猫達の恩返しは異世界放置   作:黒猫黒

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現世に残された主人公の為なら命をかける、猫達の話



猫達の動き

主様がこの世から消えたのが一瞬で分かった、取り乱しそうになるが思いとどまる。

こんな一瞬で命を奪われる筈が無い、主様は最低限の護身術が使える筈だ。

急ぎ屋敷に向かい若様の現状を確認しに行く。

 

屋敷に着くと唐突に横から何かに押し倒された、確認すると白髪の頭が見えた。

 

「白ですか、退いてください。

今から主様の現状を、確認しに行かなくてはいけないのです!」

 

「お前!よくもそんな事が言えるな!」

 

白が怒りから白い髪の毛の先から色が赤く染まって行く。

どうやら白も若様が消えたことに気が付いていたみたいだ、まぁ当たり前かあんなに大きなエネルギーの塊が消えたのだから。

 

「妾は気に食わないが、若様の監視役にお前が選ばれた時。

お前ならばと諦めたのに今回はなんという体たらく!

こんなことならば、無理矢理にでも妾が若様のお側に居れば良かったのだ!」

 

白は怒りで尻尾と猫耳が飛び出している、そのどちらも血の様な赤に染まっていた。

 

「白退いて下さい」

 

「お前!よく冷静で居られるな!」

 

「…冷静?これが冷静で居られますか!

私は白と違い堪えているだけです、急いで当主様に確認をとらないといけませんから、白いい加減にしてください」

 

よく見ると黒も尻尾と猫耳を逆立てて、冷静を装っているだけだった。

 

「…」

 

白が無言で黒の上から体を退かす、黒は駆け足で当主の元に向かい、その後を白がついて行く。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「お前達やっと来たのかい」

 

当主様のによると既に奈月が追いかけた後の様でどうやら一足遅く、出遅れた事を知る。

 

当主様の説明によると、主様はなんとあちらの世界に行かれた様で、どうやら何とか追いかけようとしているらしかった。

 

「それで今のところは」

 

「あそこらの猫又に頼むしかないだろうね」

 

「私の魔力を使えば何とか成りませんか?」

 

「それは無理だね、送った本人にしか正確な場所は分からない。

お前の魔力を使った所で、陽にはたどり着けないだろうね」

 

「そんな…」

 

「そこまで追いかけたいなら、奈月の後を追いかけな。

今ならまだ間に合うだろうよ」

 

「!失礼致しました」

 

その言葉を聞いた途端に白が駆けていく

 

「当主様、私も奈月と白の後を追います、失礼致します」

 

「ああ、行っといでこうなったお前達は陽にしか止められない。

あの子が御守りを持っている限り直ぐに追い付けるだろう」

 

その言葉を聞いた途端に黒も走り出す、目指すは皆同じ、私と同じ黒髪金目の猫又の所。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「で、どうしようか?」

 

陽の出したうどんで一息ついた後、これからの事を話し合う。

 

「先ずは自己紹介からはいかがですか?」

 

「あっそうだったね、自己紹介がまだだったね。

俺の名前は式神 陽(しきがみ ひなた)護身術なら少しは使えるよ、よろしくね」

 

「私は魔眼族のクラリスと申します。

魔法なら得意ですので、よろしくお願いいたします」

 

「魔眼族?それって一体?」

 

「魔眼族は魔眼族ですよ?普通の街に居る様なごく一般的な」

 

「ごめんね、物知らずでそう言う事に詳しく無いんだ。良ければ説明して貰えるかな?」

 

「…?はい、喜んで」

 

クラリスは魔眼族を知らない事に首を傾げていたが、詳しく丁寧に教えてくれた。

 

「それじゃあ、クラリスの首にも宝石が有るの?」

 

「はいもちろん、本当は家族か親しい相手にしか見せないのですが。

陽さんになら…どうぞ」

 

そう言ってクラリスは髪の毛を横に分け、首の後ろの宝石を見せてくれる。

 

「うわぁ…凄く綺麗だ…こんなに綺麗な宝石初めて見たよ」

 

宝石は日の光を浴びてキラキラと光っていた、虹色に見えるがその中でも水色が強く光っている様に見えた。

陽は思わず手を伸ばし、宝石に触れていた。

 

「…んぅ!」

 

「え?」

 

「あっ!あの宝石は敏感なので、その…あの、でもどうしてもとおっしゃるのならどうぞ…」

 

「えっそんなに大事な場所だったの!ごめんね気安く触れたりして」

 

「あ、いえ陽さんならどうぞ、お好きな様に」

 

「いやいや、そんな大切な所触れないよ」

 

「…そうですか?」

 

何故かクラリスは残念そうに髪の毛を元に戻す。

 

「クラリスは暴漢達に襲われてここまで来たんでしょ?もう大丈夫なの?」

 

「はい!自己紹介もすみましたし、朝まで待ってここを出発しましょう。

私もう大分魔力が回復しましたので、あんな暴漢達にもう負けませんよ!」

 

「俺も霊力で何とか加勢するよ」

 

「えっ!霊力が使えるのですか?それなら百人力ですよ!…でも何故珍しい霊力持ちがこんな所に?」

 

「俺も気付いたらここにいて、よく分からないんだ」

 

咄嗟に異世界から来た事を誤魔化す、クラリスには悪いが、まだ完全に信用しても良いか分からないからだ。

 

「…そうですか、うーん私と同じでワープで失敗でもしたんですかね?」

 

「そっそうかもしれないね」

 

ワープの失敗で誤魔化す事にした、これからもこの誤魔化し方なら使えそうだ

 

「それじゃあ朝までもうひと眠りしようか」

 

俺がそう言うとクラリスは毛布を持ってやって来る。

 

「毛布は一つです、陽さんがお使いください」

 

「いやいや、女の子に寒い思いはさせられないよ。

クラリスが使いなよ」

 

そう言うとクラリスは何かを思い付いたのか、俺のすぐ横に密着して座る

 

「二人で使えば暖かいですから、こうしましょう」

 

言うが早いか二人で一つの毛布にくるまる、顔のすぐ横にクラリスの顔がある。

どうやら俺の肩に頭を乗せているようだった。

 

「ク、クラリス?」

 

「押し問答に成るよりは良いかと思いまして、ダメ、でしたか?」

 

「クラリスが良いならこれで、俺も暖かいし」

 

「ふふ、良かったです。それではお休みなさい陽さん」

 

「お休みなさいクラリス」

 

その時ふと何時もの癖で懐の御守りを触ろうとする、結果やっと無くした事に気が付くが時既に遅し。

猫達は既に動き出していた。

 

「不味い、かな?」

 

何処までも呑気な主人公であった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

その頃の白は奈月に追い付いていた。

一人と一匹は走りながら話す。

 

「人間!」

 

「白さん?どうやら追いかけて来たようですね」

 

「若様の事ですもの」

 

「黒さんはどうしたんですか?普段なら若に何か有れば、1番早く駆けつけますよね?」

 

「あのメスは当主様にまだ話を聞いていたから、置いてきたわ」

 

「相変わらず白さんは、若の話以外はどうでも良いんですね」

 

「当たり前よ」

 

「白!追い付いたわよ!」

 

「っち!あのまま当主様と、話をしていれば良いものを…」

 

「白後で覚えてなさいよ、貴女のせいで奈月に出遅れたのだからね!」

 

「さぁ、貴女がノロマなのでしょう?」

 

「二人ともあそこです、もうすぐつきますよ。

気を引き締めて下さいね」

 

「人間に言われなくても、彼処から若様の匂いがぷんぷんするもの!」

 

「確かに間違いなさそうですね」

 

そこは確かに昨日主人公が猫達を撫で回していた、路地裏だった。

その時路地裏の奥から金目の黒猫がやって来る。

 

「おや、また人間がやって来た様だけど。

昨日の人間とは違って、食べても良さそうだねぇ」

 

「やはり若は昨日ここにやって来ていましたか、若をどうしたんですか?」

 

「人間風情が偉そうに、このまま食ってやろうか!」

 

「くぅ、これは渡したくなかったけれどそうも言ってられませんね」

 

奈月は懐から、若の霊力が貯まった御守りを取り出した。

 

「それは!人間それを何処で!」

 

「これで若を飛ばした場所まで、連れて言って下さい」

 

「良いのかい、それは対価が勝るんじゃ無いか?」

 

「若に勝る物なんて何もありません!」

 

奈月が交渉を続けている間二匹の猫達は、苛立っていた。

 

「奈月さん苦戦しているようですね」

 

「妾があんなメス猫蹴散らしてくれるわ」

 

「私にも勝てない、貴女がですか?」

 

「うぐぐ」

 

そうこうしている間に交渉は終わり、若の御守りを黒猫に渡す奈月

 

「これで人間一人と猫又二匹をあちらの世界に送るだけだなんて、儲かったわ」

 

「何でもいいですから早く、若に追い付きたいんです!」

 

「若様の御守りが!」

 

「白悔しいけれど仕方ないのよ、悔しいけれど…」

 

その後路地裏は光に包まれ、残ったのは黒猫一匹だけだった。

 

「あぁ、言って置くけれど帰りは自分達で帰ってきな。

そこまでの責任は終えないよ」

 

既に聞こえない独り言を、ニヤリと嗤いながらポツリと呟いた。




白と黒の話
黒は白のせいで出遅れる。

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