ハイスクールG×A   作:まゆはちブラック

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第30話「再会の姉妹」

小猫と我夢が喧嘩してから2週間。

普段、喧嘩するような仲ではない2人に後から事情を聞いたリアスと朱乃、一誠は困惑していたが、迫り来るレーティングゲームに備える為、それぞれ修行に戻った。

 

そして、レーティングゲーム開始まであと5日に迫っていた…。

 

 

吉田「いくぞっ、我夢!」

 

我夢「はいっ!」

 

 

修行場である荒野にボロボロの黒い道義に着替えた我夢は真正面から突進してくるジープに向かって走り出す。

最初のうちは常識を超えた特訓内容が恐ろしくて逃げ回っていたが、度重なる特訓によって、我夢は心身共に鍛えられ、よっぽどのことでない限り動揺することがなくなった。

 

10メートル…8メートル…6メートル……。

ジープは我夢に近づくつれ、どんどん速度が増していくが、我夢は足を止めない。

 

そして、2メートルをきり、我夢がジープに衝突しようとする危機一発の瞬間、

 

 

我夢「でやっ!!」

 

吉田「おおっ!」

 

 

我夢は前へ飛び込むように跳躍すると、そのまま前回りに宙返りし、車体にかすりもせずに向こう側の地面に着地する。

 

その一瞬の出来事を見た吉田はそのまま我夢とは反対方向に走らせていたジープを止め、搭乗していた他の2人と一緒に降りると、我夢のもとへ駆け寄る。

 

 

吉田「よし、この数週間あまりの特訓によく耐えてきた!!俺たちは途中で逃げ出すのかと思っていたが、それもせず!必死に取り組んで、最後のトレーニングメニューまでこなした!!」

 

我夢「(いやいや……()()()()()()()()んじゃなくて、()()()()()()()()んだけどな……)」

 

 

吉田の称賛に我夢は内心苦笑いしつつ、ツッコむ。

特訓に使っている荒野は凶暴な冥界生物でウヨウヨいるだけでなく、荒野の周囲を囲んでいて、外へと繋がっている岩山に発生する特殊なガスのせいで出たくても出られないのだ。

 

ガスは岩山の上へと登ろうとする度に地球以上の重力がかかる危険なもので、空を飛んでも岩山に近寄るだけで重力がかかる。ハーキュリーズによると、岩山を通って外へ出たものは1人もいないらしい。

つまり、我夢はここに連れてこられた時点で『逃げる』という選択肢ははじめから存在しないのだ。

 

そんなことを考えつつも、吉田は最後に

 

 

吉田「……という訳だ!高山 我夢!!これにてお前の修行を完了とするっ!!!」

 

我夢「…っ!」

 

 

そう言われると、我夢は心の中から感動が込み上がってくる感覚を実感した。

長く…苦しく…厳しく…。さらに野宿のせいでろくな食事も取れなかったこの数日間のサバイバル生活にピリオドを打つ『完了』の一言に、我夢は感動のあまり、涙が溢れてきた。

 

そんな我夢にハーキュリーズの3人は優しく微笑みながら、称賛の言葉をかける。

 

 

吉田「最初は特訓についてこれるか不安だったが、この短期間のうちに慣れ、心身共に成長した。お前は本当に凄いやつだ」

 

我夢「吉"田"さ"ぁ"ぁ"ぁ"ん"…」

 

桑原「ははっ、本当に頑張ったよ。堕天使1厳しいといわれる俺たちのしごきに耐えてきたんだ、自信を持てよ」

 

我夢「桑原さ"ぁ"ぁ"ん"。うぅっ…もうこれで終わりとなると……うれ、悲しくて………」

 

志摩「そうだぜ、泣くなよチューインガム。ほら、このハンカチで涙を拭け」

 

我夢「志"摩"さ"~~ん"。すみません……皆さん!本っ当にありがとうございますっっ!!」

 

 

3人の言葉にもっと感動した我夢は志摩から手渡されたハンカチで更に溢れでる涙を拭いながら、感謝を告げる。

ハーキュリーズの3人は「いいってことよ」と言いながら穏やかに微笑み返す。

 

 

吉田「よしっ、お前ら!チューインガムをグレモリー邸へ送りに行くぞ!!」

 

「「了解!」」

 

 

吉田の一声に志摩、桑原は賛同すると我夢をグレモリー邸に送ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我夢「ふぅ~…」

 

 

それから数分後。グレモリー邸に着いた我夢はシャワーで火照った体で満足げに廊下を歩いていた。

何せ2週間振りのシャワーだ。つい昨日まではハーキュリーズ特製五ェ門風呂(もの凄く熱い)で入浴していたので、こんなに身も心もスッキリするお湯浴びは久しぶりである。

 

なお、現在我夢が向かっているのはリアスの部屋である。

その理由はゲーム開始まで5日前となった今、全眷属が集まり、修行で得られた成果を各々報告する報告会があるからだ。

 

ゲーム前日にやればいいのでは?と思う方もいるかもしれない。

しかし、前日では修行で疲れた体を充分に休めず、レーティングゲームに支障が出るリスクがある。

それだけでなく、明日からはゲーム前の若手悪魔達を健闘する魔王主催のパーティーがあるので、修行は今日で切り上げになったのだ。

 

 

一誠「よお、我夢!」

 

我夢「イッセー!久しぶり!」

 

 

道中、我夢は廊下の曲がり角で一誠と鉢合わせる。

久しぶりに会った親友の姿に2人は頬を緩ませる。

 

 

我夢「元気にしてた?」

 

一誠「おう、この通りピンピンしてるぜ!お前も部長のところに行くんだろ?一緒に行こうぜ?」

 

我夢「ああ」

 

 

一緒に行くことにした2人はリアスの部屋へ向かう道中、近況を報告し合う。

 

 

一誠「マジかよ!?地雷原の50m走にジープに追いかけ回されたって!?我夢……大変だったんだな」

 

我夢「ああ…死ぬかと思ったよ。イッセーの方は?」

 

一誠「こっちもな、火炎や吹雪を吐いてくるドラゴンに追いかけ回されたり、タンニーンのおっさんと日が暮れるまでスパーリングしたり………とにかく“早く終わってほしい”としか考えてなかったな…」

 

我夢「は…ははは……。イッセーもそうだったのか……。僕もそれしか考えられなかったよ」

 

 

お互いの無茶苦茶なトレーニングメニューに2人は苦笑いを浮かべる。

思い返せば、よくこんな過酷な内容で生きて帰れたなと2人はしみじみと思う。

 

そして、2人がリアスの部屋の目前まできた時

 

 

我夢「あ…」

 

小猫「…!」

 

 

小猫と鉢合う。

一瞬で気まずい空気が両者の間に流れる。

 

 

小猫「…っ、……」

 

 

そんな中、小猫は何かを話そうとほんの僅かに口を動かそうとするが、すぐに閉ざし、顔を俯かせながらひと足先に部屋に入っていった。

 

 

一誠「我夢…」

 

我夢「いいんだよ、イッセー…」

 

一誠「…」

 

 

心配そうに声をかける一誠に我夢は振り返らず、そう短く答える。

しかし、一誠はほんの一瞬だけ我夢の顔が見えた。

その顔は曇ったものだった。

 

その後、2人はリアスの部屋に入り、報告会に参加した。

各々が修行で得られた成果や新たに出来た課題点を報告し、皆は驚いたり、喜んだりと様々だ。

 

その中でも木場とゼノヴィアの報告は我夢や一誠も耳を疑った。

彼らも外で修行していたらしいが、山小屋や近くにあるグレモリーが所有する別荘で寝泊まりしていたのだ。

 

 

「「アザゼル先生っ!!」」

 

アザゼル「何だよ?」

 

一誠「何だよじゃねぇっすよ!俺達、あんな過酷な生活してたんですよ!?何で教えてくれなかったんですか!?」

 

我夢「そうですよっ!」

 

 

当然、野宿していた我夢と一誠は納得いかず直談判する。

過酷な生活していた自分達なら尚更紹介するべきであるはずだ。

しかし、アザゼルは

 

 

アザゼル「あっ、ごめん。忘れてた。でも、いいじゃねぇか!!おかげで心身共に強くなったんだしよ!ハハハハハ……!!」

 

「「はぁ…」」

 

 

そう言いながら豪快に笑う。

反省する気も全く感じさせない態度に我夢と一誠は怒りを通り越して、呆れてため息をもらす。

 

その後、特に何もなく、リアス達は明日のパーティーに備えて解散した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日の夜。沈んだ陽の灯りが微かに夜闇を照らす頃、タンニーンに乗せてもらったリアス達グレモリー眷属はグレモリー領の端にあるパーティー会場となる高層ホテルにいた。

さすがグレモリーが所有するホテルということもあり、豪華な仕様となっており、ホテル内や外はしっかりとした礼装やきらびやかなドレスを着た数多の悪魔が談笑している。

 

ちなみにアザゼルはサーゼクス達と合流してから会場に向かう為ここにはいない。

 

そうしてパーティーに参加したリアス達だが、期待のルーキーの登場とあり、当然たくさんの悪魔から次々と声をかけられる。

その都度リアス達は1人1人丁寧に対処し、50分後……。

 

 

一誠「あ"ぁ"ぁ"~~~~……疲れたなぁぁ…」

 

我夢「そうだね~~」

 

アーシア「こういったパーティーって初めて参加しましたけど、こんなに沢山の方がいるものなんですね」

 

ギャスパー「ド、ドキドキしましたぁぁ……」

 

 

フロアの端に用意された椅子にぐったりと腰掛けながら一誠は背を伸ばし、我夢、アーシア、ギャスパーもぐったりと座っていた。

ギャスパーは人見知りは未だ慣れてない様子だったが、修行のおかげで前より取り乱すことはなくなった。

 

遠くではリアスと朱乃、木場が女性悪魔達の輪に入って談笑している。

 

 

一誠「こうして見ると、部長達さすがだなぁ~って思うよなぁ~~…」

 

我夢「慣れてるよね」

 

 

リアス、朱乃、木場は休む間もなく次々と話しかけられているが、特に疲れている様子もなく、むしろ楽しんでる様子だ。

1つ1つ対処するのに精一杯だった我夢達4人は悪魔社会における経験の違いを改めて思い知った。

 

そんなことを思っていると、

 

 

ゼノヴィア「料理をゲットしてきたぞ!」

 

 

両手いっぱいに大量の皿を持ったゼノヴィアが嬉々とした様子でくると、テーブルの上にドンッと乗せる。

その皿の上にはいかにも豪華そうな料理の山々だ。

 

 

一誠「悪いな、ゼノヴィア」

 

我夢「助かったよ」

 

ゼノヴィア「何、人混みの中を通るのも修行の一環だからな。さあ、私に気にせず食べてくれ!」

 

ギャスパー「はっ、はい!」

 

アーシア「ゼノヴィアさん、ありがとうございます!」

 

 

我夢達4人はゼノヴィアに感謝しつつ、持ってきた料理や飲み物に手をつける。

どれも美味しい数々の料理は、慣れない環境に置かれた4人の疲れをあっという間に消し飛ばした。

 

豪華な料理に4人は心が満たされていると、

 

 

匙「よお、兵藤に高山」

 

梶尾「久しぶりだな」

 

一誠「匙!」

 

我夢「それに梶尾さんも!」

 

 

人混みの中から匙と梶尾が現れる。

約2週間振りの再会に我夢と一誠は頬を緩ますが、4人は“レーティングゲームで戦う相手だ”とすぐに気持ちを入れ替える。

 

 

匙「対戦相手はお前らだな」

 

一誠「そうだな。だけど、俺達は負けねぇ…死ぬほど修行したんだからな」

 

梶尾「死ぬほど?」

 

我夢「はい。僕は冥界生物と鬼ごっこしたり、ジープに追いかけ回されて、一誠は山でドラゴンと追いかけ回されたんです」

 

匙「は…はは…」

 

梶尾「お前らも大変だったんだな…」

 

 

あまりもの異常なトレーニングメニューに匙と梶尾は頬をひきつらせる。

すると、我夢は梶尾の言葉が気になり、問いかける。

 

 

我夢「ん?“お前ら”ってことは梶尾さん達も?」

 

梶尾「ああ、お前達に負けない程な。今回のレーティングゲームは沢山の悪魔が注目している。このゲームを勝ち取れば、会長の夢へ一歩近付ける。俺達は会長の夢を叶えたい――その一心で今日まで鍛えてきたんだ」

 

匙「もし、このゲームに負ければチャンスがいつ来るかわかんねぇ……俺達は会長の期待に応えたいんだ。悪いが、今回のゲームは勝たせてもらうぜ」

 

 

2人は不敵な眼差しを向けながら、言い放つ。

我夢と一誠、匙と梶尾……主は違えど、お互いに背負っているものは同じだ。

その揺るぎない信念は匙と梶尾――2人の瞳からわかる。

だが、その信念は我夢、一誠とて同じだ。

 

 

一誠「そうか……でもこっちも同じ気持ちだ。俺も部長の願いを叶えたいからな。簡単には勝たせねぇぞ?」

 

匙「へへっ、それはこっちの台詞だ。」

 

我夢「ソーナさんがどんな策を練ってこようと、僕達はそれを打ち破って見せます。梶尾さん、もちろんあなたにも…」

 

梶尾「ふんっ、挑むところだ。お前がどんなに強い力を持っていようと、全力で戦うつもりだ。覚悟するんだな」

 

 

お互い目から火花を散らし、不敵な笑みを浮かべながら握手を交わす。

お互いの健闘を祈りを込めてだ。

 

握手を交わした後、匙と梶尾は遠くにいるソーナのもとへ向かう為、再び人混みの中へ消えていった。

彼らを見て、絶対に負けられないと2人が意気込んでいると、

 

 

「お久しぶりですね。ガイア、ダイナ」

 

我夢「ん?」

 

一誠「あ?」

 

 

後ろから声をかけられ、2人は振り返る。

そこには金髪縦ロールの少女がこちらを睨みながら立っていた。

 

 

我夢「あっ」

 

「そちらのお方はわかられたようですね」

 

我夢の思い出した反応を見て、金髪の少女は口角をあげる。

彼女はリアスの元婚約者ライザーの妹の『レイヴェル・フェニックス』だ。

こちらを睨んでいるのは、兄の婚約を解消されたからだろう。

彼女のことは婚約を解消させた当人である一誠も忘れるはずもないが……

 

 

一誠「あれ?お前誰だっけ?」

 

ズコッ

 

 

そう言って首を傾げる一誠に我夢とレイヴェルはずっこける。

この中で一番会話したはずなのに忘れているとは……。

そんな彼にレイヴェルは素早く立ち上がり、

 

 

レイヴェル「レイヴェルです!レイヴェル・フェニックス!あなたのおかげで、リアス様との婚約を解消されたライザー・フェニックスの妹ですっ!!」

 

一誠「あ…ああ!あの焼き鳥野郎のか!久しぶりじゃん!」

 

レイヴェル「もう、全く……これだから下級悪魔は教養が悪くて嫌になりますわ」

 

 

顔を真っ赤にして言うと、やっと思い出して相槌を打つ一誠にレイヴェルは呆れた様子で毒づく。

この時、我夢は一誠の人の名前や顔を忘れやすい欠点をどうにかしてほしいと切に願った。

 

 

一誠「ところでさ、お前の兄貴。元気してるか?」

 

レイヴェル「お兄さまなら、あなたのおかげですっかり自信を無くして部屋に引き籠ってしまいましたわ。よほど敗けたことと、リアス様をあなたに取られたことがショックだったみたいですわ」

 

一誠「ええ…マジか…」

 

 

ライザーの現状に2人は唖然とする。

傲慢を体現したようなイメージしか浮かばないあのライザーがだ。しかも、実の妹が言うのだから尚更だ。

 

 

我夢「そのっ、何かごめん」

 

一誠「何か悪いことしちまった気がするぜ」

 

 

その現状にどこか申し訳なくなった2人はレイヴェルに訊ねる。

怒鳴られるのを覚悟の上でだ。

しかし、レイヴェルは肩をすくめ、

 

 

レイヴェル「別に良いですわ。お兄さまは才能に溺れて天狗になっていたところもありますから、良い薬になったと思いますわ」

 

「「は…はは……」」

 

 

 

そうバッサリと吐き捨てる。予想外の発言に我夢と一誠は内心驚きつつも、苦笑いを浮かべる。

 

 

我夢「でも、君は一応ライザーの眷属なんだろ?(あるじ)の兄がそんな状態で…」

 

レイヴェル「それなら、現状トレードを済ませて、今はお母さまの『僧侶(ビショップ)』になりましたので問題ないですわ」

 

一誠「とれーど?」

 

 

聞き覚えがない単語に一誠は疑問で眉間にしわを寄せると、

 

 

我夢「『トレード』はレーティングゲームのルールの1つで、『(キング)』の悪魔が同じ種類の駒をお互いに交換することが出来るんだ」

 

一誠「へぇ~……そうなのか。それにしても我夢、よく知ってんな」

 

我夢「まあ、修行の合間にレーティングゲームや悪魔社会について自主勉したからね」

 

 

我夢の説明に一誠は納得しつつ、きつい修行の中でも勉強できるなんて器用だなと感嘆する。

思い返せば、1年前の夏も期末考査で学年1位をキープしつつ、2種類の工学系の国家資格を取得していたことがあった。

これが天才少年と言われる男の器用さである。

 

 

レイヴェル「と、ところでダイナ――」

 

一誠「なあ、そのダイナってのやめてくれよ。俺には『兵藤(ひょうどう) 一誠(いっせい)』って名前があるんだからさ。普通に『イッセー』って呼んでくれよ」

 

レイヴェル「わ、わかりましたわ。イッセー様」

 

一誠「“様”?俺達、同い年ぐらいだろ?堅苦しいから呼び捨てでいいって――」

 

レイヴェル「いいえ!これは大事なことなんですっ!」

 

 

一誠はそう言うが、レイヴェルにやや強引に言いくるめられる。

レイヴェルの様子に一誠は困惑し、

 

 

一誠「別に気軽に呼べばいいのになぁ~…」

 

「レイヴェル。旦那様のご友人がお呼びだ」

 

一誠「ん?あんたは…」

 

 

そう呟いていると、一誠の見知った女性が現れる。

半分だけ仮面をつけているのが特徴的なライザーの眷属の1人、『イザベラ』だ。

かつて、リアスとライザーの婚約をかけてのレーティングゲームで、一誠と死闘を繰り広げた相手である。

 

 

レイヴェル「わかりましたわ。イッセー様、今度お会いできたら、お茶でもいかがかしら?わ、わ、私でよろしければ、手製のケーキをご用意をしてあげてもよろしくてよ?いえ、絶対ですわ!」

 

 

一方的に一誠へ約束を告げると、レイヴェルはドレスの裾を優雅に上げて一礼すると、早歩きで父親の友人の元へ去っていった。

一誠と我夢はポカンとしながらレイヴェルを見届けていると、イザベラが一誠に話しかける。

 

 

イザベラ「やあ、兵藤 一誠」

 

一誠「イザベラ…だっけ?久しぶりだな」

 

 

一誠とイザベラは挨拶を交わす。

すると、イザベラは不思議そうな表情を浮かべる。

 

 

イザベラ「おや?私のことは覚えているのか?」

 

一誠「そりゃあ、あんだけやりあえば嫌でも覚えてるぞ。あんた、中々強かったからな」

 

イザベラ「ははっ、お褒め頂いて光栄だよ。聞いたところによると、また強くなったそうじゃないか。もう、私が敵う次元じゃないな」

 

一誠「そんなことないだろ」

 

 

自嘲気味に話すイザベラに一誠は否定する。

ウルトラマンと1人の悪魔の力は天と地ほどの差があるのは明確だが、それを自分が鼻にかけているような気がしたからだ。

しかし、イザベラはふふっと笑い

 

 

イザベラ「いや、良いんだ。今の君と戦っても敵わないのは私自身わかっている。私は誇りに思っているんだ、君と真剣に戦えたことに。そうやって否定されると、余計キズつくんだ」

 

一誠「…っ、わかった」

 

 

そう言われた一誠はさすがに折れ、この話題にツッコむのをやめた。

少し気まずくなったので、話題を変えるべく、一誠は気になることをイザベラに訊ねる。

 

 

一誠「ところでさ、レイヴェルのやつ。いっつもあんな調子なのか?」

 

イザベラ「あぁ、素直になれないところがあってね…つい強く言ってしまうことがあるのさ。あんな風にツンツンしているが本当は君と話せて嬉しいのさ」

 

一誠「え?そうなのか?」

 

 

一誠は怪訝そうにするが、イザベラは頷き

 

 

イザベラ「そうだ。実は婚約パーティーでの一戦以来、レイヴェルは君の話ばかりしているよ。あの時の戦いがとても好印象みたいだったようだ」

 

「「へぇ~」」

 

 

そう聞いた一誠は我夢はそうなんだと呟く。

あの時の一誠はリアスと取り返すのに必死で周りをよく見てなかったが、不満を持つ人もいれば、案外好印象を抱く人もいるんだなとつくづく思った。

 

 

イザベラ「まだ話したいことがあるが、今日はレイヴェルの付き添いで来てるんでね。じゃあ、私はこれで失礼するよ」

 

一誠「おう、また会おうぜ」

 

 

一誠とイザベラは互いに別れの言葉を告げると、イザベラはそのまま手を振ってレイヴェルが向かった方へ去っていった。

 

 

我夢「相変わらず思うんだけど、イッセーって交友関係築くのが上手いよね」

 

一誠「そうか?俺は普通にやってんだけどな~」

 

 

レイヴェルとイザベラとの会話が終わった2人がそんな会話をしていると、ギャスパーとゼノヴィアがやってきて

 

 

ギャスパー「…そ、そうですよ。我夢先輩の言う通り、上手いですよ。だから、いつも話しかけてくる人が多いじゃないですか」

 

ゼノヴィア「うむ。私もそう思うぞ」

 

 

そう褒める。

こう言えるのも、彼らが一誠がコミュニケーションに長けていることは普段から見てわかるからだ。

それを聞いた一誠は

 

 

一誠「そ、そうかなぁ~?いやぁ~~…参っちゃうな!やっぱり俺は何をやってもトップクラスって訳か!あはははは!!」

 

アーシア「流石です!イッセーさん!」

 

我夢「また調子に乗っちゃって……」

 

 

鼻を伸ばして愉快に笑う彼を我夢は半目で見ながら呟く。

しかし、この和やかな雰囲気に我夢も心の中では楽しんでいた。

このまま何事もなくパーティーが終わるだろうと思った矢先、

 

 

我夢「?」

 

 

我夢の視界に急ぎ足でどこかへ向かっている小猫が映った。

その顔はどこか必死で、何かに焦っている様子だ。

 

 

我夢「ごめん、みんな。ちょっと用事が出来た」

 

ギャスパー「え、どうしたんですか?もうすぐで魔王様の挨拶が始まりますよ?」

 

我夢「ごめん、どうしても急ぎの用事なんだ!すぐに戻ってくるから待ってて!」

 

 

我夢は早口で皆に伝えると、駆け足で彼女の後を追い始める。

すると、

 

 

一誠「おい、どうしたんだよ?」

 

我夢「イッセー…!」

 

 

心配になって後をつけてきたのか、頭に疑問符を浮かべた一誠が隣にいた。

 

 

我夢「小猫が血相を変えて、どこかに行こうとしてるんだ。何か胸騒ぎがしてね」

 

 

我夢は走るスピードを落とさず、隣で走る一誠に事情を話す。

すると、一誠は我夢の肩をポンと叩き

 

 

一誠「…わかった!俺も一緒に行く!我夢がそう思うんなら間違いないぜ」

 

我夢「ありがとう!助かるよ」

 

 

そう告げると、ここぞという時に見せる親友の頼もしさに我夢は感動する。

そんな会話をしつつ、改めて2人は小猫の後を追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ホテル外にある噴水の広場に出た我夢と一誠はその後、バッタリ出会ったリアスも加えて、行方がわからなくなった小猫の捜索を始めていた。

 

 

リアス「帰ってきたわね」

 

 

しばらく経つと、遠くの空からリアスの使い魔のコウモリが飛んでくる。

リアスは指に停まらせたコウモリに耳を傾け、何かを聞く。

 

 

リアス「2人共。小猫はホテル周辺の森に行ったそうよ」

 

一誠「そうとわかったら――!」

 

我夢「――すぐ行きましょう!」

 

 

3人は頷くと、リアスを先頭に近くの森の中へ駆け足で入っていく。

パーティー会場から聞こえる話し声が段々遠ざかり、夜の闇で暗い中、道に生えている木々の間を駆け抜けていく。

 

 

リアス「待って、誰かいる」

 

 

しばらく走ると、リアスは足を止め、小声で後ろにいる2人に待つように声をかける。

2人は足を止めて、耳を澄ませると、近くから足音が聞こえる。

 

3人は近くの木陰に身を隠しながら少しだけ顔を覗かせる。

彼らの視線の先には、小猫が切羽詰まった様子でキョロキョロと辺りを見渡していた。

 

 

「久しぶりね」

 

小猫「!」

 

 

突然、話しかける女性の声が聞こえた。

近くの木を見上げる小猫に合わせて我夢達もそちらへ視線を向ける。

そこには、黒い着物を胸元まではだけさせ、長い黒髪に猫耳。二又に分かれた尻尾を持っている妖艶な雰囲気を漂わせる女性が木の上から小猫を見下ろしていた。

 

 

小猫「っ、あなたは…!『黒歌(くろか)』姉さま!」

 

 

彼女の姿を見て、小猫は驚愕する。

それを聞いた我夢は黒歌と小猫が何となく似ているのは姉妹だからと納得する。

 

だが、小猫は余程彼女を恐れているのか、身体がびくびくと震えている。

そんな小猫に黒歌は

 

 

黒歌「にゃはは♪そんな怯えなくてもいいじゃない、『白音(しろね)』。お姉ちゃんが会いにきたのよ?」

 

我夢「(白音?……ということはこれが小猫の本名?)」

 

 

そう笑いながら話すが、小猫の顔は以前暗いままだ。

我夢は彼女が言う『白音』というのが、小猫の本名であることを悟った。

 

そう思っていると、1匹の黒猫が黒歌の足下にすり寄る。

黒歌が頭を撫でると、黒猫は気持ち良さそうに喉を鳴らす。

 

 

黒歌「ちょっとこの子を会場に紛れ込ましただけで、すぐ気付いてここまで来てくれるなんて、お姉ちゃん感動しちゃうにゃー」

 

 

陽気そうに笑みを浮かべる黒歌に小猫は込み上げる恐怖心をおさえて、訊ねる。

 

 

小猫「……姉さま。これはどういうことですか?」

 

黒歌「どうもこうも、あなたを迎えにきたのよ。私達が入っている組織、『禍の団(カオス・ブリゲード)』の一員としてね♪」

 

小猫「っ!?」

 

『!?』

 

黒歌「どう?」

 

 

黒歌の衝撃発言に小猫のみならず、隠れていた我夢達も出そうな声を圧し殺して驚く。

その言い方から、黒歌は今、テロリスト集団に所属していることがはっきりとわかった。

彼女の誘いに小猫は

 

 

小猫「嫌ですっ!いくら姉さまの頼みだからといえ、みんなを裏切りたくないです!」

 

 

 

当然はっきりと断る。

自分を育ててくれたリアスを初めとした信頼してくれる仲間達をそう易々と裏切る訳がない。

しかし、黒歌はその返答が想定内だったのか妖しげな笑みを浮かべ、こう訊ねる。

 

 

黒歌「白音。じゃあ、どうして()()()()()()()()()()()()()()のにゃん?」

 

小猫「……っ!」

 

 

そう訊ねられた小猫は目を見開き、先ほどまであった“ついて行かない”という決心が揺らぎ始める。

立て続けに黒歌は語りかけ続け

 

 

黒歌「白音。あの日、あなたを置き去りにしたことは悪かったにゃん。でも、グレモリー眷属になってから(あるじ)の役に立てたことがある?この黒猫から聞いた話によると、随分と迷惑をかけたらしいじゃないかにゃ?しかも、仲良しの男の子を殴ったそうじゃない?」

 

小猫「……っ、そ、それは…」

 

黒歌「嘘じゃないでしょ?あんなに心配してくれていたのに仇で返すなんて………その男の子もさぞ憎たらしくてしょうがないだろうにゃー」

 

我夢「……」

 

 

小猫が困っていること、ありもしないことをわざと誇張して話す黒歌に我夢は怒りで拳を握りしめる。

当然だが、我夢は小猫のことを全く恨んでない。

 

 

小猫「あ…あぁ…」

 

 

しかし、精神的に追い詰められている小猫には効果覿面(てきめん)で、次第に動揺し始める。

黒歌はとどめにこう告げる。

 

 

黒歌「グレモリーにとって、あなたはね……()()()()()()()()()()なのよ。つまり、()()()()()ってことよ」

 

小猫「っ!?」

 

 

そのはっきりと言われた小猫は目を見開き、体を震わせる。

小猫は思った。皆は信頼してくれてはいるが、実は声を出していないだけで、迷惑だと思っているんじゃないかと…。

 

動揺している小猫に黒歌はもう一度誘いかける。

 

 

黒歌「どうかにゃ、白音?お姉ちゃんと一緒にくれば、あなたは今以上に生き生きとした生活ができるにゃん」

 

小猫「……わ、私は……」

 

 

グレモリー眷属を信じたい自分とそうじゃない自分。

その板挟みに小猫は返答を渋っていると、

 

 

美猴「黒歌ぁ~~、いつまでそいつに構ってるんだ?早くしねぇと魔王達にばれちまうぜ~」

 

 

黒歌の隣からヴァーリの仲間である初代孫悟空の末裔、美猴が早くしろと言わんばかりの態度で現れる。

 

 

黒歌「ちょっと待ってにゃー、あと少しなんだから♪白音は何が何でも連れて帰るから」

 

美猴「おいおい、大丈夫なのか?勝手に連れ帰ったら、ヴァーリ、カンカンになるぜ?」

 

黒歌「私と同じ力が流れていると説明すれば、ヴァーリやオーフィスも納得するにゃん♪戦力増加にもなるしね♪」

 

 

黒歌はそう言うが、美猴はううむ…と声を唸らせる。

どうも納得がいかない様子だ。

 

すると、美猴は何か名案が思い付いたのか手をポンと叩くと、

 

 

美猴「んじゃ、コソコソと俺達の会話を盗み聞きしている奴らの意見を聞いてみるか!」

 

『っ!?』

 

 

我夢達が隠れている木陰へ顔を向けてそう提案する。

我夢達は自分達がいるのがバレているのに驚いていると、黒歌もそれに便乗し、

 

 

黒歌「そうね。まずはお仲間さんの意見を聞いてみるのもいいかもにゃ。出てくるにゃ。仙術の心得を持っている私達には気の流れでどう息を潜めようがわかるにゃん♪」

 

 

美猴と同じ方角に向かって話しかける。

これ以上、隠れても無駄と判断した我夢達は木陰から姿を現す。

 

 

小猫「…っ!?」

 

 

後をつけられていた事を知らなかった小猫は驚く。

更に、2週間前に自分と喧嘩した我夢がいるから尚更だ。

そんな中、我夢は美猴に問いかける。

 

 

我夢「どうしてここにいるんだ?小猫を連れて帰るのが本来の目的じゃないだろ?何かテロでも起こそうとしているのか?」

 

美猴「いんや、俺っち達はただ冥界で待機するようにだけ言われただけでねぃ。今日はテロを起こす気はないさ。ただ、黒歌がどうしても悪魔のパーティーを見学した言うから待ってたけど、中々帰ってこねぇからこうして迎えにきただけだ」

 

『……』

 

 

その言葉に我夢達は半信半疑の様子で美猴達を睨み付ける。

すると、黒歌がちょんちょんと美猴の肩をつついて訊ねる。

 

 

黒歌「ねぇ、どっちがヴァーリを倒したウルトラマンなの?」

 

美猴「ああ、左の茶髪の兄ちゃんがそうだぜぃ」

 

黒歌「へぇ~~…」

 

 

そう聞いた黒歌は興味深そうに声をもらしながら、一誠をまじまじと見つめる。

 

 

一誠「…な、何だよ?」

 

黒歌「んにゃ、バカそうだなって♪」

 

一誠「はぁっ!?誰がバカだと、こるらぁっ!!!」

 

リアス「イッセー落ち着きなさい」

 

 

そう言ってケラケラ笑う黒歌にカチンときた一誠は飛びかかろうとするが、リアスに止められる。

そんな様子を見てひとしきり笑った黒歌は次に我夢へ顔を向ける。

 

 

黒歌「…ということは、坊やがウルトラマンガイアなのね?へぇ~~…意外と可愛い顔してる。タイプかもしれないにゃん♪」

 

我夢「黒歌。君はどうしても小猫を連れていくのか?」

 

 

黒歌の言葉を無視して、我夢はそう訊くと、黒歌はふっと笑みを浮かべ

 

 

黒歌「当然でしょ?どこにも居場所がない妹を助けるのは姉として当たり前でしょ?あなた達もいなくなった方が楽じゃないかにゃ?」

 

小猫「…っ!」

 

 

黒歌の言葉に小猫は顔を俯かせる。

自分が居なくなれば、みんな良いんじゃないかと…。

 

だが、さもそれが最善だと主張する黒歌にリアスは反論する。

 

 

リアス「何言ってるのかしら?この子は私の眷属、『塔城(とうじょう) 小猫(こねこ)』よ。あなたのせいで苦しみ、悲しんだこの子にたくさん楽しいものを見せるって約束したの。だから、この子は渡さないわ」

 

黒歌「んにゃ?でも、現にその子は仲間に手をだしたにゃ。そんな子をいつまでも隅に置いておくの?私なら正しく導ける存在に手渡すのが良いと思うけどね」

 

 

とぼけた口調で話す黒歌にリアスは

 

 

リアス「いいえ、渡さないわ。彼女は私にとっての家族の一員なの。家族ならずっと見守るわ、いつか自分で答えを見つける日を。たとえ、それがどんだけ時間が流れたとしても……。そんな当然のことがわからない時点で小猫の姉を名乗る資格はないわっ!!」

 

一誠「そうだ、そうだ!お前らなんかに渡してたまるかよっ!!」

 

 

一誠も同意見だと声を荒げる。

我夢も声には出してないが気持ちは同じだ。

 

そんな彼らに黒歌はうざったそうな顔を浮かべ

 

 

黒歌「あぁ~…もういい。殺しちゃお」

 

『!』

 

 

そう低い声で呟いた瞬間、辺りの空気が一変した。

まるで、倉庫に閉じこめられた様な感覚である。

 

 

我夢「これは一体……」

 

黒歌「この森一帯の空間を結界を覆って遮断したにゃ♪ここでド派手なことをやっても外には漏れないし、外からも侵入されることもない」

 

一誠「つまり、俺達は今、大きな鳥籠にいるってことかよ…」

 

黒歌「そ♪だから私達にここで安心して殺されるにゃん♪」

 

 

ニコニコと黒い笑みを浮かべる黒歌に我夢達は睨み付ける。

相手は2人、こちらは4人。数はこちらが有利だが、相手はテロリスト、油断できない。

 

睨み付け合う中、今まさに、戦いを始めようとした時―――

 

 

タンニーン「リアス嬢と兵藤 一誠、高山 我夢がこの森に行ったと報告を受けて来てみれば、まさか結界を張ってるとはな…」

 

一誠「タンニーンのおっさん!」

 

 

上空に大きな影が通り、渋い声が聞こえたかと思うと、そこにはタンニーンが颯爽と現れた。

その登場に一誠は嬉しそうに声をあげる。

 

タンニーンは上空からキョロキョロと地上を見下ろすと、黒歌達に目を止める。

 

 

タンニーン「それだけなく、このパーティーにふさわしくない来客がいるようだな」

 

 

そう目を細めて呟くと、指をポキポキ…と鳴らし、臨戦体制を始める。

そんな時、タンニーンの登場に喜んだのは一誠だけでない。

 

 

美猴「おうおうおう!ありゃあ、元龍王のタンニーンじゃないかぃ!ウルトラマンに元龍王……こりゃあ、もう大問題だ!黒歌!やるしかねぇって!」

 

黒歌「嬉しそうね、お猿さん。いいわ、纏めて片付けてやりましょう」

 

美猴「OK!んじゃあ、俺っちはさっそくタンニーンと戦わせてもらうぜ!筋斗雲っ!」

 

 

黒歌の了承を得た美猴はそう叫ぶと、どこかから現れた金色の雲、『筋斗雲』の上に乗り、上空にいるタンニーン向かって上昇していく。

 

美猴は手元に長い棍を取り出すと、先の方をタンニーンに向け

 

 

美猴「伸びろっ、如意棒っ!」

 

 

そう叫ぶと、棍はそのままタンニーン目掛けて伸びていく。

 

 

タンニーン「ふんっ!」

 

 

しかし、タンニーンはその攻撃をその巨体から想像できない速度で回避すると、お返しに大きく開いた口から火炎を放つ。

 

 

美猴「うおっと!危ねぃ」

 

 

美猴は筋斗雲を巧みに操って間一髪横へ回避すると、不敵な笑みを浮かべる。

 

 

美猴「ははっ!やっぱり面白いな!さすが元龍王だぜぃ!もっと全力出してきな!」

 

タンニーン「フン!そう言って後で後悔するなよ、猿」

 

美猴「へへっ、とことんやりあおうぜぃ!」

 

 

そう会話した後、美猴とタンニーンは壮絶な空中戦を始める。

どちらも素早く動いているせいで、目で追うのもやっとである。

 

 

 

 

 

 

 

その間、地上では黒歌が吐いた霧が我夢達を取り囲むように立ち込めている。

視界が遮られる。ただ、それだけならいいのだが…

 

 

リアス「うっ…」

 

小猫「……あぁっ」

 

一誠「部長、小猫ちゃん!?……ぐっ!?」

 

我夢「これ…は……」

 

 

突然、4人は苦痛の表情を浮かべてその場で膝をつく。

顔は真っ青で、息も荒くなっており、体も思うように動けない。

その様子を黒歌はクスクスと嘲笑う。

 

 

黒歌「あらら?力が強いから、ウルトラマンには効かないと思ったけど、変身前なら効くみたいね」

 

我夢「何を……した……?」

 

黒歌「この霧はね、悪魔や妖怪だけに効く猛毒にゃん。毒を薄くしてるから全身を回るのは時間がかかるけど、じわじわと殺すには充分にゃん♪」

 

一誠「て……めえ……!」

 

リアス「…黒…歌っ!!」

 

黒歌「にゃはは!恨むんなら、白音をさっさと明け渡さない自分達の判断を恨むにゃ♪さて…」

 

 

黒歌は地面に顔を付けながらこちらを睨み付ける一誠とリアスを嘲笑うと、同じように苦しんでいる小猫へ顔を向ける。

 

 

黒歌「白音♪お友達が苦しんでいるわよ?助けたかったら、お姉ちゃんの元へくるにゃん♪」

 

小猫「…っ」

 

一誠「い……行く…な!小猫ちゃん!」

 

 

一誠は苦しみながらも小猫に黒歌の誘いに無視するように呼びかけるが、小猫は

 

 

小猫「……わかりました。私が行けば、助けてくれるんですね?」

 

『!?』

 

黒歌「ふふっ、ええ…」

 

 

ゆっくりと体を起こしてその誘いを受け取ると、黒歌はほくそ笑む。

思わぬ判断に驚く我夢達が驚く中、小猫はふらふらとした足取りで歩き始める。

 

 

リアス「小猫!?何言ってるの!あなたは私の眷属なのよ!そんな勝手なこと許さないわ!」

 

一誠「そうだ!俺達は仲間なんだ!こんな毒なんて何てことはねぇ!だから、姉ちゃんのところへ行くなっ!!」

 

 

リアスと一誠は必死の形相で彼女を呼び止めようとするが、小猫は首を横に振る。

 

 

小猫「…すみません。部長、イッセー先輩。いくら3人がかりでも、姉さまの力には及ばないです………姉さまの強さは一番知っているからです。……毒に侵されている体で太刀打ちできるとは到底思えません………」

 

一誠「…だ、だからって……」

 

小猫「……最後くらい皆さんのお役に立ちたいです。私が行けば、全て解決するんです」

 

 

我夢達へそう告げると、小猫はゆっくり…ゆっくりと姉のもとへ歩を進める。

 

その道中、小猫はとあることを思った。

 

――今まで頑張ってきたが、所詮自分は弱いまま……皆の足かせになっている。自分さえいなければ、皆は救われるんだと……。

 

姉のもとへ向かえば、もう2度と仲間には会えないだろう。孤独で辛い人生の歩んでいた自分に仲間がくれた今までの思い出が走馬灯のように駆け巡る。

 

自分に家族の同じような愛情を注いでくれたリアス。

 

おしとやかな雰囲気で安心させてくれる朱乃。

 

博識でいつも明るく接してくれる木場。

 

ビビりで頼りないが、いつも優しいギャスパー。

 

優しく、いつも心を和ませてくれるアーシア。

 

ちょっぴりバカだけど、いつも楽しませてくれる一誠。

 

抜けてるところがあるけど頼りがいがあるゼノヴィア。

 

そして――

 

いつも穏やかで、心優しく。自分が何者であろうと怖がらず、信じてくれる我夢……。

 

喧嘩したあの日。小猫はつい殴ってしまったこと、心にもないことを言ってしまったことを後悔しており、昨日謝ろうとした。

しかし、自分が彼を傷つけたという罪悪感のせいで踏み込めず、声に出すことが出来なかった。

 

 

小猫「(……我夢先輩)」

 

 

今からもう仲間とは会えなくなるが、我夢に謝れなかったこと。それだけが心残りだった。

だが、自分が一緒に居ても意味はない。むしろ邪魔な存在である。

小猫はそう心の中で言い聞かせると、重たい体を必死に動かし、歩くペースを早める。

 

 

黒歌「ふふっ♪そうよ、そのままお姉ちゃんのところへ来なさい…」

 

 

黒歌は最早、小猫は自分が手にしたとばかりにニヤリと妖しげな笑みを浮かべる。

黒歌までの距離があと10歩をきりそうな時、

 

 

我夢「小猫……!」

 

小猫「…っ!先輩………」

 

 

いつの間にか後ろにいた我夢に肩を掴まれ、小猫は思わず足を止め、振り返る。

どうやら無理に体を動かしてついてきたらしい。

我夢は血色が悪い顔をあげ、小猫に訊ねる。

 

 

我夢「小猫……このまま黒歌についていくのか…?」

 

小猫「……はい」

 

我夢「そうか………君が本当にそう望むんなら、僕は止めない。君の人生は君が決めるんだからね……」

 

 

小猫は内心驚いていた。てっきり他の2人同様に止めるものかと思ったからだ。

我夢は「だけど」と付け加えると、

 

 

我夢「…その前に言っておきたいことがあるんだ……。小猫、僕は君に対して叱ったことがなかったね。正直、先輩としてしっかり気にかけてやれてたか不安だったからさ」

 

小猫「…」

 

我夢「だから、言わせてもらう……」

 

 

そう言うと、我夢はごほごほと咳き込んでから真剣な眼差しで小猫を見据えると

 

 

我夢「本当は寂しいんだろ?部長達と離れることが。……いつも無表情で口数が少ないから考えてることがわからない時もある。けど……寂しい時ぐらい、黙ってないで、はっきり寂しいって言うんだ!

 

小猫「…っ!」

 

 

説教を受けた小猫は目を見開くと、涙をポロポロを流し始める。

それは彼女が必死に圧し殺そうとした“寂しさ”という感情が溢れた証拠だ。

我夢は言葉を続ける。

 

 

我夢「…寂しい時に寂しいって言えない人は、誰も信用しない、痛みを知らない最低な人になってしまうぞ。君が真に仲間を思ってるならね…」

 

 

小猫は溢れ出る涙を手で拭いながら、うんうんと頷く。

 

 

我夢「小猫、君はどうしたいんだ……?」

 

 

我夢は目眩がし、重たい体ながら必死に立つ姿勢を保ちながら問いかける。

彼女は本当は黒歌についてきたくないことがこの様子でわかるが、我夢はあえて思いを口に出させることで、はっきりと気持ちを表せさせたいのだ。

 

小猫は嗚咽混じりの声で心の底から声を発する。

 

 

小猫「……私は、私はみんなと別れるのは嫌です…!もっとみんなと笑いたい!怒りたい!悲しみたい!!…もっと、もっとお役に立ちたい!だから……私は行きたくありませんっ!!」

 

 

普段無表情の小猫が初めて感情的な声で意思を表したのだ。

これでやっと動ける。我夢はそっと優しく小猫の頭を撫でると、彼女の前に出る。

 

 

我夢「黒歌!小猫は君と一緒に行きたくないって言っている!僕達は小猫を何が何でも守り抜く!」

 

 

我夢は黒歌に向かって言い放つ。これは自分達が勝手に行動したものでなく、小猫が望んだ行動だ。

だが、黒歌は一旦キョトンとすると、クスクスと笑い始める。

 

 

黒歌「けど、毒はもうほぼ全身に回っているのよ?そんな体で私の猛攻から守り抜けるかしら?」

 

 

確かに毒は体のほとんどを蝕んでおり、今の我夢達は動けるのがやっとだ。

けれど、我夢は不敵な笑みを浮かべ

 

 

我夢「それなら問題ない。イッセー!」

 

一誠「…っ!おう!!」

 

 

 

一誠の名を呼ぶ。彼は我夢が思ってることをすぐに察すると、懐から取り出したリーフラッシャーを前方へ突きだす。

そして、リーフラッシャーのクリスタル部分が展開すると、そこから溢れる光に包まれ、一誠は等身大のウルトラマンダイナに変身した。

 

 

[ティヨン]

 

 

しかし、毒を受けている状態なので、胸元にあるライフゲージはいつもの青色ではなく、危険を知らせる赤色だ。

 

 

ダイナ「ヴン"ン"ンンン~~~~……ハッ!」

 

 

だが、ダイナはそれに焦らず、胸元の前で両腕をクロスすると、額のダイナクリスタルから溢れる青い光に包まれ、ミラクルタイプへとタイプチェンジした。

 

 

ダイナ「シュワッ!」

 

 

ダイナはすぐさま地上を飛び立つと、真っ直ぐどこかに向かって行く。

ダイナが向かっているのは、夜空を天から照らす月である。

 

月の明かりが全身を照らす程、近付いたダイナは両腕を広げる。

すると、月から光が放射され、ダイナに降り注ぎ、みるみる体の毒が消えて行く。

 

ダイナは新しく発見したミラクルタイプの超能力の1つ、『ネイチャーコントロール』を用いて、月の浄化効果を高めたのだ。

その証拠にライフゲージが平常を表す青色になっている。

 

 

ダイナ「ハッ!」

 

 

解毒したダイナはその場でクルリと回れ右すると、月から得たエネルギーを両手から地上へいる我夢達へ放つ。

すると、我夢達を囲んでいる毒霧は一瞬で霧散し、我夢達の顔色が良くなっていく。

 

 

黒歌「なっ……!?」

 

 

当然、黒歌はこんなにあっさりと解毒されたことに驚く。

この場では自分しか解毒できないから尚更である。

 

そんな中、我夢は懐からエスプレンダーを取り出すと、あることを問いかける。

 

 

我夢「黒歌。君は本当に妹を愛しているのか?」

 

黒歌「…っ!」

 

 

そう問いかけれた黒歌は驚いた顔を浮かべる。

相手はテロリストとはいえ、黒歌は小猫の姉だ。

元・主の悪魔を殺したのも何かしらの理由があるかもしれない。

そんなに戦力増加したいのなら、力づくで拐うチャンスは何度もあったはずだ。考えすぎかもしれないが、彼女はどうも力に溺れたようには我夢には見えなかったのだ。

 

黒歌は一瞬こそ驚いた表情だったが、すぐに元の妖しげな笑みを浮かべた表情へと変わると

 

 

黒歌「さぁね?でも、そんなことどうでもいいじゃない?あなた、今すぐここで死ぬから」

 

我夢「いいや、僕は死なない……。小猫を絶対に守ってみせる!」

 

 

とぼけた口調で話す黒歌に我夢はそう返答して自分を奮い立たせると、エスプレンダーを前へ突きだし、光の巨人の名を叫ぶ。

 

 

我夢「ガイアァァァーーーーー!!!

 

 

かけ声に呼応して、エスプレンダーから赤く眩しい光が放たれると、我夢は等身大のウルトラマンガイアへと変身した。

 

 

ガイア「デュアッ!!」

 

黒歌「よっと」

 

 

ガイアはすぐさま黒歌に向かって『フォトンエッジ』を放つ。

黒歌はひらりと回避し、『フォトンエッジ』は虚空へと飛んでいく。

地上へ降り立った黒歌はガイアを嘲笑う。

 

 

黒歌「あははっ!そんな鈍い攻撃が当たると思ったの?」

 

ガイア「それはどうかな?」

 

黒歌「えっ…?」

 

ドガァァァーーーーーーン!

 

 

ガイアの返答に黒歌は疑問に思った矢先、ものすごい爆発音が後方から聞こえる。

黒歌は爆発音が聞こえた方角を振り向くと、それは先ほど避けた『フォトンエッジ』が黒歌が張った結界に衝突した音だった。

 

当たった箇所は貫通しており、結界はみるみるひびが入っていくと、一瞬で霧散した。

 

 

黒歌「はっ、なるほどね!最初から狙いは私じゃなくて、結界だったわけね!」

 

ガイア「そうだ。隙が大きい攻撃がくれば、絶対避けるだろうとよんだからだ」

 

 

淡々と解説するガイアに黒歌は不気味に笑うと

 

 

黒歌「あはは!面白いじゃないっ!私を欺いたことを後悔させてやるわっ!!」

 

ガイア「デュアッ!」

 

 

黒歌は大気が震える程のオーラを全身に纏い、ガイアは軽く開いた右手を前、左の握り拳を顔の横へ構えると、両者は地面を駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、タンニーンは美猴と空中戦を繰り広げていた。

戦況はお互い一歩も譲らない状況で、中々決め手が繰り出せない状況だ。

 

タンニーンは巨木といわんばかりの豪腕から拳を繰り出すが、ギリギリのところで美猴に避けられる。

 

 

タンニーン「ちっ!ちょこざいな猿め……!」

 

美猴「へへっ!どうしたぁ、こんな程度じゃねぇだろぃ?」

 

 

いじわる気な表情を浮かべる美猴にタンニーンはキッと歯を噛み締める。

タンニーンも巨体に似合わず素早いが、対する美猴も素早く、しかも的が小さいせいで中々攻撃が当てずらいのだ。

と、そんなところに

 

 

ダイナ「フッ!」

 

タンニーン「っ!兵藤 一誠!」

 

美猴「待ってたぜぃ!」

 

 

タンニーンの目の前にテレポートしたダイナが颯爽と現れる。

相手が増えて不利のはずなのに、美猴は嬉しそうに声をあげているが、そんな彼を尻目にダイナは振り向き、

 

 

ダイナ「タンニーンのおっさん、こいつは俺にやらせてくれ」

 

タンニーン「…わかった」

 

 

一言そう告げると、タンニーンは察したのか、彼らから離れていく。

ダイナは再び美猴へ顔を向けると、彼はニッと不敵な笑みを浮かべる。

 

 

美猴「ふぅ~…いいねいいね!お次はウルトラマンダイナが相手ってか!今日はツイているぜぃ!」

 

ダイナ「うるせぇよ。黙ってかかってこい」

 

美猴「へぇ、今回は真面目モードって訳かい!んなら、いくぜっ!」

 

 

美猴は筋斗雲で接近し、手元に持つ如意棒を横へ振り回すが、ダイナは素早く上へ回避する。

美猴は避けられるのを見越していたのか、すぐに如意棒を持ちかえ、先端をダイナへ向ける。

 

 

美猴「伸びろっ、如意棒っ!!」

 

ダイナ「グッ!」

 

 

突然、迫ってきた棍の先端は真っ直ぐダイナへ向かうが、それを紙一重で回避する。

 

 

美猴「おらおらおらっ!」

 

ダイナ「ハッ!ハッ!」

 

 

美猴は攻撃の手を緩めず、伸縮自在の如意棒で素早い連続突きを繰り出す。

ダイナは上下左右に避けていたが

 

 

美猴「()()()()()、如意棒!」

 

ダイナ「グアッ!?」

 

 

美猴のそう一言呟いた瞬間、如意棒は途端に人を覆うぐらい面積になると、ダイナは大きく後方に突き飛ばされる。

 

吹き飛ばされたダイナは驚きつつも、何とか空中で立て直す。

美猴は元の大きさに戻した如意棒を右手でくるくると回し

 

 

美猴「その様子だと驚いているようだな。俺っちの持つ如意棒は伸びるだけでなく、大きくすることも出来るんだぜ」

 

ダイナ「デェアッ!」

 

 

そう言って挑発するような笑みを浮かべる。

ダイナは如意棒にはまだ隠された能力があることを危険視しつつも、猛スピードで飛び出す。

 

 

美猴「伸びろ、如意棒!」

 

 

美猴は如意棒をダイナに向かって伸ばす。

伸びた棍の先端はダイナへ襲いかかるが

 

 

スカッ

 

美猴「なっ!?」

 

 

当たる直前にダイナはフッと姿を消し、如意棒は真っ直ぐ虚空へ伸びていく。

美猴は思わず驚愕するが、すぐに冷静になると、周囲の気を探り始める。

 

 

美猴「そこだっ!」

 

 

ダイナの気を探知した美猴は背後の虚空に向けて如意棒を振り回す。

その瞬間、テレポートしたダイナが現れ、美猴は当たったと口角をあげるが

 

 

スカッ

 

美猴「嘘だろっ!?」

 

 

またもやフッと姿を消し、その攻撃は虚しく空を切っただけだ。

美猴は再び気を探ろうとするが

 

 

ダイナ「デェアッ!!」

 

美猴「うごっ!?」

 

 

左横に現れたダイナの右ストレートが左の頬に炸裂。

ダイナは続け様に脳天にチョップ、両脇腹を右、左の順番で蹴ると、深く腰を落とし

 

 

ダイナ「ダアッ!!」

 

美猴「ぐはぁっ!!!」

 

 

一瞬だけ光速状態になると、その勢いを利用した掌底を美猴の腹へ繰り出す。

その一撃に美猴は苦悶の表情を浮かべて、血反吐を吐く。

何せミラクルタイプは光速マッハ88万で移動できる。そこから繰り出される一撃は誰も耐えられないだろう。

 

その衝撃で美猴は筋斗雲から落ち、体がくの字の状態で後方へ吹き飛ばされる。

 

ダイナはまたもや光速になって飛行すると、一瞬で美猴が飛んでくる位置に回り込み、

 

 

ダイナ「デェアッ!」

 

美猴「うがっ!!!」

 

ドォォォーーーーーン!!

 

 

両手を握って拳を作ると、向かってきた美猴へ振り下ろし、美猴は爆音と共に土煙をたてながら地上へ墜落していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、地上でも激しい攻防が続いていた。

 

 

ガイア「デヤッ!」

 

黒歌「ふっ!」

 

 

ガイアの放つガイアスラッシュと黒歌が放つ魔力弾が空中でぶつかって、相殺される。

その隙にガイアは距離を詰めようと駆け出すが、

 

 

ガクンッ!

 

ガイア「グアッ!?」

 

 

黒歌まであと一歩のところで足下がすくわれ、腰の高さまで地面に埋まる。

ガイアは腰元を見ると、自分の周りの地面が泥沼の様にぬかるんでいた。

 

 

 

黒歌「にゃはは♪仙術で地面を泥沼へ変えたにゃ♪」

 

ガイア「グワァァ~~ッ!」

 

 

黒歌の説明に「そんなことが出来るのか!?」とガイアは驚愕しながらも何とか抜け出そうともがくが、逆に沈んでいくばかりだ。

その間に黒歌は間合いをとって、大きな魔力の塊を作り出し

 

 

黒歌「死ね」

 

ガイア「ッ!」

 

 

そのまま地面に埋まっているガイア目掛けて放つ。この状況だと確実に逃れることが出来ない。

だが、

 

 

ガイア「デヤッ!」

 

黒歌「っ!」

 

 

ガイアは力を込めて全身を赤く発光させ、何とか上空へ飛翔して避けると、先程までいた場所は大爆発が起きる。

まさか抜け出せると思わなかったのか、黒歌の顔は動揺の色を見せる。

 

ガイアはすぐさま地上へ降り立つと、両腕を斜めに広げる。

すると両腕に冷気が集まっていき…

 

 

ガイア「デュアッ!」

 

黒歌「ちっ!」

 

 

そのまま両腕を突きだし、冷凍光線『ガイアブリザード』を放つが、黒歌は動揺したせいで反応が遅れるも間一髪側転で避ける。

 

 

黒歌「くらえっ!」

 

 

黒歌は両手から何発も魔力弾を連射する。

ガイアは冷静に両腕を駆使していなしたり、叩き落としながら、走って間合いを詰めていく。

 

 

ガイア「ダッ!!」

 

黒歌「っ!」

 

 

そして、接近したガイアは走った勢いのまま、手刀を黒歌の肩元目掛けて振り下ろしたが

 

 

スカッ!

 

ガイア「ッ!?」

 

 

命中した瞬間、黒歌の体は霧の様に消える。

ガイアが驚いていると

 

 

黒歌「ざぁんねん♪それは幻術で作った分身」

 

ガイア「ッ!」

 

 

ガイアは周囲を見渡すと、いつの間にか6人に分身した黒歌が囲んでおり、彼女らの両手には魔力弾が溜まっていた。

黒歌達は

 

 

『バイバイ♪』

 

 

一斉にそう告げると共に魔力弾を発射する。

 

 

ガイア「グアァァァァァーーーー!!」

 

ドガガァァァァーーーー!!!

 

 

襲いくる魔力弾の嵐にガイアは苦悶の声をもらし、体は火花を散らし、大爆発を起こす。

あまりものダメージにガイアは思わず膝をつきそうになるが

 

 

小猫「…先輩っ!!」

 

ガイア「ッ!」

 

 

後ろから悲鳴にも似た小猫の声が耳に入った。

ガイアは思った。

そうだ、自分は小猫を絶体に守ると決めたのではないかと。そして、こんなところで倒れる訳にはいかないと。

 

 

ガイア「…グアッ!!」

 

 

ガイアは倒れそうになりながらも何とか踏ん張って、体制を保つ。

そんな彼を見て、黒歌達は嘲笑う。

 

 

黒歌「あははは♪もう諦めばいいのに、しつこいわねぇ~…」

 

ガイア「諦めないさ。だって、大切な仲間を守る為なら何度だって立ち上がるさ」

 

黒歌「そう、なら2度とそんな口が訊けなくしてやる」

 

 

ガイアからそう言われた黒歌はより殺意を漲らせると、更に分身4人を追加し、両手に魔力弾を溜めると、一斉に発射する。

計10体の黒歌から放たれる無数もの魔力弾がガイアに襲いかかる。

 

だが、ウルトラマンである前に天才少年であるガイア、いや我夢には同じ手は通用しないのを黒歌は知らなかった。

 

 

ブオッ…ブオッ…ブオッ、ブオッ!ブオッ!ブオッ…!

 

 

魔力弾の雨が迫りくる中、突然ガイアは握り拳を作った両腕を胸の前で交差させると、その場で回転し始めた。

土煙が立つぐらいの回転風圧に、襲いくる魔力弾が次々と弾かれていく。

これぞ、回れば何とかなるという伝統戦法である。

 

 

黒歌『何っ!?』

 

 

これには黒歌達も口を揃えて、驚愕する。

そんな物理的な方法で防ぐとは予想外だったからであろう。

 

 

ガイア「グアァァァ~~…デュアッ!」

 

黒歌『しまっ…!?ギャアッ!!』

 

 

その隙にガイアは回転をやめ、体に溜めたエネルギーを一気に解き放つ。

動揺して気をとられていた黒歌はすぐに対応できず、まともにくらい、分身が消滅していく。

 

 

ガイア「デヤッ!」

 

黒歌「くっ!」

 

 

残った本体に向かってガイアは右腕の関節に左手を差し込んでL字に構えると、『クァンタムストリーム』を放つ。

黒歌はすぐさま前方に防御用の魔法陣を展開して防ぐが、予想以上の威力に段々押されていき、

 

 

黒歌「きゃあぁぁぁぁっっ!!」

 

 

魔法陣が粉々に粉砕されると、赤色の光線が直撃し、黒歌は苦悶の声をあげる。

あまりもの激痛に黒歌は遂に地に膝をつく。

 

 

ガイア「黒歌、僕は小猫を守る!わかったなら、早く帰れっ!!」

 

 

ガイアは膝をついている黒歌に向かって逃走を促す。

ガイアは手加減したとはいえ、黒歌の身体は傷だらけで着ていた和服もボロボロだ。

更に

 

 

ドォォォーーーーン!!

 

ガイア「?」

 

黒歌「っ!?」

 

 

黒歌とガイアの近くから凄まじい衝突音が鳴り響く。

2人はそこへ顔を向けると、そこには苦悶の表情を浮かべながら地に倒れ伏している美猴、そしてぶっ飛ばした張本人であるダイナが彼を見下ろしていた。

 

この状況は誰がどう見ても黒歌の敗色が濃厚……。

既に軍配はガイア達にあがっていたのだ。

 

しかし、黒歌は手に膝をつきながらも立ち上げると、ガイアを睨み付け

 

 

黒歌「ふざけんじゃないわよっ!!いくら力が強いからって調子にのるんじゃないわよっっ!!」

 

ガイア「…ッ!」

 

 

ガイアの提案を一蹴すると、両手に先程よりも強力な力が集中し始める。

ガイアは身構え、第2ラウンドが開始しようとするその時、

 

 

「そこまでです」

 

『!?』

 

 

突然、ここにいる誰のものでもない男性の声が響く。

皆は声のした方を見上げると、メガネをかけ、背広を着こなした男性が木の枝に立っていた。

しかし、服装に似合わず、腰に帯剣された1本の剣、手には美しい装飾がなされた剣を持っていた。

 

男はスタッと地上へ降り立つと同時に、黒歌は先ほどまで溜めていた気を解除する。

この様子から彼が『禍の団(カオス・ブリゲード)』の一員であることがわかったガイア達は警戒する。

 

 

黒歌「ちょっと、何でとめるのよ…」

 

美猴「そうだ!もうちょっとやらせてもいいじゃねぇかぃ!」

 

 

そんな中、黒歌と倒れていたはずの美猴は訊ねる。

あれだけダイナにやられたのに平気なのは、異常なまでの闘争心ゆえだろうか…。

 

男はクイッと眼鏡の鼻をあげると、

 

 

「撤退ですよ。黒歌が遅いから迎えに行くと言ったはずの美猴もいる。全く何をしてるんだか……」

 

 

そう言うと、呆れた様子でため息をつく。

どうやら、彼の言動や様子を見るに、加勢にきた訳では無さそうとわかったガイア達は僅かに警戒心を解く。

 

しかし、2人は納得してない様子だった。

 

 

美猴「でもよぉ~…もう少しだけ!もう少しだけ、戦わせてくれよぉ!」

 

「会場にいる悪魔に気付かれているのに、ですか?」

 

『!?』

 

 

ねだる美猴に男が付け加えて言うと、皆は驚く。

いつ?どうやって気付いたのか?と。

 

男はガイアの方を向き

 

 

「そちらのウルトラマンが最初に放った光線の爆発音ですよ」

 

『っ!』

 

黒歌「あの時の…!」

 

 

皆に聞こえる様に説明すると、黒歌は思い当たりあるのかハッとした表情を浮かべる。

そう、それはガイアが初手に結界を破壊する為に使った『フォトンエッジ』によるものだ。

ガイアは最初っから、黒歌達を撤退させようと考えていたのだ。

 

 

黒歌「はあ……見事に騙されたわ。はじめからこうなることを予測していた訳ね」

 

ガイア「…」

 

 

一杯食わされた。

黒歌は怒りを通り越して、敵ながら感服する。

 

 

「さて、そろそろ退散といきましょうか」

 

 

男は黒歌と美猴にそう呼びかけると、手に持つ剣で2、3回虚空を斬ると、空間に人が数人入れるぐらいの裂け目が出現した。

 

 

ダイナ「お、おい!その剣は何だよ!?」

 

 

この光景にガイア達が目を見開く中、ダイナが前に出て訊ねる。

すると、男は手に持つ剣を見ながら

 

 

「ああ?これですか。この剣は聖王剣『コールブランド』、別名カリバーン。地上最強と言われる聖剣ですよ」

 

 

そう説明すると、ガイア達は地上最強の聖剣を持つ者が『禍の団(カオス・ブリゲード)』に所属する事実に戦慄する。

 

 

ダイナ「んじゃあ、もう1本腰に差してんの何だよ?」

 

「こっちは行方不明とされていた最後のエクスカリバーにして、7本中最強の1振り。『支配の聖剣(エクスカリバー・ルーラー)』です」

 

リアス「何ですって…!?」

 

 

思わず、ガイア達は耳を疑った。

以前、ゼノヴィアから7つに分断されたエクスカリバーのうち1本が行方不明となったと聞かされていたので、まさかその最後の1本が敵対組織の手に渡っていたとは…。

 

 

「さて、長話もこれまでにしましょう。そうしないと、五体満足に帰させてくれなさそうなのでね…」

 

 

男がそう呟くと、黒歌と美猴は空間の裂け目の中に入る。男もその後に続いて入ろうとしたが、「あっ」と何か思い出したかのように声をあげると

 

 

「あと、ウルトラマン殿。あなたのお仲間の聖魔剣使いとデュランダル使いの方によろしく言っておいてくださいますか?いつかお互いいち剣士として相まみえたい――と。それでは」

 

 

去り際にそう言い残して空間の裂け目に入ると、裂け目が何もなかったの様にピッタリ閉じ、黒歌達は去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒歌達が撤退してひと安心したガイアとダイナは変身を解除する。

 

 

一誠「部長、大丈夫すか?」

 

リアス「ええ、ありがとう」

 

 

一誠は駆け寄ると、膝をついているリアスに手を貸す。

その向こうでは我夢が小猫の安否を確認していた。

 

 

我夢「小猫、大丈夫か?」

 

小猫「……は、はい。あの!」

 

我夢「うん?」

 

小猫「…すみません。あの時、先輩が私を勇気づけようとしたのに心無い言葉を言うばかりか、殴ったりして……」

 

我夢「…」

 

 

そう謝ると、小猫は今にも消え入りそうな面持ちで顔を俯かせる。

確かにあの喧嘩は我夢にとって少しも心が傷ついてないと言えば嘘である。

だが、我夢は優しく微笑むと、小猫の両手をそっと手に取り、包むこむ。

 

 

我夢「いや、いいよ。これでようやく君が前へ進めたんだ」

 

小猫「……私が、ですか?」

 

 

聞き返す小猫に我夢は頷く。

そんな自覚が全くない小猫は首を傾げていると、我夢は言葉を続け

 

 

我夢「君自身はわかってないかもしれないけど、君はようやく自分の気持ちをハッキリと口に出したんだ。それだけでも、充分自分の心と向けあうことが出来たと言える」

 

 

今まで恐怖や不安、マイナスの感情を圧し殺していた彼女が“嫌だ”と、感情を露にしたのだ。

たったそれだけでも立派な成長である。

しかし、小猫は顔を曇らせ

 

 

小猫「……でも、私まだ怖いです。姉さまのみたいに暴走して、部長やみんなを………」

 

 

そう呟くと、体をビクビクと震わせる。

前へ踏み出したいが、やはり黒歌のことが気になってしまう様子だ。

我夢はその思いを汲み取ると、手をギュとより強く包みこみ

 

 

我夢「いや、それはないよ」

 

小猫「……え?」

 

我夢「僕が前に言っただろ?“怖れを恥じることはない。大事なのは自分自身の怖れと向き合う事だ”って。自分の弱いところを認めた君はもう強くなったんだ」

 

 

我夢はそう言うと、一旦手を離してズボンのポケットから何かを取り出すと、小猫の掌に乗せる。

 

 

小猫「?これって…」

 

 

何だろうと小猫は見ると、それは我夢がエスプレンダーを作成するまでガイアの光を入れていた光電子管だった。

 

 

我夢「小猫を勇気づける為の御守り代わりだよ。もし、ギリギリまで頑張って……ギリギリまで踏んばって……どうにもこうにも、どうにもならないそんな時。こいつに祈るんだ。そしたら、いつでも駆け付けるから……。何せ、君は大切な人だから」

 

小猫「…っ!?//////」

 

 

微笑みながら話す我夢に思わず、小猫はドキッと胸が高鳴り、顔を紅くする。

若干告白めいた発言のせいでもあるが、それ以前に彼の事が愛おしくて仕方がない。

 

 

我夢「どうした?」

 

小猫「…っ、な、何でもありません!!(どうしよう………/////)」

 

 

不思議に思ったのか、我夢が顔を覗こうとするが、小猫はプイッと顔をそむけてしまう。

ついさっきまで彼の顔が見れたのに、今は見ることすら恥ずかしい。

 

この胸の高鳴り……身体中の暑さ……。今まで実感したことない体験に小猫の脳内は混乱する。

 

 

我夢「?」

 

 

反対に我夢はそんなこと露知らず、キョトンとしていた。

 

その後、騒ぎを嗅ぎ付けた悪魔達に保護された我夢達は何があったのか話すと、魔王主催のパーティーはすぐに中止となった。

 

こうして、我夢達の長い1日が終わった。

しかし、彼らは休んでいる暇はない。

ソーナとのレーティングゲームまであと3日だ。

進め!我らがグレモリー眷属!!

 

 




次回予告

レーティングゲーム開幕!!
2人の少女に芽生える勇気!そして、匙の覚悟!
一歩も譲らない戦いが今、始まる!

次回、「ハイスクールG×A」
「ぶつかり合う理想(前編)」





今回の我夢が小猫を叱るシーンはわかる人ならわかる、とある特撮作品のオマージュです。

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