ソードアート・オンライン~夢幻の戦鬼~   作:wing//

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思った以上に長くなったので、次話と分けた形になりました。前編だと思って読んで頂ければと思います。

オリキャラが出たり(名前だけですが)、いきなり謎の描写が入ったりします。特に謎の描写についてはかなり分かりにくいと思いますが、種明かしはかなり後のお話になりますので、その時まで忘れて頂いて結構です(おい!?)

それではどうぞ!


第16話 「修剣学院の日々」 

人界暦380年 3月

 

剣術大会を無事に勝ち抜き、ザッカリア衛兵隊で一年間の兵役を勤めた俺たちは推薦状をもらい、央都にある北セントリア修剣学院へと入学することができた。

修剣士の一員となった俺たちは日々剣技と神聖術を学び続け、入学してから一年が経とうとしていた。

 

北セントリア修剣学院の一室。

安息日である今日、俺とユージオは未だに眠り続ける相棒を起こしに来ていた。

 

「キリト、そろそろ起きなよ?」

「う~ん・・・あと5分・・・」

「ハァ・・・起こし方が甘いぞ、ユージオ。こういう時は、こうするんだよ!」

 

優しく起こすユージオに代わり、俺は大声と共に相棒の布団を剥ぎ取った。

 

「うあぁ・・・?・・・・・ああ、おはよぅ・・・フォン、ユージオ・・・」

「目が覚めたか?天気がいいのに、いつまでも寝てると逆に毒だぞ?」

「フォンの言う通りだよ。せっかくだし街にでも買い物にでも行かないかい?」

「・・・いいな、それ。すぐに準備するよ」

 

俺とユージオの提案に、ようやくベッドから抜け出したキリトは着替え始め、それが終わるまで俺たちは軍将棋(リアルのチェスに近いボードゲームだ)で軽く一勝負することになった。

 

最初に俺がハマったのだが、同期と遊んでいるのを横で見ていたユージオを興味を持ち、俺がルールを教えてこうして時折二人でやっているのだ。

 

勝敗は俺が7割方は勝っているが、油断するとあっという間に戦局をひっくり返されるので、ユージオとの試合はかなり楽しい・・・ちなみにキリトは、見ているだけでいいとのことだ。

 

そうこうしている内に、キリトも着替え終わり、軍将棋も決着がついたので俺たちは街に出かけることになった・・・ちなみに俺の辛勝だ。一手間違えれば、確実に負けていたギリギリの試合だったのは余談だ。

 

街へと繰り出した俺たちは(寝すぎたせいで)朝飯を食べ損なったキリトの要望で、北セントリアの一画にある『跳ね鹿亭』の蜂蜜パイを買ってから市場を見回っていた。ちなみに俺も匂いに釣られて買ったパイを一緒に食べていた。

 

「う~ん!美味いな!」

「いや・・・いつ食っても最高だな、これ。ここまでの味が出せる店はなかなかないよな!」

「もう・・・二人とも行儀が悪いよ?」

「焼きたてが最高に美味いんだぜ?すぐに食べないとな」

「そうそう。味が一番良い時に食べるのが礼儀ってやつだぜ?」

「フォンまで・・・言いたい事は分かるけどさ。まぁ、言ってもしょうがないか」

 

諦め顔のユージオに苦笑しながらも、パイを食べる手は止められない。そうこうしながら、街を見回っていると、キリトが懐かしそうに語り出した。

 

「それにしても早いもんだよな。ルーリッド村を出てからもう2年か」

「あっという間だったな・・・2年なんてすぐに経っちもうなんだな」

「まぁ、色々あったもんね。剣術大会で優勝してから衛兵隊に入隊して、念願の央都に来たと思えば、こうして修剣学院に通ってるもんね」

 

この2年のことを思い出しながら、そんなことを語り合う俺たち。ユージオは少し遠くを見ながら、言葉を続けた。

 

「これが現実じゃなくって、まだ夢の中じゃないかって思うよ」

「おいおい・・・もう学院の寮に入って一年が経つんだぜ?」

「そろそろ慣れてもいい頃だろ?それとも、本当に夢かどうか確かめてみるか?」

「ハハハ・・・遠慮しとくよ」

 

俺が頬を引っ張ろうとユージオの顔に手を近づけると、後退りしながらユージオは首を横に振った。

 

ふむ・・・冗談のつもりだったのだが、ユージオは本気で取ってしまったようだ。

 

そんなやり取りをしていると、

 

「・・・キリト?」

「・・・!リーナ先輩!」

 

声を掛けた人物の方に視線を向けると、紙包みを持っていた女性が立っていた。

 

確か、彼女は・・・キリトが傍付きを務めるソルティリーナ・セルルト先輩だったか。上級修剣士の中でも次席に位置する彼女の実力はキリトからよく聞かされていたな。

 

そんなことを思いながら、リーナ先輩の元に駆け寄ったキリトたちの後に続いた。

 

「「「おはようございます!」」」

「おはよう。ここで会うなんて奇遇だな。買い物か?

そっちの二人は・・・ユージオ君とフォン君、だったかな?」

「は、はい!」「ええ」

「フフ、そんなに緊張するな」

 

背筋をピンと伸ばしたユージオに気楽にするようにと声を掛けるリーナ先輩にキリトが質問した。

 

「リーナ先輩は何の用事でここに?」

「ああ。実家に帰っていたのだが、買い出しを頼まれてな」

 

リーナ先輩の答えに俺は先輩の今の恰好に納得がいった。普段、学院では修剣士の制服を着て髪を束ねている先輩だが、今日は私服に髪をおろしたラフな格好だったからだ。

 

「お、お手伝い致しましょうか!」

「君がか?ユージオ君、君はゴルゴロッソ・バルトー殿の傍付きだろう?」

「で、出過ぎた真似を・・・失礼致しました!」

「・・・というか、こういう時はお前が真っ先に申し出るところだろう、キリト」

「えっ・・・?」

「フォン君の言う通りだぞ、キリト。君は私の傍付きではなかったのか?」

「い、いや・・・アハハハ」

 

俺とリーナ先輩の指摘を受けたキリトは苦笑いしながら誤魔化すしかなかったようだ。そんなキリトを見て、リーナ先輩はしょうがないといった感じで溜め息を吐いていた。

 

「君の気持ちは有難く受け取っておくよ。だが、今日は大したものは買わないから大丈夫だ。せっかくの安息日くらい仕事を忘れていいんだぞ?・・・と言っても、その仕事ももうすぐ終わるのか。私たちはもうすぐ卒業だからな」

 

リーナ先輩の言う通り、今の上級修剣士たちは今月の末に卒業することになっている。

卒業の日には上級修剣士たちによる卒業トーナメントが開催される。それに向け、修練を積む先輩方もいれば、傍付きに最後の教えをしている先輩もいたりするのが、今の学院の状況だったりする。

 

「リーナ先輩にはもっと色々教わりたかったですよ」

「そう言ってもらえると、先輩冥利に尽きるよ」

(・・・俺もハルト先輩から学ぶのももう終わりになるんだよな)

 

キリトたちの会話を聞きながら、今、俺が仕えている先輩のことを考えていた。リーナ先輩も色々と思う所があったのか、少し寂しい表情をしていた。すると、キリトが

 

「明日からも、ご指導の程よろしくお願い致します!!」

「「よろしくお願いします!」」

「・・・!ああ!それではまた明日、学院でな」

 

勢いよく頭を下げるキリトに釣られ、条件反射で真似をする俺とユージオ。その姿にリーナ先輩は驚きつつも答え、挨拶をしてその場を去っていた。その姿が見えなくなったところで、ユージオから緊張が切れた声が聞こえた。

 

「ふぅ・・・緊張したな」

「ユージオは緊張しすぎだろう?あそこまでガチガチになることないだろう?」

「だって、ソルティーナ先輩って凄く綺麗じゃないかい?それにああやって面して話していると迫力を感じないかい?」

「ユージオの言う事は分かるな。俺も稽古で手合わせする時には、物凄い緊張感を感じるからな」

「ゴルゴロッソ先輩も凄い気合だよ?でも、キリトはともかく、フォンは全然緊張してなかったみたいだよね?」

「う~ん・・・リーナ先輩の気迫は騎士っぽいって言うのかな?ああいう気品のある人って、好印象っていうか、嫌いじゃないんだよな、俺・・・というか、俺の仕えてる先輩がちょっと特殊というか・・・」

 

苦笑いしながら答える俺の言葉に、二人にも苦笑いがうつったようだ。

 

「まぁ、ハルト先輩はかなり特殊だからね。フォンは例外として・・・僕たち、先輩たちに追いつけるのかな?」

「どうだろうな。俺、リーナ先輩から一本取れたことないからな。リーナ先輩の強さたるや、あれで次席だからな」

「そうなると、主席のウォロ先輩の強さってどのくらいになるだろうな?」

「・・・今の僕たちのほとんどが先輩たちには勝てないわけだから、その強さは想像できないものだよね」

(・・・想像・・・イメージ、か)

 

ユージオの言葉にあることを思いながらも、俺たちは買い物を続けることにしたのだった。

 

 

 

買い物を終え、ハルト先輩から出されたある課題を片付けるため、俺は自習用の個室に来ていた。

 

課題は無事終わり、アズリカ先生(俺たちが籍を置いている初等錬士寮の寮監だ。厳しいが、真面目な修剣士には根気よく接してくれるなど面倒見はいい先生だ。キリトは苦手らしいが・・・)に申し出た時間まではまだ時間があったため、俺はこの2年間で過ごしてきたアンダーワールドについての考えをノートに纏めていた。

 

(この世界のメカニズム・・・システムステータスはこれまで経験してきた仮想世界とは違うみたいだな)

 

ノートに『UW』(アンダーワールドだと長いので、便宜上こう記すことにしている)と『SAO』『ALO』の文字を書き、『UW』と他のVRMMOとの間に線を引いた。

 

(ステイシアの窓で確認できる、人のステータスは主に三つ。天命とオブジェクト操作権限、システムコントロール権限・・・天命はHP、オブジェクト操作権限は武器や道具を使う際に求められるクラスに対応したステータス、システムコントロール権限は神聖術を唱える際に必要となるレベル・・・って、ところか)

 

自分のステイシアの窓を見ながら、今の自分の数値を書いていく。オブジェクト操作権限から順番に『47』『4512/4550』『12』と記す。システムコントロール権限以外の数値はルーリッド村から出た時からあまり変わっていなかったりする。

 

(天命とオブジェクト操作権限はレベルアップ・・・戦闘とかの経験値をつまないと駄目なんだろうな。逆にシステムコントロール権限は少しだけ上がっているから、剣術や神聖術の練習を積み重ねれば、時間はかかるが上限を上げることも可能ってわけか・・・)

 

アンダーワールドの基礎的概念を纏め、俺はこれまでのVRMMOと比較していた。

 

(そう・・・ここまでは他のVRMMOと何ら変わりはない。問題なのは・・・人のイメージ、想像力がステータスに影響を及ぼすってことだ)

 

『UW』の欄に『想像力』と書き、俺は一旦ペンを止めた。

 

(例えば、同じ剣術でもイメージによってその強さは異なってくる。自負や尊大心といったセルフイメージを持って技を放てば、その威力は何倍にも強くなる。その逆も然りだ)

 

俺はそれを経験したことがあった。ザッカリア剣術大会でのイゴームとの試合だ。奴のあの傲慢な態度は気に食わなかったが・・・奴の剣には何かを感じさせる迫力があったのだ。

 

あの時は気のせいかと思っていたのだが、キリトからリーナ先輩の話を聞いて、二人でそう結論付けたのだ。

 

(もしこの力を自在に扱えるようになったりすれば・・・システムを超越した力を発揮することができるってことだよな?・・・・・いや、もしかすればその概念すらも書き換えることもできるんじゃ・・・?)

 

まさかの可能性を考えるも、あくまでそれは仮定であることから一旦その考えを頭から捨てた。時間ももうギリギリなっていたので、片づけをしてから俺はキリト達も眠る初等剣士たちの寝室へと戻ることにしたのだった。

 

 

 

『ユウキ!?』

 

アスナの叫び声が聞こえた。アスナの視線を辿ると、マザーズ・ロザリオを放った後、倒れたユウキの姿が見えた。

 

慌てて駆け寄るアスナを横目に、俺は周囲を見渡した。

どうやらここはALO 新生アインクラッドの24層の小島のようだ。夕日が落ちようとしており、以前、ユウキがアスナにOSSを伝授した時とそっくりだった。

 

倒れたユウキを優しく抱きかかえるアスナ。一方のユウキは・・・目を開けるのもやっとの様子だった。

 

そんなユウキの姿に俺は・・・何もすることができなかった。声を出そうと口を動かしても声は出ず、体を動かすことすらできない状態で二人を見ていることしかできなかった。

 

『変だな・・・痛くも苦しくもないのに・・・なんか力が入らないや』

『・・・大丈夫。ちょっと疲れただけだよ?休めばすぐに良くなるよ』

 

涙声になりながらもユウキを励ますアスナ。そんな彼女にユウキはOSSの伝授書を手渡した。

 

『この技が・・・きっとアスナを・・・アスナの大事な人たちを守ってくれるよ・・・?』

『・・・ユウキ。私、約束するね・・・私がこの世界から立ち去る時がきたとしても、この技だけは必ず誰かに伝えるから・・・貴女の剣は永遠に絶えることはない!』

『・・・・・うん。あり、がとう・・・』

 

そのうち、スリーピングナイツのみんな、キリトたちを始め、大勢のプレイヤーたちが集まり始めた。全員が目を瞑り、中には涙を流してユウキを見つめていた。

 

アスナと言葉を交わすユウキの言葉は次第に力が無くなりつつあった。

そして、最後にアスナへと別れを告げたユウキから涙が一筋こぼれ・・・その目が閉じられた。

 

それを見た俺は思わず手を伸ばそうとして・・・

 

 

 

「ユウキ!!!」

 

叫び声と共に動いた体で手を伸ばしたが・・・そこにあったのは壁だった。

 

「・・・・・またかよ・・・!」

 

一瞬、自分がアンダーワルドにいたことを忘れていた俺は冷静になって、自分が今見ていたものを思い出していた。

 

それは夢というにはあまりにもリアルすぎたものだった。

いつの間にか、寝間着は汗でびっしょりとなっており、見ていた夢と汗で濡れた服がまとわりつくことに気持ち悪さを覚えた俺はベットから降り、皆を起こさないように静かに窓際に立った。

 

(これで3度目か。あんなリアルな夢を見たのは・・・)

 

俺があんな夢を見始めたのはザッカリアの剣術大会を勝ち残った日からだった。

 

初めて見たのは、SAOのこと・・・74層のボスフロアでキリトと正体を明かされたヒースクリフが最後のデュエルを行っている夢だった。

 

焦ったキリトが二刀流ソードスキル〈ジ・イクリプス〉を放つも、ゲームマスターであるヒースクリフには通用せず、全てを防がれてしまった。

 

硬直で致命的な隙ができたキリトに放たれた止めの一撃をアスナが庇い、HPを全損。

 

アスナの死に動揺し、自暴自棄になったキリトにヒースクリフが再度止めの一撃を放つも・・・再起し、HPがゼロになってからも動いたキリトの一撃によってヒースクリフのHPもゼロになり・・・SAOがクリアされたところで目が覚めた。

 

2度目は3か月前・・・最初に見た夢は気のせいだったかと考えていた時だった。

 

キリトやアスナの恰好からまたしてもSAOの夢かと思っていると、何故かリーファやリアル姿に近いアバターのシノンの姿まであり、俺は驚いた。

 

よく見ると、キリトたちがいたのは、オーディナル・スケールの時に見たアインクラッド100層『紅玉宮』にそっくりであり、キリトたちは100層のラスボス・・・によく似たボスと戦いを繰り広げていた。

 

そして、今日の夢・・・これらの夢での共通点は、どの夢にも俺は登場していないことだ。俺の知っている人たちはいても、俺がいることを誰も認識せず、俺がいないことを誰もが当然としているようだった。

 

(・・・あれは本当に夢なのか?それに・・・どうしてあんな夢を)

 

寝る気分ではなくなってしまったため、俺は椅子を窓際まで移動させ、月を眺めて時間を潰すことにした。

 

その時、俺の知らないところであることが起きていた。

 

〈・・・キィン!〉

 

アンダーワールドに来た時に持っていた大剣。アズリカ先生に預けているあの大剣が、保管庫で不思議な光を放ち、識別することができなかった刃の中央に刻まれた模様が浮かび上がっていたのだ。

 

それが俺の・・・

俺たちの運命を大きく変えることになることを知らずに・・・

 

 




大剣とフォンが見た夢が、アリシゼーション編の最も根幹を成す柱になっております。

実はアインクラッド編を書いてる時から、アリシゼーションはこうしよう、という構想があった結果だったりします(笑)

それではまた。

ユージオにしてほしいコスプレはどれ?

  • 考古学者(眼鏡付き)
  • 宇宙飛行士
  • 保育士
  • 放浪の旅人
  • 花屋の店員
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