ハイスクールG×A   作:まゆはちブラック

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第32話「ぶつかり合う理想(後編)」

匙との戦いを終えたダイナは小猫の治療を終えたガイアと合流していた。

 

まず最初にダイナが匙、梶尾との戦いの結末を語った。

ガイアは語るダイナの無機質な表情がどこか悲しんでいるのを感じられずにはいられなかった。

そして、次は小猫のケガについての話になった。

 

 

ダイナ「我夢。小猫ちゃんの容態は?」

 

ガイア「うん、傷は深かったけど回復光線で治療したから大丈夫だよ」

 

ダイナ「そうか………あれ?ところで小猫ちゃんは?」

 

 

ダイナはキョロキョロと辺りを見渡しながら訊ねる。

話の当人である小猫の姿が一向に見えないのだ。

その疑問にガイアは

 

 

ガイア「ああ。彼女は傷口は治療できたけど、大量に血が出ててね……今は休ませている。後から合流できると思うから心配ないよ」

 

 

そう答えると、ダイナは納得する。

四之宮が放った一撃で倒れた小猫をガイアが救助するまで匙達の妨害もあって、5分ほどかかった。

5分という短い時間でも、傷口から血が大量に出るのには充分だ。

 

ひととおり話し終えたガイアは近くの店の掛け時計を見る。

戦い始めてからかなりの時間が経っており、残り時間は1時間半をきろうとしていた。

 

 

ガイア「…ゲームの残り時間も半分をきりそうだ。早く行こう」

 

ダイナ「ああ」

 

 

ガイアの言葉にダイナは頷くと、2人は本陣へ向かって移動を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

警戒しながら移動を続けて3分。ガイアとダイナはショッピングモールの中心部にある広場に来ていた。

そこは普段買い物に疲れた客がひと休みする為の円形状のベンチがあり、中央にある柱時計を囲むように配置されている。

 

普段、気を緩められる場所をガイアとダイナは慎重を進む。そして、中央にある柱時計を通り過ぎようとした時、視界に映ったものを見て、足を止める。

 

 

ソーナ「ごきげんよう、高山 我夢君、兵藤 一誠君」

 

 

誰でも足を止めるだろう。

そう、目の前にゲームの標的であるソーナが何食わぬ顔で2人の女子を連れて立っているからだ。

しかし、さすがにそのまま立っているのでなく、ソーナは結界で覆われている。

ガイアから見て右にいるお下げの髪型が特徴の『僧侶(ビショップ)』の憐耶(れや)、左にいる黒髪で同じく『僧侶(ビショップ)』の(もも)が作り出しているのだろう。

 

 

ソーナ「なるほど……以前見たことありますが、より強い力を感じますね」

 

「「…」」

 

 

ソーナはまじまじとガイア達を見ながら、感想を漏らす。

目の前に敵がいるのにも関わらず、普通に会話するような口調で話すソーナにガイアとダイナは更に警戒を強めていると、

 

 

リアス「……ソーナ、大胆ね。まさか最前線に出てくるなんて」

 

ソーナ「…っ」

 

ダイナ「部長っ!?」

 

 

ガイア達の後ろの通路からリアスが堂々とした態度で現れる。朱乃、アーシア、そして合流したであろう木場も一緒だ。

リアスの登場があまりにも早かったのかソーナは一瞬目を見開くが、すぐに冷静な顔に切り替える。

 

 

ソーナ「…そういうあなたも自ら表へ出ているではありませんか、リアス」

 

リアス「ええ。でも、どちらにしてもゲームは終盤―――残された時間も少ないから、出てくるのは当然というのはあなたも同じでしょ?」

 

ソーナ「そうですね。ですが、あなたの作戦通りに事は運ばなかったようですね」

 

リアス「…っ」

 

 

ソーナにそう指摘されたリアスは顔をしかめる。

実はリアスの考えた作戦は、今回一番警戒されているであろうガイア達は囮で、その間に木場とゼノヴィアはソーナを倒す作戦だった。

しかし、実際は思った以上に苦戦した。特に偵察係のギャスパー、悪魔にとって厄介なデュランダルを持つゼノヴィアがやられたのは痛手だ。

 

若手悪魔で火力重視のリアスに対して、ソーナは知能派と言われる。

作戦を立てるのはリアスより1枚上手であることをガイア達は思い知った。

そんな空気の中、リアスは

 

 

リアス「…とにかく、この場で決着をつけましょう」

 

 

そう言うと同時にガイア達も臨戦態勢に入る。

だが

 

 

ガイア「…グアッ?」

 

 

突然ガイアは力を吸われたような感覚に襲われると、その場で膝をついた。

意識は朦朧としており、肩で息をするほど呼吸も苦しい。しかも変身も解けてしまった。

 

 

リアス「我夢?」

 

ダイナ「おいっ、どうしたんだよ?我夢!!」

 

アーシア「治療しますっ!」

 

 

様子がおかしいのに気付いたリアス達は血相を変えて声をかける中、アーシアが回復のオーラを我夢へ飛ばす。

アーシアの能力で我夢は淡い緑色の光に包まれ、今まで受けた傷の痛みは治った。

しかし、朦朧とする意識だけは依然そのままである。

 

 

リアス「だったらこれで………っ!」

 

 

一向に治らない我夢の症状に、リアスは懐から取り出したフェニックスの涙を使おうとしたが、踏みとどまる。

アーシアの『神器(セイクリッド・ギア)』で治らないということは原因は外傷ではないことだと気付いたからだ。

 

我夢の症状にリアス達が困惑する中、ソーナは小さな笑みを浮かべ

 

 

ソーナ「アーシアさんの『神器(セイクリッド・ギア)』でも、フェニックスの涙でも治りませんよ」

 

リアス「何をしたの?」

 

 

そう話すとリアスは問いかける。

すると、ソーナは淡々と話し始める。

 

 

ソーナ「…優れた頭脳を持つ高山 我夢君、根性で立ち上がる兵藤 一誠君。それに加えてウルトラマンの力を持っている2人は非常に危険なので早めに倒すべき存在です。ですが、私達の力では、真正面で立ち向かっても勝ち目がありません。なので、違う方法であなた達2人を倒すしかなかったのです……」

 

 

ソーナが言い終えると、桃は抱えていたバッグから何かを取り出す。

それは点滴等に使われる医療用のパックだった。

パックの中身は血の様な赤い液体が入っており、チューブを接続する箇所は赤い液体が流れる薄く透き通ったラインが繋がれており、それは我夢とダイナの腰に繋がっていた。

 

 

ダイナ「それは……」

 

ソーナ「これはあなた方、2人のです。いくら強い力を持っているでしょうが、元が人間であるあなた達が体内に通う血液を半分以上失えば致死量です」

 

我夢「そうか…!あ、あなたは…これを狙って……」

 

ソーナ「その通りです。レーティングゲームのルールでは、戦闘不能状態になると、強制的に医療ルームへ転送される………それは失血も例外ではありません。サジの『神器(セイクリッド・ギア)』のラインを魔力で細工して気付かれないようにし、それを通して少しずつ少しずつ血を吸いとっていたのです」

 

 

ソーナの言葉を聞き、我夢とダイナは思った。

匙の狙いはラインによってエネルギーを吸収するのではなく、致死量まで失血させてリタイアさせる為だと。

完全に裏をかかれたリアス達は焦りを見せ始める。

 

ソーナはダイナを見て

 

 

ソーナ「あなたはまだ倒れていないようですが、私の計算によると、あと7秒で彼と同じ様になるでしょう」

 

ダイナ「ッ!」

 

ソーナ「5…4…」

 

 

余命宣告みたいな言葉を告げると、ソーナは左手首に着けているXIGナビで秒読みを始める。

ダイナは腰のラインを引きちぎって床に投げ捨てたが、既に血は大分吸われており、どうしようもない。

そして、

 

 

ソーナ「…2…1…0」

 

 

秒読みが終わり、ダイナは襲いくるであろう失血症状に身を固めるが…

 

 

ダイナ「……?」

 

ソーナ「…何故、倒れないのです?」

 

 

…一向に倒れる気配がない。

これにはソーナやこの場にいる皆、ダイナ本人ですらわからない様子だ。

両陣営とも困惑している中、1人だけ回答を提示する者がいた。

 

 

我夢「…それは僕が少しだけ細工をさせてもらったんですよ」

 

『!?』

 

 

それは苦しみつつもうっすらと笑みを浮かべている我夢だった。

皆が注目すると、我夢は語り続ける。

 

 

我夢「あなた達がウルトラマンの僕とイッセーに対して何かしらの対策を講じてくることは僕達もわかっていました。だから、エネルギーを吸収できる匙を必ずぶつけてくることも必然的にわかる。最初はラインを使ってのエネルギー切れを狙っているかと思いましたが、仲間を救助した時に透明なラインが腰に繋がっていることに気付いたんです、それを使って失血させることが本当の狙いということも………だから細工をしたんです」

 

ソーナ「一体、何をしたのです?」

 

我夢「一旦、僕のラインを切り離して、漏れた血を負傷した仲間の献血に使いました。献血した後は再び僕自身に繋ぎ、イッセーに繋がれているラインをこっそり穴を開けて、僕の血を入れた後、中に仕切りを作る為にコインを入れました。塞がれても、遠くからじゃわかりませんからね。これがイッセーが僕と同じ症状にならなかった理由です」

 

 

彼の事の顛末にソーナ達は驚く。

我夢は作戦を考えた本人ですら気付かなかった欠点をこの短時間で見抜き、対策を実行する……ソーナは改めて彼が危険であることを知った。

 

 

ダイナ「嘘だろ……我夢!どうしてそんなことを…!」

 

我夢「ごめん、イッセー。君に言ったら絶対に止めると思ったから……。それに僕と部長しか知らない“()()()()()”を勘づかれる訳にもいかなかった」

 

『?』

 

 

“本当の作戦”とはどういうことだ?と首を傾げた一同はリアスへ顔を向けると、彼女は口を開く。

 

 

リアス「ええ、我夢の言う通り、実は私とこの子しか知らない作戦があったのよ」

 

ダイナ「ッ!どうして、俺達に知らせてくれなかったんですか?」

 

リアス「ごめんなさいね。敵を欺くには味方から……そういう日本のことわざがあるから、それを実行したのよ」

 

 

ダイナにそう言ったリアスは「話を戻すわ」と本題に戻る。

 

 

リアス「どんな生物でも上手くいったら必ず隙を見せる……前回のレーティングゲームでそれを教わったわ。我夢があえてあなたの作戦に乗ったフリをしたのは、その隙をあなたから出させる為なのよ…………あと、この場に誰かいないと思わない?」

 

ソーナ「……まさかっ!?」

 

リアス「そう、我夢だけじゃなくて私も囮なのよ。()()()を進軍させる為のね」

 

 

リアスの問いかけにハッと気が付いたソーナにリアスは左耳につけているインカムをはずし、皆に聞こえる様に魔力でスピーカーの様に音量をあげる。

そこから聞こえる声は…

 

 

《小猫「……部長、本物のソーナ会長は屋上にいます」》

 

 

その声を聞いた瞬間、皆は驚く。

そう、リアスが言うあの子とは小猫のことだったのだ。

リアス達が囮になっている間に小猫が本陣付近を偵察していたのだ。

 

 

ソーナ「リアス…」

 

 

ソーナは悔しげに歯を噛み締める。

相手の作戦の裏をかいたと思ったら、更にその裏をかかれていたことに気付かなかったのはショックだろう。

 

そんな中、遂に我夢は膝をつけなくなり、その場で倒れ込んでしまう。

 

 

『我夢(君)!』

 

 

それを見たリアス達は思わず大声を出して、倒れている我夢に駆け寄る。

我夢の体は光の粒子になり始めていた。

 

 

我夢「…すみません。僕はここまでです……」

 

リアス「あなた自身が犠牲になるなんて聞いてないわ……。でも、ここまでやってこれたのはあなたのおかげよ?ありがとう…」

 

我夢「はい…」

 

 

我夢はリアスから感謝を受けると、我夢はダイナへ顔を向け

 

 

我夢「後は任せたぞ……“親友”…!」

 

ダイナ「…ッ!」

 

《グレイフィア「リアス・グレモリー様の『兵士(ポーン)』1名、リタイアです」》

 

 

一言そう告げると、我夢はその場から消滅し、同時にグレイフィアのアナウンスがホール中に響く。

我夢のリタイアにリアス達は悔しがりつつも、すぐさまゲームへ勝利することへ思考を切り替える。

 

 

リアス「みんな!ここは任せたわよ!!」

 

『了解!/ラジャー!』

 

リアス「アーシア!」

 

アーシア「はいっ!」

 

 

リアスは先導を切ってそう言うと、アーシアを連れて、ソーナがいる屋上に向かって走り出す。

 

 

椿姫「そう簡単には行かせませんよ」

 

 

だが、そうはさせまいと物陰から颯爽と現れた椿姫と結界の展開及び、ソーナの立体映像の投影を止めた憐耶と桃が立ちふさがる。

 

 

木場「こっちも邪魔させてもらいますよ!」

 

 

それに対して木場、ダイナ、朱乃がリアスらを先に行かせる為に対峙する。

3人共、ここへくるまでにやられた仲間の無念を晴らそうと、気合いが入っている様子だ。

その間にリアスとアーシアは屋上へ向かって行った。

 

残されたグレモリー眷属3人、そして対するシトリー眷属も3人。人数は同じ3対3―――1人が1人と戦える五分五分の状況だ。

 

 

椿姫「さて、木場 祐斗君。刃を持つ同士、刃で決めますか?」

 

木場「それもいいですね。僕もあなたには借りがあるので」

 

ダイナ「んじゃあ、俺はこの子と戦うとするか」

 

朱乃「…」

 

 

椿姫と戦うことに決めた木場に続いて、ダイナは桃、朱乃は憐耶と対戦相手を決める。両陣営はそれぞれ身構えて、いざ、戦おうとしたその時

 

 

バチバチバチィィーーーーーッ!!

 

『っ!?』

 

 

と辺りを照らす程の雷が鳴り響く。

木場、ダイナ、それにシトリー眷属達は目の前に相手がいるのにも関わらず、思わずそちらへ振り向く。

雷の発生源は瞳が涙に濡れ、冷たいまでの殺気を放ちながらバチバチ…と黄金のスパークを放つ朱乃だった。

 

 

朱乃「…」

 

 

朱乃はふらふらとおぼつかない足取りで前へ出る。その言葉には形容しがたい威圧に、対戦相手の憐耶だけでなく、木場達もゾッと背筋が凍る。

 

 

朱乃「……我夢君に私の決意を見てもらおうとしたのに…………この嫌な力を我夢君の前で使うことで……乗り越えようとしたのに………」

 

 

朱乃は低い声でそう呟くと、ゆっくりと手を前へかざし

 

 

朱乃「許さないっ!!」

 

 

ホールを飲み込む程の大出力の雷を憐耶へ向けて放つ。その雷は我夢を失った怒りが含まれており、未だかつてない威力だ。

 

 

憐耶「反転(リバース)!」

 

 

襲いかかる雷が直撃する瞬間、憐耶は両掌を前へ突きだし、反転させようとするが

 

 

ビガガガガガガガガガガァァァァーーーーーッッ!!

 

憐耶「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"ーーーーー!!」

 

 

反転できず、そのまま直撃する。

憐耶は苦痛の叫びをあげると、そのまま地に倒れ伏せる。

朱乃はリタイア時の光に包まれ始めた彼女を見下ろし

 

 

朱乃「無駄よ。雷を反転させようとしたのでしょうけど、今のは雷光。反転させるには光の部分が足りなかったわね」

 

《グレイフィア「ソーナ・シトリー様の『僧侶(ビショップ)』1名、リタイアです」》

 

 

そう一言言い終えると同時に憐耶はその場から消え、グレイフィアのアナウンスが流れる。

この一瞬の出来事に彼女以外、この場にいる全員が圧巻する。

朱乃の雷光の威力もだが、それよりも彼女がこれほどまで怒り狂うぐらい、我夢の存在は大きいものになっていることだった。

 

 

椿姫「…くっ!」

 

桃「…っ!」

 

 

しばらく気をとられていた椿姫と桃だがすぐにハッとなると、身の危険を感じて、ダイナ達とは反対方向へ走り出す。

雷だけでも強力な上に悪魔の弱点である光が合わさっているのだから、恐ろしいのは当然だ。

 

だが、それを易々と逃がす程、ダイナ達は甘くない。

木場は2人を追跡する為、得意のスピードで駆け出す。

 

 

ダイナ「ハァァァァァ~~~~……デェアッ!」

 

 

木場が後を追っている中、ダイナは力強く両腕を横に広げると、足先から全体にかけて網目状の粒子になって姿を消す。

そして、次の瞬間。ダイナは逃走する椿姫達の前に姿を現した。これぞ、ダイナテレポーテーションだ!

 

 

「「!!?」」

 

ダイナ「ダァッ!」

 

 

突然目の前に現れたことに驚く椿姫達にダイナはすぐさま拳を繰り出す。

 

 

桃「はっ!」

 

 

桃が前に出て、結界を展開。ダイナの拳は強固な守りに防がれる。

しかし、彼女らは休んでいる暇はない。

 

 

木場「はぁぁぁぁーーーーー!!」

 

椿姫「くっ!」

 

 

後ろから追い付いた木場が新幹線の様な勢いのまま、椿姫の腹部目掛けて斬りかかる。

椿姫は何とか薙刀の柄部で防ぐが、あまりもの衝撃に後ずさる。

状況は木場とダイナに挟まれ、かつ彼らの後ろには朱乃がいる不利なものだ。

 

しかし、彼女らは負けられない。

必死に戦い、そして散っていった仲間を思えば、不利な状況でも戦意は決して失わない。

 

 

ダッ!

 

木場「!」

 

 

椿姫は身構えながら横へ向かって駆け出すと同時に木場は並走すると、そのまま近くの服屋の中へと入っていった。

お互い、目の前の相手と決着をつけるつもりだろう。

 

残されたダイナと桃はどちらとも飛びかからず、ゆっくりとした足取りで間合いをはかっていた。

 

 

ダイナ「ン"ン"ン"ン"ン"~~~~…デェアッ!!」

 

 

ダイナは立ち止まり、両腕を交差すると、額のダイナクリスタルが赤く輝き、ストロングタイプにチェンジした。

 

たくましい両腕を振り上げたファイティングポーズで己を鼓舞すると、そのまま桃に向かって駆け出す。

その道中、右腕を勢いよくブンブンと回し、遠心力を高める。

 

 

ダイナ「ダァァァァァァーーーーーー!!」

 

桃「…っ!」

 

 

接近したダイナは遠心力を利用した強力な拳を繰り出す。桃は先程のように結界を展開して防ごうとするが

 

 

バリィィンッ!

 

桃「うあぁぁぁぁぁーーーーーー!!」

 

ドォォォンッ!!

 

 

ストロングタイプの剛力に結界は耐えきれず砕け散り、拳が腹部に炸裂する。その衝撃に桃は苦悶の表情を浮かべながら大きく後方へ吹き飛ばされ、爆発した。

 

 

《グレイフィア「ソーナ・シトリー様の『僧侶(ビショップ)』1名、リタイア」》

 

ダイナ「…よし、木場のところへ行くか」

 

 

アナウンスから桃がリタイアしたことを知ったダイナはひと安心すると、すぐに木場のもとへ向かおうとするが

 

 

ガッシャアァァァァァーーーーーーーン!!

 

ダイナ「!?」

 

 

木場が戦っている洋服屋からガラスや木材の破片と共に何かがものすごい速度でダイナを横切る。

ダイナは驚きつうもその何かが飛んで行った方を振り向くと、そこには右肩から左の脇腹にかけて斬られた椿姫が倒れていた。

 

 

椿姫「……ソーナ。危険なのは兵藤君や高山君だけではないわ……!」

 

《グレイフィア「ソーナ・シトリー様の『女王(クイーン)』、リタイア」》

 

 

椿姫は一言そう呟くと、光に包まれ、この場から消滅した。

一体、何があったんだ?とダイナが思った矢先

 

 

木場「そっちも終わったようだね」

 

ダイナ「…ッ!」

 

 

声がする方へ振り向くと、爽やかな顔をした木場が洋服屋からこちらへ向かって歩いてきていた。

体のあちこちが切り傷だらけで、いかに激しい死闘を繰り広げていたかを物語っている。

 

しかし、ダイナは彼のある一点を見て驚く。体の傷ではなく、彼の持つ剣にだ。

それはゼノヴィアが使っている聖剣デュランダルだった。

ダイナは彼の持つデュランダルに指を指して訊ねる。

 

 

ダイナ「なあ、それどうしたんだよ?」

 

木場「ああ、これはゼノヴィアの提案だよ。『もし、自分が動けなくなった時にデュランダルの所有権を一時的に僕へ譲る』ってね」

 

ダイナ「何でもありだな………って!?お前、聖剣使えんのかよ!?」

 

木場「昔はね。でも、今は『禁手(バランス・ブレイカー)』のおかげで扱えるようになったんだよ」

 

 

すげぇなそれ……とダイナは感嘆しつつ呟く。

神が作った『神器(セイクリッド・ギア)』は研究はされてはいるが、未だ解明されてない謎も多い。

木場のもその1つかも知れない。

納得したダイナは天井を見上げ

 

 

ダイナ「ま、後は俺達の主の勝利を祈るか」

 

木場「そうだね」

 

 

そう言うと、木場は頷き、同じく天井を見上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、リアスとアーシアは道中に偵察していた小猫と合流し、ソーナが待つ屋上に来ていた。

現実では見える空や見渡せる町並の景色はなく、ゲーム空間であることをわからせる真っ白な空間だけがある。

そして、何もない空間に囲まれている屋上にソーナが静かに佇んでいた。

 

 

ソーナ「…来ましたか」

 

リアス「ソーナ。私達を罠にはめるとはわかってはいるけど、どうして屋上に?」

 

ソーナ「あなた達に私の立体映像を攻撃させて、少しでも疲弊させるのが狙いでした。それに『(キング)』が最後まで生きれば、ゲームは終わらない。遮蔽物が何もない屋上にあえて隠れることで、あなた達を欺くことが出来るからです……。しかし、高山君には何から何まで見破られていましたが……」

 

リアス「…」

 

 

淡々と話すソーナを見て、リアスは複雑そうな表情を浮かべる。

いつもの様に冷静な顔だが、長い付き合いのあるリアスには彼女が悔しさと悲しみがこみ上げているのがわかった。

 

状況は3対1……それに下層にいるダイナ達を加えれば6対1と、どう見てもソーナに勝機がないのは一目瞭然だ。

上手くいったと思った作戦は早い段階で見破られ、仲間も次々と失う。これに悔しく思わないのは誰もいないだろう。

 

 

ソーナ「けど、リアス。私は諦めません。必死なのは私達も同じなのです。私の夢に懸命に戦い、倒れていったサジや多くの眷属に報いる為、最後まで戦うつもりです」

 

リアス「…っ!」

 

 

しかし、ソーナはその言葉通り、諦めていない。何よりも眼鏡のフレーム越しに見える瞳がそれを物語っている。

例え、どんな結果になろうが最後まで戦うつもりだ。

 

ソーナは「さて…」と呟くと、周囲を魔力で膨大な水を作り出していく。シトリー家は水の魔力を得意をする。さすが次期跡取りと言えようか。

それに合わせてリアスも滅びの魔力をその身に纏わせていく。

 

 

ソーナ「決着を着けましょう」

 

リアス「臨むところよ!」

 

 

そう言うと、2人はその場から駆け出し、魔力をぶつけ合う。

そして、長いとも短いとも言える時間での激闘を制したのは――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《グレイフィア「ソーナ・シトリー様、リタイアです。これによって、リアス・グレモリー様の勝利です」》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我夢「う…ん……?」

 

 

我夢が目を覚ますと、ベッドの上に横になっていた。

辺りを見渡すと、腕には点滴がついており、真っ白い壁やカーテンがあることから、どこかの医療施設であることがわかった。

 

 

我夢「(ゲーム、どうなったのかな?)」

 

 

上体を起こした我夢がそんなことを考えていると、

 

 

コンコン…

 

我夢「!」

 

 

病室のドアがノックされる。

我夢は誰だろうと思っているとドアは開かれ、リアス達オカルト研究部が入ってくる。

その中には、同じくリタイアしたゼノヴィアとギャスパーの姿もあった。

 

 

我夢「あ、部長」

 

リアス「我夢。あなたが起きるのが一番遅いから心配だったけど、その様子じゃ心配ないわね。はい、これでも飲みなさい」

 

我夢「ありがとうございます………」

 

 

我夢はリアスからペットボトルの飲料水を受け取ると、キャップを外し、グイッと口の中へ流し込む。

ゲーム中は常に緊張や危機感があった為、水分補給を取る気は起きず、喉が渇いていたのだ。

 

喉を潤し、ホッとひと息ついた我夢はリアスに訊ねる。

 

 

我夢「…部長。僕達は勝ったんですか?」

 

リアス「ええ、勝ったわ。でも、ゲーム序盤にギャスパーがやられたのとウルトラマンであるあなたを犠牲にしたことが評価を下げてしまったけどね」

 

我夢「そうですか…」

 

 

そう言いながら苦笑いを浮かべるリアスに我夢は喜んでいいのか悔しがったらいいのかわからず、複雑そうに顔を浮かべる。

そうしていると、我夢は朱乃に目が合った。

 

 

我夢「朱乃さん、すみません!見守るって言っておきながら、勝手にリタイアしてしまって!」

 

 

我夢は深く頭を下げる。

自分の血を受け入れようとする彼女と約束しておきながらも自分はゲームの勝利の為とはいえ、それを破ってしまった。

その事実に我夢は心から謝罪すると、朱乃は

 

 

朱乃「あらあら、うふふ…♪良いのですよ。こうしてあなたが無事でいてくれるなら………さあ、頭を上げて下さい♪」

 

我夢「朱乃さん…」

 

 

そう言っていつもの様に微笑むと、我夢は申し訳なさも残しつつ微笑む。

すると、一誠が何かを思い出したの様に「あっ!」と声をあげる。

 

 

一誠「そういえばよ、匙がサーゼクス様から勲章を貰ったんだよ!」

 

我夢「勲章?」

 

一誠「そう!レーティングゲームで優秀な戦いをしたやつが貰える勲章さ!何でも、作戦を読まれていたけど結果的にガイアを倒したかららしいぜ!」

 

我夢「そ、そうなんだ……」

 

一誠「俺さぁ、その後に言ったサーゼクス様の『何年、何十年とかかってもいい。レーティングゲームの先生になりなさい』って言葉に感動してよぉ~~。ううっ、思い出しただけで涙が出るぜ……!」

 

 

そう言っておいおいと泣く一誠に我夢は困ったように笑みを浮かべる。

“自分が結果的に倒されたこと”が引っかかり、素直に喜んでいいのかわからないが

 

 

我夢「(匙、おめでとう…)」

 

 

とりあえず…とりあえず今は匙を祝うことにした。

ゲームの結果は匙達シトリー眷属の負けだが、理想を叶えようと必死に戦ったのは決して無駄では無かった。

悪魔のトップである魔王に認められたのだから…。

我夢はそんな微笑ましい気持ちに浸っていると

 

 

コンコン…

 

『?』

 

 

病室のドアがノックされる。

看護師さんかなと思った我夢が「はーい、どうぞ」と返事すると、ドアが開かれ

 

 

石室「久しぶりだな、我夢。元気そうで何よりだ」

 

『!?』

 

我夢「っ、コマンダー!」

 

 

XIGのコマンダーである石室が微笑みながら入ってくる。思わぬ登場に我夢だけでなくリアス達も驚くが、入ってくるのは彼だけではない。

 

 

「失礼するぞい」

 

 

次に入ってきたのは西洋の偉人が被ってそうな帽子を被り、高価そうなローブを身に纏った隻眼の高齢と思われる老人だ。

しかし、この老人は我夢どころかオカルト研究部全員も見たことがない様子だった。

 

 

一誠「あのぉ~、誰っすか?」

 

 

一誠が怪訝そうに訊くと、老人は長く生やした真っ白な髭を擦りながら「ホッホッホッ」と愉快に笑い

 

 

オーディン「わしはオーディン。名前くらいは聞いたことはあるじゃろ?北欧神話『アースガルズ』の主神じゃ。……と言ってもただの北の田舎ジジイじゃがな」

 

『……』

 

 

アースガルズといえば、ヴァーリが以前戦おうとしていると聞いている。その主神が目の前で愉快に笑う老人であることにリアス達は唖然とする。

サーゼクスの様な高貴かつ強そうなオーラを微塵も感じない…。

 

そうしていると、オーディンは我夢と一誠の顔を交互に見る。

 

 

一誠「…?」

 

我夢「何でしょう?」

 

オーディン「いやいや、お主らが現代に誕生したウルトラマンじゃな。力は申し分ないが、意外なところで苦戦しておったの。まだまだ修行が必要じゃな。ホッホッホッ……!」

 

「「……」」

 

 

そう言ってまたも愉快に我うオーディンに我夢と一誠は何とも言えない気分になる。

確かにこの老人はオーディンだが、どう見てもただのオッサンしか見えない。

 

オーディンはひとしきり笑うと、今度はリアスへ顔を向ける。

自分へ何かを話そうとしていると察したリアスはペコリとお辞儀すると、挨拶をする。

 

 

リアス「オーディン様、お初にお目にかかります。私、リアス・グレモリーと申します」

 

オーディン「うむうむ……サーゼクスの妹じゃな。試合、見ておったぞ。まあ、ああいうこともある。精進あるのみじゃな……………しかし、デカイのぉ。観戦中、こればかり見とったぞい」

 

リアス「…///!」

 

 

オーディンの卑猥な目が自分の胸に注がれたリアスは顔を赤くして、すぐさま胸元を手で隠す。

しかし、オーディンは手指をワキワキと動かしながら、リアスの胸を見るのを止めない。

 

 

一誠「やっぱり、ただの変態ジジイじゃねぇか…」

 

我夢「うん…」

 

 

呆れた一誠の呟きに我夢は頷く。

これにはグレモリー眷属だけでなく、石室コマンダーも呆れた様子で額に手を当てている。

 

さすがにこのままだといけないので、一誠が止めに入ろうとした時、

 

 

バチィンッ!

 

『!?』

 

 

誰かが後ろからハリセンでオーディンの頭をひっぱ叩く。皆はそちらへ顔を向けると、いつの間にか入室していた鎧を着た銀髪の美女がハリセンを持っていた。

 

 

「もうっ!ですから、卑猥な目はあれほど禁止だと申したではありませんか!これから大切な会談なのですから、北欧の主神らしく振る舞って下さい!」

 

オーディン「……ロスヴァイセ、そう怒らんでも分かってるわい。全く隙のないヴァルキリーじゃて」

 

 

ぷりぷりと怒る銀髪の美女―――ロスヴァイセにオーディンは半眼でぼやきながらずれた帽子を戻す。

この会話からロスヴァイセがオーディンの従者であることがわかると同時に彼女が苦労しているんだなとリアス達は察し、苦笑いを浮かべる。

 

だが、ただ1人―――我夢だけはロスヴァイセの登場に目を丸くしている。

そして、次の瞬間。無意識に彼女をこう呼んだ。

 

 

我夢「ユザレ…?」

 

ロスヴァイセ「…え?」

 

『?』

 

 

突然自分ではない名前で呼ばれたロスヴァイセは頭の上に疑問符を浮かべる。

それはこの場にいる石室やリアス達も同じ反応だ。

  

我夢は自分でも目の前にいる人物が別の人物だとはわかっている。

しかし、そう言ってしまった…否、そう言わずにはいられなかった程に似ていたのだ。

顔、髪色、体型、声……何もかも。

そう、我夢の夢に出てきた超古代人のユザレに……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、すっかり夜になった人間界では、日本のとある森林に異形の生命体が降り立った。

その異形の生命体は人型のシルエットをしていながらも、皮膚はゴツゴツとしており、怪人と言える見た目だ。眼は緑色に輝き、手には妖しいオーラを放つ日本刀の様な刀を持っていた。

 

異形は辺りを見渡すと、自分の目的地であることがわかったのか空に昇る三日月を見上げ

 

 

「ンッフッフッフッフッ…」

 

 

と怪しくに笑った。

空に浮かぶ三日月と同じ形をした胸元の傷が真っ赤に輝きを放ちながら………。

 

 

 

 

 




次回予告

酸素がなくなる…!みんな窒息してしまうのか!?
その時!海は光り、奴が襲って来る…!!

次回、「ハイスクールG×A」!
「妖光の海」!
出撃だ、セイレーン7500!!





ロスヴァイセさんをユザレと勘違いしてしまう我夢君。
そして、ラストに現れた謎の怪人の正体は…?
今後の展開を楽しみにして下さいw

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