ハイスクールG×A   作:まゆはちブラック

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宇宙雷獣 パズズ 登場!


第35話「石の翼」

―――僕たちの街には昔、空から落ちてきたと言い伝えられている不思議な石がある。

僕たちはその石を『石の翼』と呼んで、遠い星から来た宇宙船の翼だったんじゃないかと想像したり、石の翼を持つ船が宇宙へ旅することを考えながら、いつまでも空を眺めていたりした。

 

――――でも、もうそんな子供の時間は、終わってしまったんだと思う……。

 

 

「さようなら…」

 

 

少年は悲しげな表情で『石の翼』の傍の地面に掘った穴に入れた何かに別れを告げ、上からスコップで土をかけると、その場を後にした……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、場面が変わって翌日。

現在、我夢はエリアルベースにある自室にいた。

何故エリアルベースにいるのかと言うと、我夢が所属するXIGは最低でも1人週に2回への滞在が義務付けられているからだ。

 

我夢はデスクに置いたパソコンに向かい合って何かを作っていた。

 

 

カタカタ……タンッ!

 

我夢「…これでよし!」

 

 

素早いタイピングでキーボードのキーを打ち込むと、我夢は達成感に満ちた表情を浮かべる。

すると、

 

 

小猫「……先輩?何してるんです?」

 

我夢「あ、小猫。丁度よかった。見せたいものがあったんだ」

 

 

そこへ部屋に入ってきた小猫が興味深そうに訊ねてくる。我夢は椅子に座ったまま彼女の方へ体を向けると、先ほどタイピングを打ち込んでいたパソコンの画面を彼女へ見えるように動かす。

小猫はパソコンへ覗くように見る。

 

 

小猫「?」

 

《「zzz…」》

 

 

パソコンの画面には、近未来的な戦闘機をデフォルメして、目と足とつけた可愛らしい3Dモデルのキャラクターが鼻いびきがかきながら寝ていた。

 

 

小猫「…何ですか、これ?」

 

我夢「ああ、僕が作った人口知能さ……名付けてPAL(パル)!今後のXIGの活動に役立てるかもと思って昨日から徹夜で作ってたんだ」

 

小猫「おお~~!」

 

 

我夢の説明を聞いた小猫は目をキラキラと輝かせる。

小猫は見た目の無表情さに反して、案外こういうメカやヒーローものが好きだったりする。

彼女の好奇心満々な顔を見て微笑んだ我夢はパソコンの画面に目をやり、PALへ声をかける。

 

 

我夢「PAL、起きて」

 

《PAL「・・ン?」》

 

 

 

我夢の呼び掛けにPALは反応すると、パチリと目を覚ました。

PALはキョロキョロと辺りを見渡すと、我夢に問いかける。

 

 

PAL「オハヨウゴザイマス。アナタガワタシヲセイサクシタ、ガムデスカ?

 

我夢「そう、そうだよ。よろしくPAL!そして、こちらが僕の後輩の小猫」

 

小猫「…よろしくお願いします」

 

PAL「・・・?

 

 

小猫が挨拶すると、PALは考え込むような仕草をする。

その様子に我夢と小猫は首を傾げていると、PALは

 

 

PAL「コウハイ?シカシ、ドコカラドウミテモ、ショウガクセイ、トシカミエマセンガ?

 

我夢「あぁっ!PALッ!?」

 

 

と、とんでもない発言に我夢はぎょっと青ざめ、飛びはねる。

小猫は自分の体型にコンプレックスを持っており、それを馬鹿にされると問答無用で鉄拳制裁を下す。我夢自身、体験しているのでその恐ろしさを理解している。

 

 

小猫「……」

 

 

自身のコンプレックスに触れられた小猫は当然、カチンと頭にきて、パソコンごとPALを破壊しようと拳を振りあげる。PALのせいとはいえ、自分のパソコンを壊されるのは嫌なので、我夢は必死に止める。

 

 

小猫「……離して下さい。このポンコツを分解します…!」

 

我夢「ごめん!悪気はないんだっ!まだ色々教えてなくて……パソコンを壊さないでっ!」

 

小猫「…大丈夫です。砂嵐になったテレビをチョップして直す感覚と同じですので」

 

我夢「絶対違うでしょ!?待って、待ってくれ!」

 

小猫「…言い訳は後で聞きますので」

 

我夢「やーめーろー!」

 

 

制止も虚しく、小猫は遂にパソコンに手をかける。

狭い室内で2人がドタバタしていると、ピピッと我夢のXIGナビに通知音が鳴る。

 

緊急の用事かと思った2人はドタバタするのをやめ、我夢はXIGナビを開くと、朱乃からによるものだった。

 

 

《朱乃「我夢君。今からコマンドルームに来れます?」》

 

我夢「はい、大丈夫です。これから小猫と向かいます」

 

《朱乃「お願いしますね」》

 

 

朱乃の頼みを聞いた我夢はXIGナビを閉じると、小猫と一緒にコマンドルームへ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

我夢と小猫は長い廊下を歩いていき、重厚な扉の前にたどり着いた。

扉の前に立つと、扉は自動的に左右へ開き、2人はコマンドルームへ入っていく。

コマンドルームには難しそうな顔を浮かべる朱乃とアザゼル、数人の女性オペレーターがいた。

 

 

我夢「何かあったんです?」

 

朱乃「ええ、実は…」

 

 

来て早々の我夢に朱乃は呼び出した訳を話す。朱乃が言うには、通信機器に軽い電波障害があるので、我夢に原因なんなのかという相談だ。

それを聞いた我夢は心当たりあるのか、「ああ…」と声を漏らし

 

 

我夢「それはちょっと空の状態が悪いんですよ」

 

朱乃「空の状態?」

 

我夢「はい……多分、この雷雲のせいじゃないかと」

 

 

訊き返す朱乃に我夢は答えつつ、オペレーターが使っている通信機器を拝借して操作すると、中央のモニターに日本列島付近の気象状況を表した地図が表示される。その地図には、現在の日本列島の南端には雷雲があることが記されている。

我夢は言葉を続け

 

 

我夢「さっき調べてみたんですけど、雷雲自体に妙なところはないですけどね」

 

 

そう話すと皆は納得した表情を浮かべる。確かに原因が自然現象によるものなら説明がつく。

 

 

アザゼル「しかし、この季節とは雷雲とは珍しいな……。おい、一応気象状況を監視しておいてくれ」

 

「了解」

 

 

ただの雷雲だとは思うが用心に越したことはないと思ったアザゼルは1人のオペレーターにそう命令する。

オペレーターがさっそく監視作業に入っていく中、我夢は何か気付いたことがあったのか、キョロキョロ辺りを見渡す。

 

 

アザゼル「どうした?」

 

我夢「いえ…最近、石室コマンダーの姿を見ないんで、どうしたのかと…」

 

 

アザゼルが忙しいのはもちろんだが、イリナの歓迎会を開いて以来、石室の姿をこのエリアルベースや地上ですら見かけていない。

すると、アザゼルはニヤリと口角をあげ、

 

 

アザゼル「ああ、奴ならT都で開かれている各国首脳会議に出席している」

 

 

と、「きっとお偉いさんからガーガー言われているんだろうな」と小バカにするような口調で付け加えて答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃。石室はG.U.A.R.D.上層部が保有するビルの一室にて、とある国との首脳とテーブルを挟んで会談していた。

 

 

「世界各地で異変が続発してるんですよ。それなのに、あなた方G.U.A.R.D.は破滅招来体の全貌を掴むことが出来ない!一体、いつになれば敵の全貌を解明出来るんですか?」

 

石室「“いつ”とは、申し上げられません。しかし、今、国際的な協力体制が崩れれば、G.U.A.R.D.の活動は大きく後退します……もし、そうなれば破滅招来体を防ぐことは事実上不可能です」

 

 

石室は目の前に座る首脳の目をまっすぐ見てハッキリと答える。

だが、首脳は嘆息し、

 

 

「しかし、石室さん。このままG.U.A.R.D.を信用して、本当に破滅を避けることが出来ますか?我々はどうなるんですか?」

 

石室「……」

 

 

藁にも縋る気持ちの問いかけに石室は思わず難しい顔で口を閉ざしてしまった。

その後、特に語ることはなく、会談は終了した。

 

 

「石室、久しぶりだな」

 

石室「…?権堂(ごんどう)参謀」

 

 

それから会談部屋から出て廊下を歩いていると、遠くからふくよかな体型をした水色の軍服を着た嫌味たらしい顔つきをした男に呼び止められる。

この男はG.U.A.R.D.上層部の幹部の1人、権堂参謀だ。

 

権堂は石室に歩み寄ると、口を開き

 

 

権堂「聞いたぞ?お前、まだG.U.A.R.D.を信用していない各国の首脳への説得を続けてるんだってな?ははっ、いい加減諦めたらどうなんだ?俺達に協力しない国なんてほったらかして、勝手に自滅させりゃあいいじゃないか?」

 

石室「…」

 

 

と言いながら嘲笑う彼に石室は腹の底から込み上げる怒りを抑える。

この男、権堂は武力による地球防衛を望む所謂“タカ派”の人間だ。協調・平和的な防衛を望む石室や樋口とは考えが真反対で、組織内で対立している。

 

権堂は肩をすくめ、話を続け

 

 

権堂「…まあ、国同士の力を合わせて地球を守ろうなんて夢話なんだよ。それよりも俺達がやることはより強い兵器を作り、破滅招来体に知らしめしてやることだ。お前も、さっさとXIGなんて身分もわからない怪しげな集団とG.U.A.R.D.のパイプラインを辞めちまって、俺と一緒により強い武力を持った集団を―――」

 

石室「下らない話はそこまでにするんだな」

 

権堂「何ィ!?下らないだと?」

 

 

石室を誘おうとしたが彼にバッサリと一蹴され、権堂は先程の人を嘲笑うような顔から一変して、怒りの形相に変わると、彼を睨み付ける。

石室は言葉を続け

 

 

石室「…権堂。しばらく会ってなかったから考えも少しは変わると思ったが、それは間違いだったようだ。相変わらず武力で全てを解決しようという愚かな考えしか思い付かないらしいな」

 

権堂「貴様っ!上官に向かって―――!」

 

石室「上官であろうがなかろうと、私は今、1人の人間としてあなたに話している!人の願いを嘲笑うあなたに地球を守るものとして、組織の人間としての誇りは無いのかっ!」

 

権堂「――っ!?」

 

 

そう言い放つと、権堂は石室のあまりもの迫力に目を若干見開き、言葉を失う。

石室は権堂を一目睨み付けると、

 

 

石室「…そんな暇があったら、今後の体制について少しは考えるんだな…」

 

 

去り際にそう告げると、石室は権堂の真横を通り過ぎ、下の階へ降りるエレベーターに乗り込んだ。

 

 

権堂「ちっ!相変わらずムカつく奴だ!」

 

 

石室が乗り込んだエレベーターを睨み付けながらそう吐き捨てると、権堂は不機嫌そうな足取りでどこかへ歩いていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その帰り。石室はタクシーに乗ってどこかへ向かっていた。

――今日も色々上手くいかなかったが、着実にゆっくりとやっていこう。石室がそんなことを考えていると、ふいに運転手が話しかける。

 

 

「最近、G.U.A.R.D.に不満を持つ要人が増えてますねぇ……1人1人、説得するには時間がかかりますよ」

 

石室「…」

 

 

転手のため息混じりの言葉に石室は顔を曇らせる。彼の言う通り、破滅招来体を中々根絶できないどころか正体さえも掴めない状況に各国の国々はG.U.A.R.D.に不審感を募らせている。先程、会談したとある国の首脳もその1人だ。

 

それに対して石室は神妙な気持ちになり

 

 

石室「彼らも不安なんだ。根源的破滅招来体が現れて以来、おそらく誰もが…未来の見えない不安を抱え込んでいる……」

 

「……」

 

 

そう言いながら、彼は思った。世界各国の1人1人が得体の知れない恐怖に脅かされながらも必死に生きようとしていることを。

不満を持っている世界各国の首脳達もG.U.A.R.D.に対して非難や不平不満を言っても何もならないことは既に分かっている。しかし、その不安や恐怖を誰にぶつければいいのかわからないのだ。

人の心理なら当然のこと――石室はそれを承知の上、説得をしているのだと思った。

 

運転手は石室の話を聞き終え、心の中で共感する。そして、話が少し暗くなった運転手は話題を切り替え、提案する。

 

 

「夜の会合までには少し時間があります。どこかで休まれてはいかがですか?」

 

石室「すまないが、ちょっと停めてくれないか?」

 

「…はい!」

 

 

石室の頼みに運転手は承諾すると、車道の端にタクシーを停める。

 

 

「何か?」

 

 

車を停めたや否や、すぐさま運転手は振り返り、何の用事かを石室に訊ねる。

その問いかけに石室はニッコリと笑い

 

 

石室「『ボイジャー2号』を買いにな」

 

 

そう答えると、石室は座席から降りて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから40分後。とある町の一軒家の前へタクシーに送り届けてもらった石室は左腕に大きな長方形の段ボールを抱え、玄関の扉の横にあるインターホンを指で押す。

 

 

ピンポーン……

 

ガチャ!

 

「…!?」

 

 

すると、1秒も経たないうちに扉は開かれ、中から小学校4年生くらいの男の子が顔を見せる。

男の子は石室の顔を見て目を丸くしていると、石室はにこやかな笑顔で挨拶する。

 

 

石室「よお、ただいま」

 

「父さん…!母さーん、父さん!父さんが帰ってきたよ!」

 

 

その男の子は嬉しそうに笑顔を浮かべると、リビングにいる母親へ呼びかける。

そう、ここは石室とその家族が住んでいる家だったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなたお帰りなさい。2週間振りかしら?はい、お茶」

 

石室「ああ、ありがとう」

 

 

石室は妻に感謝の言葉を告げると、出された湯呑に入っているお茶を1口飲む。

久しぶりに我が家のお茶を飲んだからか、今までの体の奥底に溜まっていたストレスやら何やら吹っ飛んでいく感覚がした。

 

 

「それで?もうお仕事終わり?」

 

石室「いや、これから3時間後にある会合に出席しなきゃならない」

 

「そう…」

 

石室「すまない。ここ最近、仕事ばかりで構ってやれなくて」

 

 

まだ仕事があると知って落胆する妻に石室は申し訳なさそうに頭を下げて謝る。

しかし、妻はすぐに笑顔になると、石室を見つめ

 

 

「大丈夫よ。そんなの嫁いだ時から覚悟していたから。私、XIGの司令官の妻だって、誇りに思ってるから」

 

石室「ありがとう。…ああ、全く君には敵わないな」

 

 

そう励ます妻に石室は照れ臭そうにしながら感謝しつつ、彼女には一生頭が上がらないなと改めて悟った。

 

石室は妻の心広さに感服すると、自分の隣に座る息子の頭を愛おしそうにポンポンと撫でる。

 

 

石室「弘希(こうき)!前より大きくなったんじゃないか~?」

 

弘希「またそうやって子供扱いする~!僕はもう大人だよ」

 

 

頭に乗せられた手を払いのけ、照れ臭そうにする弘希を見て、石室と妻はクスクスと笑う。

石室は「そうか…大人か…」と呟くと、ソファーに置いていた大きな長方形の段ボールを弘希の前に出す。

 

 

石室「よし、プレゼントだ」

 

弘希「わあ~~すっげ!開けてもいい?」

 

石室「ああ」

 

 

あまりにも大きいプレゼントに目をキラキラと輝かせながら訊ねる弘希に石室は頷く。

石室の許可を得た弘希は何だろうと胸躍らせながら段ボールを開けていくと、それは大きな黄色の望遠鏡だった。

 

 

石室「ボイジャー2号だ。3年前にあげた時はレンズが小さかったからな……こいつを付けると、オリオン大星雲まで見れるぞ」

 

弘希「……」

 

 

微笑みながら話す石室とは逆に弘希は先程までの笑顔が消え、顔を曇らせる。

その表情はいらないプレゼントを貰ったというよりも、石室に対して申し訳なさから出たものだった。

弘希は口を開き

 

 

弘希「ありがとう、父さん。でも……もういらないんだ」

 

石室「いらない?もう、空を見ないのか?」

 

 

弘希の言葉を聞き、真剣な表情になった石室はそう訊き返す。

弘希はこちらを見つめる石室へ顔を向け

 

 

弘希「父さん……空を見ても、空にはもう恐ろしいものしか現れないよ。地球を滅ぼそうとするもの――『根源的破滅招来体』しか、現れないじゃないか……」

 

石室「…」

 

 

悲しげにそう言うと、弘希は逃げるように階段を上っていった。

石室は顔を曇らせながら、思った。破滅招来体は空からワームホールを出現させ、町を破壊するだけでなく、1人の子供の夢や希望すらも壊していると。

その現実に石室は強い憤りと悲しみを覚えた。

 

弘希は階段を駆け上がって自分の部屋に辿り着くと、駆け込むように入り、扉を閉めた。

弘希はせっかくプレゼントを持ってきてくれた父への申し訳なさに思わず、扉へ体を寄りかかせる。

 

 

弘希「……」

 

 

弘希は3年前、初めて天体望遠鏡を貰った時を思い出していく。

 

その晩に父さんと2人で『石の翼』の丘に天体望遠鏡を立て、一緒に星を眺めたこと。

 

まだ見ぬ太陽系の向こう側に生命体がいる星があるのではないかと話し合ってロマンを膨らませたこと。

 

そして、父さんから太陽系へ旅立った2機の惑星探査機『ボイジャー』についての話を聞いたこと……。

人類からのメッセージを乗せ、宇宙を旅する『ボイジャー』の話を聞いて、夢と希望を貰った僕は父さんから貰った天体望遠鏡を『ボイジャー1号』と名付けることにした。

 

 

 

 

――でも、僕はもう空を見ない。

『ボイジャー1号』を石の翼のところに埋めた。宇宙への夢と希望も一緒に……現実に向き合うことにしたんだ……。

 

 

石室『弘希、話してもいいか?』

 

弘希「…?」

 

 

弘希が感傷に浸っていると、扉越しに石室から話しかけられる。

弘希は扉へ耳を傾けると、石室は話し始めた。

 

 

石室「根源的破滅招来体は確かに存在する。それが……俺達の現実だ」

 

弘希「っ!……」

 

 

父親から現実の残酷さを告げられ、弘希はより一層顔を曇らせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、エリアルベースのコマンドルームでは、雷雲が急激に大きくなりながらどこかへ向かっていることをキャッチした。

 

 

アザゼル「雷雲の現在位置は?」

 

「ポイント365K7上空」

 

我夢「!」

 

 

オペレーターの報告を聞き、まさかと思った我夢はデスクに備え付けられているパソコンで雷雲の状況を調べる。

そして、出てきた雲の映像に我夢は息を吞んだ。

 

 

我夢「これは……」

 

朱乃「どうしましたの?」

 

我夢「雲の奥に時空の褶曲が起こり始めています」

 

アザゼル「まさか…!雲の奥にワームホールがあるって言うのか!?」

 

 

訊き返すアザゼルに我夢は頷く。

ポイント365K7は町があり、おそらく怪獣を送り込んでくる――――。危惧したアザゼルはすぐに指示を出した。

 

 

アザゼル「オペレーターは当該付近の住民に避難勧告を。我夢は『チームライトニング』と出撃。小猫と朱乃も同行してくれ」

 

『了解!』

 

 

そう言って敬礼し合うと、我夢達はコマンドルームを出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エリアルベースの格納庫。多くの戦闘機が格納されているこの場所に出撃のアラームが鳴り響く中、六角形のコンテナの形をした乗り物が3機、発進エレベーターに乗って降りてくる。

これこそ、XIGが開発した最新鋭の戦闘機『XIGファイター』で、乗っているのは梶尾、四之宮、匙のシトリー眷属3人からなる空戦部隊の1つ、『チームライトニング』だ。

 

 

匙「遂に俺達の出番ですね」

 

四之宮「ああ、そうやってヘマはすんなよ」

 

梶尾「お喋りはそこまでだ、行くぞ」

 

 

梶尾が左右のファイターに乗る仲間を軽く叱ると、3人は座席の横のレバーに手をかけ、

 

 

梶尾「チームライトニング、シュート!

 

 

その掛け声と共にレバーを一気に前へ倒す。

すると、3機のファイターは後部のブースターを噴かせながら前進し、発進ゲートを潜り抜けて外へ飛び出す。

 

そして、飛び出したファイターはそのまま空中で変形すると、梶尾は青い戦闘機『XIGファイターSS』、四之宮と匙は赤い戦闘機『XIGファイターSG』となった。

 

更にエリアルベースの後部ハッチからは我夢、小猫、朱乃が乗る大型輸送攻撃機『ピースキャリー』が飛び出し、エリアルベースの真上を通って飛行する。

3機のファイターとピースキャリーは目的地に向かって発進していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、雷雲の中にあるワームホールが遂に開き、1匹の怪獣が大地を震わせながら降り立った。

 

 

「!」

 

石室「何だ!」

 

 

丁度その頃。近くには家を出て、タクシーで会合場所へと向かっていた石室がいた。

その衝撃の揺れに石室とタクシーの運転手も驚き、タクシーを停めて外へ出ると、衝撃音が鳴った方を見上げる。

 

そこには2本の牛のような逞しい角を持った牡羊のような二足歩行の怪獣『パズズ』が獰猛な雄叫びをあげていた。

 

 

パズズ「ゴォガ!ゴォガ!」

 

 

町へと降り立ったパズズは頭に生えている2本の角『電撃ホーン』を牡羊の角のような形に変形させると、そこから電撃を放ち、付近の建物を破壊し始める。

火の海となり、瓦礫の山となった町を踏み歩き、パズズは人気が密集している方角へ前進する。

 

そこへチームライトニングの3機のファイター部隊が到着し、3人はコクピット内にあるターゲットスコープを展開する。

 

 

梶尾「発射!」

 

パズズ「!」

 

 

照準を捉えた梶尾達は手元の操縦桿のトリガーを引く。ファイターから放たれた銃弾状の魔力弾を受け、パズズは体から火花を散らす。

 

 

パズズ「ゴォガ!ゴォガ!」

 

 

パズズは電撃ホーンを元の牛のような形に変えると、お返しに上空にいるファイター目掛けて直線上の電撃と口からの火炎弾を放つ。

梶尾達は横回転しながら旋回して回避する。

 

その後もチームライトニングは逃げ惑う人々を追うように前進するパズズへ攻撃を加えていくが、あまり効果がなく、パズズは進撃していくばかりだった。

 

 

《匙「梶尾さん!このままじゃマズイっすよ!」》

 

梶尾「慌てるな!そんなことはわかっている!……ジオベースの避難誘導部隊は一体、何してるんだ?」

 

 

ぼやく梶尾の言う通り、地上の避難誘導部隊は住民の避難が遅れていた。その原因はパズズが持つ『特殊電波ブレイン』から放たれている電波のせいで通信障害が発生しており、連絡のやり取りが上手く出来ていなかったからだ。

その影響で梶尾達は住民に被害が及ぶ危険性を考慮し、あまり強力な攻撃を出せずにいた。

 

 

 

 

 

 

その頃、地上では住民達が一目散に逃げており、その中には石室の妻とその息子の弘希の姿もあった。

そう、彼らがいるということは石室一家が住んでいる町だったのだ。

 

2人は避難誘導に従って一緒に逃げていた。

しかし、4方向に分かれた広い路地に出た瞬間、逃げ惑う住民の海に呑まれ、離れ離れになってしまった。

 

 

「弘希ーー!弘希ーーー!」

 

 

石室の妻は必死に見えなくなった我が子の名前を叫ぶが、虚しくも弘希も彼女も人混みに押され、どんどん距離が離れていくばかりだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、ジオベースの避難誘導部隊も必死に避難誘導を行っていた。

その内、1つの部隊はすぐさまジープを降りると、蛍光灯を手に、避難場所とは反対のこちらへ来る住民達を止める。

 

 

「こっちじゃなーい!戻れーーー!」

 

「下がって…下がって下さい!」

 

「本部へ連絡を!」

 

「はい!……本部、応答願います!こちらD班!後方避難経路の指示、願います!」

 

 

指示を受けた隊員の1人は耳に付けているインカムで連絡を取る。

だが…

 

 

《「こちら本部。D班は付近住民………北緯2号s…と…いhv`fd^$#@――――!」》

 

「本部…?本部っ!!」

 

 

パズズが発生させた電波障害のせいでノイズが走って音声が上手く聞き取れず、最終的には通信すらも出来なくなってしまった。

D班は突然の電波障害に困惑していると、別の部隊の2人の隊員が焦った様子で駆け寄ってくる。

 

 

「西ブロックの住民が逆流してくるぞ!」

 

「A班の誘導はどうなっているんだ!?」

 

「無線が……通じない!状況がわからないんだ!」

 

 

電波障害のせいで避難指示や連携が取れず、隊員達は混乱を極める。

あれよこれよと言っている間にも避難出来てない住民の対処に追われ、遠くからはパズズが迫ってくる。

まさに八方塞がり――。どうすればいいんだと隊員達が頭を悩ませていると、

 

 

石室「…どうやら、かなり状況が苦しいらしいな」

 

『石室コマンダー!?』

 

 

後ろから苦い顔をした石室が颯爽と現れた。

彼の思いもよらぬ登場に隊員達は驚く中、石室は近くに停めてあったジープのボンネットにこの地域近辺の地図を広げる。

 

 

石室「旧21号線は全面車両通行止め、新町交差点に隊員を配置。西ブロックの住民を菊池方面に迂回させてくれ…」

 

 

冷静に指示を出しつつ、石室は先程インカムで連絡を取ろうとしていた隊員を見て

 

 

石室「君は伝達要因として、各ブロックを回ってくれ」

 

「はい!」

 

石室「各自、避難終了時には信号弾を撃って報せろ」

 

『了解!』

 

石室「さあ、急げ!」

 

 

石室が指示を出し終えると同時に隊員は解散し、早速作戦を実行し始める。

 

1人残った石室はボンネットに広げた地図に手を置きつつ、ふと後方を振り返る。

遠くの方では、こちらへ進撃しながら暴れまわるパズズとチームライトニングのファイターが交戦していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

梶尾「サイドワインダー、発射!」

 

 

梶尾達は操縦桿のボタンを親指で押すと、ファイターの両脇からミサイルが射出される。

ミサイルはパズズを捉え、真っ直ぐ向かっていくが、

 

 

梶尾「何っ!?」

 

パズズ「ゴォガ!」

 

 

着弾する直前、何故かミサイルはひとりでに横に逸れ、地上で爆発する。

動揺する梶尾達だったが、気を取り戻してもう一度ミサイルを放つが、またもパズズから逸れてしまう。

 

この異変はすぐさま四ノ宮を通して、ピースキャリーにいる我夢に届いていた。

 

 

ピーピーピー…

 

我夢「ライトニングのミサイル命中率が低下しています」

 

朱乃「どういうこと?」

 

我夢「あの怪獣のせいで、レーダーによるミサイルの誘導システムに誤差が生じているんです。魔力を通じての無線も出来ません。誘導システムを解除して、オールマニュアルで攻撃するしかありません」

 

小猫「…では、どうやって?」

 

 

思い悩む小猫がそう問いかけると、我夢は突然立ち上がる。

朱乃と小猫が疑問に思っていると、我夢は口を開き

 

 

我夢「僕に任せて下さい。最近覚えたことを使うチャンスですから」

 

「「?」」

 

 

そう意味ありげに告げると、2人に疑問を残したまま、我夢はピースキャリーのコクピットから出ていく。

我夢はピースキャリーに乗せている灰色のコンテナモードのファイターに乗り込むと、コクピットの電源を点けていく。

 

 

我夢「出撃します」

 

 

我夢は一言そう言うと、横のレバーを倒す。

すると、ファイターが乗っている床が開き、そのまま落ちていく。

空中で変形し、灰色の戦闘機に変形していく。これこそ、我夢専用機の『XIGファイターEX』だ。

 

ファイターEXは後部のジェットブースターを噴かせて飛行すると、パズズに苦戦するチームライトニングのリーダー、梶尾が乗るファイターSSの横に並ぶ。

 

 

梶尾「我夢?」

 

 

疑問に思う梶尾に我夢はハンドシグナルを送る。

それは「ミサイル誘導システムを解除して、オールマニュアルで攻撃」というメッセージだった。

 

 

梶尾「なるほど……了解だ!」

 

 

我夢のハンドシグナルを読み取った梶尾は我夢へサムズアップすると、ファイターEXから離れて、四ノ宮、匙の2人にも同様に伝える。

3人は我夢の言う通り、オールマニュアルへ切り替えると、パズズへ照準を定める。

 

 

梶尾「ミサイル、発射!」

 

パズズ「ゴォガ!?ゴォガ!?」

 

 

チームライトニングは操縦桿のボタンを押してミサイルを放つと、今度は逸れず、パズズに命中する。

パズズもまさか命中するとは思わなかったのか、苦痛の声をあげながら動揺の色を見せる。

形成は確実にライトニングへ傾き始めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地上では、石室の冷静な指示によって息を吹き返したジオベース誘導部隊は連携がとれた避難活動が行われていた。

逃げ惑い、混乱する住民を確実な対処で避難させていく。

 

 

弘希「…っ!?」

 

 

母親とはぐれ、逃げ惑う別の群衆にいた弘希はつまずき、転んでしまう。

住民が次々と横を通り過ぎる中、弘希は転んだ痛みに顔を歪めながら立ち上がろうとしていると、聞き覚えのある声に耳が止まった。

 

 

石室「A班の1名は救急車の援護に回れー!君は東ブロックをチェック!君は住民の誘導を!」

 

「「はい!」」

 

石室「急いでくれ!」

 

弘希「…」

 

 

それは冷静に隊員達に指示を出して奮闘する父の姿だった。

弘希は防衛組織として前線に立っている姿を見たのは初めてのことだったが、家で見かける時以上に頼もしい父に微笑ましく思いつつも悲しげに思っていた。

 

破滅招来体のせいで仕事に追われ、家に帰ってこれないのはしょっちゅう。

父がXIGのコマンダーであることは尊敬しており、みんなの生活を守ってもらっていることにはすごく感謝している。

しかし、そのせいで以前のように遊んでもらえず、寂しさがあるのもまた事実だ。

 

弘希は立ち上げって振り返り、遠く後方でチームライトニングと戦闘しているパズズを見上げる。

パズズが通った場所の建物は破壊しつくされており、辺りは火の海になっていた。

 

 

パズズ「ガァーーー!」

 

 

パズズは牡羊のような形の角から電撃を放ち、町を破壊していく。

自分が生まれ育った思い出のある町並みは壊され、火の海となっていく。

 

 

弘希「…」

 

 

弘希はその光景に恐怖と失意を感じていくが、2時間前、扉越しに聞いた石室の言葉を思い出す。

 

 

(石室「根源的破滅招来体は確かに存在する。それが……俺達の現実だ。そのことを受け入れる為にお前は、空を見るのをやめたのかもしれない…。現実を受け入れ、大人になっていこうと考えている」)

 

弘希「…」

 

パズズ「ガァーー…ゴォガ!ゴォガ!」

 

 

弘希は思い出した言葉に困惑した表情を浮かべながら見上げ続ける。

パズズが鋭い爪を持ったその手でビルを叩き壊し、瓦礫となった建物を踏み歩く残酷な光景を…。

しかし、それでも弘希は石室に言われたことの続きを思い出していく。

 

 

(石室「だがな、弘希。お前が空を見るのをやめた時、お前が無くしたもの……本当に失ったものは何だ!」)

 

弘希「…」

 

 

――本当に失ったものは何だ!

その言葉が胸の奥に響いた弘希はある決意をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、数十分後。

各ブロックから避難が終了したことを伝える信号弾が、勢いよく黄色の煙を立てながら空へあがる。

 

 

石室「よし、全ブロック避難完了だ。撤収するぞ!」

 

『了解!』

 

 

石室の指示に従い、隊員達はジープに乗り込んでいく。

 

 

石室「……っ?弘希!?」

 

 

石室も乗り込もうとドアを開き、助手席に座ろうと足を入れた時、遠くの路地を誰かが走っていくのが見えた。

それは息子の弘希がパズズがいる方面へ走っていく姿だった。

弘希を見たや否や、すぐさま石室はジープから足を下ろすと、走って後を追い始める。

 

 

「石室コマンダー!」

 

石室「心配ない。先に行っててくれ」

 

 

どうしたんだといった表情で呼びかける隊員達にそう告げると、石室は後を追う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

石室「弘希!弘希!」

 

 

石の翼がある丘まで追跡した石室は走る弘希の肩に手をかけて制止すると、そのまま振り向かせる。

 

 

石室「何やっているんだ!?早く避難しないと―――」

 

弘希「ボイジャー1号を取り戻すんだ!石の翼のところへ埋めたんだ!」

 

石室「…っ」

 

 

必死な形相でそう話す弘希に石室は驚く。

弘希の眼差しは真剣な大人の顔つきそのものだった。

 

 

弘希「ボイジャー1号が僕に見せてくれたのは空だけじゃなかった!もっと大事なものがあったんだ!」

 

石室「っ、弘希!」

 

 

そう言って肩に乗せた手を振り払って石の翼へ駆け寄ろうとする弘希を鬼気迫った顔で石室は追う。

確かに彼の瞳の奥には『夢』が戻っている。しかし、今は危ない。

こちらに気付いたパズズが今にも電撃ホーンから電撃を放とうとしていたからだ。

 

 

パズズ「ガァーーー!!」

 

弘希「!?」

 

石室「危ないっ!!」

 

我夢「…っ!?」

 

 

遂にパズズが電撃を弘希目掛けて放ち、石室は咄嗟に駆け寄って弘希を押し倒すと背中で覆い隠す。

空中で彼らを見つけた我夢も目を見開く中、電撃は彼らに向かって放たれる。

 

絶対絶命―――そんな時!

不思議なことが起こった!

 

 

ピヤァァァァーーーーー!!

 

パズズ「!?」

 

 

彼らの近くにある石の翼が金色に輝くと、光を放射し、パズズの電撃を打ち消した。

石の翼は石室達を救ったのだ。まるでそれが意思を持っているかのように。

 

 

サァァァ……

 

弘希「…っ」

 

 

しかし、石の翼は力を使い果たしたのか、そのまま灰となって崩れる。

その光景を見ていた弘希は驚きのあまり、声が出なかった。

 

 

石室「大丈夫か?」

 

弘希「…うん」

 

パズズ「ゴァァーーーー!」

 

「「!?」」

 

 

お互いの安否を確認しているのも束の間、パズズは2人に再び電撃を放とうとしていた。

2人は迫りくる電撃に身構えていると

 

 

キィンッ!

 

 

と空から来た赤い光が2人からパズズの電撃を防いだ。

その光は片膝をつき、両手を前へ突き出した透明な巨人の姿になる。

段々光が晴れ、色がついていくとその巨人の姿ははっきりとなった…。

 

 

弘希「ウルトラマンガイア…」

 

ガイア「デュアッ!」

 

 

赤き大地の巨人―――ウルトラマンガイアだ。

ガイアは立ち上がると、ファイティングポーズをとる。

 

 

パズズ「ゴォガァァァーー!」

 

 

パズズも本能的に倒すべき相手とわかったのか雄叫びをあげると、ガイアへ向かって走り出す。

それに合わせてガイアも走り出すと、両者は中央で組み合う。

 

 

ガイア「!?」

 

パズズ「ゴォガ!」

 

 

しかし、パワー比べではパズズに分があるのか、組み合ったままガイアを押していく。

パズズはある程度押すと、ガイアの両肩に置いてある手に力を込め、振り向かり様に投げ飛ばそうとするが、ガイアはすぐさま手を払いのける。

 

 

ガイア「ダッ!グアッ!」

 

パズズ「ゴォガ!?」

 

ガイア「デュアァァァーーーーー……!」

 

 

ガイアは頭部にチョップ、怯んだところを続けて横腹を蹴りつける。

怒涛の攻撃にパズズは苦痛に悶えていると、ガイアは電撃ホーンをガシッと掴む。そのまま助走をつけて投げ飛ばそうとするが

 

 

パズズ「ガァーーーーーー!」

 

ガイア「ウワッ!?」

 

 

パズズに跳ね飛ばされ、宙で一回転して背中から地面に叩きつけられる。

しかし、ガイアは負けじとすぐさま立ち上がって、こちらへ前進してくるパズズへ身構える。

 

 

ガイア「デヤッ!」

 

パズズ「ゴォガ!」

 

ガイア「ダァァァーーーー!」

 

 

ガイアは気合を込めて真っ直ぐ、カウンターの蹴りを入れて後退させる。

そして、怯んだ隙に飛びかかって掴みかかると、巴投げの要領で大きく後方へ投げ飛ばすと、パズズは地面に体をぶつけながら転がっていく。

 

 

パズズ「ガァーーーー!」

 

 

パズズは起き上がると猛牛のように電撃ホーンを突き立て、ガイアへ突進する。

 

 

ガイア「デュアッ!グアァァァーーー…!」

 

 

ガイアは両手で掴んで電撃ホーンを受け止める。

突き刺そうとするパズズとそうはさせまいとするガイア…。両者は組み合ったまま体制をクルクルと替えていく。

 

 

ガイア「ダッ!グアッ!」

 

パズズ「ガァーーーーー!」

 

 

体制を入れ替え、隙を見つけたガイアはパズズの脇腹に膝蹴り、首元に手刀を叩き込む。

パズズは怯みながらもすれ違い様に爪で引き裂こうとするが、ガイアは屈みながら避け、背後に回り込む。

 

振り向くパズズの胸元を蹴り、タックルで大きく後退させると、腹部へ1、2とパンチを叩き込む。

そして軽く助走をつけた飛び蹴りを食らわせる。

 

 

パズズ「ゴォガ!ゴォガ!」

 

ガイア「デュアッ!」

 

 

パズズはお返しにと尻尾で薙ぎ払いにいくが、ガイアは前転して避ける。

ガイアは起き上がって掴みかかろうとするが、

 

 

パズズ「ガァーーーーー!」

 

ガイア「ドアァァッ!?」

 

 

パズズの尻尾の薙ぎ払いに足をすくわれ、前へ倒れてしまう。

 

 

ガイア「グアッ!」

 

 

負けじとすぐに立ち上がったガイアはドロップキックを放つ。

ガイアは休む間も与えず、吹き飛ばされながらもフラフラとした足取りで立ち上がろうとするパズズの尻尾を両腕でガッチリ掴むと

 

 

ガイア「デュアァァーーッ!」

 

パズズ「ゴォガ!」

 

ガイア「デュアッ!ダァァァーーーー!」

 

 

体に捻りを加えて倒れると、尻尾を通してパズズも一緒に回転しながら倒れる。

更にガイアは追い打ちにと、苦痛に悶えるパズズの電撃ホーンを掴んで無理やり立たせると、背負い投げの要領で投げ飛ばす。

 

 

パズズ「ゴォガ!ゴォガ!」

 

ガイア「トアッ!」

 

 

パズズはフラフラしながら立ち上がりつつ電撃ホーンから電撃を放つが、ガイアは空高く跳躍して回避する。

そして、急降下しながら左足でパズズへ狙いを定め…

 

 

ガイア「デュアァァァーーーーーーッ!!」

 

パズズ「ビィ~~!?」

 

 

ガイアはパズズの頭部へ急降下キックを放つ。強力な蹴りが決まり、パズズは大きく後ろへ倒れると、苦痛の悲鳴をあげる。

ジタバタと悶絶しているパズズにガイアは飛びかかりながら倒れ込むと、両者はゴロゴロと地面を転がっていく。破壊された町中をある程度まで転がると、両者は間合いを空けながらスタッと起き上がる。

 

 

ガイア「デュアッ!」

 

パズズ「ゴォガ!ゴォガ!」

 

ガイア「デヤッ!」

 

 

またもや角で突き刺そうとするパズズの突進をガイアは間一髪避け、右腕でヘッドロック、左手で角を抑える。

しかし、パズズも知能はある。同じ手を何度も使うほど馬鹿ではない。

パズズはガイアに密着されたまま、電撃ホーンから電撃を放つ。

 

 

ガイア「グアァァァーー!?」

 

パズズ「ゴォガ!」

 

ガイア「ドアァァァーーーーー!!」

 

 

当然、角に触れていたガイアは身体中に電撃が流れ、苦しみのあまりヘッドロックを外してしまう。

これを好機と見たパズズは更に電撃を浴びせ、ガイアは苦痛の叫びをあげ、地に片膝をつく。

 

 

パズズ「ゴォガ!」

 

ガイア「グオッ!」

 

 

パズズは電撃を放つのを止めると、片膝をついているガイアを背中から叩きつける。

更に追い打ちとばかりにその強靭な足でガイアを蹴り飛ばし始める。

 

 

パズズ「ゴォガ!ゴォガ!」

 

ガイア「ドアァァァー!デュアァァ…!」

 

 

パズズに何度も蹴られ、地に転がるガイア。

蹴られた箇所からの激痛に脳内はかき乱されそうになる。

そして、パズズが締めとばかりに今までよりも強力な蹴りを放ち、ガイアは大きく吹き飛ばされる。

 

 

ガイア「…グアッ!」

 

 

ガイアはやや満身創痍ながらも立ち上がり、身構える。

例え不利な状況に追い込まれても、必ず立ち上がらなければならない。それがウルトラマンとしての自分の為すべきことだ。

 

 

パズズ「ガァーーーーー!」

 

ガイア「グアァァァーー!ドアァァァーーーーー!!」

 

 

パズズは電撃ホーンから電撃を周囲の建造物ごとガイアへ放つ。

ガイアはパズズの猛攻でやや満身創痍だったせいで避けられず、まともに食らってしまい、背中から倒れてしまう。

 

 

ガイア「グッ、グアッ…!」

 

[ピコン]

 

 

周囲が燃え盛る火の海に包まれた地面でガイアは苦しみ悶える。

ライフゲージも正常な青から危険を知らせる赤に変わり、点滅を始めていた。

 

 

パズズ「ゴォガ!ゴォガ!」

 

 

このまま勝てると思ったパズズは追い打ちを掛けようと、ガイアのもとへ歩を進める。

しかし、パズズは忘れていた。自分が戦っているのはガイア1人だけじゃないと。

 

 

梶尾「ガイアを援護する!全機、一斉攻撃!」

 

「「了解!」」

 

パズズ「ゴォガ!?」

 

 

そう、梶尾達チームライトニングだ。

ライトニングはファイターに搭載されているミサイルや銃弾状の魔力弾を浴びせる。パズズはその小さな存在を忘れていたのでまともにくらい、身体中から火花が散る。

しかし、攻撃はまだまだ終わらない。

 

 

ビカァァァァァーーーーーーー!!

 

パズズ「ビィ~~!?」

 

 

突然、パズズの頭上からけたたましい落雷が降り注ぐ。

雷光のあまりの威力に左の角が焼き切れたパズズは悲鳴をあげる。

その雷はピースキャリーに乗っている朱乃から放たれたものだった。

 

 

朱乃「あらあら、いい悲鳴をあげますわね♪あまり光の力を使いたくはありませんが、我夢君の為なら別です。さあ、もっと聴かせて下さいな!」

 

パズズ「ゴァーーーーーーーーー!!」

 

小猫「…」

 

 

恍惚とした表情を浮かべる朱乃はそう言いつつ、またもや雷光をパズズへ放つ。

久しぶりにドSの面を覗かせる朱乃に小猫は固まるが、すぐに気を取り戻すと、手元のスピーカーで地上に倒れているガイアに声をかける。

 

 

《小猫「今ですっ!」》

 

ガイア「…ッ!グアッ!」

 

パズズ「!?」

 

ガイア「デュアッ!デヤッ!」

 

 

小猫の声を聞いたガイアは跳ね起きると、パズズにリアクションを与える間も与えず、素早く腕を十字に組み、左手を立てた右腕の関節に入れた体勢に移行し、クァンタムストリームを放つ。

ガイアの腕から放たれる赤色の破壊光線はパズズをどんどん後方へ押していき、

 

 

パズズ「ビィ~~!?」

 

ドガガガガァァァァァァーーーーーーン!!

 

 

刃で切り刻まれたようなエフェクトが身体中に入ると、パズズは断末魔と共に爆発四散した。

 

 

ガイア「トアッ!」

 

[ピコン]

 

 

勝利したガイアは天高く両腕を上げながら跳躍すると、雷雲によって暗くなった空の中を飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜。石の翼のあった丘に石室と弘希が芝生の上に座りながら夜空を眺めていた。

町は半壊してしまったが、石室の指示のおかげで死傷者は1人も出ず、今はG.U.A.R.D.によって、復興作業が行われている。

 

弘希は灰になってしまった石の翼をふと見ると、隣にいる石室に話しかける。

 

 

弘希「ねえ、父さん」

 

石室「ん?」

 

弘希「石の翼は…本当にどこかの宇宙船の翼だったかもしれないね」

 

石室「ああ」

 

 

弘希の言葉に石室は頷く。石の翼は光を放ち、自分達をパズズの攻撃から守ってくれた。

今まであくまで空想にしか過ぎなかったが、この出来事を目撃したので、「それは空想だ」とは言えないだろう。

 

弘希は膝下に置いてある、掘り返した『ボイジャー1号』をそっと撫で

 

 

弘希「僕…僕が本当に無くしかけていたもの…何だかわかった!」

 

石室「っ!そうか…!」

 

 

そう言いながらこちらへ笑顔を向ける弘希を見て、石室は嬉しさのあまりに頬を緩ませる。

 

 

弘希「ねえ、父さん。『ボイジャー』の話、してくれないかな?」

 

石室「ああ、いいだろう」

 

 

自分の息子のお願いに石室は夜空を見つつ、語り始めた。

 

 

石室「――1977年、ケープ・カナベラルから2機の惑星探査機『ボイジャー』が打ち上げられた。『ボイジャー』には未知の生命体に向けて、地球からのメッセージが乗せられていた。風の音や動物の鳴き声など、地球の声を録音した金メッキのディスク……それから、農夫や子供、宇宙飛行士など、人類を紹介した120枚の写真。『ボイジャー』は今もそのメッセージを乗せて、この広い宇宙を旅してるんだ」

 

 

そう語る石室と弘希は顔を見合わせると、微笑んだ。

2人は久しぶりに訪れた親子の時間を心ゆくまで楽しんだ。

 

 

 

 

 

 

 

―――そして、あの晩。父さんは、「ボイジャーを夢を継ぐのは君たちだ」と言った。

 

僕はこの空を見続けようと思う。

例え今は、根源的破滅招来体しか現れないとしても。

 

この空に2機のボイジャーを送り出したのは、人間が未来を夢見る力と思うから――――――。

 

 

 

 

 

 

その時、1筋の流れ星が落ちた。少年の夢を願うように……。

 

 

 

 

 

 




次回予告

怪獣出現!
暴走する稲森博士!
その時、藤宮に最大の悲劇が襲いかかるっ!!

次回、「ハイスクールG×A」!
「招かねざる悲劇」!

我夢「うわぁぁぁーーーーー!!」




次回からシリアス回が続くので、今回は箸休め回として、ウルトラガイア第22話より「石の翼」でした。
良かったら、感想よろしくお願いします。

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