第41話「新たなる迷い」
光量子コンピューター『クリシス』の暴走により、絶望の淵へと追いこまれた藤宮 博也は、アグルの光を我夢に託して姿を消した。
ヴァージョンアップしたウルトラマンガイアはワームゾーンから出現した巨大なる敵、ゾーリムを撃退した。
原因であるクリシスは凍結され、地上にはつかの間の平和が訪れていた…。
深夜。すっかり暗くなり、静寂に包まれたビルの階段を我夢は上っていた。
我夢「はっ、はっ」
カッカッカッと足音を響かせながら、ジェクターガンを構えながら、XIGの隊員服を着た我夢は短く息をきらせながら上へと上がっていく。
そして、屋上へ辿り着いた我夢は扉を勢いよく開け、身を出すと
我夢「行き止まりだ!今度こそ逃げられないぞっ!」
と警告し、目の前にいるフェンスから外を眺める男へ銃口を向ける。
その声に気付いた男は特に臆することなく振り返る。その男の顔は木場に似てる―――否、木場そのものだった。
木場?「やあ、よくここまでこれたね…高山 我夢。無事で何よりさ」
我夢「このビルにいる手下は全て倒した!後はお前だけだ!」
木場?「
そう叫ぶ我夢の言葉に木場?は、嘲笑うかの如く笑いだす。
我夢「何がおかしい!?」
木場?「君は勘違いしている。僕は怪獣を捕らえているんじゃない……自らの手で
我夢「何…?」
我夢は疑問で眉間にしわを寄せていると、木場?はパチンと指を鳴らす。
すると、空から青い巨大な球体がゆっくりと降りてくる。
パァン!
我夢「!!?」
地上へ降り立った瞬間、青い球体は風船が破裂するかの様に弾け飛ぶ。
破裂した球体から立ち込める黄色の煙に我夢は目を伏せる。そして、煙が晴れ、そこに立っていたのは
「ピポポポポ……グオー…!」
灰色に近い黒色の体色に垂れ下がったカマキリ虫の様な角、顔は無機質で表情は読み取れず、顔の縦筋と胸元はオレンジ色の発光体が怪しく光る。
生物感溢れる肥満体のボディーから売ってかわって聞こえる電子音の様な異質な音と牛の様な唸り声が聞こえ、見るものの恐怖心を引き立てる…。
木場?はその怪獣に飛び乗ると、戦慄する我夢に
木場?「ハハッ…!怯えているね?君は弱い人間さ。何も出来ない、ノミ以下の存在さ………もうじき、この世界は滅ぶ!防ぐことなど出来はしないっ!」
我夢「僕は防ぐっ!その為にガイアの光を手にしたんだ…!」
そう言いながら我夢は懐から取り出したエスプレンダーに目をやる。エスプレンダーはガイアの赤、アグルの青、2つの光が美しく輝いている。
木場?「光?笑わせないでくれるかな?闇に包まれるこそが“究極の救い”なのさっ!やれ!」
「グオー!」
木場?の指示を受けた怪獣は左手を高々に上げると、そのまま我夢のいるビルの屋上目掛けて振り下ろした。
我夢「うわぁぁーーー!?」
怪獣の一撃を受け、半壊するビルの瓦礫と共に宙に放り投げ出される我夢。
地上へと落ちていく中、我夢はビルから飛び出した鉄骨へしがみつく。
ギシギシと唸る鉄骨から何とか落ちない様に体制を整えるが
我夢「うっ、ぐっ…!エスプレンダーがっ…!」
しがみついている鉄骨の遠く先にエスプレンダーが落ちていた。半壊したビルから飛び出した鉄骨は安定しておらずゆっくりと揺れ、エスプレンダーはカタカタと左右へとあっちへこっちへ動いていた。
木場?はそんな我夢を嘲笑いながら見下ろす。
木場?「フフッ、そこで世界が滅びる様を見届けるがいい…。さあ、怪獣よ!この町を焼き払えっ!」
「ピポポポポ……!」
我夢を置き去り、木場?は怪獣に指示を出す。
怪獣は顔のオレンジ色の発光体から火球を放って、町を破壊し始めた。
我夢「…っ」
町が火の海に変えられようとする中、何とか鉄骨の上によじ登った我夢は平衡感覚を保ちながら立ち上がる。
我夢は奥にあるエスプレンダーへ意識を集中しながらゆっくりと横歩きで歩いていく。
我夢「この世界は……この世界は……絶対に滅んだりしないっ!」
歩きながらそう言った矢先、鉄骨は遂に耐えきれなくなったのか、ガクッと下がる。
我夢は驚きつつも腰を低くして踏ん張るが、エスプレンダーはその衝撃で激しく揺れ、そのまま落ちそうになる。
我夢「っ!」
―――行くしかない!覚悟を決めた我夢は息を呑むと、その場から駆け出し、エスプレンダーを拾いあげる。
その勢いのまま鉄骨から宙へ飛び上がり、エスプレンダーを素早く右手にはめ
我夢「ガイアァァァァーーーーーーッ!!!」
エスプレンダーを前へ突き出すと、赤と青の閃光に包まれ、我夢はウルトラマンガイアに変身した。
木場?「っ!」
「グオー?」
ガイア「デュアッ!」
振り返る怪獣にガイアは身構える。
両者は深く身構えると、その場から駆け出した。
ガイア『デヤッ!』
『ピポポポポ……グオー…!!』
一誠「しっかし、良く出来てんな~…」
巨大なモニター越しに映るガイアと怪獣の戦いを一誠は感嘆する。
現在、グレモリー眷属にイリナ、アザゼルは兵藤家の地下一階にある大広間のスクリーンシアターにて、冥界で始まったばかりのテレビ番組の観賞会をしていた。
この作品の名は『冥界特撮シリーズ ウルトラマン』という特撮番組で、冥界で始まった子供向けヒーロー番組だ。
今の映像を見た皆さんならもうお分かりの筈だが、登場するメインヒーローは勿論、我夢や一誠が変身するウルトラマンだ。
とはいっても画面に映る我夢や木場達がその役をやっている訳でなく、背格好が同じ役者に合成で顔を当てており、ウルトラマンはスーツアクターが本物そっくりに出来たスーツを着て演技している。
小猫「……始まってすぐ冥界で大人気みたいです。『冥界特撮シリーズ ウルトラマン』」
我夢の膝上で座っている小猫は尻尾を機嫌よさそうに振りながら言う。
小猫の言う通り、冥界ではこの番組は老若男女問わず人気であり、放送開始されて間もないというのに視聴率50%を超える、文字通り“化け物番組”となった。
番組のストーリーとしては、リアスをリーダーとする防衛組織『XIG 』の隊員、高山 我夢と兵藤 一誠は地球から授かった光でウルトラマンに変身する。
2人は正体がウルトラマンであることを隠しながら、世界を滅ぼそうとする根源的破滅招来体に立ち向かう――という有りがちなヒーローものの内容だ。
木場「番組も凄いけど、グッズ展開も凄いよね」
ギャスパー「再現度が高いですね~…」
木場とギャスパーは手に持つオモチャのリーフラッシャーとエスプレンダーをまじまじと眺める。商品名は『
子供向けの玩具にしては精巧に作られており、色や艶、音声等もしっかり再現されており、我夢や一誠のボイスも収録されている。
これだけでなく、様々なグッズ展開がされているがあっという間に売り切れが続出し、冥界の社会現象となり、ニュースや新聞にも取り上げられた。
なお、著作権や商標などはグレモリー家が管理しており、この番組が開始してからかなり儲かっている様である。
ガイア『グアッ!?』
《ドガガァァン!》
その頃、画面に映るガイアは怪獣に吹き飛ばされてビルに叩きつけられ、ピンチに陥っていた。
倒れるガイアに怪獣は一歩ずつ近付いていくが
ダイナ『ダァァァァーーーーー!!』
『グオー!?』
空から突如、白い閃光を纏ったダイナの蹴りが怪獣の胸元に炸裂し、怪獣は火花を散らしながら大きく吹き飛ぶ。
ダイナは着地すると、ガイアへ駆け寄る。
ダイナ『立てるか?』
ガイア『ああ…!』
頷くガイアは差し出すダイナの手を取ると、立ち上がり、怪獣へ視線を変えて身構える。
フラフラと起き上がる怪獣。そして
ダイナ『シュワッ!』
ガイア『グアァァァァァ……!デュアァァァァーーーーーー!!』
『ピポポポポ……グオーーー!!?』
ドガガァァーーーーーーンッ!!
ダイナはソルジェント光線、ガイアはフォトンエッジを放つ。2人の合体光線を前に怪獣はなすすべなく、爆発四散した。
ダイナ『ハッ!』
ガイア『チクワッ!』
戦いを終えたダイナとガイアは天高く腕をあげ、空を飛んでゆく。彼らを背景にプロの歌手が歌うエンディングテーマが流れ始め、番組は終了した。
ちなみにオープニングテーマは『ウルトラマンガイア!』と『ウルトラマンダイナ』の2つあり、前者は我夢とプロ歌手のデュエット、後者は一誠自らが歌っている。
まさか2人に歌の才能があるとはリアス達は思いもよらず、オンエア時には驚かれたのは余談だ。
一誠「あの時、撮影したのがここまで人気なるなんて思わなかったな~…」
一誠はエンディング流れるスクリーンを眺めながら嬉しい様な恥ずかしい様な複雑な顔で呟く。
一誠が言うあの時とは、冥界のテレビ番組のインタビューの後、スタッフに呼ばれた時のことだ。
リアス達にはオンエアまで内緒にしてたが、我夢と共にサーゼクスがメガホンを取るこの番組のパイロット撮影をしたのだ。
最初は流されるままやったが、まさかここまでの規模になるとはその時は思いもしなかった…。
イリナ「でもでも、幼馴染みがこうやって有名になるのは鼻高々でもあるわよね~!テレビのヒーローに憧れて、4人一緒にヒーローごっこをしたものね!」
嬉々と様子で言うイリナ。藤宮のことで落ち込んでいた彼女も少しずつ元気を取り戻していき、今ではすっかり元の元気な調子に戻っている。
それに対して一誠は
一誠「そうだなぁ。あん時のイリナは男っぽくて、やんちゃばかりしてた記憶があるな。ヒーローごっこだって、いつも俺達に悪役ばかりさせてて、年上の
イリナ「もう、そんな昔のこと言わないでよっ!恥ずかしいわっ!自分で言うのも何だけど、すっかり女の子らしくなったわよ!」
一誠「おお。でも、案外、見た目だけかもしれないな!はははっ!」
イリナ「中身も変わってるって、もーうっ!」
からかう一誠にイリナは肩を前後へ軽く揺する。
そんな様子をリアス達は微笑ましそうに見ていると、木場は隣にいるゼノヴィアに訊ねる。
木場「大悟って誰だい?僕も以前名前しか聞いてなかったけど…」
ゼノヴィア「ん?ああ、前に我夢から聞いたことだが、どうも彼もイリナ達の幼馴染みで、年は3つ上だったらしい。昔、住んでいた町にいた子でよく一緒に遊んでらしいが、中学時代に他県へ引っ越したらしい。それ以来も連絡してたらしいが、今はめっきり…」
木場「なるほど」
ゼノヴィアの説明を聞いて木場は納得する。
以前、彼は改築前の兵藤家で大悟の写真を見たことがあるが、見かけたエクスカリバーの写真に夢中になっていたので頭に入っていなかったのだ。
一誠「ははっ、お前もそう思うだろ?我夢…………あれ?」
イリナ「?」
ひとしきりにイリナをからかった一誠は隣にいる我夢に話を振ろうとするが、座っていた筈の我夢の姿はどこにもなく、代わりに小猫は座っていた。
どこにいったと皆が首を傾げていると、小猫は
小猫「……我夢先輩なら、エリアルベースのトレーニングルームに行ってます」
アザゼル「はっ?またか~…。アイツ、つい1時間前にしたばかりなのに」
リアス「ここ最近、トレーニングルームにいることが多いわね。何か悩みでもあるのかしら?」
話を聞き、またかと肩を下ろす一同。
リアスの言う通り、最近我夢はエリアルベースのみならず、兵藤家にあるトレーニングルームにいることが多く目撃されている。
リアスの呟きにアザゼルは
アザゼル「他所で好きな女でも出来たんじゃねぇの?」
ピキィィィィーーーーーーーー!
冗談っぽく呟くと、和気あいあいとした空気が一瞬で凍りつく。寒気がしたリアス達は殺気を放つ方へ振り向くと、2人の恋する乙女の怒りによるものだった。
小猫「……他所で?」
朱乃「好きな女?」
ギャスパー「ひいいっ!?」
小猫は眉間にしわをよせ、血が滲むぐらいの力に握りしめ、朱乃はいつもの様にニコニコしてはいるが、目は笑っていない。
両者から漂う不気味なオーラに皆はタジタジになっていると
一誠「…いや、きっと別なことに悩んでいるんすよ」
小猫「!」
朱乃「…っ、別なこと?」
一誠の呟きに2人は気を取り戻し、意識をそちらへ向ける。
皆がホッとする中、朱乃が訊ねると、一誠は頷き
一誠「アイツ、昔から悩んでることがあったら急に運動ばかりし始めるんですよ。運動苦手なのに…。でも、そういうことをする時は大抵、
『っ!』
一誠の話を聞き、皆はそれで間違いないと納得する。
一誠と我夢は幼馴染みで親友であり、付き合いも長い……従って、この中でも最も我夢の心情を理解している彼の言葉には嘘偽りないのだ。
リアス「じゃあ、何の悩みか詳しくわかる?」
一誠「う~ん……」
リアスの問いに一誠は顎に手を当ててしばらく唸ると
一誠「多分、藤宮のことじゃないですかね…」
『っ!』
一誠「ウルトラマンとしての俺の考えなんですけどね」
イリナ「藤宮君…」
飛び出した藤宮の名前に皆は神妙な顔を浮かべる。特にイリナは一番顔を曇らせていた。
藤宮 博也―――我夢、一誠と同じく地球に選ばれた超古代人の末裔で、光を授かった1人。
かつて、ウルトラマンアグルとして戦った彼は我夢達と幾度も対峙、時には協力してきた。
だが、その彼も今はいない…。
ゼノヴィア「どうして、藤宮を?」
ゼノヴィアの問い掛けに一誠は
一誠「藤宮のことは気に食わねぇが、アイツがいねぇとヤバかったことあったろ?今までピンチの時に助けられてきたから良かったけど、今後そう上手くいくとは限らねぇ……藤宮っていうバックアップがいねぇから悩んでるんじゃないかな?」
ゼノヴィア「そうか…」
リアス「対立こそしてたけど彼がいなかったら、今頃、私達はここにいなかったでしょうね……」
『……』
リアスの呟きに皆は深刻な顔をしながら口を閉ざす。
リアス達は何やかんやありながらも藤宮に生かされていたのかもしれないと実感したのだった。
そして、その頃。エリアルベースでのトレーニングを終え、自分のマンションに戻ってきた我夢も寝室で藤宮のことを考えていた。
我夢は手に取ったエスプレンダーを見つめると、呼応するかの様に赤と青の光が灯る。
それを見つつ、我夢は心の中で呟く。
我夢「(本当にピンチの時はいつも助けてくれた……。あの時も…。あの時も…。アグルがいなければ、勝てなかった……)」
レイナーレ、ボグラグ、サイコメザード、コカビエル、アンチマター……これらの強敵からピンチを救ってくれたのは全て藤宮―――アグルのおかげだった。
だが、
(藤宮「俺にはもう、守るものなんて何もない……」)
あの日の出来事。戦意を失い、アグルの光を自分に託し、闇の中へ消えていった彼の最後の姿。
その悲しい後ろ姿は今でも鮮明に覚えている。
我夢「……藤宮。これからはずっと君無しで戦わなければならないのか?」
エスプレンダーに灯る青い光を見て我夢は弱音を吐く。
他人にすがって情けないとは思うが、弱音を吐く程、彼の存在は大きかったのだ。
そんな時
コンコン…
我夢「…?はい」
扉からノック音が聞こえ、我夢は机にエスプレンダーを置くと、寝室の扉へ歩み寄る。
ドアノブを捻って扉を開けると、そこにはいつもの様にニコニコと微笑む朱乃がいた。
我夢「…どうしたんです?」
朱乃「我夢君、そろそろ“約束”を果たしてもらわないと困りますわ」
我夢「約束?」
何のことだと頭を捻って聞き返す我夢に朱乃はより一層満面の笑みを浮かべ
朱乃「デートの約束ですわ。ほら、ディオドラとの戦いで…」
我夢「あ、ああ~」
朱乃に言われて我夢は確かにそんな約束をしたことを思い出した。とはいっても、一誠が勝手に約束を取り付けたのだが。
その後のアグルやゾーリムとの戦いがあって、すっかり忘れていた。
我夢「(どうする…)」
我夢は頭を悩ませる。
約束はした事実があったとはいえ、あれは一誠の口から勝手に出たものであり、我夢自ら望んだものではない。
朱乃のことは嫌いではなくむしろ好き(異性としてではない)だが、ここで下手に断ったら傷付くだろう。
どう上手く言えばいいか言葉を選んでいると、
朱乃「…あれは嘘なの?」
我夢「あっ!ち、違います!本当!本当ですから!」
悲しげに瞳を潤ませてこちらを下から覗く様に見つめる朱乃を見た我夢はあたふたしながら答える。
すると、それを聞いた朱乃はパアッと明るい笑顔に変わると、我夢に抱きつく。
朱乃「本当?嬉しいっ!じゃあ、今度の休日にデートね♪」
我夢「は、はい…」
苦笑いを浮かべながら我夢は首を縦に振ると、朱乃は上機嫌な様子で「我夢君とデート♪」と口ずさみながら自室へと入っていった。
我夢「は…はは…」
朱乃が去った後、我夢は1人廊下を見ながら力なく笑うしかなかった。
それから時が経ち、デート当日。
我夢は待ち合わせ場所である駒王駅近くの円形状の石畳がある公園の噴水近くにいた。
我夢「(緊張するな~)」
とはいえいざ、デートとなるとやはり緊張するものだ。しかも、我夢にとっては人生初だ。
服装はイリナに選んでもらったもので、いつもよりも気を使ったものにしており、特に問題はない筈だ。
込み上げる不安や高揚感でソワソワしていると、
朱乃「お待たせ」
我夢「あ。朱乃さ―――?」
朱乃の声が聞こえ、我夢は振り返ると思わず目を奪われる。
視線の先にいる朱乃は髪を下ろしており、フリル付きのワンピースといった年頃の女の子が着ている服装をしていた。
てっきり、年上のお姉さんが着るような落ち着いた服を着てくるものだと思っていた我夢。しかし、目の前にいる朱乃は年頃の女の子そのもので、いつもとのギャップにすっかり魅了されてしまったのだ。
固まっている我夢を見て、朱乃は怪訝そうに
朱乃「…どう?今日の私、変?」
と訊ねると、我夢はハッと気を取り戻すと、
我夢「いえ、そんなこと無いですよ!その…よく似合ってます!」
朱乃「ふふっ、嬉しい。ありがとう」
そう返すと朱乃は照れくさそうに笑う。
普段ならあらあらうふふ…と上品なお姉さんらしくなく、年頃の女の子らしい反応に我夢は思わず胸が高鳴る。
我夢「じゃ、じゃあ行きましょうか…」
朱乃「ええ♪」
照れてばかりじゃ始まらない…。我夢は込み上げる高揚感を抑え、歩き出そうとした時、朱乃はスッと我夢の腕に抱き付くと
朱乃「ねえ?今日1日だけ、我夢って呼んでもいい?」
我夢「へ?」
朱乃「私、こうして男の子とデートするのを始めてで……駄目?」
我夢「い、いえ!どうぞっ!」
突然の頼みに呆気にとられる我夢だったが、いつもと違う朱乃の魅了を前にすっかり平常心が揺らいでいた我夢は特に断る理由もないので首を縦に振る。
それを聞いた朱乃は満開の笑顔を浮かべると
朱乃「やった!ありがとう、我夢!」
我夢「は…ははは…」
より一層腕に身を寄せる。腕に伝わる2つの柔らかい感触に込み上げる煩悩を紛らわせる様に我夢は照れくさそうに笑う。
照れる我夢に寄り添いながら朱乃は横目で近くにある電柱へ目をやる。
電柱の陰には変装したリアス、木場、小猫、一誠、アーシア、ギャスパー、ゼノヴィア、イリナが隠れながらこちらを観察していた。
変装こそはしてはいるが、それが逆に目立っていて全く隠せていない。ちなみに我夢は彼らがいるのは気付いていない。
朱乃はそんな彼らを見ながら
朱乃「ふふっ…」
リアス「~~っ!」
小猫「…っ!」
挑発する様に笑うと、リアスと小猫は怒りで体を震わせる。リアスには「こんなこと出来ないだろう」という優越感、小猫には「あなたには渡さない」という対抗心を込めてだ。
それをすぐ理解した2人は怒りのあまり、電柱にヒビが入る程手に力を込めていた。
我夢「どうしました?」
朱乃「いえ。行きましょ♪」
我夢「…?はい」
朱乃の視線が気になったのか、こちらを覗く我夢に朱乃はそう答えると、2人は町へ歩き出した。
リアス「こっそり後をつけるわよ…」
リアス達も2人から距離を取りつつ、ストーキングを始めた。
それから3時間。我夢と朱乃は手を繋ぎながらデートを満喫した。
ゲームセンターで遊んだり、露店で買ったクレープを一緒に食べたり、ブランドショップに行っては朱乃が洋服を比べては「これ似合う?」「それともこっち?」と我夢に訊いたりしていた。
終始年頃の女の子の顔を見せる朱乃に我夢はすっかりデレデレになっていた。
我夢と朱乃は歩く度に周りから視線を集めていた。スタイル抜群の美少女である朱乃は勿論だが、我夢も童顔だがイケメンの部類に入っている。
この美男美女のカップルにすれ違う男女の妬みや憧れの注目を集めていた。
最初こそ我夢はその視線が気になっていたが、朱乃とのデートの楽しさで気にならなくなった。
それから更に1時間後。2人は映画館から出ていた。
我夢「面白かったですね!」
朱乃「ええ♪」
訊ねる我夢に朱乃は満足そうに答える。
ちなみに2人が見た映画は輝く銀河の彼方から地球にやってきた銀と赤の巨人が首長怪獣とそれを操る侵略宇宙人と戦うSFものだ。
我夢は元からSFに興味があったが、そんな話がない朱乃が満足してくれるのかと最初は不安してたが、なんやかんやで朱乃も自分の趣味と意外とマッチしたらしく、終始楽しんでいたのでその不安も杞憂だと安堵した。
2人は映画の感想で談笑しつつも近くの本屋に入っていく。立ち並ぶ本棚にズラッと収納されている本を2人は見ながら中を歩いていく。
我夢「あっ」
幼児向けのコーナーに差し掛かった時、我夢はとある1冊の絵本に目が止まると、その絵本を手に取る。
突然吸い寄せられる様に絵本へ向かっていった彼に朱乃は後に着いていく。
我夢「懐かしいな~」
朱乃「どうしたの?」
我夢「ん?ああ、『ガリバー旅行記』ですよ」
我夢の言葉を聞いて朱乃はおぼろげながらも大まかなあらすじを思い出す。
ガリバー旅行記……船で仕事をしていたガリバーが嵐に巻き込まれ、漂着先の小人の国で大活躍するというお話だ。
我夢はガリバー旅行記の本を懐かしそうに眺めながら
我夢「僕、小さい頃に不思議な世界をいくつも旅した時空旅行者といえるガリバーに強い憧れを抱いていたんです。何度も何度も本を読み返しては、こう願ったんですよ。自分もその世界を旅してみたいって……」
朱乃「それで量子物理学に?」
我夢「ええ。それで、小さい頃からずっと、自分もきっとガリバーみたいに時空旅行者になるって夢を持つ様になったんです」
夢を語る我夢の目は夢と希望で輝いており、その顔は子供の様に純粋で爽やかなものだった。
朱乃はそんな真っ直ぐな彼を好きになったんだなと改めて自覚すると、ふふっと微笑み
朱乃「素敵な夢ね…きっとなれますわ。我夢なら」
そう応援すると、朱乃は思った。この先ずっと、彼のそばで応援し続けると…。
それを聞いた嬉しそうに笑う。
我夢「はははっ、ありがとうございます。それじゃ、デートを続けたいところですが……」
朱乃「?」
我夢「…あれって、部長達ですよね?途中から気付いたんですけど、気になって……」
困惑する我夢が指差す本棚の陰には相変わらず追跡中のリアス達がいた。気付いた時から今まで気付かないフリをしていたが、小猫から悪寒がする程の眼差しが背後から突き刺さり、気になってしょうがなかったのだ。
それを聞いた朱乃はクスッと悪戯気に笑うと、
朱乃「じゃあ、リアス達を撒いちゃいましょう!」
我夢「えっ、おあっ!?」
そう言うと、次の瞬間。朱乃は我夢の手を取ると、リアス達から逃げる様に走り出した。
当然、突然のことに我夢は引っ張られて戸惑うが、今さら足を止める訳にもいかず、朱乃につられるまま足を動かす。
一誠「あっ、逃げた!」
リアス「逃がさないわ!みんな、追うわよっ!」
それを見て逃げると察したリアス達も急いでその場から駆け出す。
一行はそのまま本屋から外へ出ると、小さな追跡劇が始まった。
それから、数分後。我夢は朱乃につれられるまま、町中の角という角をあっちこっちへ曲がり、近くにある小路に身を隠す。
息を潜め、物陰からリアス達が通り過ぎるのを確認してから、2人は道路に出た。
我夢「はぁ…突然走り出すから驚きましたよ…」
朱乃「うふふ、ごめんね。でも、リアスを撒けたみたいね」
くたびれた様に膝に手をついて安堵のため息をつく我夢にペロッと舌を出しながら小悪魔な笑みを返す朱乃。
我夢は「後で部長達に何を言われるかわからないな…」と不安に駆られる。朱乃に引っ張られたとはいえ、止めるどころか協力したのは事実だ。
けれど、
我夢「(…まあ、朱乃さんが楽しんでくれたらそれでいいか……)」
朱乃の笑顔を見て、我夢は前向きに考える。
今回、デートに乗ったのは一誠の出任せとはいえ、約束を破ってしまうという罪悪感もあるが、いつもお世話になっている朱乃への恩返しや気分転換の機会という考えもあったからだ。
結果、思ってたより順調にデートは進み、朱乃も自分も随分楽しかった……なので、結果オーライということにした。
我夢「?」
しかし、あっちこっち走り回ったせいで現在位置が分からず、辺りを見渡す。
視界に映る景色はどれもこれも『休憩313円~』や『宿泊1999円!』といった、ネオンライトが点いた宣伝の看板ばかりが立ち並ぶ建物ばかりだった。
我夢「こ、ここは…」
この光景を前に我夢も流石にわかった。そう、ここは男女の営みが盛んに行われる…所謂ラブホ街と呼ばれる場所だ。
年頃の若い男女がいるべき場所ではない。
我夢「あ、朱乃さん!ここにいたら流石に勘違いされそうですよ!は、早く出ましょうっ!」
身の危険を感じた我夢は朱乃の手を取り、そそくさと立ち去ろうとしたが、朱乃は一向に動かない。
我夢「朱乃さん…?」
我夢は振り向くと、朱乃は耳まで顔を真っ赤にし、顔を俯けながらもじもじしていた。
その様子に我夢が訝しげに思っていると、朱乃は顔を真っ赤にしたまま、ぼそりと呟く。
朱乃「……いいよ」
我夢「…………ゑ?」
一瞬、我夢は耳を疑った。その言葉の意味を。
固まっている我夢に朱乃は恥ずかしながらも意を決したのか、顔をあげると、
朱乃「…我夢が入りたいなら、いいよ。大丈夫だから………」
我夢「………え、えええええーーーーーーー!!?」
そう真っ直ぐ伝えられた我夢は思わず人目を気にせず、大声で驚愕の声をあげる。
いいよ――つまり、ラブホテルに入って
彼女はいつもの余裕ある表情が消え、うぶな反応を見せながらも決心した目を浮かべていることから嘘ではないのは確実だ。
しかし、勉強一筋で生きてきた我夢にはそういった経験は勿論ない。それも相手は恋人でもなんでもない知り合いの女の子だ。
だが、女の子がここまで勇気を振り絞って誘っているのだから、ここで食わねば男が廃るような気がしてならない…。
我夢「(ど、どうすれば…)」
ここでOKを出せば朱乃は喜んでくれるだろうが、その後が大変だ。かといってNOと言えば、朱乃の心を傷付けることになるだろう。
我夢が理性と煩悩の板挟みに苦しんでいると、
「ふぅむ……。昼間っから女を抱こうとはやりおるのう、ウルトラマンガイア」
「「っ!?」」
そんな話しかける声が聞こえ、我夢と朱乃はハッとなり、そちらへ振り向く。
すると、そこにはラフな格好をした老人が長い髭を擦りながらニヤニヤとこちらを見ていた。その後ろにはパンツスーツを着た長い銀髪の女性と屈強な体格をした大男が立っていた。
けど、我夢にはわかった。手前の老人は北欧の主神オーディン、後ろにいる女性がその付き人である
しかし、後ろにいる男性は見覚えがない。別の付き人だろうか…?そんなことを疑問に思いつつも、我夢はオーディン達にペコリと一礼する。
我夢「オーディン様。ディオドラの件ではお世話になりました」
オーディン「ほっほっほっ…良き良き」
我夢「それと、ロスヴァイセさん?ですよね?あの時、いきなり声をかけてすみません。人違いしてしまって…」
ロスヴァイセ「いっ、いえいえ!人違いなんて誰でもありますよ!頭をあげて下さいっ!」
突然謝れると思ってなかったのか、ロスヴァイセは我夢に頭をあげる様に促す。
我夢は頭をあげると、さっそく本題に入る。
我夢「どうしてここに?」
オーディン「うむ。ある件で訪れるこ――「オーディン様!こ、このような如何わしい場所で話すべきではありません!うろうろされてはこちらも困ります!神としての自覚をお持ち下さいっ!」…あ~、うるさいのぅ」
何かを答えようとするオーディンだが、注意を促すロスヴァイセの声で遮られる。
オーディンは手で耳を抑えながら鬱陶しそうにジト目で見ながら
オーディン「…相変わらず固いの。たくっ、それだから
ロスヴァイセ「っ!」
オーディンがそうぼやいた瞬間、ロスヴァイセは頭から電流が走ったかの様に顔が真っ白になると、次の瞬間。肩からガクリと地へ崩れ落ちる。
ロスヴァイセ「どーせ、私は色気がないヴァルキリーですよ…。年齢=彼氏いない歴の残念女ですよ……」
我夢「あ、あの……大丈夫ですか?」
オーディン「心配いらんよ。いつものことじゃ」
膝をつき、ブツブツと念仏を唱える様に呟いて落ち込むロスヴァイセを心配する我夢だが、オーディンは心配ないと言う。
だが、余程ショックなのか、しばらく立ち上がれそうにない。
我夢「ははは………んっ…!」
目の前の状況に我夢は苦笑いを浮かべながら、隣にいる朱乃の方へ目をやると、鋭い顔つきに変えた。
その訳は、朱乃がオーディンの付き人であろう屈強な男に詰め寄られ、動揺していたからだ。
朱乃「あ、あなたが、どうしてここに…?」
「朱乃。これはどういうことだ?」
動揺している朱乃の問いに男は静かに質問を返す。その声音は怒りが籠ったものだ。
それを聞いた朱乃はキッと男を睨み付け
朱乃「何でここにいるのよっ!それに私がどこで何をしようがあなたには関係ないでしょ!」
「いいや、大いに関係ある!だが、そんな事情は後だ。とにかく、ここから離れるぞ」
朱乃「嫌っ!離して!」
男は彼女の疑問を一蹴すると、その鍛えぬかれた太い手で朱乃の腕を掴むと、どこかへ連れ去ろうとするが、嫌がる彼女の声を聞いた我夢がその腕を掴む。
我夢「待って下さい!嫌がってるじゃないですかっ!」
「その手を離せ。お前には関係ないことだ!」
我夢「断るっ!」
男の圧に我夢は屈せずそう言い放つと、強引に男の手から朱乃の腕を引き剥がし、彼女を自分の後ろへ隠す。
我夢「いきなり何をするんですか!?あなたこそ朱乃さんの何なんですかっ!?」
我夢は男を警戒しながら問いかける。男は一拍あけて息を整えると、
バラキエル「俺は堕天使組織グリゴリ幹部のバラキエル。今日はオーディン殿の護衛として来ている」
我夢「バ、バラキエル!?もしかして…」
バラキエル「知っている様だな。そうだ。俺はそこにいる姫島 朱乃の父親だ」
我夢「っ!?」
それを聞いた我夢は目を丸くする。
――堕天使幹部バラキエル。
そう、目の前にいるこの男こそが朱乃の父であった…。
次回予告
再会する親子。だが…
朱乃「気安く呼ばないで!」
朱乃に何が…?
その時、会談を良しとしない悪神・ロキが襲いくる!
次回、「ハイスクールG×A」
「親子と神」
セクハラ親父に気をつけろ!
冒頭のシーンはとある映画のオマージュで、その映画に出てくる敵の代わりに昭和ウルトラマンのとある有名な怪獣を登場させました。
後、朱乃と我夢が見た映画やラブホ街の金額もウルトラシリーズに関する小ネタが入ってます。わかるでしょうか?
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