たちは何も言わず、ユージオの言葉を待ち続けていた。

 

そして、腰に据えていた青薔薇の剣を確かめるように握ったユージオは決心したようだ。口を開き、宣言した。

 

「僕は・・・・・剣士になります!」

「「「「「「!?」」」」」」

「腕を磨いて、一人前の剣士になって・・・必ず央都に登ります!」

「っ!?ユージオ・・・お前、まさか・・・!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「いや、理由は問うまい。次の天職を選ぶのはお前の権利だからな・・・

ルーリッドの長として、ユージオの新たなる天職を剣士として認める!」

「「「「「おーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」」」」」

 

村長の宣言に村全体で歓声が沸き上がった。ユージオに拍手を送りながら、セルカを横目で見ると、ホッと胸を下ろしていた。

 

ユージオの宣言に盛り上がったルーリッド村では、その日夜通しで宴が行われたんだ。

 

〈Other View〉

 

宴を終えたルーリッド村。ギガスシダーが倒された祝いで、翌日は特別に安息日ということと夜通しで宴を行っていた村人たちは全員が寝静まっていた。

 

だが、フォンたちと一緒に早めに休んだセルカはいつも通り起きていた。井戸で水を汲んで顔を洗おうとしていると、彼女に声を掛ける人物がいた。

 

「・・・セルカ」

「うん・・・?ユージオ」

 

声を掛けた人物がユージオだったことに、セルカは驚いていた。 

 

「ど、どうしたの?こんなに朝早くから・・・」

「・・・僕は央都に行って、アリスを連れ戻す」

「・・・!姉さまを・・・?」

「うん・・・この6年間ずっと考えてきたんだ。でも、どうすればいいのか僕は分からなくて・・・だけど、キリトやフォンと出会って、やっとアリスを取り戻す希望が見えたんだ!

二人と一緒なら、何でもできると思うんだ・・・君と君の家族を苦しめて、本当にゴメン」

「・・・・・ユージオ」

 

ユージオの謝罪から、ようやくユージオの本心を知ったセルカ。ユージオの言葉は続いた。

 

「でも、必ず僕がアリスを連れて帰ってくる。だから・・・信じて待っててほしい」

 

ユージオの宣言を聞いたセルカは目に涙を貯め、泣き出しそうになっていた。だが、涙を堪え、言葉を綴った。

 

「それが・・・ユージオにしかできないことなのね」

「・・・ああ」

「・・・・・そう。なら、待ってるわ」

「・・・・・セルカ」

「私、待ってるわ・・・だから、絶対に4人で帰ってきなさいよ!」

「・・・!うん!約束するよ!必ず4人で帰ってくるよ!!」

「約束よ?」

((・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・))

 

二人の誓いと約束をこっそりと盗み聞きしていたフォンとキリトは静かにその場を離れた。その約束を自分たちも果たすのだと静かに決意し、拳をぶつけ合うのだった。

 

 

 

「お待たせ、キリト、フォン!」

「おう!」「よう!」

 

数日後・・・準備を終えたフォンたちの出発の日がやってきた。ルーリッド村の入り口で待っていた二人は、到着したユージオに挨拶して出迎えた。

 

「それじゃあ、行こうか?」

「ああ」

「・・・行くか」

 

ユージオの言葉と共に三人は村を離れ、ザッカリアの街へと向かい始めた。

 

(ルーリッド村・・・やっと一歩前進か。ユージオ曰く、ザッカリアはかなり大きな街らしいな。そこで、菊岡たちと連絡が取れればいいんだが・・・)

 

次なる街を目指しながら、フォンはそんなことを考えていた。菊岡たちには聞かなければならない事・確かめたい事が山ほどあったからだ。

 

「央都ってどんな街なんだろうね?」

「さぁな・・・」

「う~ん・・・ルーリッド村よりは大きいじゃないか?多分、ユージオが見たら卒倒するとかな?」

「え、ええぇ!?そんなに!?」

「アハハ。もしかしたらだよ」

 

オーシャン・タートルで央都セントリアの映像を見たフォンはそう言ってユージオをからかった。そんなことを話していると、冷たい風が3人に吹きついた。

 

「ちょっと風が湿ってるね・・・もしかしたら、雨が降ってくるかもしれないし、今の内に進んだ方がよさそうだね」

「そうだな・・・キリト、どうかしたか?」

 

ユージオの提案に頷きながら答えたフォンは、キリトが遠くを見ながら、呆然としていたことに気付いた。

 

「・・・いや。幸先が悪いなと思ってな」

「ああ・・・あの雨雲か」

「悪い。気にし過ぎかもな」

「何してるの、二人とも?早く行くよ!」

「「・・・ああ!」」

 

先を行くユージオに答えながら、フォンとキリトは速足で追い掛け始めた。

キリトの懸念が当たるかどうか・・・3人が知るのはまだ先の話だった。

 

 




これで一旦UWでのお話は区切りとなります。

次話は現実世界のユウキたちのお話で
フォンが菊岡と共にオーシャン・タートルに向かった直後からの時系列になります。

次話の更新と共にキャラ設定も更新するつもりですので、そちらもご覧頂ければと思います。

それではまた。

次回更新 19日0時予定

キリトにしてほしいコスプレはどれ?

  • 和風装束
  • 魔導士風のローブ(魔法全く使えないけど)
  • 半獣人(黒猫)
  • 魔王っぽいドレス
  • 某五つ子たちの家庭教師(中の人つながり)

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