ハイスクールG×A   作:まゆはちブラック

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剛腕怪地底獣 ゴメノス 登場!


第36話「招かねざる悲劇」

パズズ襲来から翌日。

ジオベースでは、我夢が以前、ゾンネルから回収した機械語デコーダの解析を稲盛博士を招いて行っていた。

 

我夢、樋口が眺める中、稲盛は手元のキーボードで操作して、中央にある大型のモニターに解析結果を表示させる。

 

 

稲盛「高山君が回収してくれた機械語デコーダは、怪獣のサンプリングデータが不足していたの。その為にアセンブラの効率が悪かった」

 

我夢「それが怪獣の暴走を招いた…?」

 

稲盛「ええ…」

 

 

訊き返す我夢に稲盛は頷くと、またもキーボードを操作し、エンターキーを押す。

すると、モニターはパーセルの詳細なデータに切り替わる。

 

 

我夢「これがパーセル?」

 

稲盛「ええ…」

 

樋口「博士はG.U.A.R.D.に保管された怪獣データを基に、あのデコーダをバージョンアップさせたんです」

 

我夢「じゃあ、これで怪獣を思い通りに動かせるんですか?」

 

 

微笑む樋口の説明を聞いた我夢は稲盛に訊くが、彼女は首を横に振る。

 

 

稲森「いいえ…パーセルは怪獣の闘争本能を鎮めるプログラムしか入っていないの。あくまで怪獣被害の回避と捕獲・分析が目的だから…」

 

我夢「…」

 

 

そう言って説明する稲盛はどこか遠い目をしているのを我夢は見逃さなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

説明が終わり、稲盛はジオベースの外へ出ていた。

軍事施設に似つかわない芝生があり、港が見渡せるこの場所の一角に白い木の十字架の足元に白い砂利が敷き詰められた小さな墓があった。

 

その小さな墓には『リリー ここに眠る』と刻印された木製のネームプレートが立て掛けられている…。

そう、この小さな墓に埋葬されているのは、藤宮の飼っていたハムスター(彼曰く恋人)のリリーである。

 

 

稲盛「…」

 

 

稲盛はその場で膝をつき、リリーの墓にそっと花を添える。

それと同時に藤宮、リリー…2人と1匹でプロノ―ン・カラモスでの共同研究の日々を思い出していく…。

 

中々成果が出ず、焦り、苦しんだ日々。

しかし、それに負けないくらいの楽しさや喜びがあった…。

 

だが、そんな日々ももう戻らない。本当の親子のように過ごしていた楽しいあの時に…。

 

稲盛が感傷に浸っていると、横から我夢が歩み寄って話しかけてくる。

 

 

我夢「驚きました。稲盛博士がパーセル開発の担当だったなんて…」

 

稲盛「不思議な巡り合わせね……。博也君の作ったパーセルを私が引き継ぐなんて……」

 

我夢「…」

 

 

複雑そうな表情で話す彼女に我夢は口を閉ざす。

藤宮は現在、三大勢力のみならず、この人間界でもG.U.A.R.D.に追われる身である。

彼を養子として育てた稲盛にとっては、辛く苦しい現実…。それに彼が人類を滅ぼす手立ての為に作ったものを養母である自分がそれを改良するとは思いもよらなかっただろう。

 

そんなことを考えながら、我夢はふと視線を変えると、稲盛の膝下にリリーの墓があることに気付いた。

 

 

我夢「…!それはリリーの……」

 

稲盛「寿命だったの……情が移ると、悲しいものね」

 

 

寂しげな眼差しで墓を見下ろしつつ、稲盛は話す。

その瞳はペットを失ったというよりも、また1人大切な存在が亡くなってしまったという悲しみがこもっていた。

 

 

我夢「あれから、藤宮からの連絡は?」

 

稲盛「無いわ………」

 

 

稲盛の返答に我夢はやはりと思った。

我夢がそう思ったのも、人類を滅ぼそうと躍起になっている藤宮だが、指名手配されている手前、育ての母親である稲盛に危害が及ばないようにコンタクトを取っていないと踏んでいたからだ。

我夢がそう思っていると、稲盛は顔を上げ、遠い目を浮かべながらふいにこんなことを問いかける。

 

 

稲盛「……高山君は…何故、地底から怪獣が次々と現れるのか…考えたことがある?」

 

我夢「え?」

 

稲盛「今度の研究でずっとそれを考えてた……”地球の生物達が人類の自分勝手さに怒っているんじゃないか”って。きっと、人間1人1人の意識が変わらない限り、その怒りは鎮められない」

 

我夢「…」

 

 

稲盛の話を聞き、我夢は考え込む。

地上の怪獣は根源的破滅招来体によって目覚めさせられているのはわかっているが、何故こうも次々と出現して暴れるのか?という行動理由は考えたことはなかった。

破滅招来体の洗脳?それとも、元々冥界に住んでいた生物が地球の環境に合わせて進化した存在なので、冥界生物の遺伝子が何かしらの影響で暴れさせているのか?

我夢はそんな色々な説を考えていると、

 

 

ピピッ!

 

我夢「…!」

 

 

左手首に着けているXIGナビから着信音が鳴る。

その音に我夢は一旦考えるのを止めると、XIGナビを開く。小型の液晶画面に映る送信者はリアスだった。

 

 

《リアス「我夢。そろそろ、昨日言ってた冥界のテレビの取材に行くわよ」》

 

 

リアスの言う通り、実は我夢達、グレモリー眷属は冥界のテレビ番組に出演することが昨日決定したのだ。

何でも、『若手悪魔特集』だそうで、冥界で期待されている若手悪魔とその眷属をテレビ局に招いて、今後の意気込みやら何やらを取材するそうだ。

 

我夢は「はい」と短く返事してXIGナビの通信を切ると、稲盛へ顔を向ける。

 

 

我夢「博士、僕はこれで失礼します。それと藤宮の行方がわかったら、必ず連絡を」

 

稲盛「ええ…」

 

 

稲盛が頷くと、我夢は滑空場へ走っていく。

そして、そこに置いてあるファイターEXに搭乗して機体を透明化させると、一誠の自宅がある方角へ飛んでいった。

 

 

稲盛「…」

 

 

遠い空へと飛んでいくファイターEXを見届けながら、稲盛は1人、何かを決意するように目を細めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リアス達と合流した我夢は専用の魔法陣で冥界の都市部にあるテレビ局のビルにいた。

皆が見渡すと、広々とした空間で人が行き交い、近くには受付カウンターらしきものがあることから、ここがロビーだということがわかった。

 

現実世界のテレビ局と遜色ない景色に我夢や一誠は内心驚いていると、遠くからスタッフらしき人が駆け寄ってくる。

 

 

「お待ちしておりました。ささっ、こちらへどうぞ」

 

 

案内するスタッフに連れられて、リアスを先頭に我夢達はエレベーターを使って上の階に上がっていく。

 

皆、緊張しているのか、誰1人として喋ろうとしない。

上へ上へと上っていく階層表記ランプを見上げている中、我夢はお互い顔を合わせず、気まずそうにしている一誠とアーシアに目が止まった。

我夢は隣にいる一誠へ小声でそっと話しかける。

 

 

我夢「イッセー、アーシアと何かあったの?

 

一誠「…ん。あ、ああ……ちょっと色々あってな。後で話すよ

 

我夢「そうか……わかった

 

 

我夢は頷くと、エレベーターの階層表記ランプへ視線を戻す。

ここ最近、一誠とアーシアは会話の口数が少なく、顔合わせるなり、挨拶だけしてそそくさと立ち去っている等、どこか気まずそうにしている。

ゼノヴィアによると、学校だけでなく、家でもこんな調子だそうだ。

 

 

我夢「(どうにかしてあげたいな……)」

 

 

長い付き合いで色々相談を訊いてきたが、我夢には今回の問題は難しそうな気がした。

しかし、だからと言ってこのまま見捨てる訳にはいかない。

一誠は親友であり、仲間である…。彼の悩みを訊き、解決へ導くことが、親友である自分の本心であるからだ。

 

 

我夢「………?」

 

 

そんなことを思いつつ、我夢は階層表記ランプを見ていたが、この場にイリナがいないことに気付いた。

忙しいアザゼルは別として、和気あいあいするのが好きな彼女がいないのは不自然だ。

我夢はゼノヴィアに近寄り、小声で話しかける。

 

 

我夢「ゼノヴィア、イリナは?

 

ゼノヴィア「ああ、イリナなら用事があるらしい。何でも、稲森博士に会うとか言ってたな…

 

我夢「(稲森博士…?)」

 

 

この場にいないイリナの行動に我夢は首を傾げる。

イリナは正直言って、あまり科学に興味がない。何故なら、神を信仰する彼女にとっては、科学は根本的な考えが違うからだ。

 

だが、現にその彼女が稲森に会おうとしている。

イリナと稲森は何も接点が無いにも関わらずにだ。

イリナと稲森博士――――2人を繋ぐ共通点は何かと我夢は考えていると

 

…チンッ!

 

《「1966階に着きました」》

 

 

いつの間にかスタジオがある階へ到着し、我夢は思考を振り払った。

我夢達はエレベーターを降りると、プロデューサーの案内に従って、細長い廊下を歩いていく。

 

我夢は壁に貼られているポスターや壁際に置かれている小道具を興味深く眺めながらリアス達の後をついていくと、廊下の先から見知った男性を筆頭をした数十人の男女の集団に遭遇した。

 

 

リアス「あなたも来たのね。サイラオーグ」

 

サイラオーグ「…リアス」

 

 

そう、男女集団を引き連れるこの男は以前、我夢達が冥界で出会ったバアル家の代表であり、リアスの従兄弟でもあるサイラオーグだ。

 

 

サイラオーグ「そっちもインタビュー収録か?」

 

リアス「ええ、これから。サイラオーグはもう終わったの?」

 

サイラオーグ「これからだ。おそらく、リアス達とは別のスタジオだろうな…………。後、試合、見させてもらったぞ」

 

リアス「…っ!」

 

 

サイラオーグのその一言にリアスは顔を少ししかめる。

確かに苦戦しつつも勝ちはしたが、実質ほぼ我夢のおかげで勝ったようなものだ。あのゲーム以降、采配をとるべき『(キング)』である自分の力量不足をリアスは実感していた。

 

反対にサイラオーグは先月のレーティングゲームで対戦相手のグラシャラボス家の代表を特に苦戦もせず、圧勝している。しかも、()()()()()()でだ。

 

リアスの母であるヴェネラテもだが、サイラオーグの出身のバアル家の出身者は皆、滅びの力を持っている。リアスとサーゼクスにもそれが受け継がれている。

しかし、バアル家であるサイラオーグはその才能を持っていなかった。そのせいで当時のバアル家では、”出来損ない”と蔑まざれていた。

 

だが、サイラオーグはその代わりに”己の肉体”を鍛え上げることによって強力な力を得た。自分がバアル家の代表になることを反対する者を追い出し、代表の座を実力で勝ち取り、若手悪魔ナンバーワンと呼ばれるようにまでなったのだ。

 

しかし、そんなサイラオーグは自責の念に駆られるリアスに苦笑し、

 

 

サイラオーグ「…お互い、素人臭さが抜けないものだな。どうしても力任せになってしまう時がある。俺達の課題点だな」

 

 

と、リアスを励ますように言葉をかける。

我夢達が冥界で見てきた悪魔はこの場合、大抵は見下すのだが、このサイラオーグは逆に同じ目線に立って励ましている。

「実力だけでなく、心の広さも若手悪魔ナンバーワンと呼ばれるだけあるな」と我夢は思った。

 

 

サイラオーグ「…おっと!もう2分も経ったか。そろそろスタジオ入りの時間なのでな、これで失礼する」

 

 

サイラオーグは廊下にかけてある時計を見てそう言うと、眷属と共に早歩き気味に歩き始める。

やや狭い廊下を1列に歩く中、サイラオーグは一誠の横を通り過ぎる瞬間

 

 

サイラオーグ「お前とは正々堂々、勝負をしたいものだよ」

 

一誠「っ!」

 

 

たった一言告げると、サイラオーグは歩き去っていった。

期待を持たれるかのような口調に思わず、一誠は重みと緊張感を感じたのは余談だ。

 

その後、我夢達も案内されたスタジオに入り、初のテレビ収録に臨んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、人間界ではジオベースの樋口達が早速、秩父山中に現れた怪獣に稲森が改良したパーセルの打ち込みを行っていた。

 

 

ゴメノス「ギシィィィィーーーー!!」

 

 

灰色の体色に丸々とした西洋の兜の形をした頭を持つ怪獣『ゴメノス』は地を踏み歩き、その硬い頭で山肌を崩していた。

 

雄叫びをあげながら暴れるゾンネルの元にG.U.A.R.D.の戦闘機とXIGが開発したプロペラが左右に着いている黄色の移動機『シーガルフローター』が到着する。

 

 

「発射!」

 

ゴメノス「!?」

 

 

戦闘機に乗るパイロットはその掛け声と共に操縦桿の引き金を引くと、パーセルが発射され、ゴメノスの額へ綺麗に刺さった。

 

 

樋口「パーセル、作動!」

 

「了解!パーセル、作動」

 

 

シーガルフローターに乗る樋口の合図に同乗している隊員は手元の小型端末のスイッチを押すと、パーセルを起動させる。

 

 

ゴメノス「ゴアッ―――!?」

 

 

その瞬間、ゴメノスは糸が切れた人形のようにバタリと倒れ、眠り始めた。

 

 

樋口「よしっ!」

 

「やりましたねっ!」

 

 

怪獣と争わず、人類の思うように動かして被害を回避できる…。パーセルのあまりの出来に樋口達は喜び合う。

樋口達は後の処理はジオベースの増援に任せることにし、ゾンネルの傍に監視することにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、ほぼ同時刻。1台の車がジオベースを後にしていた。

その車を運転しているのはパーセル改良に携わった稲森だ。

 

稲森は何か決意した顔を浮かべながら運転しつつ、車内スピーカーから聞こえる音声に耳を傾ける。

 

 

《樋口「…こちら、シーガルフローター1(ワン)、樋口。ポイント2(ツー)1(ワン)5(ファイブ)M9(ナイン)、怪獣運搬の応援を要請します」》

 

稲森「…」

 

 

スピーカーから聞こえる音声はゾンネルの元にいる樋口の無線だった。

作戦自体には関係ない筈の稲森が何故、この無線を聞けているのか?それは簡単で、無線を傍受しているからだ。

内に秘める目的……ただそれだけの為にだ。

 

 

イリナ「ストーーーーーープッ!!」

 

稲森「っ!?」

 

 

しばらく運転していると、目の前の車線上にイリナが大きく手を広げながら立ち塞がる。

突然の目の前に現れた彼女に稲森は目を丸くして驚きながらもイリナを轢くまいとハンドルを切り、車を停車させる。

稲森は車の窓を開くと、顔を出して、こちらへ近寄るイリナへ注意する。

 

 

稲森「危ないじゃない…!突然、飛び出したりしてっ!」

 

イリナ「すみません!でも、どうしても稲森博士に聞きたいことがあって…!」

 

稲森「()()()()()()?」

 

 

訊き返す稲森にイリナは頷き

 

 

イリナ「藤宮 博也君を捜してるんです」

 

稲森「っ!?」

 

 

その言葉を聞いて、稲森は目の色を変えた。

彼に純粋な気持ちで会いたいと思っているのは自分だけかと思っていたが、自分以外にも会おうとしている人物に巡り合った。しかもその真剣な表情から、嘘ではないことがすぐにわかった。

 

 

稲森「わかったわ。着いてきて」

 

イリナ「…っ、はい」

 

 

稲森はイリナを車の後部座席に乗せると、近くの海が見渡せる港に車を停めた。

2人は車を降りると、ウミネコが鳴き声が聞こえる港を歩きながら話し始める。

 

 

イリナ「博士なら何かご存知かなって思って。失礼ですけど……調べさせてもらったんです」

 

稲森「彼にもあなたのような友達がいたのね……いえ、イリナちゃんなら当然かもね」

 

イリナ「何度かたまたま会っただけですよ………え?どうして私の名前を?」

 

 

きょとんと不思議そうにするイリナに稲森は彼女が髪をとめる貝殻が着いた髪止めを指差し、

 

 

稲森「それ、吉岡街の海水浴場で彼から貰ったんでしょ?私もそこにいたから、よく覚えているわ。もう、10年も前だから、忘れているかしら?」

 

イリナ「え?じゃあ、あなたはあの時のおばさん!?」

 

 

目を丸くして訊き返すイリナに稲森は頷く。

イリナが普段着けている貝殻が着いた髪止めは昔、溺れてしまった時に助けてもらった少年からの貰ったものである。

おぼろげな記憶を探ると、確かにその少年に母親らしき人も一緒にいたが、まさかこの稲森とは思わなかった。

 

しかも、彼があの時の女性だとすると、あの時の少年は間違いなく――――。

そんなことを考えていると、稲森は感嘆するように息を吐き

 

 

稲森「あの時のあなた達が出会うなんて……これも運命なのかもね…」

 

イリナ「いえ、偶然だとは思いますけど」

 

 

そう話す稲森にイリナは逆の意見を答える。

以前の彼女ならば、「ああ…!これも神のお召し」なんて台詞を言うのだろうが、藤宮と交流する内、次第にその考えも変わっていっているのだ。

 

会ったのは10年前だが、彼女が少なくとも以前とは違うと感じつつ、稲森は水平線を見渡し

 

 

稲森「けど、話すことは何も無いわ……随分会ってないもの…」

 

イリナ「そうですか…」

 

 

稲森の返答にイリナはしょぼんと顔を俯く。

そんな彼女の反応を見て、稲森はあることに気付いた。

 

 

稲森「惹かれているのね……彼に」

 

イリナ「っ!?/////」

 

 

そう言った瞬間、イリナは目を丸くし、恥ずかしそうに頬を赤くする。稲森の読み通り、彼女は藤宮に惚れているのだ。

 

危険な思想を持つ彼を個人的に、純粋な気持ちで会いたいと願うイリナ…。そんな彼女の想いを察した稲森は彼のことをどこか託せると思う伏があるのか、イリナの瞳を見つめ

 

 

稲森「彼に会うことがあるなら伝えて?私の”最後の研究”の成果をよく見て欲しいって」

 

イリナ「…?」

 

 

そう伝言を残すと、稲森はイリナを置いて、車でどこかへ去っていった。

イリナは何故かその言葉に不吉な予感がしたのを感じられずにはいられなかった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一誠「あぁ~~っ、疲れたぁ~~!」

 

 

収録が終わり、楽屋に戻った我夢達はぐったりしていた。

皆、緊張していたのか一誠のように背筋を伸ばしたり、テーブルに突っ伏してたり、壁にもたれかかったりしていた。

 

番組中のインタビューは終始リアスに向けられ、主にレーティングゲームや将来図、XIGについての質問ばかりだった。

皆が緊張している中、リアスは笑顔を忘れず、淡々と答えられていた。そういった教育を受けているのか、冷静でいられるのは流石お嬢様といったところだろう。

 

各々がぐったりしていると、机に突っ伏していた我夢は顔をあげ、一誠に話しかける。

 

 

我夢「でも、意外だったよね。僕達、ウルトラマンが子供達に人気だったなんて」

 

一誠「おお、そうだな。ああいうのに憧れるってのは冥界でも変わんねぇんだな」

 

 

我夢の話に一誠は相槌を打つ。

我夢の言う通り、ガイアとダイナは現在、冥界の子供達の注目を浴びている。

何でも、先月のソーナ率いるシトリー眷属とのレーティングゲームの中継を子供が観た際、映像に映るガイアとダイナがヒーローショーの着ぐるみに見え、その見た目のかっこよさに心を引き付けられたとか。

 

その証拠に収録中に我夢や一誠にインタビューが回ってきた時は子供達から「ガイアーー!」とか「ダイナーー!」と目をキラキラと輝かせながら声をかけられたり、収録が終わった瞬間にサインや握手をせがまれたりした。

子供達にそこまで夢中にさせるとは、人気というのは嘘ではないだろう。

 

我夢や一誠はそんなことを思い返していると、椅子でくつろいでいるリアスが楽屋のお菓子をつまみながら訊く。

 

 

リアス「ところでイッセー、我夢。別のスタジオで何を撮ってたの?」

 

 

実は収録が終わった後、子供達に囲まれている時に我夢と一誠はスタッフの1人に呼ばれ、別のスタジオに案内されたのだ。しかも、専用の台本も渡されてだ。

他の皆もリアスと同じ様に気になる様子で2人へ視線を向ける。

すると、我夢と一誠は顔を見合わせてニヤリと含み笑いをし、

 

 

我夢「内緒ですよ。放送されるまで誰にも情報を教えるなってスタッフの人達に言われたんで」

 

一誠「そうそう!でも、期待は出来ますよ!」

 

 

と、少し悪戯っぽく答える。

その返答に皆はもっと気になるが、待つのも悪くないと思い、代表してリアスが「わかったわ。楽しみにしましょう」と返した。

 

その後、他の皆も疲れがなくなってきたのか、様々な会話をしていた。

すると、コンコン…と、入口の方からノック音が鳴る。

 

 

一誠「俺が出るっすよ。はーーーい!」

 

 

扉を開けようとするリアスを制止し、一誠はよっこらしょと言いながら立ち上がると、扉に近付く。

ドアノブに手をかけて、そのまま扉を開けると、そこには縦ロールのかかった金髪の美少女――レイヴェルが手にバスケットを持って立っていた。

 

 

レイヴェル「っ、イッセー様!」

 

一誠「あれ?お前、どうしてここに?」

 

 

一誠の顔を見た途端、レイヴェルは嬉しそうにパアッと満開の笑顔を浮かべる。だが、すぐにその喜びを振り払う様に頭を左右に降って不機嫌な顔に切り替えると、手に持っていたバスケットを一誠へ突き出す。

 

 

レイヴェル「こ、これ!私が作ったケーキですわ!この局に予定があるものですからついでです!是非、リアス様達と一緒に食べてくださいまし!!」

 

一誠「お、おおっ…サンキュー」

 

 

やや強引に手渡され、一誠はタジタジになりながらも受け取る。受け取ったバスケットの包みを広げると、甘い香りを漂わせ、見てるだけでも美味しそうなチョコレートケーキが入っていた。

 

 

一誠「しっかし、悪いな。わざわざこんな豪華な差し入れをくれて…」

 

レイヴェル「い、いえっ!ケーキぐらいなら余裕で作れますわ!そ、それにケーキをご馳走すると約束しましたし!」

 

一誠「お茶会…、だっけ?そん時にしてくれても良かったのに」

 

レイヴェル「ぶ、無粋なことはしませんわ!アスタロト家との一戦も控えていますし、お時間はとらせませんわ!それではこれで失礼します!感想は後で教えて下さいな!」

 

一誠「おっ、おい!?」

 

 

レイヴェルは頬を赤く染めてたて続けにそう言うと、一誠が制止する間もなく、そそくさと立ち去っていった。

彼女のあまりもの理解し難い行動と発言に一誠は唖然としていたがすぐに気を取り戻すと、怪訝そうに木場に訊く。

 

 

一誠「なあ、木場?俺、あいつに何かしたっけ?」

 

木場「……さあ?」

 

 

木場はわかっているのか含み笑いを浮かべつつ、とぼけた様子でお手上げする。木場だけでなく、ギャスパーや女性陣はわかっている様子で、リアスとアーシアはほんの僅かだが機嫌を悪そうにしている。

 

 

「「?」」

 

 

しかし、如何にもなリアクションを見ても尚、一誠と我夢にはわからないのか、2人そろって首を傾げている有り様だ。

我夢はともかく、一誠までもわからないとは……。

 

一誠はいくら考えてもわからないので思考を切り替える。

 

 

一誠「…?ま、いいや。とりあえず、これ食いましょう」

 

リアス「そうね。せっかくだから頂きましょう」

 

 

一誠の提案にリアスが賛成する。他の皆も聞かずとも同じ意見である様だ。

さっそく、皆がレイヴェルのケーキに手をつけようとした時、《ピピッ》と皆のXIGナビに通知音が鳴る。リアスが代表して出ると、それは石室からだった。

 

 

《石室「…」》

 

リアス「…?どうしましたか?」

 

 

苦い顔をして口を固く閉ざして一向に話さない石室にリアスは不思議に思い、訊ねる。

すると、次の瞬間。石室の口から予想外の言葉が出た。

 

 

《石室「先程、稲森博士がパーセルを撃ち込んだ地球怪獣を操って、共に姿を眩ました。ジオベースにあるパーセルのデータも一緒にだ」》

 

『!?』

 

 

そのあまりにも信じられない事態に我夢達は言葉を無くす。種族は違えど、地球を守る為にG.U.A.R.D.及びXIGに協力した筈の稲森がこんな形で裏切るとは…。

数時間前に会ったばかりの我夢は特に信じられなかった。

 

 

我夢「そんな……一体、どうして!?」

 

《石室「わからない。ただ、わかることは博士は最初から怪獣を操れる様にパーセルに独自の改良をしていたことだけだ」》

 

我夢「…っ」

 

 

そのことを聞き、パーセルの改良は稲森自ら率先して参加したと樋口から聞いたことを思い出す。

その時は何も疑問に思わなかったが、まさかこれが狙いだったとは思いもよらなかった…。

 

 

リアス「怪獣の現在地は?」

 

《石室「怪獣は現在――」》

 

ドォォォォンッ!!

 

『!?』

 

 

石室が怪獣の現在地を知らせる最中、突然、近くで衝撃音が鳴り響く。その衝撃でほんの少し楽屋が揺れ、足下が不安定になるが、すぐに収まった。

幸い尻餅やケガはしなかったが、その衝撃で皆は一斉に心の中で「まさか…」と嫌な予感がした矢先、1人のスタッフが扉を開け、部屋へ駆け込んでくる。

 

男は急いでいて乱れた呼吸を整えると、顔をあげると、我夢達の予想通りの言葉を発した。

 

 

「た、大変ですっ!この町の郊外に怪獣が現れましたっ!!」

 

 

最悪な予想が的中した我夢達は疑問が未だ残ってはいるが、とにかく目の前の問題を解決すべくXIG隊員服に着替えた。

ちなみに着替えはXIGナビにあるボタン1つ押すことで瞬時に出来るので、時間は1秒もかからない。

 

 

リアス「皆、行くわよっ!」

 

『はいっ!』

 

 

身支度を整えた皆は先陣を切るリアスに連れて、移動し始める。我夢も同様についていこうとするが、そんな彼をリアスは制止する。

 

 

リアス「待って、我夢。やってほしいことがあるの」

 

我夢「?」

 

 

やってほしいこと…?首を傾げる我夢にリアスは続けて

 

 

リアス「先程、コマンダーからあなたへの指令が来たわ。このビルの地下ロビーにいるリザードと一緒に向かってほしいの」

 

我夢「わかりました!」

 

リアス「頼むわね」

 

 

とりあえず自分にしか出来ないことだろうと察した我夢は承諾すると、皆とは別の方向へ走っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チームリザードと合流した我夢は瀬沼が運転する車に乗り、怪獣が出現した地点へと向かっていた。

 

瀬沼から聞いた石室の伝達によると、我夢は現場の近くにいるであろう稲森を説得してほしいとのことだった。

我夢は何故自分なのか?と思いつつも、真剣な面持ちで前方の景色を眺めていた。

 

 

瀬沼「高山さん、これを」

 

 

瀬沼は運転しながら、助手席に座る我夢に分厚い黒のファイルブックを渡す。

 

 

我夢「何ですか、これ?」

 

瀬沼「稲森博士が過去に提出した案です。我々が魔王様の命令で調査していたところ、偶然発見したんです」

 

我夢「『地球環境改善安全プラン』…?」

 

 

そう大々的なタイトルで綴られたレポートの下の方には、確かに『稲森 京子』の名があった。

続けてページを捲ると、それだけでなく、地球環境に対するいくつものレポートが収納されていた。

 

どれも素晴らしい案だと我夢は思ったが、目を通したレポートの全てに『保留』の烙印が押されている。どういうことだと怪訝に思っていると、瀬沼は我夢を横目で見ながら話す。

 

 

瀬沼「そのファイルブックだけでなく、他にも多数の案が提出されましたが、地球改善よりも破滅招来体との戦いが優先され、全て却下……その代わり―――」

 

我夢「――パーセルの担当をさせられた…」

 

 

瀬沼の言おうとしていることを我夢が続けて呟くと、瀬沼は頷く。

我夢はジオベースでの稲森の会話を思い出す…。

 

 

(稲森「”地球の生物達が人類の自分勝手さに怒っているんじゃないか”って。きっと、人間1人1人の意識が変わらない限り、その怒りは鎮められない」)

 

我夢「…!」

 

 

地球環境に対する思い、地球怪獣の存在意義……色々な要素を掛け合わせて考えると、我夢の脳裏に1つだけ答えが浮かんだ。

 

 

瀬沼「稲森博士の目的は何でしょうか?」

 

我夢「多分……怪獣の怒りを見せつけることで人間、いやこの地球に住む種族の意識は変わる―――博士はそう信じています」

 

 

稲森は怪獣を操り、暴れさせることで人々に意識させ、地球環境の改善を考えさせる…。そうすることで、人々の地球の環境に対する姿勢は変わるかもしれない。

 

――しかし、だからといって好き放題させる訳にはいかない。多くの血を流してまで行うなんて、解決策じゃない。自分も同じ地球を愛する者として黙ってはいられない…。

それと同時に石室が何故、自分にこの役割を与えた理由を理解した。

 

 

瀬沼「…っ!?パーセルの反応が!」

 

我夢「瀬沼さん、停めてください!」

 

 

瀬沼は我夢の指示に従い、車を近くの木々に停める。

我夢は車が停まったや否や、すぐに外へ飛び出た。

 

 

我夢「ありがとうございます。ここから先は僕1人で行きますので、瀬沼さんは都市の住民の避難を!」

 

瀬沼「わかりました。お気をつけて」

 

 

我夢は力強く頷くと、森の中へ入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴメノス「グワァァァァ~~~!!」

 

 

その頃、都市部郊外にいるゴメノスは口から放つ火球で都市部を攻撃しつつ、ゆっくりと進軍していた。

都市部は幸い、自動防衛結界によって守られてはいるが、破壊されるのも時間の問題だ。

 

 

ピッ…ピッ…ピッ…

 

 

ゾンネルの額には撃ち込まれたパーセルが心臓の鼓動の様に赤く点滅しており、稲森の従順な存在となっていることを表している。

 

 

稲森「…」

 

 

その様子を遠く離れた岩山から見下ろしていた稲森は機械語デコーダを手に、眺めていた。

 

 

我夢「もういいでしょ、博士」

 

稲森「…!?」

 

 

すると、そこへ我夢が声をかけ、現れる。稲森は最初こそ驚いた表情でいたが、すぐに冷静さを取り戻し、冷めた表情に変わる。

 

 

我夢「何故、冥界(ここ)にいるのかとか聞きたいことはありますが、まずは怪獣の怒りを鎮めて下さい」

 

稲森「それは出来ないわ」

 

我夢「何故です?博士はリリーの様な小さな生き物の死を、悲しんでたじゃないですか?なのに――」

 

稲森「――人類は急激に進化し過ぎたわ…」

 

 

自分の頼みを一蹴した稲森に我夢は問い詰めると、稲森は言葉を遮って口を開く。

思わず口を閉ざす我夢に稲森はそのまま話し続け

 

 

稲森「…異種族だって同じよ。このままなら、人間も悪魔も、地球を自らの手で破滅に追い込んでしまう」

 

我夢「だとしても、どうしてこんな方法で人々の意識を変えようとするんです?」

 

稲森「時間がないのっ!」

 

 

尚も問い続ける我夢に稲森はそう言い放つ。

彼女の強い口調に押されそうになるが、それでも我夢は疑問の眼差しを向け続ける。

稲森は話し続け、

 

 

稲森「…人類が、悪魔が緩やかに意識を変える時間なんて、もう残されてないわ。人間よりも遥かに優れた力を持っている筈の悪魔がどうして住んでいる地球の環境に対する行動を起こさないの!?どうして自分達が悪化させている事実に目を背けるの!?どうして身分を競うゲームの方が大事なの!?」

 

我夢「…っ」

 

稲森「だったらもう残された手段はないわ!藤宮君が使ったポータルで怪獣を冥界へ連れてきて、残酷な事実を目の前に突きつけるしか、方法はないの!」

 

 

稲森の言葉に我夢はほんの一瞬だけだが、共感してしまった。確かに地球のピンチだというのに、上級悪魔は自分の地位ばかり目を向けて、後は知らんぷりしている。

それは事実だが、やはり…

 

 

我夢「それは違う!きっと人は変われる筈です!どうして、僕達や人間の可能性から目を背けるんです?」

 

 

否定しつつも、我夢は問いかける。どうしてそこまで焦っているのか?それが気がかりだった。

すると、稲森は顔を俯け、静かに答える。

 

 

稲森「…巡りあってしまったからよ。地球の運命を背負った人――――『青い巨人』に」

 

我夢「っ!?知っていたんですか?藤宮が『青い巨人』だって…」

 

 

彼女の口から出た言葉に我夢は目を丸くして問いかけると、稲森は頷く。

その事実を知った我夢は稲森の一連の行動を見て、何かに気付いた。

 

 

我夢「っ、まさか…!?博士は自分の手を汚せば、人々の意識は変われば、藤宮が思い直すと?」

 

 

そう、今回の事件は全ては藤宮の為だったのだ。

両親を悪魔のせいで亡くし、人間に失望し、苦しんだ我が子同然の彼を救ってあげたいという義理の母である愛情故の行動だったのだ。

これに対して稲森は

 

 

稲森「…今の人類、悪魔達と同じ様に、彼も…簡単には変われないのよ」

 

我夢「博士……」

 

 

肯定と言える返事をする彼女はその顔は、我が子を心配する母親の表情そのものだった。

 

 

キィィィィ――――――ン

 

 

ちょうどその時、編隊を組んだ2機のXIGウイングと1機のXIGウイング2号、それに魔王軍と思わしき武装した悪魔達が我夢達の真上を通り過ぎ、ゴメノスへ向かっていく。

それを見て、血相を変えた稲森はその場から駆け出す。

 

 

我夢「博士!」

 

 

我夢も急いで後を追う。

稲森は走りながら息を切らしつつ、耳に着けてあるヘッドセットのマイクにコマンドを音声入力していく。

 

 

稲森「Start(スター)to(トゥ) command(コマンド)09(ゼロナイン)- 02(ゼロツー)- G3(ジースリー)- 00(ゼロゼロ).Enter(エンター).」

 

ゴメノス「ゴワァァァ~~~~!!」

 

 

稲森がそう呟くと、ゴメノスの額のパーセルの点滅は速くなると、彼女のいる方角へ顔を向ける。

すると、次の瞬間、ゴメノスは口を大きく開き、火球を我夢目掛けて放った。

 

 

我夢「うわぁぁぁーーーーー!!」

 

 

突然の攻撃に我夢は対処が間に合わず、爆発に巻き込まれ、吹き飛ばされる。

着弾時の爆風に稲森は倒れるが、すぐに上体を上げて我夢のいた方角を見る。

 

 

稲森「……誰にも邪魔はさせない…!」

 

 

そう呟く彼女の目は以前の様な優しく穏やかなものでなく、目的の為に徹する決意をした冷たいものだった。

 

そうこうしているうちにXIGウイング部隊と魔王軍、リアス達はゴメノスに対して集中攻撃を開始していた。

 

 

ゴメノス「ゴワァァァ~~~!」

 

 

彼らの集中攻撃にゴメノスの注意は確実にXIGへ逸れていた。

稲森はすぐさま立ち上がると、応戦とばかりにコマンドを音声入力していく。

 

 

稲森「 command(コマンド)44(フォーフォー)- C5(シーファイブ)- 71(セブンワン)- 00(ゼロゼロ).Enter(エンター).そいつらに構わず、町へ向かうのよ」

 

 

だが、パーセルを通して入力したのにも関わらず、ゴメノスは無視して、XIGや魔王軍と応戦している。

 

 

稲森「37(スリーセブン)-41(フォーワン)-02(ゼロツー)……!」

 

 

その様子に稲森は焦り、コマンドを再度入力していく。

しかし、ゴメノスは何か気付いたのかジッ…と稲森の方を見下ろし、その動きを止めた。

 

 

稲森「どうしたの?言うこと聞いて…!」

 

ゴメノス「ゴワァァァ~~~!!」

 

 

突然の静止に稲森は困惑し、何度も呼び掛ける。

コマンドを入力する度、激しく点滅するパーセル。

不穏な空気が立ち込め始めていた次の瞬間、ゴメノスは雄叫びをあげると額のパーセルをその左手でもぎ取った。

 

 

稲森「そんな…!?所詮、人には操れないと言うの…?」

 

 

完璧に操れると自負していたパーセルが意味をなさず、命令に逆らって、遂にはもぎ取ってしまった。その光景に稲森は唖然となる。

ゴメノスは呆然と立ち尽くしている稲森が自分を今まで操っていたのがわかっていたのか、口を大きく開け、彼女へ狙いを定める。

 

 

我夢「博士ーーっ!!離れてーーーーー!!!」

 

 

そこへ復帰した我夢が彼女を守ろうと走りながらエスプレンダーでガイアに変身しようとしたが、もう遅い。

無慈悲にもゴメノスの火球は稲森のもとへ一直線に放たれた。

 

 

稲森「きゃあぁぁぁぁーーーーーっ!!!」

 

ドォォォォーーーーーーンッ!!

 

 

火球が直撃し、爆発で稲森は勢いよく吹き飛ばされ、地面に頭をぶつける。

我夢は血相を変えて、倒れている稲森へ駆け寄る。

 

 

我夢「博士!博士!博士ぇぇーーーーー!!」

 

稲森「…」

 

 

我夢は必死に稲森の肩を揺すって呼び掛けるが、稲森は意識を失っており、返事はない。

悪魔である我夢は体をぶつけるぐらいで平気だが、人間である彼女はそうではない。かなり吹き飛ばされたので重傷だろう。

 

 

ゴメノス「ゴワァッ!ゴワァァァ~~~!!」

 

我夢「っ!」

 

 

我夢は口から血を垂らしながら気絶している彼女を不安そうに見つめていたが、束縛から解除されて嬉しそうに雄叫びをあげるゴメノスへ視線を向ける。

ゴメノスは次の標的を近くにいるXIGでなく、仕留め損ねた我夢へ向けると、一直線に走り出した。

 

 

我夢「ガイアァァァァーーーーーーーーー!!

 

 

人を殺して喜ぶ怪獣に我夢はこれほどまでにない怒りと殺意を覚えた我夢は意を決して立ち上がる。掛け声と共にエスプレンダーを前へ突き出すと、赤い光に包まれ、ウルトラマンガイアへ変身した。

 

 

ガイア「ダッ!」

 

 

ガイアは怒りを現すかの如く、その身に烈火を纏って着地すると、その勢いのまま滑り込む様に接近する。

 

 

ガイア「トアッ!」

 

ゴメノス「グワァァ!?」

 

ガイア「グアッ!」

 

ゴメノス「ギシィィーーー!?」

 

 

近付くとガイアは回りながら左足の蹴りあげ、かかと回し蹴りを繰り出す。

ゴメノスが怯んでいると、ガイアは続け様に跳躍してゴメノスの後ろへ回り込む。

 

 

ガイア「デュアッ!グアァァァァァ………ダァァーーー!!」

 

 

ガイアは尻尾を掴むと、ジャイアントスイングの要領でブンブンと3回その場で回ると、ゴメノスを町から離れた岩山へ投げ飛ばす。

 

 

ゴメノス「ギィィ~~~!!」

 

 

岩肌に体をぶつけたゴメノスは破片の雨が降り注ぐ中、苦悶の声をあげ、ジタバタとその場で苦しむ。

 

 

ガイア「…」

 

 

それをよそにガイアは先程、自分と稲森がいた岩山へ視線を向ける。

そこには倒れている彼女の上体を抱える藤宮の姿があった。

 

 

藤宮「何故、こんなことを……」

 

 

藤宮は困惑した表情を浮かべながら朦朧とした表情を浮かべる稲森へ問いかける。

すると、稲森は意識が朦朧としながらもゆっくりと口を動かし、話す。

 

 

稲森「…本当は……見たかった。あなたの……笑顔を……」

 

藤宮「…っ!」

 

 

その言葉に藤宮は悲痛な表情になり、思わず涙を流し始める。彼女の言葉の意味……それはもう既に命は助からないということだ。

その悲しさに両親が殺されて以来、ずっと流したことがなかった涙を久しぶりに藤宮は流した。

 

 

稲森「…これ……を…」

 

藤宮「…ああっ」

 

 

稲森は重たい手を必死に動かし、ポケットから取り出したUSBメモリを藤宮へ差し出す。

それは彼女がジオベースから奪取したパーセルのデータが入ったUSBメモリだった。

 

 

藤宮「…そんな!俺のせいで……あなたをこんな、こんなことをさせて……!」

 

 

意図せずとも自分のせいで彼女が暴走してしまった。その事実を察した藤宮は嗚咽混じりの声で謝罪する。

どんなに謝っても許されない…。しかし、この時ばかりの藤宮はいつものクールさはなく、1人の人間の死を悲しむ少年だった。

 

 

藤宮「……!」

 

 

罪悪感に駆られる藤宮の頬を稲森は子供をあやすように愛しく撫でる。その行動に藤宮はハッとなり、涙を流しながら彼女を見つめると、稲森は

 

 

稲森「…こんな…お母さんで…ごめん……ね」

 

 

微笑みながら一言告げると、稲森の体は冷たくなり、手に持っていたUSBメモリはカタッと音を立てて落ちた。

 

 

ガイア「…!?」

 

 

彼女の死にガイアは動揺の色を隠せなかった。

 

 

藤宮「う"あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ーーーーーーーーー!!」

 

 

そして、目の前で育ての親を失った藤宮のショックは言葉に出来ぬほど悲しみに溢れた。彼から出た悲痛な叫びはこの場にいるガイアのみならず、遠くにいる魔王軍やリアス達の耳にまで響いた。

 

 

ゼノヴィア「この声は……藤宮 博也か!」

 

アーシア「でも、凄く悲しい声です…」

 

朱乃「……」

 

 

藤宮の叫びに一同は立ち尽くし、悲しそうに声をもらす。朱乃はその叫びに何か思い返す伏があるのか、特に悲しそうな表情を浮かべていた。

 

 

ゴメノス「ゴワァァァ~~~!!」

 

 

ゴメノスは稲森が死んだことを祝うように落ちてあった岩を両手で砕いた。まるで「この岩のように儚い命だったな」と言わんばかりに……

 

 

ガイア「グアァァァァァーー……アァッ!!」

 

 

ゴメノスに確実といえる殺意を覚えたガイアは怒りに震えると、その場から駆け出す。

ゴメノスはこちらへ向かってくるガイアへ口から火球を何発も放つが、ガイアは両腕で叩き落としながら接近する。

 

 

ガイア「デュアッ!グアッ!!」

 

ゴメノス「ギシィィ~~~!」

 

ガイア「デュアッ!」

 

 

ガイアは走った勢いのまま前回転しながら跳躍すると、かかと落としを脳天にくらわせる。

怯んだゴメノスにガイアは額を掴んで無理矢理顔をあげさせると、左の拳で2発殴り、

 

 

ガイア「ダッ!」

 

ゴメノス「ギシィ!!?」

 

 

頭をひいて、勢いよく頭突きをゴメノスの顔面へくらわせる。

ゴメノスは苦悶の声をあげながら大きく後ろへ後退るが、ガイアの猛攻はまだ終わらない。

 

 

ガイア「デヤァァァーーー!!」

 

 

ガイアは前へ飛びかかって体当たりすると、ゴメノスと一緒に倒れこむ。

そして、すぐさま立ち上がると、馬乗りになってゴメノスの顔面を執拗に殴り始めた。

 

 

小猫「……我夢先輩、怒ってる」

 

ギャスパー「す、すごい…!」

 

 

その光景を遠くから見ていた一同からは期待混じりの驚愕の声があがる。しかし、

 

 

木場「……駄目だ」

 

「「?」」

 

 

と、期待とは裏腹に否定的な声をもらす木場に小猫とギャスパーは不思議そうに顔を向ける。

そんな2人に木場と同じ意見なのかリアスが彼に変わって説明する。

 

 

リアス「我夢はね、怒りのあまり、冷静さをかけてるのよ。今は圧倒的にねじ伏せてるけど、精神が不安定だから、隙が多すぎる。このままじゃ、危険すぎるわ…」

 

一誠「我夢…」

 

 

リアスの説明を聞き、皆は苦い顔でガイアを見守る。

流れに乗ったガイアは次々と拳を打ち込んでいくが、次の瞬間――その不穏な予感は的中した。

 

 

ゴメノス「ギィ~~~!」

 

ガイア「グアッ!?」

 

 

ゴメノスに脇腹を殴られ、ガイアは横へ吹っ飛ばされ、地面へ倒れる。

ガイアが離れて自由の身となったゴメノスは立ち上がると、続け様に倒れている彼を蹴っ飛ばす。

ガイアはまたも後方へ吹き飛ばされ、地面に大きく体をぶつける。

 

 

ガイア「グアッ…」

 

ゴメノス「ゴワァァァーーー!!」

 

ガイア「グアァァァァァーー!!!」

 

 

ガイアは怯みながらも何とか立ち上がるが、ゴメノスはその硬く丸々とした頭を向けて突進。

ガイアは大きく後方へ吹き飛ばされ、岩肌に体をぶつける。ガイアはそのあまりもの激痛に中々立ち上がれず、膝をついている。

 

 

ゴメノス「ゴワァァァーーー!!」

 

ガイア「デュアッ!?」

 

 

その隙にゴメノスは近付くと、その図太い両手でガイアの首を締め上げる。

更に駄目押しとばかりにゴメノスは体内の熱エネルギーを両手に集中させ、皮膚を焼き始めた。

 

 

ガイア「ドアァァァァーーーー!!」

 

ゴメノス「…ニヤリ」

 

 

手から伝わる熱で皮膚が焼かれる感覚にガイアは苦痛の叫びをあげる。ゴメノスは苦しむガイアを見て嬉しいのか、目元を歪めて邪悪な笑みを浮かべる。

 

 

[ピコン]

 

 

その拷問の様なむごたらしい所業にガイアは耐えきれず、ライフゲージも危険を知らせる赤色に点滅し始めた。

 

逃れようにもゴメノスの怪力を振りほどくことは出来ず、ジワジワと体力を削られていく。

まさに絶体絶命……。そんな時、

 

 

ダイナ「ダアァァァァァーーーーー!!」

 

ゴメノス「ゴワァァァーー!!?」

 

 

いつの間にか一誠が変身したウルトラマンダイナが上空から登場すると共に急降下キックでゴメノスを蹴り飛ばし、ガイアから引き剥がした。

解放されたガイアは後方へ倒れ、尻餅をつく。

 

ダイナは尻餅をついたガイアを助け起こすと、

 

 

ダイナ「我夢、冷静になれ。何があったかわかんねぇが、とにかく冷静になってアイツを倒そう」

 

ガイア「ごめん、わかった…」

 

 

叱咤されたガイアは反省すると、心を落ち着けて、いつもの感覚を取り戻す。

 

 

ゴメノス「ゴワァァァーーーー!!」

 

ガイア「デュアッ!グアァァァァーーー……!!」

 

ダイナ「ハッ…!」

 

 

立ち上がったゴメノスはダイナに邪魔され、怒りを露にした雄叫びを放つ。そんなゴメノスを前にガイアは両腕を広げてエネルギーを溜め始め、ダイナは腰を低くすると、

 

 

ガイア「デュアッッ!!!」

 

ダイナ「シュワッ!」

 

 

ガイアはフォトンエッジ、ダイナはソルジェント光線を放つ。2人の光線は途中で重なり合い、赤と青白いエネルギーが混ざった破壊光線となってゴメノスを襲う。

 

 

ゴメノス「ギィ~~~~~!!!!!」

 

ドガガガガガガァァァァーーーーーーーーン!!

 

 

まともに受けたゴメノスは身体中を刃で切り刻まれた様なエフェクトが走り、オレンジ色のサークルが描かれると、爆発四散した。

 

 

ガイア「…」

 

ダイナ「?……ッ!?」

 

 

倒し終わったガイアは岩山で稲森の遺体に寄り添う藤宮を見下ろす。ダイナもそれにつられて顔を向けると、何があったのか理解した。

 

 

藤宮「…」

 

 

藤宮は涙で濡れた目でガイアを見据えると、どこかへ立ち去っていった。

その表情はどこか虚しく悲しみに満ちたものだった…。

 

その後、戦いの後始末は魔王軍に任せ、稲森が世界各地に設置していたポータルはチームリザードによって全て除去され、地球怪獣が冥界に現れる危険は去った。

 

そして、兵藤邸。すっかり夕焼けになり、辺りが暗くなり始める頃、我夢はリアス達を集めた。

駒王町の町並みを見渡せる屋上で我夢が皆に事の顛末を話した。

稲森の行動の経緯を……そしてゴメノスによって殺されてしまった事を…。

それを聞いた皆は各々、何とも言えない表情を浮かべた。

 

 

リアス「結局、藤宮はパーセルのデータを持っていかなかったのね」

 

我夢「無駄だとわかったんです。怪獣を操ることで地球は救えないって……」

 

 

パーセルのデータが入ったUSBメモリは、稲森の遺体の近くに残されていた。それが藤宮の結論なのか、それとも巻き込んでしまった彼女への僅かながらの謝罪なのか……その真実は彼本人のみしかわからない。

 

稲森の死に悲しむ者もいれば、彼女が死ぬキッカケを与えた人物に怒る者もまたいた。

 

 

一誠「藤宮のやつ!ゆ、許さねぇ……!博士は自分の為に死んだのに考えすらも変えねぇ…!次に会ったら、絶対にぶちのめすっ!!」

 

 

怒りを露にした一誠は歯を食いしばり、血が滲むくらい拳を握りしめていた。

前々から特に藤宮に対して良い印象を持たなかった彼だが、今回の一件で更に悪化した。

そう叫ぶ一誠の目は本気で、藤宮が目の前に現れたらすぐに襲いかかりそうな迫力を放っている。

 

 

イリナ「…」

 

 

そんな彼を見て、イリナは顔を曇らせる。

育ての親を失った藤宮を助けたいという純粋な気持ちと、XIGとして藤宮の前に立ち塞がらなければならないという正義感の板挟みになり、心が大きく揺らいでいた。

 

 

我夢「…」

 

(稲森「今の人類、悪魔達と同じ様に、彼も…簡単には変われないのよ」)

 

 

そんな彼女の異変に気付いた我夢は1人、稲森の言葉を思い出した。

 

―――彼女の言うように人類、異種族と藤宮は簡単に変わることは出来ないのか?

 

―――自分はどうすればいいのか?

 

そんな不安を胸に我夢は水平線に消え行く夕陽を眺めるのであった……。

 

 

 

 




次回予告

ウルトラマンアグルは世界各地で次々と怪獣を呼び覚ました!
もう誰も彼を止められないのか…?

次回、「ハイスクールG×A」
「アグルの決意」
ガイア、アグル、ダイナの三大バトルだ!
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