機動戦士ガンダムSeeD DESTINY~ANOTHER DESTINY~   作:Pledge

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皆さん。寒いこの季節、風邪などひかずに過ごしているでしょうか。

私はここ数年は風邪で寝込むことも無い、健康体でございます。

それはさておき、お約束通り、今週二回目の更新をします。




Ex Operation - 3 影に潜む者

C.E.72年某月某日

 

L3宙域のデブリの陰に、二隻の【ZAFT】船籍の艦が停まっていた。

ナスカ級ティセリウス、ハートウェルの二隻である。

 

所属は【WIA】第四課所属の艦。第四課の主たる任務は、不穏分子の排除。

 

そのようなことを任務とする彼らがいるということは、つまりはそういうことである。

 

今回の作戦の指揮を執るのは、第四課実働部所属バルフ・エドワルド。

 

顔に刻まれた深い皺で年齢の高さをうかがわせるが、モニターを睨み付ける瞳は鋭くそこには経験の深さを漂わせていた。

 

バルフは左腕の時計を確認すると、間もなくしてタイマーが0となる。バルフは正面へと視線を移すと、短く命令を発する。

 

「作戦開始」

「作戦開始。繰り返す、作戦開始。アルファ、ブラボー分隊、発進」

「艦長。ヘルムホルツよりキューベック、ロメオ分隊発進完了」

「残った部隊も、発進準備はしておくように」

「はっ」

 

ハートウェルよりゲイツRがスリーマンセルで二組出撃し、バルフの視線の先にあるコロニーへと突入。

 

時を同じくして、コロニーの反対側にて同部隊同課所属のナスカ級キュヴィエ、ヘルムホルツの二隻が待機していた。

 

オペレータの言葉通り、ヘルムホルツより同じくゲイツRが同じ編成で六機出撃。

 

「艦長、アルファ分隊より入電。敵、未だに発見出来ず。逃走の可能性高し」

「……内部の捜索を完了次第、部隊は帰投。本国に帰還する」

「了解」

 

バルフは端的に必要な命令を伝え終わると、肘掛部分を人差し指で静かに叩き始める。

 

「(一足遅かったか。奴らも素人では無い。むしろ、ベテランと呼べる者達の集まり。思った以上に、時間が掛かるもしれんな)」

「全分隊の帰投を確認」

「本国に進路を取れ。帰還する」

 

 

 

 

C.E.72年9月下旬

 

【アプリリウス】議事堂9Fは、全てが【WIA】の部屋で埋め尽くされている。組織の特性上、秘匿性の高い情報を扱うための処置である。

 

【WIA】はそれぞれの課ごとの部屋と、執務室が二部屋。そして、会議室が一部屋設けられている。

 

執務室があるのは長官であるレオハルトと、実質的なNo.2に位置付けされる筆頭補佐官の二名のみである。

 

レオハルトが視察で留守にしている間、指揮を任されているのは筆頭補佐官である。すると必然的に、報告を受ける立場にもなる。

 

筆頭補佐官を務めるのはアイザック・クーロン。白服の隊員で元々は優秀なMSパイロットだったが、【グリマルディ戦線】で負傷。

 

左腕と右脚を失って義手・義足となり、さらに怪我が原因で右眼も失明してしまった。その後、【WIA】の前身となる諜報部に異動。

 

【WIA】に改編後は、レオハルトの指名により筆頭補佐官に任ぜられた。

 

「それでは、月例会議を始める。報告のある者は順に起立」

 

会議室には集まったのは、【WIA】の主要メンバーである六人。一人は勿論、筆頭補佐官アイザック・クーロン。

 

二人目は、第一課課長ウィグナー・ラゼッティ。三人目、第二課課長グスタフ・ストークス。四人目、第三課課長エルンスト・クヌート。五人目、第四課課長アルマン・カルノー。

 

そして最後の六人目が、次席補佐官アーネスト・ラザフォード。以上の六人で、今回の月例会議は進められる。

 

「第四課課長アルマン・カルノーです。出撃しておりましたエドワルド隊が戻りましたので、報告します」

 

まず最初に席を立ち報告するのは、第四課。

 

「目標の施設にて、対象は発見出来ず。すでに逃走した後だったようです」

「空振りか」

「申し訳ありません」

「何も知らない素人を相手にしているのでは無い。惜しくはあるが、ある程度は仕方ないということも理解しているつもりだ」

 

そう言ってアイザックは集まっている一同を見渡しつつ、任務未達成に対しての理解を表す。

 

理解を示しているとはいえ、目標を逃し続けているのもまた事実。そのことに対し、【プラント】内の諜報活動の任を与えられている第三課課長のエルンストは頭を下げ謝罪の言葉を口にする。

 

「だが、いつまでも空振りというわけにはいかない。奴らがジンM2型を手に入れたという情報もある」

「旧式とはいえ、優秀な機体です。パイロットによっては、充分な脅威となります」

「いつまでも放置しているわけにはいかんのだよ。第三課については、これまで以上に情報収集に尽力するように」

「了解しました」

 

自身へと向けられた 咤にエルンストは立ち上がり頭を下げ了解の意を示すと、静かに着席する。

 

全員が着席したのを確認してか、第二課課長のウィグナーが立ち上がる。

 

「第二課より報告します。主要国家の情勢について、まずは大西洋連邦。停戦後、穏健派として知られるジョゼフ・コープランドが大統領に就任したことによって、ブルーコスモスの弱体化、反プラント運動の沈静化が見受けられます」

「なるほど。国内では弱腰と見られてはいるが、我々にとっては有利か」

「はい。次にユーラシア連邦。ユーラシア連邦については先の大戦の際、【JOSH-A】自爆により戦力に大打撃を受けたことで発言力は依然として低く、反大西洋連邦気運が西部地域を中心に今も拡大を続けています」

 

エルンストは事前に準備した資料に視線を落としつつ、時には集まった人間を見渡しつつ話を進めていく。

 

「最後に【オーブ】です。先の大戦後、【ユニウス条約】により主権は回復。ウズミ・ナラ・アスハの遺児、カガリ・ユラ・アスハが代表首長に就任。国土の復興に全力を注いでるとのこです」

 

【オーブ】は先の大戦中、連合の侵攻を受け国土は焦土と化した。その後も連合からの占領統治を受けていたが、【ユニウス条約】には地上の国境線および国家を戦前の状態に復旧すると記されている。

 

この規定により【オーブ】は国家主権を取り戻し、再び独立国家として名乗ることになった。

 

「それと、【蛇】からの報告なのですが。【オーブ】が、新型の可変式MSの開発に着手したという情報もあります」

「可変式か。あの国は海に囲まれている。自国の国土で戦わないことを考えれば、必然か」

「今まで陸戦用のMSしかなく、海上で連合を叩くことが出来なかったのが、国が荒廃した原因だ。遅すぎるのだよ、あの国は」

 

【WIA】は長官を務めるレオハルトが情報を重要視していることから、各国に機関員(インテリジェンスオフィサー)。要はスパイ、潜入工作員を方々(ほうぼう)に送り込んでいる。

 

【WIA】では、彼らを総称して【蛇】と呼称している。

 

【オーブ】に潜入している【蛇】は、【WIA】に改編される以前から潜入しており長い時間をかけて深くまで潜っている。

 

「空戦用のMSを開発したところで、それだけのこと。獅子を失ったあの国に、脅威性を感じることは無い。他に報告。……無ければ、これで月例会議を終了とする。解散」

 

アイザックの解散の言葉を合図に、一同は席を立ち会議室を出て行く。部屋に残ったのは、アイザックと次席補佐官のアーネストの二人。

 

「ラザフォード、報告を聞こう」

「報告と言われましてもね。先月と変わらずとしか」

「それでもだ」

 

完全に二人だけになったところで、依然として席から動かずにいたアイザックとアーネスト。アイザックはアーネストに視線を向けると、報告を求める。

 

アーネストはやや肩をすくめて見せると、アイザックに対し報告する。

 

「【大天使】は依然として翼を休めています。【虎】は世界を見ており、【歌姫】は子供たちの世話をしているようです。【正義】は【獅子の娘】に付いています」

「動きは無しか」

「ええ、無しです。……ここまで監視するなら、一思いに【蛇】の毒を与えたらよろしいのでは?」

「長官の命令が無い。引き続き、監視を継続しろ」

 

アイザックのその言葉を聞いて、アーネストは席から立ち上がると肩をすくめつつ部屋の出入り口へと歩いて行く。

 

相変わらずの飄々とした態度を崩さないアーネストに、アイザックは眉を顰めつつ去っていくその背にさらに一言付け加える。

 

「監視のみとはいえ、気を緩めることの無いように部下の手綱を握っておけ。いいな、第零課課長アーネスト・ラザフォード」

「了解です、筆頭補佐官殿」

 

アーネストは背中越しに左手をヒラヒラと振りつつ、そのまま会議室を後にする。

 

アーネストと入れ替わるようにして、長身の切れ長の瞳をした女性が入ってくると静かにアイザックの後ろに立つ。

 

彼女は筆頭補佐官専属書記官ルチア・フェリシアーノ。アイザックの補佐を務める女性で、元々は第四課の人間だったがアイザックの希望で書記官となった。

 

「よろしいのですか?」

「何がだ」

「ラザフォード次席補佐官です。任務に対しての真剣さが感じられません。長官のご意思に反抗する可能性も」

「奴はあれで構わん。……味方をも欺こうとするか、喰えん奴だ」

「何か?」

「いや、何でもない。それで、どうした?」

「長官がお戻りになりました。留守中の報告を聞きたいと」

「お戻りか。わかった」

 

アイザックは立ち上がると、ルチアを伴いレオハルトが待つ執務室へと向かうのだった。

 

 

 

 

会議室を後にしたアーネストは一人で長い廊下を歩いていると、いつの間にか背後にいる自分の書記官に話しかける。

 

「ジオ、【蜘蛛】から何か報告はあるか?」

 

ジオニア・ユース・ヴィンセント。アーネストの専属書記官として補佐を勤める、黒髪・短髪の体格の良い男性である。

 

一見すると脳筋のように見られがちだが、専属書記官を勤めるだけあり切れ者である。

 

二人はエレベーターに乗り込み、ジオニアは目的の階数を押すとゆっくりと動き始める。

 

「毎日の定時報告だけだ。変化無し、ってな。だが、命令があれば、すぐに実行に移せる」

「【掃除】の方はどうだ?」

「あいつらに先んじて【掃除】も出来たし、MSも回収した。アフターフォローも完璧だ。だが、派手に追い回したせいか残りの尻尾が掴めねぇ。奴らから『教えてもらった』場所も、もぬけの殻だ」

「そのまま続けろ。長官の手を煩わせるな。【掃除】は早めに終わらせないとな」

「了解」

 

そこにいたのは先程までのアーネストではなく、レオハルトが極秘裏に組織した冷徹無比な第零課をまとめる、アーネスト・ラザフォードだった。

 

そんなアーネストを見て、ジオニアは静かに嗤うのだった。

 




一週間のうちに2回も更新したのは、初めてではないでしょうか。

次の更新はいつなのか、まったく分かりません。
気長に待っていただけると有難いです。

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