仮面ライダージオウ Nexus Future   作:あかLemon

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LAST 2019:オーマ・フェスティバル

 

─────────

「フハハハ!所詮貴様も"’令和"の象徴にすぎない。そんなちっぽけな存在に、最高神は倒せまい!」

ダイアクスは高らかに笑うと右拳をグッと握りしめる。ホルダーのパラドクスウォッチが赤く発光し、そのオーラが拳に憑依した。

「フンっ!」

大きく膨れ上がった赤き拳がゼロワンを襲って吹き飛ばす。アタッシュカリバーが宙を舞い、手を飛ばしても届かないところへ転がり込んだ。

「俺は、どうすればいいんだ...!こんな時に何も出来ないで、何が最高最善の王だ!」

完膚なきまでに破壊されたジクウドライバーの欠片を拾い上げ、ソウゴは絶叫した。

幾多のレジェンドを巻き込んで歩んできた覇道の情けなさすぎる終末に、ただ慟哭することしかできない。

「何のために俺は...」

その時だった。

「何を悩んでいるのだ。何を迷っている?若き日の、私よ...」

今まで幾度となく聞いてきた、憎き声。認めたくない"我"の声。

「既にお前がすべきことは知っているはずだ」

「俺の...すべきこと?」

そこは荒廃した虚無の世界。対峙しているのは...紛れもなく自分自身。

「今更何を迷っている。まさか、戦う術がないと思っているわけではあるまい?」

何も答えず、ソウゴはポケットから金と黒のライドウォッチを取り出し、表情を曇らせる。

「分かっているではないか。なぜ使わない?」

「それは...」

「怖いのか?」

「....」

「己が最低最悪の魔王になることを、恐れているのか?この期に及んで...」

少しの間があってソウゴが答えた。

「...俺はアンタにはならない、そう決心してここまで来た。俺は最低最悪の魔王にはならない」

「質問を変えよう。ではなぜお前は、オーマジオウになることで最低最悪の魔王になると思っているのだ」

その質問はソウゴの予想の範囲から大きく逸脱していた。

「力に呑まれるとでも思っているのか」

ソウゴは視線を逸らすしかなかった。なんとかしてこの虚無の空間から、絶望の荒野から抜け出したい衝動に駆られながら、それを許さないのは己自身だった。

ソウゴが答えるより先にオーマジオウが言う。

「お前の旅とは、お前の戦いとは、己自身の力にいとも簡単に呑まれるような、そんな無価値なものだったのか!」

下に目を逸らしていたソウゴが反発するようにオーマジオウを見た。その目つきは徐々に怒りをあらわにしていく。

「...うるさいっ!俺は!」

「...になれ!」

己と"己"、2人しか居ないはずのこの虚無に、救いの手を差し伸べられたような感覚に陥ったのは、幻ではなかった。

「オーマジオウになれ、ジオウ!」

ゼロワンのもとへ合流したゲイツが、ダイアクスの攻撃をさばきながら訴えてきた。

「ゲイツ!?...でも!」

「お前ならなれるはずだ!最高最善の魔王に!俺の、俺たちの言うことなら信じられる、ソウゴ!お前はそう言ったな!なら信じられるはずだ!お前は!最高最善の魔王としてオーマジオウの力を使えるはずだ!」

右手のオーマジオウライドウォッチをもう一度見つめる。その手はガタガタと震えている。

「ソウゴっ!信じるのよ、あなたを!」

「ツクヨミ!?」

「ゆけっ、我が魔王!君に残された唯一の道だ!」

「魔王!私は、君の力はその程度じゃないと見込んでいたんだが?」

「黒ウォズ、白ウォズ...!」

その時。

「ソーウーゴ!ソーウーゴ!ソーウーゴ!」

王の名を叫ぶ民衆の声が、ソウゴを取り囲んだ。

「後はお前次第だ。己を信じて禁断の力を使うか...このままあの最高神とやらに王国を譲るか。お前が王として君臨する資格は...あるのだぞ?」

「ソーウーゴ!」

「行けっ!ソウゴ!」

「行きなさい!」

「我が魔王!」

「魔王!」

道を共に歩んできた友たち。そして守り抜いてきた王国の民たちの想いをその一身に背負う。

もうソウゴの視界には虚無はない。そこに映るのは最悪神ダイアクス。

ソウゴは目を閉じ、1度大きく深呼吸をすると、迷いを断ち切るように素早くライドウォッチのベゼルを回転させた。

[オーマジオウ!]

オーマジオウライドウォッチが起動する。そのウォッチは光となり、ソウゴの腹部に黄金のベルト・オーマジオウドライバーとしてまとわりついた。

「ウオォォォォォォォ!」

勇ましい雄叫びに呼応するように、彼の足元は地割れを起こして日時計を描いた。

時計の針が動き、禍々しいライダーの文字が形成される。真っ赤なマグマが文字盤を侵食する様はさながら"火時計"である。

もう彼に迷いはない。彼に不安などない。

そこにあるのは王たる器だ。

「変身...!」

腕をクロスするように、ベルトを叩いた。

[祝福の刻!最高!最善!最大!最強王!オーマジオウ!]

複眼がセットされると、周囲に衝撃波が飛び込む。黄金の装飾がその威厳を際立たせる。

「これは...!」

ウォズはその光景を目の当たりにし、気持ちを落ち着かせるように息を吐き、そして腕を天に掲げて高らかと宣言した。

「祝え!全ライダーの力を受け継ぎ、時空を超え過去と未来を知ろしめす究極の時の王者。その名もオーマジオウ!平成と令和の象徴が並び立った瞬間である!」

 

「よし....」

オーマジオウは拳をゆっくりと握りしめた。

変身した途端、脳内に流れ込んできた別時間軸の自分の記憶。最低最悪の魔王として、孤独に、虚無の世に君臨せざるを得なかった自分、思い描いた世界を諦め、覇道を捨て、新たな世界を創造した自分。全ての自分を受け入れるように、そして最高最善の魔王として"今度こそ"君臨するという決意を握った拳に込めた。

「すっげー...!俺も、こんなとこで死んでられねーな!人類の夢のために、笑いのために!俺たち仮面ライダーは絶対に負けない!」

ゼロワンは痛みを堪えながら立ち上がり、吹き飛ばされたアタッシュカリバーを拾い上げた。

「貴様ら...!一体なんなんだ!お前たちは!」

ダイアクスは怒りに満ちた声で問う。

「ゼロワン、それが俺の名だ!」

「俺こそが最高最善の魔王だ。お前ごときが、仮面ライダーの力を使えると思うな!」

「うううう!うるさい!ここで死ねぇ!仮面ライダー共!」

ダイアクスの死の斧が振りかざされた。

 

 

──同じ頃、とある港──

「全くキリがないな」

ディケイドジオウは依然、ごった返すライダー兵の相手をしていた。

「敵軍に彼らを紛らせる作戦を考案したのは君だ、士。文句はよしたまえ」

ディエンドは絡みつくライダー兵を引き剥がし、ヘッドショットを打ち込みながら言った。

とめどなく、ガーディアンやスマッシュ、ゲルニュート、ワーム、バグスターといった怪人たちの群れが押し寄せてくる。

「彼らにはこの子達をプレゼントしよう」

そう言ってディエンドは4枚のカメンライドカードを次々にネオディエンドライバーに装填していった。

[カメンライド!ナイト!サバイブ!]

[カメンライド!ガタック!ハイパーフォーム!]

[カメンライド!ブレイブ!レガシーゲーマー!]

[カメンライド!クローズエボル!]

「いってらっしゃい。」

ディエンドに送られ、4人のライダー達は怪人の群れに飛び込んでいった。

ガタックとクローズエボルが徒手空拳で敵を捌けば、ナイトサバイブとブレイブは剣を振り下ろして怪人たちを無に帰していく。

[ヘイ!鎧武!ヘイ!ウィザード!デュアルタイムブレーク!]

ディケイドジオウはライドヘイセイバーとサイキョーギレードを振り回し、ボウリングのピンのようにバッタバッタとライダー兵をなぎ倒す。

「行くぞ。」

「ああ、士!」

ディケイドジオウがマゼンタの戦士ディケイドに戻ると、2人はファイナルアタックライドのカードをそれぞれのドライバーに装填した。

[ファイナルアタックライド!ディディディディケーイド!]

[ファイナルアタックライド!ディディディディエーンド!]

ディケイドは1度屈んでから天高く飛び上がった。ディエンドは、前方に現れた無数のカードの成す円の中心に向けてエネルギー弾を放つ。右脚を突き出したディケイドは急降下しながら浮かび上がったカードを貫通していく。エネルギー弾とディケイドが同時に怪人の群れに突撃した。そこに居た敵は、一匹残らず消滅した。

マゼンタの戦士は着地すると手をパパッ、とはたいて見せた。

「どうやら...」

「魔王降臨、ってな」

コンテナの向こうの光景を覗きながら、2人は変身を解除した。

「計画通り、かい?」

満足気にカメラのシャッターを切る士の顔を眺めながら海東がたずねた。

「俺達の仕事は以上だ。後はあいつらの問題だ」

 

────────

「あちらはエグゼイドキラーだ。こちらに切り替えよう」

黒ウォズの提案でウォズノベルはギンガミライドウォッチを起動し、装填した。

[ギンギンギラギラギャラクシー!宇宙の彼方のファンタジー!ウォズ!ギンガファイナリー!ファイナリー!]

ウォズギンガファイナリーにフォームチェンジし、最悪神ダイアクスシンに向けて光弾を放った。

[エボル!]

ダイアクスシンはエボルライドウォッチを起動し、右手に暗黒の光弾を生成して放り投げる。その弾がウォズの放った光弾を吸収してしまった。

光弾がツクヨミに直撃する寸前で、オーマジオウが右手をかざした。

「これが、あの日見た...オーマジオウの力!」

自分の顔の前で留まっている光弾を見て、ツクヨミは目を見開いた。

ピタッと動きを止められたそれは、次の瞬間フワッと霧になって消滅した。

「何!」

「俺の力は、全ライダーの力だ。仮面ライダーを侮るな!」

[ウィザード!]

オーマジオウはウィザードウォッチを起動し、炎の弾をダイアクスシンに向けて発射した。見事に右肩にヒットし、対象がよろける。

左腕を振り下ろそうとしたダイアクスシンの背後に、高速移動したゲイツがジカンジャックローの高速斬撃を叩き込む。

「ええい!鬱陶しい!」

まるで身の回りを飛ぶ蚊を払うように、両手をパタパタと動かすダイアクスシン。

そこにフライングファルコンにプログライズしたゼロワンも干渉し、ゼロワンとゲイツが縦横無尽に飛び回る。

「お前たち仮面ライダーは!どうして我々に刃向かう!?平成が続けば平成ライダーは過去のモノにならずに済むというのに!どうしてそこまでして自らを中古にする必要があるのだ!」

そう叫びながら最悪神はパラドクスの力で手足を大きく伸ばし、地面に叩きつけた。

「そんなものに執着している暇はないんだよ!」

ゲイツが言うと、ゼロワンも続いた。

「今を楽しまなくてどうする!人生ってのはなぁ!今しかねぇんだよ!俺たちが生きてるのは過去でも未来でもない!」

「減らず口を!」

「君はどうやら、平成を知っているようでまるで知らなかったようだ。これほどまでに豊潤で、これほどまでに輝かしい、平成という時代を!君たちのやっていることは平成を荒らしているだけだ!」

その言葉は、タイムレインにとってこれ以上ない屈辱である。

「俺たちライダーは、瞬間瞬間を必死に生きてるんだ!この時代を!今という時間を!必死に生きてるんだよ!それをお前ごときが管理しようなんて間違ってる!」

「黙れええええええええええええ!うおぉぉぉぉぉ!」

ダイアクスシンは我を失い、持っているライドウォッチを全て起動した。高速移動、ワープ、分身。あらゆる手でソウゴたちを撹乱しようと試みた。しかし、それは究極の時の王者の前では、悪あがきにしかならなかった。

怒りに任せてダイアクスシンドライバーのボタンを押し、最悪神は必殺技を発動させる。

[制裁の刻!死斧神必殺撃!(ダイアクスシンヒッサツゲキ)]

辺り一面を覆うほどの巨大な時計が浮かび、針が一周すると、その力が最悪神の右脚に集中した。禍々しい闇の力を纏った脚を突き出し、必殺キックを放つ。

「行くぞ皆!仮面ライダーの力を見せつけてやる!」

「行こう、我が魔王!」

「俺達の王に続け!」

「行こう、我が救世主!」

「行っくぜー!」

オーマジオウに続いてゲイツリバイブII、ウォズギンガが空中に舞い上がる。

ゼロワンはライジングホッパーに戻り、1度屈んで大ジャンプした。

[ライダーフィニッシュタイム!トゥワイスタイムバースト!]

[ファイナリービヨンドザタイム!超ギンガエクスプロージョン!]

[テラライズ!ライジングインパクト!]

[終焉の刻!逢魔時王必殺撃!]

「ライダーキッーーーーーク!」

5人4ライダーの掛け声が1つになり、彼らの必殺技がより迫力を増す。

「生意気なぁ!負けて...たまるかぁ!」

4ライダーキックに1人で対抗するダイアクスシン。

「どりゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

仮面ライダー達のキックがついに死斧神必殺撃を打ち破った。

「俺達の...平成が...嫌だ!死にたくない!」

オーマジオウが右手を払う。

「嫌だ...嫌だァァァ!うっ...ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

無慈悲にも、宝生EMは天空で眩い閃光となって散った。

そしてボロボロになったジクウドライバーと、エグゼイドライドウォッチだけが、ソウゴたちの元へ降り注いだ。

 

空に光が漂い、粒子が実体化していく。バグスターとして消滅した犠牲者たちが次々と復元され、人々は歓喜の抱擁を交わした。

 

「何っ!」

ゲイツは変身解除され、ゲイツリバイブIIウォッチが小さな爆発を起こして破損した。

「ひとつ言っていなかったが我が救世主。ゲイツリバイブIIウォッチは時間を歪ませ変身者を時間の概念から解放することで不死の能力を付与する。その代わり変身後は本来受ける負荷を一度にウォッチが受けて使用不能になってしまうんだ」

そう説明しながらウォズギンガは変身を解除し、黒ウォズと白ウォズに分離した。

一瞬、ゲイツの表情が険しくなる。すかさず白ウォズがフォローする。

「心配ない。その力がなくともこの世にはもう平和が訪れた。違うかい?」

一同の視線がオーマジオウ、もとい最高最善の魔王常磐ソウゴに向く。

ゲイツはうなずいた。

「あぁ、ウォッチが...」

ツクヨミは、ノベルミライドウォッチが2つのブランクウォッチに分離していくのを見ていた。

「時間の歪みを生成したあの男が敗れ、歪みが修正されつつあるようだね。今頃その力はエグゼイドの元に戻っているはずだ」

一度ブランクウォッチに目を配り、黒ウォズは片割れを白に手渡した。

「なら、これは君が持っていてくれたまえ」

「...そうさせてもらうよ」

2人のウォズに浮かんだ笑顔を見て、ソウゴとゲイツ、ツクヨミにも笑みが浮かぶ。

その様子を見て、或人が言った。

「ジオウ、俺も、俺の世界でみんなの笑顔を作っていくって決めたよ!だから、お前も...王国の民の笑顔を作ってくれ!」

ソウゴは或人に微笑みかけ、彼の肩をポンッ、と叩いて語りかけた。

「うん!俺も頑張るからさ、応援してる!仮面ライダーゼロワン!」

少しの間があって、白ウォズが言う。

「そろそろお別れの時のようだ、魔王、我が救世主。そして...令和のライダー。楽しかったよ、久々のこの世界は」

「また会おう、もう1人の私」

黒ウォズの言葉に、白ウォズは背中を向け、受け取ったブランクウォッチを振って見せながら、閉じかけたタイムホールに姿を消した。

彼に救世主と崇められ続けてきたゲイツは、一際名残惜しそうに彼の背中を見ていた。

「じゃあなみんな!またどこかで!」

或人は大きく手を振りながら、満面の笑みでホールの向こうへ飛び込んでいった。

ソウゴたちも、或人に笑顔で手を振り、彼を送った。

「令和の象徴、ゼロワンか...!」

自分も、仮面ライダーの歴史におけるレジェンドの1人なんだと、ソウゴは初めて実感したのかもしれない。

ツクヨミが見上げた空には微かに輝くレグルス。

彼女にはそれが、王の星から王への、祝辞に見えた。

 

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