Fate/Prototype Suspected archives   作:刻乃

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 二回目にしてこの短さ......
 一話を二分割にすればよかったのかもしれないですね(苦笑)


2/1 深夜-2/2《一日目》

「楽にしてやるよ......」

 胸に深くずぶりと刺さる刃を呆然と見つめて、視界が鮮明さを失ってゆく。

 遂には目の前が真っ暗になって、それからまぶたの裏に焼きつく一つの光芒があった。

 

 ——風が吹く。

 そっと目を開ければ、いつの間にか、わたしは白い光の迸る只中にいた。

 さっき散らされてしまった花弁が、煽られてひゅうと宙に舞っていく。

 足元のタイルが組み変わり、光が生まれてゆく。

 宙で仄かに灯るそれらは、月光も相まって、このガーデンを幻想的に輝かせ。

 

「ふぅ......!?」

 突如、巻き戻っていくように突き立てられた槍は、目の前の男ごと吹き荒れる暴風に押し返され、堪らずガーデンの壁まで吹き飛んでいった。

 ——眼前を覆い尽くすような魔力の奔流が、黄金の輝きへと置き換わっていくのを目にした。

 胸元から生まれた一際強い閃光が、わたしを取り巻くように舞い上がって、しっかりと姿を持った『彼』は、ふわりとわたしの前へ降りてきた。

 

 とても頭の整理がつかないままに、そのそっと開かれた目と目が合う。

「えっ......あ......」

 降り立ったのは、翡翠の瞳に、金糸のような髪がそよ風に靡ぐ、御伽噺の登場人物みたいな。

 その人間離れした美貌に見惚れてしまいそうになった。

 

「チッ! やってくれたな、黒魔術師!!」

 途端、姿勢を持ち直した男がわたしに叫んで槍を振るおうと向かってきた。

 痺れを切らした様子の男へ彼が振り返りざまに腕を振るえば、風が吹いて、わたしの前髪がそよぐ。

 男を再び宙へと吹き飛ばした。

 この風は彼が起こしたモノだろうと、そして気づいた。

 彼が使ったのは、不可視の武器を取り巻く猛風だったのだということに。

 首までを覆う鎧は蒼銀の光を纏っていて、直上の夜空の月光を連想させた。

 

 わたしに振り返って優しく微笑む。

 男を遮るように立っている、王子様みたいな人。

 その目には、確固たる自信を内包しているように見えた。

 そして振り返って、そのまま既に男へと肉迫している。

 見ると、男の持つ槍は半ばで風に折られ、不可視の刃を受けかねている。

「貴様ッ!」

 刃と刃がぶつかり合う甲高い音が響いて、ぎりぎりと鍔迫り合う二人。

「テメェ、何の英霊だ」

「さてね。()とは違って、君は分かりやすいけれどね。()()()()

 ようやく口にした彼の言葉は、彼自身もサーヴァントであることを示していた。

 

「......いけ好かねえヤローだ」

 槍の男、ランサーは、見えない武器を受け流してから、槍の先端で押さえ込んだ。

 しかし、目の前のサーヴァントが立て直すのは早かった。

 敵の手には槍があるというのに、深く踏み込んだ彼は、腕を振るったのを隠れ蓑としてランサーを蹴り飛ばした。

「だが、ギャップあるじゃねえの......!」

 蹴りを入れられたランサーは、大きく仰け反ってから壁に背を打ちつけた。

 尻餅を着いたランサーはそれから、その奮わなさに苛立ちを見せ、言った。

「卑怯者め——隠してんのはそりゃ、なんだ」

 

 睨みつける表情にはどこか凄みがあって、背筋が凍りつきそうになる迫力があった。

 しかし目の前でそれに応えるようにして、顔の横で武器を両手で構えると、彼は言った。

「......さぁ」

 白い息を吐いた王子様然とした容貌の彼にはあまりに似つかわしくない、皮肉げな表情をしていた。

「槍なのかもしれないし、斧なのかもしれない。あるいは剣や弓、ということもあるかもしれない」

 サーヴァントは、英霊としての側面から、自我はもちろんとして、人智を超えた道具を持っていて、それはサーヴァントの奥の手、最奥の神秘、『宝具《ノウブル・ファンタズム》』とされる。

 そういう意味でも、強力さのみでなく、概念的な強さをも持ち合わせているサーヴァントを七騎も召喚することが出来る聖杯は、願望器として優れているんだろうか。

 

「ぬかせ、さっき鍔迫り合ったそれは間違いなく剣だ。それにその輝かしい程の正道さは」

 しかし、続けようとするランサーを制した彼は言った。

「貴殿のそれは」

「宝具ではないだろう、ランサー」

 ランサーは肩を竦める。

 そして、その様子に武器を下げたのを見届けてから、こちらに背を向けたのだ。

「今日は分けってことにしないか、こちとら、様子見としては上々だろうからな」

「......」

「後ろからぶすり、というのはさすがになさそうだな。じゃあな、()()()()

 二騎のサーヴァントが繰り広げる闘いに、呆気に取られていた。

 どこか美しささえ内包する、人智を超えた闘い。

 わたしにはランサーを撤退させた彼が何故ここに現れたのか、解っていなかったというのに。

 ランサーがガーデンから出ていったのを見届けてから、彼はわたしに向き直った。

 

()はセイバー。君を守る————サーヴァントだ」

 

 そうして、『召喚』の対価には何が充てがわれたのかに思い至った。

 魔力、わたしが保有していた魔力を、召喚に使用したのに、ただそれだけで何故繕えるだろう。

 ......結果として、わたしは再び意識を失うことになった。




 キリがいいのでとりあえず投げました。
 時間があるのに話が進まないとやっぱり遅筆を治したくなります......
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