ハイスクールG×A   作:まゆはちブラック

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英雄派首領 曹操
英雄派 ゲオルク
英雄派 ジークフリート
英雄派 ジャンヌ
英雄派 ヘラクレス   登場!


第55話「月下の死闘」

地下鉄のホームに襲いかかってきた集団を蹴散らした我夢とイリナはその後も向かってくる敵を退け、何とか二条城に辿りついた。

 

 

フッ…

 

「「あれ?」」

 

 

その瞬間、周りに立ち込めた霧がなくなったのを感じた。不思議に思った2人は振り向くと、霧はバリケードのように漂っており、それ以上我夢達がいる地点へ迫ってくる気配はなかった。

 

 

イリナ「霧があそこにあるってことは……ここって現実ってことかしら?」

 

我夢「ああ。多分、台風の目のようにこの二条城だけは霧を張ってなかったんだろう。わざわざここが現実空間である必要はわからないけど……。さあ、急ごう」

 

イリナ「うん!」

 

 

イリナは頷くと、2人は再び走り始め、二条城の東大手門に向かった。

そこにはすでに散り散りになっていた他の面々が集まっていた。

 

 

一誠「…おっ!我夢にイリナ!無事だったか?」

 

イリナ「ええ、何とかなったわ~」

 

我夢「君達も無事で良かったよ。大悟、九重も大丈夫そうだね」

 

大悟「うん。ゼノヴィアさんが僕達を守ってくれたから」

 

イリナ「さっすがゼノヴィア!やるじゃない!」

 

ゼノヴィア「…あ、ああ……」

 

 

イリナをはじめ、皆によくやったと賞賛されるゼノヴィアは固い表情で返す。

ゼノヴィアは先程見た大悟の常人を越える力に頭から離れなかった。

以前からおかしいとは思ってはいたが、彼が普通の人間ではないのは疑惑からほぼ確信へと変わっていた。

 

 

我夢「そういや、ロスヴァイセさんと匙は?」

 

 

ゼノヴィアがそんなことを考えていると、我夢はロスヴァイセの姿が見えないことに気付く。

木場と一緒にいる筈だけど……。我夢が怪訝に思っていると、木場がチョンチョンと肩を叩く。

 

 

木場「我夢君。あそこ」

 

我夢「ん?……あ」

 

 

木場が指差す方───そこには電柱の陰で嘔吐するロスヴァイセと心配そうに背中を擦る匙の姿があった。

我夢がポカーンと眺めている中、木場は苦笑しつつ補足を入れる。

 

 

木場「僕達も敵と戦闘したんだけど、激しく動き回ったせいで……」

 

我夢「ああ~」

 

 

それを聞いて、みなまで言わなくともどうなったか我夢はわかった。

京都についてから目立つロスヴァイセの奇行の数々に我夢は何とも言えなかった。

 

何とも言えない空気が漂う中、我夢はアッと思い出したのような声をあげる。

 

 

我夢「そういえば、ここに来る道中の敵、少なくなかった?」

 

木場「あ、言われてみればそうだね」

 

 

我夢の率直な疑問に木場も同意見だと頷く。

ここまで楽々進めたのも、道中で襲いかかってきた敵が少なかったからである。

意図的に少なくしたのか、それとも何者かの仕業か……次々と疑問が浮かぶが、とにかく誰1人抜けず無事だったのは幸いである。

 

 

ゴゴゴゴゴ…

 

 

皆、ひとまずの安否を喜びあっていると、巨大な門が鈍い音を立てながら開いた。

開かれた門から見える城内は薄暗く、中の様子はよくわからない。まるで、獲物を飲み込まんとする怪物の大口のようだ。

 

 

木場「あちらも手厚く歓迎してくれてるみたいだね」

 

一誠「全くだ」

 

 

木場の皮肉に一誠は呆れた顔で返す。

 

その後、一同は罠が仕掛けられてる可能性に警戒しつつ、二条城の敷地へ入っていく。

そんな中、立ち止まった我夢は後ろで見送る大悟へ振り向く。

 

 

我夢「大悟。君は九重と一緒にここで待っていてくれ。ここから先は危険だ……」

 

 

我夢は真剣な顔で大悟に頼みを入れる。

ここから先は戦場──何が起こるかわからない。

ここが危険な場所には変わりないが、敷地内に同行させるよりも城の外で待機させておくのが比較的安全だと踏んだからだ。

 

我夢の思いをすぐに察した大悟は頷く。

 

 

大悟「わかった。この近くの安全な場所に隠れているよ」

 

九重「我夢。母上を頼むぞ」

 

我夢「任せてくれ」

 

 

九重にそう言われた我夢は九重と約束の握手を交わす。

───絶対に助ける。誓った決意を改めて胸に刻み、我夢は他の皆と共に敷地内へ足を運んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

敷地内へ入った我夢達は闇夜で薄暗い道を進んでいくと、古い日本家屋が建ち並び、美しく整備された庭園へ出た。

設置されたライトに照らされて幻想的な情景が広がっている。

 

 

曹操「待っていたよ」

 

『っ!』

 

 

警戒しながら歩を進めていると、上から呼びかける声が聞こえる。

我夢達は見上げると、前方の建物の屋根に件の首謀者───曹操が見下ろしていた。

その周りの建物の陰から構成員らしき人影も見えた。

 

曹操は聖槍の柄でトントンと首を軽く叩くと、話し始める。

 

 

曹操「よくあれだけの軍勢を切り抜けてきたね。あの中には禁手(バランス・ブレイカー)使いが何人かいた筈だが、それを難なく突破する君達はまさに驚異的だ」

 

一誠「はっ、全然大したことなかったぜ!あんなんで時間を稼ごうたって、俺達には無駄だっ!」

 

 

ビシッと指差しながら言い放つ一誠。

確かに中には厄介な相手もいたが、どれも我夢達を止められるレベルではなく、しかも人数も少なかった。

 

曹操は軽く息を吐くと、首もとに乗せていた聖槍の石突きを足下の屋根に置き

 

 

曹操「まあ、あれぐらい楽に倒せなきゃ俺達の相手は務まらないからな。さて、今宵の宴の準備を始めるか…」

 

 

そう言って曹操は聖槍の石突きをトンと屋根に叩くと、曹操の傍の足下から魔法陣が現れる。

我夢達が警戒する中、魔法陣から姿を現したのは、狐耳と九つもの尻尾を持った着物の女性だった。

だが、曹操達に何かしらの催眠をかけられたのか、瞳は虚ろで顔も無表情だ。

それを見てこの人物が誰かを察した一同を代表するかのように我夢は叫ぶ。

 

 

我夢「曹操!もしかして、その人は八坂さんか!?」

 

曹操「その通り。我々の実験には九尾の御大将の力が必要不可欠なんでね」

 

一誠「何が実験だ!!ふざけんなっ!!さっさと返しやがれっ!!」

 

曹操「まあまあ、落ち着け。これから行う実験についてわかりやすく説明してやるから聞いてくれ」

 

 

怒りを露にする一誠に曹操は不敵な笑みを浮かべながら言い宥めると、今回の事件を起こした目的について話し始めた。

 

 

曹操「京都には様々な気脈が流れる都市ということは君達も知っているだろう?この京都自体がパワースポットであり、普通ならあり得ない現象さえも起こすことが出来る。都市の力とそれを管理する九尾の狐を使えば、こことは()()()()()()()()()()()()だって呼び寄せることさえもね……」

 

我夢「異なる空間に……?それは誰なんだ?」

 

 

我夢が問いかけると、曹操はその存在の名を告げる。

 

 

曹操「グレートレッド………。名前ぐらいは聞いたことあるだろう?次元の狭間を飛び回る巨大なドラゴンさ。奴ほどの存在は現実空間でなければ、呼び寄せるのは難しい」

 

 

グレートレッドについては我夢達は以前、アザゼルから聞いている。

その実力はオーフィスに勝るとも劣らないとされている強力なドラゴンだが、普段は棲み家である次元の狭間を飛び回るのが好きなだけで何もしなければ無害な存在だ。

 

 

我夢「グレートレッドを呼び寄せてどうするつもりなんだ?」

 

曹操「とりあえずは捕獲するつもりさ。うちのボス───オーフィスにとっては邪魔なんでね」

 

 

オーフィスの目的は故郷である次元の狭間に帰ること。

ただそれだけだ。

その願いを成就させようとするのはわかったが、グレートレッドを呼び出すだけでなく、捕獲するのはどうにも怪しい。

 

 

我夢「お前の目的はわかった。だが、そんなことをすれば、ここに住む人や世界中の人達が大変なことになるかもしれないんだぞ?」

 

曹操「人生はギャンブルってよく言うだろう?運が良いときもあれば、悪いときもある。もし、最悪な場合が世界に起きても、運が悪いって割りきればいいさ」

 

我夢「っ!」

 

 

曹操の言葉に我夢はわかった。

根本的に考えや認識が違う、と。

平和的観点や思想、全て何もかもがわかりあえないのだ。

これだけ周りを傷つけて尚、更に傷口を深くさせようとする考えに我夢は憤りを感じていると、曹操は聖槍の石突きで再び屋根をトンッと叩く。

すると、

 

 

八坂「…っ!?う……うぅぅ……うあぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーッッ!!!」

 

 

突如苦しみだした八坂が悲鳴をあげると、体が姿を変えながら巨大化していく。

 

 

曹操「おっと」

 

 

巨大化する八坂の重みによって崩落していく建物から曹操は巻き込まれまいと地上へ降り立つ。

崩落した建物を押し潰し、八坂は九つの尾を持つ巨大な金色の狐に変貌した。

 

 

「────オォォォォォォォォンッッ!!」

 

 

八坂は正気がないのか、夜空に向かって遠吠えをあげる。

伝説の妖怪───九尾の狐の迫力に我夢達は圧巻され、開いた口が塞がらなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

九重「母上!?母上じゃ!」

 

大悟「何だって!?」

 

 

その頃、城の外で待機していた九重と大悟も変貌した八坂の本来の姿を目の当たりにしていた。

驚く九重からもらした事実に大悟は目を丸くする。

 

 

九重「間違いない、あの妖怪は母上じゃ!」

 

大悟「あれが伝説の妖怪……九尾の狐………」

 

 

大悟は今、視界に映る八坂の姿に圧巻される。

それもその筈。歴史が好きな大悟は勿論、日本の妖怪についても学んでいたが、まさか伝説上の妖怪といわれる九尾の狐を目の当たりする日がくるとは思いもよらなかっただろう。

 

 

九重「じゃが、母上があの姿になるということは余程身に危険が迫っているということじゃ。それにとても苦しそうじゃ……」

 

 

月夜に吠える八坂を見て心配そうに呟く九重。

大悟には八坂が全く苦しんでいる様子が伺えないが、気を探知できる九重──それに親子にしかわからないところがあるのだろう。

 

顔を曇らせる九重を見かねた大悟は安心させる為にそっと手を握る。

握り返してくる震える小さな手を包み、大悟は再び城の方を見上げる。

 

 

大悟「(我夢……イッセー……イリナ……)」

 

 

大悟は不安に押されつつも、彼らの勝利を信じて祈った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、二条城敷地内。突如、変身した八坂に圧巻される我夢だが、すぐに気を取り戻して叫ぶ。

 

 

我夢「曹操!八坂さんに何をしたッ!」

 

曹操「計画がスムーズにいくようにちょっとした催眠をかけたのさ。我々の手中に収めるのは手こずったが、今やリードに繋がれた犬同然さ」

 

我夢「何てことを…!」

 

曹操「とりあえず実験を始めよう。ゲオルク!」

 

 

憤る我夢達をよそに曹操は後ろにいた魔法使いのローブを纏った眼鏡の男───ゲオルクが頷くと、隣に出る。

 

 

曹操「九尾の狐に京都中のパワースポットの力を注ぎ、グレートレッドを呼び出す準備をしてくれ」

 

ゲオルク「わかった、すぐにとりかかろう。ただ、その間、制御に集中する必要があるので、自分は無防備になってしまうが……」

 

曹操「構わんさ。俺達が護れば問題ない。お前は気にせずやってくれ」

 

ゲオルク「了解」

 

 

曹操の了承を得たゲオルクは八坂に向けて手を突き出す。

すると、八坂の足下に巨大な魔法陣が現れると、発した光が八坂を包みこむ。

その瞬間──

 

 

「オォォォォォォォォンッッ!!」

 

 

八坂が苦悶の叫びをあげる。

目を大きく見開き、全身の毛が逆立って如何にも危険で苦しそうなことがわかる。

八坂の異変に緊張が走る中、我夢達の前へ出た匙は振り向き、口を開く。

 

 

匙「高山。あの九尾の御大将は俺に任せてくれ。無傷で済ませるなら、俺のヴリドラがうってつけだ」

 

我夢「匙、無茶はするなよ?まずいと思ったら、一旦引いてくれ」

 

匙「ハハッ、お前こそヴリドラの力を舐めるなよ?あれから更に修行を重ねて、新しい力を身につけたんだ。そう簡単にはやられねぇよ。それに戦闘ってのはいつも死と隣り合わせ………覚悟くらい出来てるよ」

 

 

心配する我夢にそう言った匙は八坂のもとへ走り出す。

走る最中、匙の体は黒い炎に包まれ、次第に大きく燃え上がっていく。

 

 

匙「龍王変化(ヴリドラ・プロモーション)』ッッ!!

 

 

匙がそう叫ぶと、体を包んだ黒い炎は大きくなりながら形をなしていき、細長い黒い東洋の龍へと変身した。

黒龍へと変身した匙は体から発した炎で八坂の周囲を囲むと、真正面から対峙する。

 

 

「ジャァァアアアアッ!!」

 

「オォォォォォォォォンッッ!!」

 

 

互いに標的を捉えた匙と八坂は雄叫びをあげる。

九尾の狐と黒龍───巨大生物同士の大決戦を始めた。

 

大地を揺らす程の激戦を横に曹操は我夢達を品定めするように見ると、不敵な笑みを浮かべながら話しかける。

 

 

曹操「さてさて、隣が盛り上がっているところだ。俺達もそろそろ始めようじゃないか?ジャンヌ、ヘラクレス」

 

ジャンヌ「はいはーい」

 

ヘラクレス「おぉう!」

 

 

曹操の呼び声に応じた男女が前に出る。

レイピアを持った金髪の西洋人らしき女性がジャンヌ、2mを超える体躯を持つ巨体の男がヘラクレスだ。

 

 

曹操「名前からわかるが、彼らも英雄の意思を継ぐものだ。お前達、どれとやる?」

 

 

曹操に訊ねられた2人は沈黙し、すぐに決まると口角をあげる。

 

 

ジャンヌ「じゃあ、私は天使ちゃんにしようかな。可愛い顔してるし」

 

ヘラクレス「俺はそっちの銀髪の姉ちゃんだな」

 

 

ジャンヌはイリナ、ヘラクレスはロスヴァイセを指名する。

戦う相手に視線を送った両者は戦う場所を変えるべく、二条城内の各所に散る。

 

 

曹操「ジークフリート、お前はどうする────って訊くまでもないか……」

 

 

次に曹操は後ろに控えていた男──ジークフリートに訊ねようとしたが、ジークフリートは既に抜き取った剣の切っ先を指名相手に向けていた。

切っ先の指す方角には木場とゼノヴィア……彼らを対戦相手に決めたようだ。

相手を見定めた3人はそのまま自分達が戦う場所へと散った。

 

 

曹操「さて、残ったのは俺と君達か。ウルトラマンガイアにウルトラマンダイナ……今夜のメインディッシュとも言ってもいいな」

 

我夢「イッセー、行くぞ!」

 

一誠「おう!」

 

 

我夢の呼び掛けに応じた一誠はリーフラッシャーを取り出し、我夢もエスプレンダーを取り出す。

2人は各々の変身アイテムを前へ突き出すと、等身大のウルトラマンへと変身した。

それを見た曹操は不敵に笑うと、聖槍を構え

 

 

曹操「ふっ、全力で戦うその姿を待ちわびていたよ!さあ、始めようか!」

 

 

そう言うと、地面を蹴り、ダイナ、ガイア向かって走り出した。

 

 

ダイナ「デェアッ!」

 

ガイア「デュアッ!」

 

 

それに合わせてダイナ、ガイアもファイティングポーズを取ると、勢いよく駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イリナ「光よ!はっ!!」

 

 

純白の翼を広げたイリナは上空から幾多もの光の槍を地上のジャンヌ目掛けて投げつける。

襲いかかる光の槍をジャンヌは走りながら軽々と避け、ときにレイピアで弾いていく。

 

 

ジャンヌ「いいね~!やるじゃない!お姉さん感激っ!」

 

イリナ「じゃあ、これなら!」

 

 

余裕の笑みを見せるジャンヌにイリナは4つの光輪を放つと同時に急降下し、手に形成した光剣で斬りかかる。

イリナを避ければ、光輪が…。逆に光輪を避ければ、イリナに斬られる。隙のない同時攻撃だ。

普通なら何とかしようと動きを見せるが…

 

 

イリナ「?」

 

 

ジャンヌは全く動じず余裕の笑みを見せたまま佇んでいた。まるで動く必要がないと言わんばかりに。

あまりもの余裕さに違和感を覚えたイリナが降りる速度を落とした瞬間だった。

 

 

ジャンヌ「───聖剣よ!」

 

ジャキィィンッ!!

 

イリナ「っ!?」

 

 

ジャンヌが叫ぶのを合図に足下から数多もの聖剣がジャンヌを取り囲むように生えてくると、迫っていた光輪は全て粉々に砕け散った。

驚くイリナだったが、右太ももに掠りながらも間一髪、翼を羽ばたかせて上空へ回避する。

 

 

イリナ「…っ!危なかった…!もしスピードを落としてなきゃ……」

 

 

イリナは右太ももの切り傷の痛みに僅かに顔を歪ませながら、聖剣の剣山を見下ろす。

もし違和感に気付かず突っ込んでいたら──。それを想像してゾッと背筋を凍らせる中、ジャンヌは感心そうに笑った。

 

 

ジャンヌ「ふふっ、やるやる!私の予想以上じゃない!」

 

イリナ「こ、これでも天使長ミカエル様のA(エース)なんだから!舐めないで!」

 

ジャンヌ「そっかー…ミカエルさんのね。うん、わかった。お姉さんも本気で応えなきゃね」

 

 

ジャンヌは自分に言い聞かせるように言うと、イリナを視線に捉えたまま話し始める。

 

 

ジャンヌ「『聖剣創造(ブレード・ブラックスミス)』────それが私の能力の名前。色んな属性を持った聖剣を創れるわ。そっちの聖魔剣を使う人の聖剣バージョンって言った方がわかるかしら?…けど、色々創れるっても、本場の聖剣には敵わないわ。能力で創った即席物と丹精込めてものとじゃどうしても差が出来ちゃうわ。それを越えるには禁手(バランス・ブレイカー)……ううん、よりもっと上の力じゃないとね~~」

 

イリナ「何が言いたいの…?」

 

 

意図の見えない話に訳がわからないイリナは眉をしかめて訊ねると、ジャンヌはクスリと笑う。

 

 

ジャンヌ「ふふっ……より強くなるには、普通に決められた強化じゃつまんないってことよ。誰もが予想だにしない方が面白いと思わない?」

 

イリナ「…?」

 

ジャンヌ「それをお姉さんが教えてあ・げ・る♪」

 

 

ますます意味がわからず首を傾げるイリナをよそにジャンヌは小悪魔な笑みを浮かべると、腰元から1枚のメダルを取り出す。

縁が黒と白で彩られたカジノコインのように見えるが、内側には2本角を持つ獰猛そうな首長の怪獣が描かれている。

ジャンヌが手にしているメダル────それはジャグラーも持っている怪獣メダルだった。

 

 

イリナ「(何、あれ?)」

 

 

当然、見たことも聞いたこともないイリナは訝しげな顔を浮かべる。

その間にもジャンヌは怪獣メダルをレイピアのアームガードに装填する。

 

 

《Kingsaurs III》

 

 

機械的な音声が鳴ると、ジャンヌはレイピアを真上へ掲げ

 

 

ジャンヌ「───怪獣禁手化(モンストラ・ブレイク)♪」

 

 

猫被った声でそう言うと、周囲を囲んでいた聖剣の山が一斉に背後に移動し始める。

速い勢いで重なった数多の聖剣は形を変えていくと、聖剣で出来た2本角の四足歩行怪獣へとなった。

だが、あくまで姿形を模したのか、全長は10メートル程で標準の怪獣より高くはない。

 

 

イリナ「嘘っ!?怪獣!?」

 

「──ピィィイッッ!!ピィィイッッ!!」

 

 

事の一部始終に驚くイリナに向かって雄叫びをあげる聖剣怪獣。

長い首をくねくねともたげながら動かす様はまるで本物の怪獣のようである。

 

 

ジャンヌ「この子は確か、『キングザウルス三世』……だったかしらね。その怪獣の力を宿したメダルと私の『聖剣創造(ブレード・ブラックスミス)』と掛け合わせた全く新しい禁手(バランス・ブレイカー)────『断罪の聖王獣(ステイク・ビクティム・モンス)』よ」

 

イリナ「っ!」

 

 

怪獣の力と『神器(セイクリッド・ギア)』を合わせた全く新しい力──怪獣禁手(モンストラ・ブレイカー)

想像もしたことない組み合わせに衝撃を受けるイリナだったが、すぐに気合いを入れ直して光剣を構え直す。

 

 

イリナ「そんなこけおどしで参る訳にはいかないわっ!みんなの為に負けられないんだもん!」

 

ジャンヌ「あら?だったらかかってきたら?お姉さん見とくから」

 

イリナ「っ、馬鹿にしないでっ!」

 

 

ジャンヌの挑発に乗る形でイリナは左手を天高く掲げて巨大な光の槍を創り出すと、聖剣怪獣に向かって力強く投げつける。

巨大な光の槍は聖剣怪獣を捉え、このまま一直線に貫通する筈だが

 

 

カキィンッ!

 

イリナ「っ!?」

 

 

光の槍は目と鼻の先のところで弾かれ、あらぬ方向へ飛んでいく。

目を丸くしたイリナは聖剣怪獣の方へ目を凝らすと、周囲には不可視の壁が張られていた。

光の槍はそれで弾かれたのだ。

ジャンヌはあっと声をもらすと、不敵な笑みをイリナへ向ける。

 

 

ジャンヌ「ごめんなさいね、先に言っておくべきだったかな?この子には何でも弾く強力なバリアーを張る能力があるのよ。このバリアーはウルトラマンの光線でさえ破壊できないわ」

 

イリナ「っ、だったら!」

 

 

ジャンヌの話にイリナは負けまいと気を引き締めると、今度は数多の光輪や光の矢を放つ。質より量で叩く作戦だ。

しかし、どれもバリアーを突破出来ず、次々と弾き飛ばされるばかりだった。

 

 

イリナ「はあっ!!」

 

 

ならばと直接攻撃に切り換えたイリナは長く伸ばした光剣で斬りかかる。

勢いよく横へ振られた剣は聖剣怪獣の首を捉えるが

 

 

パキィンッ!

 

イリナ「っ!?」

 

 

バリアーの強固さを前に光剣は耐えきれず、儚い音を立てながら折れてしまった。

これでも突破出来ないことに軽くショックを受けるイリナだったが、他からすれば隙だらけの状態である。

 

 

「ピィィイッ!!」

 

イリナ「きゃあっ!!」

 

ドォォンッ!

 

 

聖剣怪獣の口から放つ熱線に気付かず、もろに受けてしまい、地面に叩きつけられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、木々に囲まれたエリアで戦うロスヴァイセも苦戦を強いられていた。

 

 

ロスヴァイセ「くっ!これだけ受けてもモノともしないなんて…!」

 

ヘラクレス「ハッハッハーッ!いいね、いいねっ!その調子だぜ、姉ちゃん!!」

 

 

ロスヴァイセは距離を取りながら魔法の嵐をぶつけているが、まともに受けても尚、ヘラクレスは余裕の笑みを見せながら突っ込んでいた。

 

 

ヘラクレス「オオラッ!」

 

ロスヴァイセ「っ!」

 

 

接近したヘラクレスは拳を繰り出すが、ロスヴァイセはヘラクレスの頭上を飛び越えて軽やかにかわす。

空振りした拳はロスヴァイセの背後にあった樹木に炸裂……その瞬間

 

 

ドォォンッ!!

 

 

爆弾が起爆したかのように激しい爆発音と共に樹木は木っ端微塵に吹っ飛んだ。

降り立ったロスヴァイセは冷や汗をかきながら軽く息をきらす中、ヘラクレスはゆっくりと振り向く。

 

 

ヘラクレス「へへっ!中々いい動きだな!攻撃と同時に爆発させる俺の『巨人の悪戯(バリアント・デトネイション)』にしっかり警戒してるなぁ!よっしゃ、コイツでペースアップだッ!!」

 

《Antlar》

 

 

そう言ったヘラクレスは懐から取り出した怪獣メダルを右腰のホルスターに装填すると、機械的な音声が鳴り響く。

ヘラクレスは腰を深く落として身構えると、口角をあげて掛け声を発する。

 

 

ヘラクレス「怪獣禁手化(モンストラ・ブレイク)ッッ!!」

 

 

その瞬間、ヘラクレスが一瞬だけ光輝くと、頭部にはクワガタの大顎のような角、全身がカブトムシの固い外皮に包まれていた。

 

 

ロスヴァイセ「姿が変わった!?」

 

ヘラクレス「力の基となった怪獣は『アントラー』ッ!!そして、コイツが俺の怪獣禁手(モンストラ・ブレイカー)────『怪獣による悪魔の虹(デトネイション・レインボラ・モンス)』だァァッ!!」

 

 

叫んだヘラクレスは頭部の大顎で地面を掘ると、地中へ姿を消した。

ロスヴァイセは周囲を見渡して気配を探る。

いつ、どこに来るのか。用意周到に見渡していると

 

 

ドゴォォンッ!

 

ヘラクレス「こっちだぜ!」

 

ロスヴァイセ「っ!」

 

 

後ろから土砂が巻き上がる音と共に声が聞こえたロスヴァイセは振り返ると、ヘラクレスが地中から現れた。

ヘラクレスの大顎に捕らわれそうになるが、ロスヴァイセは間一髪悪魔の翼を広げて上空へ回避する。

 

 

ロスヴァイセ「くらいなさい!」

 

ドドドドドド…ッ!!

 

 

ロスヴァイセは炎、氷、雷……三属性の魔力弾を地上のヘラクレス目掛けて放つ。

ゲリラ豪雨のような激しい攻撃がヘラクレスに襲い、大量の粉塵が巻き上がるが…

 

 

ヘラクレス「──ハッハッ!愉快な攻撃だ!マッサージには丁度いいくらいだな!」

 

ロスヴァイセ「なっ!?」

 

 

全くの無傷で余裕の笑みを浮かべているヘラクレスの姿があった。

ヘラクレスを纏うアントラーの外皮は、あの初代ウルトラマンのスぺシウム光線すら通さない強固なものだ。

流石にこれだけの光線を受けても平然とする姿にロスヴァイセは絶句する。

 

 

ヘラクレス「さぁて、今度はこっちの番だなッ!そりゃッ!!」

 

ロスヴァイセ「っ!?か、体がっ!勝手に…!!」

 

 

ヘラクレスは頭部の大顎の間から虹色の磁力光線を放つと、ロスヴァイセは磁石に反応する金属のように体が徐々に吸い寄せられていく。

何とか踏ん張ろうとするが磁力光線の吸引力には敵わず、背中を向けた姿勢でヘラクレスの方へ引っ張られる。

 

 

ガシッ!

 

ヘラクレス「オリャアァァァーーーーッ!!アントラー・スープレックスッッ!!」

 

ドォォォォンッ!!

 

 

吸い寄せたロスヴァイセの腰を頭部の大顎でロックしたヘラクレスは後方に反り返りながら地面に叩きつけると、大爆発が起こる。

 

巻き上がる爆煙の中、ヘラクレスは腰のロックを外し、地面でうずくまるロスヴァイセを見下ろす。

ロスヴァイセは爆発をもろに受けたせいで体のあちこちが火傷しており、XIGの隊員服もボロボロだ。

 

 

ロスヴァイセ「…か…はっ…!」

 

ヘラクレス「おいおい、大丈夫か?まだまだこれからだぜぇ?もっと頑張れよ」

 

ロスヴァイセ「…余計な…お世話です!」

 

 

煽るヘラクレスにロスヴァイセは痛む体を鞭打って立ち上がる。

とはいえ、体はボロボロで出血もひどく、パワーアップしたヘラクレスの相手をするにはかなりきつい。

 

 

アーシア「ロスヴァイセさんっ!」

 

ロスヴァイセ「っ!」

 

 

危機を知ったアーシアは回復のオーラをロスヴァイセに飛ばす。

送られた淡い緑色の光で回復したロスヴァイセはアーシアにサムズアップを送る。

 

 

ヘラクレス「はっ!回復ねぇ!まあ、それぐらいハンデがねぇと楽しめねぇからなぁ!」

 

ロスヴァイセ「まだ勝ったと決めつけるのは早いですよ!」

 

 

ロスヴァイセは楽しげな笑みを浮かべるヘラクレスにそう言い返すと、再びヘラクレスへ向かって魔法攻撃を仕掛けていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジークフリートと戦う木場とゼノヴィアは西門付近で剣術戦を繰り広げていた。

2対1と数的には不利な筈だが、ジークフリートは両手に持つ剣で軽々と2人の攻撃を捌いている。

 

 

ギギギ…!

 

ゼノヴィア「悪魔祓い最高の戦士ジークフリートと戦う日が来るとはっ!」

 

ジークフリート「こっちも教会を去った君とこういう形で剣を交えるとは思わなかったよ」

 

 

ゼノヴィアと鍔迫り合いしながら、ジークフリートは軽やかな口調で答える。

元々、彼はゼノヴィアやイリナと同じ教会の戦士で、トップクラスの実力者だった。

だが、現在は曹操の誘いに乗って裏切り、英雄派に身を置いているのだ。

 

 

木場「はっ!」

 

ジークフリート「おっと」

 

 

木場が隙を逃さず、神速で斬りかかるが、ジークフリートは鍔迫り合いを外すと素早くバックステップで下がった。

木場とゼノヴィアが構え直す中、ジークフリートは横目で遠くで戦う仲間の様子を伺うと、顔を正面へ向き直す。

 

 

ジークフリート「ジャンヌ達も盛り上がっているみたいだね。よし、こちらも大サービスをしよう」

 

 

そう言ったジークフリートは両手に持つ剣を地面へ突き刺す。

武器を手放すという不可解な行動に木場とゼノヴィアが訝しげな顔を浮かべていると、両手に龍の意匠がある籠手を出現させる。

 

 

ジークフリート「これが僕の神器(セイクリッド・ギア)───『龍の籠手(トゥワイス・クリティカル)』。何の変哲もないありふれたものさ。けど、このメダルの力を使えば……」

 

 

ジークフリートはスボンの両ポケットから取り出した2枚の怪獣メダルを左右の籠手のクリスタル部分に装填する。

 

 

《Powerd-Abolas》

 

《Powerd-Banira》

 

 

機械的な音声が鳴ると、ジークフリートは不敵な笑みを浮かべながら右側に差した剣を左手、左側に差した剣を右手で握って叫ぶ。

 

 

ジークフリート「怪獣禁手化(モンストラ・ブレイク)!!!」

 

カッ!

 

 

剣を地面から引き抜いてX字に斬り上げると、両腕が目映い光に包まれる。

あまりもの眩しさに木場とゼノヴィアは目を瞑る。

 

 

「「……っ!!?」」

 

 

やがて光が晴れ、2人は恐る恐る目を開くと、ジークフリートの変化に目を丸くする。

右腕はワニのような固い群青色の皮膚に変化しており、右肩には恐竜に似た獰猛な怪獣の顔が突き出ている。

反対の左腕は骨が浮き出たような赤色の皮膚になっており、こちらも左肩には細長い頭をした凶悪そうな怪獣の顔が突き出ていた。

 

 

ジークフリート「右腕に宿る怪獣の力は“青い悪魔”と恐れられた『パワードアボラス』。左腕に宿るのは“赤い悪魔”の『パワードバニラ』。これが僕の怪獣禁手(モンストラ・ブレイカー)───『青と赤の狂騒宴(アボラス・バニラ・エヴィッジ)』。さて、君達はどこまで戦えるかな?」

 

木場「…っ、くるっ!」

 

 

そう言うとジークフリートは双剣を構えて駆け出すと、右の剣を振り下ろす。

気を引き締めた木場は聖魔剣で防ぐが

 

 

シュ~~~……

 

木場「何っ!?」

 

 

聖魔剣が剣が当たった箇所から煙を立てて溶け始めた。経験したことがない光景に驚く木場だが、このままだと刀身ごと斬られることを危惧して素早く後ろへ下がる。

木場は溶けた刀身が溶けた聖魔剣を見て、驚きの声をもらす。

 

 

木場「聖魔剣が…!」

 

ジークフリート「パワードアボラスの溶解液は何でも溶かす。聖と魔を宿す聖魔剣でさえも簡単にね」

 

ゼノヴィア「なら、私がっ!」

 

 

木場に変わってゼノヴィアが飛び出す。

ジークフリートは右手の剣を振るって溶解液を込めた斬撃を飛ばすが、ゼノヴィアはデュランダルを盾にしながは接近していく。

刀身から放つ聖なる光は溶解液を蒸発させていく。

 

 

ジークフリート「やるね。なら、こっちはどうかな?」

 

 

斬撃の手を止めたジークフリートはもう片方の剣を持つ左手に力を込めると、刀身に炎を纏わせて身構える。

 

 

ゼノヴィア「はあぁぁぁーーーーーっ!!」

 

キィィンッ!!

 

 

近付いたゼノヴィアは大地を蹴って飛び上がると、デュランダルを豪快に振り下ろす。

ジークフリートは炎を纏った左の剣で軽々と防ぐ。

炎と光───輝きを放つ2つの属性は暗闇を照らす程にぶつかり合う。

ゼノヴィアは持ち前のパワーで押し込んでいくが

 

 

ジュウゥゥ~~~!!

 

ゼノヴィア「熱っ!?」

 

 

突如、グリップ部分が尋常ではないくらい熱くなり、思わず後方へ投げ飛ばしながら飛び退く。

地面に降り立ったゼノヴィアは両手に目をやると、掌は火傷で赤くなっていた。

その様子に不敵に笑うジークフリートは赤い左腕を見ながら話す。

 

 

ジークフリート「この左腕の力……パワードバニラの炎はあらゆるものを熱し、焼き付くす。君の持つデュランダルも伝説の聖剣といえど金属………さっきグリップ部分が急に熱くなったのは熱伝導したせいさ」

 

ゼノヴィア「何だと…!」

 

 

ジークフリートの説明にゼノヴィアは戦慄する。

剣を溶かし、熱伝導させる……剣士にとってはどれも厄介な能力だ。

ゼノヴィアは冷や汗をかきながらも熱がすっかり冷めたデュランダルを引き抜くと同時に新しく創った木場が駆け寄る。

 

 

木場「これは厄介だね…」

 

ゼノヴィア「ああ。しかし、ここで退く訳にはいかない……」

 

 

生唾を呑みながら剣を構える2人。

ジークフリートは能力も厄介ではあるが、剣の実力も高い。

2人はこちらへ歩いてくるジークフリートに戦慄しつつも、気を引き締めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、崩壊した本丸御殿近くではガイア、ダイナのタッグと曹操による激しい攻防が繰り広げられていた。

 

 

ダイナ「ハッ!!」

 

曹操「ふっ!」

 

 

走り出した曹操はダイナの連射したビームスライサーを聖槍を回して弾くと跳躍し、聖槍を下へ向け、切っ先を伸ばす。

標的を捉えた切っ先はダイナに向かって飛んでいくが

 

 

ガイア「デュアッ!」

 

フィンッ!

 

 

軌道に割り込んだガイアがアグルブレードを斜め上へ振るって弾く。

曹操は軌道が逸れた聖槍を元の長さに戻して、スタッと着地する。

 

 

ガイア「ダッ!」

 

フィンッ!

 

 

ガイアはすかさず頭上で構え直したアグルブレードを振り下ろし、青い光の斬撃を飛ばす。

鋭い速度で迫る三日月型の光のカッターに、曹操は聖槍を力強く振って、刃部分で真正面から受け止める。

 

 

曹操「ぐぅぅぅ……っ!!」

 

 

斬撃を受け止めながら曹操は歯を噛み締める。

アグルブレードから放たれた斬撃は彼の予想以上に重く、刃の部分からは火花が飛び散り、踏ん張っている足も後ろの地面を抉る程だ。

 

 

ダイナ「デェアッ!」

 

キィィィ─────ンッッ!!

 

曹操「ぐあっ!」

 

 

ダイナはだめ押しにとダイナスラッシュを放つ。

青い斬撃に丸のこ状の回転カッターが加わったことで受け止める刃は激しい火花を散らすと、曹操ごと後ろへ押し返す。

 

 

ガイア「ダッ!」

 

ダイナ「ハッ!」

 

 

その隙にアグルブレードを収納したガイアとダイナは大地を蹴って真っ直ぐ低空飛行。

接近する最中、2人は足を相手に向けてキックの体勢に入れ換える。

 

 

「「デヤァァァーーーッ!!/ダァァァァーーーーーッ!!」」

 

曹操「ぬうっ…!ぐぅあっっ!!」

 

 

ガイア、ダイナ───両者の息のあったダブルキックが放たれる。

曹操はすんでのところで聖槍を盾にして防ぐが、威力は殺しきれず、大きく後方へ吹き飛ばされる。

 

 

フィンッ!

 

 

着地したガイアは再度アグルブレードを展開すると、ダイナよりひと足先に駆け出す。

 

 

ガイア「グァッ!ダッ!」

 

曹操「ふっ!はっ!」

 

 

ガイアはアグルブレードから繰り出す素早い剣術で攻め立てる。

曹操も聖槍での槍術で対抗し、火花が散る程の激しい接戦を繰り広げる。

武器を使った戦いに慣れてなかったガイアがこうやって互角に戦えるのは木場との特訓の賜物である。

 

 

キィンッ!!

 

 

得物をぶつけ合い、短い(しのぎ)合いの後、両者共に後ろへ下がると、ガイアと入れ替わるようにダイナが前へ飛び出す。

 

 

ダイナ「フッ!ハッ!」

 

曹操「…チィッ!」

 

 

勢い良く接近したダイナは名前の由来に違わないダイナミックな格闘戦で攻める。

最初こそ曹操は聖槍を巧みに使って防いだり、反撃していたが、ダイナのダイナマイトの如き勢いに次第に押され始めていき、拮抗していた形成はすぐに傾くことになった。

 

 

ダイナ「ダッ!」

 

曹操「くはっ!?」

 

ダイナ「デェアッ!ハァァァァーーーーー………!」

 

 

攻防の僅かな隙を見逃さないダイナのストレートキックが曹操の腹部に炸裂する。

その一撃に曹操は苦悶の表情を浮かべながら吐血し、前のめりに体勢が崩れる。

怯んだところをすかさずダイナは曹操の頭を脇に挟んでロックして水平に持ち上げると、ハンマー投げのように回し始める。

 

 

ダイナ「────ァァァァーーーーーー……!デェアッ!!」

 

 

ある程度勢いがついたダイナは曹操を思いっきり遠くへ投げ飛ばす。

 

 

曹操「──ぐはっ!?」

 

 

勢いよく地面に叩きつけられた曹操は身体中に突き刺さる痛みと苦痛のあまり血反吐を吐いた。

 

 

ガイア「デュアッ!グァァァ……!!」

 

ダイナ「ハァァァァ……!!」

 

「「デュアッ!!!/デェアッ!!!」」

 

 

その間に必殺エネルギーを溜めたガイアとダイナはそれぞれ追い討ちのリキデイターとスパイラルバーストを放った。

 

 

曹操「────っ!」

 

ドォォォォォーーーーーンッ!!

 

 

真っ直ぐ飛んで行く青色と青白い光球は曹操が驚きの声をあげる間もなく着弾し、大爆発を起こした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────ドォォォォォーーーーーンッ!!

 

「「っ!」」

 

 

2人のウルトラマンが引き起こした爆発は城の外で待つ大悟と九重の目にも届いていた。

次々と起こる大爆発と無数に飛び交う光や魔力弾の数々……それを見て、大悟と九重は予断も許さない大激闘が繰り広げていると安易に想像できた。

 

 

───大悟………大悟………

 

大悟「……?」

 

 

外から戦いの様子を見守る中、大悟の脳裏に自分を呼ぶ女性の声が聞こえてきた。

不思議に思った大悟は辺りをキョロキョロ見渡すが、当然、九重以外誰も見当たらなかった。

 

大悟の様子が気になった九重は訝しげに問いかける。

 

 

九重「大悟?どうかしたのか?」

 

大悟「いや、誰かが僕を呼んで……九重も聞こえただろ?」

 

九重「……?私には全く聞こえぬぞ?」

 

大悟「え」

 

 

大悟はそう説明するが、九重には全く聞こえておらず、きょとんとしていた。

この声は自分にしか聞こえていないのか──大悟は幻聴かと思い過ごしていると

 

 

───大悟………大悟………大悟………

 

 

またもや自分を呼ぶ声が脳裏に響いてきた。

大悟はふと見上げると、数十メートル離れた先に黄金に輝く光のピラミッドが蜃気楼のように現れた。

 

 

大悟「…っ」

 

 

荘厳な雰囲気で佇むピラミッドに大悟は何か突き動かされたのか、声に導かれるようにピラミッドのもとへ歩き始めた。

 

 

九重「大悟、どこにいくのじゃ?大悟!大悟!」

 

大悟「……」

 

 

怪訝に思った九重が呼びかけるが、大悟は心ここにあらずといった様子で返事すらせず、スタスタと歩いていく。

またも様子がおかしくなった大悟に困惑する九重だが、大悟が向かう方角にピラミッドがあることに気付いた。

 

 

九重「っ!あれはもしや………っ、そんな場合じゃない!大悟、私を置いていくなっ!」

 

 

九重はピラミッドの正体に勘づいたが、とりあえず思考を現実に戻すと、急いで大悟の後を追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガラガラ…

 

曹操「ふぅ…」

 

ダイナ「デュッ!」

 

ガイア「グァッ!」

 

 

爆煙が立ち込め、岩の瓦礫を下から退かして、身構えるガイアとダイナの前に現れるのは曹操だ。

あちこち傷だらけで服装もボロボロであるが、まだ戦える余力はあり、息を吐くくらい余裕である。

 

曹操は服についている埃を軽くはたくと、ガイアとダイナ、交互に見ると愉快そうな顔で口を開く。

 

 

曹操「いやぁ~~流石は地球が産んだウルトラマンだ。それに幼馴染み同士だけあって、連携も完璧だ!相手として文句はない!」

 

 

2人の戦いぶりを称賛する曹操。

曹操の見せる余裕に加え、その言動に益々気味が悪くなるガイアとダイナは警戒を強めていると

 

 

ジャンヌ「あら?こっちはやってるんだ?」

 

アーシア「イリナさんっ!」

 

 

とぼけた口調のジャンヌと悲鳴混じりの声で叫ぶアーシアの声が聞こえる。

ガイアとダイナはジャンヌの方へ顔を向けると、血塗れでぐったりしているイリナを肩に抱えていた。

 

 

ガイア「イリナッ!」

 

ジャンヌ「けっこー頑張ったんだけどね、バリアを突破しようと必死になったせいで体力を消耗しすぎてやられちゃったって訳」

 

ダイナ「クッソォォ~~~……!」

 

ジークフリート「やっぱり最初からその2人と戦えば良かったんだよ」

 

ヘラクレス「全くだぜ!」

 

「「ッ!」」

 

 

ダイナが怒りで拳を震わせていると、ジークフリートとヘラクレスの声が聞こえる。

もしや───と不安に思いつつガイアとダイナは顔を向けると、不安は的中する。

ジークフリートの両腕には血塗れの木場とゼノヴィア、ヘラクレスの肩には同じく血塗れのロスヴァイセ────仲間がやられた姿があった。

 

 

ダイナ「木場!ゼノヴィア!」

 

ガイア「ロスヴァイセさん!そんな……」

 

ジークフリート「大丈夫、彼らは生きているよ。ここで殺しちゃ今後の成長を楽しめないからね。そうだろう?ヘラクレス」

 

ヘラクレス「おうよ!コイツらは頑張った方だぜ!まあ、ちぃっとばかし期待外れだったがな!」

 

 

そう言うと、ヘラクレス、ジークフリート、ジャンヌは気絶している木場達をガイアとダイナの眼前に放り投げる。

仲間達が倒され、ショックを受ける3人に更なる追い討ちがかかる。

 

 

「グォォォォーーーーー!!」

 

「「「!?」」」

 

 

龍の咆哮が聞こえ、3人は顔を向けると、黒龍姿の匙が九尾の狐の九つの尾に縛られ、苦痛の叫びをあげている姿があった。

匙までやられ、気分が沈む3人に曹操は口元の血を拭って話す。

 

 

曹操「楽しかったよ、ガイア、ダイナ。残念だが、俺が遊ぶのはここまでだ。やるべきことがあるんでね。さて、ここで少し休憩することにするよ……。そこの君、早く仲間の傷を回復させるのをオススメするよ」

 

アーシア「…っ!皆さんっ!」

 

 

曹操に指摘されて我に戻ったアーシアは倒れる木場達のもとへ駆け寄ると、治療を開始する。

 

治療される最中、ガイアとダイナは未だ仲間が簡単にやられたことに信じられなかった。

まだまだ未熟と言われるが、グレモリー眷属の面々は実力が高く、そう簡単にやられる程鍛えている訳ない。

 

ガイアとダイナには悪いが、彼らがやられるのも無理はないだろう。

何せ、ジャンヌ達3人の力の基である怪獣はどれも歴代のウルトラ戦士を苦戦させてきた強豪ばかりで、しかもそのうち1体はウルトラマンを敗退させている。

初見で勝てと言うのは至難の技であるだろう。

 

 

ゲオルク「曹操。召喚の儀式は後少しだが、()()()()は完了したそうだ」

 

曹操「そうか……準備が出来たか」

 

 

ゲオルクの報告に口端を上げる曹操。

───例の準備?ガイアとダイナが怪訝に思っていると、見かねた曹操が説明する。

 

 

曹操「ああ~言い忘れたが、俺達はグレートレッドを呼び出す以外にも目的があるのさ。こっちのが本命かもしれないけどね」

 

ダイナ「何なんだよ、それ?」

 

 

ダイナの問いかけに曹操は不敵な笑みを浮かべながら、ハッキリ告げた。

 

 

 

曹操「────ティガの巨人像の破壊。俺達の()()()()()の要望の為にね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、ピラミッドに向かう大悟とそれに着いていく九重はピラミッドの麓へ辿り着いた。

道中、大悟はあっちこっち曲がったり通ったり滅茶苦茶なコースを通っていたが、不思議と周囲の建物がまるで道を譲るように避けていく感覚を九重は実感した。

 

 

大悟「……」

 

 

大悟はピラミッドをひとしきり見上げてから、そっと手で壁面に触れる。

すると、壁面はそこに何もないかのようにすり抜けた矢先、壁面が光り輝くと、大悟はピラミッド内へ入り込んだ。

 

 

九重「っ!」

 

 

この光景にはっと息をのんだ九重は居ても立ってもいられず、大悟に続いて壁面に触れると、光が身体中を包みこんでいった……。

 

 

 

 

 

 

 

九重「……?ここはピラミッドの中か……?」

 

 

眩しさがなくなり、恐る恐る目を開けた九重はキョロキョロと辺りを見渡す。

周囲は薄い光に包まれている以外何もない不思議な空間で、何故か心が和やかになるのを感じた。

 

 

九重「っ、大悟!」

 

 

すぐ近くには何かを見上げる大悟の後ろ姿があった。

九重は急いで大悟のもとへ駆け寄るが、依然として大悟は口を僅かに開けたまま、何かを見上げていた。

 

 

九重「……大悟?どうしたのじゃ?」

 

大悟「あれを……」

 

九重「……?あれはっ!?」

 

 

はっきりとしない口調で答える大悟が指差す方へ九重は顔を向けると、途端に目を丸くする。

 

大悟が指差す先────そこには全長50メートル程の3体の巨人像が静かに佇んでいた。

それを見て九重は確信した。

 

 

九重「やはり、ここが……母上が護ってきた勇者の墓…!ティガのピラミッド!」

 

 

九重の一族────正確に言えば九尾の一族が墓守の役割を務めてきた光の巨人が眠る墓。

話だけは母親から聞いてはいたが、まさかこんな形で来ることになるとは思いもよらなかっただろう。

 

九重が呆気にとられる中、大悟は巨人の足元にある階段をかけ上がると、3体のうち、1体の巨人像に近付く。

 

 

大悟「…っ」

 

 

大悟は巨人像から伝わる迫力に圧巻されながらもその巨人像に触れ、見上げる。

その巨人像は額にひし形のディテールが施されているのが特徴で、神仏のような神々しさを放ちつつも、どこか優しく微笑んでいる暖かさがあった。

 

大悟と九重は憑り依かれたかのようにしばし、巨人像を眺めるのだった……。

 

 




次回予告
※(イメージBGM:ウルトラマンティガ次回予告BGM[初期])

3000万年の時を超えて、究極の勇者が蘇った!
洗練された技!鮮やかなタイプチェンジ!
英雄派から京都を救え!

次回、「ハイスクールG×A」!
「光を継ぐもの」!
お楽しみに!

D×Dのキャラにパワーアップアイテムを授ける?

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  • 木場に授ける
  • サイラオーグに授ける
  • その他(リクエストボックスにコメント)

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