ソードアート・オンライン~夢幻の戦鬼~   作:wing//

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さて、キリトの剣の登場&やらかし回です。

フォンの大剣についても少しだけ触れますが、ちょっとした中二病発表会になってしまってます・・・あれ、フォンさん?

ちょっと短めですが、次回が少し長くなる予定なのでそちらでご勘弁頂ければと思います。

そして、100話記念アンケート第2弾開催中です。記念エピソード制作決定です。
よければ、そちらも宜しくおねがいします!

それではどうぞ!


第18話 「安息日の騒動」

北セントリア第7区にある鍛冶屋『サードレ金細工光店』

 

「見ろよ、この有り様を!!」

「「「っ!?」」」

 

開口一番に店主に怒鳴られた俺たちは思わず後退ってしまった。この工房の店主であるサードレさんは酷くご立腹のようだった。

 

キリトの新しい剣を受け取るために俺とユージオは同行したのだが、さっきまでどんな剣ができるか話し合っていた空気はあっという間に消し飛ばされてしまっていた。

 

そんなサードレさんの機嫌が悪い理由は、彼が机に叩きつけたある残骸にあった。

 

「この黒煉岩の砥石は一つで3年は使えるはずが・・・この一年で6つも全損してしまったわ!」

「ア、アハハ・・・本当にすんません!」

(・・・うわぁ。同じ鍛冶師としてはサードレさんの気持ちが分かるわ)

 

ガチで謝るキリトを見ながら、俺はサードレさんに同情していた。最も、職人気質の方にそんなことを言えばどうなるかはよく分かっているので、心の内に秘めておいた。

 

「あの枝ときたら・・・どんなに力を込めようと僅かしか削れん。儂がこの一振りにどれだけの時間を費やしたと思っとるんじゃ!」

(それは・・・あの『悪魔の樹』と呼ばれてたギガスシダーの枝だからな)

 

サードレさんの言葉に、俺はキリトの剣の素材となったギガスシダーの枝を手に入れた時のことを思い出した。

 

ギガスシダーを切り倒し、ユージオと共にザッカリアの街へと出発しようとした早朝。ユージオに呼ばれ、俺とキリトと倒れたギガスシダーの元へと来ていた。

 

「ガリッタ爺、呼んできたよ」

「おお、すまんな、ユージオ。出立の直前だというのに」

「・・・ユージオ、この人は?」

 

横たわるギガスシダーの横には白髪の老人が立っていた。どうやらこの人が俺たちを呼んだようだが・・・俺の質問にユージオの代わりに老人が答えた。

 

「わしはガリッタという。このギガスシダーの前任の刻み手じゃよ」

「それじゃあ、あなたがユージオの前にギガスシダーに切り込みを入れていたんですか?」

「マジか・・・あんな苦行をずっとやってた人の一人かよ」

「・・・キリト。すいません、連れが失礼なことを言いました」

「ホッホッホッ。よいよい、気にしておらんわ」

 

信じられないといったリアクションをするキリトの頭に手刀を入れながら、俺はガリッタさんに謝罪した。が、ガリッタさんは怒るどころか、笑ってすませてくれた。ホッとしたところで、ユージオが本題をガリッタさんに尋ねた。

 

「それで、二人に用事ってなんなの?」

「ふむ・・・二人というよりも、そっちの黒髪の少年に用があってのう」

「・・・俺?」

 

ガリッタさんはキリトに用があったらしい。驚くキリトの後ろで俺とユージオは顔を見合わせていた。

 

「そうじゃ。お主にプレゼントしたいものがあってな。お主、自分の剣を持っていないとユージオから聞いてな。ユージオ、青薔薇の剣は持ってきてくれたか?」

「えっ、うん」

「ついてきなさい」

 

ガリッタさんについていくと、ギガスシダーのてっぺん・・・樹頭と呼ばれる部分の近くに来ていた。

 

「この枝を切りなさい」

「ギガスシダーのこの枝をですか・・・分かりました。ユージオ、青薔薇の剣を借りるぞ」

 

頷くガリッタさんの指示に従い、青薔薇の剣を受け取ったキリトは振りかぶり、かなりの厚みがある枝を切り落とした。

 

鈍く重みを感じさせる落下音が響き、ギガスシダーの枝が落ちた。それをキリトが拾おうとするが、

 

「お、重っ・・・!?」

「大丈夫か?そんなにおも・・・こ、これは重いな!」

 

宙に浮かすのがやっとの状態にキリトを手伝おうと切り枝の片端を持ったのだが、予想以上の重さに俺も思わず言い直してしまったレベルの重さだった。

 

「その枝は、ギガスシダーで最もソルスの恵みを吸い込んだ部分じゃ」

「それって、ギガスシダーの中で最もレア・・・ゴホン、優先度が高いものってことですか?」

「そうじゃ。それを央都へと持って行くがよい。央都に到着したら、サードレという細工師が営んでいる店へと預けるがよい。素晴らしい剣に仕立ててくれるはずだ」

 

俺の疑問に答えてくれたガリッタさんの言葉の通り、俺たちは王都へと着いた直後、ギガスシダーの枝を金細工師をやっているサードレさんに持って行ったのだ。

 

(そして、1年経ってようやく完成したんだよな。最もソルスの恩恵を吸収した枝だとガリッタさんも言ってたけど、まさかここまで時間がかかるものだとはな)

 

サードレさんに何度も謝り続けるキリトを見ながら、俺はあの時のことを思い出していた。

 

「そもそも、儂の天職は金細工師であってだな・・・」

「そ、それで!剣はできたんですか?」

「むぅぅ・・・できておるわい」

 

このままだと愚痴が続くと感じたのか、キリトが割り込みそう尋ねると、サードレさんはカウンターの下にかがみこんで、

 

「よっと・・・若いの。お主にこれが振れるか?」

 

サードレさんがカウンターに置いたそれは、ギガスシダーの枝を切り落とした時のような音を再度机から響かせた。

 

「これが・・・あのギガスシダーの枝の・・・」

「・・・ちょっと待ってもらおうか」

 

キリトが包みを開けようとした時、サードレさんが待ったをかけた。何事かと俺とユージオも少し困惑してしまった。

 

「まだ研ぎ代の話をしとらんかったな」

「・・・げっ」

「大丈夫だよ、キリト。念の為に僕もお金全部持ってきたから」

「3人分合わせれば払えないことはないだろう」

「悪い。足りない時は・・・」

「ただにしてやらんでもない」

「「「・・・・・えええええぇぇぇ!?」」」

 

サードレさんのまさかの提案に財布を取り出そうとしていた俺たちは絶叫した。だが、そんなうまい話が簡単にあるわけが・・・・

 

「さっきも言ったが・・・お前さんがこのバケモノを振れるのなら、じゃ」

「・・・どういう意味ですか?」

「フン・・・こやつ。剣として完成した途端、一際重くなりおったのじゃ」

「バケモノ、か・・・」

 

サードレさんのいう『バケモノ』という言葉に興味を惹かれた俺は、包装を外すキリトを見ていた。そして、包装が解かれ、姿を現したのは・・・

 

「・・・ほぅ」「・・・これは」

 

それは黒をベースとした片手剣だった。

黒といっても、SAO時代、キリトが愛用していた魔剣『エリュシデータ』のとは違い、こちらは全てを包み込もうとする・・・まるで吸い込まれるような闇を連想されるような色だった。

 

「・・・どうしたの、キリト。フォンもぼっーとして」

「っ・・・いや、なんでもない」

「あ、ああ・・・ちょっと剣に見とれててな」

 

ユージオの声に我に返った俺。どうやら、キリトも剣を見て何か感じたことがあったらしい。気を取り直したキリトは剣を抜いた。

 

(両刃の片手剣・・・エリュシデータも相当の圧を放っていたが、この剣はそれ以上の何かを感じるな)

 

SAOからの経験か、それとも先ほど剣を見た時に感じた何かは分からないが・・・

俺はようやくサードレさんがこの剣を『バケモノ』だと呼んだ理由が分かった気がした。

 

「・・・ふん!」

 

気合いを共に剣を振り下ろしたキリト。その剣圧に軽い衝撃波が起きた。

 

「(パチパチパチ)凄いよ、キリト」

「ああ。剣もそうだが、流石はキリトだな」

「フン。学院のひよっこ錬士が・・・そいつを振りおったか」

「これ・・・いい剣です!」

「当たり前じゃい!・・・まぁ、約束は約束じゃ。そいつはお前さんのものじゃ」

「ありがとうございました」

 

サードレさんにお礼を告げ、俺たちは学院へと戻ることにした。

 

「それじゃ、俺は素振りでもしてくるよ」

「一応、安息日だから鍛錬の範囲には入らないように程々にしとけよ?」

「夕飯の時間に遅れないでね!」

「おう!」

 

安息日にも関わらず、『剣の試し振り』という名目で剣を振りに行ったキリトと別れ、俺はユージオと共に勉強部屋へと向かっていた。

 

「ゴメンね、フォン。夕飯前に神聖術の復習に付き合ってくれて」

「気にするな。俺も良い機会だったし、試験に向けて今一度確認しときたかったところだったしな」

「アハハ、ありがとう。それにしても、安息日まで剣を振りたいなんて、キリトも凄いよね」

「まぁ、キリトだからな。でも、気持ちは分からないこともないけどな。昔・・・ゴホンゴホン。剣士として、新しい剣を手に入れたら試したくなるのはある意味宿命だからな」

「・・・なるほどね。そういえば、フォンもあの大剣が使えるようになった時は、活き活きとギガスシダーで試し切りしてたもんね」

 

一瞬、ボロが出かけた俺の言葉に納得し、そう返してきたユージオの言葉に思わず苦笑いしてしまう。

・・・うん、俺もキリトのこと言えないわ。そんなことを話していると、ユージオがあることを思い出したように尋ねてきた。

 

「剣といえば、フォン。あの大剣の名前は決めたの?」

「・・・・・うーん。これといったのがなかなか思いつかなくてな」

「そっか。キリトも言ってたけど、やっぱり大事だよね」

「まぁ、焦ることもないさ。すぐに頻繁に使うこともないだろうしな。良い名前が思いつくまで気長に考えるさ」

 

帰り道・・・キリトの剣(仮称として黒い剣にしておくか)の銘はどうするかとなったのだが、実は俺もあの大剣の名前をどうするか決めかねていたのだ。

 

SAO時代から自作の武器を作った時にはすぐに名前が思いついたのだが・・・今回はイマイチ心にくるものがないのだ。

 

一応、候補として・・・

○華我の剣(剣の模様が散っている花に見えないこともないから)

○水蓮の剣(刃の色が薄っすらとした蒼色から)

○鬼幽霊の剣(『夢幻の戦鬼』といきなり現れた剣・・・『神出鬼没』との掛け合わせ。今のところの第一候補)

 

(まぁ、今は剣よりも試験の勉強だな)

 

頭から剣の名前を振り払い、俺はユージオと共に勉強部屋へと向かうのであった。

勉強部屋に着き、ユージオと習った神聖術を復習していく。このまま夕飯まで勉強できるかと思っていたのだが・・・

 

「ねぇ、フォン。なんだか騒がしくない?」

「ああ。安息日だから学院にいる人間もそう多くはないはずだが・・・何かあったのか?」

 

廊下を行き交う人の量もそうだが、何かあったのか何人かの声が廊下から聞こえていた。何事かと思い、俺たちが勉強部屋から顔を出すと、

 

「おい、聞いたか!?」

「ああ。この後、大修錬場でやるだろう?早く行こうぜ!」

「あのリーバンテイン主席が懲罰試合を行うらしいぞ!」

 

「ねぇ、フォン。気のせいかな。僕、今、物凄い嫌な予感がしてるんだけど」

「奇遇だな。実は俺もなんだ」

 

聞こえてきた物騒なワードにユージオと俺はあいつが巻き込まれていないことを祈りたかった・・・が、どうやらその予感は的中してしまったようだ。

 

「ようやく見つけたぞ、二人とも!」

「えっ!リーナ先輩に・・・ハルト先輩!?」

「やぁ、フォン君。そこでリーナ君と一緒になってね。安息日とはいえ、君ならここで勉強しているのではないかと思ってね」

 

そんな先輩たちの様子からして、どうやら渦中の人物は俺たちがよく知っている人物で間違いないようだ。

 

「実は・・・キリトがウォロに何かをやらかしたようでな。これから大修錬場で懲罰試合を行うらしいのだ」

「「・・・やっぱり」」

 

リーナ先輩の言葉に俺たちは揃ってそう呟くことしかできなかった。

 

 

 

「「キリト!」」

「おっ、ユージオにフォン。それにリーナ先輩たちまで・・・」

 

大修練場に着くと、あっという間に噂が広がったのか、観客席にはまばらではあるがそれなりに人が集まっていた。あのライオスとウンベールの姿もあった。

 

こっちに気付いた余裕そうなキリトを見て、一先ず安心した俺たちはため息を吐いた。

 

「懲罰試合だなんて、一体何をしたのさ?」

「ちょっとウォロ先輩にやらかしちゃってな。アハハ・・・」

「いや、笑いごとじゃねーだろ」

「はぁ・・・キリトがこの一年間で何も問題を起こしてなかったから油断してたよ」

「そうだな・・・というよりも、ここまで問題を起こさなかったことが奇跡だったのかもな」

「流石だな、二人とも!」

「褒めてねーよ・・・」

 

ユージオと俺のリアクションに、親指を立て応えるキリトにイラっとしながら突っ込んだ。心配したが、どうやらいらぬ心配だったらしい・・・むしろ心配した時間を返してほしいくらいだ。

 

「リーバンテイン殿!これはどういうことだ!」

「なに。そなたの傍付きにちょっとした逸例行為があってね。大仰な懲罰を科すのもどうかと思ったので、実剣での立ち合い一本で済ませるつもりだ」

「なんだと・・・?」

 

どうやらウォロ主席はキリトと実戦形式での試合をお望みらしい。何があったのかは知らないが、あくまでも懲罰という形で行うようだ。

 

「心配をお掛けしてすみません、リーナ先輩。それにフォンとユージオも。俺なら大丈夫ですから。むしろ、主席殿と手合わせできるのは幸運なことだと思っていますから」

「キリト。立ち合いの決めはどうなっている?」

「えっ、実剣を使用するので寸止めなのではと・・・」

「ああ、言い忘れていたな」

 

リーナ先輩に聞かれ、あいまいに答えるキリトの声をウォロ先輩が遮った。

 

「私は寸止めの試合はしないのだよ。個人的な試合は全て一本先取を決めにしている」

「それって・・・!?」

「天命を削る・・・本当の実戦形式での試合ってことか」

 

ウォロ主席の回答に驚くユージオの横で、俺はウォロ主席が本気であることを悟った。もちろん、そんなルールにリーナ先輩が黙っている訳がなく、

 

「ちょっと待て!キリトは実剣での立ち合いなどしたことがないのだぞ!」

「ああ。もっとも、天命を削るような戦いは、禁忌目録により双方の合意がなくては行えない。

お前が拒むのであれば寸止めも止む無しだな・・・選択は任せよう、キリト錬士」

「止めておけ、キリト。ウォロは強い・・・危険「リーナ先輩」っ・・・フォン君?」

「無駄ですよ。ああ言われたら、むしろ勝負に出る奴ですから、あいつは・・・」

 

制止するリーナ先輩には申し訳ないが、俺はキリトの顔を見て悟ってしまった。

 

「流石はフォン。よく分かってるよな。

方法はお任せします、リーバンテイン殿。俺は懲罰を受ける身ですから」

「あの目をしたキリトは俺も・・・いや、誰にも止めることなんてできませんから」

 

俺の言葉にそれ以上何も言えなくなってしまったリーナ先輩とそんな光景を見て、ニコニコしているハルト先輩、何度目になるか分からないため息を吐くユージオの横で、俺はキリトを止めることを諦めたのだった。

 




というわけで次回、キリト対ウォロの対決になります。

まぁ、フォンは見ているだけなんですが・・・(笑)
メインは試合後のハルトとのお話になるかと思います。

そして、UA50,000達成致しました!
読者の皆様、ありがとうございます!!

それでは次回でお会いしましょう。

次回更新 24日0時予定

フォンにしてほしいコスプレはどれ?

  • 天才ゲーマーM
  • 天才物理学者で自意識過剰な正義のヒーロー
  • 通りすがりの世界の破壊者
  • 名探偵
  • MS用ノーマルスーツ
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