ハイスクールG×A   作:まゆはちブラック

58 / 67
英雄派首領 曹操
肉食地底怪獣 ダイゲルン
大超獣 ジャンボデューク
最強超獣 ジャンボキング 登場!


第54話「行け!英雄討伐隊」

時は少し遡り、英雄派と一誠達が戦いを繰り広げている最中、ルフェイが現れた時だった。

遠くの高台で観戦していたヘビクラはルフェイが我夢と一誠に握手とサインを求める熱狂ぶりに舌を巻いていた。

 

 

ヘビクラ「あの娘、戦場なのにあの場違いのテンション……。全く、興味があるもんの前には我を失うのは、()()()()()を思い出すぜ……」

 

 

ヘビクラは1人興奮するルフェイに、かつて一緒に戦った女性の姿を重ねる。

ジャンルが違えど、彼女も興味があるものを目にするの、ルフェイのように途端にはしゃいでいた。

 

「あいつ、元気かな~」なんて思っていると、突如地響きと共に地中からダイゲルンが現れた。

ヘビクラは発生する揺れにも動じず、クイッとお茶を飲み干すと、ダイゲルンへ目を向ける。

 

 

ヘビクラ「あの怪獣、あの娘が呼び出したのか。ハッ、戦いにとんだ火付け役を投下したもんだ」

 

 

ヘビクラは客観的に呟きながら不敵な笑みを浮かべる。

何千、何百との歴戦の修羅場を潜り抜けてきたヘビクラには、ダイゲルンがルフェイに連れてこられたのが一目でわかった。

 

橋を破壊し、暴れまわるダイゲルンを視界に収めつつ、ヘビクラは懐から赤と黒を貴重とし、メダルの装填口がついたブレードにトリガーがついたアイテム───ダークゼットライザーを取り出す。

 

 

ヘビクラ「────じゃあ、食後の運動といくか」

 

 

ヘビクラはそう呟いてダークゼットライザーのトリガーを押し、出現させた光のゲートを潜った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

前回同様、ゲート内の紫色の怪しげな空間に入ったヘビクラの服は黒のスーツ姿から全身黒タイツになっていた。

まるで彼の旧友を彷彿とさせる格好だ。

 

そうすると、手前に四之宮の姿が描かれたアクセスカードが出現する。

ヘビクラがアクセスカードの右端を摘まむと、カードのデザインが四之宮からヘビクラのものへと変化した。

 

変化するのがわかっていたのか、ヘビクラは特に反応せず、アクセスカードをライザーのカード装填口に装填する。

 

 

《Hebikura.Access Granted.》

 

 

ライザーから認証音声が聴こえる中、四之宮は右手を開くと、チャリッと音を立てて怪獣が描かれた2枚のメダルを出現させる。

 

ヘビクラは髪を振り上げるように顔を上げ、正面を睨み付ける。

瞳が緑色に発光した瞬間、顔の左半分に不気味な魔人の顔が一瞬だけ浮かび上がった。

ヘビクラは出現させた2枚の怪獣メダルをライザーに装填していく。

 

 

ヘビクラ「カウラさん…」

 

チャリッ…

 

ヘビクラ「巨大ヤプールさん…」

 

チャリッ…

 

 

ヘビクラはねっとりとした口調でメダルに宿す怪獣の名前を呼びながらブレード部分の装填口に1枚ずつ装填すると、ブレードを動かす。

 

 

《Cowra.》

 

《Giant Yapool.》

 

 

ライザーにメダルを読み込ませたヘビクラはライザーを顔の横に構え

 

 

ヘビクラ「お待たせしました。闇の力、お借りします!

 

《Jumbo duke.》

 

 

その掛け声と共に真上に掲げて共にトリガーを引くと、ライザーから発する光に包まれ、ヘビクラは合体怪獣──否、合体超獣に変身した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バリィィィンッ!

 

『!?』

 

 

ヘビクラが変身した合体超獣はさっそく空を割って、ガイア達の前に降り立つ。

割れた空は逆再生のビデオのようにすぐに破片がくっついて何事もなかったかのように戻っている。

 

腕部と背中は巨大ヤプール。それ以外は牛神超獣 カウラ。

2体の超獣の力が合体した大超獣『ジャンボデューク』の登場である。

 

 

ジャンボデューク「ピィ~ギャアワァァッ!!」

 

イリナ「何なのー!?あの怪獣!」

 

アザゼル「曹操、まさかお前か?」

 

曹操「いいや、俺が呼んだものではない」

 

 

一同がジャンボデュークの登場に驚く中、アザゼルの問いに曹操は首を横に振る。

曹操も逆に誰が差し向けたのか知りたいぐらいだった。

それもそうだろう。誰が差し向けたものでもなく、ヘビクラ───ジャグラーが変身した姿なのだから。

 

 

アーシア「あの怪獣さん、何か怖いです……」

 

 

アーシアはジャンボデュークを見て、僅かに身震いする。

今まで出会ってきた怪獣は種族が違えど人と同様、喜怒哀楽の感情が感じられた。

 

しかし、ジャンボデュークには全くそれが感じられない。

ヘビクラが変身したものとはいえ、生物兵器としての側面が強い超獣には感情そのものは全くないからだ。

それによって痛みや恐怖を感じず、その肉体が滅びるまで暴れ続ける。

誰よりも優しく、感受性豊かなアーシアには超獣が感情を持たないことがヒシヒシと伝わっていた。

 

 

ダイゲルン「バァァァァァ~~ッ!!」

 

 

一同が固まっている中、乱入からの乱入に遂に我慢の限界を迎えたダイゲルンは怒りの雄叫びをあげる。

───この苛立ちが止まるならこの際、何でもいい!

そう思ったダイゲルンは大地を踏み荒らして、ジャンボデュークに突貫を仕掛ける。

 

 

ジャンボデューク「ピィ~ギャアワァァッ!!」

 

 

接近を許さないジャンボデュークは鎌状の右手から白色のレーザーを連射する。

放たれた無数のレーザーは突貫を仕掛けるダイゲルンの身体を易々と貫き、全身の傷口から火花と血が飛び散る。

 

 

ダイゲルン「バァ"ァ"ァ"ァ"ァ~~ッ!!」

 

ジャンボデューク「ピィ~ギャアワァァッ!!」

 

 

身体全身を貫く苦痛にすくみ、苦悶の叫びをあげるダイゲルン。

その隙に接近したジャンボデュークは鎌状の右手で上下左右に振って3回斬り付けると、巨木のような牛の足から繰り出すヤクザキックで蹴り飛ばす。

後ろへ吹っ飛んだダイゲルンは背中から地面に体を打った。

 

 

ダイゲルン「バァァァァァ~~ッ!!」

 

 

攻撃が通らず、更に苛立ちを募らせたダイゲルンは癇癪を起こす子供のように地面を叩き、立ち上がり様に尻尾で凪ぎ払う。

勢いがついた長く太い尾が襲いくるが、ジャンボデュークは左手で軽々と掴むと

 

 

ジャンボデューク「ピィ~!ギャアワァァッッ!!」

 

ジャキィンッ!

 

 

反対の鎌状の右手を振り下ろし、小気味の良い音を立て、尻尾を斬り落とした。

当然、体のバランスを保つ尻尾を失ったダイゲルンは大きく前のめりに倒れる。

 

 

ダイゲルン「バァ"ァ"ァ"ァ"ァ"~~~~~~~ッッ!!」

 

 

尻尾を斬られ、狂い悶えるダイゲルンをジャンボデュークは見下ろしつつ、左手に持っていた尻尾の切れ端を地へ落とす。

両者の足下に流れる川は尻尾の切れ端とダイゲルンの尻尾の切り口から溢れる血によって真っ赤に染まっていく…。

 

 

ガイア「…ッ」

 

ダイナ「何て奴だ…」

 

 

怪獣と超獣のかけ離れた実力に圧倒され、思わず釘付けになるガイアとダイナ。

2人共、今まで怪獣を何体とも戦ってきたが、ここまで一方的にやられる姿を見るのは初めてである。

 

ジャンボデュークの恐ろしいまでの実力に戦慄していると、ダイゲルンは満身創痍ながらも立ち上がった。

受けたダメージは肉体的にも酷いが、それよりも精神的なのが強いだろう。

ここまで一方的にやられる経験はダイゲルンにとっては今までなかったのだから。

 

 

ダイゲルン「バァァァァァ~~ッ!!」

 

 

これだけの実力差を見せつけられて尚も、ダイゲルンは奥の手でいわんばかりに口から火炎を吐く。

辺りを照らすばかりの高熱を持った火炎が向かってくるのに合わせ、ジャンボデュークも息を軽く吸って火炎を吐いた。

 

 

ボォォォンッ!!

 

アーシア「きゃっ!?」

 

ゼノヴィア「くっ!」

 

 

両者の火炎がぶつかり、暗かった景色全体を一瞬で照らす程の大爆発が起こる。

衝突時に起きた眩しさと熱風で目を伏せて身を固める一同。

 

しばらくして爆発が収まり、一同は目を開ける。

──勝ったのはどっちだ?

皆がそう思う中、立ち込める爆煙が晴れた先にいた勝者は───

 

 

ジャンボデューク「ピィ~!ギャアワァァッ!!」

 

ダイゲルン「バァァァァァ…ッ!」

 

 

大超獣ジャンボデュークだった。

傷1つなく依然として佇むジャンボデュークの視線の先には全身火だるまとなり、弱々しい悲鳴をあげるダイゲルンの姿があった。

どうあがいても勝てないと悟ったのか、先程までの威勢は消え去り、抵抗する意思も最早無かった。

 

 

ジャンボデューク「ピィ~~!ギャアワァァッッ!!」

 

ダイゲルン「バァ"ァ"ァ"ァ"ァ"~~~~ッッ!!」

 

ドガガガガガァァァァァンッッ!!

 

 

せめて止めは刺してあげようとジャンボデュークは口から無数のミサイルを放つ。

容赦の無いミサイルの雨にダイゲルンは断末魔をあげながら爆発四散した。

 

 

『……』

 

 

怪獣をあっという間に倒したジャンボデュークを前に、ガイア達は絶句する。

怪獣を超える存在───超獣の強さの片鱗を目の当たりにしてしまえば、こうなるのも無理はない。

超獣の強さに衝撃を受ける中、振り向いたジャンボデュークはガイアとダイナを視線に捉える。

 

 

ジャンボデューク「ピィ~!ギャアワァァッッ!!」

 

『…!』

 

 

直後、ジャンボデュークは雄叫びをあげる。

それを耳にし、我に戻ったガイア達は次は自分達に向かってくると察して身構えると、ジャンボデュークはその場から駆け出す。

 

 

ガイア「デュアッ!」

 

 

それに合わせてガイアは先陣をきって駆け出す。

接近し、振り上げようとしていた鎌状の手があるジャンボデュークの右腕を両手で抑えつつ、タックルをくらわせる。

 

 

ガイア「グアッ!」

 

ジャンボデューク「ピィ~!ギャアワァァッ!」

 

ダイナ「ハッ!ダァァァァーーーッ!!」

 

 

ジャンボデュークが怯んだところをガイアを飛び越え、空中一回転して威力をつけたダイナの飛び蹴りが炸裂する。

 

 

ジャンボデューク「ピィ~!ギャアワァァッ!!」

 

 

その衝撃にジャンボデュークは後退りながらも口から無数ものミサイルを放つ。

ミサイルは縦横無尽の軌道を描きながら迫りくるが、

 

 

ガイア「デュアッ!」

 

ピュイーーーン!ピュイピュイピュイ…!!

 

 

ガイアは冷静に右腕を上に左腕を下に垂直に構え、プリズム状の光を発生させると、そのまま両腕を左右に開いてウルトラバリヤーを発動した。

全てのミサイルは展開した円形状の光の障壁によって防がれる。

 

 

ダイナ「ハッ!デェアッ!!」

 

ジャンボデューク「パパパパ…ッ!」

 

 

バリアで防いだガイアは横へ移動して後ろにいたダイナに道を開けると、すかさずダイナはフラッシュ光弾を放つ。

放たれた虹色の光球にジャンボデュークは僅かに体勢を崩す。

 

 

アザゼル「お前ら!一斉攻撃だっ!」

 

『はいっ!』

 

 

アザゼルは出来た一瞬の隙を逃さず、木場達に指示を出すと、ジャンボデュークめがけて一斉攻撃をする。

飛ぶ斬擊、無数もの光輪、投擲される光の槍……様々な攻撃が入り交じった攻撃の嵐がジャンボデュークに襲いかかる。

 

 

ジャンボデューク「パパパパ…ッ!」

 

ガイア「グアッ!グアァァァァ………デヤッッ!!」

 

ダイナ「ハァァァァ……シュワッ!」

 

 

あまりダメージを受けている様子ではないが、攻撃そのものは通っており、怯むジャンボデューク。

一斉攻撃に合わせ、ガイアはクァンタムストリーム、ダイナは胸のダイナテクターに蓄えたエネルギーから形成した光弾───『スパイラルバースト』を放った。

 

 

ジャンボデューク「ピィ~!ギャアワァァッ!!」

 

ドォォォォォッ!!

 

 

グレモリー眷属十八番のごり押し戦法にジャンボデュークは大爆発を起こし、身体中から火花を散らした。

 

巻き上がる大爆発の中、ジャンボデュークの体内のインナースペースにいるヘビクラはすかさずダークゼットライザーに3枚の怪獣メダルを追加装填する。

 

 

ヘビクラ「ユニタングさん!マザロン人さん!マザリュースさん!」

 

《Unitang.》

 

《Mazaronian.》

 

《Mazarews.》

 

 

ブレードを動かし、怪獣メダルを読み込ませると、顔の横に構え

 

 

ヘビクラ「闇の力……もうちょっとお借りするぜぇぇっ!!

 

《Jumbo king.》

 

 

その掛け声と共に再び真上に掲げてトリガーを引くと、ライザーから強い光が発する。

それと同時にジャンボデュークの身体に異変が起きていた。

 

全身が怪しい光で輝いたかと思うと、ジャンボデュークの腰から新しい胴体と足に加え、ラクダのコブのような形状をした突起が生え、両腕は二又状のハサミを持ったものに生え変わった。

 

前半身は牛神超獣 カウラ。

後半身と両腕はくの一超獣 ユニタング。

後半身の両脇に着いている背部パーツは異次元人 マザロン人。

前半身と後半身を繋ぐ胴体は地獄超獣 マザリュース。

そして、この4体の超獣を繋げる強大な力を持つ巨大ヤプール。

 

ケンタウロスのようなフォルムを持ったこの合体超獣こそ、最強超獣『ジャンボキング』だ。

 

 

ダイナ「違う怪獣と合体しちゃたのかよ…」

 

ジャンボキング「ピィ~~!ギャアワァァッ!!」

 

 

複数の超獣の力が合体したものと知ったことと、姿が変わったことに驚く一同をよそにジャンボキングは4本の足で大地を踏みしめて前進する。

 

 

ダイナ「ダッ!!」

 

ジャンボキング「ピィ~!ギャアワァァッッ!!」

 

ダイナ「グアッ!?」

 

 

ダイナは飛び上がってチョップを仕掛けるが、ジャンボキングの角から放つ紫色の光線で撃ち落とされる。

 

 

ガイア「デュアッ!」

 

ダイナ「ダッ!」

 

 

続けて接近したガイアとすぐさま立ち上がったダイナは

拳と蹴りの応酬で攻め立てる。

しかし、僅かに微動だにするだけでジャンボキングには大して効いていない様子だ。

 

 

ジャンボキング「ピィ~!ギャアワァァッ!!」

 

ドガガガガガッッ!!

 

ガイア「ドアァァァァッッ!?」

 

ダイナ「グワァァァーーッ!?」

 

 

ジャンボキングの口から放たれたミサイル群を至近距離から受け、ガイアとダイナを大きく吹き飛ばされる。

ジャンボキングは更に追い討ちにとばかり、両腕のハサミからクモの糸を放ち、立ち上がろうとする2人に絡みつかせ、膝を着かせる。

 

 

ガイア「グアッ!」

 

ダイナ「デュッ!」

 

 

何とか振りほどこうともがくガイアとダイナだが、粘着性を持った糸から抜け出すのは至難の技で、もがけばもがく程、糸の拘束力は強まっていく。

 

 

ジャンボキング「ピィ~ギャアワァァッッ!!」

 

 

ジャンボキングは鼻から白色のガスを浴びせつつ、口から火炎を吐く。

その瞬間

 

 

ボォォォンッ!!

 

ガイア「ドアァァァァーーーーッ!!!」

 

ダイナ「グワァァァーーーーッ!!!」

 

 

火炎がガスに引火し、大爆発が起きた。

爆発をもろに受けたガイアとダイナは全身から火花を散らし、そのまま地面に叩きつけられる。

 

その破壊力は凄まじく、爆発から発生した爆風だけで渡月橋の3分の1以上は吹き飛ばされた。

アザゼル達は何とか空中に避難し、九重とアーシアはいつの間にか陸地に避難していたので大事には至らなかったが。

 

 

アザゼル「イッセー達を援護するぞ!」

 

『了解!』

 

 

木場達はアザゼルの号令のもと、ジャンボキングへ一斉攻撃を仕掛ける。

 

 

バリィィンッ!

 

アザゼル「何っ!?」

 

 

だが、ジャンボキングは空を叩き割ると、赤い空間が広がる異次元へ逃げ込んだ。

割れた空は元に戻り、アザゼル達の仕掛けた攻撃は虚空を切り、近くの建物に当たった。

 

どこだどこだと皆は辺りを見回して警戒する中、後ろから巨大な影が顔を覗かせる。

驚くアザゼル達が振り向いた先は、予想通りジャンボキングだった。

ジャンボキングは今まさに角からの紫色の光線に加え、口から火花を放とうとしていた。

 

 

ジャンボキング「ピィ~!ギャアワァァッッ!!」

 

アザゼル「ちィ!───ぐわぁぁっ!!」

 

イリナ「きゃあっ!!」

 

ゼノヴィア「かはっ!」

 

木場「ぐあっ!」

 

 

アザゼルは咄嗟に木場達を覆う程の防御魔法陣を展開するが、即席だったこともあって魔法陣は呆気なく粉微塵となった。

火炎の光線の二重攻撃を受けたアザゼル達は橋の麓の陸地に叩きつけられた。

 

 

ガイア「っ、みんな!よくも……!」

 

ダイナ「許さんっ!!」

 

 

仲間達が傷つけられるのを目の当たりにしたガイアとダイナは怒りに奮えて立ち上がると、ジャンボキングに向かっていき、殴りかかろうとするが

 

 

バリィィンッ!!

 

「「ッ!」」

 

 

またもや空を割ったジャンボキングに異次元へ逃げられ、2人の拳は虚空をきる。

完全に現実空間から気配が消え、ガイアとダイナはどこだと辺りを見渡していると、2人の真上の空間から姿を現したジャンボキングの角から放つ紫色の光線をくらう。

 

 

ガイア「ドアッ!?」

 

ダイナ「グアッ!?」

 

ジャンボキング「ピィ~!ギャアワァァッッ!!!」

 

ダイナ「ハッ!」

 

 

ダイナはやけくそとばかりに丸ノコ状の光輪ダイナスラッシュを放つが、またもやジャンボキングに異次元へ逃げられる。

 

その後も何とか攻撃を当てようとするガイアとダイナだが、異次元を駆使したジャンボキングのトリッキーな攻撃を前にたじろぐしかなかった。

 

 

ダイナ「くそっ、このままじゃジリ貧だぜ」

 

ガイア「……」

 

 

ジャンボキングに撹乱され、窮地に追いやられるガイアとダイナ。

気配が完全に消える相手を前にどうすれば?と苦悩するガイアだったが、今朝の木場とのトレーニングのことを思い出す。

 

相手の気配を注意深く探ること────それがもしかしたら今回の相手に通用するかもしれない。

思い立ったガイアは一歩前へ出て、右腕を振り下ろし、青い光剣アグルブレードを形成する。

これもアグルから受け継いだ技なのだが、アグルと違い、ブレードの根本は赤く輝いている。

 

 

ダイナ「ッ!」

 

 

ガイアの無意味とも取れる行動に驚くダイナだったが、彼のことだからきっと意味があるのだろうと察すると、静かに様子を見守る。

 

 

ガイア「……」

 

 

腰を深く落としてアグルブレードを構え、ガイアは静かに周りの気配に耳を澄ませる。

川の流れる音……崩れる瓦礫の音……そして、仲間達の気配……。

木場に言われたことを思いだしつつ、注意深く気配を探ると、自分の背後の空間が僅かに乱れのを察知した。

 

 

ガイア「───デュアッ!!」

 

ジャンボキング「ピィ~!?パパパパッ!」

 

 

──そこだ!ガイアは背後の虚空に向かってアグルブレードを突き刺すと、異次元から現れたジャンボキングに命中する。

胸元に命中し、怯んだジャンボキングは異次元から放り出される。

 

 

ガイア「ダッ!ダッ!デヤッ!!」

 

ジャンボキング「ピィ~!ギャアワァァッッ!!」

 

 

アグルブレードをしまったガイアはすかさず右、左と拳をジャンボキングの顔面に打ち込むと、その場で回しかかと蹴りをくらわせる。

 

 

ダイナ「シュワッ!!」

 

ザ────────!!

 

 

ガイアが怯ませたところへダイナは両腕を十字に組んで、追い討ちの『スペシウム光線』を放つ。

青白い点線の光線が真っ直ぐジャンボキングの胸元を捉える。

 

 

ドガガァァァァァンッ!!

 

ジャンボキング「パパパパ…!」

 

 

命中し、爆発したジャンボキングは大きく後退する。

流石に威力の高い光線では効くのか、当たった箇所は黒焦げている。

 

 

アザゼル「何とか突破口が見えたようだな」

 

ダイナ「先生!それにみんなも!」

 

 

初ダメージで2人が士気をあげていると、アーシアの治療によって回復したアザゼル達が戦場へ復帰する。

 

 

ガイア『みんな、あの怪獣はこっちの空間に現れる瞬間、僅かに空気にブレが発生する。そこを狙うんだ』

 

ゼノヴィア「なるほど」

 

木場「我夢君、流石だね…」

 

 

ガイアのテレパシーからジャンボキングの弱点を聞き、皆は頷く。

特訓に付き合った木場は特に嬉しそうに頬を緩める。

 

 

ジャンボキング「ピィ~!ギャアワァァッッ!!」

 

ガイア「グアッ!」

 

ダイナ「ハッ!」

 

 

雄叫びをあげるジャンボキングに身構える一同。

僅かであるが、弱点がわかったことで暗闇から差す光のように希望が見出だせた。

 

このままいけるかと思った矢先、この場にいる全員はあること……否、ある人物もこの空間に巻き込まれているのを忘れていた。

そう、忘れてはいけない当然の人物を。

 

 

ロスヴァイセ「……うい~。ひとがきぶんよくねていうところぉにドッカン!バッタン!あばれてぇ……うるさいンれすよォ!」

 

 

フラフラと千鳥足で崩壊した橋を歩く人物──酔い覚めぬ様子のロスヴァイセの登場だ。

こちらへ転移された後、しばらく酔いつぶれていたようだが、どうやら戦闘音で起こされてご立腹だ。

 

 

ガイア「ロスヴァイセさん!?」

 

アザゼル「起こさねぇように防音の結界を張ってたんだがな……」

 

 

アザゼルの言うようにロスヴァイセが寝ている間に結界を張っていたのだが、それすらも貫通するくらい戦闘が激しかったのだ。

彼女の登場に安心よりも何故か嫌な予感がした一同は冷や汗をかいていると、ロスヴァイセはジャンボキングに気が付いた。

 

 

ロスヴァイセ「…んあ?なんれすか、このにんきのなさそうなでかぶつは?……はっ、いいれすよ。やってやろうじゃないれすか!」

 

 

ジャンボキングを敵と認識したロスヴァイセはそう言い放つと、自身の周囲に無数もの魔法陣を一気に展開させる。

それを見て、これから起こることを察したアザゼルは他の仲間に叫ぶ。

 

 

アザゼル「お前ら離れろっ!!」

 

『ッ!』

 

 

アザゼルの言葉にハッと我に戻った一同は渡月橋から一斉に離れる。

ガイアとダイナも身の危険を察し、空へ避難した。

 

 

ロスヴァイセ「ヴァルキリーじらいにきずきあげた、ほくおうしきフルバーストまほうをくらえぇぇぇぇッ!!!」

 

ズドドドドドドォォォォォッ!!!

 

 

一同が避難した瞬間、ロスヴァイセは無数もの魔法陣から大量の魔法攻撃を放った。

火、水、光、雷、ありとあらゆる属性を持った魔法攻撃は縦横無尽に軌道を描きながら、ゲリラ豪雨の如く、ジャンボキングに降り注ぐ。

 

 

ジャンボキング「ピィ~!ギャアワァァッ!!!」

 

ドォォォォォンッ!!

 

 

無数の魔法攻撃を前にジャンボキングはなすすべなく、魔法攻撃をたて続けにくらい、身体の全貌が見えないくらいの大爆発を起こした。

 

しばらくして、ロスヴァイセは気が晴れたのか攻撃の手を止める。

爆風が晴れると容赦のない連続攻撃には敵わなかったのか、ジャンボキングの姿はどこにもなかった。

流石、元オーディンのお付きと言いたいところだが…

 

 

ガイア「こ、これは……」

 

 

一同は周囲の景色に唖然とする。

周囲の被害をお構い無しに攻撃したせいで、家屋や店や道路も跡形もなく消し飛び、辺りからプスプスと爆煙と焼け焦げた匂いが立ち込めていた。

どこぞの防衛チームの人が見れば、きっと「バカヤロー!」と激怒すること間違いなしだろう。

 

 

ロスヴァイセ「うぇへへ……どうらってんだ!」

 

 

擬似空間とはいえ、これだけの被害を出した当のロスヴァイセは満足したようでその場で大の字に寝っ転がる。

木場とアーシアは苦笑しつつ介抱しに向かった。

 

何とも言えない空気が流れる中、辺りを見渡していたイリナはいつの間にか曹操と英雄派の構成員がいないことに気付いた。

 

 

イリナ「ねぇ、アザゼル先生。曹操は…?」

 

アザゼル「俺達がさっきの怪獣と戦っている間に逃げ出したらしいな。ご丁寧に俺達をこの空間に置き去りしてな」

 

 

イリナにアザゼルは曹操への皮肉を込めて話す。

───敵対しているとはいえ、自分達だけスタコラサッサと逃げ出すのは『英雄』が取るべき行動ではないだろう…。

そんなことをアザゼルは思っていると、足下に漂っていた霧が濃くなり、一同の全身を覆っていく。

 

 

アザゼル「お前ら、空間が元に戻るぞ!武装を解除しておけ!」

 

 

視界が霧に覆われ、周りが見えない中、アザゼルの声が一同に響き渡る。

それを聞いたガイアとダイナは変身解除し、木場達も手に持っていた武器を閉まった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霧が晴れ、次に目を開けると、我夢達は観光客で溢れ返る渡月橋の真ん中で突っ立っていた。

橋や家屋も壊れておらず、近くには愛華、松田、元浜がいることから現実の空間に戻れたことを察した。

木場とロスヴァイセの姿が見えないが、恐らく転移される前の場所に戻っているのだろう。

 

我夢は先程の戦闘に加え、曹操の行動理念に憤っていると、松田が顔を覗かせているのに気付いた。

 

 

松田「…どうした、我夢?険しい顔して」

 

我夢「……っ、ははっ!いや、何でもないさ!少し考え事をしただけ」

 

松田「?」

 

 

我夢は苦笑して誤魔化すと、松田は首を傾げつつも少し納得した様子を見せる。

言えるはずがない。関係のない人に話す訳には。

例え、それが友達である松田や元浜にあってもだ。

 

 

アザゼル「実験だと…ッ?ふざけやがって…!!」

 

 

憤るアザゼルは電柱を横殴りする。

その表情は今まで見たことがないくらい怒りに駆られた険しいものだった。

 

 

九重「……母上。母上は何もしてないのに……どうして…っ」

 

 

泣きそうな顔を浮かべる九重。

自分達は何もしてないのに、訳もわからない連中に勝手に弄ばれる。

悔しさと悲しさに体を震わせる彼女を我夢達は悲痛な面持ちで見ることしか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、渡月橋から離れた山中では上着をはだけさせているヘビクラの姿があった。

ヘビクラはあの爆発から無事脱出出来ていたのだ。

救急キットで少し焦げている胸元を治療し、包帯で巻いていた。

 

 

ヘビクラ「……悪いな。この体、傷付けてしまって」

 

 

ヘビクラは処置を終えた自身の胸元に手を当てると、いつになく真剣な顔で語りかける。

それは独り言というよりも、憑依している体の持ち主である四之宮に対してである。

ヘビクラ────ジャグラーが受けたダメージは彼ではなく、憑依している四之宮に全て通る。

了承は得たとはいえ、乗り移った体で無茶苦茶な行動ばかりしてきた罪悪感があるのだろう。

 

ヘビクラは元の調子に戻ると、地面に置いていたダークゼットライザーを掲げて見上げる。

 

 

ヘビクラ「……あの女、中々ぶっ飛んでやがる。巨大ヤプールのメダルを持ってなきゃ今頃どうなってたか……」

 

 

ヘビクラは先程、ロスヴァイセがフルバーストを放った一部始終を思い出す。

ヘビクラ──ジャンボキングは出来るだけ至近距離で口から無数ものミサイルを発射し、フルバーストを相殺させて爆発を起こさせて自分の姿が爆煙で見えなくさせると、空を割って異次元へ避難したのだ。

そうして、あたかも倒されたように見せかけつつ異次元を通って現実の空間に戻ってきたという訳だ。

 

 

ヘビクラ「…まあ、現状を把握出来ただけでも良しとするか」

 

 

そう呟いたヘビクラは上着を着て、ダークゼットライザーを懐へしまうと、どこかへ歩き去っていった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

英雄派とジャンボキングの襲撃があった後、当初の予定通りの観光を行った我夢達はホテルに戻ってきた。

 

夕食と入浴を終えた後、就寝時間が間近に迫ろうという時刻、我夢達はあるホテルのある和室に足を運んだ。

アザゼルはもちろんのこと、匙を始めとしたシトリー眷属2年生メンバー、セラフォルーもこの一室に集まっていた。

 

アザゼルは辺りを見渡して全員がいるのを確認すると、口を開く。

 

 

アザゼル「先程、曹操宛からこんなものを矢文で送ってきやがった」

 

 

アザゼルは手に取った矢文を皆に見せるようにテーブルの上に置く。

皆がそれに顔を覗かせると、矢文にはこう書いてあった。

『今宵、二条城にて九尾の御大将を用いた実験を執り行う。此を止めたくば、是非とも参加せし』──と。

 

 

一誠「あの野郎…!」

 

 

見れば見るほどふざけた文面に一誠は拳を握りしめる。

一誠だけでなく、この場にいる全員が曹操への憤りを感じていた。

 

 

アザゼル「…奴等はこの状況を楽しんでいるのか、潜伏場所をあっさりと白状しやがった。正直のところ、俺も腹立たしい……。現在、悪魔、堕天使、それに協力してくれる京都妖怪の関係者を総動員して、二条城と京都駅周辺に非常警戒態勢を敷いた。今のところは怪しい動きは見せていない……そこでだ。せっかくの旅行を台無しにして悪いが、お前達にもこの作戦に協力してもらいたい」

 

 

そう言ったアザゼルは先程の矢文をどけると、テーブルの上に地図を広げる。地図には京都全域を記されており、アザゼルが書いたのか今回の作戦で重要と思われる箇所を蛍光ペンでマークしている。

アザゼルは一拍空けると、作戦を告げる。

 

 

アザゼル「作戦を伝えるぞ。まずはシトリー眷属。お前達は京都駅周辺で待機だ。このホテルを守るのもお前達の仕事だ。一応、ホテルには強固な結界を張っているが、万が一の場合はそれに当たってくれ」

 

『了解!』

 

 

アザゼルの指示にシトリー眷属の全員は返事をする。

頷いたアザゼルは我夢達へ指示を出す。

 

 

アザゼル「次にグレモリー眷属。悪いが、今回も前衛に当たってくれ。作戦は単純、二条城へ向かって八坂の姫を救い出すことだ。それが出来たらソッコーに逃げてもいい」

 

一誠「ちょっ!?逃げてもいいって、曹操を野放しにするんすか!?」

 

アザゼル「今回の作戦のメインは八坂の姫の救出だ。お前達なら大丈夫とは思うが、敵の力は未知数。迂闊に踏み込めば痛い目に合うぞ」

 

一誠「…っ」

 

 

待ったをかけた一誠だが、アザゼルの説明を聞いて押し黙る。

曹操達を倒すのもいいが、八坂の救出が最優先であることを思い出したからだ。

いつになく慎重なアザゼルに緊迫感が漂う中、「あっ」と声をあげた我夢はアザゼルに訊ねる。

 

 

我夢「そういえば、部長達やXIGの支援は?」

 

イリナ「あっ、確かに!」

 

 

それを聞いてイリナも気付く。

いつもなら、エリアルベースに集まって石室の指示を受けるのだが、現在に至るまでそういった連絡すら着てない。

それについて、アザゼルは口を開き

 

 

アザゼル「実は伝えようとはしたんだが、現在、グレモリー領のとある都市部で旧魔王派の残党が暴動事件を起こしてな……それの対応に出ているようだ。XIGもその対策に追われている」

 

我夢「それって、大丈夫なんです!?」

 

アザゼル「まあまあ、安心しろ。報告によると、リアスのお母様とグレイフィアが出陣したそうだ。この作戦が終わる頃には鎮圧してるだろうさ」

 

 

心配する我夢を宥めたアザゼルはそう言いつつも苦笑する。

リアス、カテレア、グレイフィア……グレモリー家の女性陣の揃い踏みは味方であれば頼もしいが、相手にとっては地獄だろう。

特に一誠は夏休みにカテレアの恐ろしさの片鱗を味わっているので、身震いをしていた。

 

アザゼルはコホンと咳払いをして脱線した話を戻す。

 

 

アザゼル「とりあえず、外部からの支援は受けらねぇから俺達でやるしかねぇ。シトリー眷属は駅で待機、グレモリー眷属は八坂の救出。作戦は以上だ。京都は俺達が死守するんだ」

 

『了解!』

 

 

アザゼルの言葉に賛同し、全員は一斉に返事をする。

作戦会議を終えた一同は身支度をする為、一旦解散すると、それぞれの持ち場へと向かっていった。

 

────京都を救う。ただそれだけを胸に抱いて……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バスに乗り、京都駅のバス停に着いた一同。

流石に夜中に学生服で出歩く訳にはいかないので、全員XIGの隊員服を着ている。

皆、いつでも戦える気迫を出しており、準備は万端…

 

 

ロスヴァイセ「うっぷ……」

 

 

ただ一人を除いてだが。

ロスヴァイセは口元を手で抑えて、込み上げてくる吐き気と戦っていた。

一体どれくらいの酒を飲んだのか、未だ体調は優れなく、顔は真っ青になっていた。

皆、以前からロスヴァイセは残念美人だとは薄々思ってはいたが、ここまで酷いとは思いもしなかった。

 

 

匙「俺もいるぞっ!」

 

 

ロスヴァイセさんにお酒を与えるのはよそう──と皆が思う中、向こう側から匙がこちらへ駆け寄ってきた。

シトリー眷属である匙が何故、ここにいるのかに疑問を抱くと、我夢は匙に問いかける。

 

 

我夢「匙、どうしてここに?他の眷属と一緒じゃなかったのか?」

 

匙「…ん?ああ、アザゼルに言ってこっちに行かせてもらうように頼んだんだよ。俺のヴリドラの力はサポート向きだからな」

 

 

そう言ってニコッと不敵な笑みを浮かべる匙。

匙の持つ『神器(セイクリッド・ギア)』は相手の動きを止めるだけでなく、力を奪い取ることが出来る。

確かにデバフがいないグレモリー眷属にとっては重要な戦力である。

 

 

匙「……それに────」

 

我夢「っ!」

 

 

皆がこの同行に半ば納得していると、匙は神妙な顔でボソッと呟く。

その呟きをしっかりと耳にした我夢は目を丸くする。

 

 

我夢「何て言ったんだ?」

 

匙「い、いや!何でもねぇよ!ただの独り言だ」

 

 

血の色を変えた我夢はすかさず聞き返すが、匙はやや焦りながら誤魔化すが、我夢にはそれが嘘だとわかった。

聞き間違いでなければ、匙はこう言ったのだ。

 

────ここが俺の終着点かもな、と。

 

夏休みのレーティングゲームもそうだが、最近の匙はやたら危険なことばかりをやっているのを我夢は思い出す。

そのことは他のシトリー眷属の面々からも聞いており、まるで死に場所を探しているように見える。

 

 

九重「お主達!私も行くぞ!」

 

 

我夢が不安に思っていると、幼い女の子の声が耳に入る。

思考を一旦止めた我夢は声がした方へ体を向けると、裏京都へ待機しているはずの九重がいた。

 

 

一誠「九重!?」

 

九重「私も母上を救う!連れて行ってくれ!」

 

 

そう頼み込む九重。

とはいえ、ここから向かう先は敵地。何が起こるかわからない危険な場所だ。

 

しかし、九重は頑なに着いていこうとする意思を見せる。

どう断ればいいのか……皆が困惑していると、その後ろから大悟が遅れて駆け寄ってくる。

 

 

大悟「九重、ここにいたのか。みんな、ごめん。勝手に抜け出して……。さあ、帰ろう」

 

九重「嫌じゃ、嫌じゃ!私も母上を救いたいっ!」

 

 

そう言って大悟は連れて帰ろうとするが、九重は駄々をこねて頑なにこの場を離れようとしない。

そんな九重に大悟は両肩に手を置き、片膝をついて目線を合わせると、穏やかな口調で語りかける。

 

 

大悟「九重。助けに行きたい気持ちはわかる。でも、ここはみんなに任せよう」

 

九重「大悟。じゃが……」

 

大悟「大丈夫、この人達は強い。だって僕と君の友達じゃないか?きっとお母さんは帰ってくる………信じて待つのも立派な仕事だよ?」

 

九重「…」

 

 

大悟に諭された九重は顔を俯け、しばらく口を閉ざした後、コクンと頷く。

それは九重は自ら助けに行きたい気持ちを堪え、我夢達を信じることを表していた。

大悟はニコッと笑うと立ち上がり、九重の手を取ると、我夢へ顔を向ける。

 

 

大悟「我夢、それにみんなも頑張って。僕達は裏京都で待ってるよ」

 

我夢「ああ、任せて。けど、最後に1つだけ聞いていいかい?」

 

大悟「何?」

 

我夢「どうして僕やイッセーが悪魔だって知っても、昔と変わらず接してくれたんだ?」

 

 

我夢の問いに大悟は一瞬すっとんきょうな顔を浮かべ、う~んと声を唸らせると、答えが出たのか穏やかな顔に変わると、口を開く。

 

 

大悟「そりゃあ、最初は驚いたけど我夢は我夢、イッセーはイッセー、イリナはイリナ。そして、僕はそんな君達の幼馴染み。どんなに姿形が変わっても、それは変わんないからだよ」

 

我夢「大悟…」

 

 

大悟の言葉にジーンと胸を打たれる我夢。

種族が変わっても友達として信じ続ける大悟の器の大きさに我夢や一誠、イリナだけでなく、他の面々も同じ反応を見せていた。

 

一誠は左手首のXIGナビを開くと、時計は作戦開始時刻に差し迫っていた。

 

 

一誠「んじゃあ、そろそろ行くか。九重。お前の母ちゃんは俺達がきっと取り戻してみせるからな!」

 

九重「うむ、頼んだぞ!」

 

 

そう言って一誠が九重と約束の握手を交わそうとした瞬間だった。

体験した覚えのある生ぬるい感触を持った霧が全員の体を包み込んでいった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我夢「……ん?ここは?」

 

 

霧が晴れ、次に我夢の視界に映ったのは地下鉄のホームだった。

近くを見渡すと、駅名プレートには『京都』と書かれていることから、ここが京都駅の地下ホームということがわかった。

 

ホームは人気がなく静まり返っているが、誰か自分以外に飛ばされた仲間がいないかと一歩前へ踏み出した時、少し離れたところから騒がしい声が聞こえてきた。

 

 

イリナ「どういうことなの!?京都駅にいたと思ったら地下鉄にいるわ!またいきなり転移させられたのかしらっ!……あっ、我夢君!いたのねっ!」

 

 

我夢を視界に捉えたイリナはドタドタと足音を立てながら猛スピードで接近してくる。

 

 

我夢「や、やあ、イリナ。ところで他のみんなは見なかった?」

 

イリナ「あなた以外は見かけなかったわ。きっと他のみんなは別の場所にいるんでしょうね。でも、我夢君がいて安心したわ!1人だと心細かったんだもん」

 

我夢「とてもそうには見えないけど……」

 

 

異変が起きても変わらないイリナのハイテンションぶりに苦笑いを浮かべる我夢。

といってもこれがイリナのアイデンティティーであり、長所なので逆に安心したりする。

 

 

《ピピッ》

 

 

イリナと合流して間もなく、我夢のXIGナビから通知音が鳴る。

我夢はXIGナビを開くと、通信は木場からのものだった。

 

 

我夢「こちら、我夢。木場君、無事か?」

 

《木場「こちら、木場。大丈夫、問題ないよ。こちらは『京都御所』にいる。匙君とロスヴァイセさんも一緒だ。そちらは?」》

 

我夢「こっちはイリナと一緒にいる。見たところ、京都駅の地下ホームに飛ばされたみたいだ。他のみんなの現在位置は?」

 

《木場「うん。我夢君にかける前に確認したけど、イッセー君とアーシアさんは『京都国際漫画ミュージアム』、ゼノヴィアは大悟さんと九重姫と一緒に『京都市歴史資料館』にいるようだよ」》

 

我夢「っ!?大悟と九重が…!?」

 

 

九重と大悟がこの異空間にいると知り、目を見開く我夢。

飛ばされた時、近くにいたことからもしやと思ってはいたがその不安が的中するとは…。

ゼノヴィアが着いているとはいえ、まだ幼い九尾の九重に一般人の大悟にとっては危険で、命を落とすかもしれない場所には変わらない。

 

 

我夢「……そうか。みんな別々の場所に飛ばされたのか……早く合流しなきゃ────ん?いや、もしかしてっ!」

 

《木場「どうしたんだい?」》

 

我夢「ちょっと確認したいことがあるんだ」

 

 

何かに気付いた我夢はリアスから借りた高性能通信デバイスW.I.T.を取り出すと、モニターに京都駅から二条城周辺の地図を表示させる。

地図上で皆が飛ばされた場所を目で追っていくと、意外な点が判明する。

 

 

我夢「木場君、わかったよ。みんな飛ばされた場所は二条城を中心とするエリア内に入っている…!」

 

《木場「…っ、そうなのかい?」》

 

我夢「ああ。恐らく、敵はレーティングゲームのゲームエリアと似た技術で作り出した疑似空間に迷い込ませたんだ。この空間は町丸ごと再現されている……もしかしたら、町並みも現実のものと大差ないと思う」

 

 

推測通り、我夢達が現在いる空間は英雄派がレーティングゲームのゲームエリアの技術を用いて作り出された空間だった。

どこからその技術が漏れたかはわからないが、今いる空間が現実のものをコピーしたものであれば、早いうちに再会できると我夢は踏んだのである。

 

 

《木場「うん、わかったよ。じゃあ、二条城に集合しよう。イッセー君達には僕が伝えとくよ」》

 

我夢「了解。じゃあ、ゼノヴィア達には僕が。念の為、アザゼル先生にも連絡をしてみる。繋がったら追って連絡するよ」

 

《木場「わかった。気を付けてね」》

 

我夢「ああ」

 

 

短く返事して木場との通信を終えた我夢はゼノヴィア達に安否を確認すると、二条城へ向かうように伝えた。

その後、外にいるアザゼルにも連絡を試みるが、この空間に流れる特殊な力に解き消されるのか全く繋がらなかった。

 

ひとまず、我夢は連絡で得たひと通りの流れをイリナに説明していると、

 

 

「ごきげんよう!」

 

「「っ!」」

 

 

と、奥のホームから声が聞こえ、我夢とイリナは振り向くと、黒い軍服のようなものに身を包んだ男を先頭に、後ろに似た服装をした男女数人と気味の悪い異形の怪物数匹がこちらへ向かってきていた。───英雄派である。

我夢達が身構える中、集団は目と鼻の距離で足を止めた。

 

 

我夢「英雄派か……。それに、お前は前に取り逃がしたやつか」

 

「ははっ!かの伝説を継ぐウルトラマン殿に覚えてもらえて光栄ですな!」

 

 

そう返事して不敵な笑みを浮かべる男に我夢は目を鋭くさせる。

我夢は覚えていた。この男が数日前に冥界であった英雄派の襲撃の指揮を取っていた人物ということを。

 

 

我夢「(何だ?この異様なまでの自信は?)」

 

 

我夢は男から感じられる気迫や自信に怪訝に思っていた。

以前にあった時はそこまで強く感じず、前に対峙した際は一目散に逃げ出していた。

 

しかし、今は以前の姿が嘘のように思えるくらい成長しているとひしひしと伝わっていた。

警戒した我夢はイリナにも「油断するな」と耳打ちして警戒心を強めさせていると、男は不敵な笑みを浮かべたまま話しかける。

 

 

「ここから先は行かせない。我々全員と遊んでもらうまではね」

 

イリナ「何よそれー。勝手に巻き込んどいて自分勝手じゃない。痛い目に合いたくなかったら通しなさい」

 

「残念だが、そいつは無理な話だ。我々のリーダーのご命令でね…。それに()()()と一緒にしたらそちらが痛い目に合いますぞ」

 

 

男の言葉にイリナが首を傾げていると、男の周りに影が集まってくる。

男から放たれる重圧に我夢達が更に警戒を強める中、男は低い声音で一言発する。

 

 

「……禁手化(バランス・ブレイク)

 

 

その一言をキーに男のもとに集まっていた影が全身を包み込む。

全身を包みこんだ影は徐々に形を変えていき、全身を纏う鎧へと変化した。

 

 

「これが俺が得た新しい力だ」

 

 

男は仮面の下でほくそ笑む。

我夢はアンチモンスターだけでなく、何故何度も構成員を襲撃させたかが何となく理解した。

 

 

イリナ「結局、強行突破するしかないって訳ね」

 

我夢「やるしかないのか…」

 

 

イリナと我夢が面倒そうに呟きながら、お互い武器を構える。イリナは光の剣、我夢はジェクターガンだ。

 

 

我夢「いくぞ!」

 

イリナ「うんっ!」

 

 

その言葉が開戦の合図となり、両陣営は戦いを始めた。

 

同じ頃、我夢とイリナだけでなく、各地にいる一誠達も一斉に戦いを始めた。

二条城でみんなと再会する為に───それを胸に秘めて……。

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、京都市歴史資料館に大悟、九重と一緒に飛ばされたゼノヴィアは道路に出て、英雄派の構成員とアンチモンスターの集団と戦いを繰り広げていた。

 

 

ゼノヴィア「はあぁぁぁーーーっ!!」

 

ドォォォンッ!!

 

『ぐあっ!』

 

『グギィアァァッ!!』

 

 

飛び上がったゼノヴィアは真上からデュランダルを横へなぎ払い、斬撃を飛ばして構成員とアンチモンスターを一掃すると、片膝をついて着地する。

 

 

ボォッ!

 

ゼノヴィア「っ!」

 

 

着地した瞬間、10個もの火の玉が飛んでくるが、ゼノヴィアはデュランダルの刀身で難なく防ぐと、駆け出して一気に接近し、構成員を斬り捨てた。

 

 

ザッザッザッ…

 

ゼノヴィア「ふぅ…」

 

 

倒したところを補充するように増援される敵の集団に息を吐くゼノヴィア。

ここまで苦戦せず、構成員やアンチモンスターを楽々と倒しているゼノヴィアだが、動き辛い戦いを強いられていた。

その理由は自分の後ろにある家屋に隠れさせている大悟と九重を敵の攻撃から守っていたからだ。

 

狭い資料館から外へ出たはいいものの、戦えない大悟と九重を庇いつつ、大量の集団と戦う……。

更にデュランダルの性質上、下手な使い方をすれば大悟達を攻撃に巻き込んでしまう恐れがあるので、力をセーブしないといけないので非常に厳しい状況である。

 

 

「グギィアァァッ!」

 

ゼノヴィア「はっ!」

 

ザシュッ!

 

 

どうすればいいものかと考える暇もなく飛びかかってきたアンチモンスターを斬り伏せるゼノヴィア。

───とりあえず片付けるしかない。そう決めたゼノヴィアは上空から雨のように撃ってくる構成員の魔力弾をかわしながら目前の電柱に向かって飛びかかり、壁蹴りの要領で勢いよく飛び上がると、上空に佇んでいた構成員の群れを斬り落としていく。

 

 

『ギャアァァーーー!!』

 

ゼノヴィア「くらえっ!」

 

 

断末魔をあげ、地へと墜ちていく構成員。

家屋の屋根へ降りたゼノヴィアは地上に向かってデュランダルを軽く左右に振るい、光の斬撃を飛ばす。

 

 

ドォォォーーーーーーン!!

 

『グギィアァァッ!!』

 

『うわあぁぁぁーーーーっ!!』

 

 

力をセーブしているとはいえ、伝説の聖剣から放たれる斬撃に地上にいた構成員とアンチモンスターは吹き飛ばされていく。

これで60人ほどいた敵も20人ぐらいまで減り、敵の士気もゼノヴィアの猛攻を前に怯んでいた。

このまま片が付くと思った矢先、

 

 

「動くなっ!」

 

ゼノヴィア「…っ!」

 

 

地上の道路から女の声が聞こえ、ゼノヴィアは視線を下ろす。

そこには隠れていたはずの九重が構成員の女に胴に回した腕で抱えられ、首もとを短剣で突き付けられている光景があった。

ゼノヴィアは内心「しまった」と歯を噛み締めていると、女は九重を人質に要求を出す。

 

 

「今すぐ武器を捨てろ。無駄な抵抗をするな。さもなくば、狐の姫君の命はないぞ!」

 

九重「す、すまぬ……捕まってしまった」

 

ゼノヴィア「……くっ!」

 

 

面目なさそうな顔でゼノヴィアに謝る九重。

敵の卑怯な手に憤慨するゼノヴィアだが、このままだと九重の命はない。

デュランダルを投げ捨てると、ズシンと物音を立てて道路にめり込む。

それを見て静かにほくそ笑んだ女は近くの構成員2人にアイコンタクトを送ると、魔法で作り出した縄でゼノヴィアの両手首を拘束すると、無理矢理地上へ引きずり落とす。

 

 

ゼノヴィア「ぐっ!?」

 

 

勢いよく地上へ叩きつけられた痛みに顔を歪ませるゼノヴィア。

その間にダメ押しとばかりに閉じた両足も縛られ、ますます身動きが取れなくなった。

 

 

「ふふっ、お似合いじゃないか」

 

ゼノヴィア「くう…っ!」

 

 

手足を封じられた様子を嘲笑う女をゼノヴィアは睨め付ける。

今すぐにでも飛びかかってやりたいが、魔法で出来た縄は想像以上に固く、抜け出すのは至難の技だ。仮にもし、出来たとしても九重が殺されるデメリットの方が大きい。

何も出来ない悔しさに唇を噛み締めるゼノヴィアだが、目を配らせても大悟の姿がどこにもないことに気付いた。

 

 

ゼノヴィア「貴様っ!大悟をどうした!」

 

「大悟…?ああ!あの男なら邪魔するものだから痛めつけてやった。イケメンだから見逃してあげようとも思ったのが、あまりにもしつこいのでな……今頃のたれ死んでるかもな」

 

ゼノヴィア「貴様ァ──!ぐあぁぁぁぁーーーーーっ!!?」

 

 

嘲笑う女に頭にきて声を張り上げるゼノヴィアだったが、突然体に走る激痛に襲われ、悲鳴をあげる。

全身が内側から焼き焦げるかのような激痛にゼノヴィアは困惑していると、ケラケラと笑う女が説明する。

 

 

「口には気を付けた方がいい。さっき、お前を拘束している縄に微量ながらアンチモンスターの光を流した。光が弱点の悪魔にとっては雀の涙でも痛いらしいからな」

 

ゼノヴィア「はぁー…!はぁー…!」

 

 

大きく息を切らすゼノヴィア。激痛のあまり、大粒の汗をかき、涙が滲んでいた。

その様子をニタニタして見物していた女は

 

 

「さて、このか弱き姫君を始末してしまいましょう」

 

ゼノヴィア「なっ!?その子は関係ない!すぐに放すんだっ!」

 

「…うん?抵抗するなとは言ったが、()()()()()()とは言ってない」

 

ゼノヴィア「この外ど────があぁぁぁぁーーーーーーーっ!!?」

 

九重「ゼノヴィアッ!おのれ!放せっ!」

 

 

ゼノヴィアは抗議の声をあげようとするが、拘束されている縄から光が流れ込み、言葉を遮られる。

全身の走る激痛に苦悶の叫びをあげる中、女はジタバタと腕の中でもがく九重の小さな抵抗を鼻で笑うと、首もとに向けていた短剣を天高く振り上げる。

 

 

「見届けよ。何も出来ず幼き命が死ぬ様をね」

 

ゼノヴィア「や、やめろォォーーーーッ!!」

 

 

制止するゼノヴィアを無視して女は短剣を振り下ろす。

短剣は九重の胸元目掛けて急降下していく。

ゼノヴィアは抜け出そうともがくが、どうやってもほどけず、間に合わない。

まさにピンチ。そんな時

 

 

ピュッ!

 

「痛っ!?」

 

九重「っ!」

 

 

どこからか飛んできた1本の短剣が女の手に掠る。

女は突然の攻撃に狼狽えていると、拘束が緩んだ隙に九重は脱出し、ゼノヴィアのもとへ駆け寄る。

 

 

「誰だっ!」

 

 

女は手の甲から溢れる血を抑えながら奇襲をかけた方向へ叫ぶ。

飛んできた短剣は英雄派の構成員が基本武器として配給されているものだ。

裏切り者かと女が思っていたが、路地の闇から現れた人物を見て驚愕する。

 

 

「っ、お前は…!」

 

大悟「……」

 

 

朝焼けの様に明るい茶髪、180センチの長身を持った男───大悟だった。

女が驚くのも無理はない。マトモに立てない程に痛め付け、その体は傷だらけの筈だったからだ。

しかし、目の前にいる大悟は服装こそ汚れや傷痕が目立つが、体には()1()()()()()()

 

更に額には光輝く()()()()()が浮かび上がっており、雰囲気も異様に感じる程、変化していた。

無言の大悟から発する気迫を前に構成員達はたじろぎ始める。

 

 

『ゴギャアァァァッ!!』

 

 

大悟の気迫に押されていると、アンチモンスターの集団が背後から襲いかかろうと駆けてきていた。

 

 

九重「っ、大悟っ!」

 

大悟「……」

 

ゼノヴィア「…後ろだっ!避けろ!」

 

 

九重が悲鳴に似た叫びをあげるが、大悟は微動だにしない。

ゼノヴィアも声をかけるが、それでも大悟は静かに佇むだけだった。

 

 

『グギィアァァッ!!』

 

 

避けようともしない大悟にゼノヴィアと九重が緊迫する中、一斉に飛びかかったアンチモンスターの凶刃が降り注ごうとした瞬間

 

 

大悟「──ハッ!!」

 

『ゴギャアァァァッ!?』

 

『!?』

 

 

大悟の振り返り様に放った回し蹴りを受け、壁に叩きつけられたアンチモンスター達は消滅した。

しかも、()()()()()でだ。

戦闘経験がないただの一般人がアンチモンスターを軽々と倒した光景に敵味方問わず目を丸くする。

 

 

「…ひ、怯むなっ!かかれ!」

 

 

動揺する構成員達だったが、先程の女の指示を受けて気持ちを切り換えると、魔力弾と光の矢を放つ。

数多の飛び道具が飛び交う中を大悟は常人を超えたスピードで駆け抜けると、構成員達を拳や蹴りで地に沈めさせていく。

 

 

『がっ!?』

 

『ぐあっ!?』

 

 

構成員達も何とか当てようと攻撃するが、神速となった大悟を捉えることは出来ず、1人…1人…また1人と倒されていく。

目の前で繰り広げられる光景にゼノヴィアと九重は圧巻され、言葉が出なかった。

 

 

九重「(常人を超えた力、額に光る紋章………。やはり、あの話は嘘ではなかった!)」

 

 

まるで別人のようになった大悟を見て、九重は従者の話は嘘ではないと確信する。

謙遜か本当に忘れていたかの真偽は不明だが、従者を助けたのは大悟で間違いないことはハッキリとわかった。

 

そうこうして戦いを見守っていると、19人ぐらいいた構成員とアンチモンスターの軍勢は1分も経たないうちに大悟によって全滅された。

術者が倒されたことで、ゼノヴィアを拘束していた縄もいつの間にか消滅していた。

 

 

「アワワ…」

 

 

この光景を前にたった1人残された女は口をあんぐりと開き、恐怖と驚きのあまり、腰を抜かしていた。

大悟は女を視線に捉えると、ゆっくりと歩を進め、女の目前に立つ。

 

 

「いっ、命だけは───」

 

トンッ

 

 

大悟は女が命乞いをする間も与えず、首筋に手刀を打ち込んで気絶させた。

倒れ込む女を支え、地面に優しく寝かした大悟は今度は驚き止まぬゼノヴィアのもとへ近寄ると、倒れている彼女の背中に触れる。

 

 

ゼノヴィア「な、何を…?」

 

大悟「……」

 

 

突然の行動に怪訝になるゼノヴィアを尻目に大悟は背中に当てる手の力をグッと強める。

すると、穏やかな光が手からゼノヴィアの全身に伝わると、身体中の痛みが和らいでいく……。

大悟が手を離したタイミングでゼノヴィアは起き上がってひと通り体を見ると、受けた傷は全て何事もないように塞がっていた。

 

 

ゼノヴィア「…傷がない。大悟、君はどこでこの技術を───」

 

大悟「──ん?え、ええ!?何なんだよ、これ!?」

 

 

ゼノヴィアはアーシアに負けず劣らずの回復能力をどこで手に入れたのか訊ねようとしたが、ハッと意識が戻った大悟は周囲を見て愕然とした。

まるで何があったかわからないといった反応だ。

 

 

大悟「何これ!?もしかして、君達が…?」

 

九重「いいや。こやつらは全て、大悟が倒したのじゃ」

 

大悟「僕が…?いやいやいや、あり得ないよ!喧嘩だって出来ないくらい弱いから!」

 

ゼノヴィア「…覚えていないのか?」

 

大悟「ああ、全然。……ただ、ぼんやりとしていてことしか……」

 

 

先程までの自分の行動を全く覚えていない大悟にますます謎が深まるゼノヴィアと九重。

よく見れば、額に浮かんでいた菱形の紋章は消えていた。

 

九重はそれなりに腕が立つ人、ゼノヴィアはこちら側の世界を知る一般人くらいしか認識していなかったが、先程の一部始終でそれが覆った。

思えば、初めて会った時から普通ではないと睨んでいたが、それがますます深まっていくのをゼノヴィアは実感した。

 

ますます謎が深まる大悟だが、考えるのを後回しにしたゼノヴィアは行動を促す。

 

 

ゼノヴィア「…と、とりあえず先を急ごう。ここでジッとしてても仕方がない」

 

大悟「そうだね。ごめん、僕が非力なせいで君に負担を…」

 

ゼノヴィア「あ、ああ……」

 

 

申し訳なさそうにする大悟に苦笑いで返すゼノヴィア。

─────本当に何も覚えていないのか。

戦闘時と今の大悟の雰囲気の違いように戸惑うゼノヴィアだったが、ひとまず、先へ進むことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その一方で、ゼノヴィア達が移動し始める姿を近くの物陰から怪しげな眼差しで眺める怪人───ジャグラスジャグラーの姿があった。

ジャグラーは品定めするように大悟を見つめると、一言呟く。

 

 

ジャグラー「ふぅん……なるほど。そういうことか……」

 

 

大悟から得た情報で何かを確信したジャグラー。

その声音は純粋な興味、もしくは何かの企みを思いついたとも取れるものだった。

 

 

ジャグラー「……俺も本格的に動くとするか」

 

 

ジャグラーは続けて呟くと、闇のオーラを纏い、目にも止まらぬ速さで何処かへ立ち去っていった……。

 

 

 

 

 




次回予告
※(イメージBGM:ウルトラマンティガ次回予告BGM[初期])

遂に二条城に辿り着いた我夢達!
待ち構える曹操は八坂の力を悪用しようとしていた!
深夜の二条城を舞台に曹操一味との激しい死闘が展開する!

次回、「ハイスクールG×A」!
「月下の死闘」!
お楽しみに!

D×Dのキャラにパワーアップアイテムを授ける?

  • 授けない
  • 小猫に授ける
  • 朱乃に授ける
  • 木場に授ける
  • サイラオーグに授ける
  • その他(リクエストボックスにコメント)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。