第26話「遥かなるバオーン」
夏――蝉がひとしきりに鳴くこの季節。
都会の学生達は1学期が終わり、夏休みに突入した。
夏休みといえば、海や山など自然、花火大会といった夏でしか味わえない風物詩を堪能するものだ。
そして、一部の人にとっては新たな出会いや別れ、もしくは奇妙な体験を経験するだろう。
これは駒王町からはるか遠くに位置する、とある田舎の村に起こったひと夏の出来事である……。
ふるべ村の
ザッ…ザッ…ザッ…
乙吉「えいっ、しょっと…」
麦わら帽子を被り、いかにも農夫の格好を着て、乙吉はくわを手にせっせと畑をたがやす。
暑い日差しを受け、身体中は汗まみれだが、その顔は穏やかである。
今日もいつも通り何も変わらないゆったりとした1日が訪れる…。乙吉はそう思いながら、畑をたやがしていると突然、裏山に空から赤い物体が墜落した。
その衝撃で、大地は震え、木々は揺れる。
乙吉は地響きに足元がふらついていると、近くにある木になっている柿が落ち、地面や彼の頭の上に落ちる。
乙吉「んあ?」
何だろうと一瞬思ったが、特に気にする必要もないと思考を切り替えると、畑仕事を再開する。
すると、慌てた様子の彼の孫が駆け寄ってきた。
「乙吉じいちゃーーーん!裏山に隕石が落ちてきた!」
乙吉「…んしょ、しょっと」
孫は大声でそう言うが、乙吉はその声が聞こえてないのか畑仕事を続けている。
乙吉は耳が遠いのだ。
孫はもっと近くに寄り、肩を揺らしながら大声で呼び掛ける。
「じいちゃーーーーーーん!」
乙吉「ああ?」
「う・ら・や・ま・に!い・ん・せ・き!!」
乙吉の耳元に向かって、大声でそう伝えるが
乙吉「ああ?」
その頃、駒王町ではいつもの様に朝早く起きた一誠は日課であるランニングしようと身支度をしていた。
未だ寝ているリアスとアーシアを起こさぬ様、ゆっくりと寝室のドアを開け、廊下へ出た。
ドアをゆっくり閉め、さあ行こうかと思ったが、少し気がかりになることが彼の足を止めた。
一誠「あれ?俺の部屋ってあんな広かったっけ?」
一誠は疑問に思った。いつも、いつの間にかベッドに入ってくるリアスとアーシアと一緒に寝ている。
だが、あくまで1人用のベッドだ。3人ともなると、体を密着しなければならない。
だが、今日はどうだ?起きた時は2人は相変わらず自分にくっついているが、ベッドは大分余裕があり、それどころか部屋全体が広く感じた。
一誠「廊下もこんなんだっけ?」
そして今、視界に映っている廊下も自室同様、距離が長くなっており、50メートル走も余裕に出来そうだ。
一誠の家は2階建てだが、窓から見える景色はその高さで見えるものじゃない。
一誠「…っ!?ま、まさか!」
何かに気付いた一誠は何段にもなってる階段を急いでかけ降り、靴を履き、玄関を飛び出る。
そして、振り返ると驚きのあまり、目を見開いて叫んだ。
一誠「なんじゃこりゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」
彼の視線に映る自宅は日頃見慣れている2階建ての一軒家ではなく、豪邸と呼ぶべきと相応しい屋敷がそびえ立っていた。
それから場面は変わり、上空を飛ぶヘリ。
そのヘリは『G.U.A.R.D.』が所有するもので、機体内には何故か一誠、我夢、朱乃、アーシアの4人が乗っている。
実は、彼らが所属する対破滅招来体兼対テロリスト組織『XIG』は、『G.U.A.R.D.』のエリート組織ということになっている。
メンバー、装備、施設…諸々不明点が多く、G.U.A.R.D.上層部からは怪しがられたが、サーゼクスや樋口の助力もあり、何とかごまかせている。
4人は早速『XIG』としての依頼が届き、墜落した隕石を調査するべく、ふるべ村へ向かっている。
我夢「しっかし、驚いたよ。イッセーの家が豪邸になってるなんてさ」
ヘリコプターで上空を飛んでいる中、4人の話は兵藤家の増築についての話題に持ちきりだ。
何でも「眷属同士仲良くさせる=一つ屋根の下で生活させる」というサーゼクスの提案により、一晩で増築・改装したそうだ。
もちろん、一誠の母の承諾済みである。
新しくなった兵藤家は地上6階、地下3階の大豪邸で、地上階は居住スペースで、地下はトレーニングルームや巨大なスクリーンが設置されているシアタールーム、サウナ付きの大浴場等も付いている。
しかも敷地は前の倍…それ以上になっており、それに伴って、庭も一般家庭のものとは思えないスケールになっている。
我夢「そういや、お隣さんとかどうしたの?」
一誠「ああ、サーゼクス様が『平和的』な方法で引っ越してもらったらしい。…まあ、詳しくは教えてくれなかったけどな」
我夢「『平和的』って……」
意味深な言葉に我夢は不安しか感じず、苦笑いを浮かべる。
我夢「外からしか見てないけど、中は話以上に凄いんだろうな~~…あっ、今度遊びにいっていい?」
一誠「いいぜ!ていうか、我夢専用の部屋もあるし」
我夢「うそっ!?本当に?」
一誠「ああ、『我夢君も眷属だからね』ってサーゼクス様がわざわざ用意してくれたんだぜ」
我夢「そうなんだ。あぁ~…楽しみだなぁ~~」
まだ見ぬ新・兵藤家内に我夢は胸を踊らせていると、何か思い出したのか、「あっ」と声をもらす。
我夢「そういや、朱乃さん。まだイッセーの家に行ってないみたいですが、引っ越す予定はないんですか?」
実は、我夢は一誠の話を聞いている中、朱乃がそのことを初めて知った様な顔をしているのに気付いたのだ。
眷属ならば、彼女も引っ越すのが当たり前だ。
我夢にそう問いかけられた朱乃は
朱乃「ええ、今のところはイッセー君の家にお世話になる予定はありませんわ」
我夢「え」
その返答に更に疑問符を浮かべる我夢に朱乃は「ですが…」と言葉を続けると
朱乃「近いうちに
我夢「そうなんですね~」
そう言い、頬を赤く染めながら我夢をチラチラと見て答える。
一誠とアーシアは朱乃の様子を見て、彼女が我夢に好意を抱いているのがわかった。
一誠「(マジかよ。朱乃さんが…)」
アーシア「(我夢さん、良かったですね…)」
少々科学オタク気味な我夢にもついに春が…(今の季節は夏だが)。2人はそう心の中で我夢を祝福するが、当の本人はというと、
我夢「(
朱乃の好意に全く気付いておらず、彼女が言った“気になる相手”が誰なのかと考えていた。
勉強ばかりしてきた天才少年には、乙女の恋心というものはわからないのだ。
「もうすぐでふるべ村に着きます!」
そうこうしていると、操縦席に座っているヘリの運転手から到着の知らせが聞こえた。
報告を受けた4人はヘリがゆっくりとふるべ村近くの地上へ降下を始める中、身支度を整える。
そして、身支度を整え終えると同時にヘリは地上へ降り立った。
地上へ降り立った4人は早速、調査先のふるべ村へ向かって歩いていた。
田舎特有の整備されてないコンクリート道路を歩きながら、4人は話していた。
我夢「でも、良かったですよ。落ちた場所が村外れの裏山で」
朱乃「ええ、そうですわね。近くに民家もなかったようですし♪」
アーシア「ああ、これも今は亡き神のご加護なのですね…」
「「「痛っ!?」」」
アーシア「すっ、すみません!私、つい…!」
自分とゼノヴィア以外の悪魔が聖なるものを見ると、アレルギーが反応することをうっかり忘れていたアーシアは、頭痛に苦しむ3人に謝る。
3人は苦笑いながら、いいよいいよと彼女をなだめた。
一誠「しっかしよ~、この隊員服。中々イカスじゃねぇの?」
我夢「うん。この服、ただカモフラージュに使えるだけじゃなくて、防寒・耐熱にも使えるしね」
一誠「アザゼル先生も粋な計らいするよなぁ~」
そう。現在、我夢達が着ているのはいつもの駒王学園の制服ではなく、アザゼルが用意した『XIG』専用の隊員服だ。
ちなみにそれぞれ、我夢と朱乃が着ているのは青、黄色、灰色という配色、一誠は黒とグレーを中心とした配色、アーシアは白をベースに赤、灰色の配色が入った隊員服で、4人の背中にはそれぞれの名前がローマ字で書かれている。
何故彼らがこの派手な服を着ているかというと、人間界では、『G.U.A.R.D.』屈指のエリート組織として名が通っている『XIG』。防衛組織であるはずの我夢達が学生服なんて着てたら、怪しまれるのが当たり前だ。
なので、今後『XIG』として、活動しやすくする為にアザゼルや他のニ勢力のトップも協力して隊員服を作成したのだ。
これは余談だが、我夢と朱乃が着ている隊員服はサーゼクス、一誠が着ている隊員服はアザゼル、アーシアが着ているのはミカエルがそれぞれデザインしたものである。
アーシア「あっ!あれを見てください!」
「「「!?」」」
そうこうしていると、アーシアが何かを見つけ、指を指す。
4人はその指の指す方角へ視線を向けると、目を丸くした。
そこには村の住民と思わしき人々が辺り一面に倒れていたのだ。
朱乃「とりあえず、異常がないかを確認しますわよ」
「「「はい!」」」
4人はさっそく手分けして、住民を起こすことにした。
一誠は早速、民家で倒れている老婆のもとへ駆け寄る。
一誠「おばあちゃん!おばあちゃん!」
「……んあ?ふぁぁ~~…」
一誠は肩を軽く揺らしながら呼び掛けると、老婆は起き、まるで今まで寝ていたかのように目をこすりながら大きなあくびをする。
アーシア「大丈夫ですか!?しっかりしてください!」
「……ん」
一方、桟橋の方で倒れている釣り人の男に向かっていったアーシアも同じ様に肩を揺すって呼び掛けると、釣り人の男は目を覚ましたが
「うわっ!?」
アーシア「きゃっ!?」
顔を覗きこむアーシアに驚きの声を出すと、その声でアーシアも驚き、尻餅をついた。
我夢も村の住民達の探索をしていると、自転車に乗ったまま、木にもたれ掛かって気絶している駐在を見つけた。
我夢「駐在さん!?ちょっ、駐在さん!大丈夫ですか!しっかりしてください!」
急いで駆け寄った我夢は傾いている自転車を起こしながら呼び掛ける。
すると、
「うわぁぁぁぁ!?」
我夢「うおぉぉぉ!?」
「うわぁぁぁぁあぁあぁぁ!!」
我夢「あっ…」
目覚めた駐在は混乱しているのか、大声を出しながら自転車にまたがるが、当然、バランスを崩して自転車ごと倒れた。
駐在は頭を抑えながら体を起こし、我夢の顔を見ると、目を見開き、口を開いた。
「…あっ!もしかして、あなたが最近、噂で有名な『XIG』さんっ!?」
我夢「はい……あぁっ、あの!?一体、何があったんですか?」
我夢は彼の様子に呆気にとられてたが、ハッとなると、駐在に問いかけた。
村の住民を全員起こした我夢達は、状況を確認する為、村人達と共に一誠の待つ民家へ向かったのだが、
朱乃「
朱乃は信じられない様子でそう問いかけると、駐在は頷く。
朱乃「いいですの?村中の人達が気絶をしていたんですよ?それなのに、どうして気絶したのか
「いやぁ、なんとも……いやはや…」
そう呟きながら理由がわからず困る駐在を見て、我夢達も更に疑問が膨らむ。
「裏山に隕石が落っこったのまでは覚えているんだけどなぁ」
「そんだ!こりゃあ珍しいことだで!是非とも見に行くべと」
『んだんだ!』
帽子を被った老人の言葉に村人達は口々に頷く。
それに便乗して、駐在も敬礼をし、
「本官も隕石を調査せねばならんと、自転車に飛び乗りまして……」
我夢「で、そのまま気絶したと…」
「……」
続け様に言われた我夢の言葉に駐在は恥ずかしさのあまり、言葉を無くす。
そんな2人をよそに、一誠は村人達にたずねる。
一誠「ほらぁ、気絶する直前に何か見たとか…?」
『う~ん…』
一誠「じゃあ、何か聞いたとか?」
その質問に先ほど一誠が起こした老婆が何かを思い当たりあるのか、一誠の腕にちょんちょんと手を当てる。
「何か、妙な音が…」
一誠「妙な音?」
「おぉ、音がしとったな!」
「なぁ!」
老婆の言葉がきっかけに、村人達は思い出したのか、肯定のリアクションをとる。
朱乃「どんな音を聞いたんですの?」
「確か遠くでぇ…“ラッパ”の音がしたようなぁ…」
アーシア「ラッパ?」
「いやぁ~、あれは“ホラ貝”の音じゃった」
朱乃「ホラ貝?」
「いぇいぇ!ありゃあ、“太鼓”の音だぎゃあ!」
一誠「太鼓?」
「思い出した!」
村人達の証言の違いに我夢達は首を傾げていると、大きな声をもらす駐在へ皆は注目する。
「ありゃあ、“火山の噴火”の音じゃ!」
我夢「火山の噴火…ですか?」
確かにこの近辺の自然環境を考えれば、今まで出た証言よりも有力だが…
「駐在。裏に火山はなかろうが」
「ラッパなら小学校にあるでなぁ?」
またも証言の違いに皆は首を傾げ、村人達は口々にあぁじゃないかこうじゃないかと仮説を唱え始める。
一誠「我夢、ちょっといいか?」
我夢「ん?」
そんな中、一誠は声をかけながら我夢を引っ張ると、村人達の輪から離れる。
どうしたんだと我夢は疑問の顔を向けると、一誠はコソコソと話す。
一誠「スッゴイ真面目な話なんだけど、ひょっとしたら村人全員………なんか悪いもんでも食ったんじゃねぇのか?毒キノコとか」
我夢「え?でも、それで集団幻覚ってのは考えにくいし…」
じゃあ、何なんだろう?そう考えていると
「XIGさぁぁぁ~~~~~ん!」
遠くから走ってくる男性の声が聞こえ、一同は顔を向ける。
その男は先ほどアーシアが起こした釣り人である。
「見た人がおりますぅ」
朱乃「どなたですの?」
「乙吉じいさんが見たって言うて…」
一誠「何を見たんです?」
その問いかけに釣り人の男はにっこりと微笑み、こう言った。
「怪獣」
我夢達は早速、怪獣を見たと証言する乙吉老人のもとへ向かった。
事情を説明すると、乙吉は歩きだし、くわが立て掛けられている壁の前まで来ると、皆が気絶する前の出来事を語りだした。
乙吉「わしが一仕事終えてぇ…ここにぃ、立っとりますとなぁ……」
朱乃「ええ…」
乙吉「そりゃあ、大きな怪獣がのぉ…山の間を歩いておったんじゃ……」
我夢「おそらく、あの隕石と一緒に来たんでしょう」
乙吉の証言から考えた我夢の推測に皆は頷く。
確かにその推測通りだと隕石が落下した時の時間帯が合致する。
一誠「その怪獣は何かしませんでしたか?こう、何か妙な音なんかが…」
一誠は乙吉老人にそう問いかけるが
乙吉「はぁい。82になりますぅ」
一誠「え?」
我夢「いや、そうじゃなくて…」
「ちょっと失礼」
的外れな回答をする乙吉に我夢達は困惑していると、見かねた駐在が乙吉に駆け寄り、耳元で聞こえる様に大きな声で
「と・く・しゅ・な・音・を・出さなんだかのぉ~~~~~!!」
一誠に代わってそう問いかける。
だが
乙吉「わしがぁ?」
『いやいやいや…』
「か・い・じゅ・う~~~~!!」
またもや的外れの回答に一同はズッコケそうになるが、続けて駐在が問いかける。
すると、
乙吉「えんやぁ…ただ、大きなあくびをぉ。ほぉ、ほら、あの通り」
『!!?』
乙吉が指を指す方角を見ると、一同は目を見開いた。
そこには眠たそうな目をした怪獣『バオーン』が山の間から顔を覗かせていた。
駐在は驚いて腰を抜かし、我夢達は身構えようとするが
バオーン「バ~オ~~~ン…」
『ッ……』
乙吉「ど、どうなされた皆さん!?」
鼻からガスを出した後にそう鳴くと、乙吉老人以外、全員は糸が切れた人形の様に倒れ、眠ってしまった。
リアス「何ですって!?眠らせ怪獣……バオーン?」
その後、一誠とアーシアをふるべ村に残し、ひと足先に駒王学園の旧校舎に戻った朱乃と我夢はふるべ村に起こった出来事について報告していた。
朱乃「はい。私と我夢君、それと残してきたイッセー君とアーシアちゃんも身をもって体験しましたわ。バオーンの鳴き声を聞くと、みんな一発で眠ってしまうんです」
木場「じゃあ、村の人達が聞いたって言うラッパの様な音は、バオーンの鳴き声だったんですね」
朱乃「ええ、バオーンはまだ落下の衝撃でぼんやりしているらしく、今のところはおとなしくしてますわ」
リアス「やっかいね…」
バオーンの能力に皆は驚きを隠せないでいると、朱乃の報告をよそで聞いていたアザゼルは声を唸らせ、呟いた。
アザゼル「うぅ~む。ひょっとするとそいつはぁ……“史上最強の怪獣”かもしれねぇな」
木場「どうしてですか?」
アザゼル「眠っちまえば、どんな相手だろうが誰も攻撃できなくなるからな、うん」
リアス「はぁ…」
間違いない。そう納得するアザゼルにリアス達は各々、呆れた表情を浮かべると、バオーンの対策について考え始める。
リアス「まずは、バオーンを鳴かせないようにすることだけど…「出来たっ!」」
そんな中、先ほどまでずっと何かを作っていた我夢の嬉しげな声が部室に響く。
皆はそちらへ視線を向けると、我夢が目を輝かせながら、手に持っている配線がついたヘッドホンのようなものを皆に見せる。
我夢「新発明ですよ~!バオーンの鳴き声の周波数データをもとに製作した自動音声変換調整器―――名付けて、『声変わり』!」
ゼノヴィア「声変わり?」
我夢「うん、対バオーン用の兵器さ。使えば…わかる」
そう言いながら、我夢は半信半疑気味のゼノヴィアに声変わりを耳に装着させる。
木場「それで、一体どんな効果――「あっはっはっはっはっは!!」――ゼノヴィア!?何が可笑しいんだい?」
木場が声を出した瞬間、突然笑い出したゼノヴィアに我夢以外、全員呆気にとられる。
ゼノヴィア「あっはっはっはっははははは!!」
我夢「はは、よいしょっと」
我夢は未だに腹を抱えて笑っているゼノヴィアから声変わりを外し、テーブルに置いてスピーカー部分を分解し、中のスピーカーを取り出す。
我夢「つまりですね、これを付けますと…周波数が変換されて、違う声に聞こえるんです」
『あっはははははは!!』
スピーカーに向かって話しかけた我夢の声が甲高くなり、一同は笑ってしまう。
我夢「ま!これさえあれば、バオーンの鳴き声聞いても、心配する必要ありませんよ」
アザゼル「すげぇじゃねぇか!」
朱乃「あらあら、さすが我夢君ですわ♪」
我夢「いやぁ~それほどでも~」
我夢が皆に誉められて照れていると、
「ウン!素晴ラシイ!」
『?』
突然、聞いたことがない声が聞こえ、皆は振り返ると、そこには頭にターバンを巻き、探検隊の様な服を着たアラビア人の男性が立っていた。
誰だろう?と皆が首を傾げていると、事情を知っているリアスが彼の横に立ち、紹介する。
リアス「紹介するわ。こちら、国際※シンポジウムのため来日中のムスタファ・アリ博士よ」
そう紹介されると、アリは微笑みながらペコリと我夢達にお辞儀する。
我夢「ムスタファ・アリってあの!?」
小猫「…天才動物学者のアリ博士?」
アリ「皆サン、ヨロシク下サイ♪」
世界でも有名な学者の登場に皆は驚く。
それもそうだろう。この日本にある1学園に突然現れたのだから。
リアス「彼は人間なのだけど、もちろん悪魔の味方だわ。動物学者としての彼の研究が今回の怪獣対策に大きく貢献していることは、皆も知ってるわよね………。そこで、彼のかっての希望もあり、今回の私達の作戦行動に同行することになったの」
我夢「え!?ちょっ、大丈夫なんですか!?」
これは怪獣絡みの事件である。彼は人間だ。
同行なんてすれば、安全の保証はない。
不安そうな表情を浮かべる一同にアリは
アリ「皆サン。ワタクシ、今、怪獣ノ“コミュニケーション”ヲ研究シテマス。」
我夢「コミュニケーション?」
その通りだとアリは指を立てると、言葉を続け
アリ「怪獣ニモ人間ト同ジク、好キナ色ヤ音楽ガアリマス」
『うんうん』
「バオーンハ暴レテナイ。バオーンハ優シイ。デモ私ハ、バオーントノ心、通ジ合ワセタインデス。デモ、村デノ研究ハ、トテモ迷惑。トテモ危険デス」
ゼノヴィア「当たり前だ」
そう言い放つゼノヴィアを我夢達は「やめろ」とアイコンタクトをとる。
だが、アリは「ヒ~ッヒッヒッ♪」と我夢達の不安を消し飛ばすかの様に笑うと、
アリ「デスカラ、私ハバオーンヲ、アラスカニ運ビタインデス。ソコデ友達ナリマス、研究シマス♪」
リアス「…と言う訳よ」
ニコニコと笑うアリに不安を感じながらも、断る理由もないので、我夢達はOKを出すしかなかった。
こうして、XIG始まって以来の怪獣捕獲作戦が開始されることになった。
山中でぼんやりとしながら座っているバオーンをアリは遠くから双眼鏡で眺める。
ちなみに断ったアリ博士以外、オカ研メンバーは『声変わり』を装着している。
バオーンの様子を観察して、今なら安全と確認したアリは木場に指示を出す。
アリ「黄色」
木場は手に持った大きな黄色の旗を左右に振るうが、バオーンは反応を示さない。
アリ「駄目ネ。青プリーズ」
その指示を受けた木場は黄色の旗を地面に置き、今度は大きな青い旗を左右に振る。
だが、これも反応を示さない。
アリ「青も駄目ネ…。次、赤プリーズ」
木場は青い旗を置き、先ほどと同じ様に大きな赤い旗を左右に振る。
すると、
バオーン「…!」
何となく赤い旗を見た瞬間、先程まで眠たそうだったバオーンの目が冴える。
牛が赤を見て興奮すると言われているように、怪獣であるバオーンもどうやら赤に興奮するようだ。
アリ「ワォ♪赤デス!赤ニ反応シマシタ!ハハハッ♪」
木場「我夢君、赤色だ。フックワイヤー作戦開始!」
《我夢「了解!」》
木場から連絡を受けた我夢は、腕に着けている腕時計型小型通信機『XIGナビ』で一誠に連絡する。
《我夢「イッセー、出番だ。赤だ」》
一誠「ラジャー!」
我夢からの連絡を受けた一誠は準備に取りかかる。
一誠の役割は、バオーンが反応した色の風船を持ち、特定の位置まで誘導することだ。
早速、赤色の風船を探すのだが…
一誠「あれ?」
リアス「どうしたの?」
荷物の中や近くの物陰を探すのだが、一向に見当たらない。
その様子に心配になったリアスとアザゼルは近寄る。
一誠「…いや。赤いバルーンを忘れちゃいまして」
リアス「えええ!?」
アザゼル「嘘だろ!?」
それを聞いたリアスとアザゼルは驚く。
作戦の要であるバルーンを、しかも赤色だけを忘れてしまったのだ。
ちなみに持っていくと言い出したのは無論、一誠である。
リアス「あれだけ自分で持ってくるって言うから任せたのに…!もう!」
一誠「す、すみません…」
アザゼル「しかし、どうするかね……」
リアスに呆れられ、一誠は申し訳なささに縮こまる。
それをよそにアザゼルはどうするかを考え始める。
アザゼル「赤…赤…紅……うん?」
リアス「え?」
アザゼルはそうぶつぶつ呟きながら考えていると、リアスと目が合った。
そして、1分後。
バオーンの誘導は問題なく開始したが…
リアス「もう!何でこうなるのよーー!!」
バオーン「バオー♪バオー♪」
羽を広げてまっすぐ空を飛ぶリアスの後をバオーンはぴょこぴょこと可愛らしい足取りで追いかけていた。
これに至った経緯は、バオーンは赤色に興奮する…つまり、紅い髪を持つリアスを風船代わりにして誘導すればいいのでは?というアザゼルの考えからである。
《アザゼル「ははっ!おいおい、リアス。もっとスピード上げねぇと追いつかれるぞ~」》
リアス「うるさいわね!アザゼル、後で覚えておきなさいよ!!」
《アザゼル「はいはい」》
XIGナビでバカにしてくるアザゼルにリアスは強い口調で言い返す。
アザゼルは全く悪気も感じないが。
だが、アザゼルの言う通り、バオーンの足は予想以上に速い。
少しでも気を抜いたら、一瞬で捕まってしまうくらいだ。
《リアス「我夢、小猫!来たわよ!早くして!!」》
我夢「えっ!?部長が何で……?まあ、いいか。小猫、いくよ」
小猫「はい…」
我夢はバオーンを誘導しているのが一誠ではなく、リアスであることに一瞬固まる。
だが、すぐに思考を切り替えると、2人は巨大なフックがついた鋼鉄製のワイヤーを手に持って身構える。
3km…2km…1km…。バオーンは段々近づいてくる。
そして、バオーンが彼らが隠れている木陰を通過しようとした瞬間、
我夢「今だっ!
小猫「えい」
バオーン「!?」
『
ワイヤーフックは見事バオーンの両足に絡まり、バオーンは転倒した。
リアス「ふぅ…」
バオーンが転倒したのを確認したリアスは額の汗を拭いながら安堵すると、急いでその場から遠ざかる。
バオーン「バオ~…」
我夢「鳴くな~!」
段々遠ざかっていくリアスを見て悲しげに鳴くバオーンを我夢はなだめる。
木場「次はジャイアントマスク作戦」
木場はXIGナビでそう伝えると、遠くから朱乃とゼノヴィアがワイヤーで吊り下げたバオーンの形をしたガスマスクの様なものを持って、バオーンへ向かって飛んでくる。
アリは彼女らが持っているガスマスクの様なものを指差して、木場に尋ねる。
アリ「アレハ何デスカ!?」
木場「マスクです」
アリ「ン?」
木場「鳴き声を封じると同時に、あのマスクからバオーンの鼻の穴に向かって睡眠ガスが噴射されます」
アリ「フゥ~!ナルホド!」
木場の説明に納得するアリ。
ちなみにこのマスクはジオベースが作ったものだが、こんなものすぐに作れるのかということにはツッコんではいけない。
朱乃「あらあら、うふふ……。また眠ろうとしてますわね♪」
ゼノヴィア「大人しくしてくれよ…」
また眠たそうにまぶたを重くするバオーンに向かって、マスクを装着させようと2人は慎重に接近する。
そして、マスクがバオーンの目前に迫った瞬間、
バオーン「…!バオ~」
木場「ああっ!?」
アリ「アッ!?」
ゼノヴィア「何っ!?」
朱乃「あら~」
ぴょこっと目が覚めたバオーンは目の前にあるマスクを食べ物か何かと勘違いしたのか、バリッボリッボリッ…と音をたてながらマスクを食べてしまった!
バオーンは不味かったのか、マスクの残骸をペッと吐き出すと、ゲップの様に睡眠ガスを出す。
そして、
バオーン「バ~オ~~~ン…」
一誠「まっ、まずい!」
ラッパの様な鳴き声を出した。
一誠が青ざめる中、バオーンの鳴き声はふるべ村や近隣の山々に響いていく…。
案の定、その声を聞いたふるべ村の人達は1人残らず、ぐっすりとその場で眠ってしまった。
数時間後。すっかり夜になったふるべ村では、明日に備える為、我夢達は村にある広場でキャンプをしていたが、いつの間にか集まってきた村の人達からごちそうしてもらうことになり、ちょっとした祭り状態になっていた。
木場「どうも皆さん、すみません。迷惑をおかけしてしまって…」
乙吉「あん?」
木場「ご迷惑おかけしてしまってすみません!」
「な~んの!うちらが勝手にやってることじゃ」
朱乃「渋柿ですわね♪これ」
乙吉「ん~、甘い甘い」
「あんた、男なのか?」
ギャスパー「は、はいっ!」
「全然見えねぇど…」
「アザゼルさん。うちで作った漬物を食べてみ」
アザゼル「…ん!おお、うめぇじゃねぇか!」
「じゃろ~?」
アーシア「これ、おいしいです!何ていう料理ですか?」
「ああ、これは茄子ときゅうりの味噌つけだぎゃあ!」
小猫「すみません。おかわりいいですか?」
「はいはい。しっかし、お嬢ちゃんすごいわね~~…もう、10杯目よ」
最初は遠慮気味だった我夢達も次々と出される村の料理の美味しさに、すっかり虜になっていた。
朱乃「マスクは食べられちゃいましたけど、睡眠ガスはお腹の中で効いてるみたいですわね~」
リアス「ええ。明日の昼ぐらいまでにはぐっすりでしょうね。冥界の転送班も朝までには到着するし」
朱乃とリアスは遠くでぐっすりと眠っているバオーンを見て、頬を緩ませる。
昼にドタバタしていたのが嘘のようだ。
朱乃「あらあら、こっちも盛り上がってますわね♪」
リアス「そうね」
朱乃とリアスは後ろでどんちゃん騒いでいる村人達を見据える。
何せ、リアス率いるグレモリー眷属は女性が多い。しかも、美女揃いだ。
村の男性からは歓声やみとれるものが、女性からは憧れやの眼差しを送られるのは当然の光景だろう。
一誠「うんめぇ~~~!これ、何すか?」
「裏山に生えてる松茸でなぁ」
一誠「ん~~~!うまい!」
一誠は松茸の美味しさに舌をうちつつ、1つ2つ…と口の中へ運んでいく。
それをよそにゼノヴィアは1人、テントを覗く。
アリ「グガァァァァァ~~~~…スピィィィ~~~~~~~…ゴォォォォォォ…」
ゼノヴィア「だからあれだけ『声変わり』をつけておけと言ったのにな…」
「はい」
いびきをかいて寝ているアリを眺めながら、ゼノヴィアは呆れた表情で呟いていると、隣に来た麦わら帽子を被った男性に串刺しにした鮭の塩焼きを手渡される。
「近くでバオーンの直撃を喰ろうたそうですな」
ゼノヴィア「ああ…」
一誠「ゼノヴィア!これうめぇぞ!!」
2人はアリの寝顔を眺めていると、嬉々とした様子の一誠がおにぎりを手に、駆け寄ってくる。
ゼノヴィア「ああ、あとでもらうとして……イッセー。1つずつ食べろ。ボロボロこぼれているぞ」
一誠「
ゼノヴィア「はは…」
口から米粒をボロボロとこぼしながら話す一誠にゼノヴィアは苦笑いを浮かべる。
リアス「駐在さん。念の為、村の人達を今夜一晩だけ村の人たちを公民館へ避難させていただきませんか?明日の朝にはバオーンの輸送を始めますので」
「了解致しました」
そう言うと、2人は敬礼を交わす。
村の人達を避難させるのは危険ということもあるが、自分達が人間ではないことを悟られない為だ。
輸送というのも便宜上である。
我夢「おぉ~~~~い!」
リアス「来たわね」
そうしていると、段ボール箱を抱えた我夢が駆け寄ってくる。
リアスは待ってましたと言わんばかりに頬を緩ませる。
我夢「出来ました、出来ました!輸送の際、万が一に備えて」
我夢が段ボールを開くと、中には大量の『声変わり』が入っていた。
実はバオーンが寝た後、我夢は村の人用の『声変わり』を1人でずっと量産していたのだ。
リアス「さっそく皆に配ってくれる?」
我夢「はい!」
「お手伝いします!」
我夢と駐在は村の人達を集めると、手分けして『声変わり』を渡していく。
村人達は何だろうと思いながら、手渡された『声変わり』を次々と付けていく。
『ぎゃははは!!』
『はははははははっ!!』
村人達は『声変わり』によって、変換された声がおかしく、ゲラゲラと笑いだす。
その様子を遠くから眺めるリアスは肩をすくめる。
リアス「やれやれ、全く困ったものね…」
「わしら、な~んの困っておりませんがぁ…」
リアス「?」
そう呟いていると、いつの間にか隣に老婆が立っていることに気がついた。
リアスが疑問の眼差しを向けると、老婆は言葉を続け
「村の時間はゆっくりですけんのぉ……。いつ昼寝しても、誰も文句は言いませんがぁ…」
リアス「…」
老婆の言葉を聞いたリアスは、遠くで未だ笑いあっている村の人達を再び眺める。
村の人達は暖かさが感じられる笑顔で、普段学園や冥界で向けられる表面上の笑顔ではない。
都会生まれ、都会育ちのリアスも初めて訪れた田舎の良さ、そこに住む人の心の素晴らしさに次第と心が温かくなるのを感じた。
リアス「ふふっ」
そう思っていると、いつの間にかリアスは微笑んでいた。
村の人達とリアス達の笑い声は深夜になるまで続いた…。
そして、すっかり夜が明け、翌日。
鶏が鳴き、朝日が山々の間から差し込む穏やかな1日の訪れを伝える…。
我夢「たっ、大変です!!」
そんな中、バオーンの監視をしていた我夢が慌ただしい様子でテントに駆け込む。
そのただならない様子にリアス達も一斉に目を覚ます。
リアス「どうしたの?」
我夢「バオーンが…!」
リアス「わかったわ。みんな、行くわよ!」
リアス達は急いでバオーンのもとへ向かった。
一方、バオーンは朝日に照らされながら足にワイヤーを引きずりながら、散歩していた。
バオーン「バオ~…」
大きく腕を上げて、あくびをする。
昨日取り込んだ睡眠ガスでぐっすり眠れたのか、とても気持ちよさそうに目を細める。
バオーン「…!バオー!バオー!」
散歩を続けていると、何かが視界に入り、目を見開く。
すると、バオーンは尻尾を左右に振り、その何かに向かってぴょこぴょこと走り出す。
丁度その時、リアス達は村全体を見渡せる高台にたどり着いた。
ゼノヴィア「一体、何が…」
アーシア「ああっ!もしかしたら、あれに…」
突然興奮し始めたバオーンに皆が疑問を抱いていると、アーシアが何かに向かって指を指す。
彼女の指指す方角には、『本日開店』と広告する赤いアドバルーンが浮いていた。
それは村外れにある高速道路沿いに新しく出来たスーパーマーケットによるものだった。
アザゼル「おいおい、ありゃあ風船じゃねぇんだぞ…」
リアス「また遊んでくれると思ってくれるんだわ」
高速道路…しかも朝というのは通勤の時間帯だ。
もし、バオーンが高速道路に入ったら、たちまち大混乱が起きてしまう。
我夢「部長、僕がバオーンを引き付けます!その隙にみんなは麻酔弾を」
リアス「ええ、頼んだわよ。みんな、行くわよ」
『了解/ラジャー!』
我夢の進言を聞き入れたリアスは、他のメンバーを率い、バオーンの近くの上空へ飛ぶ。
その間に我夢はエスプレンダーを懐から取り出し
我夢「ガイア!」
その掛け声と共にエスプレンダーを前へつきだすと、赤い光に包まれ、我夢はウルトラマンガイアに変身した。
〔推奨BGM:ガイア挑む!(M-8a)〕
ガイア「デュアッ!」
ガイアは土砂を巻き上げながら着地するや否や、バオーンが目指す赤いアドバルーンをガイアスラッシュで破壊した。
〔BGM終了〕
バオーン「パワワ~………」
アドバルーン破壊され、バオーンは残念そうな表情を浮かべ、帰ろうと村の方角へ振り向くと、目を見開いた。
バオーン「バオー!」
その理由はもちろん、赤の面積が多いガイアがいたからだ。
それにバオーンが興奮しないはずがなく、バオーンはガイアに向かってぴょこぴょこと走り出す。
バオーン「バオー!バオー!」
ガイア「デュ…グアッ!?」
ガイアは受け止めようとするが、バオーンの力に弾き飛ばされてしまい、後方へ倒れてしまう。
バオーンはガイアにのし掛かると、まるで遊んで欲しいとねだる子供の様に手足をジタバタさせ始めた。
バオーン「バオー!バオー!」
ガイア「部長、早く…!」
リアス「麻酔弾発射!」
バオーン「バオ!?」
リアス達はジェクターガンに装填した麻酔弾を一斉に撃ち込むと、バオーンは意識を失った。
その隙にガイアはバオーンを起こさない様にソッと体を抜き、変身を解いた。
我夢「やりましたね!」
リアス「ええ!」
我夢は仲間と合流し、喜び合うが
バオーン「バオ~バオ~」
『!?』
バオーンは何事もなかったの様にスクッと立ち上がると、どこかへぴょこぴょこと走り出した。
リアス「効いてない!?」
木場「もしかして、昨日の睡眠ガスで慣れてしまったんじゃ…」
一誠「でも、村の方へ行ってるぜ。バオーン、そうだ!そのまま戻れ!」
一誠の言う通り、遊び相手を見失ったバオーンはふるべ村の方へ戻っていく。
これで問題解決。そう思った矢先、
ギャスパー「あっ!?」
我夢「どうしたギャスパー?」
ギャスパー「テ、テントに!ムスタファ博士が!!」
『えええっ!?』
バオーンが向かっている先にある広場には、未だテント内でスヤスヤと寝ているアリがいる。
そのことをすっかり忘れていた一同だが、思い出すタイミングが悪く、バオーンは広場の目前に来ていた。
悪魔の飛行速度をもっても間に合わない。
一誠「いくぜ我夢!」
我夢「ああ!」
その危機に一誠と我夢は変身アイテムを取り出し、我夢は真上につきだし、一誠は斜め上に掲げようとしたが
アザゼル「へぶっ!?」
『あっ…』
リーフラッシャーを持つ一誠の右手がアザゼルの顔面に直撃し、一同は唖然とする。
アザゼル「痛ぅ~~~!!気を付けろ!総督でも痛いもんは痛いんだよ!!」
一誠「す、すんません!」
一誠は痛そうに鼻を抑えるアザゼルにペコペコと謝ると、仕切り直した2人はもう一度変身アイテムを掲げる。
すると、2人は光に包まれ、ウルトラマンへと変身した。
〔推奨BGM:ヒーロー登場!〕
ダイナ「デェアッ!」
ガイア「デュアッ!」
バオーン「パオォ~!パオォ~!」
大陽の日差しを背に受けながら、2人は颯爽と地上へ降りると、広場へ足を踏み入れようとするバオーンを背後から掴み、遠ざけようと後ろへ引っ張るが…
ダイナ「デアッ!?」
ガイア「ドアッ!?」
カッコ悪いことに、バオーンのあまりにもの重さに体制を崩し、2人はバオーンの下敷きになってしまう。
だが、ダイナとガイアはパニック状態になっているバオーンから何とか抜け出し、距離を取る。
ダイナ「ヴン"ン"ン"~~~…デェアッ!」
バオーン「……バオッ!」
ダイナが赤き剛力戦士―――ストロングタイプにタイプチェンジすると、起き上がったバオーンはそれを見て更に目を見開く。
ガイアとストロングタイプのダイナは赤の比率が多い体色だ。しかも2体も。
これにはバオーンも興奮が止まらない。
ダイナ「プッ!プッ!」
ガイア「デヤッ!デヤッ!」
ダイナは手に唾を吐くような仕草をとったあと、気合いを入れるかの様に四股を踏む。
ガイアも気合いを入れるかの様に屈伸する。
バオーン「バオ~~!」
ダイナ「デェアッ!?」
ガイア「グアッ!?」
突進してきたバオーンにダイナとガイアは後方へ吹き飛ばされる。
バオーンは続け様に押さえ付けようと倒れこむが、2人は何とか左右に散って、回避する。
ゼノヴィア「ストロングタイプは赤だ!」
リアス「やっぱり、遊んでもらってるつもりなんだわ!」
アザゼル「ああ」
その2人のウルトラマンと1匹の怪獣の戦い?をキャンプに戻ったリアス達は困惑しながら眺める。
バオーン「バオ~~…」
バオーンは気合いを入れ直すような仕草をとると、後ろ歩きしながら背後で佇んでいるダイナとガイアに近付き、瞬時に振り向くと、相撲の取っ組み合いを始める。
ダイナ「ハッ!」
ガイア「デヤッ!」
バオーン「パワワワ…」
ひとしきり組み合うと、2人はバオーンを受け流す。
だが、バオーンは疲れてしまったのか、目を擦ると
バオーン「バ~オ~~~ン…」
ダイナ「ハッ……!」
ガイア「………!」
鼻からガスの様なものを噴射しながらそう鳴く。
当然、その鳴き声を聞いたダイナとガイアは睡魔に襲われ、クルリと回り、その場で眠ってしまった。
バオーン「パワワワ…?」
バオーンは2人が自分の鳴き声で眠ってしまったことを知らないのか可愛らしく首を傾げる。
バオーンは何とか遊んでもらおうと突然眠ってしまった
ダイナ「…!デェアッ!」
バオーン「パオォォォ!?」
そして、何とか目覚めたダイナはバオーンを投げ飛ばす。
バオーンは地面をゴロゴロと転がっていく。
リアス「これは今まで以上に厄介な戦いね…」
アーシア「いつになったら終わるのでしょうか?」
これまでとは別の意味で苦戦するダイナとガイアの様子にリアス達は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。
小猫「…アーシア先輩。もうすぐで終わりそうですよ」
アーシア「え?」
小猫の言う通り、バオーンは眠たそうにまぶたを重くしている。
ダイナとガイアの決死の行動?も無駄ではなかったのだ。
このまま眠ってくれ!
この場にいる全員が思った矢先
[ティヨン]
[ピコン]
ダイナとガイアのライフゲージが青から赤に変わり、点滅を始めてしまった。
何故ウルトラマンの体力の象徴といえるライフゲージが点滅するのか?
それは至って簡単で、睡眠によって体力を消耗してしまったからである。
睡眠は回復につながると思う方も多いだろうが、実は睡眠をとるのにも体力を使っており、寝過ぎて頭が痛くなるのもそういった原理だからだ。
バオーン「バオー!」
当然それを見たバオーンは興奮状態になり、ダイナとガイアを捕まえようと飛びかかる。
ダイナとガイアは素早く前転して避ける。
ガイア「グアッ…」
ダイナ「ファアァァァ~~…」
だが、ダイナとガイアは目が覚めたばかりでうとうとしており、ダイナに至っては背伸びをしながら大きなはあくびをしている。
バオーンは再び2人を捕まえようとするが、またも横へ避けられてしまう。
ガイア「グアッ…」
ダイナ「グアッ…」
2人はまだ眠気が消えないのか、おぼつかない足取りでバオーンにもたれ掛かる。
バオーンはそんな2人を受け止め、無理やり立たせ、捕まえようとするが
バオーン「バオッ」
またもや避けられ、バオーンの両腕は空をきる。
バオーンは何でまともに相手してくれないんだといじけ、
バオーン「バ~オ~~~ン…」
「「!」」
鼻からガスを噴射すると共に再び鳴き声をあげる。
ダイナとガイアは咄嗟に耳を塞ぎ、何とか鳴き声が耳に入るのを防いだ。
バオーン「パオォ~!パオォ~!」
やけくそに地面を蹴ると、バオーンは地面に座り込む。
ガイアとダイナはバオーンに近寄るが、バオーンは完全にいじけており、顔を合わせようともしてくれない。
バオーン「バ~オ~~~ン…」
ダイナ「グアッ…」
ガイア「デュアッ…」
バオーン「パオッ!?」
バオーンは三度鳴き声をあげると、2人はまた眠ってしまう。
それを見たバオーンは驚き、目を丸くする。
「「ハッ!?」」
ダイナ「ヴン"ン"ン"~~~…デェアッ!」
だが、2人はバオーンの鳴き声に耐性がついたのかすぐに目覚め、ダイナはフラッシュタイプに戻り、立ち上がる。
バオーン「パオッ!バオォ~~?」
ダイナ「ハァァァ~~…!」
ダイナは両腕を広げてエネルギーを溜めると腕を前方にし、右腕を上、左腕を下にし、その掌の間に赤い球体を作る。
掌を開いて閉じて…という動作を繰り返しすると、赤い球体は大きくなっていき、ある程度大きくなった球体を風船の様に空へ飛ばした。
バオーン「バオォ~!バオォ~!バオッ!」
ダイナ「シュワッ!」
ガイア「デヤッ!」
それを捕まえようと足をジタバタさせながら跳躍するバオーンに合わせて、ダイナとガイアも跳躍すると、バオーンを抱え、宇宙へ飛んでいった。
リアス「ありがとう、2人共!」
リアス達は2人のウルトラマンに感謝を告げ、村人達は遠ざかっていくバオーンに笑顔と共に手を振る。
乙吉「お~~~~い!またこいよ~~~~~~!」
「またおいでよ~~~~~!」
「またこいよ~~~!」
ゼノヴィア「また来いだと!?」
リアス「いいのよ…。この村はどんなものでも受け入れる。私達XIGも、怪獣も………。バオーンを宇宙に返してやったのも、この村にそんな優しさがあるからよ」
村人達の呼び掛けに引っ掛かるゼノヴィアをリアスは微笑みながら諭す。
バオーンが何も攻撃されず、無事に宇宙へ帰れたのも、ふるべ村に住む人々の温情ゆえだろう。
一誠「お~~い!」
我夢「みんな~~!」
そう諭していると、遠くから一誠と我夢が満面の笑みで呼び掛けながら手を振って駆け寄ってくる。
仲間と無事を喜びあいながら、一誠は担架で寝ているアリに向かって手をメガホンの様にして声を掛ける。
一誠「バオーン!帰っちゃいましたね~~~!」
アリ「エ、アァ!?僕ノバオーン何処デスカ!?」
『あははははははは!!』
その声でアリは担架から飛び起きると、慌てた様子で村人達に問いかける。
だが、もう既に後の祭り。
そんな彼の滑稽さに村人達は笑う。
『あはははは!』
リアス達もそれにつられて笑う。
だが、
バオーン「バ~オ~~~ン…」
我夢「あ…」
一誠「う…」
宇宙に帰ったはずのバオーンが村人達へ返事する様に鳴き声を返すと、『声変わり』を外してしまっていた我夢と一誠はまた眠ってしまった…。
次回予告
夏休みのリアスの帰省に伴い、グレモリー眷属は悪魔の故郷、『冥界』へ足を踏み入れる。
小猫に不安を感じつつも、我夢達はグレモリー邸を訪れる。
次回、「ハイスクールG×A 」
「冥界へGo!」
一誠「すっげぇぇ!!」
ちなみにオカ研メンバーが装着している隊員服はそれぞれ、
◼XIG
・我夢
・朱乃
・小猫(オペレーター服)
・ギャスパー(オペレーター服)
◼スーパーGUTS
・一誠
・リアス
・木場
・アザゼル
◼GUTS
・アーシア
・ゼノヴィア
…となっております。
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