ハイスクールG×A   作:まゆはちブラック

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第29話「小猫の秘密」

ゲシェンク及び操られたドラゴンによって襲撃を受けたルシファードは建造物の破壊はされたが、『XIG』と魔王軍、若手悪魔達の活躍によって死傷者は避けられ、現在復興作業が進められている。

ちなみにゲシェンクに操られたドラゴン達は全員正気に戻った。

 

同様の被害を受けた人間界のFKI県N市は重傷者こそ出たが、奇跡的に死傷者は出なかった。

 

ゲシェンクを倒した後、我夢はハーキュリーズ達によって冥界へ送ってもらった。

無事、仲間のもとへ帰れた我夢はお礼を告げようとしたが、「礼はいらない。今度会ったときに言ってくれ」と意味深な言葉を告げ、石室コマンダーと一緒にどこかへ去っていった。

 

さて、そんな事がありながらも翌日。

我夢達オカルト研究部はグレモリー家の広い庭の一角に集まっていた。

 

実は若手悪魔同士でレーティングゲームを行うことになり、リアスはソーナと対戦することになった。

幼馴染み同士の対決とあり、両者は燃えており、さっそくきたるべきレーティングゲームに備える為に修行をすることになったのだ。

 

アザゼルは手元にある資料を見ながら、自身が考案した修行内容をリアスから順に発表していく。

 

 

アザゼル「まずはリアス。お前は最初から才能、身体能力、魔力といったステータスが高い。このまま特に修行しねぇでも確実に強くなる。しかし、お前さんは明日よりも今強くなりたいんだろ?」

 

リアス「ええ」

 

アザゼル「んなら、この紙に書かれているメニューで決戦日直前までこなせ」

 

 

そう言うとアザゼルはリアスに手渡す。それを受け取ったリアスは首を傾げる。

 

 

リアス「……これって、見たところ普通の基礎トレーニングみたいだけど?」

 

アザゼル「さっき言っただろ?“このまま特に修行しねぇでも強くなる”って。全てにおいて総合的にまとまった力を持っているからこそ、基礎的なトレーニングで充分強くなれる。今回のお前の課題は『(キング)』としての資質だ。いくら力が強くても、機転の良さや判断力が欠けていれば司令塔失格………これは『XIG』の活動でも同じだ。だから、過去のレーティングゲームの記録映像や記録データ、余裕があれば『パムパムネット』の怪獣との戦いの記録を全て頭に叩き込め」

 

リアス「わかったわ」

 

 

アザゼルにそう説明され、リアスは納得したように頷く。

それを見たアザゼルは朱乃へ顔を向ける。

 

 

アザゼル「次に朱乃」

 

朱乃「……はい」

 

我夢「…」

 

 

アザゼルに呼ばれた朱乃は少し不機嫌そうに返事する。

我夢は以前、朱乃から堕天使を誰よりも忌み嫌っていることを聞いているので、アザゼルも苦手なんだろうと不安に思った。

 

不穏な中、アザゼルはまっすぐ朱乃の瞳を見つめ

 

 

アザゼル「お前は()()()()()()()()()()()()()()()

 

朱乃「…っ!」

 

 

そうはっきりと言うと、朱乃は顔をしかめる。

忌み嫌っている堕天使の力を使う……それは彼女にとって何よりも嫌なことだ。

アザゼルはそんな彼女に構わず、話し続ける。

 

 

アザゼル「フェニックス家とのゲーム、見せてもらったぜ。はっきり言うぜ、“何だありゃ”。何故、堕天使の力を使わなかった?お前が本来持つ堕天使の光を雷に乗せれば、相手の『女王(クイーン)』も難なく倒せた筈だ」

 

朱乃「…私は、あのような力に頼らなくても―――!」

 

アザゼル「否定するな。今までうまくやってこれただろうが、これからもそうとは限らない。辛く、苦しいかもしれねぇが、自分の全てを受け入れろ………。そうでなきゃ、一生弱いままだ。お前もわかっているだろう?」

 

朱乃「……」

 

 

アザゼルにそう言い切られると、朱乃は複雑そうに顔を俯ける。

堕天使を力を使えば、大きな進歩になることは朱乃自身もわかっている。

しかし、それをどうしても拒絶する自分がいる。

 

 

我夢「(朱乃さん…)」

 

 

自分の力に葛藤している朱乃を見て、我夢は顔を曇らせる。

 

そんな2人を尻目にアザゼルは木場とゼノヴィアへ顔を向ける。

 

 

アザゼル「木場、お前は『禁手(バランス・ブレイカー)』の状態維持が課題だ。剣術の方は師匠に鍛え直してもらうんだったな?」

 

木場「ええ、1から指導してもらう予定です」

 

アザゼル「よし。ゼノヴィアはデュランダルを充分に使いこなせるようにすることだ」

 

ゼノヴィア「わかった!」

 

 

2人は今回の特訓は相当意気込んでいるのか、気合い充分だ。

アザゼルはそんな2人を見つつ、今度はギャスパーへ視線を向ける。

 

 

アザゼル「そんで、ギャスパー」

 

ギャスパー「はっ、はいぃ!!」

 

アザゼル「…お前はその対人恐怖症を治せ。元々持っている素質を活かしきれないのはそれが原因だ。俺がメニューを組んどいたから、完全にしろとまでは言わないが、人前に出てもまともに動けるようにはなれ」

 

ギャスパー「わっ、わかりましたぁぁ!!!」

 

 

ギャスパーはビクビクしながらもアザゼルから渡されたメニュー表を受け取る。

以前よりかはわりとマシになったがそれでもギャスパーは人見知りが激しい。

一般市民がいくら強力な銃を持っても、実弾射撃の経験が未熟だったら意味はないのと同じだ。

 

怯えるギャスパーにアザゼルは大丈夫かと不安そうに顔をひきつらせながらも、今度はアーシアに声をかける。

 

 

アザゼル「アーシア。お前もリアスと同じで基礎的なトレーニングで身体能力と魔力を鍛えろ」

 

アーシア「はいっ!」

 

 

アーシアは気合いが入ってるのか、元気よく返事する。

彼女がこうして気合いが入っているのは、前々から悩んでいた自分の力不足が解決するのではと期待しているからだ。

アザゼルは内容を話し続け

 

 

アザゼル「…んで、本題の『神器(セイクリッド・ギア)』の強化についてだが、回復力は申し分ない。だが、“触れなければ発動しない”のがネックだ」

 

一誠「それが何か問題あるんすか?」

 

 

どこにもアーシアの能力には欠点が無さそうに思った一誠は思わず問いかける。

その問いかけにアザゼルは呆れたように肩をすくめ

 

 

アザゼル「アホか。触れなければ発動しないってことはケガした相手にわざわざ近付かなければいけないってことだ。敵がわざわざ回復に向かうのを待ってくれると思うか?」

 

一誠「あっ、そうか…!」

 

 

アザゼルの解説を聞き、一誠は納得したように相槌を打つ。

 

 

アザゼル「話を続けるぞ。『神の子を見張る者(グリゴリ)』の出したデータによると理論上、『聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)』は回復の範囲を広げることが出来る」

 

一誠「おおっ!すげぇじゃん!!」

 

アザゼル「ああ、しかし1つだけ問題がある」

 

我夢「問題?」

 

 

首を傾げる我夢の問いかけにアザゼルは頷き

 

 

アザゼル「アーシアは優しすぎるんだよ…。傷ついた人がいれば、それが例え敵だろうが味方だろうが関係なく無意識に回復させてしまう可能性がある。敵と味方が判別できれば理想なんだが、実現するには難しいだろうな」

 

 

アザゼルは難しそうな顔でそう語る。

慈愛にも近いアーシアの優しさがまさか()()()()()()()()()()()()という欠点を作ってしまうとは…。

しかし、アザゼルはいつものようにチョイ悪そうな笑みを浮かべ

 

 

アザゼル「だが安心しろ!範囲回復が無理だとしても回復のオーラを飛ばすことは理論上可能だ。これなら回復力は落ちるだろうが直接触れずに回復でき、味方だけを回復できることが出来る。アーシア、お前にはこの特訓を基礎トレーニングと一緒にやってもらう」

 

アーシア「は、はい!頑張ります!」

 

 

アザゼルの代案策にアーシアは更に気合いをこめて返事する。

もしこれが出来れば、火力重視のグレモリー眷属にとっては大きなアドバンテージが得られる。

皆がアーシアへ期待を寄せる中、アザゼルは小猫へ顔を向ける。

 

 

アザゼル「次は小猫」

 

小猫「…はいっ」

 

 

返事する小猫がいつも以上に気合いが入っていることを我夢は察した。

我夢がそうわかるのも、最初こそ何を考えているかわからなかったが、最近になってある程度考えていることがわかってきたからによるものだ。

冥界に入ってから元気が無かったので、我夢は内心心配してたが、妙に張り切っているのでその不安も杞憂だった様だ。

 

 

アザゼル「お前は『戦車(ルーク)』としての素養は申し分ない。………しかし、リアスの眷属にはウルトラマンの我夢とイッセー、聖魔剣を持つ木場、聖剣デュランダルを持つゼノヴィアといったお前以上に火力が高い連中が多い」

 

小猫「………わかってます」

 

 

アザゼルにはっきりと言われた小猫は悔しそうに唇を噛み締める。

確かにグレモリー眷属にはどれもかれも強力な能力を持っている。アーシアは非力ながらも強力な回復能力がある。

 

――しかし、小猫にはバカ力以外何も無いのだ。

ただ純粋な格闘しか出来ないのが現実である。

それを何よりも本人がわかっているのが、悔しいのだ。

 

アザゼルはそんな彼女に構わず話し続け

 

 

アザゼル「小猫、お前も朱乃と同じだ。もっと強くなりたければ、()()()()()()()()()()()()()()()

 

小猫「…っ!」

 

我夢「?」

 

 

アザゼルの言葉に小猫は大きく目を見開いた後、顔を俯かせてしまう。

先程あれだけ入っていた気合いも一気に消えた。

 

朱乃さんと同じ…?自分を受け入れろ…?

そんな疑問が我夢の頭によぎる中、アザゼルは一誠と我夢に顔を向ける。

 

 

アザゼル「さて、最後はお前ら2人だ。我夢はより体力を鍛え、イッセーは各タイプで使える能力の発見だ。最初は同じウルトラマン同士、トレーニングを行ってもらおうかと思ったがリクエストがあってな。我夢と一誠はそれぞれ別の特別講師に鍛えてもらう」

 

我夢「特別講師?誰なんですか?」

 

アザゼル「ああ、ちょっと待ってろ。そろそろ来る頃ただが……」

 

 

アザゼルはそう呟きながら空を見上げる。

つられて他の皆も一緒に見上げる。

何だろうと皆は怪訝に思っていると

 

 

ドォォォォォォォォンッッ!!!

 

一誠「のわっ!?」

 

 

空から急降下してきた巨大な影が大きな物音を立てながらリアス達のもとへ着陸する。

その物体が着陸した影響で発生した地響きで地面は揺れ、土煙は舞い上がる。

 

我夢達は地響きの衝撃でバランスを崩しながらも何とか耐え、土煙が晴れると、そこには全長15メートルほどある巨体にサメのように鋭利な歯が並んだ大きな口。巨木のように太い両腕と両足。背中から生える大きな翼……そう、それはつい昨日見たあの生物…!

 

 

一誠「ドラゴン!?」

 

アザゼル「そうだ、イッセー。こいつはタンニーン、『六大龍王』っていうドラゴンの中でも最上位の存在だったドラゴンだ!まあ、今は悪魔に転生して、『五大龍王』になっちまったがな」

 

我夢「これが……ドラゴン……?」

 

 

アザゼルがそう説明するが、あまりものインパクトに一誠と我夢は唖然としており、耳に入ってこない。

特にドラゴンと会うのが初めてな我夢はその衝撃は凄まじく、自分でも信じられないくらい口をあんぐりと開けている。

 

そんな2人を尻目にタンニーンはアザゼルを見下ろしながら語りかける。

 

 

タンニーン「アザゼル。よくもまあ、堂々と悪魔の領土に入れたものだな」

 

アザゼル「はっ、ちゃぁ~~~~~んと魔王様から直々に許可をもらって入国したぜ?それにお前さん、文句言える立場か?昨日、留守にしていた間、お前んとこのドラゴン達の暴動を静めたのは俺も関わってるんだぜ?」

 

タンニーン「…ちっ!確かにお前の言う通りだ。その件については深く感謝している……。他ならともかく、お前に礼を言うのは気分が良くないものだ」

 

アザゼル「はっ、こっちも同じだ。お前に言われても気持ち悪いだけだしな」

 

 

お互いに毒を吐くタンニーンとアザゼル。

しかし、忌み嫌っているというよりも、喧嘩友達に近い雰囲気であまり不穏な感じはしない。

そんな会話をしていると、タンニーンは我夢と一誠を品定めするように顔を覗く。

 

 

タンニーン「それで、アザゼル。どちらを鍛えればいいのだ?」

 

アザゼル「ああ、こっちの兄ちゃんだ」

 

一誠「ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」

 

 

アザゼルは一誠へ指を指す。つまり一誠の特別講師はタンニーンである。

当の一誠は信じられない様子で、アザゼルを問い詰める。

 

 

一誠「ちょっ、ちょちょ!!先生、マジですか!?こんな怪獣みたいなおっさんと数日間特訓するんですか!?」

 

アザゼル「当たり前だろ?ウルトラマンなんだからそこら辺の奴らよりも特別強いのが良いだろ?何だ、ビビってるのか?」

 

一誠「いやいや、ビビってるとかどうとかの話じゃないすよ!いくら何でも無茶苦茶ですよ!!死ぬかもしれないんすよ!?」

 

アザゼル「問題ねぇだろ?いつも言ってるじゃねえか、『不死身のイッセー様』って」

 

一誠「それとこれとは違いますよっ!!」

 

 

一誠がアザゼルにギャーギャー喚くのをリアス達は苦笑いで眺める。

そんな中、タンニーンは

 

タンニーン「俺の仲間を救ってくれた事、感謝する」

 

一誠「っ!いやいや、こちらこそ!」

 

 

 

一誠に向かってお辞儀すると、一誠は喚くのをやめ、タジタジになりながらもお辞儀をする。

だが、一誠の内心は「恩人である自分にきつい特訓をする筈がない……」。そうたかをくくっていたが

 

 

ガシッ!

 

一誠「え?」

 

 

と一誠はタンニーンの手に掴まれる。

何故?どうして?と一誠はポカンとしていると

 

 

タンニーン「だが、特訓は別だ。ドラゴン伝統の実戦特訓でビシバシ鍛えてやろう」

 

一誠「ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

 

 

逃れたかと思ったのにこの結果。

一誠は何とか逃げようとするが、タンニーンは力強く、中々逃げられない。

 

 

タンニーン「リアス嬢。あそこにある山を貸してもらえるか?」

 

リアス「ええ、鍛えてあげてちょうだい」

 

タンニーン「任せてくれ。死なない程度に鍛えてやるさ」

 

 

リアスの承諾を得たタンニーンは翼を大きく広げ、羽ばたき出すと、どんどん地上から離れていく。

 

 

一誠「我夢!部長!助けてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーー!!!」

 

 

一誠は今まで聞いたことがない悲痛な叫びで助けを求めるが、リアスは笑顔で手を振り、我夢は申し訳なさそうに合掌している。

 

 

一誠「嫌だぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーー!!!!」

 

 

悲痛な叫びも虚しく、一誠はタンニーンと共に遠くにある山へと飛んでいった。

我夢は哀れむ様な眼差しで見送ると、自分の特別講師がまだ来てないことに気付いた。

 

 

我夢「先生?僕の特別講師は――」

 

『よっ!!!』

 

 

いつ来るんですか?―――アザゼルにそう問いかけようとした時、後ろから呼びかけられながら肩に手をかけられる。

我夢は恐る恐る振り返ると、そこには3人の屈強な男がニコニコしながら立っていた。

 

 

吉田「昨日ぶりだな!」

 

桑原「元気にしてたか!?」

 

志摩「おっす、チューインガム!」

 

我夢「あ、どうも……」

 

 

ひげ面でワイルドな印象を受ける『吉田(よしだ)』、鋭い眼差しを持つ青年『桑原(くわばら)』、そして小太りの中年『志摩(しま)』。

彼らこそアザゼル直属の精鋭部隊の1つ、『チームハーキュリーズ』のメンバーだ。

 

何故、彼らがいるのか?

我夢は色々なパターンを考えるが、答えはどっちみち1つしか浮かばない。

―――彼らが“自分の特別講師”だと。

 

しかし我夢は違うことを信じて、アザゼルに問いかける。

 

 

我夢「…アザゼル先生?」

 

アザゼル「ん?」

 

我夢「僕の特別講師って、もしかしてハーキュリーズの皆さんではないですよね?」

 

 

「違う!」そう返事が来ることを我夢は切に願うが

 

 

アザゼル「いいや、お前の特別講師はハーキュリーズだ」

 

我夢「ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

 

あっさりと望みは消え、我夢は叫ぶ。

叫び声は先程の一誠以上だ。

 

我夢が動揺していると、志摩と桑原に両腕をガッシリと掴まれる。

いわゆる連行の体勢だ。

 

 

吉田「総督!ここからは俺たちに任せておいて下さい!!」

 

アザゼル「おう。立派な漢にしてくれよ」

 

我夢「えっ!?待って、待って!!」

 

 

我夢は驚く間もなく、志摩と桑原に掴まれながらどこかへと連行され始める。

吉田を先頭に歩き出す一同に我夢は訊ねる。

 

 

我夢「どこに行くんですか!?」

 

吉田「拓けた荒野に行く。安心しろ、狂暴な生物が棲んでいるだけの何もない土地だ」

 

我夢「いや!?何かいるじゃないですか!!」

 

桑原「大丈夫だって。半殺し程度になるくらいに鍛えるだけだから」

 

我夢「半殺し!?それって、特訓じゃないですよね!?」

 

志摩「ガタガタうるせぇぞ、チューインガム~。こうやって約束通りに鍛えに来たんだから仲良くしようぜ~~」

 

我夢「約束しましたけどぉ~~~」

 

 

ニコニコと微笑みながら答える3人に段々我夢は青ざめていく。

自分はどうなるのか?はたして生きて帰れるのか?

そんな恐怖心に我夢は

 

 

我夢「誰か助けてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーー!!!」

 

 

一誠と同じように悲痛な叫びで助けを求める。

しかし、誰も答えるものはおらず、我夢はハーキュリーズに連行されていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

荒野へと連行された我夢は数日間に及ぶハーキュリーズの地獄の特訓が始まった。

 

 

―1日目

 

 

我夢「うわぁぁぁぁーーーーーー!!」

 

 

黒い道着に着替えた我夢はものすごい形相で死に物狂いに走っている。

そのスピードは凄まじく、腰に巻き付けてある朱色の旗がバタバタと激しい音を立てながらなびかせている。

 

遠くからは吉田達ハーキュリーズが見守っている。

 

何故、彼が必死に逃げているのか?

それは彼の後ろの光景を見ればよくわかるだろう。

 

 

「ガルル…!」

 

「グルァァ!!」

 

「ガァァァ…!!」

 

 

牙を持つ狼やら虎に似た多数の魔界生物がよだれを垂れ流しながら追いかけてきている。

その距離は我夢に追い付くか否かといったギリギリの間隔だ。

この生物達は我夢の腰に着けている朱色の旗に興奮している。

 

この日の特訓とは、魔界生物に追われながら100キロを走るというものだ。

提案した桑原曰く、体力トレーニングの基礎であるランニングで持久力を高めるものらしい…。

 

 

「グルァァ!」

 

吉田「あっ」

 

我夢「痛ぁぁぁぁぁぁーーーーーー!!?」

 

 

1匹の狼のような生物に尻を噛まれ、我夢は悲鳴をあげる。

 

 

 

―2日目

 

 

この日の特訓は重さ50キロ以上の岩を腕で支えながら山を登るというものだ。

非常にシンプルだが、30分ごとに岩を追加してくるので

速く登りきらなければ押し潰されてしまう恐ろしい時間制限がついている。

 

 

志摩「おらっ!頑張れよ、チューインガム!!」

 

桑原「音をあげるのはまだ早いぞ!」

 

我夢「ひいっ…!ひいっ…!そう言われましてもぉぉ~~~……」

 

 

しかも筋肉ムキムキの2人の男が隣で同じように岩を支えながら歩いている。

励ましの言葉を送ってもらっても暑苦しいだけだ。

 

 

吉田「30分。追加だ」

 

我夢「ぐあっ!?」

 

『あっ…』

 

 

更に岩を追加した瞬間、我夢は支えきれず、岩の下敷きになった。

 

次の日も、その次の日も、我夢は次々と行われるハーキュリーズ監修の特訓に死にかけながらも必死に取り組んだ。

この地獄はいつ終わるのか?

我夢はただそれだけを考え、逃げることなく特訓を続けた。

しかし、特訓は日を重ねるごとにヒートアップしていく……。

 

 

―7日目

 

 

我夢「はあっ!はあっ!はあっ!」

 

 

我夢は荒野を走る。ひたすら走る。

途中で魔界生物に襲われようが、行き止まりだろうが構わずとにかく走り続ける。

その形相は必死そのもので、血眼になっている。

 

後ろからは車のエンジン音らしきものが聞こえる。

そう、我夢はハーキュリーズが運転するジープに追いかけ回されているのだ。

 

 

吉田「我夢っ!逃げるなぁぁーーーーーー!!逃げるんじゃなぁーーーいっっ!!」

 

我夢「ひぃぃぃぃ!!!」

 

 

後ろからジープを運転する吉田が声をかけるが、我夢は情けない声をあげながら必死に逃げる。

この特訓は確実な殺意を持った敵に立ち向かう為の勇気を鍛えるものである。

 

 

志摩「向かってこい!チューインガムっ!!」

 

桑原「車に向かってくるんだ!!」

 

我夢「無理ーーーーーーー!!」

 

 

後部座席に乗る志摩と桑原も声をかけるが、我夢は首を横に振り、必死に逃げ続けていると、途中で転んでしまう。

 

 

我夢「皆さん!やめてくださぁぁーーーーーーーいっ!!!」

 

 

我夢は転がりながらそう呼びかけるが、吉田は無視してジープの運転を続け、我夢目掛けて突進する。

 

 

我夢「うわぁぁぁぁぁぁーーーーーー!!」

 

 

我夢は盛大に吹き飛ばされ、地面に叩きつけられる。

ハーキュリーズはジープを降り、うつ伏せで倒れている我夢に駆け寄る。

 

 

吉田「我夢、そろそろ休憩にするぞ」

 

我夢「…は、はひ……」

 

 

我夢は何とか顔を動かして見上げながら答える。

もうかれこれ6時間ぶっ続けで追いかけ回されており、肉体的にも精神的にも限界だったのでありがたい。

 

 

アザゼル「おっ、休憩か。ちょうど良かった」

 

 

そんな声がかかり、振り返ると、何やら大きな包みを手に持ったアザゼルがいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『美味い!美味い!』

 

 

我夢はアザゼルから手渡された包みに入っていたおにぎりを遠くにいるハーキュリーズと一緒にむしゃむしゃとがっついて食べていた。

ここ数日間、我夢は野宿のせいであまり食べられなかったこともあり、やっとまともなものを食べれた感動のあまり、涙すら流している。

 

我夢は一旦、お茶で口の中にある米を流し込むと、アザゼルに問いかける。

 

 

我夢「そういえば、このおにぎりって誰が作ったんですか?もしかして、アザゼル先生が?」

 

アザゼル「んな訳あるか。俺に料理ができそうな奴に見えるか?そのおにぎりは全部朱乃が作ったんだぜ」

 

我夢「え!?朱乃さんが全部!?」

 

アザゼル「ああ、朱乃がお前の為にと朝早くからせっせと作ったんだぜ?」

 

我夢「なるほど…」

 

 

どうりで美味い訳だと我夢は思った。

彼女が淹れるお茶や紅茶が美味しいのは知ってたが、まさか料理も美味いとは…。

容姿、頭脳、家事……どれをとっても完璧な彼女に我夢は感嘆する。

 

しかし、我夢は少し気がかりになることがあった。

 

 

我夢「今回の差し入れもそうですけど、最近の朱乃さん、僕にやたら積極的に近づいてくる気がするんです。別に嫌ではないんですが僕だけを特別扱いしてるような…」

 

アザゼル「は?お前、気付いてないのかよ?」

 

我夢「気付く?何を?」

 

アザゼル「はぁ、もういいよ…」

 

我夢「?」

 

 

我夢の鈍感さに呆れてため息をつくアザゼルに我夢は首を傾げる。

恋愛とは無縁の勉強ばかりしてきた我夢には仕方がないことだろう。

 

 

我夢「そういえば、イッセーはどうなんですか?」

 

アザゼル「おう。ここに来る前に立ち寄ったが、案の定今のお前と同じくらいボロボロになるまでしごかれてたぜ」

 

我夢「そ、そうですか…。ははっ…」

 

 

タンニーンのもとで特訓している一誠の安否が気になり、我夢は苦笑いする。

かつて『六大龍王』の1角であったドラゴンの元で実戦訓練となればただじゃすまないだろう。

 

 

アザゼル「だが、大きな進歩はあった。アイツは今ストロングタイプでできる全ての能力を把握した」

 

我夢「っ、本当ですか!?」

 

アザゼル「ああ。嫌々言ってるが、マジメに取り組んで()()()3()()で熟知して、今はミラクルタイプの方に取り組んでるらしい。俺の予想じゃあ、最低7日ぐらいかかると思ったが、それを越えるとはな……。アイツの素質は異常だぜ」

 

 

アザゼルはそう言いつつ、一誠の底知れない伸び代に感嘆する。

それもそうだろう。長年戦ってきた戦闘のプロであるアザゼルが7日かかると予想したのをたった3日で完了させたのだから。

 

我夢は自分も負けてられないと心の中で意気込んでいると、ふいにアザゼルが改まった口調で問いかける。

 

 

アザゼル「ところで話は変わるが……お前は朱乃のことをどう思う?」

 

我夢「朱乃さんですか?まあ、ちょっと怖いところもありますけど、良い先輩だと思いますよ?」

 

アザゼル「そうじゃない。1人の女としてだ」

 

 

アザゼルに訂正されると、我夢はう~んと顎に手を当てて考えると

 

 

我夢「…まあ、女性としてこれ程素敵な人はいないと思いますよ。品行方正ですし、料理も美味しくて……それに綺麗ですし!どうしてそれを?」

 

 

次々思い浮かぶことを言い終えると、我夢は何故唐突にそんなことを訊いてきたのか気になり、問いかける。

すると、アザゼルはふぅと軽くため息をすると、口を開く。

 

 

アザゼル「…俺は朱乃が心配なのさ。アイツは()()()()()()()で心に大きな傷が出来ちまって、自分に流れる堕天使の血を拒んでいる……。心の傷は早々治せるもんじゃねえからな………。―――かといって、見捨てる訳にもいかねぇ。何てったって俺のダチの娘だからな」

 

我夢「心の…傷…」

 

 

悲しげな表情を浮かべながら語るアザゼルに我夢は顔を曇らせながら呟く。

朱乃から以前に堕天使を嫌っていることは聞いてる。

その原因は自分に堕天使の血をひいていることもあるだろうが、その大元となる出来事があるのは初耳だ。

 

―――その出来事がどれだけ彼女の心を痛めたのか。

前に仲間だから気にしないとは言い、本人は喜んではいたが、自分は彼女のことを100%知っていない。

それが本人の為の言葉だったのか?

 

我夢は複雑そうに頭を悩ませていると、アザゼルはニコッと綺麗に並んだ白い歯が見えるほど微笑みながら我夢の肩をポンポンと叩き

 

 

アザゼル「まあ…ともかく俺はお前なら朱乃のことを救えるんじゃないかと思ってるんだ!」

 

我夢「僕が?」

 

アザゼル「ああ、お前は種族とか血筋とか関係なく接せれる。そんな心を持つ我夢、お前だからこそできるんだよ」

 

 

怪訝そうにする我夢だが、アザゼルの言葉通り、もし自分が彼女を救えるとしたら……。

そう思ったら、返答は決まっている。

 

 

我夢「わかりました!僕で朱乃さんを救えるなら、是非任せて下さい!!」

 

アザゼル「よし!そう言ってくれると思ったぜ!朱乃のことにはお前にも任せる。―――となれば、後は小猫か……」

 

我夢「?彼女に何かあったんですか?」

 

 

我夢が問いかけると、アザゼルははぁと困ったように息を吐く。

 

 

アザゼル「どうにもな……ここ最近焦っている。自分の力に疑問を感じているようでな。俺が与えたトレーニングを本来よりも過剰に取り組んだせいで今朝、倒れた」

 

我夢「倒れたっ!?彼女は大丈夫なんですか!?

 

 

小猫が倒れた報せを聞き、思わず大声で訊ねる我夢にアザゼルは落ち着けと手で制する。

最近様子が変だとは思っていたが、まさかこんなことになるとは……。

我夢は心を落ち着かせ、アザゼルの話に耳を傾ける。

 

 

アザゼル「とりあえず、命に別状はない。今はグレモリー家の本邸の寝室で休ませてある。ケガはアーシアに治療してもらったが、体力だけはそうはいかん。特にオーバーワークは確実に筋力を痛めるだけで逆効果だ」

 

 

我夢は命に関わる問題ではないとわかり、ひと安心する。

しかし、何故ここまで焦っているのか?という疑問が浮かぶが…

 

 

我夢「(僕って、明らかにオーバーワークしてるよね……?)」

 

 

我夢はハーキュリーズの特訓が過剰ではないのかという疑問が新たに浮かんだ。

確かに強くなってる気はするが、冥界生物と追いかけっ子したり、岩をおぶって登山、ジープに追いかけ回される等、明らかに異常だ。

恐らく、アザゼルに言っても「ウルトラマンだから大丈夫だろ」と返されるのがオチだと我夢はわかっているので、そのことについては言及しない。

 

そう思っていると、アザゼルがよっこらせと言いながら立ち上がった。

 

アザゼル「さて、我夢。今さっき、お前を連れ戻せと言われたんでな。一度グレモリー邸に戻るぞ」

 

我夢「え?特訓はどうするんですか?」

 

アザゼル「安心しろ、明日の朝には戻す。お前たち、いいよな?」

 

『問題ありませーーーんっ!!!』

 

 

ハーキュリーズの3人は仲良く声を合わせて返事すると、アザゼルはうんうんと頷く。

 

 

我夢「それで、誰からのです?」

 

アザゼル「リアスの母上殿からだ」

 

 

特訓を中断させて自分を呼び出す程の用件って何だろう?と我夢は疑問に思いながら、アザゼルと一緒にグレモリー邸へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヴェネラテ「1、2、3…はい、そこでターン。駄目ね、キレが悪いわ。一誠さん、もう一度」

 

一誠「は、はいぃぃ!」

 

我夢「……」

 

 

グレモリー邸から少し離れた場所に位置する別館。そこにある一室に呼び出された我夢は、何故か一誠とヴェネラテがダンスの練習に取り組んでいた。

 

アザゼルに聞いた話によると、どうやらこれも両親の企みの1つで、いずれ次期グレモリー家の婿養子になる(と勝手に決定されている)一誠に社交的なマナーを身に付けさせる為だ。

 

当然、今までこういったマナーに馴染んでいない一誠はこういった社交ダンスは全く出来ない。

しかし、ヴェネラテによるスパルタ指導によるおかげか、まだぎこちない所もあるがそれなりに出来ている。

 

 

ヴェネラテ「少し休憩しましょうか」

 

一誠「は、はい……」

 

 

15分後、ヴェネラテから休憩を許可してもらった一誠は壁側にある長椅子にどっしりと座り、床に置いてあるペットボトルの蓋を開けると、中にある飲料水を口へ流し込む。

慣れない動きをした為か、一誠は汗だくで息をきらしている。

 

 

 

ヴェネラテ「すみません、我夢さん。つい指導の熱中してしまいまして」

 

我夢「あの?どうして僕を……?」

 

 

その間、ヴェネラテが部屋の隅で待っていた我夢のもとへ来たので、さっそく我夢は自分を呼んだ理由を訊ねる。

すると、ヴェネラテは

 

 

ヴェネラテ「ええ、あなたなら自分の存在と力で悩み、苦しんでいる彼女への助力になると思ってお呼びしましたのです」

 

我夢「存在と…力……?」

 

ヴェネラテ「あなたはリアスの眷属になった日が浅かったですわね。では、少しお話をしましょう」

 

 

疑問に感じている我夢にヴェネラテはとある2匹の姉妹猫の話を語りだした。

 

姉妹の猫はいつも一緒だった。

寝るときも食べるときも遊ぶときも。

親と死別し、帰る家も頼る者なく、2匹はお互いを頼りに懸命に1日1日を生きていった。

 

そんなある日、2匹はとある悪魔に拾われた。

お互いを支えあっていたものの、生活は苦しいことには変わらないので、姉の方が眷属になることで2匹はやっとまともな生活を手に入れたのだ。

 

2匹は幸せに暮らせる―――――。

そう信じていたが、ある出来事がきっかけに崩れ去る。

 

姉の猫は悪魔になったことで隠れていた才能が開放され、急速に力をつけていった。

2匹は普通の猫でなく、元々妖術の類いに秀でた種族だったのだ。

 

急速に力を身につけていった姉猫は主の悪魔をも上回り、遂には力に呑み込まれ、主を殺害した。

姉猫はその後、主を殺した邪悪かつ危険な『はぐれ悪魔』として冥界中に指名手配されることとなった。

 

そして、上級悪魔達は残された妹猫については姉と同様に暴走するリスクがあるため始末しようとしたが、サーゼクスが「妹猫までには罪はない」と説得し、監視という名目で事態は収まった。

 

だが、打ちひしがれ、生きる意味と笑顔を失った妹猫はリアスのもとへ預けられた。

彼女と触れあうことで妹猫は徐々に感情を取り戻し、生きる希望を持つようになった。

 

そして、リアスはその妹猫に名を与えた。

―――――『塔城(とうじょう) 小猫(こねこ)』、と。

 

 

我夢「………」

 

 

我夢はその話の壮絶さに言葉を失っていた。

信頼していた姉に裏切られ、周りから批難される……そんな悲惨な過去があるとは想像出来なかっただろう。

 

また、感情表現をあまりしないのは、今でもその過去を引き摺っているからかもしれないと我夢は思った。

 

しばらくポカンとしていた我夢だが、気を取り戻すと、ひょっとしてと思ったことをヴェネラテに問いかける。

 

 

我夢「もしかして、彼女は……」

 

ヴェネラテ「ええ、彼女は元妖怪。猫の妖怪の猫又で、その中でも最上位とされる種族、『猫魈(ねこしょう)』の生き残りなのです。妖術だけでなく、それより強力な仙術を使いこなす上級妖怪の一種です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヴェネラテから小猫の過去を聞いた我夢はすぐさま小猫がいる本邸へと向かった。

どの部屋だと捜している途中、見知った人物と出会った。

 

 

我夢「部長!」

 

リアス「我夢!どうしてここに?」

 

 

我夢は驚くリアスに事情を説明した。

すると、リアスは納得した表情を浮かべ

 

 

リアス「…なるほどね。わかったわ、こっちよ」

 

 

そう言うと、我夢は先導するリアスの後をついていく。

2分くらい歩き続けると、小猫が休んでいる部屋の前に着いた。

 

ちなみにリアスは既に話を済ませているので一緒には入らない。といっても我夢は2人っきりで会話するつもりなので、どっちみちリアスには外にいてもらう。

 

我夢はドアを軽くノックする。

 

コンコンコン…

 

朱乃『どなたです?』

 

 

すると、中にいる朱乃から声がかかる。

 

 

我夢「僕です。我夢です」

 

朱乃『っ、我夢君!?小猫ちゃん、部屋にいれても大丈夫……?』

 

小猫『っ……』

 

 

朱乃は思わぬ面会者に驚きつつも、小猫に訊ねる。

そして、しばらく間が空いた後、朱乃から許可の声が聞こえてきた。

我夢はドアを開け、入室する。

 

中はやはり広々としており、高価そうな家具や何やらが配置されている。それはさておき、我夢は寝室へ向かうと、朱乃がベッド脇にある椅子に座っており、ベッドには小猫が横になっていた。

 

 

我夢「…!」

 

 

我夢は小猫を見ると、目を丸くする。

小猫の頭部には髪色と同じ白い猫耳が生えていたのだ。

カチューシャとかではなく、本物であり、彼女が本当に猫の妖怪であることを裏付けている。

 

 

朱乃「我夢君、これは―――」

 

我夢「大丈夫です。事情は大体聞いてますので。ところでお願いなんですが、しばらく彼女と2人っきりにしてくれませんか?」

 

朱乃「…ええ、終わったら声をかけてくださいね」

 

 

朱乃は我夢の考えに察したのか一言そう言うと、朱乃は席を外す。

遠くからドアが閉まる音が聞こえたのを確認した我夢は朱乃が座っていたベッド脇の椅子に腰掛け、声をかける。

 

 

我夢「体は平気かい?」

 

小猫「……何しにきたんですか?」

 

 

小猫は半目でこちらへ見ながら暗い声で訊ねる。

その態度から明らかに不機嫌なのがわかるが、だからといって会話をやめる訳にはいかず、我夢は話し続ける。

 

 

我夢「…アザゼル先生から倒れたって聞いたからさ、心配になってお見舞いにきたんだよ。駄目だったかな?」

 

小猫「……」

 

 

そう訊ねるが、小猫は顔を俯かせ、何も答えない。

しかし、その反応からは拒絶といった雰囲気は感じられないので、我夢は話し続ける。

 

 

我夢「小猫、色々聞いたよ。どうしてそんなに焦ってるかわかんないけど、過剰なトレーニングは駄目だ。変に体を痛めるだけだ………と言っても、魔界生物と鬼ごっこしたり、ジープで追いかけ回されている僕が言えたことじゃないけどね」

 

小猫「…なりたい」

 

我夢「え?」

 

 

最後は冗談っぽい口調で話していると、小猫は何か呟く。

声量が小さかったので、我夢は聞き直すと、小猫は目尻に涙を浮かべ

 

 

小猫「強くなりたいんです……。部長、祐斗先輩、ゼノヴィア先輩、朱乃さんにイッセー先輩……そして、我夢先輩のように心と体を強くしていきたいんです。ギャー君の時を止める能力やアーシア先輩のように回復の力もありません。……このままでは私は役立たずになってしまいます……。『戦車(ルーク)』なのに、私が一番弱いから……。だからといって、猫又の力は使いたくない……。使えば、私も姉様のように………。もう嫌です……あんな力は嫌………」

 

我夢「……!」

 

 

ポロポロと涙を流しながら自分の気持ちを吐露する小猫を見て、我夢は内心驚く。

今まであまり感情を表に出さなかったので、今の彼女の姿は衝撃的だ。

 

だが、同時に焦っていた理由がわかった。

他の皆が急速に強くなっていく中、自分だけが一向に強くならないのに焦っていたのだ。しかし、猫又の力を使えば暴走してしまう恐れがあるから、それに頼らずに強くなる為にオーバーワークをしてしまったという訳だ。

 

しかし、このままではいけない。

この先もずっと自分の力を使うのにためらっていては、強くはなれない。

何故、ヴェネラテが自分に彼女の助力を求めたのかがわかった気がした。

 

――――怒らせてしまうかもしれない。

我夢はそう胸に秘めながらも自分の意見をはっきり主張する決意をすると、閉ざしていた口を開く。

 

 

我夢「……小猫。君が今まで何を思って生きてき、必死に強くなろうとしたことはわかった」

 

小猫「……」

 

我夢「…だけど、はっきり言わせてもらう。いつまでも自分が持つ力を最大限使わない人がどれだけ頑張ろうと絶対に強くはなれない」

 

小猫「…っ!」

 

 

そうはっきりと言われた小猫は肩をピクッと震わせ、悲しげな顔を浮かべる。

我夢は言葉を続ける。

 

 

我夢「姉と同じっていっても君が暴走するかはわかんないじゃないか。その様子だと、試したことがないんだろう?だから、1回自分を受け入れて、今からでも――」

 

 

―――やってみよう。そう我夢は言おうとしたが、遮られてしまう。

その理由は怒りの形相の小猫が我夢の胸ぐらを掴み、顔を引き寄せた為である。

 

 

小猫「あなたに何がわかるんですか!!何も知らないくせにっ!私はもう何も傷付けたくない、失いたくないからこの力を封印してきたんですっ!!」

 

我夢「僕は確かに君のことを全部は知らない。生まれ持った強い力に恐れるってのは誰しもある!だからと言って、いつまでも逃げるのは間違っている!」

 

小猫「私は我夢先輩とは違うんです!先輩はいいですよね!頭が良いから、ウルトラマンっていう恵まれた力を持っているから!!苦労も何もない人生を送ってきたんでしょうねっ!!」

 

 

苦労も何もない……その言葉にカチンと頭にきた我夢は自分でも信じられないくらいの怒鳴り声をあげる。

 

 

我夢「僕だって、生まれ持った能力のせいで傷付けたり、傷付けられたりしたさっ!!ガイアの力は自分からのぞんで手に入れた!!でも、ウルトラマンの力だって使い方を間違えれば、被害を与える危険なものなんだっ!!だけど、僕は信じている!!この光は皆を守る為にあると信じて戦っているんだ!!要は“心”の問題なんだ!!心があるから、力は悪にも正義にもなれるんだっ!!自分を受け入れてみようと思ったことないのに、強くなろうとするなんてできっこないんだ!!!」

 

小猫「黙れぇぇぇーーーーー!!!」

 

 

小猫は我夢の声を解き消すように叫ぶと、我夢の左の頬を殴り付ける。

戦車(ルーク)』の腕力から繰り出される拳に当然、我夢は吹き飛ばされ、ベッドの横の壁にあるタンスを豪快に破壊しながら壁に叩きつけられる。

 

 

小猫「はぁーーーー…はぁーーーーー………っ!」

 

 

小猫は壁際の床に倒れている我夢を見ながら荒い呼吸をして落ち着かせていると、自分がしたことに絶句する。

いくらイラッときたとはいえ、自分に勇気を持たせようとした先輩を殴ってしまった。

 

 

小猫「……あ………ああ…………」

 

 

――人を傷付けてしまった……。

猫又ではない悪魔の力で傷付けた恐怖に小猫は涙を流し、体を震わせる。

 

そんな中、タンスの破片を手で払いながら我夢が立ち上がる。

左の頬は赤く腫れており、口の中を切ってしまったのか、口の端からは血が流れている。

 

 

我夢「…小猫、僕はもう外に出るよ。1人にした方が君の為だろうしね」

 

小猫「……」

 

我夢「だけど、これだけは覚えておいてくれ」

 

 

そう言うと、我夢は口元の血を拭うと小猫を見据え

 

 

我夢「怖がるってのは別に恥ずかしいことじゃない。僕だって怖いと思う事はある。ただ大事なのは()()()()()()()()()()()()()()()()()()なんだ。それが本当に“強くなる”って事なんだ」

 

小猫「…っ」

 

 

一言そう告げると、未だ怯えている小猫を背を向け、我夢は部屋の出入口へ歩き出す。

 

歩いている途中、廊下からこちらに向かってドタバタと物音が聞こえてくる。

――――おそらく壁に衝突した音に心配した部長と朱乃さんが向かってくる音だろうな、と我夢は思っていると、案の定リアスと朱乃に遭遇する。

 

 

リアス「何があったの?…って、そのケガどうしたの!?」

 

朱乃「すぐに手当てを――」

 

我夢「大丈夫です、何でもないですから」

 

 

左の頬が赤く腫れている我夢を見て、驚いたリアスと朱乃。

心配した朱乃はすぐさま手当てしようとするが、我夢は断る。

 

それでも不安そうにする2人の横を通り過ぎ、我夢は出入口のドアを開けると、2人に向き直り

 

 

我夢「僕が出来ることはしました。あとは彼女自身の問題です………。それと部長、タンスを壊してすみません…」

 

 

そう言って頭を下げると、我夢は部屋を出る。

 

 

我夢「はぁ……」

 

 

廊下に出た我夢は深いため息をつくと、ドアにもたれかかる。

彼女の為に色々と言ったが、つい感情的になってしまったことは否めない。

我夢は廊下の窓に近寄ると、天高くあがっている月を見上げ

 

 

我夢「……僕、嫌われちゃったかな?」

 

 

そう自嘲気味な笑みを浮かべながら呟くと、自分の部屋に向かって歩き去っていくのだった。

 

 

 




次回予告

黒歌「久しぶりね」

禍の団(カオス・ブリゲード)』に誘う小猫の姉、黒歌。
小猫は『禍の団(カオス・ブリゲード)』の軍門に下ってしまうのか?

次回、「ハイスクールG×A」!
「再会の姉妹」!
我夢!彼女を救えるのは君だ!








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