ハイスクールG×A   作:まゆはちブラック

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英雄派首領 曹操
肉食地底怪獣 ダイゲルン 登場!


第53話「霧より出でし英雄」

我夢「デヤァァァーーーーッ!!」

 

 

まだ日が昇りきってない早朝。人気がないホテルの屋上にカァンと木刀同士がぶつかり合う渇いた音が響き渡る。

九重ら京都妖怪の襲撃があって、翌日となったこの日。

我夢は木場のレクチャーのもと、剣術のトレーニングに励んでいた。

 

ここ最近、我夢は以前から行っている日課の基礎トレーニングに加え、木場とワンツーワンの剣術を学んでいる。

このトレーニングは我夢自ら頼み込んだものであり、何でも「自分の力に慣れたい」という向上心があってのことだ。

 

 

我夢「はあっ!」

 

木場「っ!」

 

 

激しい打ち合いの中、我夢は木刀を下から振り上げ、木場の木刀を弾く。

 

 

我夢「もらった!」

 

 

出来た隙を狙って我夢は勢い良く踏み込むと、木刀を振り下ろす。

 

 

スカッ!

 

我夢「!?」

 

 

だが、当たる瞬間、木場は突如姿を消した。

的が無くなった木刀が虚空を切る。

驚いた我夢がどこだどこだと辺りを見渡そうとした瞬間

 

 

木場「ここだよ」

 

我夢「…わっ!?」

 

 

いつの間にか後ろにいた木場に声をかけられ、我夢はビクッと肩をすくませる。

木場は攻撃が当たる瞬間、十八番の神速で避けつつ、我夢の背後へ回り込んだのだ。

 

背後をとられた我夢は動揺しながらも体勢を立て直そうとするが既に遅く、首もとに切っ先を向けられる。

 

 

木場「一本……かな?」

 

我夢「ま、参りました…」

 

木場「ふふっ。じゃあ、今日はここまでにしようか」

 

 

手を万歳して降参を示す我夢に木場は爽やかな笑みでそう言うと、我夢は木刀をそこら辺に置き、息を切らしながら大の字で寝転ぶ。

疲弊し、汗だくとなっている我夢に対して、相手をしていた木場は疲弊した様子がなく、むしろ涼しい顔をしている。

 

木場は爽やかな顔を浮かべながら少し離れたベンチに置いてあるペットボトルの飲料水とタオルを取ると、そのまま我夢差し出す。

 

 

木場「これ使ってよ」

 

我夢「サ、サンキュー…」

 

 

きつそうな顔で我夢は木場から手渡されたタオルと飲料水を受け取ると、上体を起こし、飲料水を口へ流し込む。

ゴクゴク…と喉を鳴らして豪快に飲み、渇いた口内を潤す。

 

ぷはーと息を吐いてペットボトルの口から離すと、中の飲料水は半分ぐらいまで減っていた。

ウルトラマンといえど、木場との剣術のトレーニングは難しいのだろう。ちなみに我夢は武道の経験は一切無いので余計過酷だ。

 

タオルで汗を拭いてクールダウンしたところで、木場は爽やかな顔で話しかける。

 

 

木場「我夢君。前よりも全体的に上達したよ」

 

我夢「そ、そうか…?」

 

木場「うん。僕の動きについてこれるぐらいにはね。当てることすら出来なかった頃に比べたら段違いだよ」

 

我夢「は、はは…」

 

 

そう言われて苦笑する我夢。

初日は木場の剣速に翻弄され、一太刀も浴びせることが出来なかった。

しかし、我夢はまだ未熟な点がありつつも太刀筋がわかる様になり、素早い木場の動きにもついてこれる様になった。

その時と比べれば段違いの成長といえよう。

 

 

木場「基礎的な動きは身についてきているし、この調子でいけば短期間で並大抵の剣士には負けないぐらいにはなりそうだよ。ただ、相手の気配を注意深く探ることが今後の課題だね」

 

我夢「そ、そうか…。ははっ」

 

 

爽やかな顔を浮かべる木場の言葉に我夢は期待を膨らませ、うっすらと笑う。

とはいっても木場には到底剣術で勝てるビジョンが浮かばないが…。

 

そんな会話をしていると、木場は昨日の出来事について触れる。

 

 

木場「そういえば昨日、京都妖怪の襲撃にあったそうだね。確か九尾の女の子のお母さんを拐った集団と勘違いしたって」

 

 

訊ねる木場に我夢は頷く。

襲撃があった後、我夢達はロスヴァイセとアザゼルにその旨を伝えた。他勢力の種族が京都に訪問することは事前に報告されたのにも関わらずにだ。

当然、思い当たる伏がない2人は困惑の色を見せるも、とりあえず悪魔側、妖怪側双方に確認を取るとだけ言い、答えが出るまで待つことになった。

 

 

我夢「あの場に大悟がいなければどうなっていたか…」

 

木場「大悟さんは僕達の世界を知っているみたいだね」

 

我夢「ああ、世界を旅するうちに知ったんだろうね。どこまで知っているかはわかんないけど」

 

 

我夢は昨日の大悟の様子について振り返る。

我夢達が襲撃を受けた林はやや斜めに傾いた地形で見晴らしが良く、林に入れば遠くからでも戦いの様子を見ることが出来る。

一般人であれば、異形が戦っている非現実な光景に驚くだろう。

 

しかし、大悟は大して驚いた様子を見せなかった。

人間離れした動きをする我夢達を見てもだ。

恐らくだが、京都妖怪だけでなく、他の異種族にも出会っているからだ。我夢達が人間ではないことも何となく察したのだろう。

 

 

木場「大悟さんからは連絡は?」

 

我夢「ああ。何とか話し合いに応じてもらって、今日の正午に金閣寺で会う約束になってる。木場君も出来れば参加してほしい」

 

木場「うん、わかった。班の人達に何とか言って落ち合うよ」

 

 

我夢の頼みに応じる木場。

大悟からのメールが来たのはついさっきばかりで、その理由は九重の説得にかなり時間がかかったとのこと。

その連絡は九重の遣い伝てにアザゼルやロスヴァイセにも知らされている。

 

 

我夢「おっと、もうこんな時間だ」

 

 

そう話しつつ我夢はポケットから取り出したXIGナビで時間を見ると、もうすぐ朝の点呼が始まる時間帯に入ろうとしていた。

我夢はよっこらせと立ち上がる。

 

 

我夢「悪いね、特訓に付き合ってもらって」

 

木場「別に大丈夫さ。朝の運動は心地いいしさ。それに教える方が逆に身に付くっていうしね」

 

我夢「はは、そうか。じゃ、行こう」

 

 

笑いあった我夢と木場は先生達に見つからないよう、そそくさと屋上から各々の部屋へと戻っていった。

 

大陽が地平線から昇り、京都中を照らす。

波乱を含んだ修学旅行2日目が今、始まろうとしていた───。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゼノヴィア「銀じゃない!?」

 

 

観光巡りをする中、訪れた銀閣寺を見たゼノヴィアは愕然としていた。

それもその筈。ゼノヴィアは『銀閣寺と金閣寺はその名の通り、建物は全て銀色と金色に輝いている』と信じていたからだ。

あまりにも理想とかけ離れてたのがショックだったのか、口をあんぐり開けて、放心状態になっていた。

 

銀閣寺が銀色じゃないのはほぼ常識なようなものであるが、ゼノヴィアは日本文化にほとんど馴染みがなかったせいである。

銀閣寺の前に訪れた清水寺でも三年坂を上る際に『転ぶと三年以内に死ぬ』という言い伝えを真に受けて、『日本は恐ろしい術式を坂に仕込むのだな』と戦慄していた。

アーシアも本気で怖がって一誠にしがみついていたのだが、そこが彼女らのチャームポイントと言えるだろう。

 

 

愛華「建設に携わった足利 義尚(よしひさ)が亡くなったから銀箔貼るのを止めたとか、幕府の財政権で中止にしたとか、色々諸説があるけど、銀箔じゃないわね」

 

我夢「へえ~」

 

一誠「そうだったのかー」

 

 

愛華の説明に我夢と一誠は興味深く頷く。

ここまで各名所について詳しく知っているのは事前に調べてきたからだろうか。

 

ひと通り見回った後、我夢達はお土産を買って次の観光名所へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゼノヴィア「おおっ!金だっ!今度こそ金だぞ!」

 

アーシア「綺麗ですね~!」

 

 

次の観光名所、金閣寺に着いた途端、ゼノヴィアは隣にいるアーシアに話しかけながら、嬉しそうにピョンピョン跳び跳ねていた。

先程の銀閣寺の時とはうってかわったリアクションなのは、金閣寺がイメージ通りだったのが余程嬉しかったからだろう。

 

 

一誠「あいつら嬉しそうだな~」

 

我夢「うん。実際に見るのは僕も初めてだけど、これははしゃぎたくもなるさ」

 

 

嬉しそうな彼女らを少し離れたところから見ながら呟く一誠に我夢はそう返す。

テレビや教科書等の媒体で見たことはあるが、実際に見る金閣寺の美しさは段違いで、目を見張るものがある。

我夢もいつものように冷静を装ってはいるが、実は内心はしゃぎたい気分である。

 

彼らの隣で眺めるイリナも金閣寺の美しさに目を奪われ、お祈りするように胸の前で手を組んでいた。

 

 

イリナ「わあ~~輝きに満ちていて綺麗ね!まるで私の心のようだわ!」

 

我夢「それはないかな」

 

イリナ「……」

 

 

そのイリナの呟きに我夢はさらっと毒がこもった言葉で返す。しかも即答で。

そんな我夢をイリナはジト目で見つめる。

 

我夢本人は自覚していないが、実は意外と毒舌な面があり、そのせいで毎回小猫の鉄拳制裁を食らうハメになっている。

恋愛に疎いのもこういった側面がある影響なのかもしれない。

 

 

木場「やあ、みんな」

 

一誠「っ、木場」

 

 

そんなやりとりしていると、観光客の人混みから木場がやってきた。

1人でいることから、班の人に上手いことを言って抜け出してきたようである。

 

 

我夢「随分早いね。予定まで後30分もあるのに…」

 

 

木場の予定外の登場に少し驚く我夢。

予定では正午になる10分前に境内にある休憩所で落ち合うことになっていた。

その言葉に木場は

 

 

木場「こういう観光スポットは人だかりが多い……早いことに越したことはないさ。それに我夢君やイッセー君に会うのが待ち遠しかったというのあるしね♪」

 

我夢「そ、そうなのか…?」

 

一誠「お、おう…」

 

 

ニコッと笑って返す木場に我夢と一誠はゾワッと背筋が立つ。

木場の最後の一言がどう聞いても()()()()()のものしか聞こえなかったからだ。

本人には全く自覚がなさそうなのが余計気味悪さを感じさせる。

 

木場が1人でいることに疑問を持つ愛華、松田、元浜の3人に迷子になった設定で説明し、大悟と会う正午近くになるまで観光した後、一行は境内の休憩所に足を運んだ。

 

 

ヘビクラ「いたいた…」

 

 

しかし、一行は気付かなかった。

不敵な笑みを浮かべたヘビクラが人混みを掻き分けながらその後を追っていることに…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

休憩所に辿り着いた一行は長椅子に腰をかけて休みながら、注文した抹茶と和菓子を堪能していた。

京都名物の1つである抹茶というだけあってすごく苦いのかと一同は思っていたが、意外と苦みがなく、飲みやすい風味で、一緒に出された和菓子との相性が抜群だ。

 

 

アーシア「うぅ、少し苦いです…」

 

 

だが、アーシアだけはこの味が苦手らしく、困ったように眉を下げている。

しかし、抹茶自体は嫌いではなく、チビチビと少量ながらも口に含んでいる。

 

 

ゼノヴィア「金だった……」

 

 

ゼノヴィアは目をキラキラと輝かせながら未だ感激に浸っている。抹茶を飲んだ筈だが、その苦味にも反応を示さないくらいにだ。

余程、彼女にとって金閣寺の衝撃は大きかったことを物語っている。

 

その光景を眺めつつ、一誠は休憩所の時計へ目をやる。

時間はとうに正午を過ぎ、長針が5に差し掛かろうとしていた。

 

 

一誠「大悟のやつ、どうしたんだ?」

 

我夢「いや、来るはずだと思うんだけど…」

 

 

未だ姿を見せない大悟に不審に思う2人。

電話どころか遅れるというメッセージすら来ていない。

どうしたんだろうと首を傾げていると、

 

 

『キャーーーー!!』

 

 

と、悲鳴にも近い女性達の黄色い声が聞こえてきた。

何だろう?と思った一同は外に出ると、ある一ヶ所に女性の人だかりが出来ていた。

興奮する女性達の手にはカメラやスマホ、あるいはサイン色紙を手にしており、まるで芸能人がやってきたかのようだ。

よく見ると、同じく駒王学園の女子生徒の姿もあった。

 

 

我夢「ちょっと聞いていい?」

 

「あ、高山君」

 

我夢「この人だかりは一体?」

 

 

気になる一同を代表して我夢が近くに集まる女子生徒3人に問いかける。

すると、その3人は顔を見合わせて嬉しそうにニヤニヤすると、興奮気味に話す。

 

 

「うん!私達もさっき来たばかりだけど、アイドル級のイケメンが来てるらしいの!」

 

我夢「アイドル級のイケメン?」

 

「そうそう!温厚そうだけど、どこか知性溢れる……大人っぽい爽やか系男子って感じ?」

 

一誠「爽やか系男子?」

 

「それに、茶髪で高身長らしいの!」

 

イリナ「茶髪で高身長?」

 

「誰かを待っているらしいけど、彼女さんかなー?ああ~…私もあの人みたいな格好いいイケメン彼氏が欲しいなぁ~~…」

 

 

女子生徒から聞いた情報に我夢、一誠、イリナは聞き覚えがある単語に耳を止める。

茶髪で高身長でアイドル級のイケメン…そして誰かを待っている…。

その情報からもしや…と思った矢先、人だかりから出てきた人物を見て、的中する。

 

茶髪で高身長でアイドル級のイケメン───それこそ、我夢達が到着を待っていた長野 大悟その人だった。

 

 

「すみませーん!写真お願いします!」

 

大悟「ごめんね。先、急いでいるからまた今度ね」

 

「連絡先交換しよー!」

 

「彼女はいるのー?」

 

大悟「わっ、待って」

 

 

やんわりと断って何とか抜け出そうとする大悟だが、餌に群がる鯉のように次々と押し寄せてくる女性達に阻まれ、先に進めない。

相手が別に悪意を持っている訳でないので、大悟は強く言えず、苦笑いを浮かべている。

この光景に苦笑する我夢、イリナ、一誠を除いた唖然とするその他の面々。

 

 

イリナ「大悟君って昔からモテてたよねー」

 

我夢「ああ。アイドル事務所に何度もスカウトをかけられたこともあったらしいし」

 

 

イリナの呟きに相槌をうつ我夢。

彼らの言う通り、この状況になるのは今回に限った話でなく、過去にも似たケースが日常茶飯事で起きていた。

本人には気の毒だが、久しぶりに見た光景に我夢、一誠、イリナは懐かしさを感じる。

 

 

一誠「しゃあねぇな。俺達で助けてやるか」

 

ゼノヴィア「そうだな」

 

 

見かねた一同が一誠を筆頭に助け舟を出そうとした時だった。

大悟を取り囲んでいた女性達が突然、糸が切れた人形のように一斉に倒れた。

それを発端に周囲の観光客、休憩所にいた松田、元浜、愛華も意識を手放していた。

 

 

一誠「え?」

 

我夢「何が…?」

 

イリナ「大丈夫。眠ってるだけみたい」

 

 

動揺する我夢達だったが、近くで倒れていた観光客の容態を見ていたイリナが言う。

イリナの言う通り、観光客はスースーと規則正しい寝息を立てていた。

命に別状がないと我夢達はひと安心しかけるが、

 

 

木場「…どうやら、落ち着く暇は与えないらしいね」

 

『…っ』

 

 

木場の一言に周囲からする気配を察知し、一斉に身構える。

周囲の物陰から音を立てながら出てくる影に警戒する我夢達だったが、現れたのは今回の件に大きく絡む妖怪達だった。

その数は20~30と出迎えるにしてはかなり大人数だ。

あまりもの大人数に不審に思う我夢達だったが、彼らから昨日のような敵意が感じられず、それを裏付けするように武装をしている者が見当たらない。

 

警戒を解いた我夢達は今度こそとひと安心していると、妖怪達が一礼し、その中から着物を着た従者らしき妖狐の女性が大悟のもとへ歩み寄る。

 

 

「大悟様、ご友人様。勝手ながら、我々家臣がお迎えに上がりました」

 

大悟「あ、ありがとう。助かったよ。でも、よくここが分かったね。みんなと合流する場所までは教えてなかった筈なんだけど……」

 

ロスヴァイセ「私が伝えたのです」

 

大悟「…っ!?」

 

 

大悟の疑問に答える声が1つ。皆がそちらへ視線を向けると、物陰からロスヴァイセが現れた。

彼女の登場に大悟は何故かあり得ないぐらい目を見開いていたのは誰も気付いていなかった。

 

我夢はロスヴァイセに問う。

 

 

我夢「ロスヴァイセ先生、どうしてここに?」

 

ロスヴァイセ「先に京の妖怪が住む都にいたのですが、予定時刻より遅れているのを心配したアザゼル先生から迎えに行くように頼まれたのです。まさか、迎えに行く本人が原因を作ってるとは思いませんでしたが…」

 

大悟「は、はは…」

 

 

そう言いながらロスヴァイセにチラッと横目で見られた大悟は、申し訳なさそうにポリポリ髪をかきながら苦笑する。

我夢達もつられて苦笑いする中、今度は木場が問いかける。

 

 

木場「ロスヴァイセ先生。話し合いをするということは誤解が解けたということですか?」

 

ロスヴァイセ「ええ、九尾のご息女が先日の件についての謝罪。そして、この京都で何が起きているのかをお話ししたいのだそうです」

 

 

ロスヴァイセが目的について語ると、妖怪達は頭を下げる。

わざわざ迎えに行くために大勢で出迎えるのはそういった反省の意味も込められているのだろう。

それに謝罪するだけでなく、部外者である自分達に京都の現状まで話すとは余程重大なことだと我夢達は察した。

 

 

「我らの住む裏の都に皆様をご案内致します。ついて来てくださいませ」

 

 

着物を着た狐耳の女性の引率のもと、我夢達はひとまず妖怪達の住む裏京都へ赴くことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

九重「先日は申し訳なかった!お主達を一方的に敵と決めつけ襲ってしまった!どうか許してほしい!」

 

 

我夢達が来て早々、深々と頭を下げる九重。

裏京都に招かれ、九重が待つ屋敷の大広間に案内されたのだが、まさかいきなり謝罪されるとは思わなかったので我夢達は少し困った。

ちなみに九重は正装なのか、戦国時代のお姫様が着るような着物を着ている。

 

 

アザゼル「…という訳だ。俺達も協力して、丸く収めておいたぜ」

 

セラフォルー「うんうん!平和が一番だものね☆」

 

 

困惑している我夢達に話しかける男女────アザゼルと着物を着たセラフォルーだ。

この口調から、彼等も今回の誤解を解決するのを根回ししてくれていたようだ。

 

困った顔をする一同だが、未だに頭を上げない九重に我夢は歩み寄り、話しかける。

 

 

我夢「九重、顔を上げてくれ。誰も君を恨んじゃいない」

 

九重「し、しかし…」

 

大悟「ほら、我夢も言ってることだし。ね?」

 

九重「う、うむ…」

 

 

頭を上げるのを渋る九重だが、付け加えるように大悟が言うと、流石に九重は折れたのか顔を上げる。

微笑ましい光景に良かった良かったと皆が頷いていると、九重は悲痛な顔で叫ぶ。

 

 

九重「………身の程をわきまえぬかと思うが……どうか、どうか!母上を助けてほしい!」

 

 

それは種族関係なく、親を想う1人の少女の叫びだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

九重は母の護衛をしていた従者から聞いたことを語る。

 

この京都を収める妖怪の総大将、八坂。

九重の母である彼女は他地域に遣わされた使者と会談する為、数日前にこの屋敷を後にしたという。

 

ところがその道中、謎の霧と共に現れた集団に襲われ、八坂は拐われたのだ。

八坂が拉致された後、残された護衛達は口封じと称して、その集団の子分の怪物に次々と殺されていった。

 

 

九重「その生き残った従者も殺されそうになったのじゃが、颯爽と駆けつけた大悟があっという間にその怪物を倒したのじゃ」

 

大悟「いや、僕は手当てしただけなんだけど……」

 

九重「謙遜せんでも良い」

 

大悟「い、いや……謙遜じゃないんだって…」

 

『?』

 

 

九重と大悟のやりとりに首を傾げる一同。

というのも、否定する大悟の顔は本気であり、冗談を言っているように見えないからだ。

九重は「それはさておき…」と呟くと、話を続ける。

 

助けられた従者は命の恩人である大悟を客として裏京都に招くと同時に、八坂が拐われたことを告げた。

そして、怪しげな集団を徹底的に捜していたところ、人間ではない我夢達を怪しいと思って襲撃。

撤退後は大悟に説得され、アザゼルやセラフォルーの話に応じ、八坂を拉致したのが『禍の団(カオス・ブリゲード)』の可能性があると情報提供し、今に至るという訳だ。

 

 

ゼノヴィア「…私が心躍らせている中、そんなことがあったのか……」

 

 

話を聞き終わった開口一番、ゼノヴィアは申し訳なさそうに呟く。

知らなかったとはいえ、妖怪達が辛い想いをしている中、あんなにはしゃいでいた自分に恥じているようだ。

 

 

イリナ「でもでも、どうして拉致したかったのかしら?」

 

一誠「大方、各勢力を手を結ぶのを邪魔したかったんじゃないのか?ロキみたいによ」

 

我夢「いや、それだったらその場で始末しようとするはず……わざわざ拐う必要はない。聞くところ、何の要求も出してきてもない」

 

 

一誠の意見を呈する我夢。

以前戦ったロキも他の神話と連合を組むのを邪魔する為、オーディンを始末しようとしていた。

しかし、今回は始末では拉致。しかも人質に使った要求すらも出してない。

我夢の意見にアザゼルは「その通りだ」と肯定すると

 

 

アザゼル「我夢の言う通り、連中は()()()()()()に拐ったのが濃厚だ。それに今のところ、奴らはここを離れる気はないらしいからな」

 

一誠「どうしてわかるんですか?」

 

 

確信持って話すアザゼルに一誠は問いかけると、アザゼルは

 

 

アザゼル「八坂──九尾の狐は特殊でな、住まう地に流れる様々な気や何やらをまとめ、バランスを保つ存在なんだ。殺されたり、管理地を離れたりすると、その地のバランスを保てなくなり、異変が起きる。だが、京都全域の異変は今のところ起きちゃいない。だから、ここにいる可能性は高いんだ」

 

一誠「なるほど…」

 

 

説明すると、一誠を始めとした我夢達一同は納得する。

アザゼルの話通りであれば、八坂の命はとりあえず無事である。

 

 

ロスヴァイセ「…ですが、何の目的に?」

 

一誠「あっ、確かに」

 

 

八坂の現状について話し合っている中、先程から沈黙していたロスヴァイセが疑問を口にする。

人質目的でないとすると、アザゼルが口にした別の目的とは何なのか?

良からぬことには変わりないではあるが。

 

 

九重「それは今から説明致す。(じい)

 

「ははっ」

 

 

その目的に心当たりがあるのか、九重は近くにいた天狗に命じる。

九重に爺と呼ばれた天狗の老人は返事をして立ち上がると、2人の従者を引き連れて隣の襖へ入っていく。

 

我夢達は何だろう?と思いながらしばらく待っていると、3人が金属で出来た三角錐のカプセルを重そうに抱えて帰ってきた。

従者らが大広間の中央にセッティングする中、アザゼルが九重に問いかける。

 

 

アザゼル「これは?」

 

九重「およそ半年前……コッヴと呼ばれる怪獣が現れた同日、この裏京都に空から落ちてきた隕石の中から発見された“たいむかぷせる”?という代物じゃ」

 

我夢「コッヴと同じ日に?」

 

九重「うむ。正確にはコッヴが現れる3時間前ぐらいじゃがの。母上を拐った連中が狙っているものがここに記されているものじゃろう…」

 

 

ひと通り説明した九重は老人の天狗にアイコンタクトを送る。

指示を受けた老人の天狗はタイムカプセルの底付近の再生スイッチを押すと、タイムカプセルが青白く仄かに光る。

頂点付近の小窓が開き、中にあるポインターから投影された人型の立体映像を見て、我夢達は驚く。

 

 

ユザレ『…』

 

『!?』

 

 

そう、投影された立体映像は3000万年前の超古代人ユザレだった。

前々から存在を知っている我夢と一誠は「何でユザレが?」といった風に驚いているが、その他の妖怪達を除く面々は話だけは聞いていたが、ここまでロスヴァイセに似ているとは思わず、目を真ん丸にしている。

 

 

ロスヴァイセ「わ、私!?」

 

 

特に姿が瓜二つのロスヴァイセの驚き振りは凄く、まるで自分のドッペルゲンガーを見ている感覚を味わっていた。

皆が驚愕に包まれるのをよそに、立体映像のユザレは語り始める。

 

 

ユザレ『私は地球星警備団団長ユザレ。このタイムカプセルが地球に到着したということは、地球に大異変が相次いで起きます。その兆しとして、根源的破滅の刺客が魔王の若き妹君が納める領地へ降り立ちます』

 

木場「コッヴのことか…!」

 

 

ユザレの言う根源的破滅の刺客がコッヴを指していることに気付いた木場は呟く。

地球に降り立つというだけでなく、魔王の若き妹君──リアスが収める領地である駒王町に来ることまでピンポイントに言い当てている。

本当にタイムカプセルなのか?と疑うレベルだ。

 

 

ユザレ『そして…遥か遠い宇宙のみならず、忘れ去られた古代の闇が現れるでしょう。その先兵として、大地を揺るがす怪獣『ゴルザ』と空を切り裂く怪獣『メルバ』が復活します』

 

我夢「ゴルザとメルバだ!ほら、イースター島とモンゴル平原で目撃されたあの怪獣のことだよ!」

 

 

我夢は皆にニュースで報じられた2体の怪獣こそがゴルザとメルバのことであることをやや食い気味に話す。

忘れ去られた古代の闇───即ち、ゴルザとメルバが3000万年前の怪獣であることを意味していた。

 

 

ユザレ『大異変から地球を守れるのは地球より生まれし光の巨人……そして、『ティガの巨人』だけです』

 

イリナ「ティガの巨人?」

 

ユザレ『かつて、地球上の守り神だった巨人は戦いの為に用いた体を妖怪達が住まう地に眠るティガのピラミッドに隠すと、本来の姿である光となりて、星雲へと帰っていきました』

 

『!?』

 

 

ユザレの発言に驚く我夢達。

ティガの巨人───3000万年前に存在していた超古代のウルトラマンが人間界の何処かにサーゼクスが語っていたので我夢達は知っていたが、まさかこの京都に隠されているのは思いもよらなかった。

 

ユザレは一拍開けると、話し続ける。

 

 

ユザレ『我が末裔達よ……巨人を甦らせ、ゴルザとメルバを倒すのです』

 

九重「?」

 

大悟「…」

 

 

皆がユザレの話に注目する中、九重はふと視線を外すと、大悟が口を引き縛り、神妙な面持ちを浮かべているのに気付いた。

会ってそんなに日が経っていないが、いつも明るい笑顔を振り撒く彼が今まで見せたことがない曇った顔を浮かべている。

思い返して見れば、タイムカプセルを再生させた時から顔を曇らせていた気がする。

 

 

九重「(…大悟?)」

 

 

九重はそんな彼の身を案じ、不安を覚える。

母親を拐われ、悲しみに暮れる自分を励ましてくれた大悟に九重は部下を救ってくれた恩人以上の感情があった。そうとなれば、気にしまうのが当然だ。

 

そんな不安をよそにユザレは

 

 

ユザレ『巨人を甦らせる方法はただひとつ……ザ──ザザ─────!』

 

『っ!』

 

 

肝心な箇所を話す途中、ノイズが走ると、映像が途切れてしまった。

 

 

一誠「あれ?この続きは?」

 

九重「残念じゃが、映像はここまでじゃ。何度再生してもいつもここで途切れてしまう」

 

一誠「んじゃあ、叩いてみるか」

 

ゼノヴィア「そうだな」

 

我夢「2人共!?ストップ!ストップ!もし壊れたりでもしたらどうするんだ!」

 

 

裾を捲ってタイムカプセルを直そうとする一誠とゼノヴィアを我夢は慌てて制止すると、2人はあっさり納得し、大人しく座る。

そんな光景を尻目に顎に手を当てて考えていたアザゼルは口を開く。

 

 

アザゼル「…とりあえず、こういうことだろう?超古代の怪獣ゴルザとメルバが甦った。それに対抗する為のウルトラマンの肉体があるティガのピラミッドは京都の何処かへある。その場所を知るのは……」

 

我夢「八坂さん…?」

 

 

アザゼルに続けて我夢が呟くと、九重は頷く。

 

 

九重「この京都には大昔、クラヤミノオロチという人々に災いをもたらした悪しき邪龍を光の勇者が倒したという伝承が残されておる。当時の京の妖怪は感謝の意を込めて勇者の墓を作ったとされているが、それがティガのピラミッドじゃろう…」

 

大悟「そうなのか…」

 

 

九重の話に初耳の反応を示す大悟。

世界中を旅した経験から歴史は誰よりも得意な大悟でも流石に京都にウルトラマンの墓があるとは知るよしもなかっただろう。

 

 

ロスヴァイセ「ティガのピラミッドは何処に?」

 

九重「九尾の一族は代々、その墓の守人を任されておるが、当代の守人───つまり、私の母上しか居場所を知らぬ。お役に立てず、申し訳ない……」

 

ロスヴァイセ「ああっ、気を落とさないで下さい。仕方ありませんよ。知らないものは知らないのですから」

 

 

顔を曇らせる九重を何とか宥めるロスヴァイセ。

こうして見ると、教師らしい一面は一応はあるようだ。

アザゼルは現状得た情報から整理し始める。

 

 

アザゼル「ひとまず、確定じゃねぇが『禍の団(カオス・ブリゲード)』の狙いはそのティガの巨人ってことだ。奴らは八坂にピラミッドの居場所を吐かせ、ゴルザとメルバを利用して何かを企んでいる、と。まあ、未だ大きな動きがないのは、ピラミッドが見つかっていないってことだな。…何としても阻止しねぇとな」

 

セラフォルー「そうね。せっかくの修学旅行を台無しにさせたくないしね」

 

アザゼル「おう」

 

 

セラフォルーの真剣な言葉にアザゼルは頷くと、我夢達を見渡すように視線を向ける。

 

 

アザゼル「お前達にも動いてもらうことになるかもしれんがとりあえず、調査は引き続き俺達の方でやっておく。シトリー眷属には俺から伝えておく。調査に進捗があるまで、下手に動かず、観光を続けてくれ。頼むぞ」

 

『はい!』

 

 

アザゼルの指示に応じる我夢達。

正直なところ、旅行どころでなく、今すぐにでも八坂の救出とティガのピラミッドを探し出したい。

しかし、八坂を人質に捕られている以上、下手に動くことは得策ではない。待つのが今出来る最低限のことだ。

 

 

九重「……どうかお願いじゃ。母上を……この京都を助けてくれ……。いや、助けて下さい。お願いします」

 

 

そう懇願すると、九重が床に手をつき、深く頭を下げる。周りにいる従者も続けて同じ動きをする。

涙声で震わせる小さな娘の頼みに胸を打たれた我夢達は誓った。

───必ず助け出す、と。

 

 

大悟「ティガ……」

 

 

大悟は何かが引っ掛かる様子でタイムカプセルを見据え、呟く。

時間を越えた超古代人からのメッセージを受けた大悟の心情は誰にも読み取れない。

 

そして、大広間の隣で盗み聞きする者が1人。

ジャグラスジャグラーこと、ヘビクラが襖に耳を当て、話の一部始終を聞いていたのだ。

 

 

ヘビクラ「なるほどぉ…」

 

 

何か思い付いたのか。ヘビクラはニヤリと怪しげな笑みを浮かべると、闇のオーラを纏い、目にも止まらぬ速さで何処かへ去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝。我夢達は昨日と同じように京都観光を行っていた。

今日は嵐山方面を観光する予定で、まずは京都駅発の電車から比較的近い天龍寺に向かっていた。

 

 

我夢「(結局、あのタイムカプセルからは何の情報も出なかった…)」

 

 

最寄り駅に着くまでの間、我夢は電車に揺られながら昨日のタイムカプセルについて考えていた。

あの後、我夢はアザゼルに頼まれて、深夜近くになるまで映像が途切れていた箇所の修復に取りかかっていたが、あの手この手を使っても解析出来なかった。

わかったことはタイムカプセルが3000万年前に作られたことと、宇宙から落ちてきたことだけだった。

 

 

我夢「(巨人を甦らせる方法はただひとつ……か)」

 

 

自分のような超古代人の遺伝子を持つ者が復活させる鍵なのは明らかであるが、肝心の蘇らせる方法がわからず、そもそも巨人が眠るピラミッドの場所がわからない。

──どうすればいいのか…?と顔を俯かせて深く考え込んでいると

 

 

松田「おい、我夢。何、難しい顔してんだ?」

 

我夢「…っ」

 

 

我夢の視界に訝しげな様子で覗き込む松田の顔が映った。ハッとなった我夢は顔を上げると、松田の隣にいる元浜も同じ顔をしている。

どうやら、沈黙し続ける態度に不安を与えてしまったようだ。我夢はニコッと作り笑いを浮かべる。

 

 

我夢「いや、ちょっとした考え事さ。大したことじゃない………って、何度も言うけど、凄い顔になってるな~」

 

松田「まあな~」

 

元浜「名誉の負傷だ」

 

 

我夢の言うように松田と元浜の顔は普通では有り得ないぐらいパンパンに腫れ上がっており、絆創膏やガーゼが顔のあちこちに貼られている。

松田と元浜は昨晩、女湯が覗ける秘密のスポットへ行ったのだが、案の定上手くいく筈もなく、生徒会に取り押さえられた。

それでも強行突破して女湯に入ろうとしたが、2人が来ていると情報が伝わっていた女子達に袋叩きにされ、現在に至るという。

 

 

我夢「君達、懲りないね。もう止めといたらいいんじゃない?」

 

松田「いいや、俺達は決して諦めない!女子の裸体をこの双眸に収めるまでは!」

 

元浜「そうとも!今度こそ上手くいくプランを立てるまでだ!」

 

 

そう言ってガッチリと肩を組む松田と元浜。

ここまで痛い目にあって尚、めげない姿勢に呆れを通り越して逆に尊敬してしまうなと我夢は苦笑しつつ思った。

 

そんな他愛のない会話をしていると、向かい側の席に座っていた愛華が荷物を手にスタスタと歩いてくる。

 

 

愛華「あんた達、もう着くわよ」

 

「「「はーい」」」

 

 

少し間延びした返事をする3人。愛華だけでなく一誠、アーシア、ゼノヴィア、イリナも席を立ってすぐに下車できる準備が出来ていた。

 

そんなやりとりをして1分もしないうちに目的の駅に到着。改札を出た後は案内看板とマップをもとに徒歩で数分、巨大な門を構える天龍寺に着いた。

 

門を潜り、境内を進んだ先にある受付で我夢達が観光料金を支払い終えた時だった。

 

 

九重「おおっ、お主達。来たようじゃな」

 

大悟「みんな、こんにちは」

 

 

聞き覚えのある声が聞こえ、皆は振り向く。

そこには狐の耳と尻尾を引っ込めた状態の九重と何故かベースボールキャップとマスクを着けた大悟がいた。

 

 

我夢「九重?それに大悟も。どうしてここに?」

 

大悟「ああ、九重がどうしてもみんなの観光案内したいってね」

 

 

そう言われて我夢達は九重が帰り際にそんなことを言っていたのを思い出す。

この間の件のお詫びのつもりで、大悟はその付き添いなのだろうと察した。

 

 

一誠「てか、何でそんな怪しい格好してんだよ?不審者っぽいぞ」

 

 

一誠はさっそく大悟の格好にツッコむ。

今の大悟は目元深くキャップを被り、マスクをしているせいで顔がよく見えなくなっている。端から見たら幼女を連れる不審者だ。

それに対し大悟は

 

 

大悟「ああ、これ?ほら、昨日女の子に囲まれて…」

 

一誠「ああ~」

 

 

大悟の話から一誠は彼が女の子に囲まれていたことを思い出す。

大悟は一誠も認めているがアイドル級のイケメンであり、それ故、昨日は予定通りに上手くことが運ばなかった。

そういった経験もあって顔を隠しているのだろう。

 

 

愛華「やーん!可愛い!」

 

九重「やーめーーー!離すのじゃ!馴れ馴れしいぞ!」

 

愛華「お姫様口調で嫌がるなんて、最っ高だわ!キャラも完璧じゃない!」

 

 

そんな会話をしている横では目をキラキラと輝かせている愛華が九重にじゃれついていた。

対する九重は嫌がり、身を捩って離れようとするが、愛華はガッチリ抱き締め、猫のように頬擦りしていた。

可愛い小さな娘には目がないのだろう。

 

愛華の好みが垣間見えたことに意外に思う我夢と一誠だが、流石にこのままでは可哀想なので、愛華を九重から引き離してあげた。

 

解放された九重は脱兎の如く走ると、大悟の後ろに隠れ、ひょこりと顔を出し、ジト目で愛華を警戒する。

大悟にくっつく九重を見て、愛華は訊ねる。

 

 

愛華「その子、やけに大悟さんに懐いてるわね……もしかして、娘さんですか?」

 

大悟「ん?…いや、違うよ。この子は九重、僕の知り合いの子供さ」

 

九重「コホン……九重じゃ。よろしく頼むぞ」

 

 

紹介された九重は咳払いして平静を保つと、若干ふてぶてしい態度で自己紹介する。

なんやかんやありながらも、九重の案内付きの観光が始まった。

 

ちなみに元浜が終始、九重に興奮気味だったのは余談である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな訳で九重の案内のもと、天龍寺を巡る。

誰かに教えられた知識をもとに一生懸命案内する姿は健気で微笑ましいものだ。

 

九重は天龍寺以外にも二尊院、竹林の道、常寂光寺…その他諸々観光名所を案内した。

見た目通りの可愛らしい仕草1つ1つに癒されながら、京都観光を楽しんだ。

 

そして、ひと通り観光した一行は九重お気に入りの湯豆腐屋で昼食を取っていた。

九重が率先して器に掬ってくれた湯豆腐を我夢達は頂く。

 

 

一誠「ん~~、めぇぇーーーっ!」

 

ゼノヴィア「和の味がする。悪くない」

 

アーシア「はい、いつも食べているお豆腐とは違って新鮮で美味しいです」

 

イリナ「味わいが深いわぁ~…」

 

九重「そうじゃろう!ここの湯豆腐は絶品じゃ!」

 

 

湯豆腐に舌を唸らせる一同を見て、九重は満開の笑みを浮かべる。どうやら、口に合ってよかった安心しているようだ。

我夢は九重に感謝を告げる。

 

 

我夢「九重の案内助かったよ。観光名所で知れないことも知れたし、美味しい湯豆腐も食べられたし」

 

九重「うむ、そうじゃろう。ここの湯豆腐は特に皆に食べてもらいたかったからのぅ」

 

大悟「まあ、単純に食べに行きたかったというのもあるけどね~」

 

九重「こ、これ!余計なことを言うでない!」

 

 

恥ずかしそうに小突く九重に大悟は「ごめん、ごめん」と笑って返す。

九重の反応から半分は本当なのだろうが、皆に食べに行きたい気持ちは嘘ではないのがわかる。

母親がいない寂しさを紛らせたい気持ちも少なからずあるだろうが、妖怪の総大将の娘とはいえ、皆と遊びたいという見た目の年相応の気持ちが強いのだろう。

 

 

我夢「(それにしても、親子に見えるな~…)」

 

 

そんなことを思いつつも我夢は楽しげに会話をする大悟と九重に微笑む。

大悟に余程懐いてるのか、案内中も大悟の傍を離れなかった。

対する大悟も嫌そうな感じはしておらず、手を繋いで歩いていた。その光景は親子か、年の離れた兄妹といっても誰もが納得するものだった。

 

 

木場「あ、我夢君」

 

我夢「木場君か」

 

 

我夢も湯豆腐の美味しさに舌鼓を打っている中、話しかける声に振り向くと、木場がいた。

近くに木場と同じ班の人が昼食を取っているのを見て、彼の班も嵐山方面へ行く予定なのを思い出した。

 

 

木場「天龍寺にはもう行ったのかい?」

 

我夢「ああ、実物の雲龍図は迫力が違ったよ」

 

木場「僕達の班もこの先の渡月橋を見てから、午後は天龍寺に行く予定なんだ。話を聞いてますます楽しみになってきたよ」

 

我夢「渡月橋か……僕達もこれを食べ終わったら行くつもりだよ」

 

 

そんな話をして、お互いにこれから訪れる観光名所に胸を膨らませていると、

 

 

アザゼル「よお、お前ら~。楽しんでるか?」

 

 

上機嫌な調子で話しかける声が聞こえ、そちらへ顔を向けると、白昼堂々酒を飲んでいるアザゼルの姿があった。

勤務中にも関わらず飲酒するアザゼルに我夢はすかさずツッコむ。

 

 

我夢「アザゼル先生!勤務中に酒を飲んでいいんですか!?まずいですよ!」

 

アザゼル「あぁん?俺は特例なんだよ、特例──」

 

ロスヴァイセ「何が特例ですかっ!職務怠慢してるだけじゃないですか!」

 

 

ほろ酔いのアザゼルにダァン!とテーブルを叩き、抗議する声が1つ。ロスヴァイセだった。

青筋立てて怒るロスヴァイセは我夢達へ視線を向けると、アザゼルに指指し、非難の声をあげる。

 

 

ロスヴァイセ「その人、私が何度言ってもお酒を止めないんです!生徒の手前、そういう態度は見せてはならないと再三注意してるのですが……」

 

 

ロスヴァイセは声を張り上げていたが、困り果てた顔を浮かべると次第に沈んでいく。

アザゼルの対応に四苦八苦しているようだ。

 

すると、アザゼルはグビッと杯の中の酒を飲み干すと、ロスヴァイセに

 

 

アザゼル「まあ、そう言うなよ。ちったぁ、リラックスしろよ。いちいち堅苦しくするから、男の1人や2人も出来ないんだぜ?」

 

ロスヴァイセ「か、か、彼氏は関係ないでしょう!バカにしないで下さい!」

 

 

そう言われたロスヴァイセは顔を真っ赤にして声を張り上げる。オーディンの付き人をしていた時もそうだが、毎回この手の話題を振られると、狼狽えてしまう。

────これじゃ転生する前と変わんないんじゃ、と見守る我夢達が気の毒に思っていると、ロスヴァイセは驚きの行動に出た。

 

 

ロスヴァイセ「もういいです!これ以上あなたに飲ませるくらいなら私がっ!」

 

『あ!』

 

 

やけくそになったロスヴァイセはアザゼルから酒瓶を取り上げると、それを一気に口に流し込む。

流石にこの行動に我夢達だけでなくアザゼルも驚き、目を丸くする。

グビッ…グビッ…グビッ…と喉を鳴らして豪快に飲むと、酒瓶をダァン!とテーブルに叩きつけるように置く。

 

 

ロスヴァイセ「……ぷはー。だいたいれすね!あなたはふだんからたいどがダメなんれすよぉ…!」

 

アザゼル「お、おい!?一杯で酔っぱらったのかよ?」

 

 

たった一杯であっさり酔っぱらったロスヴァイセに驚くアザゼル。

目が座り、呂律も回っておらず、明らかに悪酔いしている。あまりもの早さに驚愕する一同を差し置いて、ロスヴァイセはもう一杯、今度は盃に注いで飲み干す。

 

 

ロスヴァイセ「わらしはよっぱらってないれすよ!おさけのおつきあいはむかしからしていれ……あーもう、おーでぃんのクソジジイのことをおもいらしてきた!あんなもうろくジジイのあいてばかりしてるせいれ、ろくなせいかつはれきないし!かれしはれきないし!うあぁぁぁぁぁぁんっ!!」

 

 

アザゼルに絡んできたロスヴァイセは酔いからきた本音を吐き出したかと思うと、遂にテーブルに突っ伏して泣き出してしまう。

あまりもの悲惨さに我夢達はおろか、アザゼルもどう対応すればいいか困惑していた。

 

しばらくして、観念したように嘆息したアザゼルは席を立ち、我夢達に言う。

 

 

アザゼル「お前ら、ここは俺に任せて、早く他のとこへ観光へ行け」

 

一誠「先生は大丈夫なんですか?」

 

アザゼル「仕方ねぇ、これも大人の付き合いってやつだ」

 

 

心配する一誠をそう返すと、アザゼルは再び席に着く。

皆は顔を見合せて頷くと、そそくさと立ち去ろうとしていた時、突如席を立ったロスヴァイセが千鳥足で歩くと、立ち去ろとする大悟の腕を掴んだ。

 

 

ロスヴァイセ「ろこにいくのれすか?あなたもつきあってもらいますよぉ」

 

大悟「え、ええ!?」

 

ロスヴァイセ「『ええ!?』じゃないれすよ。しってますよ、きのうわらしをチロチロみていらことを。ろうせ、あなたもこんなわらしを『さちがうすいおんな』だなんてあざわらってらんれしょ?」

 

大悟「い、いや……そんなことは…」

 

ロスヴァイセ「いいわけむよう!わらしのくろうをきけば、そんなかんがえまちがっれるってきっとわかりますから!さぁ、いきますよ!」

 

 

必死な弁明も虚しく、大悟はロスヴァイセに連行されていく。

大悟に御愁傷様と思いつつも、一同は湯豆腐屋を後にした。

 

ロスヴァイセに連行された大悟はアザゼルの隣の席に座らされる。

最早逃げることは出来ないと観念した大悟にアザゼルは申し訳なさそうに耳打ちする。

 

 

アザゼル「悪いな。連れの暴走に巻き込んじまって」

 

大悟「いえ、これも大人の付き合いですから」

 

 

これから始まる終着点不明の地獄の時間に2人は笑うしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

店を抜け出た我夢達は渡月橋を渡っていた。

木場は途中、班の予定通り天龍寺へ行く為に別れた。

 

 

九重「大悟、大丈夫かの…」

 

 

そう呟きながら、九重は遠くの湯豆腐屋の方へ心配そうな視線を送る。

連行された大悟が不安なようだ。

寂しそうにする九重に一誠は声をかける。

 

 

一誠「ま、大悟なら大丈夫だろ。あいつ、接客とるの上手いから」

 

九重「うむ……。しかし、お主らの仲間は大変なやつが多そうじゃな」

 

我夢「ま、まあね。はは…」

 

 

そう言われた我夢は苦笑する。

確かにグレモリー眷属はアットホームな感じで良い人ばかりではある反面、癖が強いのが多い。

かくいう我夢もあまりそう見えないが、やはりというべきか、癖が強い。

まともなのはアーシアぐらいだろうか。

 

それはさておき、我夢は渡月橋から景色を見渡す。

端にある陸地は美しい町並みが並び、標高高い山々は悠然と佇み、橋の下を流れる川は大陽に照らされ、キラキラと輝いている。

この美しい情景の裏で陰謀が渦巻いているとは思えないくらいだ。

 

 

我夢「(このまま何も起きなきゃいいけど…)」

 

 

我夢がそう願いながら橋の真ん中に差し掛かった時だった。

突然、ヌルリと生暖かい感触が我夢達を包みこんでいく……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我夢「な、何だ!?」

 

 

突然周りの空気が変わったことに驚く我夢は辺りを見渡す。

周囲には共に行動していた一誠、アーシア、ゼノヴィア、イリナ、九重に加え、橋の遠くからは別れたばかりの木場がこちらへ駆け寄る姿が見える。

だが、それ以外の面々はおらず、松田、元浜、愛華はおろか、周りにいた観光客も忽然と姿を消していた。

 

この奇妙な現象に集まった警戒していると、一誠は周囲の足下に霧が立ち込めていることに気付いた。

この霧を目にした一誠は既視感を感じる。

 

 

一誠「この霧……」

 

木場「うん、間違いない。『禍の団(カオス・ブリゲード)』の所有する『神滅具(ロンギヌス)』の1つ、『絶霧(ディメンション・ロスト)』だ。この一辺の空気の感じから、僕達は渡月橋周辺の疑似空間に移動させられたみたいだね…」

 

 

一誠の呟きに答えるように木場が話す。

絶霧(ディメンション・ロスト)』───霧で包んだものを有機物・無機物問わず転移させる能力がある。

この能力を使えば、地球の反対側だろうが、作り出した疑似空間だろうが、何処へでも移動させることは容易だ。

 

木場の解説を聞き、『禍の団(カオス・ブリゲード)』によるものと把握した皆はよりいっそう警戒を強める。

いつどこから攻撃がきてもいいように身構えていると、遠くから飛んでくる影が1つ。

堕天使の黒翼を羽ばたかせているアザゼルだった。

 

 

アザゼル「お前ら、無事か?」

 

我夢「はい。今のところは何とも」

 

アザゼル「そうか。他に誰かいねぇか見てきたが、俺達以外、さっぱり消えちまっている。まるでゴーストタウンみたいにな」

 

 

アザゼルの報告に皆はやはりと思った。

自分達だけを転移させる……つまり、敵が直接始末しに来たことを告げている。

 

 

「はじめまして、アザゼル総督。それにXIGの方々」

 

『!?』

 

 

敵の奇襲に身構えていると、橋の反対側から我夢達を呼ぶ声が聞こえた。

我夢達は声のする方へ振り向くと、霧の中から集団を引き連れた学ランを着た黒髪の青年が現れた。

青年の手には身の丈程の槍らしき得物を持ち、トントンと肩を軽く叩いている。

 

我夢達がその槍から放つ得体の知れない気味悪さに生唾を飲んでいると、近くに降り立ち翼をしまったアザゼルが訊ねる。

 

 

アザゼル「お前か。英雄派を仕切ってる男ってのは」

 

曹操「曹操と名乗っている。三国志の武将、曹操の末裔だ」

 

我夢「何だって!?」

 

 

曹操と名乗る青年の口から出た言葉に衝撃を受ける我夢。

あの三国志で有名な曹操の子孫であることにも驚くが、何よりもテロリストの派閥のリーダーとして立ちはだかるとは予想もしなかった。

我夢以外の面々も同じ反応を出している中、アザゼルは視線を曹操へ向けたまま、皆に声をかける。

 

 

アザゼル「お前ら、あの男の持つ槍には要注意しろ。あれこそが『神滅具(ロンギヌス)』最強と謳われる『黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)』だ。神だろうが魔王だろうが、貫いたものを確実に抹殺できる代物だ」

 

『───ッ!?』

 

 

アザゼルの言葉に驚きの色を見せる我夢達。

聞いたことはあるが、まさかテロリストの手に渡っているとは……。

そんな中、九重が怒りでわなわなと肩を震わせながら曹操に叫ぶ。

 

 

九重「貴様かっ!貴様が母上を拐ったのは!」

 

曹操「おお、よくお分かりなられましたな。そう、あなたのお母上を拐ったのは俺達さ」

 

 

激しい剣幕を立てる九重と相反して飄々とした態度であっさり認める曹操。

まるで何か悪いことでもしたのか?と言わんばかりの態度だ。

それにより、更に怒りがヒートアップした九重は曹操に叫ぶ声のボリュームが上がる。

 

 

九重「母上をどうするつもりじゃ!早う、返せ!」

 

曹操「残念ながらそうはいきませんよ。お母上には()()()()()にお付き合いしていただく予約がされているのでね」

 

九重「実験?何だ、それは!」

 

 

実験という単語が頭に引っ掛かった九重は曹操に問い詰める。

曹操は平然とした態度で答える。

 

 

曹操「ここで今話してもいいのですが、まだ劇は始まったばかり……先に大筋を知っても面白くないだろう?映画館に観に行ったら、近くの客に映画のネタバラシされるのと同じくらいさ」

 

九重「くっ…!」

 

 

それを聞いた九重は歯を噛み締め、今にも飛びかかりそうな鋭い目にはうっすらと涙を溜めている。

実験と称したふざけたことの為に、母親を拐うだけでなく、この京都を好き勝手に蹂躙されるのが悔しくて堪らないのだ。

 

 

曹操「…後、スポンサーの要望を叶える為、かな?」

 

アザゼル「スポンサー?オーフィスのことか?それとも別の勢力か?」

 

 

曹操がポロッと溢した言葉を聞き逃さなかったアザゼルは睨みを効かせながら問い詰めるが、曹操は「本題には関係ありませんよ」とバッサリ斬ってかわすと、別の話に切り替える。

 

 

曹操「さて、皆様は『どうして表舞台に顔を見せたのか?』とお思いと思われます。その理由は単純。コソコソ隠れる必要がなくなったので、挨拶ついでにお手合わせ願いたかったのですよ……。光の巨人は特にね」

 

 

曹操はそう告げると、不敵な笑みを我夢と一誠へ向ける。

曹操の動機を聞いて、ますます怒りを募らせる我夢達は各々の武器を構える。

 

 

一誠「へっ、そうか。勉強が苦手な俺にもわかりやすい理由だ。八坂さんを取り戻すには、お前らをぶちのめすしかねぇようだな!」

 

 

一誠はそう言い放つと、ジェクターガンの改良銃──シグブラスターの銃口を曹操の眉間に向けて放つ。

曹操は首を捻って軽々と避けると、斜め後ろにいる少年に話しかける。

 

 

曹操「レオナルド、アンチモンスターを頼む」

 

 

曹操に頼まれた少年───レオナルドは無表情ながらもコクリと頷くと、足下に不気味な影が現れ、広がっていく。

すると、地面に広がった影から背筋が凍る程、禍々しい異形が形成されていった。その数は一体だけでなく、十……百は軽く超えている。

 

 

アザゼル「『魔獣創造(アナイアレイション・メーカー)』か!」

 

我夢「アザゼル先生。知っているんですか?」

 

アザゼル「ああ。あれも『黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)』と同じ『神滅具(ロンギヌス)』だ。名前の通り、自分が思い描くモンスターをデメリットなしでいくらでも創り出せるんだ」

 

我夢「そんな…」

 

 

苦々しい顔を浮かべるアザゼルの説明を聞き、我夢は絶句する。

異形の怪物を無制限で何体でも創り出せるとしたら、ある意味、『黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)』より厄介だ。

その会話に乗っかった曹操は補足するように話す。

 

 

曹操「まあ、とはいうものの、レオナルドはまだ無制限に創り出せる程の力はない。ただ、相手の弱点を正確につくアンチモンスターを生み出す力には特化していてね、このアンチモンスターは今まであなた方と戦わせてきた神器(セイクリッド・ギア)所有者と黒い怪物から収集したデータを基に創ったものなのですよ。今回は()()()にカスタマイズしてもらいましたが…」

 

アザゼル「そうか、各陣営にちょっかいをかけてきたのはその為か!」

 

 

アザゼルの問いに曹操は「ご名答」と呑気な口調で返す。

これまでの襲撃は全てたった1つの目的───確実に我夢達専用のアンチモンスターを創り出す為、用意周到に練られた作戦だったのだ。

アザゼルが鋭く睨み付ける中、曹操は自嘲気味に笑うと

 

 

曹操「…けれど、肝心なウルトラマンのデータは収集しきれていない。三大勢力らを相手するには一番の壁である存在がね。中々、変身して戦ってくれないので───」

 

アザゼル「手合わせと称してデータ収集にきたって訳か」

 

 

続けてアザゼルが話すと、曹操はコクリと頷く。

曹操の態度から興味本意で戦いたいというのも少なからずあるだろうが、データ収集が目的と知れば尚更、我夢と一誠の警戒は強まる。

 

ひと通り話し終えた曹操はふっと不敵に笑うと、聖槍の切っ先を我夢達へ向け

 

 

曹操「さあ、はじめようか」

 

 

その一言が合図となり、戦いの火蓋が切られた。

始まると否や、アザゼルは翼を広げて曹操の元へ突っ込んでいく。

 

 

一誠「先生!」

 

我夢「イッセー。曹操はアザゼル先生に任せよう。今は僕達に出来ることをやろう」

 

 

驚く一誠に我夢は諭すと、他の面々に指示を出す。

緊急時の戦闘の指揮は我夢がするようにとリアスに託されたからである。

 

 

我夢「木場君、ゼノヴィア、イリナは前線に出てくれ!木場君とゼノヴィアは地上、イリナは空中から攻撃を!」

 

木場「わかったよ!」

 

ゼノヴィア「了解だ」

 

イリナ「オッケー!」

 

我夢「アーシアは後方から回復支援、イッセーはアーシアに近付く敵を倒してくれ!」

 

アーシア「はい!」

 

一誠「ラジャー!」

 

 

我夢からの指示を受けた一同はそれぞれの持ち場に向かっていく。

残された我夢は近くにいる九重に

 

 

我夢「九重は僕の傍を離れないでくれ」

 

九重「…う、うむ。わかった」

 

 

そう言うと、九重は少し顔を曇らせながらも返事をする。

本当は母親を拐った張本人が目の前にして戦いたいのだろうが、八坂がいない現状で京都妖怪を仕切っている彼女に万が一のことがあれば、大混乱を引き起こしてしまうのは明白。

ここは待機させるのが賢明だ。

 

 

イリナ「はあーーーっ!!」

 

『ゴギャアァァ!』

 

 

イリナは空中を飛び回りながら、光の矢でアンチモンスターを攻撃していく。

悪魔用アンチモンスターとだけあって、天使の光にはめっぽう弱く、イリナの攻撃を前に次々と倒されていく。

 

 

ゼノヴィア「」

 

木場「」

 

『ゴアァァァァーーーーッ!』

 

 

ゼノヴィアと木場も『騎士(ナイト)』のスピードで前進してくるアンチモンスターをデュランダルと聖魔剣のコンビで切り裂いていく。

 

 

一誠「おらおらっ!」

 

『ゴギャアァァ!』

 

 

木場達が倒し損ねたアンチモンスターは一誠が徒手空拳とシグブラスターを使い合わせて倒していく。

我夢もただジッとしているだけでなく、九重を守りつつ、ジェクターガンで後方支援する。

 

 

アザゼル「曹操!お前は俺がやらせてもらう!」

 

 

曹操のもとへ辿り着いたアザゼルは地上に降下しながら人工神器(セイクリッド・ギア)からなる黄金の鎧を纏う。

右手に作り出した光の槍の切っ先を下に向け、落下の勢いを利用した急降下攻撃を仕掛ける。

 

 

曹操「面白い!かの有名な堕天使の総督が俺と戦ってくれるとは!」

 

 

曹操は不敵な笑みを浮かべて歓喜の声をあげると、聖槍の刀身で光の槍を受け止める。

そのまま両者は攻防を繰り広げながら、戦いの場所を橋の下に流れる川の岸へ変えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

異空間でのアンチモンスターの大群と我夢達の合戦。

その戦いを遠くから高みの見物をする者───ヘビクラがいた。

ヘビクラの正体がジャグラーであることは敵味方どちらも知らず、その証拠に『絶霧(ディメンション・ロスト)』に巻き込まれていなかった。

入ろうとしても、『絶霧(ディメンション・ロスト)』による結界で腕が立つ術者でも侵入は困難である。

 

しかし、どういう訳か現にヘビクラはここにいる。

まるで入れて当然と言わんばかりに涼しい顔をしていた。

ヘビクラは広げたレジャーシートに座り、お土産屋で買ったクッキーを熱いお茶と一緒に食べていた。

 

 

ヘビクラ「ふっ…俺抜きにしては、中々面白いことになってるな。流石にコイツを使わなければここには入れなかったが…」

 

 

そう言いながらヘビクラは摘まんだ1枚の怪獣メダルに目をやる。

怪獣メダルにはこの世の産物と思えないくらい悪質な赤い悪魔が描かれていた。

ヘビクラは目を細めて、呟く。

 

 

ヘビクラ「『巨大ヤプール』───どこで素材を入手したかわかんねぇが、セレブロの奴、とんでもねぇのを作ってたんだな」

 

 

巨大ヤプール───こことは別宇宙のウルトラマンを苦しめた異次元の侵略者が合体した姿だ。

ヤプールは本来異次元人なので、そう易々とサンプルを回収できないが、ヘビクラの言うセレブロは特殊なルートで手に入れたようだ。

 

セレブロの底知れぬ情報網にヘビクラは半ば驚きつつも、再び戦場へ視線を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一誠「おらッ!」

 

『ゴギャアァァッ!!』

 

 

アーシアの近くで戦う一誠はシグブラスターでの銃撃を浴びせると、アンチモンスターは断末魔をあげ、霧散していく。

 

 

アーシア「イッセーさん!」

 

 

回復のオーラを受けた一誠は心地よく癒されると、一瞬で受けた傷が跡形もなく塞がった。

 

 

一誠「アーシア、サンキューな!」

 

アーシア「えへへ…」

 

 

一誠にサムズアップで感謝されたアーシアはここが戦場だということも忘れて、嬉しさのあまり頬を緩めて照れる。

好きな人に誉められるのは普通の人に言われるよりも気持ちがいいのは当然のことだ。

 

2人は何となくいい雰囲気に包まれていると、木場が構成員を斬り捨てながらやってくる。

 

 

木場「イッセー君。そっちはどうだい?」

 

一誠「ああ、こっちは今のとこ順調だ。お前らは?」

 

木場「うん。こっちも同じさ」

 

一誠「おっ、そうか。……しっかし、ラチがあかねぇよな~~……」

 

木場「そうだね~」

 

 

一誠は近寄ってくる構成員を蹴散らしながらぼやくと、木場は苦笑する。

一誠達は構成員とアンチモンスターを苦戦せず殲滅してはいた。

 

しかし、問題はアンチモンスターだ。

倒しても倒しても次々と現れるので手を焼いている状態だった。

 

 

ドォォォォンッ!!

 

『!?』

 

 

そんな会話をしていると、橋の上で激突音が鳴り響く。

一誠と木場はそちらへ目をやると、半壊した瓦礫の山から鎧を纏ったアザゼルが瓦礫をどかして立ち上がっている姿が見えた。

しかし、アザゼルの鎧は所々破損しており、背中から生やしている黒い翼も焼け焦げた箇所から血が痛々しく滲み出ていた。

 

それを追って曹操もスタッと軽い足取りで橋の上に着地する。

相変わらず余裕綽々な顔ではあるがアザゼル相手に無傷ということはなく、身体中は傷だらけで服装もボロボロになっていた。

特に左側頭部からは深い切り傷があり、真っ赤な血が頬を伝って流れていた。

 

いずれも重傷ではないが、普段戦わないことを抜きにしても充分強いアザゼルと互角で戦えている曹操の強さは中々のものだ。しかも曹操はまだ息を切らしてすらない。

曹操の計り知れない実力に一誠達が戦慄していると、視線に気付いたアザゼルが顔を向ける。

 

 

アザゼル「安心しろ、お前ら。お互い本気じゃない……まだ、ほんの小手調べくらいだ」

 

 

アザゼルは安心させるように話す。

仮面に覆われていて素顔が見えないが、アザゼルもまだ余裕な様子だ。

小手調べとはいっても先程2人が戦っていた川は激しさのあまり、大きく変形してはいるが…。

 

曹操は首をコキコキと鳴らし、ふぅと息を吐くと、口を開く。

 

 

曹操「いいチームだ。噂通り……いや、それ以上だ。俺自身、実力に自信あるが、意外とやってくれる。もう少し鍛え直す必要があるか」

 

一誠「お前、結局何がしたいんだよ?」

 

 

満足気に話す曹操に一誠は眉をしかめて問いかける。

曹操がティガの巨人を狙っている可能性はあるが、自身が傷付くにも関わらずわざわざ戦おうとする姿勢に疑問を抱いていた。

曹操は聖槍の柄を肩へ乗せると、一誠へ顔を向ける。

 

 

曹操「至ってシンプルだよ。『人間』としてどこまでやれるのか、という挑戦心だ。堕天使、悪魔、天使、その他諸々を倒す『英雄』はいつだって人間だった……いいや、人間でなければならない。超常の存在より下回る人間がどこまで強くなれるか………それをやってみたかっただけさ」

 

 

自身の夢を熱く語る曹操。

それが本当なのか甚だ怪しいが、曹操がやろうとする熱意が本気だということがヒシヒシと伝わる。

夢───一度は挫折してしまった一誠にとっては後ろめたい未練であり、それを豪語する曹操が羨ましいとさえ思ったりしたが、

 

 

一誠「くだんねぇな…」

 

 

心の底から放った言葉がそれだった。

聞こえるか聞こえないかくらいの声量で放ったが、曹操の耳には届いたらしく、ピクッと眉を動かすと、一誠を見据える。

 

 

曹操「今、何と言ったんだ?」

 

一誠「くだんねぇ、って言ったんだよ。何だよそれ?そんなことの為に九重の母ちゃんを拐って、コソコソ動き回って……そんなのでよく『英雄』って名乗れるよな」

 

曹操「ふっ、散々言うじゃないか。けれど、誰もが願う夢の形はそれぞれ。大きくても小さくてもいいじゃないか?俺は人間の限界に挑戦したい。それをくだらないなんて────」

 

一誠「お前の夢は否定しない。だけど、やり方が間違っている…!誰かを傷付けてまで叶える願いは夢じゃない、エゴだ!もし、それでも止めねぇんだったら……」

 

 

そう言いつつ一誠は一旦言葉を止めると、懐からリーフラッシャーを取り出し

 

 

一誠「俺が全力で倒す!」

 

 

力強い目で曹操を見据え、ビシッと言い放つ。

普段のアホっぷりから一変した一誠の姿にアザゼルは思った。「こいつは将来大物になる」と…。

 

呆気にとられる曹操だが、再び不敵な笑みを浮かべると、聖槍の切っ先を一誠へ向ける。

 

 

曹操「ふふふ……じゃあ止めてみせてみなよ」

 

 

そう言った曹操は深く腰を落として構えると同時に一誠もリーフラッシャーを構える。

睨み合いながら一誠がリーフラッシャーを斜め上に掲げようとしたその時だった。

見たことがない魔法陣が両者の間に現れた。

 

 

アザゼル「これは…」

 

 

アザゼルが知っているかのような口ぶりをしていたので、一誠が尋ねようとした矢先、魔法陣が光輝くと、中から魔法使いの格好をした小柄な少女が現れた。

 

一誠達が「誰だ?」と怪訝そうにしている中、魔法使いの少女は一誠達の方へ体を向けると、ペコリと頭を下げる。

 

 

ルフェイ「はじめまして。私、ヴァーリチームで活躍させて頂いています『ルフェイ・ペンドラゴン』です。同チームのアーサーは私の兄です」

 

一誠「なっ!?アーサーの妹だって!?」

 

 

ルフェイがアーサーの妹という事実に一誠は目を丸くする。

アザゼルも仮面で顔が見えないが一誠と同じ顔をしているだろう。

パッと見、妹と言われなければわからないが、よく見ればアーサーの面影がある。

 

本日一番の衝撃に一誠はポカンとしていると、ルフェイが小走りで近寄ってくる。

ルフェイが目をキラキラさせ、視線を送ってくるので、一誠が怪訝に思っていると、手を差し出してくる。

 

 

ルフェイ「…あ、あの!私、実は『冥界特撮シリーズ ウルトラマン』のファンなのです!」

 

一誠「………へ?」

 

 

突然の告白にすっとんきょうな声をあげる一誠。

その衝撃は先程まであった緊迫した空気がぶっ飛んでいくくらいだ。

 

 

ルフェイ「差し支えがなければ、あ、握手をして下さい!よろしければこの色紙にサインを!」

 

 

興奮やまない様子でルフェイは帽子から取り出した色紙とペンのセットも一緒に差し出す。

あまりにも唐突すぎて脳の処理が追いつかず、困惑する一誠だがとりあえず「ありがとう」と一言して握手をしてから色紙に『ルフェイちゃんへ  兵藤 一誠 ウルトラマンダイナ』と書いてあげた。

 

 

ルフェイ「ありがとうございます!……あっ!よく見れば向こうにも高山 我夢さんがいるじゃないですかっ!すみません!すぐ戻りますから!」

 

 

そう言うと、ルフェイは尋常じゃないスピードで駆け抜けると、向こうにいる我夢にも同じ様に握手とサインを求める。

一誠同様、我夢も困惑していたが、握手とサインを書いてあげると、ルフェイはピョンピョン跳び跳ねて喜ぶ姿が見えた。

 

ルフェイは一言お礼を言った後、再び猛スピードで走って一誠達のもとへ帰ってきた。

帰ってきたルフェイは満足げな笑みを浮かべ、2人分のサインが入った色紙を大事そうに抱えている。

 

 

ルフェイ「今、戻りました!いやはや、握手だけじゃなくて2人分のサインを貰えるなんて……!」

 

曹操「……そ、そうか。それで、ここに来た理由は?」

 

 

呆気にとられて話を切り出しにくくそうにしていた曹操だが、困惑しつつもルフェイに尋ねる。

その問いにルフェイは屈託のない笑顔を返す。

 

 

ルフェイ「はい!ヴァーリ様からの伝言をお伝えに参りました!」

 

曹操「伝言?」

 

ルフェイ「そうです!『邪魔だけはするなと言ったはずだ』───だそうです♪私達のチームに監視者を送った罰ですよ~」

 

ゴゴゴゴゴゴ……

 

 

ルフェイが可愛らしい口調で伝えると、大地が震わせる程の地響きが襲う。

立っていられない強い揺れに、敵味方関係なく足場をすくわれる。

 

ルフェイ以外の面々が怪訝に思う中、地面が盛り上がったかと思うと、ドゴォンと固い地表を突き破り、土砂を巻き上げながら、姿を現したのは……

 

 

「バァァァァァ~~~!!」

 

一誠「か、怪獣!?」

 

 

獰猛な目付きをした二足歩行の怪獣だった。シュモクザメのような頭部に真っ赤な目。横長の口には鋭い歯が並んでいる如何にも狂暴そうなフォルムの怪獣だった。

驚く一誠にルフェイはニコッと笑みを浮かべながら話す。

 

 

ルフェイ「私達が最近捕まえた肉食怪獣のダイゲルンです♪腕っぷしが良さそうなので捕まえたのですが、とても獰猛でうちのリーダーも手が焼く暴れん坊さんです♪」

 

一誠「な、何でそんなもんを差し向けんだよ!」

 

ルフェイ「すみません、ヴァーリ様の意向ですから……あ、そうそう。3日ぐらいエサを与えていないので、いつもより狂暴ですよ~」

 

 

ルフェイの説明を聞き、一誠はダイゲルンを見上げる。

こちらを見下ろすダイゲルンの口元からはよだれが滝のように流れていた。

 

 

ダイゲルン「バァァァァァ~~~!!」

 

 

その直後、ダイゲルンは雄叫びをあげる。

3日ぶり、しかも沢山いるエサにありつける喜びからくるものであった。

 

 

ルフェイ「それでは頑張ってくださいね~」

 

一誠「あっ、おい!」

 

 

一誠は帰ろうとするルフェイを呼び止めようとするが、ルフェイは足下に魔法陣を出現させ、そそくさと立ち去っていった。

 

 

一誠「持ってきたもんはちゃんと自分で持ち帰れよーー!」

 

アザゼル「イッセー、気を引き締めろ!くるぞ!」

 

ダイゲルン「バァァァァァ~ッ!」

 

 

ルフェイに向かって叫ぶ一誠にアザゼルは呼び掛ける。

皆は身構えていると、ダイゲルンはその場からジャンプ、けたたましい音を立てながら一誠達とは反対側の橋の近くに降り立つ。

 

ダイゲルンは腕を高らかにあげると、そのまま橋へ振り下ろす。

その巨体から繰り出される強力な一撃に渡月橋はあっという間に半壊した。

そこにいた英雄派の構成員とアンチモンスターは崩壊に巻き込まれ、次々と川の底へ落ちていく。

 

 

ダイゲルン「バァァァァァ~~~!!」

 

『ギィヤァァァァーーーー!!』

 

 

ダイゲルンは落ちる構成員やアンチモンスターを手でキャッチすると、次々と口を中へ放り込んでいく。

恐怖して立ち竦む、逃げ出そうとする、勇敢に立ち向かう英雄派の構成員をも手で捕らえ、口の中へ放り込み、ボリボリ音を立てて食べていく。

数分しないうちに100人以上であろう反対側にいた英雄派の構成員はあっという間に30人にも満たないくらいまで減っていた。

 

怒涛の勢いで大勢の人を食べたダイゲルンはペッと何かを地面へ吐き出す。

一誠達は地面に目をやると、吐き出されたのは消滅しかかっているアンチモンスターの亡骸だった。

どうやらダイゲルンの口には合わなかったようだ。

 

 

曹操「ヴァーリ、かなり頭にきていたようだな。ハハッ!……だが、これ以上仲間を減らされてはこちらが困る」

 

 

軽い笑みを浮かべていた曹操だが、すぐに真剣な顔に切り替わると、聖槍の切っ先を未だ構成員を食い尽くすことに勤しむダイゲルンに向ける。

 

 

曹操「伸びろッ!」

 

 

曹操がそう叫んだ瞬間、聖槍の切っ先がギュウゥゥゥンと勢いよく伸び、そのままダイゲルンの首もとに突き刺さる。

 

 

ダイゲルン「バァァァァァ~~!?」

 

ドォォォォンッ!

 

 

突然の攻撃にダイゲルンは苦悶とも困惑とも取れる悲鳴をあげると、横へ体勢を崩し、大きな衝撃音を立てて倒れた。

 

 

一誠「あの槍、一撃であんなデカイ怪獣をぶっ飛ばしたのかよ!?」

 

木場「これが最強の『神滅具(ロンギヌス)』の力か……」

 

 

襲いくる揺れに堪えながら、目の前で起きた出来事に驚愕する一誠達。

曹操の倍以上の規模を持つダイゲルンをたった一発でスッ転ばせる聖槍の底知れぬ強さに嫌でも圧巻された。

 

曹操が元の長さに戻した聖槍に一同が目を奪われていると、ダイゲルンはすぐさま立ち上がった。

刺された首もとからは赤黒い血がダラリと流れている。

 

 

ダイゲルン「バァァァァァ~~ッ!!」

 

 

立ち上がったダイゲルンは曹操と一誠を視界に捉えると、怒りの雄叫びをあげる。

それは刺されたことよりも、食事の邪魔をされたことに関しての怒りだった。

怒り狂ったダイゲルンはその場で地団駄を踏むと、次の標的に定めた一誠達に向かって突進してくる。

 

 

一誠「…やべっ!ダイナァァァーーーーーーーッッ!!

 

 

曹操がいる手前、あまり披露したくはないがこの際仕方ない。

腹をくくった一誠は掛け声と共にリーフラッシャーを斜め上に掲げる。

 

 

我夢「ガイアァァァーーーーーーーッッ!!

 

 

少し遅れながら、我夢も掛け声と共にエスプレンダーを前へ突き出す。

 

互いの変身アイテムから発する光に包まれ、2人は光の巨人────ウルトラマンへと変身した。

 

 

ダイナ「ダァァァァーーーーッッ!!」

 

ガイア「デヤァァァァーーーーーーッ!」

 

ダイゲルン「バァァァァァ~~~!!」

 

 

変身直後、ダイナとガイアは空中で一回転してジャンプキックを放つ。

2人の巨人によるダブルキックを受けたダイゲルンは後方へぶっ倒れる。

 

 

ガイア「デュアッ!」

 

ダイナ「デュッ!」

 

ダイゲルン「バァァァァァ~~!!バァァァァァ~~!!」

 

 

2人が着地してすぐ身構えると、ダイゲルンはすぐさま立ち上がる。

食事を邪魔した相手を食べようもしたのを妨害され、またもや転倒されたことに怒り心頭の様子だ。

 

雄叫びをあげ、威嚇するダイゲルンにダイナとガイアはファイティングポーズを取って、出所を探る。

ダイゲルンは自分の力に自信があるヴァーリがわざわざ捕まえてきた怪獣だ。

そこに深い意味はないのかもしれないが、ヴァーリがとる行動には裏がある───それを知っているダイナ、ガイアだからこそ警戒するのだ。

 

 

バチバチッ!

 

『?』

 

 

互いに睨み合い、間合いを計っていると、両者が挟む空間に稲光りが走る。

この現象にこの場にいる全員が不思議に思った矢先、

 

 

バリィィィンッ!!

 

『!?』

 

 

空がガラスのように割れ、破片が飛び散る。

この平穏ではない現象にガイア、ダイナ、アザゼル達はおろか、曹操までもが警戒していると、割れた空から赤い空間が広がっており、そこから巨大な影が覗いているのに気付いた。

 

 

「……」

 

 

赤い空間から覗く影。それは牛のような顔に刺々しい針状の腕に右手にはフック状の手の形をしていた異形の怪獣が静かにこの状況を伺っていた……。

 

 

 

 




次回予告
※(イメージBGM:ウルトラマンティガ次回予告BGM[初期])

怪獣を超える脅威──『超獣』との戦いは熾烈を極める!
試練を乗り越えた先、曹操の拠点を発見した我夢達は二条城を目指す!

次回、「ハイスクールG×A」!
「行け!英雄討伐隊」
お楽しみに!




・京都名物No-1「完全(いふ)湯豆腐」
  九重が我夢に案内してくれた湯豆腐屋の人気イチオシのメニュー。お値段2005円(税込)。
普通の豆腐と違って形はマシュマロのようだが、食感や強度は普通の豆腐と同じ。
その味は完全の名の通り絶品で、わざわざこれを食べに来る客も多い。
ただ、杜撰な食べ方をすると、豆腐に含まれている熱湯が飛んできて火傷する恐れがあるので充分注意せし。

・京都名物No-2「レンボラークッキー」
  ヘビクラこと、ジャグラーが渡月橋の戦いを観戦した際に食べていたクッキー。お値段40枚入りで1974円(税込)。
虹を模した虹のクッキーで、七色に彩られた部分はそれぞれ別の味がする。
ボクサーの間ではこれをお土産に買うと、必ず次の試合には勝つという噂があり、縁起が良いとされている。

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