アニメではダイジェストで終わった剣術大会のお話です。がっつりご都合主義が入ってますが、お気になさらないでください(笑)
ちなみにお話の流れは『アリシゼーション ブレイディング』を元に原作の設定を混ぜたものになってます。
それではどうぞ!
ルーリッド村を離れ、ザッカリアへと着いた俺たち。
ここから央都へ向かうには、整合騎士への進むための入り口ともいわれる『帝立修剣学校』へ入学するのが一番の近道であることを、街の人たちから情報収集したことで知った。
そこで、まずは受験に必要な推薦状を得るため、今度開かれるザッカリア剣術大会へと出場することにした。この大会に東・西ブロックの1位の二人、または東・西ブロックの2位のどちらか勝利者一人・・・計三人が学院への推薦状を得られる、ザッカリア衛兵隊への入隊許可証がもらえるらしい。
先日、ルーリッド村の村長の証書を持って、大会の受付で入隊条件を聞いた俺たちは胸を撫で下ろしていた。もしかすれば、三人とも同時に入隊できる可能性もあるかもしれないからだ。
まぁ、出場の申込書に「アインクラッド流剣術」の流派名を書いた時には、受付の男性が困った顔をしているのを見て、俺とキリトが苦笑したのは余談だ。
「すぅ・・・すぅ・・・」
「・・・・・・・・・・・・どうした、ユージオ?」
「いや・・・キリトはよく寝れるなと思ってさ」
5日前のことを思い出しながらウトウトしていると、寝息を立てるキリトを挟み、ユージオの視線に気づいた。どうやらユージオは寝付けないらしい。
今の俺たちはザッカリア近郊にあるウォルデ牧場に住み込みを兼ねて働かせてもらっていた。ここの牧場の主ウォルデ夫妻を手伝いながら、娘さんたちのテリンとテルルの双子と時々遊んだりする中、剣技や大会の予選で披露する型の練習をしていた。
流石に牧場や馬の手伝いをするのは初めてだったが、最近ではその手伝いもかなり手際良くなり楽しくなっていた。
「早く寝ないと明日に障るぞ?」
「分かってはいるんだけど・・・本当に大丈夫かなと思ってさ」
「ユージオは心配性だな。ふむ・・・そうだな・・・」
悩むユージオの言葉に俺は体を起こし、入り口を指さした。
「ちょっとだけ体を動かすか?」
そう言って、俺は練習用に使用していた木刀(のようなもの。木の枝を削って、作った物)を持ち、ユージオも俺の後に続いた。
「はぁ!」
「よっと!」
剣がぶつかる音がキリトやウォルデさんたちに聞こえないように、牧場から少し離れた森でユージオと木刀をぶつけ合う。
ユージオの攻撃を受けながら時々カウンターを繰り出す。数十合に及ぶ打ち合いをし、ユージオの息が荒くなり始めたところで、俺は構えを解いた。
「この辺にしておこうぜ。あんまりやりすぎるのも良くないしな」
「はぁ・・・はぁ・・・うん」
「どうだ?少しは自信が持てたか?」
「・・・多分ね。でも、本当に僕なんかが勝ち上がれるのかな?フォンやキリトに勝ったことないのに・・・」
「まぁ、師匠が弟子にそう簡単に負けるわけにはいかないからな。だけど、ユージオはもっと自信を持っていいと思うぞ?ユージオの剣の筋は俺から見てもかなりいいものだと思うしな」
「・・・フォン」
俺の言葉に自信を持ち直したユージオは剣を握る手を見つめていた。握る剣を確かめるように握り直したユージオの目から迷いは幾ばくか消えたようだ。
「明日の大会がどのくらいのレベルのものなのかは分からないけど、きっと勝ち上がれるさ・・・・・まぁ、対戦相手になったら容赦はしないけどな?」
「えぇぇ!?」
「アハハ!そうならないことを祈ってるけどな」
冗談に悲鳴を上げるユージオを見ながら俺は笑い、クールダウンの柔軟(現実世界に近いアンダーワールドなので、一応している)を行って、キリトが眠る納屋へと戻るのであった。
そして、翌日。
大会の受付に出場票を提出した俺たちは注意事項が書かれた紙を読み、大会が始まるのを待っていた。
「直接的に天命を削るのは禁止・・・勝敗は武器を弾くか急所へ寸止めといった実戦形式に則ったもの、か・・・」
「ここにいる人たちとこれから戦うことになるんだね」
「ああ。それにしても、まさかこうなるとはな・・・」
ルールを確認する俺の横でユージオが待機室にいる出場選手たちを見渡していた。その一方でキリトが苦笑いしていた。その理由は・・・
「まさか、キリトとユージオが同じ赤組とはな・・・」
そう・・・受付の際に引いた大会ブロックの組み分けのくじの結果のせいだ。まぁ、俺たち3人が同じ組にならずに良かったと安堵するところでもあるのだろう。
ちなみに赤を引いたキリトたちは東ブロック、青を引いた俺は西ブロックで予選・本選を勝ち上がっていくことになる。
事前にキリトと打ち合わせしたのだが、もし3人ともが決勝に進めるようであれば、俺とキリトのどちらかはユージオと当たってしまうことになる。そこで、ブロック決勝でユージオと当たった方は僅差で負けたフリをし、3位入賞を狙おうということになったのだ。キリト曰く、
「禁忌目録に、ワザと勝負に負けるような騎士道に背く行為はしてはいけない、とは書いてないだろう?あっ、ユージオには内緒な?」
とのことだ。緊張しながら周りを見渡しているユージオにばれないようにアイコンタクトでキリトと密約を確認している時だった。
「っ!?(殺気・・・!)」
不穏な視線を感じ、俺は周囲に気取られないように視線を辿った。すると、
(あいつか?・・・衛兵見習いの制服を着てるけど・・・誰だ?)
真ん中分けの灰色の髪の青年が俺たちを睨んでいた。その視線に込められた感情は・・・憎悪と嫌悪だった。
(嫌な感じだな。今朝のこともあったし、警戒しておいて損はないか?)
今朝の事件がふと頭に浮かんだ俺は警戒を緩めることなく、予選が始まるのを待つのだった。
そして、無事にブロック予選を突破し、俺は東西ブロックの各トーナメント表を見つめていた。
俺は一番最初に予選の型を披露することとなったが、伊達に長年剣道を嗜んできたわけではない。完璧に模倣し切ってみせた俺は、会場中から拍手喝采を受けることとなってしまったのは余談だ。
東ブロックのトーナメント表を見ると、キリトとユージオは決勝で当たることになるらしい。順当に勝ち上がれば、二人も上位に食い込むことができるようだ。
(・・・って、俺が負けたら笑い話にもならないか。集中しないとな・・・!)
気を張り直すため頬を両手で叩き、呼吸を整えた俺。
そのままトーナメントが始まり、俺たちは順当に勝ち続けた。そして、キリトとユージオが準決勝を始める前に、西ブロックでは決勝戦が始まろうとしていた。
(なんとか決勝まで勝ち残れたか。それで相手は・・・例のあいつか)
呼び出されるまで控室で待機していた俺は決勝で戦う相手のことを考えていた。さっきから姿が見えないので、トイレにでも行っているようだ。
俺が決勝で戦う相手・・・今朝、俺たちに殺気を飛ばしてきた男だ。名前は・・・イゴーム・ザッカライトといったか。周りの声を聞いていると、奴はザッカリア領主の親族らしい。
(ようするに貴族ってことだよな。まぁ、俺たちみたいな田舎者がここにいることを良く思ってないのかもな・・・)
そんなことを推測していると、イゴームが控室に戻ってきた。が、こちらの顔など一切見ようとしない。丸で俺などそこになどいないような態度だ。
まぁ、そんなこと気にしてもしょうがないので、俺も気にすることなく決勝が始まるのを待っていた。
そして、俺とイゴームが呼ばれ、それぞれ会場の入口へと向かう。道中、キリトとユージオがそれぞれ決勝へと進出したことを知り、内心ホッとした。
これで少なくとも誰か2人は衛兵隊に入ることができるからだ・・・まぁ、俺もそうそう簡単に負けてやる気はないのだが・・・
そして、入り口で衛士から剣を受け取った時だった。俺はその剣に違和感を感じた。
それは、長年武具を扱ってきたゲームの勘と経験が何かを知らせていた。そして、先程姿を消していたイゴームのことが頭をよぎった。俺はこっそりと剣の天命をステイシアの窓で確かめて驚いた。
(・・・なるほどな。そういうことか・・・それなら・・・)
全てを理解した俺は覚悟を決めた。衛士から入場するように言われ、俺は会場へと足を踏み入れた。
「これより!西ブロックの決勝戦、イゴーム・ザッカリア対フォンの戦いを始める!両者構え!」
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
審判の掛け声と共に、対峙していた俺と奴は互いに剣を抜いた。
「・・・・・始め!」
「「っ!?」」
その合図と共に、駆け出した俺はイゴームと剣を切り結んだ。鈍い音が響き、鍔競り合いで剣を押し合う。そのままいったん距離を取り、再度剣をぶつけ合う。
流石は貴族というべきか、イゴームの剣筋はかなりのものだった。その剣を受けながら、俺はあることを狙っていたため、どうしても防戦に回ってしまっていた。
そんな剣戟を数合ぶつけ合い、再び鍔競りになった時だった。俺と奴は静かに言葉を交わすことになった。
「ちっ!しぶとい奴め・・・!」
「・・・・・どうした?何か思い通りにならないことでもあったか?」
「・・・うるさい」
「それとも・・・俺たちが今朝の騒動で怪我しなかったことから計画の狂いぱっなしか?」
「・・・っ!?な、何を・・・」
「ネジレヅタの香り」
「!?」
・・・どうやら図星だったようだ。俺の指摘に奴の表情が更に歪んだ。
「あんたの体からネジレヅタの匂いが匂ってるんだよ。証拠を体に残すなんて、貴族様も意外とお間抜けなんだな?」
「・・・それがどうした?」
「本で読んだのさ。ネジレヅタは乾燥させてから燃やせば、害虫を麻痺させることができる・・・例えば、今朝の暴れ馬に取りついていたオオヌマアブのような虫とかをな。
・・・あんたがあの暴れ馬をしかけさせたんだな」
俺が指摘したのは今朝起きた事件のことだ。
ザッカリアの西門でいきなり馬が一頭暴れ出したのだ。そこに居合わせた俺たちはその暴れ馬に襲われそうになったが、キリトが馬に飛び乗って抑えている間に、ユージオから原因を聞いた俺がオオヌマアブを取り除いたことで事なきを得たのだ。
偶然かと思っていたが、俺にそのことを指摘され、悪意を隠そうともしない笑みを浮かべるイゴームの態度で確信した。奴は全く悪びれてなどいなかった。
「それがどうかしたか?俺はただ無害な小虫を殺さずに放してやっただけだ。帝国基本法にも禁忌目録にも違反などしていない」
「関係のない人が巻き込まれるとは考えなかったのか!?」
「ふん。その時はその時だ。それに・・・気に入らないんだよ!お前らみたいな宿無し天職無しがこの剣技大会に出場するだと?ふざけるな!!」
そう言うイゴームの剣の力が強くなった。それだけじゃない・・・奴の剣圧までもが増し、思わず半歩引いてしまった。
「だからだ・・・受付に来た時からお前たちのことは潰してやると決めていたんだ」
「・・・なるほどな。貴族のプライドって奴か(・・・歪んでるな)」
奴に負けじと俺も剣を握る力を込める。そのまま鍔競り合いから互いに距離を取り、牽制し合う。そして、痺れを切らして攻撃してきたイゴームの剣を全て受け流す。連撃を繰り返すイゴームの表情に焦りが生まれていた。
「はぁ・・・はぁ・・・!」
「どうした、息が切れてるぞ?それとも・・・
どうして剣が折れないか、不思議か?」
「!?」
(・・・やっぱりか)
俺の言葉にイゴームが更に驚く。その表情を見て、俺が持っている剣の細工・・・天命が半分ほど減っていたことにも納得がいった。おそらく仕掛けたのはさっき控え室にいなかった時・・・兵士に賄賂を送ったか、圧力をかけたりしたのだろう。
それを察した俺はそれを踏まえてイゴームと戦っていたのだ。俺に小細工を見抜かれ、いつまでたっても剣が折れないことに痺れを切らせた奴は、上段で剣を構えた。
(ソードスキル・・・秘奥義を使う気か?・・・そいつを待ってた!)
俺も剣を構え直し、ソードスキル・・・アインクラッド流秘奥義を放つ準備をする。そして、イゴームが飛び出す前に、俺が一足早く動き出した。
「(狙うは一点・・・)・・・そこだぁ!!」
遅れて動き出したイゴームが剣を振ろうとした直前に俺は技を放った。
アインクラッド流 上下2連撃〈バーチカル・アーク〉
その一撃目はイゴームの秘奥義〈スラント〉(アンダーワールドだと蒼風斬というらしい)を完全に無力化し、ノックバックで動けなくなったところを剣の根元を狙って二撃目を叩きつける。
その一撃にイゴームの剣は真っ二つに折れた。イゴームは目の前の出来事が信じられないようで口が大きく開いてしまっていたので、そのまま呆然としている奴の首元に俺は剣を突き付けた。
「・・・終わりだ」
「そこまで!勝者、フォン!」
俺が剣を突き付けたところで審判が勝利宣言をし、会場が一気に盛り上がった。
声援を送ってくれる観客に俺が手を振る一方で、イゴームは地面に座り込んでしまっていた。俺は奴の傍に近寄った。
「ありえない・・・俺が、負けた・・・?あんな田舎者に・・・?」
「・・・負けた理由が分からないってところか?」
呆然とする俺にそう言われ、我に返ったのか、奴は怒りと憎悪の目を向けてきた。
「貴様!?何か卑怯な手を使ったな!」
「・・・お前と一緒にするな。俺は剣の小細工に気付いたから、戦い方を変えただけだ。剣の天命が減らないよう、ダメージが一点に集中しないように当てる部分を気を付けながらな。逆にお前の剣には一点にダメージが集中するように斬撃を当てていたのさ」
俺が狙ったのはいわゆる武器破壊だ。もっとも奴の剣の方が優先度(アンダーワールドにおけるアイテムのレア度を示す値らしい)が高かったようで、競り勝った俺の剣は刃こぼれしていたので、結構危険な賭けをしていたようだが・・・
内心その事実に冷や汗を掻きながら俺は奴に敗因を説明してやった。そして、まだ諦めていない奴に止めを刺すことにした。
「・・・ま、まだだ・・・3位に入れば、まだ・・・!?」
「・・・そうだ。言っとくが、別ブロックで決勝を戦ってる二人は俺と同じくらい強いぞ?」
「・・・っ!?」
「特に黒髪の奴は化け物だぞ?俺も勝てるのはやっとなくらいだからな。
・・・健闘を祈ってるよ」
そう言って、俺は会場を後にした。
その後の結果を簡潔に話そう。
まず、東ブロックでは予定通りキリトが負け、ユージオが優勝した。
何度か打ち合ってから自然と負けたので、周りからは全くといって疑われていなかった・・・もっともユージオには流石にバレて、物凄い問い詰められたが・・・
そんなユージオを宥め、キリトとイゴームの試合を見守っていたのだが・・・
俺の脅しが効いたのか、自信を無くしたのかは分からないが・・・試合はキリトの圧勝で終わった。
本当にあっという間に終わってしまったので、横で心配していたユージオや会場の観客が一瞬呆然としてしまったくらいだ。
まぁ、ともかく・・・俺たち3人は上位を独占し、無事にザッカリア衛兵隊への入隊権利を手に入れたのだった。
・・・という形になりました。
ちなみにフォンとキリトたちの組が別れ、フォンがイゴームと戦うことになったのは、原作と同じくあの方が細工をしたからです(笑)
次回からようやく修剣学院編です。
オリキャラが出たり、嫌な貴族連中が暗躍したり、フォンに色々起こったりします。
それではまた。
次回更新 5月2・3日予定
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