機動戦士ガンダムSeeD DESTINY~ANOTHER DESTINY~   作:Pledge

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皆さま、明けましておめでとうございます。

早いもので、一年が終わり新しい一年の始まりですね。

本作品もかなりゆっくりではありますが進めて参りますので、本年もよろしくお願い致します。


Ex Operation - 2 取り戻せない過去

某日、レオハルトは【WIA】の長官としての執務に励むと共に部下からの報告を受けていた。

 

「調査の結果、先日の【アルカナム襲撃事件】はほぼ連合軍と思われます」

「ほぼ、か」

 

部下である【WIA】の人間の報告を受けつつ、レオハルトは報告として上がってきている書類を片付けていく。

 

様々な情報がレオハルトの元に報告され、レオハルトは情報の重要度で分けていく。

 

部下の報告にレオハルトは反芻するように呟くと、その理由を問う。

 

「お気付きかとは思いますが、実行したのは非正規部隊。そのため、指揮系統が不透明であり、犯人と思われる部隊も見当たりません」

「なるほど。この案件は終了とする。調査に当たった人間には休暇を与える。休ませてやれ」

「ご配慮、ありがとうございます」

「報告は以上だな?引き続き、情報収集に努めろ」

 

レオハルトの言葉に部下は敬礼をするとそのまま部屋を退室する。

 

レオハルトは残った書類を処理し終えると、椅子の背もたれに背中を預けると引き出しから一枚の写真を取り出す。

 

それは士官学校(アカデミー)の卒業式の時に撮った仲間たちとの写真。自身の隣には笑顔を浮かべるフィシアにクルーゼ。他にも多くの仲間が、同じく笑顔を見せている。

 

「残るは俺だけか・・・・・・」

 

写真に写るメンバーは、レオハルトを残して亡くなってしまっている。クルーゼに至っては、自身が討ったも同然。あの時の選択に後悔はしていないし、間違っていたとも思っていない。

 

それでも、レオハルトの心には大きなしこりが残っている。

 

レオハルトは目を閉じると、思っていた以上に身体は疲れていたのか深い眠りに入ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6年前

 

C.E.65年。政治結社であった既存の【ZAFT】を解体し再編。プラント内の警察保安組織と合併、モビルスーツを主戦力とする軍事組織【ZAFT】が新たに創立・建軍された。

 

この時、レオハルト・リベラント14歳。ラウ・ル・クルーゼ19歳。後に親友となり戦場で銃を向け合う二人は【ZAFT】で出会った。

 

レオハルトとクルーゼは同じパイロット養成課程に入ると、二人は瞬く間に頭角を現していった。同時期に加入した同期より、頭が一つも二つも抜きん出た存在だった。

 

昼食時、クルーゼは食事の載ったトレイを手に食堂を見渡す。すると、ある一角でクルーゼの目が留まる。視線の先には、真紅の髪色が目立つ少年の姿。

 

クルーゼはわずかに笑みを浮かべると、その少年の元へと向かう。

 

「この席、いいかな?」

「・・・・・・」

 

顔を上げた少年の顔を見て、クルーゼは息を呑んだ。鋭い瞳に抜き身の刀のような雰囲気。クルーゼの背中に嫌な汗が一筋流れる。

 

同時に理解する。少年の座る同じテーブルの列には、誰一人して座っていない理由に。近付くことが出来ないのだ。彼の雰囲気によって。

 

少年はクルーぜを一瞥すると、再び食事へと集中する。拒否の言葉が無かったため、クルーゼは少年の正面の席に腰を下ろした。

 

その瞬間、周囲がざわつき出す。クルーゼはそんなことなど意に介さず、少年へと話しかける。

 

「初めまして、私はラウ・ル・クルーゼ。レオハルト・リベラント君でいいかな?」

「・・・・・・」

 

クルーゼの言葉を黙殺しレオハルトはトレイを手に立ち上がると、トレイの返却口へと歩いていく。レオハルトを恐れてか、食堂にいた人間は自然と道を開けていく。

 

「(・・・・・・)」

 

トレイを返却しそのまま食堂を出て行く少年の背を見送っていると、一人の青年が近付いて来る。

 

「おい、クルーゼ」

「アルドか。どうした?」

 

クルーゼに話しかけてきたのは、同じパイロット養成課程で同じ班のアルド・ドーファス。パイロット養成課程も優秀な成績で、非常に生真面目な性格で班ではリーダー的な存在である。

 

「あいつに話しかけるのは止めておけ。あいつに話しかけて、病院送りにされた奴がいるんだぞ」

「道理で怖がられているわけだ」

「知らなかったのか?何であいつに話しかけたんだよ」

「ふっ、ただの好奇心だよ(やはり、彼は・・・・・・。まさか【ZAFT】にいるとはな。何が目的なのか・・・・・・)」

 

クルーゼはアラドに笑みを浮かべてそう答えると、食事を始める。だが、その内心は先ほどの少年のこと。紅い髪という特徴的な髪に、鋭い瞳。

 

クルーゼは一瞬だけ合った少年の瞳に、底知れなく燃え滾る『何か』を感じ取った。その感情はクルーゼの奥底にも存在する、底知れぬ【憎悪】。

 

「(彼の過去を考えれば、当然か。私と同類・・・・・・)」

 

 

 

 

 

 

 

それから数日後のある日。レオハルトとクルーゼは再び会うことになる。

 

その日2人が教官から聞かされたのは、班対抗のシミュレーション対決。レオハルトが所属第1班、クルーゼが所属する第2班。

 

班は5人で構成されており、レオハルトとクルーゼがぶつかるまで2勝2敗の緊張感ある戦い。

 

そして、ついに実力の高さが評価されているレオハルトとクルーゼがシミュレーションシートに腰を下ろす。

 

「(さて、お手並み拝見といこうか。どれほどの腕なのか)」

 

クルーゼはレオハルトの腕前に期待しつつ、離れた場所からスタートしたクルーゼはどこかにいるであろうレオハルトの強襲を警戒しつつ、操縦桿を倒し共通の使用機体であるYMF-01Bジンを進ませた。

 

瞬間、クルーゼの脳裏に何かが奔る。

 

「そこか!」

 

“MMI-M8A3 試製56mm重突撃銃”を自身の感覚に従った方向に向けると、デブリの陰から飛び出してきた“MA-M1 試製重斬刀”を構える敵がいた。

 

クルーゼは操縦桿を引き戻しつつフットペダルを踏み込み、右手の人差し指に力をこめる。すると、向けられた重突撃銃から弾丸がフルオートで発射される。

 

クルーゼはレオハルトが退いた瞬間を狙い攻勢に転じ、主導権を掴んで決着を付けようと考えていた。だが、レオハルトの行動を見てクルーゼは驚愕に目を見開く。

 

「バカな!向かってくるだと!!・・・・・・面白い!!」

 

クルーゼが精確に狙った銃撃を、レオハルトは機体を手足の如く動かし器用に銃撃を躱していく。クルーゼは左手に“MA-M1 試製重斬刀”を手にすると、斬りかかるレオハルトと刀をぶつける。

 

互いの重斬刀がぶつかり、同時に二人は距離を取る。いち早く射撃を行ったのはクルーゼ。だが、レオハルトはデブリなどを巧みに使いクルーゼの銃撃から逃れる。

 

デブリの陰に隠れた一瞬の間にレオハルトは左手に重突撃銃を構え、銃撃で応戦する。思っていたとおり、いや予想以上の実力にクルーゼは一人納得する。

 

「(成功していたというわけか、ヒビキ博士。彼が、貴様らの成功の結果か)」

「(何だ、この感覚は・・・・・・。この感覚は、貴様のせいなのか。・・・・・・不快だな、このざらついた感覚は)」

 

不可解な感覚に襲われ、眉をしかめるレオハルト。

 

レオハルトはクルーゼからの銃撃をバレルロールして回避すると、反撃とばかりに銃口を向け引き金を引く。先ほどまでと違う感じにクルーゼはわずかに眉を顰める。

 

素早く距離を詰めた後は右手の重斬刀で薙ぎ払うと、クルーゼはその刀をターンして回避。レオハルトの後ろに回り込み背後から重突撃銃を撃つ。

 

だが、その瞬間にはレオハルトは機体をバック宙させて銃撃を回避すると同時に、振った重斬刀でクルーゼの乗るジンの頭部を斬り落とした。

 

その驚きの動きと、その動きをさせるレオハルトの技術にこの二人の戦いをモニターしていた人間から感嘆の声が漏れる。

 

レオハルトのその攻撃でシミュレーターは大破判定を出し、クルーゼの敗北が決定。

 

クルーゼは溜め息を吐くとシミュレーターから出て来るが、声を掛けようと思っていたレオハルトの姿は無くなっていた。

 

「(やはり、実力は本物ということか。だが、その代償は大きい・・・・・・)」

 

 

 

景色が切り替わると、今度は若き日のレオハルト・クルーゼ、そして亡くなったフィシアの姿が。レオハルトの意識は、昔の自分たちを第三者として俯瞰で見ているような状況だった。

 

「私たちもついに卒業か」

「そうだな」

「ラウとハルは、曲者と呼ばれるハルング隊に。私はプラント防衛部防衛班MS隊シナード隊に」

「シナード隊長か。なかなか型破りな方とは噂では聞いたが」

「とはいえ、卒業式までは休暇だ。シアは実家かね?」

「たまにはね」

「レオも一緒にかね?」

「何でそうなる」

「ラ、ラウ!な、何を!!」

「ふむ。まだ、か。もどかしいぞ、シア」

「余計なお世話!早く行こうよ!!」

 

 

 

 

再び景色が切り替わり見えたのは、ヤキン・ドゥーエでの戦場。

 

レオハルトの乗機だったFINIS(フィニス)が持つビームサーベルが、Providence(プロヴィデンス)のコックピットを貫く瞬間だった。

 

GENESIS(ジェネシス)Providence(プロヴィデンス)を少しずつ焼き払っていく最中の、クルーゼの様子が俯瞰で見ているレオハルトの目の前に現れる。

 

「止めてくれると思っていた。他の誰でもない、君が。ありがとう、親友よ。さらばだ、親友(レオ)……」

 

本当に言っていたかどうかは分からない。この夢も、レオハルトが創り出した想像の世界。

 

ゆっくりとレオハルトは覚醒し眠りから覚めると、左手を頬に当ててみる。頬はわずかに濡れ、涙が流れていたことが分かる。

 

レオハルトはすでに何の夢を見ていたかはもう忘れていた。だがそれでも、とても悲しく懐かしい内容だったことはおぼろげながら覚えていた。

 

「・・・・・・っ。ぐうっ・・・・・・!」

 

レオハルトを不意に襲ったのは、胸部の猛烈な痛み。胸を掴みうめき声を上げると、引き出しから透明のケースに入っている錠剤を取り出し1錠口に入れ水で流し込む。

 

「はあっ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・。ふぅー・・・・・・」

 

レオハルトは自身の右手へと視線を落とすと、わずかに震える右手を見て苦い顔をするレオハルト。レオハルトは右手を強く握り締めると、仲間との写真を引き出しに片付ける。

 

「取り戻せないもの、それが過去。巻き戻せないもの、それが時間。……俺は進むだけだ。振り返る暇など無いのだから」

 

レオハルトは左手で左目を覆いながら天井を仰ぐと、自らに言い聞かせるように呟く。

 

「俺には、時間が無い・・・・・・。貴様は俺を利用しているつもりだろうが、それは間違いだ。利用させてもらうぞ、ギル。お前の好きにはさせん」

 

 




本作で、YMF-01Bプロトジンのことをジンと呼称しています。

これは、原作でジンと呼ばれているZGMF-1017ジンが完成するまで、プロトジンはジンと呼ばれていたためです。

ジンが完成したことで、プロトジンと呼ばれるようになったのです。

なので、この時点ではまだプロトジンは、ジンということなのです。
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