D story   作:Azzoo

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前回までのあらすじ
レミリアから出されたあまりに無茶すぎるお題。
5秒差のマージンを覆せるか。


第39話「私=FD FD=私」

魔「ストップ!」

 

咲「何よ?」

 

魔「エボを先に行かせてくれ。私はその5秒後に出る。」

 

咲「(ため息)わかったわ。それじゃあ、カウント行きます!」

 

 

「5!4!3!2!1!スタート!!」

 

 

先にエボが出る。

「続いて5!4!3!2!1!GO!!」

 

続いて、FDが飛び出す。

魔(1本目でうすうす気づいてはいたが…こいつ、速い。ハンデをやると、それが地味によくわかる。赤城のころはすべてが慣れで把握できてたんだ…。集中しろ…。前を見ることだけに意識を置くんだ。)

 

後ろのFDのペースはすさまじかった。

滑りやすい路面でさえも、いとも簡単に乗りこなす。

 

魔理沙はこの時、遠征の厳しさを痛感していた。

 

遠征とはつまり、アウェーで向こうの地元のやつに勝つこと。幻想レーシング時代とは全くわけが違う。あのころは、まだ群馬県内だったから、いつでも走りに行ける。そんな軽い気分だった。でも、今は違う。1日のプラクティスでそのコースのすべてを学ばなきゃならない。自分はそれをバトルに生かし切れていない。なら…なら。生かせばいい。路面の状況、タイヤの状態。そのすべてを、こいつ(FD)にささげる。ハクがそうであるように、私もそうじゃなきゃならない、

 

と。

 

あいからず、FDは突っ走る。コーナーも、直線も、魔理沙はほとんどアクセルを離さなかった。ブレーキをするときは、アクセルをちょん踏みする。魔理沙にはそれが、FDに負担がかかることもわかっていた。痛いほどわかっていた。だが、それはやめられない。なぜなら、前に自分がいるから。相手のペースに合わせていた自分がいるから。

 

魔(とにかく…集中だ…。)

 

星(まだ追ってこない…ってことは…私のほうが速いのか?)

 

バトルはいつの間にか、側溝のあるセクションに入る。

エボは側溝を使わずとも、インをしっかり詰める。FDは側溝を容赦なく使い、怒涛の走りを見せる。

 

魔(そうだ…この感じ。だんだんエボが近づくのが手に取るようにわかる。)

 

 

――――これは、きついことなのかもしれない。

 

 

―――――だけど、同時に楽しいんだ。

 

 

―――FDから伝わるこの感覚。

 

 

―――――こいつがいかに走りたがっていたかが、ほんとにわかる。

 

 

―――……!石!

 

 

魔「くっ!」

 

降ってきた石で、一時的にFDのペースが崩れる。

 

だが、それはほんの一瞬だった。すぐに取り戻す。さらに、その前よりペースが上がる。

魔理沙は決して焦ってなどいなかった。FDに従うだけ。やりたいことをやらせる、やってあげる。それだけ。決してそれ以上でも、それ以下でもない。

 

星(来てる…バックミラーには見られないけど…FDから出る、すさまじいほどのプレッシャーが、私にはわかる!)

 

麓では6秒差だったのが、側溝セクションの終わりには、2秒差まで詰められていた。

魔(3本目はない…あるなら、潔く負けてやるよ…。負けないがな!)

 

ストレートに入る。

星(来るか…来るなら早く来い!)

 

星はどこかからくるプレッシャーが怖くてたまらなかった。だから、ストレートはアクセルべた踏みだった。加速しすぎたまま、コーナーに入る。

星(しまった!)

 

思ってももう遅い。コーナーを抜けたころには、もうだいぶ減速してしまっていた。

一方FDは、こちらもまたアクセルべた踏みだった、が、コーナーの前で、全力ブレーキング。するりとコーナーを抜ける。

 

抜けた先には…エボのテールランプがいた。

魔(とらえたっ!)

 

――――さーて、こっからは遠慮は無しだ。一気にけりをつける!

星(来たっ!なら!)

 

星は少し楽になったのか、少しずつペースを戻し始める。

――だが、

 

もう手遅れだった。FDがもうスペードでするりと横を抜け、そのままコーナーに入る。

明らかにFDのほうはオーバースピードだった。

星(そんなスピードで行けるはずない!)

 

魔(行ける…いあや、行ってやる!)

――――今の私は、FDそのものなんだっ!

ビカッ!

星(うっ!)

 

突然のフラッシュに、エボの体制が乱れる。

星(………!)

 

光の先には…誰もいなかった。もうFDは2つ目の折り返しに入っていた。

 

―――――もみじライン頂上 午後21:45――――

ひっそりと静まり返った駐車場に、FDのロータリー音が響く。

フ「あ、帰ってきたよ!」

 

ハク「・・・・。」

 

レ「あなたも、すぐにわかるわ。魔理沙の本気の顔。」

 

ハク「本気の顔なら今まで何度も見たことありますよ。今日は魔理沙一人で走っているから、あの人なりに新鮮なことがあったんでしょうね。」

 

FDが駐車場に入る。すると、ハクの姿が薄くなりやがて消え、FDに吸い込まれる。

ハク「お帰り、魔理沙。」

 

魔「おいおい、お帰りを言うのはこっちの方だぜ。」

 

ハク「魔理沙…。私…」

 

魔「いいのさ。お前もどうせレミに言ってたんだろ?おまえがいなかったせいで私には新鮮なことだったって。」

 

ハク「ちぇ。なんでばれちゃうかな。」

 

魔「なんだかんだでもう3年だぜ?それぐらいわかんなきゃしょうがないだろ。」

 

魔理沙はFDを停め、外に出る。

魔「うわっ!?」

 

魔理沙の体がグラッとゆらぐ。あのハイペースで集中していたのが3分も続いたのだ。体力の消耗も激しい。

すかさずレミリアが支えに向かう。

レ「おかえり。大丈夫?」

 

魔「あ、ああ。大丈夫だ。だがちょっとくらくらする…。」

 

レ「そうね…。じゃあ帰りのFDの運転は咲夜に任せなさい。あなたは1号車に乗ってゆっくり休んでなさい。」

 

魔「ほんとなら断るとこだが…。ま、事故ってもハクに申し訳ないからな。了解だ。」

 

魔理沙がとぼとぼと1号車に向かう。

エンジンつけっぱのFDのヘッドライトが、それをギラギラと照らしていた。

霊「あれ?なんか忘れてるような気が…。」

 

レ「気のせいじゃん?それより咲夜は?」

 

フ「下じゃないの?」

 

魔「下だと思うぜ。」

 

レ「しょうがない…。霊夢。私を乗せて下に咲夜を取りに行くわよ。」

 

フ(あ、絶対強がってるわ、これ。)

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