ハイスクールG×A   作:まゆはちブラック

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金属生命体 アルギュロス 登場!


第17話「アグル誕生」

ゼノヴィアがリアス達の眷属になってから翌日。

オカルト研究部の部室では、薄暗い部屋の中、リアス達が我夢を取り囲む様に座り、彼の話を真剣に聞いていた。

 

その話の内容とは、コカビエルとの戦いの際に現れたスフィアについてである。

因みにこの話に入る前、コカビエルと根源的破滅招来体の関連性についても議論したが、結局何も思い付かなかった。

我夢は投影された写真に指を指し、説明をする。

 

 

我夢「この球体――仮にスフィアと命名しますが、この未知の物体は意思がある、れっきとした生命体です」

 

リアス「やっぱり…」

 

木場「じゃあ、君たちが戦ったアパテーと同じ金属生命体なのかい?」

 

 

木場はこの話をする前に我夢からアパテーが金属生命体である事を聞いていたので、もしやと思い問う。

だが、我夢は首を横に振った。

 

 

我夢「いや、あの後グラウンドに散らばっていたスフィアの残骸を回収して、ジオベースで調べてもらったんだ。だけど、その体組織は金属でも生物でもない、地球上に存在しない未知の物質で構成されていたんだ」

 

木場「え?」

 

一誠「じゃあ、スフィアもコッヴと同じで、宇宙から来たって言うのかよ?」

 

我夢「うん」

 

 

そう尋ねる一誠に我夢は頷いた。

スフィアの正体に首を傾げる面々に我夢はだけど…と言葉を続け

 

 

我夢「これだけは言えます。あのスフィアはコカビエルと融合したように、自身を核――つまり『心臓部として他の生物と融合する』という事と『融合した生物の意識を奪う』という2つの性質を持っているという事です」

 

 

我夢の説明に皆はうんうんと頷いた。

だが、ゼノヴィアはハッ!と何かに気付いた様に声を出した。

 

 

ゼノヴィア「高山 我夢。心臓部として融合するなら、何故コカビエルは兵藤 一誠に倒された後でも生きていたんだ?それと奴はほぼ自力で意識を取り戻してたぞ。只者じゃないとはいえ、力づくとそう簡単に自我を取り戻せるものなのか?」

 

 

その質問を聞いた我夢は顎に手を当ててしばらく考えると

 

 

我夢「あ~多分、コカビエルの生命力がスフィアよりも強靭だったとしか思えない。それに自我を取り戻したのも精神的な面が強かったからとしか言い様がないよ」

 

 

我夢が最後に「認めたくないけどね」とボソッ呟きながら説明すると、リアス達は納得した表情を浮かべた。

説明を終えた我夢はスクリーンを閉じ、証明を点け始めた。

 

 

リアス「ありがとう、我夢。じゃあ、みんな!じゃあ…」

 

 

リアスがいつもの様に「今日も部活動を始めるわよ!」と言おうとした時、

 

 

《ピーピーピーピー!!》

 

 

「「「「「「「「!!」」」」」」」」

 

 

部屋中にアラーム音が鳴り響き、皆に緊張が走る。

その音の源は、部室に新しく設置された怪獣が出現した事を伝える怪獣探知機によるものだった。

 

 

リアス「一体どこに?」

 

我夢「ここから数100km先のポイントに金属反応。構成物質はアパテーに似てます」

 

小猫「…アパテー」

 

朱乃「私達と戦ったあの金属生命体」

 

 

その報告を聞き、小猫、朱乃は各々思い深げに呟く。

それもその筈。ガイアの動きをコピーするだけでなく、その体質を利用した戦術や自分達を苦しめた強敵だったからである。

 

 

我夢「映像データ開きます」

 

 

我夢がそう言い、手持ちのノートパソコンで操作すると、怪獣探知機から映像がスクリーンの様に投影された。

 

その映像には、上空に数本の金属質な槍みたいなものがどこかへ向かってるかの様に飛んでいた。

 

 

リアス「我夢。アレはどこへ向かってるの?」

 

我夢「はい。目的は分かりませんが、5分後に東経138、北緯36の地点―――中部地方に落下する予定です」

 

リアス「わかったわ。朱乃、裕斗、イッセー。そしてゼノヴィア。今すぐ金属生命体の航路地点に向かい、迎撃して!」

 

「「「「はい!」」」」

 

 

そうリアスの指示を聞くと、朱乃達は元気よく返事する。特にゼノヴィアは転生したから気合いが入っていた。

 

 

朱乃「部長、行ってきますわ」

 

 

朱乃はいつもの様にニコニコしながらそう告げると、そのポイントまで魔方陣で転移した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔方陣で転移した朱乃達が真っ先に目に入ったのは、こちらの方角へまっすぐ飛行する金属生命体の姿だった。

各々が身構える中、一誠は制服の尻ポケットから金属の筒の様なものを取り出す。

 

それは最近、冥界が新発明した対根源的破滅招来体特殊結界―――別名「メタフィールド」を展開する装置である。

 

「メタフィールド」は今までの結界にあった人除け効果に加え、根源的破滅招来体の妨害にも耐えうる強力な結界術式が組み込まれている優れものである。

 

コカビエルの一件から3日程経った頃。研究に苦難していたが、遂に完成したという事で、冥界からウルトラマンである我夢と一誠を眷属に持つリアスへ送られてきたのである。

これにより、リアス達も堂々と戦闘に参加することができる。

 

 

一誠「メタフィールド、展開っ!」

 

 

一誠はそう叫んで天へ掲げると、筒の先から一筋の光が空高く登った。

そしてある程度の高さに到達すると、そこから光が枝分かれし、雨の様に降り注ぐと一瞬で周囲を包んだ。

 

 

朱乃「ふふ、行きますわよ」

 

木場「部長達を守ると誓った力。ここで役立ててみせる!」

 

ゼノヴィア「ふふ、木場 裕斗。はりきってるな」

 

一誠「お前も負けてねぇだろ?よっしゃ、やってるぜ!」

 

 

朱乃達が各々がいつも以上にはりきっていると、

 

 

ピカァァーーー!!

 

木場「うわっ!」

 

ゼノヴィア「何だっ!?」

 

一誠「おわっ!?」

 

朱乃「これは…!」

 

 

無数の金属の槍は突如、前面に現れた青い光に阻まれて墜落し、地面に刺さっていった。

朱乃達はあまりの眩しさから眼が奪われるが、すぐに光が収まっていった。

眼を開けると、大きな影が自分達を覆っている事に気が付いた。そして、彼女らが見上げると

 

 

一誠「アッ、アイツは…!」

 

ゼノヴィア「青いウルトラマン…」

 

 

朱乃達の記憶にも新しいあの青いウルトラマン、ウルトラマンアグルが片膝を立て、屈みこむ様な姿勢で両腕をクロスさせた状態で颯爽と現れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リアス「青いウルトラマン…?」

 

我夢「(藤宮っ!)」

 

 

モニターで戦いの様子を見ていたリアス達も突然のアグルの出現に驚いていた。

 

突然のアグルの登場に驚く一同をよそに墜落した無数の金属の槍はバチバチバチ…と電流を放ち始めると、ゲル状に変化した無数の槍が重なる様に集まり、段々と人の形へと変化していった。

 

変化が終わると、その姿の全貌が明らかになった。

その姿はまるで鎧の身につけた騎士の様な姿に横長い単眼、そして胸元にはアグルのライフゲージに似た結晶が青く輝いている。

アパテーに続く、根源的破滅招来体が呼び寄せた金属生命体No.2(ナンバーツー)アルギュロス」がその姿を現したのである。

 

 

アグル「……」

 

アルギュロス「パオォォォォーーーー!!」

 

 

アルギュロスは威嚇する様に象に似た鳴き声をあげながら身構える。

すると、アグルは青い光の柱に包まれ、姿を消した。

 

 

アルギュロス「!」

 

アグル「デヤァァァァーーーー!!」

 

 

アルギュロスは上空に気配を感じて顔をあげると、アグルがアルギュロスの胸元目掛けて急降下しながらキックを繰り出していた。

 

 

アルギュロス「パオォォォォーーー!!」

 

 

反応が遅かったアルギュロスはすれ違い様の蹴りをまともにくらい、火花を散らす。

アグルはスタッと地上へ着陸すると、追撃とばかりにアルギュロスに向かって走り出す。

 

だが、このままやられるアルギュロスではない。何といっても彼はあのガイア達を苦戦させた金属生命体である。

 

 

ピカァァァーーーーン!

 

 

アルギュロスは膝をつきながらも左腕を輝かせると、鋭い刀の様に変化させた。

 

 

アルギュロス「パオッ!」

 

アグル「ホワッ!」

 

 

そして、向かってくるアグルに振り向き様に左腕の刀を胸元目掛けて振り回すが、アグルは冷静に対処して間一髪、腕と脇で挟みこんで防ぐ。

だが、

 

 

アグル「!?」

 

 

アルギュロスは特に驚いている様子もなく、そのままアグルを左腕だけでグググ…と力強く持ちあげる。

同時に右腕を輝かせてキャノン砲の様に変化させると、その銃口をアグルの横腹へ定める。

 

 

チャキ…

 

アルギュロス「フォッフォッフォッ……」

 

 

ニヤリと眼を歪ませて不気味な声で笑うと、右腕のキャノン砲で射撃した。

 

 

アグル「ドゥワァァァァーーーーーーーー!!?」

 

 

アグルは横腹から火花を散らしながら、キャノン砲の衝撃で大きく後方へ吹き飛ばされ、そのまま背中から地面へ叩きつけられる。

 

 

我夢「!?」

 

 

それを見た我夢は目を丸くし、思わず藤宮の名を叫びそうになったが、何とかこらえる。

だが、それと同時に我夢はアグルが――藤宮がいつもと違う戦い方をしていることに気付いた。それはどこか必死に、命懸けに戦っている様に思えた。

 

 

チャキ…

 

 

アルギュロスは右腕のキャノン砲の照準をアグルに合わせながらゆっくりと歩いてくる。

アグルのピンチを感じとったリアスは現場にいる朱乃達へ指示を出す。

 

 

リアス「朱乃、裕斗、イッセー、ゼノヴィア。青いウルトラマンを援護して!」

 

朱乃「わかりましたわ」

 

裕斗「了解」

 

一誠「ラジャー!」

 

ゼノヴィア「了解」

 

 

リアスの指示を聞いた4人は返事を返すと、それぞれの戦いに適した距離までアルギュロスへ近付く。

 

 

朱乃「雷よ、はあっ!!」

 

アルギュロス「パオォォォォーーー!?」

 

 

朱乃は空高く舞い上がると、雷をアルギュロスの背後に放つ。

朱乃達の気配に気付かなかったのか、アルギュロスは火花を散らしながら前のめりに怯む。

そして、アルギュロスは振り向いて彼女を見つけると、朱乃へキャノン砲の銃口を向けるが

 

 

ゼノヴィア「よそ見している暇は…!」

 

木場「…ないよっ!」

 

ジャキィィーーーーン!!

 

アルギュロス「パオォォォォーーー!?」

 

 

ゼノヴィアがデュランダル、木場が聖魔剣でアルギュロスの足首をすれ違い様に一閃する。

その攻撃にアルギュロスは両膝をついた。

 

 

一誠「くそぉ!!あの野郎は気に食わねぇけど、同じウルトラマンとして助太刀するぜっ!!」

 

 

一誠はアグルの援護を嫌そうに呟きながらも、我夢から託してもらったジェクターガンで右肩を狙撃する。

 

 

アルギュロス「パオォォォォーーーー!!」

 

朱乃「まだまだ行きますわよ!」

 

木場「はあっ!」

 

ゼノヴィア「おぉぉぉ!!」

 

一誠「ちくしょー!どうにでもなれっ!」

 

 

見事右肩に命中すると、アルギュロスはまた火花を散らして怯む。

そして、休む暇を与えぬ様に朱乃達は次々と攻撃を繰り出していく。

 

 

アグル「ホワッ!アァァァァァ……!!」

 

 

その間に回復したアグルは立ち上がると、両腕を下に広げ、リキデイターの体制に入った。

 

 

アルギュロス「パオォォォォーーー!!」

 

 

アルギュロスは次々と繰り出されていく朱乃達の攻撃に、ただ体から火花を散らしていた。

その理由はただ1つ。彼女らの的が小さく、攻撃が当て辛いからである。

身長が自分と変わらないウルトラマンや怪獣はともかく。的が小さく、機敏な動きが可能な朱乃達はアルギュロスが攻撃しても直ぐ様避けられる。

なので、アルギュロスは攻撃が出来ないのである。

 

 

アグル「…アァァァァァ!!ドゥワァァッ!!」

 

 

朱乃達がアルギュロスに攻撃している中、エネルギーを溜め終わったアグルは、まだアルギュロスに近い場所で攻撃している朱乃達を無視してリキデイターを放った。

 

 

アルギュロス「!!?」

 

朱乃「きゃ!?」

 

一誠「うおっ!?」

 

 

アルギュロスは先程よりも大きな火花を胸元から散らして大きく後方へのけぞる。

だが、近くにいた朱乃達はその攻撃に発生した衝撃波に巻き込まれる。

 

 

リアス「!?」

 

アーシア「何で…!?」

 

小猫「…!?」

 

我夢「…(藤宮…)」

 

さすがにこの光景を見ていた我夢除くリアス達も驚いていた。

アーシアに至っては何故アグルが朱乃達ごと攻撃するのかがわからない様子である。

 

 

一誠「くそぉー!」

 

木場「何て無茶苦茶なっ!」

 

ゼノヴィア「くそっ!私達も巻き込むつもりかっ!?」

 

 

アグルが手を緩めずリキデイターを連射する中、一誠、木場、ゼノヴィアは悪魔の翼を広げると、メタフィールド限界の上空へ既に避難している朱乃のもとへ上昇した。

 

 

アグル「ドゥワァッ!ドゥワァァッ!ドゥワァァッ!!」

 

アルギュロス「パオォォォォォォォォォォーーーーーーーー!!」

 

ドカァァァァーーーーーーーーン!!

 

 

アルギュロスはたて続けにリキデイターをくらうと、大きな火花を散らして大爆発を起こし、姿を消した。

 

 

アグル「アァァッ…」

 

 

その光景を見たアグルは何とか倒せたという安堵感からか、膝をついた。

実は先程銃撃された横腹のダメージが思ったよりも響いており、先程までその痛みを緊張感で押さえ付ける、

つまり「やせ我慢」をしていたのだ。

だが、「敵と戦う」という緊張が無くなった為、押さえ付けた痛みが彼の身体を襲ったのだ。

 

そして、そのままアグルは体から青い光を放ちながら、姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リアス「4人共、ご苦労様。とりあえず戻ってきて」

 

「「「「了解」」」」

 

アーシア「無事で良かったです」

 

小猫「そうですね…」

 

我夢「……」

 

 

リアスはアグルの思わぬ行動に怒りをおぼえながらも、4人が無事である事に安堵し、帰還命令をだした。

リアスと同様にアーシア、小猫も安堵する中。我夢は深く考えていた。

 

 

我夢「(何故、藤宮はここに?何故あんなに必死だったんだ………ん?)」

 

 

先程の戦いを見て、不信に思った我夢は自身のノートパソコンにアルギュロスが向かっている地点を調べると、山中にある施設の名前が画面に表示された。

 

 

我夢「(プロノーン・カラモス?もしかしてっ!?)」

 

 

その名前を見た瞬間、我夢は何か思い出した。どうして、何で気付かなかったのだろうと。

藤宮の行動理由を知った我夢は居ても立ってもいられず、ソファーから立ち上がり

 

我夢「部長!あの金属生命体に関する手掛かりがあるかも知れない場所を思い出したので、これから外へ行ってきます!」

 

リアス「えっ?ちょっ…!」

 

我夢「失礼します」

 

 

そう伝えると、リアスが返事する間もなく外へ出て、プロノーン・カラモスへ向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一誠「ただいま帰りました……あれ?部長、我夢は?」

 

リアス「また飛び出していったわよ。はぁ……。どうしていつも飛び出しちゃうのかしら…?」

 

一誠「ははは…」

 

 

リアスはため息をしてそう呟くと、一誠は少し困った様に苦笑いを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、我夢は人がいない場所に隠れて変身し、プロノーン・カラモスに向かって真っ直ぐ上空を飛んでいた。

 

 

ガイア「(どうして気付かなかったんだろう…?)」

 

 

ガイア――我夢は15歳の頃。今から2年前の出来事を思い出した。

 

 

 

 

 

 

2年前のある日。

この日、我夢は両親と共にイギリスへ旅行に来ていた。

普通なら、「バッキンガム宮殿」や「タワー・ブリッジ」といった有名な観光名所を訪れるだろうが、我夢はそれにも目にくれず、イギリス1の大学「ハイド・ベノン」に見学に来ていた。

もちろんアポはとってある。

 

何故、わざわざイギリスの大学を訪れたのか?

その理由は簡単、「世紀の天才児」といわれる藤宮に会いに来た為である。

 

我夢は自分と同い年である藤宮を尊敬していた。

自分も天才であることを自負するが、藤宮はそれ以上である。特に地球のあらゆる危機を予測する光量子コンピューター「クリシス」を完成させたことは大きな話題である。

巷ではそんな予測は嘘っぱちだと批判しているが、我夢はそんなものは信じてはいない。

 

藤宮は卒業し、クリシスを完成させた今でも大学の研究室を借り、多くの同士達と共に日々研究を重ねている。

 

 

(我夢「(まだかな…?)」)

 

 

我夢は憧れの人物に会えることに期待に胸を踊らせながら、待合室に椅子に座っていると、研究室につながる扉が開き、1人の男性が姿を見せた。

 

彼の名前は「ダニエル」。

藤宮よりも年上のイギリス人で、藤宮の在校生以来の友人である。年下である藤宮をまるで同い年の様に接するその姿勢は、藤宮や多くの人達からも好かれている好青年といった感じである。

 

 

(ダニエル「君、もう入ってきてもいいよ」)

 

(我夢「あっ、はい!」)

 

 

そう聞いた我夢は直ぐ様立ち上がり、身だしなみを整え、ダニエルの後についていった。

 

ダニエルが研究室の設備や日々の活動を我夢に聞かせながら歩き続けると、クリシスをじっと見つめる白衣を着た1人の少年の姿が見えてきた。

 

 

(ダニエル「藤宮君。君に紹介したい人がいるんだ」)

 

(藤宮「?」)

 

 

ダニエルがそう声をかけると、藤宮は視線を一旦ダニエルに向けた後、すぐに彼の後ろにいる我夢に視線を向けた。

我夢はニコッと屈託のない笑顔で前に出ると

 

 

(我夢「藤宮さん!クリシスを開発した藤宮 博也さんですよねっ!高山 我夢です!貴重な研究に見学させていただいて、ありがとうございます!!」)

 

(藤宮「…」)

 

 

元気よく挨拶する。

だが、藤宮の顔は「歓迎する」ようなものでなく、「何かに悩んでいる」。そんな難しそうな顔を浮かべていた。

 

藤宮は少しの沈黙の後、口を開き

 

 

(藤宮「ダニエル、俺の力はここまでだ。俺はこの研究室を出る」)

 

(「「「「えっ!?」」」」)

 

 

ダニエルや我夢を含めたその場にいる研究員達も衝撃の言葉に驚く。

「研究室を出る」。つまりこの研究に参加するのを辞めるということと同じである。

それに何よりこの研究の企画者でもあり、誰よりもこの研究に熱心である彼が抜けるという事はあまりにも唐突すぎるのである。

一同が驚愕している中、藤宮は言葉を続け

 

 

(藤宮「安心してくれ、研究自体は続ける。()()()()()()()()()」)

 

(ダニエル「()()()()()()?どこに?」)

 

 

研究を辞めないと知った一同はほっと安堵する。

だが、続けて言った言葉が気になり、一同を代表してダニエルが問う。

すると藤宮はダニエルを真剣な眼差しで真っ直ぐに見つめ

 

 

(藤宮「そこでダニエル、君に頼みがある。プロノーン・カラモスを貸してくれ」)

 

(ダニエル「プロノーン・カラモス!?」)

 

 

その施設の名にダニエルは目を丸くした。

プロノーン・カラモスはダニエルの一家が保有している国際機関研究施設の事である。

 

 

(我夢「?」)

 

 

当然、我夢はそんなことはわからず、きょとんと首を傾げていた。

そして、なおも驚いているダニエルに藤宮は

 

 

(藤宮「俺は…残された時間を研究に没頭したいんだ…!」)

 

 

どこか使命感に満ちた表情でそう言うと、驚愕でかたまっている研究員の間を抜けて、外へ出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ガイア「(すっかり忘れてたけど、これが藤宮と僕の出会いだったな……)」

 

 

ガイアは昔の記憶に思い返していると、プロノーン・カラモスが見えてきた。

ガイアは出来るだけ目立たぬ様、赤い光の玉となって地上に着陸した。

そして、変身を解くと歩きだし、施設の出入口の前に立ち止まる。

 

 

《ピンポーン♪》

 

我夢「すみませーん、聞きたいことがあるんですがー」

 

 

 

我夢は扉の横にあるインターホンを鳴らし、声をかける。

すると、

 

 

《???「はーい、少々お待ち下さい」》

 

 

インターホンのマイクごしに女性の声がかかる。

我夢は女性に言われた通りに少し待つと、ドアが開かれた。ドアの先には、白衣を着た30代後半の知的な雰囲気を感じられる女性がドアノブを握りながら我夢の顔をジロジロと見ていた。

 

 

???「あなた…高山 我夢君?」

 

我夢「はい、そうです。お久しぶりです、稲森 (いなもり )博士」

 

 

稲森 京子(いなもり きょうこ)。彼女は地球の環境問題に関する研究の第1人者の科学者であり、藤宮と同じハイド・ベノン大学の卒業生でクリシスの開発にも参加していた。

また、2年前、我夢に大学の見学許可をしたのも彼女であり、その際に我夢と彼女は知り合いになった。

 

 

稲森「ふふ、久しぶり。何の用?」

 

 

稲森博士は目の前の人物が我夢とわかると、懐かしそうに微笑みながら握手をしながら尋ねる。

そう尋ねられた瞬間。我夢は手を離し、微笑んだ表情から真剣な表情に切り替える。

 

 

我夢「実は藤宮の事が知りたくて…。どうして人類を憎んでいるのかが気になって――」

 

稲森「っ!?あなた、もしかして彼に会ったの!?彼は平気なの!?」

 

 

藤宮の名を聞いた瞬間、稲森は目を丸くして必死に尋ねる。

我夢はその姿は、まるで家出をした子どもの心配をしている母親に思えた。

 

 

我夢「はい、アイツは無事ですよ」

 

稲森「そう、良かった…」

 

 

我夢はそうなだめると、稲森はほっと安堵した表情を浮かべた。

その様子を見た我夢は、稲森は藤宮とただの共同研究員という関係ではないことが気になった。

 

 

我夢「あの?藤宮とあなたはどういったご関係ですか?」

 

 

どうしてもその興味が湧き、今度は我夢が尋ねる。

すると、稲森は口を開き

 

 

稲森「ええ、彼は私の息子よ」

 

我夢「えっ!?藤宮があなたの?」

 

稲森「…といっても私の友人から頼まれて引き取った養子だけどね。ここで立ち話も何だから中で話しましょう?」

 

我夢「はい、お願いします」

 

 

そう言うと、稲森は我夢と一緒にプロノーン・カラモスの中に入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、藤宮はプロノーン・カラモス近くの森林を歩いていた。

だが、その足取りはフラフラとしており、額から脂汗を流しながら苦しげに横腹を押さえている。

 

 

藤宮「はあっ…はあっ…くそっ!奴は何故ここを狙ってくるんだっ!?」

 

 

藤宮は苦しげな声で呟くと、左手に持つアグレイターを見つめた。

そして、クリシスを完成させた時を思い出す……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――4年前 イギリス 「ハイド・ベノン大学」研究室

 

 

研究室内には数人の研究員が緊張の表情を浮かべながらパソコンを慎重に操作していた。

そう、この日は藤宮が考案した光量子コンピューター「クリシス」が長年の研究を重ね、やっと完成しようとしていた。

 

 

(研究員A「第一段階、第二段階終了。各回路、異常なし」)

 

(研究員B「藤宮博士、最終段階スタンバイOKです!」)

 

 

研究員達から準備が整った事を聞いた藤宮は頷くと、ヘリコプターの操縦士がつけるヘッドセットを両耳に装着する。

 

 

(藤宮「(頼むぞ、クリシス。お前の予測が世界を導くんだ…!)」)

 

 

その場にいる全員が息を飲んで見守る中

 

 

(藤宮「クリシス!Think…go!」)

 

 

藤宮はヘッドセットについてるマイクに向かって起動する為の合言葉を言う。

すると、クリシスは起動し始めた。

 

全員が固唾を飲みながら起動音を背景にクリシスを見守る。

そして、しばらく経つと、クリシスの制御をしていた稲森博士が口を開き

 

 

(稲森「光量子回路、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

軌道に乗りました!」)

 

(研究員B「やったっ!!」)

 

(研究員A「成功だっ!」)

 

 

無事にクリシスが完成したことを告げられた研究員達は一斉に喜んだ。

歓喜の声があがる中、藤宮も喜びを隠せず、頬を緩ませていた。

 

 

(ダニエル「藤宮君、やった!おめでとう!」)

 

(藤宮「ああ!」)

 

(稲森「成功おめでとう!」)

 

(藤宮「ありがとうございます。稲森博士のアドバイスも随分参考にさせていただきましたから…」)

 

(稲森「ふふ、クリシスの研究に参加できただけでも光栄よ」)

 

(藤宮「ははっ」)

 

 

ダニエルと稲森に称賛された藤宮は少し照れた様に笑う。

 

この場にいる誰もが喜びに包まれていた。

そう、幸福に。

 

だが、この空間はすぐに崩される事になる。

 

 

《ピー!ピー!ピー!》

 

(「「「「「「「!?」」」」」」」)

 

《演算速度……制御不能》

 

 

非常事態の警報が鳴り響くと共に、アナウンスが繰り返し流れる。

これを聞いた藤宮達は一瞬で不安な表情に変わる。

 

 

(研究員A「軌道制御が働きませんっ!」)

 

(藤宮「何っ!?」)

 

(藤宮「リードシンク再起動!」)

 

(稲森「うんっ!」)

 

(藤宮「ハジネルプラネットチェック!急げ!」)

 

(研究員B「イエッサーッ!」)

 

 

藤宮は研究員達にそれぞれ指示を出す。

研究員達がそれぞれ必死に原因を探ってる中、藤宮は疑問に満ちた表情で警報を響かせているクリシスを見る。

 

 

(藤宮「何故だ!?何が狂ったんだ!?」)

 

バチィバチィ!!

 

(藤宮「うわぁっ!?ぐうっ!!」)

 

 

藤宮はそう言いながら、右手をテーブルに叩きつける。

すると、机に置いてあるパソコンから電流が溢れ、キーボードを伝い、藤宮の手を上り、彼の頭部に襲いかかった。

その苦痛に表情を歪ませ、頭をおさえているとある映像が彼の脳裏に流れた。

 

それは暗雲に包まれた空。そして雷鳴響く大地を歩く青い巨人の姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(稲森「博也君!」)

 

(藤宮「…っ(気絶していたのか…)」)

 

 

藤宮は稲森博士に心配そうに名前を呼ばれながら肩を揺さぶられる。

自分が気絶していた事を悟り、藤宮は体を起こす。

 

 

(藤宮「(何だったんだ……今のは?)」)

 

 

藤宮は電流が頭に流れた際に見た映像が疑問に思った。

あれは幻覚?それとも夢?色々考えるが、夢や幻覚にしては鮮明なものだった。

 

 

(ダニエル「藤宮君!」)

 

 

そんな事を考えていると、ダニエルが藤宮に声をかける。

 

 

(藤宮「どうした?」)

 

(ダニエル「見ろ…」)

 

(藤宮「…っ!」)

 

 

藤宮はダニエルに言われるまま、彼の視線の先を見た。

その先にあるモニターには、見たことがない文字が次々と書かれていた。

 

 

(稲森「クリシス、翻訳して」)

 

 

稲森博士は藤宮が先ほどまで着けていたヘッドセットのマイクにそう言うと、文字の下に翻訳した言葉が表示されていく。

藤宮はその翻訳した言葉を読み上げていく。

 

 

(藤宮「『近未来 地球と人類に破滅をもたらす

破滅招来体が襲い来る』…?っ!破滅招来体とは何だ!?異常気象?天平地位?」)

 

 

藤宮は稲森からヘッドセットを受け取り、クリシスに問う。

すると、

 

 

NO;

地球に破滅をもたらすもの

 

 

クリシスはモニターにそう表示する。

それを見た藤宮は目を丸くした。

 

 

(ダニエル「各セクション。経済、自然環境、気象、その他の全ジャンルを修正。この答えを導き出した要素を絞りこむんだっ!」)

 

(「「「「「「イエッサー!!」」」」」」)

 

 

ダニエルは周りにいる研究員達に指示すると、自らも動き始める。

稲森博士、ダニエル、数名の研究員達はデータベースを引き出し、必死に理由を探していく。

 

 

(藤宮「(本当に地球と人類が滅びてしまうのか!?クリシス、答えてくれっ…!)」)

 

 

藤宮は困惑した表情でクリシスに問いかける。

だが、

 

 

(ダニエル「どうして…!どうしてクリシスの予測は変わらないんだっ!?」)

 

 

クリシスの予測した答えは何も変化が起きなかった。

あれから時間がかなり経っており、これにはダニエルだけでなく、研究員達もお手上げ状態である。

 

すると、黙ってパソコンのディスプレイを見ていた藤宮が口を開く。

 

 

(藤宮「ダニエル…」)

 

(ダニエル「どうしたんだ藤宮君?」)

 

(藤宮「変わったよ……」)

 

(ダニエル「何だって!?」)

 

 

それを聞いたダニエルや稲森博士、数名の研究員達が驚きながらディスプレイに向かい合って座る藤宮の周りに集まる。

藤宮は椅子から立ち上がり、ヘッドセットを装着する。

 

 

(藤宮「クリシス…結果を……」)

 

 

そして、クリシスにそう指示すると、モニターには『地球の破滅回避』と表示される。

 

 

(稲森「どうやって…!?」)

 

 

稲森は藤宮にそう問う。

すると、藤宮は震えた声で言葉を続ける。

 

 

(藤宮「…試しに……削除してみたんだ……」)

 

(ダニエル「何を?何をだいっ!?」)

 

 

ダニエルがそう言うと、藤宮はキーボードのEnterキーを押す。

すると、モニターに表示された文字を見て、藤宮除いた全員が言葉を失った。

モニターには

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

削除項目: 人類

 

 

と表示されていた。

そう、地球の危機を回避するには人類を犠牲にしなければいけないというあまりにも残酷な答えを告げられたのだ。

 

 

(藤宮「このままじゃ…地球も…人類も…本当に滅びる……」)

 

 

そのあまりにも残酷な回避方法に藤宮は震えた声でそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

その後、研究室を後にした藤宮は大学内にある自室に戻っていた。

この部屋は藤宮の頭脳に目をつけた大学側が是非、研究の為に自由に使ってくれと無条件で貸してくれた藤宮専用の部屋である。

 

 

(藤宮「(一体、俺はどうすれば……?)」)

 

 

藤宮はパソコンを置いてある机に向かって必死に頭を悩ませて考える。

すると、突然パソコンのディスプレイから光が放たれ、『AGUL(アグル)』という単語が表示されていく。

 

 

(藤宮「っ!?何だっ!?ア…グ…ル…?アグル…?何の事だ?うわっ!?」)

 

 

藤宮はディスプレイに表示された謎の単語に疑問に思っていると、光が自身の体を包みこみ始める。

その現象に藤宮はとっさに目をつぶった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(藤宮「…!?」)

 

 

藤宮が目をおそるおそる開いていくと、周りの光景に驚いた。

そこは大学内にある自室ではなく、暗雲たちこめる空から雷鳴が鳴り響いている岩場の様な場所―――彼が電流が流れた際に見た映像の場所に立っていたのだ。

 

そして、あの時に目撃した青い巨人もそこに佇んでいた。

 

 

(藤宮「(アグル……お前がアグル……!?)」)

 

(アグル「……」)

 

 

アグルは藤宮に気付いたのか、彼を見下ろす様に見つめる。

 

 

(藤宮「(アグル。お前は何を伝えたいんだ…?」)

 

 

藤宮がそう心の中で問うが、アグルはただ見つめるだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、森の中では、金属質な液体がどこかに向かって進んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、プロノーン・カラモスでは、我夢と稲森博士が話をしていた。

 

 

我夢「…そうですか。クリシスの予測でそんな事が…」

 

稲森「ええ…始めは私達も信じられなかったけど、何度やっても人類を滅ぼすしか答えが見つからなかった…」

 

我夢「(そうか…。だから藤宮は大学の研究室から抜けたんだ)」

 

 

我夢は稲森の話を聞き、藤宮が大学の研究室を抜けた理由に納得した。

そうして話を続けていくと、稲森は突然思わぬ質問をした。

 

 

稲森「ねえ、高山君。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あなた悪魔でしょ?」

 

我夢「っ!?」

 

 

その質問に我夢は驚きを隠せず、目を丸くした。

人間界にいる悪魔達は人間達に悟られぬ様に情報操作しているはずだが、何故悪魔の存在を知っているのか?

その疑問に我夢はどう返事したらいいかわからず、おどおどしていると、稲森はふふっといたずら気に笑う。

 

 

稲森「大丈夫よ。悪魔の存在している事はわかってるけど、別に何かに利用する訳じゃないから安心して」

 

我夢「は、はあ…」

 

 

稲森にそう言われ、我夢は安心し、息を整える。

我夢が落ち着きを取り戻した事を見計らった稲森は、棚から1冊のアルバムを取り出す。

 

 

我夢「それは?」

 

稲森「これは博也君の本当の両親が持っていたアルバムよ。ここで何をしていたかというのは後で話すけど、その前に博也君が私の元に来るまでの経緯を話しておきたいの」

 

我夢「え?でもいいんですか、そんなに面識がない僕にそんな昔の事を話しても」

 

稲森「ええ。直感だけど、あなたなら信用できると思ったからよ」

 

 

稲森はそう言うと、アルバムのページを開き、藤宮の幼少期を語りだした。

 

 

 

 

 

 

藤宮の両親は、海洋学者である父「藤宮 海之(みゆき)」、元KCBアナウンサーである母「吉井 玲子(よしい れいこ)」である。

 

海之は世界に名だたる海洋学者であり、大半の海洋生物を発見し、学会に貢献した有名人であり、毎日の様に新聞やテレビの取材やラジオ番組に出演していた。

後の玲子は、KCBの人気レポーターであった。テレビの取材の際、一目惚れし、その後交際を重ねて結婚した。 

 

そして、そんな有名人2人の間に生まれたのが長男「藤宮 博也」である。

 

藤宮は幼い頃から優秀であった。

僅か1歳の頃から九九を理解し、4歳の頃には微分・積分までをマスターし、その他の文学系や理数系の知識を理解していた。

 

これには両親も驚いた。だが、その知識をひけらかしたりせず、普通の子供の様に接し、藤宮に愛情を注いだ。

藤宮はそんな両親を誇りに持ち、深く愛していた。

そして、この頃から彼は父の様に立派な海洋学者になりたいと夢を持ち始めた。

 

親子3人はとても幸せな生活を日々送っていた。

だが、ある日。その日常に異変が起き始めた。

 

 

 

それはある日の朝。玲子はいつも通り仕事へ向かう海之を玄関で見送りしようとした時、脳裏に晴天の空から突然雨雲が覆い、大雨が降り注ぐ映像が流れた。

 

それを見た玲子は何だか嫌な予感がすると思い、まさに外へ出ようとする海之を引き留め、傘を手渡した。

 

海之は晴れてるのに傘を渡す妻の行動に疑問を持ちつつも、彼女の事だから何かあるに違いないと信頼し、渡された傘を手に取り、職場へと向かっていった。

 

海之が家を出て数分が経つと、玲子が脳裏で見た通りに突然大雨が降り始めた。

 

この日を境に、彼女は次々と先の未来の事を当てる事ができた。

これには、玲子も海之、まだ幼い藤宮も理解した。

玲子には未来予知ができる力があると。

それでも海之や藤宮は彼女を拒絶することはなく、今まで通り過ごしていた。

 

そう、あの日が来るまでは………。

 

 

 

 

 

その日は休日であり、藤宮は5歳の誕生日であった。

誕生日は必ず家族揃ってお祝いする――それが藤宮家の決まりである。

藤宮はどんなプレゼントをくれるんだろうと胸を踊らせながら、ドアを開け、声をかける。

 

 

(幼少期の藤宮「ただいまー!……あれ?父さん?母さん?」)

 

 

いつもなら、すぐに「おかえりなさい」と言葉が帰ってくるが、中々返事が来ない。

妙に思った藤宮は靴を脱がず、そのままリビングの方へと向かう。

リビングに着くと、室内がやけに暗かったので電気を点ける。

すると、

 

 

 

(幼少期の藤宮「母さんっ!?父さんっ!?ううっ…」)

 

 

そこには両親が倒れており、体のあちこちから血が大量に流れ、リビングの床は血の海になっていた。

藤宮はこみ上げる吐き気をこらえ、何が起きたんだと冷静に考えていると

 

 

(???「おやぁ?まさか子供がいるなんてな?」)

 

(幼少期の藤宮「っ!?誰だ、出てこい!」)

 

 

不気味な声が聞こえ、藤宮は声をあらげる様に言い放つ。

すると、近くの物陰から大柄な男性が現れた。

だが、その背中にはコウモリの様な翼をもっており、その顔は人間とは思えない冷徹なものだった。

 

 

(幼少期の藤宮「お前、人間じゃないな!」)

 

(悪魔「ほう、察しがいいな~坊や。確かに俺は悪魔。何かを与える代わりに何かしらの代償を得る存在だ」)

 

(幼少期の藤宮「どうして父さんと母さんを殺したんだっ!」)

 

(悪魔「うむ。難しい話だが、坊や。俺達、悪魔にも人間達と同じ様に社会があってな、その社会の優劣に関わるゲームがあるのだ。それには自身の下僕を戦わせるもので、そのゲームに必要な駒がいるのだ」)

 

(幼少期の藤宮「駒?まさか、それで母さんを!?」)

 

(悪魔「そうだ!そこでお前の母親が持つ予知能力の神器(セイクリッド・ギア)に目をつけたのだ!」)

 

(幼少期の藤宮「神器(セイクリッド・ギア)?」)

 

 

藤宮は初めて聞く単語に首を傾げる。

その悪魔は言葉を続け

 

 

(悪魔「そうだ、人間どもに備わる特殊な力だ。予知できる力……そんなものがあれば、どんな奴等にも負けない!だから俺はこの女を眷属にひきいれようとしたが、抵抗してな…。邪魔しようとしたお前の父親共々殺してしまったわっ!ハハハハハハ!!」)

 

(幼少期の藤宮「(くそっ!)」)

 

 

藤宮が生まれて初めて誰かを憎いと思った。

何で、どうしてそんな力を持つだけでその生活を誰かのエゴの為に踏みにじられるのだと…。

藤宮はそれが憎くて、悔しくて、怒りに満ちた表情で悪魔を睨み付ける。

 

 

(悪魔「…ハハハハハハ。さて、坊や…俺達悪魔は人間共に認知されてはいけない。この場を見られたからには生きて返すわけにはいかんよなぁ~~?」)

 

(幼少期の藤宮「…っ!」)

 

 

ひとしきり笑った悪魔は、恐怖で動けない藤宮にゆっくりと歩み寄ろうとするが

 

 

ガシッ!

 

(悪魔「なっ!?こいつ生きていたのか!?」)

 

(幼少期の藤宮「父さんっ!」)

 

(悪魔「こいつ、離さんか!」)

 

 

辛うじて息を吹きかえした海之に足をつかまれ、阻まれる。

悪魔はガシガシと海之を蹴りつげるが、海之は離さない。

 

 

(海之「博…也っ!!に…逃げろぉぉーーー!!」)

 

(幼少期の藤宮「っ!」)

 

 

海之の血を吐きながらの必死の叫びに藤宮はいつの間にか体が動ける様になっている事に気付くと、そのままリビングに背を向けて、脇目も降らず、真っ直ぐ外へと走っていった。

 

そして、翌日。藤宮は警察に保護され、両親は殺人事件の被害者として捜索された。

だが、証拠や手掛かりが全く無いので、この事件は迷宮入りとなった。

 

その数日後。両親の葬式が行われた。多くの参列者や親戚が集まり、孤児となった藤宮を励ました。

 

だが、賢い藤宮にはわかった。励ましてくれる大人の大半は両親が残した遺産目当てであると。

 

そして、この時に藤宮は人間というものに深い失望感を覚えたのである………。

 

 

 

 

 

 

稲森「葬儀の後、玲子があらかじめ残した遺書に乗っ取り、私が彼を引き取る事にしたのよ。彼女は自分よりも、息子の事が大事だったのね……」

 

我夢「そういう経緯で、藤宮は人類や悪魔らに深く憎んだと?」

 

稲森「そうね。引き取った間もない頃は私意外の人間を常に警戒していたわ。でも、私と暮らしていくうちに、その憎しみも消えていったけど、まだ心の底に埋もれてたみたいね……」

 

我夢「……」

 

 

我夢は言葉が出なかった。

何度か協力を申し出たが、藤宮にそんな深い過去を知った今、彼にどう声をかければいいのかと悩んだ。

だが、不安そうにこちらを見る稲森の視線に気付き、我夢は気まずそうに顔をあげる。

 

 

我夢「…それで、藤宮はここで研究を?」

 

稲森「そう。彼は研究室を出た後、ここで研究をね。そして、真実を知りたがってた…」

 

我夢「真実……」

 

稲森「ええ、博也君が予言した…地球の未来……」

 

 

稲森は藤宮からプロノーン・カラモスに招待された出来事を思い出していく……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――2年前、プロノーン・カラモス

 

 

(藤宮「よく来てくれました」)

 

(稲森「どうして私なの?大学の研究員や他の科学者じゃなくて…」)

 

 

稲森は疑問に満ちた表情で藤宮に問いかける。

すると、藤宮は微かに笑みを浮かべ

 

 

(藤宮「同士達には俺のやっていることは理解できないからです」)

 

(稲森「そう……でもあなたが前に言っていたことは考えられないわ。地球内部に新しい粒子が発見されるのはありえないのよ?」

 

 

そう答えるが、稲森は未だ半信半疑であった。

すると、藤宮は自身の仮説を語りだした。

 

 

(藤宮「自然治癒力……どんな生き物でも病気にかかれば自然と治そうする力が働く。もし近い将来、地球に破滅が訪れるなら…」)

 

(稲森「それが働く…?」)

 

 

稲森が藤宮に続け様に言うと、藤宮は頷いた。

そして、藤宮は真剣な眼差しで観測用のプールを見下ろし、呟いた。

 

 

(藤宮「俺は本当の気持ちが知りたいんだ……」)

 

(稲森「えっ?」)

 

(藤宮「本当の地球の意思が……」)

 

 

 

 

 

 

 

 

稲森「『本当の地球の意思』……彼はそう言ったの。私たちは何ヶ月も渡って、センサーを観測したわ。でも正直、博也君の言っていることに半信半疑だったの、本当に地球は私たちに語りかけてくれるのか…。地球の心を、私たちは本当に理解できるのか…」

 

我夢「地球の心?」

 

 

我夢は稲森博士に問いかけると、稲森は頷く。

 

 

稲森「ええ、でもそれは本当にやって来た…」

 

 

 

 

 

 

 

 

(藤宮「くそっ!どうしてだ!何かしらのアクションを起こすはずなのに、何故何も起きないっ!」)

 

稲森「博也君」

 

 

藤宮は苛立ちを隠せず、机に拳を叩きつけた。

その様子を稲森は不安そうに見つめる。

 

藤宮は自身の仮説を元に何ヵ月も観測を行ってきた。

だが何も起きず、ただ時間だけが過ぎていくだけの有り様である。

その為にわざわざ育ての親である稲森を招いてまで研究をしていたのだが、結果が出ないことに業を煮やしていた。

 

 

(藤宮「(アグル…お前は地球の意思じゃないのか?どうすればいい?答えてくれっ、アグル…っ!)」)

 

 

藤宮はすがるように必死に祈ると、脳裏に再びアグルの映像が流れた。

 

前回と同様、雷鳴轟く中をアグルが静かに佇んでいた。

だが、その足元の周囲にはコウモリやカラスの羽、破壊された街が広がっていた。

 

これを見た藤宮は思った。

「地球の意思であるアグルは自らの手で人類を滅ぼす」

と…。

 

そう解釈した藤宮は恐ろしくなり、意識が戻ると、すぐさま観測機器のコードや電源を抜き始めた。

 

 

(稲森「博也君!?待って、何してるのっ!?」)

 

(藤宮「観測はやめだ!もし、地球に自らの命を守ろうとする力が生まれたとしても、それが人類を救う力とは限らない。もしも生まれ変わるとしたら煩わしい物を取り除こうとする方が自然だ……!人類はこれまで地球に何をしてきた?いざという時だけ守ろうとしてもらうなんて虫が良すぎる!!」)

 

 

そう叫びながら電源やコードを抜いていく藤宮の手を稲森は必死に止めようと手に触れたとき、その手が震えていることに気付いた。

 

 

(稲森「怖いの…?」)

 

(藤宮「…っ!」)

 

 

その事に気付いた稲森が問うと、藤宮は一瞬驚いた様な表情を浮かべ、頷く。

そして、藤宮は口を開き

 

 

(藤宮「怖いさ……また俺が人類の不幸を発見するんじゃないかってね……」)

 

(稲森「……」)

 

 

自身が今思っている事を全て吐き出した。

黙って聞いていた稲森は話終えている今でも震えている藤宮の手をとり

 

 

(稲森「なら、観測は続けるべきよ。可能性を捨てるなんて愚かな事だわ。そうしなきゃ、あなたは自分が背負ってる苦痛から解放されないわよ」)

 

(藤宮「…っ!」)

 

 

そう叱咤すると、藤宮は改めて気付かされた。

何を恐れているんだ、まだ地球が人類を見捨てると確定した訳ではないと…。

それに気付かれた藤宮の手の震えは自然と収まっていた。

 

彼が安心したと悟った稲森は安堵の表情を浮かべ、藤宮から手を離す。

 

 

(藤宮「博士…ありがとうございます」)

 

(稲森「ふふっ…いいのよ。さぁ!観測を続けましょう」)

 

 

そう感謝する藤宮に稲森は笑顔で返す。

いざ、改めて観測の続きを始めようとしたその時。

 

 

《ビー!ビー!ビー!》

 

(「「!?」」)

 

 

突然、研究所内にアラームが鳴り響いた。

稲森と藤宮は急いでパソコンで出所を確認すると、それは観測用のプールのセンサーが何かに反応した様であった。

 

稲森は観測用プールの映像をディスプレイに表示させると、プールから青い光が溢れていた。

 

 

《藤宮「来た…」》

 

《稲森「何、この光は…?」》

 

《藤宮「来たんだっ…!地球の意思が!!」》

 

 

不思議そうに眺める稲森とは反対に藤宮は嬉しそうに眺め、まるで子供の様にはしゃぐ。

 

 

(藤宮「博士はこの光を分析してくれ!俺はこの目で確かめてくる!!」)

 

(稲森「わかった!」)

 

 

いてもたってもいられない。そう思った藤宮は稲森に口早に告げると、すぐさま観測用プールに向かった。

 

 

 

 

(藤宮「来たっ!来たんだ!!」)

 

 

藤宮は嬉しそうに呟きながら、連絡通路を渡り、光が出現しているプールへと向かう。

こころなしか、光は藤宮が近付くにつれ、ますます輝きを増していった。

 

藤宮は光の出現したプールの近くにくると、光を見下ろす。

 

 

(藤宮「(お前がアグルなのか…?地球の意思なのか…?)うぅあっ!?」)

 

 

藤宮がそう問いかけると、頭痛と共に雷鳴轟く中を歩くアグルのイメージが流れてきた。

藤宮が苦痛に顔を歪めていると、光は更に輝きを増していき、溢れんばかりになっていく。

 

 

 

 

 

一方、稲森は藤宮に言われた通りに光の観測を行っていた。

だが、解析を行っていくうちに、その光は地球上に存在する粒子では考えられない程の周波数を放っている事がわかった。

 

 

(稲森「…っ」)

 

 

藤宮の事が不安になった稲森は、モニターに映る藤宮を眺めた。

しばらく様子を見ていると、突然光がプール飛び出し、藤宮に吸い寄せられる様に包みこむ。

それを見た稲森は目を見開くと、その様子を映しているモニターを両手で掴む。

 

 

(藤宮「アグル……俺にお前の力をくれ!アグルゥゥーーーー!!」)

 

(稲森「博也くぅぅぅーーーーーん!!」)

 

 

青い光を受け入れ、歓喜の叫びをあげる藤宮に稲森は涙目でモニター越しに叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

稲森「彼は……その光の中に消えたわ」

 

我夢「…」

 

 

稲森はことの顛末を話し終えると、稲森は悲しげな表情を浮かべた。

更に話を聞くと、藤宮がいなくなって以降も1人で観測を続け、彼のペット(藤宮曰く恋人)のハムスターの「リリー」の面倒を見ているという。

 

まるで、藤宮の帰りを待つ様に……。

 

しかし、この話を聞いて納得したことがある。

藤宮が人類だけでなく、悪魔にも敵意を向けているのは過去の出来事と地球が見せたアグルのイメージが彼の脳裏で合致してしまったのではということだ。

もしそうだとしたら、今までの行動も全て理由がつく。

 

 

我夢「(藤宮…)」

 

 

我夢は何とも言えないもやもやとした気持ちで、稲森の座っている近くにあるデスクに置いてある幼少期の藤宮の家族写真を見た。

 

その顔は今と違い、満開な笑顔だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、藤宮はふらふらとした足取りでようやくプロノーン・カラモスに辿り着くと、扉を開け、中へと入る。

その部屋はかつて粒子観測を行っていたプールであった。

 

藤宮は過去にアグルの光を手に入れた場所まで来ると、

意を決し、プールの中へ飛び込んだ。

 

 

藤宮「(アグルよ…。地球の危機が運命なら…人類の危機が運命なら…地球の意思に沿って行くことが人類に残された人類の道なのか……?それを導くのがアグルの力……)」

 

 

藤宮は自問自答すると、藤宮は手を伸ばす。

 

 

藤宮「(アグル!再びお前の力を…!!)」

 

 

藤宮は力強く願うと、それに答えるかの様に彼の前に青い光が現れた。

 

 

 

 

 

 

 

《ブー!ブー!ブー!》

 

「「!?」」

 

 

その時、我夢達がいる部屋にアラームが鳴り響く。

稲森はすぐさま異変があった観測機器を調べると、目を丸くした。

 

 

稲森「これは…!あの時と同じだわっ!?」

 

我夢「えっ!?」

 

 

それを知った稲森と我夢はモニターを確認すると

 

 

我夢「藤宮!?」

 

稲森「博也君!?」

 

 

そこには観測用プールに潜り、そこに現れた光に手を伸ばす藤宮の姿があった。

数年ぶりの藤宮の姿を見た稲森は、いてもたってもいられず、観測用プールへと向かおうとする。

 

 

我夢「(…そうか!ここで藤宮は……)うわっ!?」

 

稲森「きゃっ!?」

 

 

我夢がどうやってアグルの力を手に入れたのか納得していると、突然地響きが彼らを襲う。

 

 

稲森「うっ…!」

 

我夢「博士っ!?」

 

 

稲森は頭にその衝撃で棚から落ちてきた本に当たり、気を失ってしまった。

地響きが収まると、我夢は急いで稲森に駆け寄る。

 

 

我夢「博士っ!!しっかりしてください!!」

 

 

我夢は倒れている稲森の肩を揺するが、目が覚める気配はない。

だが、息はある事に安心すると、物が落ちている床をある程度退け、博士を棚にもたれかけさせた。

それを終えると、我夢は外へ向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我夢が外に出ると、我夢は目を疑った。

そこには数本の槍が……アグルに倒されたはずのアルギュロスが地上に刺さっていたのだ。

 

 

我夢「生きていたのか…!?」

 

 

我夢が驚きの声をもらしているうちにアルギュロスはバチバチ…と電流を放ち、人型へと変形していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時、プール内にいる藤宮は新たに現れた光を手に取り、体を眩ゆい光で包み込む。

そして、アルギュロスが出現したのを感じ取ると、真上を見上げ、両腕も一緒に突きだし

 

 

藤宮「アグルゥゥゥゥゥーーーーーーーーーー!!!

 

 

そう叫ぶと、彼は青く光り輝き、ウルトラマンアグルへと変身した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、外ではアルギュロスが右腕のキャノン砲でプロノーン・カラモス目掛けて銃撃した。

最初の一撃が当たり、周辺に建物の破片が飛び散る。

我夢はこれからもっと飛んでくる破片に身構えるが、最初の一撃以降、銃撃が当たる事はなかった。

 

何と、弾丸は何かに防がれるかの様に空中で火花を散らした。

 

 

アルギュロス「!?」

 

我夢「!?」

 

 

アルギュロスと我夢は驚きながらも弾丸が防がれた位置を見る。

すると、

 

 

[推奨BGM:アグル降臨]

 

 

アグル「…」

 

我夢「藤宮…!」

 

 

そこには身を屈めたアグルが背中で施設を守る様に現れた。

アグルは透視能力でプロノーン・カラモス内を見る。

稲森博士が気を失ってはいるが、無事であることを確認したアグルは安堵したように頷く。

 

 

[推奨BGM:アグルの戦い]

 

 

アルギュロス「パオォォォォォーーーーー!!」

 

アグル「ッ!~~~~!!」

 

 

そうしていると、右腕を元に戻したアルギュロスが象に似た鳴き声でかかってこいと言わんばかりに威嚇する。

アグルは振り返りながら立ち上がると、両拳に力を込め、こちらへ向かってくるアルギュロスへ向かっていく。

 

 

アグル「デュワァ!」

 

 

アグルは左、右と交互の回し蹴り、そして右手の甲で殴りつけるが、アルギュロスの腕に防がれる。

 

 

アルギュロス「パオッ!」

 

アグル「ホワッ!ドゥワァ!」

 

アルギュロス「パオォォォーーー!」

 

 

そして、アルギュロスの反撃のハイキックを後ろへ避け、すれ違い様に右腕を振りかぶって横にチョップするが、アルギュロスはしゃがんで回避しながらアグルの背後へ回る。

 

 

アグル「ホワッ!」

 

アルギュロス「パオォォォーー!!」

 

 

アグルは上体を反らして後ろへ蹴るが、アルギュロスは両手ではたき落とす。

アグルは防がれるのを察しており、右腕を振り回して殴りかかる。

 

 

アルギュロス「パオォォォーー!!」

 

 

だが、アルギュロスはそれを右腕で防ぎ、余った片方の腕で顔面へ殴りかかる。

 

 

アグル「ドォウッ!」

 

 

しかし、アグルも負けじと上体を右側に傾けさせて避け、反撃を防ぐ為、左腕でアルギュロスの右腕を押さえる。

 

そして、両者の腕が交差し、つばぜり合いの様に攻め合いながら、ゆっくりぐるぐると回る。

 

前回の時と違い、お互い一歩も譲らない

―――――正に互角。

どちらが勝つかわからない状態に我夢は息を飲みながら、見守る。

 

 

ピカァァァーーーーーン!!

 

アグル「ッ!」

 

 

しばらく拮抗状態が続いていると、突然アルギュロスの身体が輝きだした。

輝きながら、見覚えのあるシルエットへと姿を変えた。

 

 

その姿は青い体色に銀色のプロテクター、胸元に輝く巨人――――何とアルギュロスはウルトラマンアグルの姿に化けたのである。

 

だが、その眼は不気味なピンク色に輝いており、ボディーラインやプロテクターの内側にある黒い箇所はメタリックグレーと本物のアグルと相違点がある。

名付けるとしたら、「ニセ・ウルトラマンアグル」である。

 

 

[BGM終了]

 

 

ニセ・アグル「フォッフォッフォッ…」

 

アグル「!?」

 

ニセ・アグル「デ"ェア"ッ!」

 

アグル「ドゥワッ!?」

 

 

ニセ・アグルは口元を三日月の様に歪めて不気味に笑うと、驚いているアグルの顔面を殴る。

それをくらったアグルは後ろへ怯みながら後退る。

 

 

ニセ・アグル「パオォォォーーー!!」

 

アグル「ドゥワァッ!?」

 

ニセ・アグル「ドォワ"ァ"ァ"ーーー!!」

 

アグル「ドゥオワァァァーー!!」

 

 

ニセ・アグルは続け様に次々と格闘攻撃の応酬を繰り出す。

アグルも負けじと応戦するが、ニセ・アグルの猛攻に翻弄される。

 

 

ニセ・アグル「パオォォォーー!ドォワ"ァ"ァ"ァ"ーーーーー!!」

 

 

ニセ・アグルは怯んだアグルの首を掴むと、そのまま勢いよく前方へ投げ飛ばした。

 

 

アグル「…ッ」

 

我夢「っ!」

 

 

アグルは地面を叩きつけられながらも、片膝をついて立ち上がる。

我夢は助太刀しようとエスプレンダーを右手に装着し、変身しようとしたが

 

 

アグル「…ッ!」

 

我夢「っ?」

 

 

それを見たアグルは「手を出すな!」と言わんばかりに手で我夢を制した。

このメッセージを受け取った我夢は不安そうな表情ながらも、変身するのをやめる。

 

その隙にニセ・アグルはアグルに向かって疾走してくる。

 

 

アグル「デェアッ!」

 

ニセ・アグル「?」

 

 

だが、アグルはすぐさま立ち上がり、体を回転させながら上空へと上昇する。

それを見たニセ・アグルは走るのをやめ、空を見上げる。

すると、

 

 

ニセ・アグル「ッ!?」

 

アグル「ドゥオワァァー!!」

 

ニセ・アグル「ドォ"ッ!!」

 

 

アグルは急降下してニセ・アグルに倒れこみながら体当たりをくらわせる。

 

 

アグル「ドォワッ!」

 

ニセ・アグル「パオォォォーー!!」

 

アグル「デュワァァァーー!!」

 

ニセ・アグル「パオォォォーー!パオォォォーーー!!」

 

 

アグルはすぐさま起き上がり、ニセ・アグルを無理やり起こさせて腹部へ膝蹴りを放ち、そのまま後方へ投げ飛ばす。

アグルは未だ苦しんでいるニセ・アグルに近づき、

 

 

アグル「ドォウッ!ドァァァァーーーーーー!!」

 

ニセ・アグル「!?」

 

 

両腕で高く持ち上げると、振り向き様にニセ・アグルを大きく投げ飛ばした。

ニセ・アグルは正面から地面に叩きつけられ、苦しそうにもがく。

 

先程の劣勢から一変して、戦況はアグルに傾いていた。

アグルは余裕な様子で先程のダメージを特に効いてなさそうである。

このままアグルに軍配があがりそうだが、ニセ・アグルも負けてはいない。

 

 

ニセ・アグル「ホ"ワ"ッ!」

 

アグル「ッ!」

 

 

ニセ・アグルは立ち上がると、リキデイターの構えをとった。

だが、その色は邪悪な紫色に染まっている。

 

 

ニセ・アグル「ドォ"ワ"ッ!!」

 

アグル「!?」

 

我夢「!?」

 

ドカァァァァァーーーーー!!

 

 

ニセ・アグルはリキデイターを2発発射すると、アグルに命中し、辺りに爆発が起きる。

 

その光景を見たニセ・アグルは「勝った!」と勝利を確信し、ガッツポーズをして喜びに浸っていたが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アグル「……」

 

ニセ・アグル「パオォォォーー!?ドォワ"ッ"!!」

 

 

煙の中から屈んでいる無傷のアグルが姿を現す。

ニセ・アグルは「ぬか喜びさせやがって!」と言わんばかりに腕を振るうと、額の前に両腕をクロスさせて、フォトンクラッシャーの構えをとる。

 

 

アグル「フォォォォォ……!!」

 

 

同じくアグルもワンテンポ遅れながら、フォトンクラッシャーの構えをとる。

 

 

ニセ・アグル「ドゥ"ォワ"ァ"ァ"ァ"ーーーーーーーー!!!」

 

アグル「ドゥォワァァァーーーーーーーーーーー!!!!!」

 

ドガガァァアァァァァァーーーーーーーーン!!!

 

 

ニセ・アグルは一足先にフォトンクラッシャーを放つが、本物のアグルのフォトンクラッシャーに押し合うこともなく押し返され、そのまま爆発四散した。

 

 

我夢「パワーアップしたのか……」

 

 

我夢は以前よりも遥かに強くなったアグルに驚きながら呟く。

勝利したアグルは青い光を放つと、姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦いが終わり、我夢はそろそろ駒王町に戻ろうとするが

 

 

藤宮「我夢…」

 

我夢「藤宮…君は僕らの為に……」

 

 

森の中から藤宮が現れる。

我夢は少し嬉しそうな顔でそう言うが

 

 

藤宮「勘違いするな。俺はアグルの聖地を守っただけだ……」

 

 

藤宮は冷たく返す。

だが、我夢はそれをわかっていたのか、特に気にせず、言葉を続けた。

 

 

我夢「アグル……それが君の力…。君のご両親の話は聞いたよ……。僕たち、悪魔のせいで人生が滅茶苦茶になったんだろう?」

 

藤宮「……」

 

我夢「信じてくれるかわからないけど、僕の(あるじ)はとても良い人だよ。君が事情を話せば、きっと親身になってくれるはずだよ」

 

藤宮「………」

 

我夢「都合の良い話かもしれない。でも、まずはウルトラマン同士、力を合わせて……僕とイッセーと一緒に戦おう」

 

 

我夢は複雑そうな表情をしながらも、手を差し出す。

藤宮はその手を

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とらなかった。

藤宮は不機嫌な顔になると、我夢の手を払いのけた。

その行動に我夢は目を見開くが、藤宮は淡々と話す。

 

 

藤宮「お前は地球の意思に逆らっている」

 

我夢「…?人類を救うのが地球の意思だろ?」

 

藤宮「違うな。今の人類は自然の頂点に立つには自己中心的すぎる」

 

 

冷酷に答える藤宮に我夢はイラッとし、

 

 

我夢「ただ、破滅招来体の犠牲になればいいっていうのか!」

 

藤宮「地球がそれを望むなら―――」

 

我夢「君は人が死ぬ悲しみから目を反らすのか!?」

 

 

少し声を荒げて問うと、藤宮はそれを意に返さずに冷酷に答える。

藤宮は眉をしかめている我夢の眼を見て

 

 

藤宮「人が悲しむ?悲しむも何もそれが地球が選んだ選択肢だ。それにもし、お前が俺なら喜んで協力すると思うか?」

 

我夢「っ!そ…それは!」

 

 

そう問うと、我夢は言葉を詰まらせた。

自分が藤宮なら?そう考え込んでいると、

 

 

《心のマグマが目覚めたら~~♪大地と共~に立ち上がるぜ~~♪》

 

我夢「っ!」

 

 

スマホの着信音が鳴り、我夢は着信画面を見ると、リアスからであった。

また勝手に出ていった事を思い出した我夢は青ざめながら電話に出た。

 

 

我夢「もしもし?」

 

《リアス「もしもし、我夢?どこにいるのかしら?」》

 

我夢「中部地方です。あの金属生命体について調査してたんですけど、無事アグルが倒してくれました」

 

《リアス「あぐる?何の事かはわからないけど、無事だったのは幸いだったわ。後で詳しく聞かせてもらうから、帰ってきなさい」》

 

我夢「あっ、はい!…はぁ」

 

 

我夢はそう返事すると、電話をきった。

勝手に行動したのを咎めると思ったのでヒヤヒヤしていたが、問題ないとわかり、ほっとため息をつくと、再び藤宮を見つめる。

だが、藤宮はよりいっそう不機嫌な顔になっており

 

 

藤宮「行けよ…お前の仲間の元に……」

 

我夢「……」

 

 

そう突き放す様に言うと、我夢に背を向けて歩き出した。

 

 

藤宮「……」

 

 

藤宮は歩く途中、遠目で稲森博士と彼女が持っている篭に入っているペットのリリーを見つめた。

 

 

稲森「…っ!」

 

藤宮「…」

 

 

稲森はその視線に気付き、少し悲しげに彼に視線を返す。

だが、藤宮は足早にすぐ、その場を去っていった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回予告

大地の怒りはもう収まらない…!
駒王町の都市機能を完全にマヒさせて、あっちにもこっちにも龍の首が!
踏ん張れ、オカルト研究部!

次回、「ハイスクールG×A」!
「龍の都」!
君もパワフルに行こう!








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