ハイスクールG×A   作:まゆはちブラック

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第31話「ぶつかり合う理想(前編)」

黒歌達の襲撃があってから3日。

遂にシトリー眷属とのレーティングゲーム本番を迎えた我夢達はグレモリーの居城地下に設置されたゲームエリアへ移動する巨大な魔法陣に集まっていた。

そこにはリアス率いるグレモリー眷属だけでなく、リアスの両親のジオティクスとヴェネラテ、甥っ子のミリキャス、そしてアザゼルが見送りに来ていた。

 

 

ジオティクス「リアス、一度負けているのだ。勝ちなさい」

 

ヴェネラテ「次期当主として恥じぬ戦いをしなさい」

 

ミリキャス「皆さん、頑張って下さい!!」

 

アザゼル「まあ、教えるところは教えた。後は気張れ」

 

 

彼らからの激励にリアス達は力強く頷く。

 

ちなみにこの場にいないサーゼクスとグレイフィアは既に要人専用の観戦会場にいる。

この試合は三大勢力だけでなく、他の勢力の上級階級の御要人が観戦している。

何でも、魔王の妹同士が戦うということで注目しているらしい。

 

―――――この戦い、絶対に負けられない。

 

そう改めて気合いを入れると、リアス達は魔法陣の上に乗ると、魔法陣が輝き出し、転送を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…?』

 

 

眩しかった光が晴れ、リアス達は目を開くと、地下とはうって変わったテーブルがズラリと並んだ場所にいた。

 

転移したとすぐに理解したリアス達は辺りを見渡すと、そこはどこかの施設の飲食フロアらしく、左右にはファーストフードの店が連なっている。

 

更に皆がフロアから少し出て奥を見渡すと、リアス達は驚く。

 

 

我夢「え?」

 

アーシア「ここって…!」

 

一誠「学園近くのデパートじゃねぇかっ!?」

 

 

広大なホールにズラリと並ぶ見知った店…。特に印象がある天井の吹き抜けのアトリウムからは光が床を照らしている。

そう、ここはリアス達がよく通うデパートだった。

 

 

リアス「まさか、ここがゲームの舞台になるなんて予想外だったわ…」

 

 

さすがにリアスも驚愕の色を隠せない。

普段、生活で使っているデパートが戦いの舞台になるとは誰が予想出来たであろうか。

 

この状況に皆は口々に驚きの声を漏らしていると、アナウンスがホールに響き渡る。

 

 

《グレイフィア「皆さま……今回のグレモリー、シトリー両家のレーティングゲームの審判役のルシファー眷属『女王(クイーン)』のグレイフィアでございます。どうぞ、よろしくお願い致します」》

 

 

前回のライザー同様、審判のグレイフィアは挨拶をする。

しかし、前回と少し違うのは前回は()()()()()()()使()()()、今回は()()()()()()()と名乗っている点だ。

この僅かな違いからも、今回のゲームは前回とは訳が違うことを表していることを我夢は悟った。

 

挨拶を終えると、次はゲームで使うバトルフィールドについての説明を始める。

 

 

《グレイフィア「さっそくでございますが、今回のバトルフィールドはリアス様とソーナ様が通われている『駒王学園(くおうがくえん)』の近隣に存在するデパートをご用意致しました。二階建てのこの建物の一階と二階は吹き抜けの長いショッピングモール、屋上には立体駐車場となっており、他にも立体駐車場も存在しております…」》

 

 

説明を聞いたところ、本物と作りは全く変わらない。

ということは、普段使っているリアス達にとってはどこに何があるのか大体頭にインプットされているので動きやすいが、それは相手とて同じである。

 

グレイフィアの説明は続き、今度はゲームのルールについて語り出す。

 

 

《グレイフィア「両陣営、転移された先が本陣でございます。リアス様は二階の東側、ソーナ様は一階西側でございます。また、『兵士(ポーン)』の方の『昇格(プロモーション)』は、相手の本陣内で使用可能となります。なお、今回のゲームには()()()()()()がございます」》

 

我夢「特別なルール?」

 

《グレイフィア「特別なルール及び支給品は各陣営に資料が配られていますので、ご確認ください。なお、作戦時間は30分です。この時間に相手との接触は禁じられています。30分後にゲーム開始予定です。それでは、作戦時間です」》

 

 

グレイフィアのアナウンスが終わった瞬間、リアス達はさっそく作戦を決める為、一気に集まる。

リアスは飲食フロアの壁に描かれたデパート内の案内図と手元にあるチェスのマス目に区切られたレーティングゲーム専用の図面を見比べる。

 

 

リアス「舞台は駒王学園の近くにあるデパートを模したもの………つまり、屋内戦ね」

 

一誠「屋内戦ですかー…。レーティングゲームにも色々種類があるんすね」

 

リアス「ええ。ライザーの時の屋外戦や今回の屋内戦、他にも特殊なルールで勝敗を決めるのもあるわ。ただ力が強いから絶対に勝てるんじゃなくて、いかにどうやって勝つかがレーティングゲームの本筋なのよ」

 

 

リアスの話に我夢、一誠、アーシア、おまけに初参加のゼノヴィアはそうなのかと相槌を打つ。

てっきり、ライザーの時のような屋外フィールドを駆け回るものと思った我夢、一誠、アーシアは尚更である。

 

そんな話をしていると、支給品をチェックし終えた朱乃がリアスに報告する。

 

 

朱乃「部長。支給品はフェニックスの涙1つ、ジェクターガン1丁。それにジェクターガン専用の通常弾のカートリッジが2個ありますわ」

 

リアス「そう、ありがとう。フェニックスの涙が1つ…慎重に使わなきゃね。ジェクターガンは武器を持ってない人へのハンデってことかしら?」

 

朱乃「ええ、ありえますわ。こっちには回復能力はありけど戦闘向きじゃないアーシアちゃん。向こう陣営では特殊能力を持たない梶尾君がいますから」

 

 

朱乃の言葉にリアスは頷く。

確かに能力があるのが当たり前のレーティングゲームにおいては、能力無しの悪魔にとっては不利なものだ。

その不公平さをなくす為の公平にするためのものが我夢が作成したジェクターガンだろう。

 

支給品を確認したリアスは特殊ルールの内容が記された書類に目を通すと、目を細める。

 

 

リアス「『バトルフィールドとなるデパートを破壊し尽くさないこと』―――つまり、ド派手な戦闘は行うなってことね」

 

朱乃「これは困りましたわね……」

 

ゼノヴィア「…私や副部長、我夢、イッセーにとって不利な戦場だな」

 

 

ゼノヴィアの言う通り、彼女のデュランダル、朱乃の雷、ウルトラマンの光線技は高威力ではあるが、その高すぎる威力故に周囲の建造物に被害が出ることは明白だ。

なので、必然的に威力を抑えつつ戦わなければならないのだ。

 

 

リアス「この特殊ルールに地形………高威力で相手を押しきる私達にとっては不利だわ…。それにギャスパーの眼を使えないのもネックだわ」

 

木場「そうなのですか?」

 

 

木場の問いかけにリアスは頷き

 

 

リアス「運営から最初から使うなと言われたわ。理由は単純で、ギャスパーがまだ完全に『神器(セイクリッド・ギア)』を使いこなせてないからよ。もし、暴走でもしたら、ゲームどころじゃなくなってしまうからね」

 

 

そう語るリアスに我夢は納得する。

ギャスパーはある程度人見知りも慣れ、眼の能力もどれだけを停止させるかぐらいのコントロールは出来てきてはいるが、まだまだ不完全だ。

 

それにもし、使用許可が降りたとしても、このデパート内では遮蔽物が多すぎて、相手の動きを止めることは難しいだろう。

 

 

一誠「でも、使うなって言ってもギャスパーはどうすればいいんです?ちょっとしたアクシデントで勝手に発動してしまうかもしれないですし…」

 

リアス「それについては問題ないわ。アザゼル開発のこの『神器(セイクリッド・ギア)封印メガネ』を装着するように言われているから安心よ。はい、ギャスパー」

 

ギャスパー「は、はい…!」

 

 

一誠の疑問にリアスは近くにあった耳かけのない赤いメガネを持ちながらそう答えると、それをギャスパーに手渡す。

そして、ギャスパーは封印メガネを右手に持つと

 

 

ギャスパー「デュワッ!」

 

 

と謎の掛け声と共に目元に装着する。

耳かけがないにも関わらず、封印メガネはギャスパーの顔にピッタリとはまったが、

 

 

『……………』

 

 

謎の静寂がリアス達の間に訪れる。

普段大人しく、割と常識人のギャスパーが突然奇行に走ったからだ。

しばらく誰もが口が開かずギャスパーを見つめる中、我夢がおずおずと尋ねる。

 

 

我夢「………えっと、ギャスパー?その掛け声って、何…?」

 

ギャスパー「…え?あっ、何かメガネを着ける時にはこう言わないといけないって気がして………もしかして変でしたか?」 

 

我夢「い、いや大丈夫だよ。何も問題ない…」

 

 

困った表情を浮かべるギャスパーに我夢は苦笑いを浮かべながら答える。

大丈夫と言いながらもその顔は若干ひきつっていた。

 

その後の作戦会議は順調に進んでいき、木場とゼノヴィアは立体駐車場から、我夢と一誠と小猫は店内の中央から進行。残ったリアス、朱乃、アーシアは戦況で判断したどちらかのルートでシトリー眷属の本陣である西側の一階を目指すという作戦に決まった。

 

一誠が途中で「ミラクルタイプになって突っ切れば?」という意見を出したが、『タイプチェンジは昇格扱いする』という条件が提示されているので、敵の本陣に入るまでは使用不可だ。当然だが、巨大化は禁止だ。

 

話を戻すが、ギャスパーはコウモリに変化してデパート各所の偵察をし、デパート内の現状を逐一報告してもらうことになった。

神器(セイクリッド・ギア)』が使えずとも、コウモリに変化できるギャスパーにとってはうってつけの役割だろう。

 

作戦はまとまり、リアスは手首にはめてるXIGナビで時間を確認すると、皆の顔を見合わせ

 

 

リアス「みんな。ゲーム開始まではまだ15分ぐらいあるから、各自、それまで自由にリラックスして待機しておいて。10分前にはここに集合してちょうだい」

 

『了解!/ラジャー!』

 

 

彼女の言葉に皆は返事すると、ゲーム本番まで一度解散した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我夢「ん~…」

 

 

解散してから1分後。我夢は手に持つ小説とにらめっこしていた。

解散し、各々がくつろげる場所へ移動する中、我夢はすぐさま本屋へ駆け込んだ。

その理由は簡単で、昨日発売された小説がどうしても欲しいからだ。

 

ちなみに他の皆はどうしているかというと、リアスは飲食フロアにある椅子に座って、優雅に紅茶を楽しんでいる。

ギャスパーはドーナツ店のドーナツを食べようか食べまいか悩んでおり、アーシアとゼノヴィアはハンバーガー屋の前で談笑。

木場は飲食フロアの手前にあるドラッグストアで物色中で、一誠は特にすることもないのかドラッグストアと飲食フロアの間にあるベンチで涎を垂らしながらだらしなく寝ていた。

 

逸れてしまったので話を戻すが、我夢が手に持つ小説とにらめっこしているのはその本をこっそり持ち出そうか悩んでいるからだ。

その小説は意外と高額で、我夢の現時点持っているポケットマネーでは全然足らないのだ。

 

今回用意されたデパートは建物だけでなく、店内の商品すらもそっくりそのままコピーしている。

なので、このまま持ち出しても問題にならないのでは?という悪心と、それは万引きと同じではないか?という良心に板挟みされて迷っているのだ。

 

そんな時、

 

 

むにゅうぅ……

 

我夢「っ!?」

 

 

柔らかい感触が我夢の背中に伝わる。驚いて振り返ると、後ろから朱乃が自身の豊満な胸を当てて抱きついていた。

 

 

我夢「あっ、朱乃さん!いつの間に……っというか、何してるんですかっ!?」

 

朱乃「あらあら、何を見ているか気になったからこうやって覗いているだけですわ♪」

 

我夢「い、いや、そうじゃなくて……その…えっと、胸が…当たってるんですが……」

 

朱乃「あらあら、ごめんなさいね♪胸が大きいから覗きこむと、どうしても当たってしまうんですの♪」

 

我夢「…/////」

 

 

妖艶な笑みを浮かべながら朱乃は謝るが、一向に離れる気配がない状況に我夢は恥ずかしそうに顔を赤くする。

 

美人でスタイルも良く、頭も良い朱乃。

そんな学園の憧れの彼女とこうして密着しているだけでも我夢の煩悩を刺激するには充分だ。

 

我夢としては理性が爆発する前に早く離れて欲しいのだが……。

 

しかし、最近の彼女はこんなアプローチが多く、離れる様に言ってもすぐには止めないだろう。

さて、どうやって上手く離れてもらおうかあたふた考えていると、朱乃は我夢の肩に両腕を回してより密着させた。

 

 

我夢「どうしたんですか?」

 

朱乃「…我夢君から勇気を貰っているんです」

 

 

先程の余裕がある態度から一変して、切なそうにする朱乃の変化に我夢は冷静になると、彼女の言葉に耳を傾ける。

 

 

朱乃「…戦う勇気がありますわ。でも、今回のゲームで私に流れるもう1つの力を使うかもしれないから………それが怖いの。だから、こうやって我夢君から勇気を貰うの」

 

我夢「…」

 

 

そう言って朱乃は顔を我夢の背中に顔をつける。

以前に彼女自身やアザゼルから聞いたが、彼女は過去の悲惨な出来事があって以来、堕天使の力を使うのに抵抗を示していた。

過去に何があったかまでは聞いてはいない。だが、今まで嫌悪していたものを使うのはそう簡単にいくものではないだろう。

 

 

我夢「わかりました。僕で良ければ…」

 

 

我夢は朱乃にそう短く告げると、彼女が離れるまでじっと待つことにした。

我夢と朱乃。2人きりの空間に静かな時が流れる……。

 

そして、しばらく経つと、朱乃は我夢の背中からゆっくりと身を離す。

 

 

朱乃「ありがとう、我夢君」

 

我夢「いえ、これで勇気をつけてくれるなら全然大丈夫ですよ」

 

 

そう感謝を告げる朱乃に我夢は微笑む。

我夢が安心しているのも、朱乃が先程よりも顔色が明るくなっているからだ。

すると、朱乃は両手で我夢の右手を包むと、見上げ

 

 

朱乃「…私が堕天使の力を使うのを見守ってくれますか?我夢君が見守ってくれるなら、私は何も怖くありません」

 

 

真っ直ぐな紫の瞳で我夢を見つめて願う。

それはまるで子が親にお願いするように…。

彼女の願いに我夢はもう片方の手で彼女の手を包むと

 

 

我夢「わかりました。朱乃さんがそれで安心するなら、僕は必ず見届けますよ」

 

朱乃「……嬉しいっ!」

 

我夢「うわっと!?」

 

 

そう優しく約束すると、歓喜した朱乃は握った手を離すと、我夢の胸元に抱きつく。

その行動に我夢はまたもやあたふたしそうになる中、朱乃は我夢の耳元に口を近付け

 

 

朱乃「我夢君。優しいあなたならと一緒ならきっと………。だから…………」

 

 

聞こえるような聞こえないような声量で呟くと、朱乃は潤んだ紫色の瞳で我夢を見つめながら、ゆっくりと顔を近付けていく。

 

 

我夢「(えっ…!?)」

 

 

我夢は内心焦っていた。

この空気、謎の緊張感。そして、近付いてくる朱乃の顔。避けようと思えば避けれるが、何故か身体が石になったように動けない。

そんな内に、我夢と朱乃はお互いの息がかかるぐらいの距離まで近付いていた。

 

この時、我夢はもう考えるのをやめ、まぶたを閉じ、本能に身を委ねた。

そして、お互いの唇が重なろうとした瞬間、

 

 

小猫「……我夢先輩、朱乃さん。そろそろ集合です」

 

「「っ!?」」

 

 

いつの間にかいた小猫の呼びかけにハッとなった2人はすぐさま離れる。

さっきまでの出来事を見られた恥ずかしさを紛らわそうと我夢は顔を逸らしながら制服を整えるようなジェスチャーをし、朱乃は名残惜しそうな表情で息を吐く。

 

どうやって説明しようか……。我夢は焦りながらも言い訳を必死に考えていると、朱乃はいつものニコニコした表情に切り替え

 

 

朱乃「あらあら、小猫ちゃん。見られちゃいましたわ♪うふふ……我夢君、ありがとう。もう大丈夫ですわ♪」

 

 

そう2人に告げ、その場から立ち去ろうと歩き出す。

そして、我夢とすれ違う瞬間、

 

 

朱乃「……次は必ず………あなたと……」

 

 

我夢に小声で意味深に呟くと、その場から去っていった。

 

あの時、小猫が来なかったら自分と朱乃さんはあのまま……?

我夢がそう考えていると、突然小猫が我夢の右手を握ってきた。

 

 

我夢「…?どうしたんだ?」

 

 

我夢が優しく問いかけると、小猫は恥ずかしそうに頬を赤く染めながら告げる。

 

 

小猫「……私にも……勇気を下さい………。猫又の力を使う勇気を………」

 

我夢「…っ!」

 

 

彼女の発言に我夢は若干驚く。

小猫も朱乃同じく、今まで恐れて封じていた力を使おうとしているのだ。

しかし、暴走してしまうかもしれない恐怖はそう易々と消えるものではない。だが、今の彼女は前みたいにただ怖がっているのではなく、心にある恐怖と必死に戦おうとしている。

 

 

我夢「いいよ…」

 

小猫「……ありがとうございます」

 

 

小猫の意思を汲み取った我夢は快く承諾すると、握っている彼女の手にもう片方の手を添える。

我夢は彼女が満足するまでずっと握り続けた。

 

 

小猫「……もう大丈夫です」

 

我夢「あ、うん」

 

 

そして、しばらく経つと小猫は手を離す。

頬は以前赤いままだが、顔の緊張がほんの少しほぐれたように見えた。

 

 

小猫「……我夢先輩。私、猫又の力を使います。皆さんの役に立てるように……もっと先に進む為に……」

 

我夢「そうか。小猫、僕は応援するよ」

 

小猫「……はい!」

 

 

彼女の瞳に確かにある決意を見た我夢は心の底から応援する。もう彼女は以前のように弱くはない。

すると、小猫は話題を変え

 

 

小猫「……ところで、さっき朱乃さんと何しようとしてたんですか?」

 

我夢「ぶっ!?」

 

 

ふいに問いかけると、我夢は吹き出す。

あの状況、あの距離、あのムード。はたから見てもあれはつまり……そういうことをしようとしか見えない。

 

 

我夢「いっ、いや!あれは……その、何だろう?一種のコミュニケーションっていうか……」

 

小猫「…ふふっ、いいですよ。別に怒ってませんから」

 

 

どうやって弁解しようとあたふたする我夢を見て、小猫は可笑しそうに笑う。

この様子にどうやら弁解しなくても良さそうだと察した我夢は肩を撫で下ろす。

だが、小猫は顔を赤くすると小さく呟く。

 

 

小猫「……やっぱり優しいですね。私、先輩のこと……」

 

我夢「ん?」

 

 

その呟きに我夢は聞こえなかったので、何を言ったのか訊ねようとしたが、集合時間まで30秒をきろうとしているのに気付いた。

 

我夢は追及するのをやめ、小猫と一緒に集合場所へ走っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

集合した後、作戦の再確認を終えた我夢達は刻々と迫るゲーム開始のアナウンスを待っていた。

飲食フロアにある時計の分針が12時を指した瞬間、店内にグレイフィアのアナウンスが流れる。

 

 

《グレイフィア「ゲーム開始のお時間となりました。なお、このゲームは3時間の制限時間付きです。それでは、ゲーム開始です」》

 

リアス「みんな、作戦通りにお願いね。さあ、勝つわよ!」

 

『了解!/ラジャー!』

 

 

リアスの声に皆は気合いが入った返事を返す。

一度負けていて、今回は短期決戦をしなければならない。尚更、負けられないだろう。

 

そして、本陣に残るリアス、朱乃、アーシア以外はそれぞれ指示された場所へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゲーム開始から2分。デパート内のホールを抜き足差し足といった足取りで歩いている人影が3つ。

それは中央からの突破を任された我夢、一誠、小猫の3人だ。

彼らは相手から気付かれないようにできるだけ物音を立てずに歩いているのだ。

 

ちなみに小猫はゲームが始まった瞬間に猫耳としっぽを生やした猫又の力を解放している。

何でも、仙術を扱える猫又の力なら気を探知できるかららしい。

その姿を初めて見た一誠が驚いたのはまた余談である。

 

しばらく警戒しながら歩き続けると、小猫が何かを探知したのか、猫耳をピクピクとさせて前にいる2人に声をかける。

 

 

小猫「……先輩方、4つの気が真っ直ぐこちらへ向かって来てます」

 

我夢「小猫。いつ、どこから来るのかはわかるか?」

 

小猫「…はい。詳しくはわかりませんが、あの方角から大体10分程度かと」

 

 

そう言うと、小猫は指を指す。

彼女の報告を受けた2人は頷くと、いつかかってきてもいいように懐から変身アイテムを取り出し、警戒を強める。

 

未だ現れない相手に焦りを感じながらも神経を途切らすことなく張り巡らせて警戒していると、我夢は先程から小猫がジーっと顔を見上げているのに気付いた。

 

 

我夢「…何?」

 

小猫「……いえ、我夢先輩って普段頼りない感じなのに、いざって時はキリッとした顔つきになりますね」

 

我夢「え?僕のことそんな風に思ってたの?イッセー、どうかな?」

 

一誠「おう。確かに言われてみりゃあ、頼りない感じがするな」

 

我夢「嘘~~…」

 

 

そう言われた我夢は軽くショックを受ける。

時々頼りない、情けないとは自分でも思うが、まさか周りからも思われていたとは……。

それと、心なしか小猫の頬が赤くなっているような気が……。

 

そんな会話をしていると

 

 

小猫「上っ!」

 

「「!?」」

 

 

突然、見上げた小猫の声に反応した2人は視線を追うと、天井から伸びるロープでターザンの様にこちらへ急降下してくる人影が見えた。

3人は咄嗟に後ろへ跳び跳ねて回避する。

 

スタッとホールの床へ降り立ったのは

 

 

匙「あちゃ~~…失敗しちまったか~~」

 

一誠「匙っ!」

 

 

少々残念そうに呟く匙。それに背中にはツインテールが特徴のシトリー眷属・『兵士(ポーン)』の『仁村(にむら) 留流子(るるこ)』の姿があった。

更に、

 

 

梶尾「やはり簡単には奇襲させてはくれないか………って、いつまで食ってんだ!」

 

「まあまあ~~、そうカリカリすんなって。“腹が減っては(いくさ)は出来ぬ”って言うだろ?」

 

 

奥から飄々とした態度でポテチを頬張る男子生徒とその隣で彼を叱る梶尾も姿を現す。

梶尾は前から面識があり、つい最近会ったばかりなのでわかるが、隣にいる男子生徒は我夢達にとって初めて見る顔だ。

 

 

「おっ?」

 

 

疑問に思っている彼らの反応を見て、その男子生徒は察したのか、ポテチが入っている袋を逆さにしてポテチを全て口の中に流し込むと、バリッ…ボリッ…と小気味の良い咀嚼音を鳴らす。

そして、ゴクッと飲み込んでから空のポテチの袋をそこら辺の床に放り投げると、我夢達を見据えると

 

 

「会うのは初めてだな。俺の名前は『四之宮(しのみや) (りゅう)』。駒王学園3年で、シトリー眷属の『兵士(ポーン)』をやらせてるもんだ。よろしくな!」

 

「「「……」」」

 

 

戦いの場に似使わない調子で自己紹介をする彼に我夢達は一瞬、ポカーンとなった。

今から勝利の為に戦うのに、この飄々とした態度はどこから湧いてくるのか…。

しかもニコニコしながら手まで振ってる。

 

しかし、彼が何者かは我夢達にはわかった。

駒王学園で年中、ほぼ毎日学校をサボる男子生徒がいると噂で聞いたことがあるが、恐らくそれが目の前にいる四之宮だろう。

 

何とも言えない気持ちになった我夢達は四之宮から匙へ意識を傾ける。

すると、彼の右手を見て、一誠は目を丸くする。

 

 

一誠「匙っ!?それって……」

 

 

匙の右腕にある『神器(セイクリッド・ギア)』は以前とデザインが変わっており、黒い蛇の頭部のみがついていたのが、何匹もの黒蛇がとぐろを巻いて腕に纏わりついている。

 

一誠の反応に匙は不敵に笑い

 

 

匙「へへっ…まあ、こいつは修行の成果ってことさ。天井にラインを引っ付けて上を移動してたら、遠くの物陰にお前らが隠れているのを見つけて、奇襲を仕掛けたんだ。まあ、避けられたけどな」

 

梶尾「ふん。こんな奇襲攻撃に引っ掛かる程度じゃつまらないがな……。お前達とは正々堂々と戦いをつける!」

 

 

梶尾は自嘲気味に話す彼をフォローするように言いながらも宣戦布告すると、梶尾達は一斉に身構える。

対する我夢達も

 

 

我夢「はい!こっちも死に物狂いで修行をしたんです!全力で行きますよ!」

 

一誠「おおっ!やってやるぜ!!」

 

 

そう不敵に返答すると、我夢と一誠は変身アイテムを掲げ、ウルトラマンに変身する。

ガイア、ダイナが臨戦態勢に入ると、それに合わせて小猫も身構える。

 

睨み合う両陣営………。

どちらからも動かず、様子を伺っていると

 

 

《グレイフィア「リアス・グレモリー様の『僧侶(ビショップ)』1名、リタイアです」》

 

「「「!?」」」

 

 

思わず耳を疑うアナウンスが流れる。

ギャスパー、それともアーシア…?3人はどちらなのか不安になっていると、梶尾がにやける。

 

 

梶尾「…やられたのはギャスパーだ。俺達の罠にひっかかってな」

 

ガイア「ギャスパーがっ!?一体、どうやって?」

 

梶尾「ああ。ルール上、『神器(セイクリッド・ギア)』を使えないアイツが出来ることは、コウモリになって偵察することだ。そこで、俺達が不審な動きを見せて本陣の食品売り場に誘き寄せたところで苦手なニンニクを浴びせる。そして、弱った瞬間に畳み掛けた……という訳だ」

 

ダイナ「嘘だろっ!?」

 

 

梶尾の説明にガイア達は驚く。

まさかこんなあっさりと撃破されるとは予想だにしなかっただろう。

 

そんな中、梶尾はジェクターガンの銃口をガイアへ向け

 

 

梶尾「まあ、長々と説明したことだ…。今度はお前達に退場してもらう!」

 

ダァンッ!

 

 

そう言い放った瞬間、梶尾は引き金を引く。

放たれた銃弾はガイアに腕で振り落として防がれたが、その銃撃音が戦闘の合図となった。

梶尾と匙はガイアとダイナ、仁村と四之宮は小猫と対峙する形だ。

 

 

ガイア「グアッ!」

 

ダイナ「フッ!」

 

 

ガイアとダイナは距離を詰める為に床を蹴って、走り出す。

近距離戦は2人が最も得意とするからだ。

 

 

匙「そうはさせるかっ!伸びろっ、ラインッ!!」

 

 

その接近を許さない匙は右腕を前へ突き出すと、籠手から無数の黒蛇を模した触手がガイア達に襲いかかる。

匙の『黒い龍脈(アブソブーション・ライン)』は籠手から伸びるラインに接続した相手の力を奪うことが出来る。

その厄介な能力を知っているガイアとダイナは触手が届いていない上へ跳躍するが

 

 

ダァンッ!ダァンッ!ダァンッ!ダァンッ!

 

ガイア「ドアァァーーッ!?」

 

ダイナ「グアァァァッ!?」

 

 

匙の後ろから放たれた4発の弾丸がガイアとダイナの胸元に命中して火花を散らすと、体勢を崩した2人は地面へ落ちる。

2人は体勢を起こして弾丸が放たれた方角を見ると、それは梶尾が放ったものだった。

 

 

ガイア「梶尾さん!射撃上手くなったんですか!?」

 

梶尾「ふっ…あの時以来、会長に死ぬほど鍛えられたからな……」

 

 

梶尾はまるで遠い出来事のように語る。何よりもその目が困難な修行だったことを物語っている。

だが、今は戦いの時である。一瞬足りとも隙を見せてはならない環境だ。

しかし、ほんの僅かな隙……ガイア達は既にその隙を狙われた。

 

 

匙「捉えたッ!」

 

「「ッ!?」」

 

 

いつの間にか匙のラインがガイアの左腕、ダイナの右腕に接続されている。

「しまった!」と内心思いつつも、2人はラインを何とか切り離そうとするが、一向に傷1つつかない。

 

 

匙「そいつはなぁ~そう簡単には切れねぇぞ。俺の()()()()をかけてるんだから、よっ!」

 

「「ッ!」」

 

 

匙はグイッと腕を引き寄せると同時に、ラインに繋がれたガイアとダイナは引っ張られようとする。

当然、2人は引き寄せられまいと踏ん張るが

 

 

梶尾「無駄だっ!」

 

ダァンッ!ダァンッ!ダァンッ!ダァンッ!

 

 

匙の後方に控えている梶尾の援護射撃が襲いかかる。

しかし、それを予測してない2人ではない。

 

 

ダイナ「ハッ!」

 

 

ダイナはガイアの前に出ると、ウルトラバリヤーを展開して銃弾の嵐を防ぐ。

だが、

 

 

カッ!

 

「「ッ!?」」

 

 

突然のホール中の閃光に襲われ、ガイアとダイナは目を奪われる。

実は先ほど匙がガイア達に向かってラインを伸ばした際に近くの店にある電灯に接続し、梶尾が援護射撃している間に魔力を送り込んで一瞬だけ光を弾けさせたのだ。

匙の引き寄せようとした行動は電灯から自分へ意識を向かせる為のフェイクだ。

 

 

匙「おぉぉーーーらっ!!」

 

「「グアァァァッ!?」」

 

 

視力を奪われて動揺する2人を匙は渾身の力を込めて、近くの壁に叩きつける。

壁にぶつけられた衝撃に苦しみながらも、2人は立ち上げるが

 

 

梶尾「くらえっ!!」

 

ダァンッ!ダァンッ!ダァンッ!ダァンッ!ダァンッ!ダァンッ!ダァンッ!ダァンッ!ダァンッ!ダァンッ!

 

ガイア「ドアァァァァァァーーーーーー!!」

 

ダイナ「グワァァァァァァァァーーーーーー!!」

 

 

梶尾が間髪入れず放った銃弾にガイアとダイナは苦悶の声をあげ、体から大量の火花が散ると、その場で倒れ伏せる。

 

匙のラインにそれをフォローする梶尾の射撃―――息をつかぬ連携にガイアとダイナは予測以上に苦戦を強いられていた。

 

しかし、それは隣で戦う小猫も苦戦していた。

 

 

小猫「…えいっ!」

 

 

お得意の格闘戦に持ち込もうと、仁村に向かって飛び蹴りを繰り出すが

 

 

ズザァァァ!!

 

小猫「…っ!」

 

 

突然、仁村の目の前に現れたゴミの塊で出来た長方形の壁に阻まれる。

心の中で少し苛立ちながらも追撃をもらわないよう、小猫は急いでバックステップで下がって身構える。

 

 

パチンッ!

 

 

仁村の後ろにいる四之宮が指を鳴らすと、彼女の前に出来た長方形のゴミの壁が一瞬で崩れ落ち、ゴミが床に散らばる。

ポテチの袋や弁当箱のゴミが。

四之宮は自分の右指に填めている歯車の造形がなされた指輪をまじまじと見ると、ニッコリとした笑顔で小猫を見る。

 

 

四之宮「いやぁ~~…さっきは凄い一撃だったよ。うん、本当に。俺の『神器(セイクリッド・ギア)』、『不必要の再創造者(トラッシュ・リクリエイター)』で作った壁も壊れるかと心配だったな~」

 

小猫「……」

 

 

そう言いながら、拍手する四之宮に小猫は苛立ちがこみ上げる。

 

この男、四之宮が持つ『不必要の再創造者(トラッシュ・リクリエイター)』は指輪の形をした『神器(セイクリッド・ギア)』で、その能力は所有者の半径10m内にあるゴミを操って、壁や武器を作ることが出来るサポート系能力である。

 

戦い始めてから小猫は仁村と激しい格闘戦を繰り広げていたが、1回も彼女に有効打を与えられてない。

というのも、重い一撃を与えるすんでのところで、毎回四之宮が作り出した遮蔽物に妨害されるからだ。

 

よって、小猫は有効打を与えられず、体力だけが消耗されていく最悪な状況に陥っているのだ。

 

 

四之宮「さぁ、お嬢さん?もう1度かかってきな」

 

小猫「…っ!」

 

 

四之宮が人差し指をクイクイッと動かして、かかってこいと挑発すると、小猫は拳に力をいれて駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、立体駐車場を進んでいる木場とゼノヴィアも相手と遭遇し、戦っていた。

木場は椿姫、隣ではゼノヴィアが日本刀を持つ細身女性、『騎士(ナイト)』の『巡 巴柄(めぐり ともえ)』、長身の女性、『戦車(ルーク)』の『由良 翼紗(ゆら つばさ)』と対峙している。

 

 

木場「はぁぁぁぁーーーーー!!!」

 

椿姫「はっ!」

 

ガキィィィーーーーーーーーーン…!!

 

 

木場の聖剣と魔剣の2刀流と椿姫の薙刀の刃がぶつかり合い、火花が散る。

グギギ…と刃から金属音を出しながら、両者は押し合う。

 

 

椿姫「木場祐斗、流石です」

 

木場「それはお互い様です……よっ!」

 

 

2人はそう短く会話すると、バックステップで距離をとり、再び剣撃を始める。

両者の間からはギィンッ!と鋭い金属音が鳴り響き、刃の軌跡が舞う。

 

 

ゼノヴィア「フンッ!!」

 

巡「やあっ!!」

 

ギギィィンッ!!

 

 

ゼノヴィアも巡と剣撃戦を繰り広げている。

両者とも相手にひけをとらない技量を持っているが、ゼノヴィアの持つ聖剣デュランダルと彼女自身のパワーとスピードに巡は徐々に追い詰められていく。

 

 

ガキィンッ!

 

巡「っ!?」

 

 

その猛攻に巡は日本刀を弾かれ、大きく体勢を崩す。

 

 

ゼノヴィア「もらった!」

 

 

ゼノヴィアはその隙を逃さず、デュランダルを振り下ろすが、その間に由良が割り込む。

彼女は両手を前に出し

 

 

由良「反転(リバース)!」

 

 

そう叫ぶと、振り下ろされるデュランダルは悪魔の天敵となる聖の力が消え、悪魔が得意とする魔の力へと変換された。

 

 

パシッ!

 

由良「はっ!」

 

 

魔の力となったことで悪魔でも触れられるようになったデュランダルを由良は白刃取りすると、そのまま力一杯に横へ投げ飛ばす。

 

 

ゼノヴィア「くっ…!」

 

由良「はぁっ!」

 

 

起き上がろうとするゼノヴィアに追い討ちとばかりに由良は助走をつけた蹴りを放つ。

だが、ゼノヴィアはそのまま横転して、間一髪回避する。

 

 

ドガッシャアァァァァンッ!!

 

 

由良の蹴りはその勢いまま、ゼノヴィアの後方に並んである車両数台を遥か彼方まで蹴り飛ばす。

もし、あれをくらったらひとたまりもない……その光景を見た木場は戦慄すると同時に由良が使った能力が気になった。

 

 

木場「(由良さんが『反転(リバース)』と叫んだ瞬間、デュランダルの聖の力は魔の力に変わった………まさか、あらゆる効果を反転させる能力かっ!?)」

 

 

デュランダルは聖剣が苦手な悪魔にとって有効だ。

しかし、それを反転させてはただの剣にしかならない。

このままではまずい―――!

 

 

木場「ゼノヴィアッ!チェンジだ!」

 

ゼノヴィア「…っ、ああっ!」

 

 

そう思うな否や、木場はゼノヴィアへ指示すると、お互いの相手を交換した。

この行動に出たのも、聖と魔、両方の力を持つ聖魔剣を使える自分が相手なら、反転させても効果がないだろうとふんだからである。

 

 

木場「はっ!」

 

 

木場は魔剣と聖剣を投げ捨て、聖魔剣に持ちかえると、自慢のスピードから繰り出す剣撃で2人を次々と攻め立てる。

 

 

巡「くっ!」

 

由良「うっ!」

 

 

あまりものスピードに2人は対処が追い付けず、体のあちこちから切り傷が刻まれる。

何とか致命傷を避けるのがやっとだ。

 

 

ゼノヴィア「おおおおおおーーーーーーっっ!!」

 

椿姫「…っく!」

 

 

隣で戦うゼノヴィアも烈火の如く攻め立てており、その猛攻に椿姫は薙刀でいなすのがやっとだ。

そして、遂には壁際に追い詰められた。

 

 

ゼノヴィア「一気に決めるっ!!」

 

 

今が好機と見たゼノヴィアはデュランダルを天高くあげると、一気に振り下ろす。

―――逃げ場がなく、迫り来るデュランダルの一撃にゼノヴィアの勝ちだ。

木場がそう思った瞬間、椿姫は

 

 

椿姫「……『追憶の鏡(ミラー・アリス)』」

 

ゼノヴィア「っ!?」

 

 

そう呟くと、彼女の前に装飾された巨大な鏡が出現する。

ゼノヴィアは一瞬驚いたが、今さら攻撃をやめる訳にもいかず、そのまま鏡を粉砕する。

その瞬間、

 

 

ズォオオオオオオンッ!!!

 

ゼノヴィア「ごふっ…!?」

 

木場「っ!?」

 

 

割れた鏡の破片から波動が放出され、ゼノヴィアに突き刺さる。ゼノヴィアは血反吐を吐き、体からは血が吹き出す。

 

一体、何が?ゼノヴィアと木場が困惑していると、椿姫が冷笑を浮かべ

 

 

椿姫「私の『神器(セイクリッド・ギア)』…『追憶の鏡(ミラー・アリス)』は破壊された時、衝撃を倍にして相手に返します。木場 祐斗君、ゼノヴィアさんに私をぶつけたのは失策ですね」

 

木場「くっ…!」

 

 

そう指摘されると、木場は悔しげに歯を噛み締める。

カウンターを使う相手がまさか2人も投入するとは完全に予想外だった。

足が速く聖剣を扱える木場とゼノヴィアは脅威であり、本陣に近付かせる前にここで潰す算段であろうと木場は思った。

 

 

椿姫「残るは木場 祐斗。あなただけです」

 

 

椿姫は薙刀の切っ先を木場へ向けると、彼女を筆頭に他の2人も詰め寄る。

あの一瞬でゼノヴィアが倒れ、1対3の不利な状況に追い込まれてしまった。

 

 

ゼノヴィア「ぐっ……あぁぁ…!!」

 

 

床で倒れ伏しているゼノヴィアはリタイアこそしなかったがかなりの重傷だ。

治療をしようとしても『フェニックスの涙』はリアスが持っており、ゲーム開始前にドラッグストアから持ってきた医療キットも役には立たないだろう。

 

 

木場「(……どうする?考えろ…!考えるんだっ!)」

 

 

木場は後退りしながらゼノヴィアを救い、かつ相手を倒す策を必死に考える。

しかし、思い付いた策も今の状況を打破するには望みが薄い。

その間にも椿姫達が詰め寄ってき、木場は焦りすら感じ始めたが

 

 

ゼノヴィア「木…場っ!!」

 

木場「っ!ゼノヴィア」

 

 

遠くで倒れているゼノヴィアの声が聞こえ、木場は耳を傾ける。

ゼノヴィアは苦しげな声で話す。

 

 

ゼノヴィア「私を、助けようとするのなら、やめておけ……。どのみち私は助からん……!お前が同じグレモリーの『騎士(ナイト)』ならば……目の前の敵を倒すのに優先しろっ!!」

 

木場「っ!」

 

 

ゼノヴィアの激を受け、木場はハッとなる。

このゲームは誰がいつ倒れてもおかしくない。

目の前で助かりなさそうな仲間を構うよりも、主を勝たせることが最優先だと…。

 

しかも、ゼノヴィアは重傷にも関わらず、大声をあげている。おそらく、声を出すのも精一杯なはずだろう。

彼女の激に木場は

 

 

木場「分かったよ、ゼノヴィア。僕はリアス・グレモリーの『騎士(ナイト)』として、ここで立ち止まる訳にはいかないっ!!」

 

ゼノヴィア「ふふっ、そうだ…。それでいい……」

 

 

決意した木場を見て、ゼノヴィアは満足げに微笑むと、何かをぼそぼそと何かを呟き始める。

その行動を見た木場は何をしようとしているのかすぐに察すると、後退りをやめ、聖魔剣を構える。

 

 

椿姫「覚悟を決めましたか?」

 

 

後退りをやめた木場を見て、椿姫は観念したと思い、薙刀を構えて近付いていく。

だが、木場は諦めてなどいない。

彼とゼノヴィア――リアス・グレモリーの『騎士(ナイト)』2人による逆転技を狙っているのだ。

 

近付く椿姫達と木場の距離があと5mまで迫った瞬間、木場は

 

 

木場「デュランダル・バースッ!

 

「「「っ!?」」」

 

 

そう叫んで聖魔剣を地面へ突き刺すと、立体駐車場一帯に聖魔剣の山が生えていく。

しかし、これはただの聖魔剣ではない。彼の背後にある小さな空間の裂け目から流れるゼノヴィアのデュランダルのオーラが籠っている強力な一撃だ。

 

 

巡「…っ!?」

 

由良「がっ…!?」

 

 

木場とゼノヴィア―――グレモリーの『騎士(ナイト)』が創りあげた技に、巡と由良は体を貫かれ、とたんに光の粒子になると、消滅した。

 

 

《グレイフィア「ソーナ・シトリー様の『騎士(ナイト)』1名、『戦車(ルーク)』1名、リタイアです」》

 

 

それと同時に2人がリタイアしたことを知らせるグレイフィアのアナウンスが流れる。

アナウンスから、『女王(クイーン)』である椿姫がやられてないことを知った木場はすぐに辺りを見渡すが、既に彼女の姿はなかった。

 

「一旦、引いたか」とひと安心した木場は倒れているゼノヴィアのもとへ向かうと、上体を抱え起こす。

彼女はかなり出血していたので、リタイア時に現れる体の粒子化が始まっていた。

ゼノヴィアは木場は見据えると、満足そうに微笑む。

 

 

ゼノヴィア「木場。いい一撃だったな…」

 

木場「ああ…君がいてくれたからこそだ。君とならまた聖なる剣が咲かせられる。だから見ていてくれ。このゲームに必ず勝つ」

 

ゼノヴィア「ああ……私の分まで頑張ってくれ……」

 

 

木場の宣言にゼノヴィアは激励すると、光の粒子となり、木場の腕から消えていった。

 

 

《グレイフィア「リアス・グレモリー様の『騎士(ナイト)』1名、リタイアです」》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃。

匙達の連携に苦戦していたガイア達も押し返していた。

 

小猫は四之宮の妨害をスルリスルリと掻い潜りながら、2人を攻めていた。

 

 

小猫「…はっ!」

 

四之宮「ぐっ…まいったなぁ~」

 

 

四之宮の背後に回り込んだ小猫は脳天目掛けてかかと落としを繰り出すが、四之宮は間一髪ゴミで作った障壁で防ぐ。

しかし、四之宮には先程までの余裕がなかった。

これは小猫が戦ううちに彼の能力の弱点を見つけたからである。

 

不必要の再創造者(トラッシュ・リクリエイター)』は半径10m内のゴミを自由自在に操る能力だ。

しかし、半径10mで操れるといってもそれは()()()()()()()()()()()()無意味なのだ。

 

人間の両目で同時に見える視野は約120度と言われており、360度を一変には見れない。四之宮はその範囲内なら操れ、死角には効果を発動できない。

これに気付いた小猫は死角から攻め、四之宮と仁村を追い詰めていたのだ。

 

 

仁村「やあっ!」

 

小猫「っ!」

 

 

横からきた仁村の飛び蹴りを小猫は両腕をクロスさせて防ぎ、そのまま後ろへ飛び下がる。

仁村は追い討ちにと小猫へ駆け寄り、格闘戦の応酬を始める。

 

隣で戦うガイアとダイナも徐々に押し返していた。

 

最初はラインに繋がれているせいでむやみやたら光線技を使ってエネルギーを吸われないように何とか接近戦を仕掛けようとして苦戦してたが、そうも言っても戦闘が長引いて逆に体力を消耗するので、光線技も積極的に使って戦う作戦へシフトチェンジした。

 

 

ガイア「デュアッ!グアァァァァ……!」

 

 

ガイアは立てた左腕に右腕をクロスさせ、クァンタムストリームの体制に入る。

狙いは匙だ。

匙は何故かこの短時間で異常に疲労の色が見え始め、顔色も悪く、息も乱れていた。

 

 

梶尾「させるかっ!」

 

 

そうはさせまいと、赤色の光の軌跡と共に円を描くように腕を動かすガイアへ梶尾はジェクターガンで妨害しようとするが

 

 

ダイナ「ダッ!」

 

梶尾「っ!くそっ…!」

 

 

ダイナが真上からの急降下蹴りが入り、梶尾は射撃を中断しバク転で回避する。

 

 

ドゴォォン!

 

 

ダイナが蹴った床はあまりもの威力で大きなクレーターが出来る。これをまともにくらったら梶尾の命はなかっただろう。

 

 

ダイナ「デェアッ!」

 

梶尾「うおっ!?」

 

 

ダイナは右手から丸のこ状の光輪、ダイナスラッシュを放つ。

梶尾は左腕を掠めながらも何とか避け、背後にあった柱は真っ二つに切断される。

 

ダイナが梶尾の妨害している中、ガイアは光線のエネルギーが完了した。

 

 

ガイア「デュアァァァァーーーーーー!!!」

 

匙「うおぉぉらぁぁぁぁぁーーーーーーー!!」

 

 

ガイアは左腕を曲げた右腕の関節に挟んでL字のような構えでクァンタムストリームを匙目掛けて放つ。

それに合わせて匙も右手から膨大な魔力弾を発射する。

 

まっすぐ飛んで行く魔力弾は光線にぶつかる。だが、光線は魔力弾を解き消すと、匙の胸元に直撃する。

 

 

匙「ぐあぁぁぁぁーーーっ!!」

 

 

衝撃で倒れた匙は苦痛の叫びをあげながら、手で胸元を抑え、もがく。

匙の胸元は服ごと光線によって焼け焦げ、血が溢れ出ている。

 

 

ガイア「…」

 

 

ガイアは今は敵であっても仲間である彼に罪悪感を感じつつも、静かにその様子を伺っていた。

追い討ちをかけようと思えば出来るが、今、苦しんでいる匙の姿にそれを起こす気は起こらなかった。

 

 

ガイア「…!?」

 

 

ガイアは様子を伺っていると、彼の胸元に異変があるのに気付き、驚いた。

自分の光線によって焼け焦げた皮膚ではない。それは匙の『神器(セイクリッド・ギア)』から伸びるラインが彼の左側の胸部―――心臓の位置に接続されていたからだ。

 

それを見たガイアは先程の魔力弾と考えが結びつき、まさか…と思うな否や、やっと息を整い始めた匙に問い掛ける。

 

 

ガイア「匙っ!もしかして、君は()()()()()()()()()()()のかっ!?」

 

『…っ!?』

 

 

この思いもよらない問い掛けにダイナと梶尾、隣で戦っている小猫、仁村、四之宮も攻撃の手を止め、匙へ視線を向ける。

皆がどういうことだと思う中、匙はゆっくりと立ち上がり

 

 

匙「……ああ。そうだよ、高山。お前の言う通り、俺は命を魔力に変換している。()()()でな…」

 

『!?』

 

梶尾「匙!一体、どういうことだ!?」

 

 

不敵な笑みを浮かべながらガイアの考えを肯定すると、その場にいる皆は驚愕する。

梶尾達、シトリー眷属は聞いていないのか特にだ。

梶尾の問い掛けに匙は言葉を続ける。

 

 

匙「梶尾さん、言葉通りですよ。俺は魔力が低い……。だから、高山達を相手にするにはこの方法でしか魔力を高められなかったんです」

 

梶尾「何だと…っ!?」

 

仁村「匙先輩っ!」

 

 

命を魔力へ変換する……それは自殺行為にも等しい方法。生命エネルギーから作り出す魔力は威力は絶大だが、それを続けると確実に寿命は減り、最悪死に至ってしまう。

 

 

ダイナ「匙っ!お前、死ぬ気かよっ!?」

 

匙「ああ、死ぬ気だよ。死ぬ気でお前達を倒すつもりだ。……お前らに夢をバカにされた俺達の悔しさがわかるか?夢を信じる俺達の必死さがわかるか?この戦いは冥界全土に放送されてる。俺達をバカにした連中どもを見返してやるんだっ!」

 

ガイア「そんな…っ!」

 

匙「高山、俺には夢がある。会長が建てた学校の先生になるって夢が!だから、何が何でもお前達を倒すっ!!この命を引き換えにしてもなっ!!」

 

 

匙がそう言い放ってガイアに向かって走り出すと共に、梶尾達とガイア達は匙を内心心配しつつ、戦闘を再開する。

 

小猫は四之宮を牽制しつつ、仁村と激しい格闘戦を繰り広げる。

仁村も四之宮も匙の覚悟を聞いたからか先程よりも動きを激しくしている。

しかし、小猫は負けじと冷静に2人を相手をする。

 

 

小猫「…やっ!」

 

 

そして、遂に小猫の拳が仁村の頬を掠める。

この数分間、まともに与えられなかった攻撃が掠っただけだがやっと通ったのだ。

仁村は体勢を整る為にバックステップをしようとするが

 

 

グラッ…

 

仁村「…っ!?」

 

 

体がいうことを聞かず、少し揺らぐだけで目も異常に泳いでいた。

仁村が困惑する中、小猫は両拳に薄い白色のオーラを纏って懐に飛び込み

 

 

バンッ!

 

 

と小気味が良い音が鳴り響く一撃を彼女の胸元に打ちこむと、仁村は力が抜かれたように膝を落とした。

困惑する彼女を小猫は見下ろして告げる。

 

 

小猫「……気を纏った拳であなたに打ち込んで内臓に損傷を与えました。同時に体内に流れる気脈にも損傷させたので、もう魔力は練れませんし、動くことも出来ません」

 

 

ガイアは以前にアザゼルから仙術について聞いていた。仙術は相手の外部にダメージを与えられるが、その真骨頂は内部へダメージを与えることだと。

いかに強力な生物だろうが、内部に損傷を与えられればひとたまりもないだろうとガイアは頼もしいと思いつつも戦慄する。

 

 

仁村「…先輩方、ごめんなさい……」

 

《グレイフィア「ソーナ・シトリー様の『兵士(ポーン)』1名、リタイアです」》

 

 

仁村は悔しそうに一言漏らすと、体が粒子となってこの場から消滅する。

 

 

四之宮「うぉぉぉーーーー!!」

 

小猫「っ!」

 

 

四之宮は目の前で仁村が倒されたことで先程の飄々とした態度から一変して、怒りに駆られた表情になると、ゴミから作り出した円錐状の槍を小猫に向けて突進する。

普段は飄々とはしているが、実は仲間思いの熱い男なのだ。

 

しかし、その攻撃は作戦から考え出された冷静なものでなく、感情的と判断した小猫は右足に白色のオーラを纏う。

 

 

小猫「…はあっ!」

 

四之宮「なっ、ぐあっ!?」

 

ドォォォン!

 

 

そして、突進してくる四之宮に合わせてその場で跳躍すると、気を纏ったキックを四之宮の胸元に目掛けて放つ。

四之宮は突進していたので走るスピードを落とせず、そのまま炸裂すると、円錐状の槍を落としながら大きく後方へ吹き飛ばされ、壁に激突する。

 

 

小猫「……あなたももう動けないです」

 

 

その場で着地した小猫は遠くで倒れている四之宮に向かってそう告げる。

それを聞いた四之宮は苦しみながらも自嘲気味に笑い

 

 

四之宮「ふふっ。そうか……なら、爪痕ぐらいのこさねぇとな!」

 

小猫「……?何を――」

 

グサッ!

 

 

小猫は意味深に話す四之宮に訊ねようとした瞬間、横腹に鋭い痛みが走る。

そこへ視線を向けると、蹴り飛ばした際、四之宮が落とした円錐状の槍が横腹に深々と突き刺さっていた。

 

何故?どうして?と困惑すると同時にあまりもの激痛に小猫は大量に血が流れる横腹を抑えながら、膝をつく。

そんな彼女の疑問に光の粒子になり始めた四之宮は答える。

 

 

四之宮「…確かにお嬢ちゃんの思うように、俺の能力は視野の中でしか発揮できない。……けどな、視界内ならこんな風に作り出した武器を……遠隔操作できるっ!」

 

小猫「…かほっ!」

 

 

四之宮な最後の力を振り絞り、小猫の横腹に突き刺さっている槍を操作して更に深々と刺す。

 

 

ガイア「小猫っ!!」

 

匙「させるかよぉっ!!!」

 

 

ガイアはすぐさま小猫の救援に向かおうとするが、匙が進行方向を魔力弾で連射して妨害する。

両陣営とも仲間が倒れて、更に戦いが激化する中、四之宮は

 

 

四之宮「悪ィ~~梶尾。俺、やっぱ無理だわ」

 

《グレイフィア「ソーナ・シトリー様の『兵士(ポーン)』1名、リタイアです」》

 

 

最初の時のようにニコニコした笑顔で梶尾に告げると、粒子となって消滅する。

 

 

梶尾「四之宮……っ、!」

 

 

梶尾は四之宮が消えた場所を見て一瞬悲しげな表情を浮かべるが、すぐに切り替え、目の前のダイナへ攻撃を続ける。

 

その隣で戦うガイアは倒れている小猫を何とか救援しようとするが、匙の妨害で一向に近付けない。

しかも、今は匙の『神器(セイクリッド・ギア)』のラインに繋がっているせいで下手に高速移動も出来ない。

 

 

ガイア「ダイナ!」

 

ダイナ「ッ!デェアッ!」

 

 

ならば、自分の代わりに戦ってもらおうとガイアは隣で戦うダイナを呼ぶ。

ダイナはガイアの考えを察したのかその場で跳躍すると、匙の前に立ち塞がる。

 

 

ダイナ「ここは行かせないぜっ!ガイア!小猫ちゃんを頼んだぜ!」

 

ガイア「すまないっ!」

 

匙「邪魔だっ!」

 

 

そうはさせまいと匙と梶尾は小猫のもとへ走るガイアへ妨害射撃をするが、

 

 

ダイナ「デュッ!」

 

 

素早く回り込んだダイナがウルトラバリヤーを展開して、銃弾と魔力弾を弾く。

その隙にガイアは小猫を拾い上げ、遠くの物陰に隠れた。

 

それを見た2人は射撃をやめ、ダイナもバリヤーを解除する。

すると、

 

 

匙「うおぁぁぁぁぁぁーーーーーーーー!!!!」

 

ダイナ「ッ!」

 

 

匙がけたたましい程の雄叫びをあげながら左手に直径20mもあろう巨大な魔力弾を作り出す。

心臓に接続しているラインから限界以上まで命を魔力へ変換しているのだ。

その証拠に体のあちこちに浮かんだ血管から血が吹き出し、顔も苦痛に歪んでいる。

 

 

梶尾「よせっ、匙!本当に死んでしまうぞ!」

 

ダイナ「そうだ!やめろ、匙!」

 

匙「……勝つんだっ!ここでお前を倒して、先に進むっ……!その為ならこの命、惜しくないっ!!」

 

 

心配する2人の忠告に耳を傾けず、匙は更に魔力弾を大きく形成していく。

匙の鬼気迫った様子と確固たる覚悟を固めた眼差し……。ダイナもここで匙を倒す決意をすると、腰を下げて腕を十字に組む。

 

 

匙「うおらぁぁぁぁぁーーーーーーーーーー!!!」

 

ダイナ「デェアァァッッ!!!」

 

 

そして匙の放たれた巨大な魔力弾とダイナのソルジェント光線がぶつかり合う。

接触面からスパークがほとばしり、そこから発生した風圧で瓦礫や四之宮が持ってきたゴミが踊るように宙に浮かぶ。

 

しばらく押し合っていたが

 

 

ダイナ「ハァァーーーー!!」

 

匙「っ!?」

 

 

ダイナが気合いを込めると、光線の威力が上がり、匙の魔力弾を押し返し始める。

匙は更に魔力を込めるが、光線の威力には敵わず、魔力弾ごとグングン押し返していく。

 

 

ダイナ「デェアッ!!」

 

 

ダイナがより気合いを込めると、光線は遂に魔力弾を弾き飛ばし、真っ直ぐ匙に向かっていく。

匙はひどく疲弊し、重傷を負っているせいで身動きが取れず、避けられない。

迫りくる光線に身を固めるが

 

 

梶尾「匙っ!ぐあぁぁぁぁーーーーーー!!!」

 

ドガァァァーーーーーーーーンッ!!

 

匙「梶尾さんっ!」

 

ダイナ「ッ!?」

 

 

梶尾が匙を横へ押し飛ばし、光線をまともにくらい、爆発が起きる。

突然のことに尻餅をついている匙とダイナは驚愕する。

 

 

《グレイフィア「ソーナ・シトリー様の『兵士(ポーン)』1名、リタイアです」》

 

匙「くっそぉぉぉ………!」

 

 

梶尾がリタイアしたことを告げるアナウンスがホールに鳴り響くと、匙は悔しさのあまり、床を殴りつける。

ガイア達を倒すばかりか、次々と仲間がやられていく現状に何も出来ない自分が悔しいのだ。

 

そして、匙は叫ぶ。

 

 

匙「…どうしてっ!どうしてお前らに勝てねぇんだよ!俺は先生になるって夢を叶えちゃいけないのかっ!?俺にはそんな資格がないと言うのかっ!?どうして俺達は笑われないといけないんだっ!?」

 

ダイナ「…」

 

 

そう叫びながら悔し涙を流す匙をダイナはいたたまれない気持ちで聞く。

匙はダイナ……否、このゲームを観ている全ての悪魔に向かって訴えているのだろう。

 

 

匙「兵藤…!俺達の夢は笑われる為に掲げた訳じゃねぇんだっ!」

 

ダイナ「俺は笑わねぇよっ!それに我夢や部長達も!夢の為に命をかけてまで戦うお前を笑うわけないだろっ!」

 

 

吠えるように叫ぶ匙をダイナは肯定する。

夢をバカにされるのはその人の意思をも否定する……それはウルトラマンダイナである一誠も同じだ。

夢を情熱をかける男が命をかけてまで戦う……だからこそ、1人の友人として…1人の好敵手として正々堂々と戦うとダイナは改めて決心する。

 

 

ダイナ「ハッ!」

 

匙「兵藤ォォォーーーーー!!」

 

 

決心を固めたダイナが疾走すると同時に匙もズタボロの体に鞭を打って駆け出す。

 

その最中、ダイナは刀を帯刀するように腰に添わせた右の手刀にエネルギーを込め、匙は右の拳にありったけの魔力を纏わせる。

匙にとっては恐らく、これが正真正銘……最後の攻撃だ。

 

両者はあと一歩のところまで接近すると、すれ違い様の一瞬に匙の拳がダイナの左胸に、ダイナの手刀が匙の脇腹に炸裂し、通り過ぎる。

 

 

「「……」」

 

 

そして、訪れる静寂。

2人ともそのまま体勢を崩さずピタリと止まり、周囲の空間はまるで時が止まったようにも思えた。

そして、何分も、何時間も経過している錯覚が起きる空間で先に倒れたのは…

 

 

匙「…ごほっ!?」

 

 

匙だった

匙は血反吐を吐きながら膝をつくと、その場でバタンと倒れる。

 

対するダイナは胸元を覆うダイナテクターの左側が負傷してはいるが、傷は浅い。

その理由は、匙の拳が当たるより先に必殺の『ダイナチョップ』を叩き込んだおかげで匙の体勢が僅かに崩れ、重傷に至らなかったのだ。

 

 

ダイナ「…」

 

 

ダイナはゆっくりと振り返ると、反対側で倒れている匙を見下ろす。

匙は意識を失っており、もうピクリとも動かない。

急所を突いたので立ち上がることすら出来ないだろう。

その証拠に彼は段々と光の粒子になっていき…

 

 

《グレイフィア「ソーナ・シトリー様の『兵士(ポーン)』1名、リタイアです」》

 

 

完全にその場から消滅すると、グレイフィアのアナウンスが響き渡る。

それと同時にダイナの腕に接続されていた匙のラインも消滅する。

 

4人による攻撃対策や連携に長いこと苦しめられたガイア、ダイナ、小猫だが、ようやく倒すことに至った。

リタイアしてしまったゼノヴィア、ギャスパーの無念も晴れ、ゲームも有利になるだろう。

 

 

ダイナ「…」

 

 

しかし、勝利したダイナの心は喜びよりも虚しい悲しさだけが残った。

それは遠くの物陰に隠れているガイアと小猫も同じ気持ちだろう。

 

夢への情熱を持った男を叩き潰したダイナ――――夢を誰よりも大事にする彼にとっては辛く苦しく、しばらくその場で立ち尽くすのだった。

 

 

 

 




次回予告
※(イメージBGM:ウルトラマンダイナ次回予告BGM)

ソーナ「決着を着けましょう」

リアス「臨むところよ!」

白熱するゲームも遂にクライマックス!
勝利を手にするのはリアスか?ソーナか?

次回、「ハイスクールG×A」
「ぶつかり合う理想(後編)」
お楽しみに!




今回初登場したオリジナルキャラクターの『四之宮 龍』は、本作品の読者さん『SOUR』さんのリクエストを採用して登場させました。
『SOUR』さん、ありがとうございます!!

少しネタバラシしますが、四之宮は今後のストーリー展開に関わってくる重要なキャラクターですので、目を離さないように…w

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