ディグローブの危機が去って翌日の放課後。
リアス達、オカルト研究部のメンバーは今、旧校舎にあるバリケードテープで厳重に封鎖された扉の前にいた。
リアスは事情を知らない我夢、一誠、アーシア、ゼノヴィアの4人に説明した。
その扉の先には我夢と一誠が悪魔に転生する前からいた、もう1人の
だが、あまりにも強力な力で本人ですらコントロールする事が出来ないので、やむなく封印したこと。
そして、様々な死闘を潜り抜けてきた今のリアスの技量なら、何があっても大丈夫とサーゼクスに認められ、その封印を解禁する事にしたことを。
リアス「それじゃあ、封印を解くわね」
リアスは皆にそう伝えると、扉に張られている魔方陣を解除し始める。
我夢「どんな人だろう?」
アーシア「楽しみです~」
一誠「なあ、木場。どんなやつなんだ」
木場「うん、悪い子じゃないんだけど…」
封印が解除されていく中、気になった一誠は木場に尋ねると、木場は困ったように頬をかきながら言葉を続け
木場「…問題があってね、引きこもりなんだ。」
一誠「引きこもり?」
木場「うん。一応、深夜にはこの旧校舎内を徘徊できるように扉の封印が解ける仕組みにはなってるんだけど、本人が拒否しててね…。外に出たがらないんだ」
我夢「それって…大丈夫?」
木場「どうだろうね…」
その説明を聞き、我夢達はますます不安になる。
すると、前で聞いていた朱乃はあらあらと微笑みながら、口を開いた。
朱乃「でも、悪魔稼業においては私達の中では一番の稼いでますわ」
アーシア「えっ、そうなんですか!?凄い…」
我夢「充分自信を持てるのに、どうして出たがらないんだ…?」
我夢はそう呟くと、4人はもう1人の僧侶が外に出たがらない事に首を傾げていると、扉の封印が解除された。
リアス「みんなはちょっとここで待ってて」
リアスはそう告げると、『KEEP OUT』と書かれたバリケードテープを破り捨てると扉を開け、中に入っていった。
すると、その瞬間
「ギャアァァァァァァァーーーーーーーーーー!!!」
「「「「「「「「!!?」」」」」」」」
耳をつんざく様な悲鳴が響いた。
その声に我夢達は驚きながらも咄嗟に耳を塞ぐ。
「な、何ですかぁぁぁぁーーーーーー!?」
リアス「大丈夫よ、あなたを傷つける人はいないわ。さあ、外へ…」
「嫌ですぅぅぅーーーーーー!!」
一誠「なあ、我夢…」
我夢「うん…」
リアスは優しく言葉をかけるが、中にいる人物はよっぽど外に対する恐怖心を持っているのか叫んで拒否する。
不安になる我夢達だが、気になるので恐る恐る部屋の中へと入る。
部屋の中はカーテンを閉めきっている影響で暗く、引きこもっていることを物語っている。
辺りを見渡すと、華やかな装飾で彩られた家具が置いてあり、いかにも女の子風な部屋である。
我夢達は他にも気になる点はあるが、ひとまず僧侶をなだめているリアスの元に近寄る。
「ひっ!?」
一誠「お」
我夢「これは…」
我夢達はリアスの背後から覗くと、そこには金髪に赤い瞳をした小柄な美少女が怯えた目で我夢達を見つめていた。
その可愛らしい容姿に我夢と一誠は思わず歓喜の声をもらすが
リアス「この子はギャスパー・ヴラディ。見た目は女の子だけど、
「「「「え?」」」」
リアスの言葉に我夢と一誠だけでなく、アーシア、ゼノヴィアも目を丸くして固まる。
そして、後ろで聞いていた朱乃はいつもの様に微笑み
朱乃「女装趣味があるのですよ」
「「…………ええええぇぇぇぇーーーーーー!?」」
続ける様に言うと、我夢と一誠は絶叫する。
ギャスパー「ヒィィィーーーー!?ごめんなさいィーーーーーー!!!」
その絶叫に怯えた女装少年もといギャスパーはそそくさと我夢達から離れると、近くの物陰に隠れてしまう。
しかも、一誠と我夢はショックのあまり、ガックシと膝をつき
一誠「少しだけときめいた俺を殴りたい…」
我夢「同感…」
そう呟くと、リアス、朱乃、木場、小猫は苦笑いを浮かべる。
すると、一誠が落ち込んだ表情のまま、ギャスパーの方へ顔を向ける。
一誠「おい、お前。何で女装してるんだよ?」
ギャスパー「だって、女の子の服の方が可愛いんだもん…」
我夢「だもん、って…」
物陰からこっそりと顔を出しながら答えるギャスパーの言葉に我夢と一誠は更に落ち込む。
仕草や声、どれを見ても聞いても女の子にしか見えない。
一誠「はあ…金髪ダブル僧侶の夢を一瞬でも見ていたのに……」
小猫「人の夢と書いて、儚い…」
我夢「はぁ…だめだ」
ギャスパー「ところで、こ、この人達は、だっ、誰ですか?」
深いため息をつく2人をよそにギャスパーはリアスを見上げ、尋ねる。
リアス「紹介するわね。貴方がここにいる間に増えた眷属で、ショックを受けている子達が『兵士』の我夢とイッセー、『騎士』のゼノヴィアに貴方と同じ『僧侶』のアーシアよ」
ゼノヴィア「よろしく頼む」
我夢「よろしく」
一誠「よろしくな…」
アーシア「はじめまして、ギャスパー君。同じ『僧侶』同士仲良くしましょう」
ゼノヴィアとアーシア、ショックから立ち直った我夢と一誠も加わって挨拶するが
ギャスパー「ヒィィィーーーーーーー!!ひ、人が増えてるゥゥゥーーーーーーーー!!!」
人が増えてる事に怖がり、更に奥の方の物陰へ隠れてしまう。
それを見た我夢はリアスに問う。
我夢「部長、彼ってもしかして対人恐怖症なんですか?」
リアス「そうね」
リアスからそう聞くと、我夢は「外に出すのは手強いな…」と難しそうな顔で呟く。
すると、リアスはガタガタと物陰で震えているギャスパーのもとへソッと歩み寄り
リアス「お願いだから外に出ましょ?ここには誰も貴方を傷つける人はいないわ」
ギャスパー「嫌ですゥゥゥーー!お外に出たくないィィィーーーー!!出ても怖い目にあうだけなんですゥゥゥーー!!!僕は一生ここで過ごすんだァァーーーー!!!」
一誠「…っ!」
そう優しく言葉をかけるが、ギャスパーは嫌々と叫ぶ。
やってみなきゃわからないのに無理だと決めつけて否定するギャスパーを見て、いらっときた一誠は早歩きでギャスパーに歩み寄る。
ギャスパー「ひっ!」
一誠「おい、部長がこう言ってんだ。とりあえず外に―――」
ギャスパー「嫌ーーーーーーーーーーー!!!」
一誠は強引気味に彼の腕を取って外に出ようとするが
一誠「!?」
掴もうとした手は空をきり、目の前にいた筈のギャスパーは奥にあるタンスの横で体を震わせて隠れていた。
この現象に一誠のみならず、他の新参メンバー3人も目を見開く。
一誠「あ…ありのまま、今起こった事を話すぜ!『俺はあいつの腕をとったと思ったら、いつの間にかあいつは消えていた』!な…何を言ってるのかわからねーと思うが俺もn…」
我夢「部長、今のは?」
遂にはパニック状態になった一誠が意味不明な事を話し出すが、それをよそに我夢はリアスに尋ねる。
リアス「ええ、今のはギャスパーの
「「「「ええーーーーーーーーー!!」」」」
その後、部室に場所を移した一同はリアスの話を聞いていた。
ちなみにギャスパーは何とか部屋から引きずり出すことには成功したが、段ボールに閉じ籠ってしまい、そのまま部室の隅で大人しくしている。
我夢「部長、その『
リアス「ええ、無機物、有機物問わず何でもね。でも、自分より格上の実力者には通用しないわ」
一誠「なるほど…確かに強ぇ……でも、その力を上手くコントロールできなくて、目に映ったものを止めてしまうから封印を……」
一誠がそう呟くと、リアスは頷く。
リアス「実はギャスパーは吸血鬼と人間のハーフなの」
我夢「えっ、じゃあ外に出たがらないのは太陽が苦手だからじゃあ…」
リアス「その点は問題ないわ。彼はデイウォーカーと呼ばれる太陽の下に出ても平気な吸血鬼の血を引いてるわ。でも、苦手ではあるみたいね…」
そう言うと、リアスはでもと言葉を続け
リアス「ギャスパーは私の眷属…いえ、おそらく悪魔の中ではトップクラスの潜在能力を秘めているわ。その証拠に転生させる時に使った駒は『変異の駒』よ」
ゼノヴィア「何っ?」
一誠「マジか…」
話を聞いた我夢、一誠、アーシア、ゼノヴィアは驚き、未だ部室の隅で段ボールに閉じ籠り、怯えているギャスパーを見る。
一誠「それでこれからどうするんです?」
とてもそうには見えないけどな…と思いつつも一誠はリアスに問いかける。
リアス「とりあえず、
我夢「そうですよね…」
一誠「でも、本人はこの通りだからなぁ…」
ギャスパーの今後の目標に頭を悩ませる一同。
本当は主であるリアスがギャスパーに特訓させるべきだが、彼女と朱乃は会談の打ち合わせ、木場は聖魔剣についての話でサーゼクスに呼ばれている。
う~んと皆が考えている中
ゼノヴィア「部長!私に任せてくれ!」
リアス「え?」
ゼノヴィアが胸を張りながら、堂々と宣言する。
その自信ありげな声に一同は彼女に注目する。
ゼノヴィア「私は教会時代に吸血鬼と相手をした事がある。自慢じゃないが、吸血鬼の扱いには慣れていると思う。任せてくれないだろうか?」
リアス「…わかったわ、じゃあ頼むわね」
リアスはその自信満々に話す彼女にギャスパーの事を任せることにした。
だが、我夢と一誠はゼノヴィアに対してどこか不安な気がするのを感じられずにはいられなかった。
それから数分後。
旧校舎の前で約束通りゼノヴィアがギャスパーに特訓を行っていたのだが…
ゼノヴィア「ほ~れ!もっと早く走らないと、このディランダルの餌食になるぞ!」
ギャスパー「ヒィィィィーーーーーー!!殺されるゥゥゥーーーーーーー!!」
ディランダルをブンブンと振り回しながら追いかけるゼノヴィアから、ギャスパーは必死の形相で逃げ回っていた。
彼女曰く「体力作りの基本は走りこみだ!殺されるとわかったら死に物狂いで必ず逃げ回り、そのうちに体力がつく!」ということであるが、どう見ても吸血鬼狩りにしか見えず、逆効果だ。
一誠「あて身っ!」
ゼノヴィア「うっ!?」
見てらんないなと思うな否や、一誠はゼノヴィアの首筋に手刀を叩きこむと、ゼノヴィアは気絶し、その場で倒れこんだ。
我夢「ごめんね、ギャスパー」
ギャスパー「し、死ぬかと思ったァァーーーー!!」
目尻に涙を溜めながらゼェ…ゼェ…と息をきらすギャスパーに謝る我夢。
「またこれで更に外が怖くなったんじゃないか」と我夢は心配する中、気絶したゼノヴィアを木に寄りかからせた一誠は我夢に問いかける。
一誠「我夢、どうする?」
我夢「えっ、そうだな…」
我夢と一誠は不安が的中し、何とか止めさせることは出来たが、また振り出しに戻った2人は考え始める。
すると、小猫が挙手した。
小猫「…先輩方、私に考えがあります」
一誠「おお!」
我夢「え…」
小猫「任せて下さい…」
その言葉に一誠は期待に胸を膨らませるが、我夢は何故かゼノヴィアと同じ様な不安を感じた。
その間にも小猫は肩で息をするギャスパーに近寄る。
小猫「ギャー君」
ギャスパー「こ、小猫ちゃん…な、何……ってそれ、もしかして……!!」
ギャスパーは小猫が懐から取り出したものを見て青ざめた。
そう、それは吸血鬼が大の苦手なニンニクだった。
小猫「…ギャー君、ニンニク食べれば元気になる」
ギャスパー「イヤァァァァーーーーーー!!ニンニク駄目ェェェーーーー!!」
それを見て逃げるギャスパーを小猫は食べさせようと、ニンニクを見せながら早歩きで追いかける。
我夢と一誠は「さっきと変わんないじゃないか!」と心の中でツッコミつつも、追いかけ回す小猫を止める。
我夢は小猫、目覚めたゼノヴィアにため息をはきながら見据え
我夢「2人共、部長はギャスパーの人嫌いと
小猫「…うっ」
ゼノヴィア「面目ない…」
そう説教すると、2人は申し訳ない表情を浮かべて縮みこむ。
アーシア「ギャスパー君、大丈夫ですか…」
ギャスパー「ヒィィィィーーー!!外怖いィィィーーー!みんなやっぱり僕の事をいじめるんだァァァーーーーーー!!」
2人の無茶苦茶な特訓のせいでギャスパーはどこからか取り出した段ボールの中にまた閉じ籠ってしまった。
さて、どうするかと我夢は考えていると、
匙「おう、お前ら。張りきってんな~~~」
一誠「おっ、匙」
何故かシャベルを手に持つ匙が感心感心といった表情で現れる。
匙はキョロキョロを辺りを見渡すと、首を傾げる。
匙「あれ?お前ら、解放された眷属の特訓をしてるって話は聞いてるが、肝心のそいつは?」
一誠「ああ、それがだな…。あの段ボールの中に閉じ籠っているんだ」
匙「えっ…!あ、ああ、お前らも大変だな…」
一誠が指指す段ボールを見て、匙は察したのか苦笑いを浮かべる。
我夢「匙、君こそ何してるんだ?」
匙「おう!会長に花壇の手入れを頼まれてな!会長の眷属たるもの、学園を綺麗にしなきゃな!」
一誠「それって、雑用なんじゃ…?」
匙「まっ、まさかな!ハ、ハハ……はぁ…」
一誠にそう言われた匙は笑みを浮かべていたが、図星だったのかガックシと肩を落とす。
匙「この後もよぉ~…花壇の手入れだけじゃなくて、屋根の上に乗ったテニスボールの回収もしないといけねぇんだよ。この学園広いからなぁ…」
一誠「お前も大変だな…」
我夢「テニスボールか…うん?テニスボール!?」
我夢は匙の話を聞き、何かを閃いたのか目を見開くと、匙の肩をガシッと掴む。
匙「わっ!どうしたんだよ?」
我夢「匙!僕たちにもテニスボールの回収を手伝わせてくれ!」
匙「へ?」
唐突の提案に匙や周りのいるみんながキョトンとする。
一誠「我夢、何か考えがあるのか?」
我夢「ああ!」
一誠の問いかけに我夢は何か自信があるのか口角をあげて頷く。
その考えとは…
それから数分後。屋根に乗ったテニスボールの回収を匙と共に手伝った我夢達は再び旧校舎の前に集まっていた。
意外にも屋根には沢山のテニスボールが乗っており、ゴミバケツくらいの量だった。
実は我夢がボール回収を手伝ったのはギャスパーの
ギャスパーの
我夢はそれを思い付いたのである。
我夢はボールが山ほど入っているカゴからテニスボールを1個手に取り、目の前にいるギャスパーに見せながら、特訓の説明をし始めた。
我夢「よし、ギャスパー。今から君にボールを投げるから、ボールだけを止めてみてくれ」
ギャスパー「はっ、はい!!」
我夢「いくぞ!」
我夢は投球宣言すると、ギャスパー目掛けて投げるが
ギャスパー「ヒィィィィーーーー!!」
ギャスパーは迫り来るボールに怯え、ボールからしゃがんで回避してしまう。
我夢「ごめんごめん。今のは強すぎた。次からはゆっくり投げるから、止めてみてくれ」
ギャスパー「はっ、はい!」
我夢は申し訳なさそうに謝ると、今度は穏やかなスピードで投げる。
我夢「…っ!」
ギャスパー「あ!すみません、すみません!!」
今度はボールを止めるには成功したが、それを投げる我夢をも止めてしまった。
ギャスパーはすぐに時止めを解除すると、我夢へ必死に頭を下げるが、我夢は微笑み
我夢「気にしなくていい…最初は誰でも上手くはできないさ。さあ、特訓を続けよう!」
ギャスパー「…はい!」
そう元気付ける様に言うと、ギャスパーはほんの少しだけだが、表情が明るくなった。
そうして、特訓を続ける2人を見ながら、匙は隣にいる一誠に小突く。
匙「まさか封印されてた眷属って、アーシアちゃんと同じ金髪の女の子だったなんてな~」
一誠「いや、あいつ男だぞ」
匙「ゑ!?」
そう聞いた匙は信じられないといった顔で、特訓しているギャスパーを目を凝らして見る。
一誠は言葉を続け
一誠「女子の制服を着てるが、ありゃあ趣味だそうだ」
匙「なんやて!?わいの夢…ダブル金髪僧侶はどこいったんや…」
その事実を言うと、匙は嬉しそうな顔から一変して、ガックシと膝をつく。
しかも、何故か口調が関西弁である。
ギャスパー「ひぃ…ひぃ…」
しばらく特訓を続けていると、ギャスパーは疲れたのか両ひざに手をつき、肩で息をする。
その様子を見た我夢は「一旦、休憩しよう」と声をかけようとした時
「よお、特訓頑張ってんじゃねぇか?」
「「「「「!?」」」」」
突然、男性の声が響き渡る。
皆は驚きながらもキョロキョロと辺りを見渡すと、木陰から1人の男が現れる。
その男を見て、一誠は目を丸くした。
そう、その男はつい先日に出逢った堕天使の総督、アザゼルであった。
一誠「お、お前は…!?」
アザゼル「よお、あの日ぶりだな」
目の前にいる人物を知っている様子に皆は一誠に期待の眼差しを浮かべるが
一誠「お前は…
霞のジョー!!」
「「「「「「ズコーーーーッ!」」」」」」
その発言に我夢達のみならず、アザゼルもずっこける。
我夢は以前にもこんなことが合ったようなデジャヴを感じた。
皆の反応を見て、一誠は違ったかな?と首を傾げる。
すると、アザゼルは起き上がり
アザゼル「バカヤロー!俺はアザゼルだっ!堕天使の総督アザゼルだ!」
一誠「おお、そうだったそうだった……って、アザゼル!?」
「「「「「っ!」」」」」
そう言うと、我夢達は一斉に身構える。
その様子を見てアザゼルは
アザゼル「おいおい、俺は別に戦いにきたわけじゃねぇ…ちょいと見物したいものがあって来たんだ」
ゼノヴィア「見物したいもの?それは何だ」
アザゼル「お前らのとこの騎士が使っている『聖魔剣』だよ。ここにはいねぇみたいだが…」
我夢「それなら、今度の会談の打ち合わせで部長達と一緒にサーゼクス様のもとに向かっている」
アザゼル「何だ、留守か…いないんなら、仕方ねぇな」
アザゼルは少々残念そうに呟く。
何の目的かは知らないが、この場に木場がいなくて良かったと我夢達はホッとしていると、アザゼルは木陰に隠れているギャスパーに目があった。
アザゼル「おい、そこのヴァンパイア」
ギャスパー「ひっ!?」
アザゼル「お前、『
一誠「やけに詳しいな」
アザゼル「当然だろ?俺は
さも知っていて当然の様な口調でアザゼルは言葉を返すと、次は匙に視線を向けた。
アザゼル「お前さんは『
匙「え、俺の『
『
その様子を見て、アザゼルはため息をつき
アザゼル「これだから最近の
常識の様に話すアザゼルに我夢達は心の中で「いや知るかよ」とツッコミつつも、驚きのあまり声が出なかった。
なかでもグレモリー眷属の頭脳である我夢は一番驚いていた。
飄々とした態度をとってはいるが、豊富な知識に冷静な分析力、それを活かしての素早い提案。
その姿に我夢はアザゼルにほんの少し尊敬してしまった。
アザゼル「んじゃ、頑張れよ」
アザゼルはそう言うと、どこかへ歩き去っていった。
ちなみにアザゼルが提案した特訓方法を実践してみると、順調に進んだ。
ボールを完璧に止められた回数は少ないけれども、ギャスパー自信は満足そうな顔を浮かべていた。
特訓が順調に進み、日も暮れ、辺りは暗闇に包まれた夜になった。
さすがに夜遅くまで学校にいるわけにもいかず、我夢達は特訓を終えることにした。
月の明かりが差し込む旧校舎の廊下を我夢とギャスパーの2人は並んで歩いていた。
ちなみに他のみんなは体育館にボールを返しにいったり、体育館の鍵を返しにいったり等でここにはいない
ギャスパー「あの…ありがとうございます」
我夢「うん?ああ、いいよ」
お礼を言ってくるギャスパーに我夢は微笑み返す。
ギャスパー「我夢先輩や皆さんのおかげで、あそこまで自分の力を制御できるなんて……僕、生まれて初めてです!」
我夢「そうかそうか」
嬉しそうに話すギャスパーに我夢は笑みをこぼす。
それもそうだろう。
今まで何でも意識せず止めてしまう自分の力に恐怖していた彼がここまで自信がついたというのだ。
これに喜ばない訳がない。
ギャスパー「あの、先輩?先輩ってウルトラマンガイア、なんですよね?」
我夢「そうだけど…どうした?」
ギャスパー「いえ、先輩は凄いなと思って。自分に与えられた力に怖がったりせず、怪獣達といつも戦ってる。……弱虫の僕なんかと違って。迷惑ですよね?」
我夢「…」
ギャスパーはそう言うと、顔を曇らせる。
我夢は事前にリアスからギャスパーの過去を聞いている。
ギャスパーは吸血鬼の父親と人間の母親との間に生まれた。
しかし、吸血鬼は純血を重んじる吸血鬼社会では異端で、かつギャスパーは吸血鬼の中でも名家の出身であることで周囲のみならず、親兄弟からも迫害を受ける毎日を送っていた。
そんな生活が嫌になったギャスパーはある日、吸血鬼の国から脱走するが、運悪く出くわしたヴァンパイアハンターに殺されてしまい、その後リアスに救われて、悪魔に転生した。
だが、転生してもギャスパーの受難は続いた。
今度は生まれ持った
この事からギャスパーは重度の対人恐怖症となり、自分の力を恐れ、部屋に閉じ籠ってしまったのである。
その話を思い出しながら我夢は口を開く。
我夢「…僕もね、実は怖がってるんだ」
ギャスパー「え?」
そう聞いたギャスパーは目を丸くし、我夢の顔を見る。
そんな風には見えないという目だ。
我夢は懐からエスプレンダーを取り出し、それを見ながら言葉を続ける。
我夢「この地球から与えられた光は僕自身が望んで手にいれた。でも、毎回怪獣や敵と戦って思うんだ…いつか死ぬんじゃないか?もっと大切なものを失うんじゃないかって」
ギャスパー「…」
ギャスパーはそう話す我夢の話を黙って聞き続ける。
我夢の表情はいつものように穏やかだが、その眼は寂しさが浮かんでいた。
我夢「この光は僕にとっては強すぎる。ギャスパーの力もそうではないと言いきれない…」
ギャスパー「…」
我夢「だけど、その力があるからこそ誰かを守れるんだ」
ギャスパー「誰かを守れる…?」
言葉を繰り返して問いかけるギャスパーに我夢は頷き
我夢「ああ、例えば火事かなんかでビルから降りられない人がいたら、巨大化できる僕が救助できるけど、ギャスパーにはできない。反対に、今まさに交通事故に遭いそうな人がいたら時間を止められるギャスパーが救うことができるけど、僕にはできないだろ?」
ギャスパー「は、はい…」
頷くギャスパーを我夢は微笑みながら見つめ
我夢「人にはそれぞれできる事とできない事がある。だけど、逆に考えれば自分にしかできないことが必ずあるってことさ」
ギャスパー「自分にしか…できない?」
我夢「そう!だからもっと自分に自信を持っていいよ。僕が保証する。それと誰も君を迷惑なんて思っちゃいない。言葉には出してないけど、みんな君を大切な仲間として信頼しているさ」
ギャスパー「はっ、はい!」
そう諭す様に告げると、ギャスパーは明るい表情になり、元気よく返事する。
それを見た我夢も思わず笑顔がこぼれる。
ギャスパー「あっ…」
我夢「もう着いちゃったね」
そうこう話していると、いつの間にかギャスパーが生活している部屋の前についた。
しかも、そろそろ校門が閉まる時間なので、我夢は帰らなければならない。
ギャスパーは扉の前に行くと、振り返り、我夢へお辞儀した。
ギャスパー「我夢先輩!今日1日ありがとうございました!」
我夢「ああ、こちらこそありがとう!また明日」
ギャスパー「はい!」
ギャスパーは晴れやかな笑顔で答えると、扉の中にはいっていった。
それを見届けた我夢はクルリと背を向け、校門に向かって歩き始めた。
次回予告
遂に始まる三大勢力の和平会談!
防衛組織結成か?
その時、テロリストが…!アグルが…!
今、三つの勢力が火花を散らす!
次回、「ハイスクールG×A」!
「三つ巴の戦い」!
こいつだけには負けられない!